ファンド

会社型を除いて、日本の企業会計にはファンドの会計基準が存在しない!

  • 年金基金・・企業の退職給付制度の運用ファンド日本に会計基準なし

ファンドとは

ファンドとは、複数の投資家から資金を集め、その資金を用いて行われる事業・資産からの利益を投資家に分配する仕組みです。

ファンド 根拠法


投資法人 投資信託及び投資法人に関する法律
特定目的会社SPC 資産の流動化に関する法律(新SPC法)


投資信託 投資信託及び投資法人に関する法律
特定目的信託 資産の流動化に関する法律


任意組合 民法(第667条〜688条) (解説
匿名組合 商法(535条) (解説
投資事業有限責任組合 投資事業有限責任組合契約に関する法律解説
有限責任事業組合(LLP) 有限責任事業組合契約に関する法律

【参考】金融庁資料「ファンドに関する規制の概要(PDF:115KB)」

ファンド 形態 ディスクロージャー 参考資料
商品ファンド リミテッド・パートナー型
匿名組合型
合同運用指定金銭信託型
商品ファンドの会計処理とディスクロージャー
不動産投資ファンド 投資法人型
J-REITという)
J-REITの格付け方法 東証:REIT (不動産投資信託証券)
企業年金の
年金資産運用
企業年金の会計参照
信託型 国家公務員共済組合連合会
企業年金連合会
国民年金基金連合会
変質する英米の確定給付年金(上) 
変質する英米の確定給付年金(下) 
年金(ペンション)資産運用
生命保険型 確定給付企業年金法の概要
企業年金Blog
投資事業ファンド 上記「組合型」が多い JAFCO・最近設立したファンド 
中小企業再生ファンド出資先一覧 
ソフトバンク・インベストメントHoldings
村上ファンド 
M&Aコンサルティング
会社型 (株)ドリーム・インキュベータ(堀紘一氏)
株式会社M&Aコンサルティング

日米開示j例

日本 米国
ファンドの会計
例:三井・住友・ニュー・チャイナ・ファンドでは、米国と同様「純資産の部」とし、資本金相当は「元本」としている。純資産変動計算書の開示はない。「目論見書」参照

上場ファンドは、普通株を発行している会社でも、「Net Assets Applicable to Common Shareholders」と「Summary of Stockholder’s Equity」の両者を同時に使用している。通常「Net assets」を使用する。純資産変動計算書(Statement of changes in net assets)が開示される。SEC登録の年次報告書
 参照
the Annual Report for the American AAdvantage Treasury Inflation Protected Securities Fund for the period from June 30, 2004 (inception of the Fund) through December 31, 2004”参照
日本の物価連動国債ファンドDKA 物価連動国債ファンド
(「DKA物価連動国債ファンド目論見書2005年12月」・・証券取引法13条に基づく)

物価連動国債ファンドの年次報告書the Annual Report for the American AAdvantage Treasury Inflation Protected Securities Fund for the period from June 30, 2004 (inception of the Fund) through December 31, 2004”.」・・米国会計基準による適正意見(監査報告書)が添付され、物価変動国債の米国会計基準による会計処理、税法の取り扱いを開示している。物価連動国債の取得価額と公正価値の評価差額は未実現損益として資本の部(純資産 Net assets)に区分経理している。単純で常識的な会計処理である。
ニューヨーク証券取引所に上場したWestern Asset/Claymore米国物価連動国債のファンド・・SEC登録の年次報告書

東京証券取引所に上場の不動産投信(REIT)のディスクロージャーは「問10) 不動産投信ではどのようなディスクロージャーが求められていますか」とのQ&Aには「決算の内容が定まった場合には、通常の株式と同様、決算短信による開示を求めておりますが、この中では、分配予想等に係る情報や運用資産等の価格に関する情報等についても記載されます。」としています。
銘柄一覧

SEC「Real Estate Investment Trusts
REIT銘柄一覧

証券取引所に上場されているファンドはEDINETで「特定有価証券」として開示

証券取引法第24条では、証券取引所に上場されている有価証券の発行会社は事業年度終了後、3ヶ月以内に有価証券報告書内閣総理大臣に提出しなければならないとしており、有価証券を購入しリスクを負う投資家に直接送付・開示することは規定していません。

有価証券報告書の提出義務者とは

 次に掲げる有価証券の発行者は、事業年度ごとに有価証券報告書を提出しなければなりません。

  • 証券取引所に上場されている有価証券
  • 店頭登録されている有価証券
  • 募集または売出しにあたり有価証券届出書または発行登録追補書類を提出した有価証券
  • 所有者数が500人以上の株券または優先出資証券(ただし、資本金5億円未満の会社を除く)

有価証券届出書の提出義務について

 有価証券届出書(有価証券通知書)の提出義務は、金額及び募集(売出し)の勧誘人数により、原則として次の表のとおり規定されています。

 

1億円以上の募集・売出し

1千万円超の募集・売出し

50名以上に勧誘

有価証券届出書

有価証券通知書

50名未満に勧誘

有価証券通知書

――

  • 50名未満の勧誘であっても6ヶ月間の通算により50名以上となる場合や、1億円未満の募集・売出しであっても1年間の通算により1億円以上となる場合等は、有価証券届出書の提出が必要となります。
  • 有価証券通知書(概要)についてはこちらをご覧下さい。(「ディスクロージャー制度の概要」関東財務局)

証券取引法第193条2項で、証券取引所に上場されている有価証券の発行会社その他の者で政令で定めるものが、この法律の規定により提出する貸借対照表、損益計算書その他の財務計算に関する書類で内閣府令で定めるものには、その者と特別の利害関係のない公認会計士等の監査を受けることになっている。

2003年6月1日以降は、有価証券届出書、有価証券報告書等の提出・縦覧手続(電子開示手続)について、証券取引法の規定が適用され、電子開示手続を行う場合はEDINETを使用して行わなければならないこととされた(金融庁ニュース 参照)

EDINETでは、上場ファンドは「特定有価証券」の区分に掲載されており、その中から該当のファンド名を検索することで有価証券報告書等が閲覧できます。ただし、細切れの文章で読みにくく、閲覧もスムーズになっておらず、非常に見難いものとなっています。

金融商品取引法で投資事業組合も規制・金融庁方針

 金融庁は今国会に提出する「金融商品取引法(投資サービス法)」案に、ライブドア問題などで不透明さが指摘されている私募の投資事業組合への規制を盛り込む方針を固めた。同庁に名称や所在地の届け出を義務づけたうえで、必要があれば立ち入り検査する。ただ同規制が入っても誰が組合の支配者なのか一般投資家が知らされない可能性は残る。開示ルールの整備はなお課題だ。

 金融商品取引法は、元本割れの恐れがある金融・投資商品の規制を一元化する消費者保護法。投資事業組合に対しては民法上の任意組合など実態が分かりにくい組合もあるため、少数の投資家からお金を集める場合でも、株式を自ら運用していたり出資の募集を行ったりしている場合は金融庁の監督下に置くことにした。  (日本経済新聞2006年1月24日07:00)

2006年2月22日、会社法の施行に伴う、特定目的会社の監査報告書に関する規則の全部を改正する内閣府令(案)(別紙25)などの規則案公表(「改正する内閣府令(案)等の公表について」 「2006年3月27日のコメント公表」参照)

2006年3月13日金融庁は、証券取引法を改正し「金融商品取引法(案)」を国会に提出した。概要図 概要文要綱案 法律案

貧弱 不正チェック体制

「世界2位の経済大国が株式市場を監督する独立した機関を保有していない」

 ライブドアグループの証券取引法違反事件で前社長の堀江貴文容疑者が逮捕された1月23日、AP通信はこう伝え、日本の証券取引等監視委員会が、米証券取引委員会(SEC)のような強力な機関ではないことに懸念を示した。

与謝野金融相も24日の記者会見で、「不正な取引形態を排除するため、人員の充実を検討したい」と述べ、監視委を増員する方針を打ち出した。市場の監視機能の抜本的な強化は、もはや内外共通の認識だ。

自民党は投資事業組合への新たな規制などの検討に入った。民主党も日本版SEC設置法案提出を検討している。

2006年1月27日企業会計基準委員会は、めずらしく対応が早く、「実務対応報告公開草案第19号「有限責任事業組合及び合同会社に対する出資者の会計処理に関する実務上の取扱い(案)」を公表した。

内容は特に新しいことは無く、個別財務諸表では、持分相当額の資産・負債および損益を計上する、または、持分相当額の損益を計上することも認められるものと考えられる、としている。
連結財務諸表では、「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」および「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い」には、子会社の範囲を、会社のほか、会社に順ずる事業体が含まれるとしており、有限責任事業組合を含むと考えられるとしている。

2006年9月8日企業会計基準委員会は、実務対応報告第20号「投資事業組合に対する支配力基準および影響力基準の適用に関する実務上の取り扱い」を公表し、「投資事業組合が、連結や持分法の対象とすべき子会社又は関連会社の範囲に含まれる場合があることは明らかであり、連結原則等に従い、会社と同様に、支配力基準及び影響力基準を適用することとなる」としている。

同日に、実務対応報告第21号有限責任事業組合及び合同会社に対する出資者の会計処理に関する実務上の取扱いを公表している。

投資事業組合とは

ライブドアによる証券取引法違反事件で、同社が利益を捻出(ねんしゅつ)する「隠れみの」として悪用したとされる「投資事業組合」への批判が強まっている。だれが出資し、どこに投資しているのか、といった情報開示の義務がなく、どういう組合が存在するかさえ把握する手段がないため、金融庁は組合の届け出を義務化する法案を今国会に提出する方針だ。一方で、行き過ぎた規制は「円滑な投資活動を妨げる」と心配する声もある。(2006年01月29日朝日新聞



任意組合 民法(第667条〜688条) (解説 登記なし
匿名組合 商法(535条) (解説 登記なし
投資事業有限責任組合 投資事業有限責任組合契約に関する法律(ファンド法)解説 登記必要

「投資事業有限責任組合契約に関する法律(ファンド法)について」(by経済産業政策局産業組織課

このたび、平成16年12月1日付で投資事業有限責任組合契約に関する法律(略称:ファンド法)に関する一連の法改正が完了いたしました。改正の主な内容は以下のとおりです。

1.投資手法の自由化
ファンドの投資手法が以下のとおり大幅に自由化されました。

2.証券取引法上の投資家保護ルールの導入

ファンドの投資手法の自由化に伴い、一般投資家の適切な保護を図るため、ファンドの持分について証券取引法上の投資家保護ルールが導入されました。
これにより、ファンドの出資持分について、以下のようなルールが適用されることになります。

平成16年6月14日「投資事業有限責任組合法(ファンド法)に関する説明会」by経済産業省 経済産業政策局 産業組織課

平成16年12月1日付で改正証券取引法(本年6月2日成立)が施行され、ファンドへの横断的な投資家保護ルールが導入された。ファンド(有限責任組合のほか、海外のリミティッド・パートナーシップ、投資事業を営む民法組合や匿名組合※を含む。)の持分を、証取法上の有価証券とみなして、投資家保護ルールを適用することとなる。

したがって、ファンドへの出資を公募する場合適格機関投資家以外の一般投資家を50名以上募集する場合など)には、有価証券届出書を提出するとともに、有価証券報告書によってファンドの財務内容などの重要情報を継続的に開示することになります

例:三井・住友・ニュー・チャイナ・ファンドでは、有価証券届出書には監査報告書を添付している旨記載あり。米国のように何故添付しておかないのであろう?。「目論見書」参照・・・純資産変動計算書が添付されていないことや、財務情報の注記が貧弱で判りにくい。

中小企業等投資事業有限責任組合契約に係る税務上の取扱いについて


有限責任事業組合(LLP)制度の創設について平成17年6月経済産業省

1987年の映画「Wall Street」を髣髴とさせる村上ファンド

2006年6月5日新聞各紙は、「村上ファンドのニッポン放送株売買をめぐるインサイダー取引疑惑で、東京地検特捜部は4日までに、証券取引法違反容疑で同ファンドの村上世彰氏(46)と幹部計4人を5日にも逮捕する方針を固めたもようだ。」と報じた。

約20年前の映画「ウオール街Wall Street)」は、野心的な証券マンのバド(チャーリー・シーンが演ずる)は、巨万の財を成した大物投資家ゲッコー(マイケル・ダグラスが演ずる)に憧れ、父の勤める中小航空会社の内部情報と引き換えに、彼とのコネクションを手に入れた。インサイダー取り引きの危険な橋すら渡り、着々と実績を重ねるバドは、やがてゲッコーのお気に入りとなり、いつしか彼の片腕的な存在となってゆく。だが、やがてバドは、ゲッコーが、傘下とした父の会社を解体しようとしていることを知り、初めて彼に敵対心を抱く。最後は、証券取引委員会(SEC)の職員が証券会社に踏み込み、同僚の見ている中、職務中のバドをインサイダー取引容疑で逮捕連行する。

なにやら、今回の村上ファンドを髣髴とさせるものであった。

約20年前の映画であったが、インサイダー取引による犯罪が資本市場の健全な発展を妨げていることは判っていても高度に専門化されたSECなどの機関でなくては摘発は難しいものと感じたものだった。

現に、ニッポン放送株の件は1年以上前の話で、ライブドアの堀江氏がマスコミに大々的に経緯を話しており、多少でも証券取引法が判っている人にとっては、当時、インサイダー取引規制に引っかかるのではと危惧していたはずですし、そのつもりであれば証拠固めが比較的簡単であったはず。堀江氏等を逮捕してインサイダー情報の提供時期を確認して補強証拠を得て確実に立件できる証拠を掴んでいるはず。証拠が入手し易かった村上ファンドのように大っぴらなインサイダー取引は最初で最後となるのではないか。その意味で、村上ファンドは日本特有のスケープ・ゴートになろう。

通常、インサイダー取引は映画「ウオール街」のように潜伏して判らない事が多い。日本にも資本市場を管理監督する専門かつ公正な機関が健全な資本市場を形成するには必要なのではないか。犯罪者を作らないためにも・・・ 日本の仕組みは「あり地獄」のようなもの。村上氏は気づかずに「あり地獄」に落ちてしまった。管理監督者は健全な市場を維持するために、どのような行為が犯罪になるのかどうかを判り易く明確にして防護フェンスの役割も果たし未然に犯罪者を作らない役割もある。意図的な犯罪者はなくならないが、制度整備は少なくとも犯罪者を少なくする効果はある。一罰百戒は「あり地獄」の論理で、犯罪者を作り罰を与えるという前近代的論理である。制度整備により人材の損失を極力少なくすべきであろう。

インサイダー取引
証券取引法第166条で、会社関係者は、上場会社等の業務等に関する重要事実を知った場合は、その重要事実が公表された後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等の売買その他の有償の譲渡または譲受をしてはならないとしている。これに違反した場合は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

会社関係者には、当該上場会社等の役職員、帳簿閲覧権を有する株主、法令に基づく権限を有する者、上場会社等との契約締結者などが含まれる。
なお、会社関係者から業務等に関する重要事実の伝達を受けた者、すなわち第1次情報受領者も、その業務等に関する重要事実が公表された後でなければ、その上場会社等の株式、CBなど特定有価証券等の売買をしてはならないことになっている。

重要事実には、新株発行など会社が決定する事実、災害による損害など会社に発生する事実、売上高の変化など決算に係る事実が含まれる。公表とは、一般紙、通信社、放送局など2以上のマスコミに対して情報を公開後12時間以上経過したことをいう。(野村證券より)


東京証券取引所のインサイダー取引の説明 参照(⇒村上ファンドがなぜ犯罪になるのか不明の説明となっている。)
インサイダー取引規制の各国比較・・金融庁・金融審議会第一部会平成15年12月24日資料

ニッポン放送株式の売買について
by 村上世彰 氏 2006年6月5日(逮捕日)

村上氏自身が上記の文書で「ニッポン放送株式をライブドアによる株式取得の意向は、証券取引法167 条同法施行令31 条に規定するインサイダー情報としての5%以上の株式買い集め行為についての決定であると解釈されるものであり、このような情報を知った以上は、MAC アセットマネジメント社の実質的なオーナーであり、非常勤取締役である私は、同社によるニッポン放送株式の買付けを停止させる義務がありました。」としてインサイダー取引違反容疑を明らかにしています。

海の向こうでは、2006年6月1日ニューヨーク証券取引所とユーロネクスト対等合併で合意したと発表大西洋を跨いだ巨大な市場が生れる。日本の証券行政は市場の規律を含めてどこに向かおうとしているのであろうか?


特別目的会社(SPC)とは

最近の不動産の証券化・小口化に関する動向について

(1) 「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」(SPC法)の改正

 1998年9月に施行されたSPC法については、不動産をはじめとする資産の証券化に向けた法的な枠組みを整備するものとして評価される一方、投資家保護が重視されたことなどによる使い勝手の悪さも指摘され、不動産の証券化事例については、SPC法に基づき設立された特定目的会社(以下「国内SPC」という)を活用したものよりも、海外(租税回避地)に設立される特別目的会社(以下「海外SPC」という)を活用するなど、SPC法のスキームによらないものが多いといわれる。
 こうした状況を踏まえて、今般、法律名を「資産の流動化に関する法律」と改め、流動化対象資産を財産権一般に拡大するとともに、国内SPCについての手続きの合理化を行い、また、新たに「特定目的信託」制度を創設することなどを内容とする改正法案が国会に提出されたところである。

(2) 不動産投資信託の解禁

 1998年12月に施行された「証券投資信託及び証券投資法人に関する法律」(以下「投信法」という)で導入された証券投資法人(いわゆる「会社型投資信託」)については、かねてから、活用の仕方によっては実質的にアメリカのREITに近い不動産証券化の器となり得るポテンシャルを備えており、本格的に不動産投資信託を導入するには、会社型投資信託について運用対象資産の範囲を不動産も含み得るように広げるべきであると指摘されてきたところである。
 こうしたことなどを踏まえ、今般、法律名を「投資信託及び投資法人に関する法律」と改め、運用対象資産を財産権一般に拡大する内容の改正法案が国会に提出されたところである。これにより、投資信託のスキームにおいて不動産を運用対象資産に組み入れることができるようになり、本格的な不動産投資信託が解禁されることになると指摘されている。

(3) 不動産特定共同事業における規制緩和

 不動産の小口化の代表商品である不動産特定共同事業は、1995年4月に施行された不動産特定共同事業法に基づき行われるが、この法律については、現在、当初の投資家を保護するための規制法から、より規制色を薄め、投資家にとって投資しやすい制度への改善を目指し、1999年までに、最低出資額の制限緩和や投資家の契約上の地位の第三者への譲渡の解禁、投資対象となる不動産の選定・変更も含めた不動産による資金運用を専門家に一任する投資ファンド型事業の創設といった取り組みがなされたところである。
 今後も、不動産の投資判断を専門的に行う不動産投資顧問業の登録制度の創設や出資持分の売買情報を交換する共同売買市場の創設などが予定されているところである。

「不動産の証券化に関する研究会」報告書(平成12年4月)by 国土省

21 不動産証券化・小口化商品一覧

22 海外の不動産証券化商品一覧

日本における証券化の歴史


実施年 概          要
施行等 改正等
1931


1988

「抵当証券法」の施行。
→抵当証券会社が企業や個人に融資した貸付債権とそれを担保する不動産の抵当権を一体のもとして小口化して販売。
「抵当証券業の規制等に関する法律」の施行。
→販売を大蔵大臣の登録を受けた法人に限定し、販売方法を規制。またディスクロージャーを強化。
1973
1988

1993
1994
住宅ローン債権信託取り扱いが開始(信託方式での流動化)。
委託者の拡大(住専のみ→銀行その他金融機関まで)及び投資者の拡大(信託銀行・年金勘定→機関投資家まで)。
住宅ローン信託受益権を有価証券に指定。
信託期間制限5年超の撤廃など。
1987
1995



1997
1999

2000
不動産小口化商品の登場。
「不動産特定共同事業法」の施行。
→不動産共同投資事業における投資家保護を目的とする。
プロの投資家(特定投資家)に対しては、事業実施時期の制限などを解除。
投資家への最低出資単位を500万円まで引き下げ、出資持分の第三者譲渡を解禁。
一定の条件下で資産の入れ替えを認める「投資ファンド型事業」を創設。
不動産投資顧問業の登録制度の実施、出資持分の売買情報を交換する共同売買市場の創設などを予定
1993

1996
「特定債権等に係る事業の規制に関する法律」(特債法)の施行。
→リース物品、リース債権、クレジット債権の証券化が可能となる。
国内ABS(資産担保証券)とABCP(アセット・バックCP)の発行が解禁。併せて、ABSとABCPを証券取引法上の有価証券に指定。
1998

2000
「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」(SPC法)の施行。
→不動産をはじめとする資産の証券化の基盤整備が進展。
SPC法の改正(予定)
→海外SPCの活用が目立つなど、当初の期待ほどに活用されていないため、使い勝手の向上等を図るために改正(併せて「特定目的信託」制度を創設)。


2000
「証券投資信託法」の改正。
→会社型投信、私募投信の解禁。
「証券投資信託法」の改正(予定)
→運用対象資産を拡大し、不動産投資信託を解禁するなどの改正(これと並行して、東京証券取引所による不動産投資信託市場の創設などが検討されている)。

「債権譲渡特例法」の施行。
→指名金銭債権譲渡における第三者対抗要件具備手続を簡便化し(譲渡の登記)、債権の証券化に寄与。
1999
「債権管理回収業に関する特別措置法」(サービサー法)の施行。
→民間に債権回収の専門会社を弁護士法の例外として認めるもの。

日本版MBS、CMBSの登場
→海外SPCを活用した住宅ローン債権の証券化(MBS)や収益不動産向けのノンリコース・ローンの証券化(CMBS)が登場。
2000
「借家法」の改正
→定期借家権による貸主と借主の契約自由の原則を認める(正当事由の排除等)。


不動産の証券化等に係る税制上の措置

特定資産の証券化に関する法律(仮称)の制定に伴い、次の税制上の措置を講ずる。
特別目的会社(仮称)〔SPC〕が、多数の投資家又は特定の機関投資家に対 して債権、不動産等の資産を裏付けとした証券を発行しているものであること、 他の事業活動を行っていないこと、所得(債券を発行している会社の場合にあっ ては、一定金額を控除後)の 100分の90以上を配当として支払っていること等の 要件を満たしている場合には、所得の金額を限度として、当該事業年度に係る支 払配当の額を損金の額に算入する。

エンロン(ENRON)・・簿外債務の原因となった「特別目的会社の連結対象外について」
最大270億ドルとも指摘されている簿外債務膨張の原因は、特別目的会社を連結対象外としたことにある。当初は、米国会計基準では連結対象外でもよいものであったが、監査後にエンロンと特別目的会社が資金取引で密接に関連していたことが判明し一部を連結対象に加えたという。

日本でも企業会計審議会(旧大蔵省)の公表した「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い(平成10年10月30日)」では特別目的会社は連結対象外としている。米国基準と類似した基準としている。原文は、金融庁(旧大蔵省時代の「答申・報告書等」)参照。

国際会計基準では、特別目的会社であっても支配している場合は連結対象とするとしている。米国会計基準と国際会計基準とは特別目的会社の取扱が異なっている。(SIC-12連結・・特定目的事業体(SPE)」参照)

米国財務会計審議会(FASB)は、2002年7月1日、「特別目的会社(SPE)の連結原則・・解釈指針」の公開草案を公表した。従来から支配している会社は連結範囲としていたが、SPEの場合、支配形態が異なることや、リスクの分散など固有の問題があることから連結除外とされるケースがあった。これを明確にするため今回の草案を公開することになった。総資産の3%ルールは10%になった。2003年3月以降開始する事業年度から適用。(ニュース・リリース参照)

人々の記憶から褪めた2005年7月4日、日本公認会計士協会(監査・保証実務委員会)では平成16年9月8日付け諮問「現行会計実務における特別目的事業体(SPE)を取り巻く諸問題を整理し、現行会計基準を前提とした監査上の留意点を取りまとめられたい。」に基づき、検討してまいりましたが、このたび、一応の結論が得られましたので、「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」(公開草案として公表し、広く意見を求めることといたしました。2002年(平成14年)12月10日「特別目的会社(SPC) に関する調査結果報告」参照

2005年12月29日日本経済新聞は、「日興の損益不明確なSPC、中央青山が連結対象化を要請」と報道(SPCに関するニュース ベル24”連結外し”は適切なのか(1/14東洋経済) 参照)。やっと報道するようになった。
野村HDがミレニアムリテイリングを連結対象としていることについて日興は「野村さんは米国会計基準を採用しているのに対して、当社は日本基準。あくまで土俵が違う」と説明”だそうである。

利益不正計上の疑い、日興に課徴金5億勧告へ…監視委
証券大手「日興コーディアルグループ」(東京都中央区)が虚偽の有価証券報告書を作成し、市場から500億円の資金を不正に調達していた証券取引法違反の疑いが強まったとして、証券取引等監視委員会は来週にも、同グループに過去最高の課徴金5億円の納付を命じるよう、金融庁へ勧告する方針を固めた。
監視委は、同グループが2005年3月期に約140億円の利益を架空計上したとみて、報告書の訂正も勧告することを検討している。東証1部上場企業が課徴金の勧告対象となるのは初めて。(読売新聞2006年12月16日より)

2006年12月18日、証券取引等監視委員会は、課徴金5億円の納付を命じるよう、金融庁へ勧告した。(勧告書 参照)
         ↓
同日、日興コーディアルグループは、2005年(平成17年)3月期の決算で「EB債の評価益計上は不適正であった」として、遡って訂正するとしている。(お知らせ 参照)
         ↓
同日、東京証券取引所は、日興コーディアルグループの株式(市場第一部8603)がついに監理ポスト入りです。ちなみに証券会社株式の監理ポスト入りは、合併に伴う場合などを除くと1997年に破綻した山一証券以来だそうです。2007年3月12日、東京証券取引所は、日興コーディアルを「有価証券報告書等に「虚偽記載」を行い、かつ、その影響が重大であると当取引所が認めた場合)に該当しないと認めたため」監理ポスト割当てから解除した
         ↓
会社が不適正であることを認めたことにより、2005年と2006年に適正意見を表明した中央青山監査法人(現みすず監査法人)の去就が注目される。なお、担当した4人の会計士は、2人があらた監査法人へ移籍、1人は退職していると報道されている。 (EDINET 金融庁公認会計士・監査審査会の監査審査会の活動状況」 参照)
         ↓
2007年1月30日、特別調査委員会(委員長・日野正晴元金融監督庁長官)は三十日、「グループ取締役らが組織的にかかわって、意図的に利益を水増しした法令違反行為があった」とする調査結果を発表した。(ニュース 参照)

2007年2月1日、日興コーディアルグループは、利益水増し問題に関連して、すでに問題点が指摘されていた平成17年3月期決算に加え、18年3月期決算でも不適正な会計処理があったことを明らかにした。当時の監査人は中央青山監査法人で元会計士協会会長奥山章雄公認会計士が監査報告書に適正意見を述べ署名捺印している。権限を誇示しようとする金融庁の格好な餌食となる恐れがある。(ニュース EDINET 参照)
         ↓
2007年2月20日報道各社は、「みすず、監査業務移管要請 3法人に、事実上解体へ」とし、大手監査法人の「みすず監査法人(上場会社約600社、社員・職員約2500人)」(旧中央青山監査法人)が新日本、トーマツ、あずさの大手3監査法人に、7月末を目処に、監査業務を全面移管することを検討していることが、明らかになったと伝えている。
         ↓
2007年7月31日付で「みすず監査法人」は解散した。

2007年8月1日新日本監査法人のサイトには「当法人は、本日、みすず監査法人からの移籍者(1,065人)の受け入れをすべて完了いたしました」と誇らしげに掲載している。優良顧客はあずさ監査法人へ


新日本監査法人は、有限責任監査法人となって決算の公表義務化により、監査法人として初めて2009年6月期決算を公表した。13億円の赤字決算であった。(ニュース参照)


2010年7月25日、日本経済新聞は、「監査法人で国内最大手の新日本監査法人は、400人の早期希望退職を実施する方針を固めた。9月末にかけて募集する。対象は金融部など一部の部署や若手を除く会計士と会計士試験合格者約4800人。応募者には面談を経て原則10月末までに退職してもらう。」と報じた。(ニュース 「会計士の企業出向に関する報道について」 参照)

新日本監査法人2010年6月末の決算書に記載の「VI重要な後発事象に関する注記」によれば、7月8日の経営会議で特別転進プログラムを決議し、特別転進プログラムの実施として対象者約400名を期間9月13日から9月28日に募集し、退職日を平成22年10月31日とする」としている。なお、因みに売上純利益率(純利益/業務収入)は0.295%で291百万を辛うじて利益計上している。この400名の割増金は誰が対象か不明なため影響は未確定としている。7月の報道は正確であった。(リストラ引当金 修正IAS37号非金融負債(non-financial liabilities)の認識基準 参照)

2006年12月27日金融庁は、本府省の課長以上の職員再就職先を公表したが、金融庁は証券業の監督官庁であるが再就職先に証券業協会が多く、誤解を生ずることを堂々と行っている。かつて、旧大蔵省から日本公認会計士協会や大手監査法人に天下っていたのを髣髴とさせ、その感覚がわからない。

年金基金・・企業の退職給付制度の運用ファンド

カルフォルニア州公務員退職年金基金(カルパース)(CalPERS、California Public Employees' Retirement System)のホームページを開くと、カルパースはカルフォルニア州及び地方の公務員およびその家族約1百万人以上の退職給付や医療給付のため、2400以上の雇用者から1400億ドル(約20兆円)を預かっている、としている。

カルパースは、機関投資家として株主権を行使して、米国企業のみでなく海外の投資先企業にコーポレート・ガバナンスを求めており、多大な影響を与えている。(年次報告書 参照)

年金を運用している年金基金(Pension fund)は、国際会計基準第26号「退職給付制度の会計および報告」という会計基準があり、退職給付制度自体の年次報告書をこの会計基準にしたがって委託主である事業主に報告する。(「企業年金の会計」参照) 日本には、この会計基準は存在しない。

日本の年金基金は「Yahoo!検索結果」参照・・単年度決算で判りにくい。

ヘッジファンドとは

日本では、2005年12月13日、金融庁は、「ヘッジファンド調査の概要とヘッジファンドをめぐる論点」を公表した。
これによると、ヘッジファンドとは
○ ヘッジファンドは、一般に、私募、超富裕層向け、レバレッジ、多額のリスク、成功報酬等の要素を持つファンドと考えられているが、現状、ヘッジファンドの明確な定義はない。
○今回、当庁が行ったヘッジファンドの調査では、いわゆるヘッジファンドの実態を広く把握するため、ヘッジファンドを@レバレッジの活用、A成功報酬の徴収、Bヘッジファンド投資戦略の3要素を有するファンド(ファンド・オブ・ヘッジファンドを含む)と定義した、としている。

米国では:
 米国証券取引委員会(SEC)は、ヘッジファンド(hedge funds)(法的な用語ではなく)、一般に、@公認投資家(accredited investors)やA大きな機関投資家(large institutions)にのみ可能で、かつ、最低投資額が1百万ドル以上(約1億円以上など)というように任意の投資制限を設けている。

限られた超裕福な投資家を対象としているため、規制当局の規制はない。多くのヘッジファンドは、レバレッジを追求し、高い利益を追求する、一方、投資損失のリスクは高い。

ミューチュアル・ファンド(Mutual Fund)の規制は受けないが、ヘッジファンドの増大によりリスクが大きくなったことにより、2004年12月、SECは規則を改正し、特定のファンド・マネージャー(運用資産が3千万ドル以上、15以上の顧客を持つファンド)のSECへの登録を、2006年2月1日までに行うようになった。⇒2006年6月23日、ワシントン連邦高裁はSECの登録制を違法であると判断。同裁判所は、「顧客の数は活動の目安にならない」として、顧客数に基づいた登録義務を「恣意的だ」と判断した。SECコックス委員長は「代替案を検討する」と表明した。

ファンド・オブ・ヘッジファンド(A fund of hedge funds )とは、個々の株式や債券などに直接投資するのではなく、ヘッジファンドに投資するものをいう。これらのファンドは、投資家に目論見書(prosupectus プロスペクタス)を提供しSECへ四半期ごとに報告書を登録しなければなりません。「These funds of hedge funds must provide investors with a prospectus and must file certain reports quarterly with the SEC. 」

参考:ヘッジファンド・・注意:一般の投資家は危険すぎます。

物価連動国債ファンド

物価連動国債で運用しているファンドである。

日本では、2004年2月26日(10年もの1千億円)を初めとして、2004.5.27(3千億円)2004.11.30(5千億円)2005.5.31(5千億円)2005.8.30(5千億円)2005.11.29(5千億円)を発行しているとしている(国債の発行予定額等 参照)。財務省は、欧米諸国が物価連動国債を発行している、としている。
日本銀行のリポート」 「財務省・・最近の国債市場の状況等について意見交換」参照
仕組債→野村證券の説明・・みずほインベスター証券の説明・・株用語集の説明・・その他の複合商品の会計基準・・PWCの金融商品会計基準

日本の物価連動国債ファンドDKA 物価連動国債ファンド
(「DKA物価連動国債ファンド目論見書2005年12月」・・証券取引法13条に基づく)

物価連動国債・・財務省設計・・国策的会計基準設定か?

財務省は、「物価連動国債」の商品設計を行い、企業会計基準委員会に会計処理基準の設定を依頼した。国債売出し消化のための国策的会計基準を設定か?

現在の物価連動債の会計処理は、デリバティブ取引が組み込まれた利付国債(複合金融商品)に該当することから、組み込みデリバティブ部分または当該金融商品全体を時価評価した上で、評価差額を当期の損益に計上する必要がある。こうした会計処理が投資家の物価連動国債投資を慎重にしているとの指摘があり、財務省の要請を受けて、同専門委員会で見直しの議論が重ねられている。

2006年1月12日の専門委員会で示された適用指針の公開草案(案)では、これまでの議論を踏まえ、物価連動国債について、組み込みデリバティブの経済的性格およびリスクは現物の金融資産・負債と緊密な関係にあると判断し、過去の消費者物価指数の動向などから、「一般に組み込みデリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性は低い」と位置づけている。

これに伴い、物価連動国債の区分処理または全体を時価評価し、評価差額を当期の損益に計上する必要はなくなるが、適用指針の公開草案(案)では「(物価連動国債を)一体として処理する場合において、その他有価証券としたときには、他の債券と同様に、まず償却原価法を適用し、その上で償却原価と時価との差額を評価差額として処理する」としている。なお、満期保有目的債券への計上はできない。

また、同指針の適用時期については「2006年4月1日以降開始する事業年度」としながらも、「2006年3月31日以前に終了する事業年度から適用することができる」とし、早期適用が可能となる方向だ。(朝日新聞2006年1月13日

2006年1月27日企業会計基準委員会は、「企業会計基準適用指針公開草案第15号「その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理(案)」を公表した。
内容は、財務省の意向に沿ったもので、時価の変動による評価差額は当期の損益に反映させないことし(3項)、米国同様、資本の部(純資産の部)の「その他有価証券評価差額金」に計上することとした。

参考:
アメリカではUS Treasury Inflation-Protected Securities (TIPS) ・・元本保証。「税法規定
 「物価連動国債ファンドの年次報告書the Annual Report for the American AAdvantage Treasury Inflation Protected Securities Fund for the period from June 30, 2004 (inception of the Fund) through December 31, 2004”.」・・米国会計基準による適正意見(監査報告書)が添付され、物価変動国債の米国会計基準による会計処理、税法の取り扱いを開示している。物価連動国債の取得価額と公正価値の評価差額は未実現損益として資本の部(純資産 Net assets)に区分経理している。単純で常識的な会計処理である。
ニューヨーク証券取引所に上場したWestern Asset/Claymore米国物価連動国債のファンド・・SEC登録の年次報告書



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