VT250 SPADA 整備 シート張替え

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シートの張替え






Synthetic Leather for VT250 SPADA Seat
タッカーと合皮。左は表面のアップ。天然革っぽいですね。
VT250 SPADA Seat Base and Urethane Sponge
シートベースとウレタン。ウレタンは加工することを検討したため前後にカットしていますが、貼り直すだけなら不要です。
VT250 SPADA Seat Lether
シート表皮の加工。前だけ合わせて、あとは現物合わせ。
VT250 SPADA Seat
上は前後のみ留めた状態。下は完成後。新品並です。ビフォー・アフターですが、写真の合成は下手ですね。
VT250 SPADA Seat Belt
上が片側のみ縫った状態。下は穴あけ後。この後、金具をはめてカシメます。

購入時からシートが一部破れており、革もかなり硬化しているため、張り替えることにしました。 シートの張替えが日常整備か?とも思いますが、意外に身近な問題でもあり、簡単なのです。

必要な道具

  • レンチ(10mm)
  • ホッチキス(タッカー)
  • 合成皮革
  • ビニールシート
  • 合成ゴム用ボンド
  • 他に紙やすり、カッター、ラジオペンチ、くぎ抜きくらいでしょう。

合成皮革について。一般的なお店で在庫しているものは、強度的に少し弱いようです。貼り替え直後は大丈夫でも、 長期間の使用ではタンクに当たる側の角から破れてきます。またスパーダのシート形状では、折り返し部分の縫製加工は必須です。素材は、バイクシート原宿で、バイクメーカー純正同等品の合皮シート(\2,310/m)を購入し、張替えました。

ビニールシートは東急ハンズで(幅90cm、\80/m)。合皮の下に重ねて、シートの防水性を高めます。モトメンテナンス誌を参考に、追加することにしました。タッカー(ホッチキス)は、壁に打ち込んだりするための専用のものが売っています。MAXガンタッカーにしました(\1,154)。これはシートベースに殆ど刺さらず、ラジオペンチで刺し込む作業が必要でした。詳細は後述。


作業手順

まず、シートを外します。説明不要ですね。次にシート裏のナットを取り、シートベルトを外します。
シートベースに刺さっているタッカーの針を、くぎ抜きやラジオペンチを駆使して抜き取ります。するとシート表皮は簡単に取れます。

シートのウレタンは湿っていることが多いため、しばらく乾燥させます。管理人のは破れのあったタンクに接する部分から水が入り、ウレタンが変色していました(写真)。一週間ほど、充分に乾燥させました。アンコ盛りをしようかと考えたりもしましたが、結局ノーマル形状でいくことにしました(注)。追加するのに適切なウレタンが、なかなか無いためです(写真には無いですが、今回試したのは柔らかすぎました)。

※注:その後、チップウレタンを使ってアンコ盛りしました。(詳しい作業内容はこちら:VTシート座面加工(ハイシート化))


乾燥のためにも、いったんシートベースとウレタンを分離します。純正品は、接着剤をケチっているので割と楽にはがれます。シートベースのウレタン接着面に紙やすりを掛けた後、シートベースを洗浄しました。ウレタンとシートベース両面に、合成ゴム用ボンドを薄く塗りつけ、両面とも手で触れて糸を引かない位に乾いたら、位置をしっかり合わせて貼り合せます。このタイプの接着剤は、貼り合わせて即、接着力を発揮するので、位置合わせは重要です。


外したシート皮を型紙代わりに、大まかに合皮を切り取ります。オリジナルは全周にわたって折り返しを縫い付けてありますが、面倒なのでタンクにあたる部分のみ折り返し部分を作り、厚物用ミシンで縫いました。やり方によっては、折り返しは無くても張り込み可能です。但し、折り返しなしで合皮の浮きがないように張り込むと、かなりの力で引っ張らなければならないため、シートベース自体が反り返る可能性があり、シート皮が破れてくる時期は確実に早まると思います。


あとは現物合わせで、シートベース上にビニールシートを被せ、その上に合皮を乗せます。前と後ろを緩めにタッカーで固定したら、徐々に引っ張り、シートに密着させながら作業を進めます。

やり方としては縦(車両進行方向)ではなく、横方向に引っ張るのがメイン。洗濯バサミを大量に使い、仮止めして全体のバランスを見ながらした方が良いです。いったん全体を張り込んだら、仮止めの洗濯バサミをずらしながら、さらに引っ張ってたるみをなくします。最後にシート座面を押さえながら、シワを取る様に引っ張りつつ、タッカーを打ち込みます。こうしないと座ると弛んだ感じになります。


タッカーの針は、シートベースに殆ど刺さりませんでした(特に奥まったところ)。しばし黙考の後、ラジオペンチで針を打ち込むことにしました。

  1. まず、タッカーで針を打ちます。
  2. ラジオペンチで、ペンチの先から1ミリほど針が出るよう、タッカーの針の片側を掴みます。
  3. そのままシートベースに突き刺すように押し込みます。
  4. 反対側の針も、同じくらい押し込みます。
  5. 全体を完全に打ち込めるまで、3.4.を繰り返します。

と、口で言うのは簡単ですが、ヒジョーに手間のかかる(手も痛くなる)作業でした。

タッカーの針は細いので、2.の時にあまり長く飛び出るように持ちすぎると、簡単に曲がって失敗してしまいます。できれば、タッカーはもっと強力で、一撃で打ち込めるモノが良いでしょう。



シートベルトの張り替え

シートベルトがサイドからひび割れてきたので、余りの合皮で張り替えることにしました。

ベルトの両端が金具でカシメてありますが、マイナスドライバーなどで起こして、外します。金具はかなり錆びていますが、パーマテックス(Permatex)の錆落とし剤、NAVAL JELLY を使用しました。ピンク色の文字通りゼリー状の薬剤で、すっぱい臭いがします。換気の良いところで使用するよう注意書きがあったので、薬剤を吹き付けた金具を、屋外で数時間放置しました。

その後、薬剤を落としてみると、かなり綺麗になりました。表面の錆は完全に落ち、深く食い込んだ錆は黒く変色して、防錆皮膜になっているようです。但し、錆びていない所の一部が、白く変色してしまいました。


ベルトの芯は、写真のように丈夫なロープのような素材で出来ており、その芯に合皮を巻きつけて厚物用ミシンで縫いました。手で縫うのは結構根気が要るでしょう。合皮ではさむようにしてまず片側を縫い、反対側を縫うときは、巻く方を引っ張ってテンションをかけながら、縫いました。一部、縫った間が弛んでしまいましたが、シートに押し付けられる側なので、見なかったことに...。

最後に、取り付けボルトを通す穴をポンチで開け(約7.5mm径)、ベルトの表裏に注意して金具をカシメます。これで、シートは完全張替えとなりました。


(2006. 5)