日本の会計の国際的位置付け

English

各国会計の透明度

Sidney J. Gray's Approach (1994)
非保守的
透明性が低い

ドイツ、

スイス、

オーストリア


ベルギー、


フランス、


イタリア、


スペイン、


ポルトガル
各国会計の分類

ガバナンス低い

連結決算の歴史

レジェンド問題

法形式を重視

専門家インフラ

各国会計士の数

税理士の数

北欧




英国、




米国




カナダ、




オランダ
保守的
旧植民地アジア /アフリカ




透明性が高い
大手監査法人

会計事務所経営


欧州連合の規制

ASEANの規制

投資家不在

2004年9月28日のフィナンシャルタイムズに国際会計基準審議会(IASB議長デビット・トゥイディ氏は、次のように述べている。
Japan has one of the most opaque financial reporting systems in the world and, consequently, Japanese companies have difficulties listing elsewhere. The IASB has offered a convergence project to help address these problems and explore issues of best practice. “We have asked them to look at the differences between our standards and theirs,” explains Sir David, “and if they have got something better we will take it on board.”
IASB理事にインタビュー−2004年3月3日
日本の会計風土は素晴らしいものがあるとは思うが,ほとんどの事柄に同意せず,そしてそれは他国が納得する意見ではない。われわれは日本の意見すべてに耳を傾け,理解しているが,同意はできない(例えば,IASBは「包括利益」の導入を目指しているが,日本は当期利益の考え方がなくなり,実態がわかりにくくなるとして,反対意見を表明している。「包括利益」とは貸借対照表を原則時価評価して,有価証券などの評価損益を毎期の利益に反映させる方法)。
                                       ジェトロ・ブリュッセル・センター EUトピックスNo38 2004年3月3日より

2004年12月21日金融庁はCESR(欧州証券規制当局委員会:EU加盟各国の証券規制当局で構成)に対しコメント・レターを発出し「日本の会計基準は、会計ビッグバンを通じて急速に整備され、国際的な会計基準と整合性があり、同等。」という見解は、上記の通り、「日本は、世界で最も不透明な財務報告制度を持つ国の一つで、それにより、日本企業はほかのところで上場するのに困難なところがある。」とする海外の一般的な認識とは対極にあると言えよう。なお、22日付で、企業会計基準委員会金融庁と同様のコメント英文)をCESRに送付している。
   ↓↓↓
2005年4月27日、CESRが日本企業に2007年より追加情報の開示要請案を公表。多くの場合、CESRが指定する国際基準との相違に関する追加情報の開示に多大の時間と労力を費やすことになろう。



各国会計の分類

NOBES MODEL
MICRO-BASED MICRO-UNIFORM
BUS.Econ.
Theory
BUS.Practi-Ce,pragma Cont.Governm. Government

UK driven US driven Tax driven Law driven
Netherlands UK
Australia
New Zealand
Ireland
USA
Canada
Belgium
France
Italy
Spain
Germany
Japan
Sweden

上記日本の会計の国際的位置づけの図表はInternational financial reporting 2003年春(PPTファイルです)」(Prof. Dr. Erik De Lembre教授)の研究結果です。なお、「The International Harmonisation Process of Accounting Standards」 by Susanne Fritz and Christina Lammle(2003年01月20日)の研究成果も参考となります。
上記図表の通り、アジア・日本は透明性に欠けます。

(1)日本はコーポレート・ガバナンスの面で低い評価となっている。
 
 企業の財務報告の透明度が低いため、日本企業のコーポレート・ガバナンス(Corporate Governance)は欧米に比較し低い評価となっている。
欧州からの視点・・2000年の主要国5カ国の国際比較で最下位の日本  参照
米国からの視点・・対象14カ国で日本は最下位(2003年7月29日) 参照
英国からの視点・・対象24カ国で日本は最下位(2005年8月) 参照
日本の証券取引所には諸外国のように上場会社の「コーポレート・ガバナンスの規定」は存在しない。 参照

 財務報告の透明性について、日本では株主に対する情報開示商法(会社法)の規定により、株主総会召集通知書に添付される商法計算書類である。商法の計算書類は、@個別財務諸表が中心となっており(債権者保護および配当可能利益の算定を目的としている)、かつ、A単年度決算の開示で比較財務諸表になっていないことや、B注記事項が脆弱であるなど国際的に透明度が低いと言われる所以である。

商法の計算書類
及び連結計算書類
国際基準の財務諸表 主要な相違点
(1)計算書類の体系:
・貸借対照表
・損益計算書
・利益処分案

2005年会社法改正で株主資本等変動
計算書
が加えられ、利益処分又は損失
処理については会社法上規定しないこと
になった。(06年4月以降の法施行以後)

2006年2月7日法務省が公布した、
会社計算規則」第91条個別計算書類
・貸借対照表(会社法435条2項)
・損益計算書(会社法435条2項)
・株主資本等変動計算書
・個別注記表
第93条連結計算書類 参照
(1)財務諸表の体系:
・貸借対照表
・損益計算書
・株主持分変動計算書
・キャッシュフロー計算書
・説明的注記


国際会計基準」参照
商法では、株主持分変動計算書、キャッシュフロー計算書
などの基本財務諸表はなく、注記が貧弱。
国際基準に利益処分案という計算書は存在しない。
商法第281条第1項の附属明細書は開示書類では
なく株主の手許には届かない。
2006年5月施行の会社法及び会社計算規則
(平成18年法務省令第13号)への対応から

「附属明細書」の記載内容が大幅に削減された
日本公認会計士協会「附属明細書のひな型」
(草案)
(2006年4月17日)参照

商法が配当利益の計算を重視していると主張している
ことから、キャッシュフロー計算書の開示をしないのは
論理的矛盾とする国際会計からの視点がある。


(2)開示する計算書類(大企業)
・個別計算書類
連結計算書類(2005年3月期以後)
(2)開示する計算書類:
子会社があれば連結財務諸表のみ
子会社が無ければ個別のみ

つまり、企業の実態を表す一つの
財務諸表を作成開示する。
国際基準では、一つの財務諸表を開示する。
つまり、子会社があれば連結財務諸表のみを開示する。


一つの企業に複数の財務諸表は投資家(利用者)を
惑わすもので情報垂れ流しの無責任。
(3)単年度計算書類のみ
・当年度のみ表示

2006年5月施行の、会社法施行規則
では、公開会社の事業報告書で「直前
三事業年度の財産及び損益の状況」
の開示することが求められた。
(規則120条1項6号)

過年度事項の提供
会社計算規則161条3項)
(3)比較財務諸表
・前年度の数値と比較で表示
国際基準では、前年度と比較した財務諸表の開示を求めら
れる。単年度財務諸表は、国際基準では認められない。
期間比較することで、業績等が良くなったか悪くなったか
一目瞭然となり分かり易くなるからである。


会社法施行規則で突然「直前三事業年度の財産及び
損益の状況」の開示を求めているが、証券取引法が
2期開示で会社法の方が1期多い、まして、日本には
比較情報開示の会計基準が存在しない。

会社法、証券取引法の整合性が図られていない
縦割行政りのまま。
(4)注記は貧弱 (4)注記は重要な財務諸表の一部 国際基準では注記による開示が多く充実している。

商法における連結計算書類の作成時期;2003年4月1日が施行日とされ、商法特例法附則8条により、その次の決算期から適用となり、3月期決算であれば、平成17年(2005年)3月期から適用とされています。4月決算の場合は、平成16年(2004年)4月期から適用となります。

 なお、上場会社の場合は、上記商法計算書類に加えて、証券取引法(企業会計原則)のもとに投資者保護の名目で「有価証券報告書」が作成され、株主総会後(株主権は行使できない)、金融庁の電子開示「EDINET:Electronic Disclosure for Investors' NETwork」、エディネットと呼ばれる(2004年6月1日以降、原則義務化)で情報開示されるが株主の手許に届かないことや、連結財務諸表と個別財務諸表の双方の開示を求められ情報過多となっていることに加え、EDINETを閲覧するにも情報が細切れで一覧性がないなど非常に見難い状況にある(証券取引法の会計については「国際会計基準と日本の会計の相違点」参照)

株主総会後開示され、株主の権利行使には役立たない有価証券報告書は株主の手許に届かない。
同様に、証券取引法に基づく半期報告書も、株主に手許に届くことはない。現在議論している四半期情報開示も、抜本的な会計制度改革がない限り同様となろう。恐らく、日本の上場会社の個人株主の多くは有価証券報告書に接することはないであろう。ちなみに、1961年から政府刊行物として「有価証券報告書」の縮刷版が(最近では1冊2000円で)販売されていましたが、EDINETでの電子開示化が2004年6月から強制されることから2004年度(平成16年度)から販売廃止となりました(国立印刷局からのお知らせ 政府刊行物「有価証券報告書の販売」 参照)。

ちなみに、米国では子会社がある場合、原則、連結財務諸表の開示が求められ個別財務諸表の開示は求められない。ドイツ商法では個別財務諸表の開示を求めているが、フル・ディスクロージャーではなく、A4版1枚に2期比較で損益計算書と貸借対照表が簡潔に纏められ挿入される。

日本では下記の通り連結財務諸表の歴史は比較的新しい。日米構造協議で米国側から連結財務諸表を中心とした開示制度を求められ、1991年になって初めて連結財務諸表を有価証券報告書の本体に組入れるが、その直前の企業会計審議会は、「連結財務諸表の有価証券報告書への本体組入れは時期尚早」と結論していたのは記憶に新しい。
2000年3月期から「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書
により「連結財務諸表を中心とした国際的にも遜色のないディスクロージャー制度を構 築しようとする ものであり、21世紀に向けての、活力あり、かつ、秩序ある証券市場の確立に貢 献しうると考えるものである。として会計ビックバンが始まったのである。

改正商法では
、3月決算の場合、2005年3月期から未監査の連結財務諸表(商法では「連結計算書類」と呼称)の作成および株主総会の召集通知書に添付し株主に送付することとなった。監査の結果は、株主総会で報告することになった。(ニューヨーク証券取引所に上場しているソニーの場合、米国会計基準による連結財務諸表および商法による単独財務諸表を作成し2005年5月12日付けの連結及び単独財務諸表の監査報告書を株主総会通知書(株主総会は2005年6月22日)に添付しています。制度上、日本の株主に連結財務諸表が届くのは史上初めてのことです。

年度 日本の連結財務諸表の歴史
(上場会社に限る
米国基準で連結財務諸表を作成
ニューヨーク証券取引所上場の日本企業
1961年 ソニー(Sony Corporation)が日本企業として初めて
米国でADR(米国預託証券)を発行のため
米国会計基準による連結財務諸表をSECに登録
1962年 ホンダ(Honda Motor Co., Ltd.)がADRの発行に伴い
資本金90億9000万円となる。
現在のSEC登録書類
1971年 重要子会社の個別決算の開示義務付け              
1977年 連結財務諸表の開示義務付け
1983年 関連会社などへ持ち分法適用の義務付け
1991年 連結財務諸表を有価証券報告書本体へ組み入れ
1994年 売上高や資産などがグループ全体の10%以下なら
連結対象からはずせる「10%基準」撤廃。
連結子会社の範囲が拡大
1999年 トヨタ(Toyota Motor Corporation)がSECに登録しADRを
ニューヨーク証券取引所に上場
2000年 新連結決算制度導入個別から連結中心主義へ変更
(2000年3月期より適用)
連結対象決定に実質支配力基準の導入
2003年 米国式連結財務諸表を証券取引法上認める
(2003年3月期より適用)

参考:米国式連結財務諸表作成会社の上場会社
2005年 商法の未監査連結計算書類を株主総会召集通知に添付
(2005年3月期より適用) 商法施行規則第142条〜179条
 
商法特例法第19条の2第21条の32(委員会等設置会社)
会社法第444条(連結財務諸表作成、株主総会召集通知等)
2006年 「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」
(2006年3月期より適用)
2007年 企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書
(2007年3月期より適用)
「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準
「ストック・オプション等に関する会計基準
2006年5月施行の、会社法施行規則では、公開会社の
事業報告書で「直前三事業年度の財産及び損益の状況」
の開示することが求められた。(規則120条1項6号)

2005年7月5日、欧州連合が日本の会計基準が国際基準と同等であるか評価していたCESRが最終結論(141ページ)を5日遅れで提出された。4月27日の中間報告(138ページ)と大きな相違はない。(CESRニュース 欧州上場の域外企業に追加開示義務付け・EU委報告 EU May Seek More Disclosure From U.S., Japanese Firms  金融庁が解説しています。EUにおける我が国会計基準の同等性評価の進展状況 参照)
連結財務諸表については、「在外子会社の会計基準の統一に係る各差異についての補完計算書の作成(CESRの技術的助言のポイント)」が2007年(2006年比較を含む)から日本企業に要求されます。企業会計基準委員会(ASBJ)で検討されることになっています(「国際会計基準審議会IASBとASBJの共同プロジェクトの初会合2005年3月11日」参照)。

なお、米国での連結財務諸表の歴史は「アメリカ連結会計の生成起源と展開過程」by小栗崇資(駒澤大学)によると、19世紀後半に始まり、日本の連結決算制度は、米国に遅れること約100年ということになり興味深いものがある。

日本の会計制度--商法と証券取引法の二重開示制度の事例
会社名 商法の計算書類法務省所管 証券取引法金融庁所管
株主総会召集通知書に添付し株主に送付 総会後開示、株主に送付されない
株主権の行使に役立たない
NTT Do Co Mo 定時株主総会招集ご通知添付書類 有価証券報告書等
SONY Corp 株主総会召集通知書 有価証券報告書等
Nissan Motor Co., Ltd. Business Report "Yukashoken−Houkokusho"
NTTドコモの場合、規則改正により平成14年度(2003年3月期)から米国基準による連結財務諸表で開示しています。 加えて、商法上の連結計算書類も早期に開示しています。

なお、他社の事例は「”株主総会”Google 検索結果」から検索できますので、興味ある方は調べてみてください。

商法と証券取引法の二重開示制度は、財務諸表を作成する企業に二重の作成負担を課し、財務諸表の読者である投資家・株主等に二重の情報が開示される。債権者保護・配当可能利益の計算目的、投資家保護を目的は名目ばかりで実体を伴わない。透明度の高い一つの優れた財務情報を開示するのが国際標準の開示制度である。
日本が、二重開示制度となっている原因は、商法の法務省と、証券取引法の運用を行っている金融庁の縦割り行政が 原因で、両者を透明度の高い一つの優れた財務諸表にする努力が払われてこなかったことによるもの。

会計の二重開示の問題は、二重の監査報告書の問題でもあり、商法および証券取引法にそれぞれ会計監査の規定が存在し、会計監査人はニ種類の監査報告書を作成しなければならない。
はじめて明かにされた金融庁の考え方

2004年(平成16年)3月9日(火)開催の「企業会計審議会 第8回企画調整部会議事録(「国際会計基準に関する制度上の対応」を検討)」によれば、2001年7月創設の企業会計基準委員会斎藤委員長金融庁羽藤参事官の議論(下記参照)が日本の会計基準作成と金融庁の関係を明らかにしています。

○斎藤委員 いえ、企業会計基準委員会で開発した会計基準というものについて現在のシステムでは金融庁が1件毎に承認をする。ガイドラインで承認をするという体制をとっているわけでありますが、その承認というのは通常はこれまで規範性を持つという意味で捉えてきたのですが、規範性を持つということと、今ご説明のあった証取法における一般に公正妥当だと認められた会計の基準であるということとが果たしてどういう関係にあるかがご説明を伺っていてよく分からなかったということです。

○羽藤参事官 規範性を付与するというのは、金融庁に与えられている権限としては証取法の運用でありますから、証取法を運用する上で一般に公正妥当であると認められるものというふうに規範性を金融庁が認めているということです。したがって、企業会計基準委員会で策定されたもの、そして1件毎に規範性が認められるかについては、証取法の運用との関係で確認をしているということにおいては、今までの解釈にも何らか変更があったとは私は申し上げていないつもりです。  ただ、敢えて今のご質問との関係で申し上げるとすると、商法上の公正なる会計慣行との理解との関係でどうなるのかとか、あるいはそういったご議論はあるいはあるのかもしれません。一般に公正妥当であると認められたところということについては、我々としては証取法の運用を行っているわけでありますから、ここの下で規範性を与えている、そこの理解あるいは解釈においては変わりはないと申し上げております。ちょっと私の説明がもどかしいのかもしれません、申し訳ありません。

○斎藤委員 念のために確認いたしますが、そうしますと金融庁がガイドラインにおいて承認したということは、別段、法の条文において特段の根拠を明示しているわけではないけれども、金融庁においてそれは証取法上の一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当すると解釈をしている、そういう理解でよろしゅうございますか。

○羽藤参事官 そういうふうに解釈して頂いていいと思います。つまり1つひとつのことについて規範性を認めるというのは、我々が与えられている権限として、証取法に基づいてこの証取法を適格に運用することであり、その証取法において求められていることは一般に公正妥当であると認められたことに従っているものがどうかという解釈である、企業会計基準委員会、ASBJにおいて策定されたものがそういうものであるということを確認をしているということを内部でも徹底しているし、またそれがおそらくマーケット関係者に見えることによって規範性が認められているのだという評価になるという理解をいたしております。

上記羽藤参事官の発言は、「財務諸表等規則等に係る事務ガイドライン(企業会計基準委員会の公表した各会計基準の取扱いについて)」となって具体化している。創設して4年経過した2005年6月現在、金融庁は、2つの会計基準設定と1つの改正のみを認めているに過ぎない。羽藤秀雄氏検索結果 参照) そこには、企業会計基準委員会の独立性、金融庁の透明性見出すことはできない。「Japan has one of the most opaque financial reporting systems in the world」である。


(2)英文財務諸表にレジェンド(Legend clause 警句)が入る。「レジェンド(警句)問題」参照

 下記の事例に見られるように、英文財務諸表の注記に重要な会計方針の記述の中で「日本の会計基準は国際的な会計基準と異なっている」旨の「レジェンド(Legend clause警句)」を挿入し欧米の読者に注意を喚起している。

警句の事例

Notes to Consolidated Financial Statements
SUMITOMO ELECTRIC INDUSTRIES, LTD. AND CONSOLIDATED SUBSIDIARIES
March 31, 2004 and 2003
1. BASIS OF PRESENTING CONSOLIDATED FINANCIAL STATEMENTS
 Sumitomo Electric Industries, Ltd. (the “Company”) and its consolidated domestic subsidiaries maintain their accounts and records in Japanese yen, and in accordance with the provisions set forth in the Japanese Commercial Code (the “Code”), the Japanese Securities and Exchange Law and its related accounting regulations and in conformity with accounting principles generally accepted in Japan (“Japanese GAAP”), which are different in certain respects as to application and disclosure requirements of International Financial Reporting Standards.


(3)日本の会計は経済的実態(economic substance)の表示よりも、法形式(legal form)の表示を重視

 日本の上場会社の会計は、商法、証券取引法および税法の三つの法律を基礎に行われ、これを「会計のトライアングル体制」と呼ばれている。米国・英国および国際会計基準が表示しようとする「形式を超えて企業の実態substance over form)を適正表示fair presentation)」するのとは対照的である。

例えば、法の制限をうけているものに、@新株引受権付社債を発行した場合、新株引受権の付与を米国会計基準が資本取引として資本剰余金への計上を求めているとしても、日本の商法が資本準備金計上を認めていないとして、新株引受権を負債計上していること(金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書(平成11年1月22日)」参照)、Aストック・オプションを付与したとき、費用として計上するとともに、貸方は、新株予約権として負債の部と資本の部の中間に独立項目として計上する(企業会計基準委員会公開草案「ストック・オプション等に関する会計基準(案)4項」参照、<国際基準では資本剰余金に計上し純資産には影響しない>)があり、Bファイナンス・リースに、所有権移転が認められないものは法形式の「賃貸借取引」として会計処理できるとして、経済実態(economic substance)を犠牲にしている会計基準があるリース取引に係る会計基準」参照)。

なお、法形式を重視する会計はドイツおよびドイツを範にした商法会計の日本ですが、ドイツは2005年の欧州連合の国際会計基準適用に伴って「国際会計基準適用国」となりますので、日本は確実に孤立することになります。なお、上記表は、欧州連合が2005年に国際会計基準を適用すると比較する意味はなくなり歴史的遺物になるでしょう。

参考:日本が範としたドイツの現状2005年より国際会計基準適用


ドイツでは、1998年5月、
独立したプライベート・セクターの会計基準設定機関としてドイツ会計基準委員会(DRSC) を設立。ドイツ語名は、Deutsches Rechnungslegungs Standards Committee (DRSC)、英語名は、German Accounting Standards Committee (GASC)としている。

日本では、
ドイツに遅れること3年余りの、2001年7月26日金融庁所管の公益法人として、財団法人 財務会計基準機構(FASF)の設立認可を受け、企業会計基準委員会(Accounting Standards Board, ASB)8月7日正式に発足した。

ドイツのDRSCの創設の背景は下記の研究成果が詳しい。:
1999 年10 月、日本銀行金融研究所古市峰子女史著「会計基準設定プロセスの国際的調和化に向けたドイツの対応・・プライベートセクターによる会計基準設定と立法・行政権との関係を中心として・・」 参照。
豊橋創造大学井戸一元教授著「ドイツの財務報告」(2001年)参照。

ドイツ取引所では、2003年より、上場会社を@プライム基準(最も優れている基準Prime Standard)とAゼネラル基準一般基準General Standard)との二つの基準に区分した。@プライム基準は、国際会計基準または米国会計基準での財務諸表の開示、四半期報告書の開示等を求め、Aゼネラル基準ではドイツ商法の基準で良いとするものである。すでに、ドイツを代表するDAX30社のほとんどは国際会計基準ないし米国会計基準での開示が行われている。 ドイツを含む欧州連合(EU)のすべての上場会社は2005年から国際会計基準で作成した財務諸表の開示が求められている。(マーケットの新たな構造 参照)

ドイツ取引所の電子情報開示:
ドイツ取引所へ上場している会社の情報は、単純明解に電子情報として入手できます。例えば、DAX30社の会社情報を入手するには、「会社情報」にアクセスし、見たい会社(フォルクスワーゲン社を例とすると)フォルクスワーゲンをクリックするとフォルクスワーゲン社の情報一覧が表示されます。次に、年次報告書および四半期報告書を見たい場合は、報告書(Report)をクリックすると、株主宛て年次報告書、四半期報告書の一覧が表示されます。該当の財務諸表をクリックするとPDFファイルで簡単に閲覧・ダウンロードできます。ちなみに、年次報告書を見ると、フォルクスワーゲン社は2000年まではドイツ商法による会計でしたが、2001年から国際会計基準(IAS)に変更しています。

(4)専門家インフラストラクチャーProfessional Infrastructure)では日本は脆弱

会計が最善の実務(best practice)として普及し定着するには、会計専門家の質・量とも重要な要素となります。 透明度の高い優れた財務諸表最善の実務として作成されるためには、高品質(high quality)な会計基準を習得した人によって作成され、かつ、高品質な会計基準および監査基準に習熟した人によって監査されることが必要です。会計・監査基準を最善の実務として効果的に定着させるためには、専門家がインフラとして必要となります。

2005年3月末で、日本の公認会計士は約1万5千人、会計士補が約5千人合計2万人で、他の国と比べて非常に脆弱な状況にある。会計士のほとんどが監査法人ないし独立した会計士である。(日本公認会計士協会会員数・日本公認会計士協会調べ 参照)。 日本の人口は2000年現在で1億27百万人。人口比で会計士の数を国際比較しても日本は極端に少ない。加えて、日本が経済大国であることを加味すれば益々少ないことになる。

平成14年(2002年)12月17日、金融庁所管の金融審議会公認会計士制度部会は「公認会計士監査制度の充実・強化」と題する報告書の中で、公認会計士の量の問題として「例えば、平成30年(2018年)頃までに公認会計士の総数が5万人程度の規模となることを見込み、年間2,000名から3,000名が新たな試験合格者となることを目指しつつ、公認会計士試験制度の見直しと運営を行うことが考えられる」として試験制度の改革を行っている(改正試験制度は2006年1月1日施行)。   
公認会計士試験は金融庁(旧大蔵省)が行ってきましたが、2004年4月から金融庁所管の公認会計士・監査審査会が行うことになりました。


会計先進国である米国の例では、米国公認会計士の数は、2003年末で33万人である。米国公認会計士協会(AICPA)年次報告書(下記参照)によると、33万人のうち、約13万人(38.4%)が会計事務所で就業または独立している。残る約20万人(61.6%)は企業、教育、政府部門等に就業している。企業等では、内部監査、コントローラー、CFOその他に従事し、内部統制の整備・充実、コンピュータ・システム構築、税務など多岐に渡って貢献しており、専門家インフラストラクチャー(Professional Infrastructure)は充実している。参考に、下記は米国公認会計士の就業状況である。米国の人口は2000年現在で2億83百万人。

米国公認会計士統一試験は、AICPAが行い、2004年4月よりコンピュータを使用して行う。紙と鉛筆の試験は2003年11月が最後でした。
AICPA試験の受験生数は公表されておらず不明でしたが、「2009年には約9万3000人が受験しました。これまで最大の数字です」との記事が目に飛び込んできました。

米国公認会計士の統計
1987年 1995 2000 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2014年 2016年
Total AICPA Membership
(excluding student and other affiliates)
米国公認会計士協会会員合計
(学生及びその他関係者を除く)
254,910 323,779 337,454
327,135
330,525
334,372
338,687
342,562
348,051
352,297
365,466
375,659
Public Accounting 会計事務所に従事 47.60% 40.70% 39.4% 39.2% 40.3% 41.5% 42.0% 43.6% 42% 45% 46% 47%
Business & Industry 企業 39.50% 41.70% 46.4% 42.9% 42.8% 42.3% 41.6% 43.1% 42% 38% 36% 34%
Education 教育界 2.80% 2.40% 2.3% 2.4% 2.4% 2.3% 2.3% 2.2% 2% 2% 2% 2%
Government 政府 3.40% 4.40% 4.2% 3.9% 3.9% 3.7% 3.5% 3.4% 3% 3% 3% 3%
Retired & Miscellaneous 退職その他 6.70% 10.90% 7.7% 11.6% 10.6% 10.2% 10.6% 7.7% 11% 12% 13% 14%

Membership in Public Practice

会計事務所に従事している会員

121,349

131,887

132,943
128,292 133,379 138,830 142,249 149,395 154,941
Firms with one member 個人事務所 25.60% 23.20% 21.8% 23.0% 22.2% 21.3% 21.3% 21.6% 18%
Firms with 2 to 9 members 会員2人から9人の事務所 34.00% 36.50% 34.1% 31.6% 31.o% 29.7% 27.2% 27.3% 26%
Firms with 10 or more members,
except the 25 largest firms
会員10人以上25人未満の事務所 15.50% 20.40% 22.8% 24.7% 24.4% 23.3% 23.4% 23.2% 22%
25 largest firms 会員25人以上の大型事務所 24.90% 19.90% 21.3% 20.7% 22.4% 25.7% 28.1% 27.9% 34%
New members 新会員 12,648
*エンロン事件でサーベンス・オクスリー法が成立した2002年には、新会員が15,655人に増加した。

米国の大学卒業者の雇用状況2005年大学卒業者就職状況予測・雇用の多い順の20社の中には、会計事務所またはコンサルティング会社のPricewaterhouseCoopers--3,170人、Ernst & Young LLP--2,900、KPMG--2,240、Accenture--1,540(旧アーサーアンダーセンのコンサルティングを分割)、Grant Thornton--500人が含まれている・・ミシガン州立大学調べ」 「[College Grad.Com]もトップ・エンプロイヤーについて同様の内容を報告している」  参照

米国労働省労働統計によれば、2004年に会計及び監査(Accountants and Auditors)に従事している者は、無資格者を含めて1.2百万人としている。

欧米においての会計に関する就業状況(Accounting jobs)は、内部統制上、担当者の責任と権限を分離(segregation of duties)することもあって、会計の内容と就業者は多岐に渡る。最高財務責任者(CFO)、コントローラー(Controller)、会計取締役(Director of accounting)、内部監査人(Internal auditor)、簿記係り(Bookkeeper)、税務会計係り(Tax accountant)、買掛金係長(Accounts payable supervisor)、売掛金係り(Accounts receivable clerk)、与信課長(Credit manager)、給与担当係り(Payroll clerk)、原価計算係り(Cost accountant)など、求人側は、経理の具体的な仕事内容によって募集する。
求人側は、ポジション(Title)、行ってもらう具体的仕事内容を「Job description」または「Duties & Responsibilties」、必要な資格や経験(Requirement or Experience)などを明らかにする。日本のように単に「経理募集」として求人することはない。(「欧米の経理担当募集サーチ」「サンフランシスコ・港地域の経理募集」「英国の経理担当者募集サーチ」「米国の会計専門家の資格」参照)

欧米の監査経験のある公認会計士は、企業に転出するばかりでなく、会計士としての業務の範囲は広い。日本の公認会計士も、監査経験豊富な会計士は、いつまでもルーキーと同じ仕事をせず経験を生かしてもっと高度な仕事を開拓してその仕事につけ!
@上場会社の監査のほかに非上場会社の任意監査がある。日本は会社法、金融商品取引法による法定監査に限定されているが任意監査の道を開くべき
A上場会社のコーポレートガバナンス規定により、日本以外は、独立取締役のうち監査委員は財務専門家を最低一人選任することを求めている。
B国際会計基準26号「退職給付制度の会計と報告は企業年金自体の会計報告を規定し監査報告の基礎を与えている。
C「合意された手続き(Agreed Upon Procedures)」などの基準に沿った地方自治体等の内部統制のチェックやロイヤルティのチェックなどのが行われる。
Dボンド入札制では、リビュー(Review)やコンピレーション(Compilation)による財務諸表が利用されている。
E英国、オーストラリア、カナダなどで、事業再生による私的整理や法的整理に倒産実務家(Insolvency Practitioner、会計士や弁護士がなる)が活躍している。(「イギリスの企業倒産手続きの構造と会社法の接点」by中村弘雄慶応大学教授、「事業再生ADRに関する一考察」by杉本究氏、内閣府平成17年度「各国の事業再生関連手続き」「概要」参照)
Fニューヨーク州の財務諸表監査は会計監査人が行う。同様に、連邦政府の司法省の財務諸表監査についても会計監査人が行う。公会計基準が整備され行政府の財務内容の透明性が高く、その、信頼性のチェックに会計監査が行われている。内部統制の評価についても監査意見を求められている。

一方、経済発展途上にある中国では、アジア開発銀行が纏めた「中国における財務管理およびガバナンス(governance)」の「第3章専門家インフラストラクチャー」によると、中国公認会計士協会(CICPA、the Chinese Institute of Certified Public Accountants、1988年創設)の歴史、制度、現状などが紹介されており、1999年12月31日現在で約13万5千人(会計事務所実務家6万人、会社等就業者7万5千人)の個人と4800の会計事務所がCICPAのメンバーとなっており、2010年までに個人の会計士は20万人になると予測している。 公認会計士の就業状況は米国に類似している。中国の人口は2000年現在で12億75百万人。

参考:主要国の会計士の数 
専門家インフラストラクチャー(Professional Infrastructure
人口 会計士協会等 会計士の数(人) 上場会社数
日本 127百万人 日本公認会計士協会・・・・17,791名(2007年末) 17,246名・公認会計士の数2006年末
合格者統計・・公認会計士試験コミュニティ
2005年公認会計士の税理士登録数・・6,709名(国税庁統計年報平成19年版より)
公認会計士
総数
割合 うち
税理士登録者
差引
監査従事
公認会計士
A B/A B A-B
2005年末 16,245 41% 6,709 9,536
2006年末 17,246 40% 6,829 10,417
2007年末 17,791 39% 6,888 10,903
2008年末 18,881 37% 6,978 11,903
2009年末 19,935 36% 7,113 12,822
2010年末 21,285 35% 7,372↑ 13,913
2011年末 22,938 34% 7,706↑ 15,232↑
2012年末 24,733↑ 33% 8,063 16,670↑
2013年末 26,260↑ 32% 8,422↑ 17,838↑
2014年末 27,313↑ 32% 8,727↑ 18,586↑
2015年末 28,160 32% 9,004 19,156
2016年末 29,305 32% 9,315 19,990
 2017年末  30,368 32%  9,631 20,737 
 2018年末  31,214  32%  9,880  21,334
注意:監査を行うのは自然人である公認会計士、上記には監査法人を数に含めていません。
2010年に純増259人と例年より100人以上税理士登録が増えているのは、
新日本監査法人が400人の希望退職者
を募ったことによると思われる。

参考:
「2009年3月期監査報酬の調査報告」by日本公認会計士協会
2008年度上場会社の監査報酬の日米比較」by日本公認会計士協会
監査実施状況調査」by日本公認会計士協会
公認会計士の数 2005年12月末現在
16,245
(内税理士登録数6,709)
4,245
会社法の法定監査会社は、約10,000社
在日外資系の会社数
4,276社
米国 298百万人
人口時計 
米国公認会計士協会・・・・アニュアル・リポートに会計士の数が記載されている
American Institute of Certified Public Accountants・・2003年度末現在
335,111 5,295
英国 59百万人 Institute of Chartered Accountants in England and Wales、ICAEW 勅許会計士
Institute of Chartered Accountants of Scotland, ICAS         勅許会計士"CA"
 -------------
 合計 イングランド・ウエールズは2003年、スコットランドは2002年

英国財務報告評議会(FRC)がまとめた英国における勅許会計士等の現状と傾向
2005
」では、監査資格を持つ下記6団体の会員合計は約25万人
Association of Chartered Certified Accountants (ACCA)
Chartered Institute of Management Accountants (CIMA)
Chartered Institute of Public Finance and Accountancy (CIPFA)
Institute of Chartered Accountants in England and Wales (ICAEW)
Institute of Chartered Accountants in Ireland (ICAI)
Institute of Chartered Accountants of Scotland (ICAS)・・トゥイディIASB議長がICASの副議長へ
125,642
15,166
--------
140,808



2,311
アイルランド 3.9百万人 Institute of Chartered Accountants in Ireland (ICAI) 13,000 55
2004年11月に議会の承認後、EUの新市場担当コミッショナーとなるチャーリー・マクリービー氏(Charlie McCreevy)はアイルランド勅許会計士出身の政治家で財務大臣。(EU速報 EU速報・ティームメンバー ICAI速報 参照)
チャーリー・マクリービー氏の任期は2009年末まで。
カナダ 30百万人 Canadian Institute of Chartered Accountants(2002年のデータ) 68,000 1,340
ドイツ 82百万人 Wirtschaftsprufer(Statutory auditor 経済監査士・上場会社監査人)
Wirtschaftspruferkammer,WPK(経済監査士会・公共会計士会)に
よると2004年度では、メンバーは19,000人弱となっている。
約19,000
660
フランス 59百万人 OEC (2003)・・Experts Comptables 専門会計士
CNCC (2003)・・Commissaires aux comptes 会計監査人
すべての法定監査人はCNCCに登録することが義務付けられている。
したがって、OECとCNCCは重複登録されている。
17,464
18,470
1,046
フランスの出展は、国際会計士連盟(IFAC)の60カ国超の調査結果「各国会計士団体からの報告書(2003年)」より
欧州会計士連盟
FEE
540百万人 FEEは欧州32カ国の44会計士団体から構成される欧州連合の団体。
会計士の約45%が会計事務所で、55%が産業界等に従事しているとしている。
500,000 7,000
中国 1,275百万人 CICPA、the Chinese Institute of Certified Public Accountants
1999年12月31日現在の中国の公認会計士の人数です。

2012年現在の中国の公認会計士は約25万人。2017年までに30万人を目指している。
135,652 1,285
上記、上場会社の数は、取引所世界連盟(World Federation of Exchanges)の外国会社を除き国内会社の数値を引用した(2003年のデータを使用)。
ただし、日本は東証、大証にジャスダックを加え、重複上場は差し引いていない。上記日本の上場会社合計4,245社は、EDINET登録が義務化された2004年6月現在のEDINET登録会社4,426社とほぼ匹敵2005年10月20日金融庁の「わが国における実態」の8ページの資料には証券取引法適用会社は2004年3月末で4,658社(うち上場会社は3,770社)とし、商法特例法の監査対象の大会社は10,084社としている。2006年度では、金融庁は、上場会社数は3,932社としている
2007年4月1日以降開始された公認会計士協会の「上場会社監査事務所登録制度」によれば上場会社は約3,800社・大企業は5,500社としている。日本には正確な統計を公表しているところはない。
米国は、ニューヨーク証券取引所、アメックスにナスダックを加えたもの。フランスは、ユーロネクストの数値を使っておりベルギー、オランダが含まれている。
会計士の数を、上場会社の数で割ってみるといかに日本の会計士の数が少ないかお分かりいただけるのではないでしょうか。
会計士の数 上場会社の数
国内会社のみ
上場会社1社あたり
会計士の数
(A) (B) (A)/(B)
日本 16,245
(内税理士登録数6,709)
4,245 3.82人

←極端に少ない

会社法の法定監査会社1万社を入れるともっと少なくなる。
証券取引法適用会社を含む、商法特例会社の監査対象大会社は10,084社とすると1社当たり1.61人の会計士となる。
金融庁調べの「会計士監査をしている会社数約14,900社」とすれば1社当たり1.09人の会計士となる。
(監査義務ある会社の内訳・・上場会社約3,900社、金商法開示会社約1,000社、会社法大会社約10,000社=14,900社)
加えて、在日外資系企業の4276社(2005年)のうち半数が監査をしていれば、1社当たり0.95人となる。
(JETRO平成16年度外資系企業雇用調査参照)
 (2010年末時点で上場会社は3646社  世界の上場会社数
欧米が連結財務諸表ひとつに監査報告書を作成するのに対し、日本は、会社法の@個別計算書類、A連結計算書類、
証券取引法の@個別財務諸表、A連結財務諸表の四つの監査報告書を作成する必要がある。重複開示による重複作業が多い。
2005年公認会計士の税理士登録数・・6,709名(国税庁統計年報平成17年版より)

税理士登録者の多くは、税理士業務を主体とし監査に従事していない。
米国 335,111 5,295 63.29人
英国 140,808 2,311 60.92人
ドイツ 約19,000 660 28.78人
フランス 18,470 1.046 17.65人 ユーロネクストの上場数はベルギー、オランダ含む
欧州連合 500,000 7,000 71.42人
中国 135,652 1,285 105.56人

大手監査法人に従事する公認会計士の数
監査法人
トーマツ
あずさ
監査法人
新日本
監査法人
あらた
監査法人
大手監査法人
合計
2007年12月末日現在 割合
提携先法人 デロイト KPMG E&Y PwC
国際基準(IFRS)による情報開示 デロイト英国 KPMG英国 E&Y英国 PwC英国 ⇒英国のみ開示
公認会計士 2,016 1,799 2,288 595 6,698 39.3%
会計士補 977 745
論文試験合格者 968 921 344
論文短答試験合格者 272
小計 4,233 3,465 不明 939
その他 1,083 1,054 619
職員合計 5,316 4,519 5,639 1,558 17,032 100.0%

上記日本の4大監査法人合計の人員構成で、米国アーンスト・ヤングとほぼ等しい。「日米会計事務所の比較」参照


平成19年(2007年)12月7日交付の改正公認会計士法による大手監査法人の情報開示の義務付けがされた。
法人のホームページを見ると、公衆縦覧について“として、「あずさ監査法人は、公認会計士法第34条の163の規定に基づき、当法人の業務及び財産の状況に関する説明書類全国各事務所に備え置き、公衆の縦覧に供しています」として、事務所に閲覧に出向かなければならなずWeb上での情報開示はしていない。情報開示をプロの業務としている者としてその開示の姿勢が悲しい。
上記
英国が、@国際会計基準(IFRS)で財務諸表を作成し、AWeb上に情報公開しているが、情報開示のプロとしてIFRSで財務諸表を作成してIFRSでの作成能力を実証したら事務所の評価が上がるだろうに・・・もったいない話である。

監査に従事している公認会計士の数推定値の計算;
2005年公認会計士の数 (最近の数値は日本公認会計士協会のHP 参照) 上記より 16,245 100%
差引;2005年公認会計士で税理士登録している数・・増加中 上記より (6,709) -41%
差引き監査業務に従事していると想定される人数 9,536 59%
大手監査法人に従事する公認会計士の数 上記より 6,698 70.2%
その他中小監査法人等で監査に従事している公認会計士 2,838 29.8%
     監査業務に従事していると想定される人数 9,536 100.0%
上場会社等の数・・下記参照 4,245
上場会社一社当たり従事する公認会計士の単純平均人数 /B 2.2
注意:
・公認会計士の数について2005年と2007年が混在しています。2年間で約1500人の会計士が増加していますが調整していません。

上場会社の数: 2007年4月1日以降開始された公認会計士協会の「上場会社監査事務所登録制度」によれば上場会社は約3,800社・大企業は5,500社としている。

2005年10月20日金融庁
の「わが国における実態」の8ページの資料には証券取引法適用会社は2004年3月末で4,658社(うち上場会社は3,770社)とし、商法特例法の監査対象の大会社は10,084社としている。2006年度では、金融庁は、上場会社数は3,932社としている

なお、外国の会社で日本に進出した子会社(数千社・・東洋経済の外資系企業データでは約3,500社)について外資系会計事務所の日本事務所は国際基準で監査しており上記上場会社の数に含まれていない。


監査担当の監査法人ごとの上場会社は「監査法人採用準備室」が纏めている。

2009年の公認会計士試験合格者2229人のうち約700人が監査法人に就職できなかったことから、「公認会計士制度に関する懇談会」を開いた金融庁は、「平成22年以降、当面の合格者数については、金融庁としては、合格者等の活動領域の拡大が進んでいない状況に鑑み、懇談会のとりまとめを踏まえた所要の対応策が実施されるまでの間、2千人程度を目安として運用されることが望ましいものと考える」との予定稿を表明している。
なお、4大監査法人から意見を聴取しているが、4大監査法人すべてが揃ってパートナー、シニア・マネージャー、マネージャー、シニア、スタッフという米国や英国の4大会計事務所(ビッグ・フォー)と同じ英語のタイトル(あらた監査法人・PwCのアソシエイトがユニーク)にしている。嘗ては、社員、主査などと言っていた。なお、2010年6月に結論を出すそうだ。監査法人に古参が水膨れとなっていないのか?例えば、10%が水膨れと考えると700人の新人が必要となる。

参考:
年功序列組織である大手監査法人の矛盾

税理士登録者数国税庁統計年報平成17年度版258ページより
公認 試験 試験 資格 税務 特別試験 特例法 税理士
弁護士 会計士 合格者 免除者 認定者 代理士 合格者 認定者 合計
平成12年度 2000年 327 5,595 27,736 12,181 246 414 18,637 8 65,144
平成13年度 2001年 326 5,663 28,372 13,029 209 374 17,993 7 65,973
平成14年度 2002年 330 5,781 28,955 13,935 174 327 17,165 7 66,674
平成15年度 2003年 343 5,887 29,476 14,949 135 279 16,305 6 67,380
平成16年度 2004年 347 6,528 30,097 15,832 111 247 15,474 6 68,642
平成17年度 2005年 356 6,709 30,592 16,653 96 215 14,616 6 69,243
平成18年度 2006年 361 6,829 31,233 17,520 80 194 13,845 6 70,068
平成19年度 2007年 370 6,888 31,710 18,593 61 166 12,870 6 70,664
平成20年度 2008年 379 6,978 32,141 19,679 49 139 11,809 3 71,177
平成21年度 2009年 399 7,113 32,563 20,685 33 117 10,694 2 71,606
平成22年度 2010 445 7,372 33,053 21,296 21 101 9,749 2 72,039
平成23年度 2011年 464 7,706 33,366 22,183 15 81 8,819 1 72,635
平成24年度 .2012年 491 8,063 33,814 22,244 13 64 8,035 1 73,725
平成25年度 2013年 522 8,422 34,032 24,297 12 48 7,167 1 74,501
平成26年度 2014年 545 8,727 34,321 25,176 10 37 6,328 0 75,146
平成27年度 2015年 574 9,004 34,531 26,016 4 26 ↓5,488 0 75,643
平成28年度 2016年 622 9,315 34,746 27,036 3 15 4,756 0 76,493
平成29年度  2017年  637  9,631  34,914  27,953  13  4,178  0  77,327 
平成31年度  2019年   662 9,880  35,013  28,830   2 3,636  78,028 
管轄は税理士は財務省・国税庁、公認会計士は、金融庁でそれぞれ管轄が異なり双方を横断した監理が
されていない縦割り行政である。税理士・会計士の両協会も縦割り行政に沿っており総合的な視点はない。
今後も公認会計士の税理士登録は増加の一途を辿ろう。

2004年に641人の公認会計士が税理士に登録して急増しているのは、平成13年の税理士法改正により、
”税理士登録しないで税理士業務が行える「許可公認会計士」の制度が廃止され”税理士登録が必要と
なったため。

2010年に純増259人と例年より100人以上増えているのは、新日本監査法人が400人の希望退職者
を募ったことにより税理士登録した公認会計士がいたと思われる。平成22年度末で公認会計士の
税理士登録者は、初めて10%を超えた。
なお資料によると会計士からの新規登録は405人(前年は297人)となっており純増259人は登録抹消146人の差し引きである。

2011年9月末でト−マツ440人希望退職募集。 平成23年度(平成24年3月末現在)72,635人となり前年度
から純増合計596人となった。
内、公認会計士の新規登録は498人ということだ。

なお、財務省「平成19年再就職状況の公表についてに記載された税理士が上記特別試験合格者
であるが、実態は試験免除者のようなもの。税務署長が税理士へ。上場会社には、国税OB税理士が顧問
でいる場合が見受けられる。一種の天下り。
なお、2011年7月、ZAITENの記事によれば「国税出身税理士・顧問先斡旋制度廃止」されたようだ。

参考:国税庁「平成13年(2001年)税理士法改正のあらまし税理士制度」by日本税理士連合会
TPP とFTA そして税理士制度」・・日税連規制改革対策特別委員会委員長冨田光彦氏(平成24 年10 月15 日)
(TPP 参加国の中で税理士制度を有する国はベトナムのみである。つまり
我が国で税理士の独占業務とされる税理士業務は他国では誰でもできる自由業務、
あるいは税理士・弁護士・公認会計士資格の名称独占業務となっている


上記の分析は、監査時間の不足を指摘されている日本の現状を示しているものと言えよう。日本の監査が信頼されるためにも人員の確保は不可欠だ。また、近年国際的な批判に対抗するため国際的な人材を求める声が多いが、「数も力なり」人員の確保なくしては困難である。

金融庁の公認会計士監査制度の充実・強化(2002年12月17日)計画では、「平成30年(2018年)頃までに公認会計士の総数が5万人程度の規模となることを見込としていますが、5万人現在の上場会社の数4,245で割っても上場会社1社あたり11.77人しかなく現在のドイツの約半分以下ですし、現在のフランスより少ない。5万人とする根拠は明らかにされていない。会計・監査のビジョンさえ明らかではなく、金融庁には「プロフェッショナル・インフラストラクチャー(Professional Infrastructure)」という概念は持ち合わせていないようである。(金融庁「公認会計士・監査審査会」 H18年3次試験合格者 合格者統計・・公認会計士試験コミュニティ  2006年(平成18年)度合格者調べ 参照)

会計基準や監査基準(内部統制)が書面で整備されても、それを機能させるプロフェッショナルの存在(インフラ)が無ければ効果的に機能しない。プロフェッショナル・インフラストラクチャーとは、制度を効果的に機能させるための専門家のインフラである。独立監査人の会計士に限らず、財務報告作成者側の企業にも会計士がいることで財務報告の正確性・信頼性が促進される。特に高度化・国際化する会計の世界には、企業側の作成者や内部監査人、取締役会の監査委員会委員に会計士が就任することは必要なインフラと考えられている。

コーポレート・ガバナンスなどで「ベスト・プラクティス(Best Practices 最良の実務)を導入し従っている」などとされる場合、ベスト・プラクティスは、実務の中のプロフェッショナル・インフラストラクチャーからより良いものが生まれてくる。

⇒上記国策を背景に、改正公認会計士法が2003年5月30日に成立し、2006年度(平成18年度)から新しい公認会計士の試験が始まるのを受けて2005年4月開校した「会計専門職大学院」の検索結果「 Google 」参照

一方、金融庁は、2004年8月26日、「平成17年度機構・定員及び予算要求」によれば、体制整備を早急に図る必要があるとして、200人増員予算要求し1400人体制とするとしている。また、同日、「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方」(案)」が公表され、2005年3月、「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方」が公表され、官による管理体制のみが強化される。
公認会計士の監査を監視する金融庁の「公認会計士・監査審査会」 参照。
2004年12月24日の「金融庁の平成17年度機構・定員及び予算について」によると、109名増員して平成17年度末で総員1,294名(証券取引等監視委員会および公認会計士・監査審査会を含む)としている。
2005年8月、金融庁の「平成18年度概算要求の概要」によると、190名の増員を要求し、2007年3月末には、1,500人(=1,294+190)近い体制になる。
2006年12圧25日の「金融庁の平成19年度機構・定員及び予算について」によれば平成19年度末で1,373人としている。17年度末1,294人、18年度末で1,340人となっている。

2005年2月9日、金融庁公認会計士・監査審査会は、「品質管理レビューの一層の機能向上に向けてー日本公認会計士協会による品質管理レビューの実態把握及び提言-」を公表した。
提言を見ると、日本公認会計士協会の平成15年度の「品質管理レビューチーム」は7名(延べ1,021日参考資料参照)、一方、金融庁の公認会計士・審査会の「品質管理リビュー」の審理の事務局約10名公認会計士・監査審査会の会長含めて委員10名の合計約20名というように審理・審査の陣容のほうが大きいのには驚かされる。
提言では、「求められる対応・・品質管理レビュー制度導入時の平成11 年度において6名体制であったレビューアーが、段階的に増員されて平成16 年度は10 名体制となったとはいえ、依然として十分な人的資源を確保していると評価することが困難な状況が継続している。今後の品質管理レビューを実施する体制強化が不可欠である。協会で設けられるレビューチームの人員の増員強化を今後継続して図ることが必要である。」としている。

2005年9月16日
日本公認会計士協会は、カネボウの粉飾決算に関与したとして監査法人の公認会計士が逮捕された問題で、監査の質をチェックする担当者の増員などを柱とした再発防止策をまとめた。具体的には、「レビューアー」と呼ばれる監査の品質管理の担当者を現在の10人から20人に倍増する。企業の情報システムの高度化を踏まえ、情報技術(IT)の専門家を新たに登用する。(2005年9月17日3時5分  読売新聞)「会長声明「カネボウの粉飾決算について」(平成17年9月16日付)(PDFファイルA4版3頁)」参照

会計士の日本での公の地位
2003年1月29日付、日本経済新聞のインタビューに自民党企業会計に関する小委員長である塩崎衆議院議員が応えて「現在の金融庁の体制では人員数も専門性も不足している。担当部署である金融庁総務企画局企業開示参事官室には22人しかいない。このうち会計士資格者はたった2人だという。これでは企業の決算や監査の中身を十分チェックできない。」としている。

東京CPAニュース2006年1月号には、金融庁企業開示課の会計士が「いま金融庁におそらく30人から40人会計士がいます」と発言している。2003年から急速に会計士を臨時職員として雇用しているようである。(金融庁の”職員”採用情報 参照) 金融庁官僚の隠れ蓑にならないよう期待する。米国では会計検査院(GAO)委員長(任期15年)はCPAで元アーサー・アンダーセン会計事務所のデビッド・ウォーカー氏David M. Walker )であり、SECの新たな主任会計士は元E&Yのマネージング・パートナーである会計士コンラッド・ヒューイット氏Conrad W. Hewitt)であり、公開会社会計監視審議会(PCAOB)の新議長マーク・オルソン氏は連邦準備制度理事会(FRB)理事、銀行協会委員長、を歴任したが元アーント&ヤングのパートナーである。欧州では、EUの市場担当コミッショナーであるチャーリー・マクリービー氏(前アイルランド財務大臣、アイルランドの勅許会計士)、John Tiner氏はCESR-Finの議長で、英国FSAのチーフエグゼクティブ、英国のアーサーアンダーセン出身の英国勅許会計士など責任ある地位にいるが、日本にはまだいない。

2006年1月23日、東京地方検察庁はライブドアの社長以下4名を証券取引法第百五十八条(偽計取引、風説の流布)の疑いで逮捕した。本来であれば、金融庁の証券取引等監視員会仕事の内容 参照)が検察庁へ告発するという仕組みであるが、地検が直接捜査逮捕を行ったことで、証券取引等監視員会の役割を米国SECなみに強化しようという動きが出ている。(ニュース 参照)

2005年3月16日、金融庁金融審議会の議事資料として「日本の金融庁、米国SEC、英国FASの人員比較(2004年/2005年)」が提出されており、日本の陣容は、金融行政が英米に比較して、会計士の数同様、手薄になっていることが判る。

2006年年4月26日開催の金融審議会公認会計士制度部会議事次第資料1-2 監査法人制度等をめぐる状況等について(PDF:677K)によれば、平成17年度末で上場会社数は3,779社となっている。この数値は、金融庁のみ把握しているもの。ただし、商法特例会社の監査対象大会社は10,084社であるが金融審議会の資料には含まれていない。平成17年3月現在、6,662人の公認会計士が4大監査法人に従事し、公認会計士総数16, 222人の41%である。

粉飾決算、監査法人にも刑事罰を 証券監視委が建議・・・証券取引等監視委員会は21日、カネボウやライブドアの粉飾決算事件を踏まえ、不正にかかわった公認会計士個人だけでなく、所属監査法人に対しても刑事責任を問えるよう、必要な法改正を求める建議(意見書)を金融庁長官に提出した。金融庁は、26日に開く金融審議会(首相の諮問機関)で監査法人改革の論議を本格化する予定で、会計士と法人の「両罰規定」導入についても具体的な検討に入る。」(朝日新聞2006年04月21日)

「金融庁は、監査法人に厳しい監査姿勢を求めるため刑事罰の導入を模索してきたが、最終的には〈1〉刑事罰を受けた監査法人に監査を頼む企業はないとみられ、実質的な解散命令に等しく厳罰過ぎる〈2〉虚偽証明罪という罪を新設する必要があり、監査法人を狙い撃ちにした過度な対応だ――などの意見が優勢となり、見送ることになった。」(2007年2月7日3時1分  読売新聞

米国会計事務所の実態と日本の監査法人

2003年7月、米国会計検査院(GAO)は、エンロン事件でビッグ・ファイブの一つアーサーアンダーセン会計事務所が消滅し顧客企業が他のビッグ・フォー(デロイト・アンド・トゥシュ、アーンスト・アンド・ヤング、プライスウオータークーパー、ケーピーエムジー)へ監査人を変更すると同時に巨大会計事務所が四つに減少することでの影響を調査し議会へ「会計事務所・・整理統合と競争の研究PUBLIC ACCOUNTING FIRMS・・Mandated Study on Consolidation and Competition)」をまとめて報告している。(参考:検索結果

その報告書から米国会計事務所の経営内容は、一部を抜粋すると以下の通りである。(注意:4大会計事務所のホームページには年次報告書が公表されているが全世界を含めています。下記は、米国のみを対象としているものです。・・全世界規模では一桁収入が増えます→例えば、KPMGの2006年9月決算の全世界収入はUS$16.9 Billionと公表しています。この数値には、日本の「あずさ監査法人」がKPMGのメンバー・ファームですので含まれているものと思われる。

Table 1: Twenty-five Largest Accounting Firms by Total Revenue, Partners, and Staff Resources (U.S. Operations), 2002

米国会計事務所 収入合計
百万ドル
監査報酬
百万ドル
税務報酬
百万ドル
コンサル
ティング
百万ドル
専門職 パートナー スタッフ合計 事務所
の数
日本の提携先
監査法人

(左記の数値には
含まれていない)
Deloitte & Touche $5,900 $2,124 $1,239 $2,006 19,835 2,618 22,453 81 監査法人トーマツ
Ernst & Young 4,515 2,664 1,716 0 15,078 2,118 17,196 86 新日本監査法人
PricewaterhouseCoopers 4,256 2,596 979 0 16,774 2,027 18,801 113 あらた監査法人
KPMG 3,200 2,016 1,184 0 10,967 1,535 12,502 122 あずさ監査法人
Grant Thornton (注1) 400 200 136 64 2,068 312 2,380 51 太陽ASG監査法人
BDO Seidman 353 145 145 64 1,229 281 1,510 37 三優監査法人
東陽監査法人
BKD 211 93 65 53 972 193 1,165 26
旧名称Crowe, Chizek and Co.
新名称Crowe Horwath International
205 45 37 88 936 101 1,037 12 優成監査法人(注3)
RSM/McGladrey & Pullen(注1) 203 187 16 0 1,894 475 2,369 86 清和監査法人(注2)
Moss Adams 163 64 62 37 758 179 937 25
Plante & Moran 161 79 45 37 714 161 875 15
中略
Berdon 54 20 19 14 289 38 327 2
Rothstein, Kass & Co. 50 39 11 1 303 16 319 4
Goodman & Co. 49 26 22 1 450 69 519 9
Schenck Business Solutions 48 16 16 7 267 41 308 12
(注1)グラント・ソントン監査法人RSMは英国で、2007年7月1日に合併。(Grant Thornton ニュース)
The merger of Grant Thornton and RSM Robson Rhodes was concluded on July 1, 2007.
(注2)2009年度中にRSMの日本の提携先は清和監査法人
(注3)2011年1月28日、国際会計基準(IFRS)の強制適用をにらみ、優成監査法人は世界9位
の国際会計事務所、クロウ・ホーワス・インターナショナル(CHI、本部ニューヨーク)と業務提携した。
(日経)

この表からは、いくつかの興味深い数値が並んでいます。米国ビッグ・フォーだけの監査収入合計は、94億ドル(約1兆円=1ドル111円換算)。(注意:米国ビッグ・フォーの専門職およびパートナー合計約7万人のうち公認会計士(CPA)は約2万人(会計士合計の約6%)です。上記、スタッフ合計には会計士試験を受験中のスタッフを含んでいます。監査マニュアル等が完備され上司の管理(調書のリビューなど)が行き届いており、オン・ザ・ジョブ・トレーニングが機能している。加えて、全員年間40時間のトレーニングが課せられています。資格を取得し監査経験を積むと、かなりの割合で企業の内部監査人、CFO、財務部長、コントローラーなどに転出しており、ビッグ・フォーは専門家を育て戦力とし、同時に実務を含んだ教育機関の要素も兼ね合わせているといえよう。

パートナーを含んだ専門職「スタッフ合計」は、一つの大手事務所で日本の公認会計士合計1万6千人を超えています。人数が少ないということは、監査実施時間(=監査基準に従って作業した時間)が絶対数不足していることを意味しています。ちなみに、上記の監査報酬は、「監査実施時間X監査人の1時間あたりの請求レート」を合計して請求されたものです。(日本でも欧米と同様に監査時間を重視するようになろうとしています⇒「監査時間の見積りに関する研究報告(中間報告)」(公開草案)2006年8月1日by日本公認会計士協会

作業時間数が多ければよいというのではなく、監査基準に従って実証監査(substantive test)のサンプル・サイズ(extent)を決め、求める監査証拠の強弱(nature)を決め、監査のタイミング(timing)を決める根拠となる内部統制の評価の際に準拠性のテスト(Compliance test)を行って内部統制が有効に機能しているかどうかを確かめなければならないが、この作業が行われてこなかったのではないかと危惧されるのです。(−監査時間の国際比較調査結果に基づく監査時間数増加の必要性−by日本公認会計士協会2004年9月 参照
参考:プライスウオータークーパーのPwC中国では、「現在6,500人規模で今年1,200人を雇用し、5年内に少なくとも1万人とするとしている」⇒これは、日本の4大監査法人の合計に等しい規模。

ビッグ・フォーの事務所運営について、一人あたりの収入を計算すると、デロイト・トッシュで29百万円(=59億ドル/22,453人X111円/1ドル当たりレート)、アーンスト・ヤングで29百万円(=45.15億ドル/17,196人X111円/1ドル当たりレート)、プライスウオータークーパーで25百万円(=42.56億ドル/18,801人X111円/1ドル当たりレート)、KPMGで28百万円(=32億ドル/12,502人X111円/1ドル当たりレート)である。収入の約三分の一が給与として還元され、三分の一が事務所賃貸料、研修費(7月、8月の暇な時期に、すべての専門職は1週間宿泊して年間40時間の研修が義務付けられている。研修コースが、ポジションに対応して、金融・保険など業種コースなど多くのコースが設けられ、研修資料も完備している。)など間接費に回され、残り三分の一が利益及び世界戦略の品質管理(全世界使用の監査マニュアル作成・各国相互間のピア・リビュー(peer review)など)やBRICsなどの新興国へ事務所開設の支援に費やされる。

勤務時間は、オーバータイムを除いて年間1,700時間くらい。仕事をしてクライアントへ請求できる時間をchargeable hours (またはbillable hoursといい年間約1,530〜1,540時間くらい)といい稼働率を如何に上げるかが重要となる。クライアントへは使用した時間に一人一人の1時間あたりの報酬レートを掛けたものが請求される。そのため、請求できる仕事をしていることを立証する根拠(仕事内容は監査調書・時間・報酬レート)を持っている。時間管理は、監査計画から行われ、何の作業に何時間と予測し積算する。実績の時間を記録し分析できるようになっている。顧客の求めがあれば説明できるようにしている。また、予定通りに仕事が出来ないで余分な時間を使用したスタッフは、特段の事情がある場合を除いて評価が下がるというように、スタッフの能力査定にも時間管理が利用される。

一方中小の事務所運営について、一人あたりの収入を計算すると、最下位のシェンク・ビジネス・ソリューションでは17百万円(=48百万ドル/308人X111円/1ドル当たりレート)、グッドンマンで10百万円(=49百万ドル/519人X111円/1ドル当たりレート)、ロススタイン、カスで17百万円(=50百万ドル/319人X111円/1ドル当たりレート)、モスアダムスで19百万円(=163百万ドル/937人X111円/1ドル当たりレート)となる。中小の事務所は、高い賃料の豪華な事務所はいらないこと、国内の事務所に限定され世界戦略への出費などがないことから報酬レートを低くしているものと思われる。

Public Accounting Report」には、米国の2005年トップ100会計事務所の経営内容の分析が掲載されている。上記数値と大差ないが、100位の中小事務所でも一人当たり18百万円の売上となっている。

一方、日本の監査法人については情報開示がされていませんが、唯一、中央青山監査法人(後に、"みすず監査法人"となり2007年消滅)が「2001年3月期の中央青山監査法人の業績」 を開示してくれています。それによると、次のようになります。

会計事務所 収入合計
百万円
監査報酬
百万円
税務報酬
百万円
コンサル
ティング
百万円
専門職 パートナー スタッフ合計 その他
スタッフ
合計
中央青山監査法人 \75,885 \35,224 \6,596 \34,065 1,546 366 1,912
1,714 3,626人

中央青山監査法人の一人あたりの収入は、監査だけでは、18百万円(=352億円/1,912人)関連会社の税務・コンサルティングを含めると、20百万円(=758億円/3,626人)となる。米国の中小の会計事務所よりも多少よく、大手の会計事務所には及ばないが健闘しているといえよう。ただし、上記ビッグ・フォーの収益および人数と比較すると中央青山監査法人(他の大手監査法人も同様)は約十分の一である。

公認会計士法第34条の16では、「監査法人は決算後2ヶ月以内に貸借対照表及び損益計算書、業務報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない」としており、情報は財務局(公認会計士法施行令12条1項2号)に提出することになっている。【「監査法人2008年にも情報開示義務付け・金融庁検討」(日本経済新聞 - 2006年8月27日とあり、法人が当局に提出していた財務情報は何のため?

日本で会計・監査が立ち遅れた原因は、国際的に比較してみると、金融庁(旧大蔵省)が主管する監査基準や会計基準の質と量の完成度に問題があることと、金融庁(旧大蔵省)がコントロールしてきた日本の公認会計士の人数が絶対的に少ないことにあることは明白である。

中央青山監査法人は、カネボウの粉飾で、金融庁から2ヶ月の業務停止の処分を受け、存亡の危機に立っている。心あるものは、中央青山だけが突出して審査体制が不備であるとは思ってはいない。日本特有の制度不備により生まれ、業務停止の制裁は、一罰百戒でスケープゴートにされた感は否めない。そもそも制度設計(会計・監査制度の企画・立案)は旧大蔵省・現金融庁(金融庁設置法」「金融庁組織令」参照)が行っているもの。根本から制度改革することが望まれる。

2006年5月10日金融庁は、「監査法人及び公認会計士の懲戒処分について」を公表し、カネボウ株式会社(以下「カネボウ」とする。)が作成した財務書類について、監査証明を行った中央青山監査法人及び同監査法人の関与社員に対し、監査法人に対しては、業務の一部停止2ヶ月(平成18年7月1日から平成18年8月31日まで)を行うと発表した。不備の中に、「B 投書への対応について、十分な仕組みが用意されていなかった。」としてる。4大手監査法人のホームページで「監査ホットライン」と称して投書の受け皿を一斉に出しているのは馬鹿げている。わざわざ「監査ホットライン」とはせず欧米のように「連絡先(Contact Us)」としてあらゆる事項について一般に門戸を開けていればよいことです。金融庁は、監査基準の完成度を上げて、会計士は地道に監査基準にしたがって仕事を遂行することが解決の道であろう。

他の4大監査法人の業績・人数は似たようなものとなっていると考えてよい。

参考:
監査ビジネス(4大監査法人)
・・かなり詳しい分析内容となっている。
Public Accounting Report」には、米国の2005年トップ100会計事務所の経営内容の分析が掲載。
米国のトップ100会計事務所(2007年)」には、現状の米国トップ100の会計事務所とのリンクがされている。
米国公認会計士(CPA)」には、米国の公認会計士(CPA)に関する最新ニュースが掲載されている。
Accountancy Age Top 50」には、英国のトップ50会計事務所の経営内容の分析があるがばらついている。
AICPAが紹介している「民間会社の実務部門2006年調査結果」には、米国の2006年と2004年の業績比較やパートナーなどの請求レートやリヤリゼーション・レート(Realization Rate・・請求している時間の割合で、パートナーで約6割、スタッフで約7割)が報告され興味深いものとなっている。

2006年5月29日第6回金融審議会公認会計士制度部会  議事次第資料2  諸外国の監査法人制度等の比較(PDF:267K) で日、米、英、仏、独、欧州連合(EU)の比較が掲載されている。金融庁の事務局の理解で纏めてあり首をかしげる部分も垣間見える。資料には、監査法人の収入に関する情報は掲載されていない。監督官庁である金融庁が、日本の監査法人の財務情報を把握していないのかも知れないし、握りつぶしているのかもしれない。日本の場合、監査報酬が低いとの議論があるにもかかわらず・・・その原因を探ることが日本の監査制度の欠陥が判るのにもかかわらず。

2007年3月23日金融庁・金融審議会第6回我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ資料に「市場行政におけるエンフォースメントについて」には上場会社の数3,932(平成18年度(2006年度))であるとか、証券監視委員318名、財務局監視官246名合計564名(2006年度)と急速に拡大している監視官の数などの資料が提供されている。

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