朝夕、めっきり冷え込み始めると山々は急速に色づき始める。
釣人のいなくなった渓はようやく静けさを取り戻し悠々として見えるが、
心なしか寂しげにも見える。

色づいた木々をわたる秋風。
深みには落ち葉と一緒にゆらゆら気持ち良さそうに泳ぐアマゴ。
いつまでも同じ場所から一向に動く気配が無い。
あきずに見続けている私に気づいたのか、やがてスーと深みに消えていった。

禁漁になった十月。
なにか物足りなさを感じながらも、竿を持たずに渓の遡行を楽しんでいると、
産卵を終えたと思える尺上のアマゴが弱々しく流れを下ってくる。
さらに上がると、砂れき底の流れにまた尺上のペアを見つけた。
まだ一度も手にしたことのない尺上にいともたやすく出会い拍子抜けであった。

禁漁期に入りしばらくすると、ふと渓に行ってみたいと思う。
静かな渓は春のうきうきした気分とは違って、なにか心を安らかにしてくれる。
流れの中では、新しい命への営みが展開されていると思う。

Autumn