待ちかねた渓魚との再会日、山里はまだ冬景色。
街道にさす日の輝きだけが芽ぶきの近いことを予感させてくれる。

まだ、日陰には雪が残る山里の早春。
ぽかぽか陽気の中、釣をしていると汗ばんだシャツから吸水しょうと
越冬から覚めたキベリタテハが、私のまわりにまとわりついてきた。

乳白色の雪どけ水もようやくおさまりかけ、岸辺の浅瀬が川底まで
見通せるようになると、７～８ｃｍの稚魚が無数に群遊ぶのが見られる。
岸辺に近づくと、いかにも驚いたというふうにあたふたと
好きかってな方向に黒い線となって逃げまどう。

フライにつぎつぎと無邪気に飛び出してくるのは
小型アマゴばかりで早々に納竿する。
まだ芽ぶいたばかりの山はだに点々と残る雪に、イワナの斑紋を連想する。
流れの音、土と芽ぶきのかおりが、豊かな気分にさせてくれる。

Spring