金融商品の時価会計

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はじめに

1998年12月、国際会計基準委員会は、国際会計基準第39号「金融商品:認識と測定(Financial Instruments:Recgnition and Measurement)」と題する会計基準を設定した。 日本では、国際会計基準「金融商品:認識と測定」の公開草案の段階で平行して草案を公表していた。日本の草案は、主要部分においてほぼ国際会計基準に沿ったものであった。

国際会計基準第39号が12月に成立したことを確認したかのように、1999年1月22日(金曜日・・今まで、大蔵省はなぜか金曜日に公表してます)、大蔵省企業会計審議会は、「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」を公表した。

大蔵省の公表した意見書等は、「金融商品に係る会計基準の概要」「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」「金融商品に係る会計基準」の三つの文書からなり、内容は重複する部分が多い。

原文は大蔵省のサイトから入手できますので、正確を期するために直接大蔵省へアクセスすることをお勧めします。

また、国際会計基準との関係は「国際会計基準」、「国際会計基準の基礎」「国際会計基準の事例」および「国際会計基準と日本の会計の相違点」を用意してます。興味のある方はご参照ください。

金融商品の時価等の開示に関する基準(2008年3月10日)
2005年6月に、EU証券規制当局委員会(The Committee of European Securities Regulators、以下、CESR)から、カナダ基準、米国基準および日本基準とIFRSとの同等性の評価に関するテクニカル・アドバイスの草案が公表されました。日本については、26項目の国際会計基準との相違点の中に、IAS第32号「金融商品:開示および表示」で、公正価値の開示が要求されているのに対し、日本基準では公正価値が開示されるのはデリバティブと有価証券に限定される。公正価値は投資家にとって重要な情報であり、すべての金融資産および負債の公正価値を開示するべきであるとされている。

2007年7月20日、企業会計基準委員会は、国際基準との収斂を検討しこのたび、「金融商品に関する会計基準(案)」「金融商品の時価等の開示に関する適用指針(案)」公開草案を公表することとなった。基準(案)自体は分かり難いが「コメントの募集および概要」がかろうじて判り易い。2009年(平成21年)4月からの適用としている。

国際会計基準で開示しているUSB社の財務諸表の「注記29.金融商品の公正価値」「注記18.公正価値の金融債務」は、コンパクトに纏められて判り易い。加えて「重要な会計方針・・金融商品の公正価値」に簡潔に記述されている。

2008年3月10日企業会計基準委員会は、「金融商品に関する会計基準」「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」を公表した。適用は平成22年(2010年)3月31日以後開始する事業年度から適用としている。←不思議な適用時期の書き方である。

注:米国では1991年12月、SFAS107号「金融商品の公正価値の開示(Disclosures about Fair Value of Financial Instruments)」を公表しており、日本それにほぼ一致させている。
国際会計基準では、IFRS7号「金融商品:開示(Financial Insruments: Disclosures)」が、米国会計基準とコンバージェンスして、2007年1月から適用として公表された。


JR東海が長期債務702億に対する約255億円の早期返済損を計上
2007年9月25日、JR東海は、「長期債務の早期返済に関するお知らせ」として「長期債務を縮減し、財務体質を強化することを目的として、長期債務702億円の早期返済を実施して、債務返済損として約255億円を今期(2008年3月期)の営業外費用に計上する」と発表した。「臨時報告書」「有価証券報告書」参照

702億円の繰り上げ返済で255億円の巨額な債務返済損が出ることが不思議。255億円/702億円X100=36%の返済損?金額が大きいのは、未計上の経過利息累計額では?それにしても、JR東海にとって重要な取引であるのだから、もう少し分かるような説明があってよいのではないでしょうか。いずれにしても、投資家に対して、投資判断材料として、どこに、どうしてこのような契約をし、なぜ巨額な早期返済損が生ずるのかについて説明すべきであろう。JR東海の税引前利益が2千億を超えており僅少であるというなら「臨時報告書」の要求が細かすぎると言うことか。

なお、有価証券報告書の損益計算書を見ると「鉄道施設購入長期未払金返済損」が毎期200億円から300億円超計上されている。鉄道施設購入長期未払金が現在価値で計上されており早期に返済すると時間経過分の利息相当が加算されて返済されるように見える。(「負債の公正価値会計」参照)
2007年3月決算現在で、鉄道施設購入長期未払金は2兆2698億円あり、未計上の経過利息があるのではないか、注記に何も開示していないので不明。利息の発生主義会計が行われていない恐れがあるので明確にそうした恐れがないことを注記により明らかにしておくことが肝要である。

金融商品のうち金融負債の含み損が計上されなかった会計基準(偶発事象の会計基準や、金融商品の注記による開示基準を含めて)が妥当なのか検討する必要があろう。

金融商品の範囲等

「金融商品に係る会計基準」
金融資産とは、現金預金、受取手形、売掛金及び貸付金等の金銭債権、株式その他の出資証券及び公社債等の有価証券並びに先物取引、先渡取引、オプション取引、スワップ取引及びこれらに類似する取引(以下、「デリバティブ取引」という。)により生じる正味の債権等をいう。  

金融負債とは、支払手形、買掛金、借入金及び社債等の金銭債務並びにデリバティブ取引により生じる正味の債務等をいう。(注1)

(注1)  金融資産及び金融負債の範囲について
 金融資産及び金融負債の範囲には、複数種類の金融資産又は金融負債が組み合わされている複合金融商品も含まれる。  また、現物商品(コモディティ)に係るデリバティブ取引のうち、通常差金決済により取引されるものから生じる正味の債権又 は債務についても、本基準に従って処理する。

時価

「金融商品に係る会計基準」
二 時価  
時価とは公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場(以下、「市場価格」という。)に基づく価額をいう。市場価格がない場合には合理的に算定された価額を公正な評価額とする。(注2)

注2 市場について
 市場には、公設の取引所及びこれに類する市場のほか、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等も含まれる。


金融商品の評価基準概要

「金融商品に係る会計基準の概要」
金融商品は価格変動リスクを認識することが投資情報としても経営情報としても極めて重要であることから、客観的な時価が把握でき、当該価額により換金・決済できる金融商品は時価評価し、原則として、当期の損益に反映させることとした。ただし、直ちに売却を予定しない有価証券(その他有価証券)については、時価評価差額を損益に計上せず資本の部に表示する等、保有目的に応じた処理を採用している。


金融商品の属性 評価基準 評価差額の取扱い






売買目的 時価 損益に計上
満期保有債券 償却原価 (注1)
関係会社株式 原 価
その他有価証券 時 価 (注2) 資本の部に直接計上
金銭債権 償却原価 (注1)
特定金銭信託等 時 価 損益に計上
デリバティブ 時 価 損益に計上
       
(注1)  償却原価とは、債券(債権)を債権額より高く又は安く取得した場合、当該差額を毎期利息として計上し、取得原価に加減した価額をいう。

「金融商品に係る会計基準注解」に記載の「償却原価法」の用語の意味
 償却原価法について
 償却原価法とは、債権又は債券を債権金額又は債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、当該差額に相当する金額を弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で貸借対照表価額に加減する方法をいう。なお、この場合には、当該加減額を受取利息に含めて処理する。
(注2)  「その他有価証券」の時価評価においては、期末時点の時価の他、期末前1カ月の平均時価によることもできる。
(注3)  市場価格が著しく下落したときには、回復すると認められる場合を除き、帳簿価額を時価に付け替え損失を計上する強制評価減の考え方は、常時、すべての有価証券に適用する。
(注4)  市場価格がなく時価評価できない場合は原価評価する。

上記の評価基準は、決算時点の評価基準である。取得時は、当然のこととして取得原価で記録し、期末時点で上記の評価基準を適用する。償却原価で評価した評価損益は損益に計上される。


有価証券の区分及び評価について

「金融商品に係る会計基準」
有価証券区分 基準
1. 売買目的有価証券 時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券(以下、「売買目的有価証券」という。)は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理する。
2. 満期保有目的の債券 満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券(以下、「満期保有目的の債券」という。)は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。(注5)(注6)
注5  償却原価法について
 償却原価法とは、債権又は債券を債権金額又は債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、当該差額に相当する金額を弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で貸借対照表価額に加減する方法をいう。なお、この場合には、当該加減額を受取利息に含めて処理する。
注6  満期保有目的の債券の保有目的を変更した場合について
 満期保有目的の債券の保有目的を変更した場合、当該債券は変更後の保有目的に係る評価基準に従って処理する。
3. 子会社株式及び関連会社株式 子会社株式及び関連会社株式は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。
4. その他有価証券 売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券(以下、「その他有価証券」という。)は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は洗い替え方式に基づき、次のいずれかの方法により処理する。
(1)  評価差額の合計額を資本の部に計上する。
(2)  時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額は資本の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額は当期の損失として処理する。  なお、資本の部に計上されるその他有価証券の評価差額については、税効果会計を適用し、資本の部において他の剰余金と区分して記載しなければならない。(注7)
注7  その他有価証券の決算時の時価について
 その他有価証券の決算時の時価は、原則として、期末日の市場価格に基づいて算定された価額とする。ただし、継続して適用することを条件として、期末前一カ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることもできる。
5. 市場価格のない有価証券 市場価格のない有価証券の貸借対照表価額は、それぞれ次の方法による。
(1)  社債その他の債券の貸借対照表価額は、債権の貸借対照表価額に準ずる。
(2)  社債その他の債券以外の有価証券は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。
6. 時価が著しく下落した場合 満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式並びにその他有価証券のうち市場価格のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない。  市場価格のない株式については、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない。  なお、これらの場合には、当該時価及び実質価額を翌期首の取得原価とする。
7. 有価証券の表示区分 売買目的有価証券及び一年内に満期の到来する社債その他の債券は流動資産に属するものとし、それ以外の有価証券は投資その他の資産に属するものとする。
運用目的の金銭の信託 運用を目的とする金銭の信託(合同運用を除く。)は、当該信託財産の構成物である金融資産及び金融負債について、本基準により付されるべき評価額を合計した額をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理する。(注8)
注8  運用目的の信託財産の構成物である有価証券の評価について  
運用目的の信託財産の構成物である有価証券は、売買目的有価証券とみなしてその評価基準に従って処理する。

ASBJが「債券の保有目的区分の変更に関する当面の取扱い」を公表(2008年12月5日)

[東京 13日 ロイター] 企業会計基準委員会(ASBJ)は13日、企業が保有する債券の保有区分の変更を容認する草案を発表した。2010年3月末までの特例措置。決算期ごとの時価評価を義務付けられている「売買目的」にいったん区分した債券について、時価評価を行わない「満期保有目的」に振り替えて会計処理することなどを認める。公開草案は、28日までパブリックコメントを募集して12月にも決定するが、2008年12月決算に反映するため、最大10月1日までさかのぼって適用することを認める2008年12月5日ASBJは「実務対応報告第26号」として公表した。)

 現行の会計基準では、いったん「売買目的」や「その他有価証券」に分類すれば、その後に保有区分を変更することは認めていない。しかし、世界的な金融危機対応の特例措置として、時限を区切って一定の条件付きで容認する。欧州の国際会計基準審議会(IASB)が10月13日に、金融商品の保有区分の変更を認めるため会計基準を改定したのを受けて、日本のASBJは同様の措置を検討していた。

公開草案によると、保有区分は、流動性がない債券が対象で、1)「売買目的」から「その他有価証券」または「満期保有目的」へ、2)「売買目的」または「その他有価証券」から「満期保有目的」へ――などいずれの変更も認める。「売買目的」から外す債券は、いったん時価評価し、損益を計上してから変更時の時価を新しい取得価格にする。「その他有価証券」から「満期保有目的」への変更は、変更時の時価を新しい取得価格にして、時価と償却原価との差額は、満期まで期間配分する。

「売買目的」から外す場合は、企業がトレーディングで利益を得る意図がないことを明らかにすることが条件。また、区分変更した債券については情報開示を求め、財務報告では、振り替えた債券の内容と金額のほか決算への影響を注記で示すことにする。

流動性のない債権を対象として、以下の区分変更を変更時の時価で区分変更できる。
2008年10月1日から2010年3月31日までの特例措置
(1) 売買目的(時価会計) 満期保有目的(償却原価)
その他有価証券(時価または期末前1ヶ月の平均時価)
(2) その他有価証券(時価または期末前1ヶ月の平均時価) 満期保有目的(償却原価)

なお、米国では2008年9月30日、SECとFASBが市場性が無いものの公正価値について共同でガイダンスを公表(SEC時価会計のニュース)し、これを受けて10月13日、国際会計基準(IASB)が、米国の金融危機に対応のIAS39号の区分変更を公表した。この改正基準は区分変更の時の時価で区分変更(パラグラフ50F)とし乱用できないようにしている。しかし、時価が下落したものを区分変更しようとすると含み損を計上することになることから、含み損を計上したくない場合は、区分変更時期(時価下落前)が重要になってくる。そこで、この改正基準は、2008年7月1日以降適用(パラグラフ103G)として含み損の計上を極小化する配慮がされた。日経平均 参照

2008年10月30日は、IASBが不活発な市場の公正価値の適用の教育用ガイダンス(全84ページ)を公表している。

新金融商品取引法の有価証券の関係

金融商品取引法では、すべての信託の受益権が有価証券とされるなど、その定義する有価証券自体の範囲が拡大されているため、従来の取扱いのままでは、特定金銭信託のような単独運用の金銭の信託及び貸付金や不動産などの金銭以外の信託の信託受益権も例外なく有価証券となり、企業会計上、必ずしも適切なものとはならないのではないかという指摘がなされております。

会計基準に基づいて企業会計上の有価証券として取り扱うこととなる具体的な範囲については、今後、日本公認会計士協会から会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正により示されることとなります。当委員会では、その前提となる本会計基準に関する所要の改正について検討してまいりましたが、今般、平成19年6月15日の第130回企業会計基準委員会において、標記の企業会計基準について次の改正を行うことを承認しましたので、本日公表いたします。

 なお、今回の改正は、現行の会計上の取扱いを大きく変えないための技術的なものであるため、公開草案の手続を経ずに公表するものです。(企業会計基準委員会・2007年6月15日 「金融商品に関する会計基準」の改正  「金融商品に関する会計基準」 参照)



デリバティブの会計

「金融商品に係る会計基準の概要」
(2)  金利オプションを組み込んだ借入金のように金利の支払がネットされるものは原則として一つの金融商品として処理する。ただし、デリバティブの価値が元本の返済額を増減させるようなもの(借入元本に係る通貨オプションを組み入れた円建ローン等)は元本とデリバティブを区分し、元本は原価評価・デリバティブは時価評価することとした。  
「金融商品に係る会計基準」
四 デリバティブ取引
 デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は、原則として、当期の損益として処理する。

二 その他の複合金融商品の会計処理  
契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品は、原則として、それを構成する個々の金融資産又は金融負債とに区分せず一体として処理する。(注1)
注1 金融資産及び金融負債の範囲について  金融資産及び金融負債の範囲には、複数種類の金融資産又は金融負債が組み合わされている複合金融商品も含まれる。  また、現物商品(コモディティ)に係るデリバティブ取引のうち、通常差金決済により取引されるものから生じる正味の債権又は債務についても、本基準に従って処理する。

貸倒見積高の算定

「金融商品に係る会計基準の概要」

現在、貸倒引当金の引き当ての算定方法についての一般的基準がないことから、法的な破綻に至るまで十分な引き当てが行われていないという問題がある。そこで、債権を債務者の状況に応じ3区分し、貸倒見積高の算定方法を定めることとした。

債権区分 相手先の状況
@ 一般債権: 経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権
A 貸倒懸念債権 : 経営破綻には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権
B 破産更生債権 : 経営破綻又は実質経営破綻の債務者に対する債権
意見書の基準 (参考)銀行監査実務指針
区 分 見積方法 区 分 見積方法
一般債権 貸倒実績率等(注) 正常先債権 貸倒実績率等(注)
要注意先債権
貸倒懸念債権 ・担保のない部分の必要額
・割引現在価値
破綻懸念先 担保のない部分の必要額
破産更生債権 担保のない部分の全額 実質破綻先 担保のない部分の全額
破綻先
(注)債務者及び債権の状況に応じた貸倒実績率を用いる。

なお、契約上の利息支払日を相当期間経過しても利息の支払がないにもかかわらず、安易に未収利息を計上し続けることには問題があることから、相当期間利息の支払がない場合や経営者が実質破綻の状態にある場合には、すでに計上している未収利息を取り消すとともにそれ以後の期間に係る未収利息は計上してはならないこととした。


「金融商品に係る会計基準」
第四 貸倒見積高の算定
一 債権の区分
 貸倒見積高の算定にあたっては、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権を次のように区分する。

1.経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権(以下、「一般債権」という。)

2.経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権(以下、「貸倒懸念債権」という。)

3.経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権(以下、「破産更生債権等」という。)

二 貸倒見積高の算定方法
 債権の貸倒見積高は、その区分に応じてそれぞれ次の方法による。(注9)

1.一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する。

2.貸倒懸念債権については、債権の状況に応じて、次のいずれかの方法により貸倒見積高を算定する。ただし、同一の債権については、債務者の財政状態及び経営成績の状況等が変化しない限り、同一の方法を継続して適用する。

(1)  債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法
(2)  債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積もることができる債権については、債権の元本及び利息について元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法

3.破産更生債権等については、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とする。(注10)

注解
注9  債権の未収利息の処理について  債務者から契約上の利払日を相当期間経過しても利息の支払を受けていない債権及び破産更生債権等については、すでに計上されている未収利息を当期の損失として処理するとともに、それ以後の期間に係る利息を計上してはならない。
注10  破産更生債権等の貸倒見積高の処理について  破産更生債権等の貸倒見積高は、原則として、貸倒引当金として処理する。ただし、債権金額又は取得価額から直接減額することもできる。


 ヘッジ会計

「金融商品に係る会計基準の概要」
 外貨建債権債務に係る為替相場の変動、社債や借入金に係る金利変動といった相場変動等による損失の可能性を減殺することを目的として、デリバティブをヘッジ手段として用いることがある。デリバティブについては毎期末に時価評価する一方、ヘッジ対象の資産・負債が原価評価される場合には、デリバティブの損益が先に認識されることから、ヘッジ会計の手法を用いる必要が生じる。  すなわち、相場変動との関係性やヘッジの有効性等一定の要件を満たすことを条件として、デリバティブの損益を損益に反映させず、ヘッジ対象の資産・負債の決済時点まで貸借対照表に計上して繰り延べ、両者の損益を対応させる処理を行うこととした。

(注)  ヘッジ対象の資産・負債が時価評価できる場合には、デリバティブの損益を繰延べず、両者の損益を同時に計上することもできる。

「金融商品に係る会計基準」
第五 ヘッジ会計
一 ヘッジ会計の意義
 ヘッジ会計とは、ヘッジ取引のうち一定の要件を充たすものについて、ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を会計に反映させるための特殊な会計処理をいう。(注11)

二 ヘッジ対象
 ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象は、相場変動等による損失の可能性がある資産又は負債で、当該資産又は負債に係る相場変動等が評価に反映されていないもの、相場変動等が評価に反映されているが評価差額が損益として処理されないもの若しくは当該資産又は負債に係るキャッシュ・フローが固定されその変動が回避されるものである。なお、ヘッジ対象には、予定取引により発生が見込まれる資産又は負債も含まれる。(注12)

三 ヘッジ会計の要件
 ヘッジ取引にヘッジ会計が適用されるのは、次の要件がすべて充たされた場合とする。

1.ヘッジ取引時の要件  ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、取引時に、次のいずれかによって客観的に認められること

(1)  当該取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、文書により確認できること

(2)  企業のリスク管理方針に関して明確な内部規定及び内部統制組織が存在し、当該取引がこれに従って処理されることが期待されること

2.ヘッジ取引時以降の要件  ヘッジ取引時以降において、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態又はヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される状態が引き続き認められることによって、ヘッジ手段の効果が定期的に確認されていること

四 ヘッジ会計の方法
1.ヘッジ取引に係る損益認識時点
 ヘッジ会計は、原則として、時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで資産又は負債として繰り延べる方法による。  ただし、ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることにより、その損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識することもできる。(注13)(注14)

2.ヘッジ会計の要件が充たされなくなったときの会計処理
 ヘッジ会計の要件が充たされなくなったときには、ヘッジ会計の要件が充たされていた間のヘッジ手段に係る損益又は評価差額は、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べる。  ただし、繰り延べられたヘッジ手段に係る損益又は評価差額について、ヘッジ対象に係る含み益が減少することによりヘッジ会計の終了時点で重要な損失が生じるおそれがあるときは、当該損失部分を見積もり当期の損失として処理しなければならない。

3.ヘッジ会計の終了
 ヘッジ会計は、ヘッジ対象が消滅したときに終了し、繰り延べられているヘッジ手段に係る損益又は評価差額は当期の損益として処理しなければならない。また、ヘッジ対象である予定取引が実行されないことが明らかになったときにおいても同様に処理する。

注解
注11 ヘッジ取引について
 ヘッジ取引についてヘッジ会計が適用されるためには、ヘッジ対象が相場変動等による損失の可能性にさらされており、ヘッジ対象とヘッジ手段とのそれぞれに生じる損益が互いに相殺されるか又はヘッジ手段によりヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される関係になければならない。  なお、ヘッジ対象が複数の資産又は負債から構成されている場合は、個々の資産又は負債が共通の相場変動等による損失の可能性にさらされており、かつ、その相場変動等に対して同様に反応することが予想されるものでなければならない。
注12 予定取引について
 予定取引とは、未履行の確定契約に係る取引及び契約は成立していないが、取引予定時期、取引予定物件、取引予定量、取引予定価格等の主要な取引条件が合理的に予測可能であり、かつ、それが実行される可能性が極めて高い取引をいう。
注13 複数の資産又は負債から構成されているヘッジ対象に係るヘッジ会計の方法ついて
 複数の資産又は負債から構成されているヘッジ対象をヘッジしている場合には、ヘッジ手段に係る損益又は評価差額は、損益が認識された個々の資産又は負債に合理的な方法により配分する。
注14 金利スワップについて
 資産又は負債に係る金利の受払条件を変換することを目的として利用されている金利スワップが金利変換の対象となる資産又は負債とヘッジ会計の要件を充たしており、かつ、その想定元本、利息の受払条件(利率、利息の受払日等)及び契約期間が当該資産又は負債とほぼ同一である場合には、金利スワップを時価評価せず、その金銭の受払の純額等を当該資産又は負債に係る利息に加減して処理することができる。


新株引受権付社債及び転換社債の会計

「金融商品に係る会計基準」
一 払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品の会計処理

 契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品である新株引受権付社債及び転換社債の発行又は取得については、それぞれ次のように処理する。(注1)

1.新株引受権付社債の会計処理

(1)  発行者側の会計処理  
 新株引受権付社債の発行価額は、社債の対価部分と新株引受権の対価部分とに区分する。  社債の対価部分は、普通社債の発行に準じて処理する。  新株引受権の対価部分は負債の部に計上し、権利が行使されたときは資本準備金に振り替え、権利が行使されずに権利行使期限が到来したときは利益として処理する。(注15)

(2)  取得者側の会計処理
 新株引受権付社債の取得価額は、社債の対価部分と新株引受権の対価部分とに区分する。  社債の対価部分は、普通社債の取得に準じて処理する。  新株引受権の対価部分は、新株引受権として資産に計上し、権利を行使したときは株式に振り替え、権利を行使せずに権利行使期限が到来したときは損失として処理する。(注15)

2.転換社債の会計処理

(1)  発行者側の会計処理
 転換社債の発行価額は、社債の対価部分と株式転換権の対価部分とに区分せず普通社債の発行に準じて処理する又は新株引受権付社債に準じて処理する。

(2)  取得者側の会計処理  転換社債の取得価額は、社債の対価部分と株式転換権の対価部分とに区分せず普通社債の取得に準じて処理し、権利を行使したときは株式に振り替える。

注解
(注1)  金融資産及び金融負債の範囲について  金融資産及び金融負債の範囲には、複数種類の金融資産又は金融負債が組み合わされている複合金融商品も含まれる。  また、現物商品(コモディティ)に係るデリバティブ取引のうち、通常差金決済により取引されるものから生じる正味の債権又は債務についても、本基準に従って処理する。
(注15)
新株引受権付社債を区分する方法について
1 発行者側においては、次のいずれかの方法により、新株引受権付社債の発行価額を社債の対価部分と新株引受権の対価部分とに区分する。

(1)  社債及び新株引受権の発行価格又はそれらの合理的な見積額の比率で配分する方法
(2)  算定が容易な一方の対価を決定し、これを発行価額から差し引いて他方の対価を算定する方法

2 取得者側においては、1の(1)又は(2)のいずれかの方法により、新株引受権付社債の取得価額を社債の対価部分と新株引受権の対価部分とに区分する。ただし、保有社債及び新株引受権に市場価格がある場合には、その比率により区分することもできる。

上記の日本基準では、新株引受権付社債の発行による新株引受権の対価を、発行時には確定していないという理由で仮勘定に計上する方法を取っています。
一方,米国基準では、分離型新株引受権付社債の発行では,発行時に発行の事実は確定しており、新株引受権の部分は発行時に全額を資本準備金とするようになってます。また、非分離型新株引受権付社債は実質的に転換社債同様であるところから、転換社債同様、新株引受権と社債が不可分であるところから新株引受権について区分経理しないことになっています。日本の場合,分離型・非分離型の区分が無く、非分離型はないとしているのかも知れません。

その他の複合商品の会計

「金融商品に係る会計基準の概要」
(2)  金利オプションを組み込んだ借入金のように金利の支払がネットされるものは原則として一つの金融商品として処理する。ただし、デリバティブの価値が元本の返済額を増減させるようなもの(借入元本に係る通貨オプションを組み入れた円建ローン等)は元本とデリバティブを区分し、元本は原価評価・デリバティブは時価評価することとした。  
「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」
2.その他の複合金融商品

 上記以外の複合金融商品には、金利オプション付借入金のように現物の資産及び負債とデリバティブ取引が組み合わされたもの及びゼロ・コスト・オプションのように複数のデリバティブ取引が組み合わされたものがある。  このような複合金融商品を構成する複数種類の金融資産又は金融負債は、それぞれ独立して存在しうるが、複合金融商品からもたらされるキャッシュ・フロ−は正味で発生する。このため、資金の運用・調達の実態を財務諸表に適切に反映させるという観点から、原則として、複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分せず一体として処理することとした。ただし、通貨オプションが組み合わされた円建て借入金のように、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性がある場合に、当該複合金融商品の評価差額が損益に反映されないときには、当該複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分して処理することが必要である。  なお、金融機関のように、経営上、複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を継続して区分して管理しており、投資情報としても区分して処理することが経営の実態を表す上で有用な場合には、区分して処理することも認められるものとする。
「金融商品に係る会計基準」
二 その他の複合金融商品の会計処理
 
契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品は、原則として、それを構成する個々の金融資産又は金融負債とに区分せず一体として処理する。(注1)
注1 金融資産及び金融負債の範囲について  金融資産及び金融負債の範囲には、複数種類の金融資産又は金融負債が組み合わされている複合金融商品も含まれる。  また、現物商品(コモディティ)に係るデリバティブ取引のうち、通常差金決済により取引されるものから生じる正味の債権又は債務についても、本基準に従って処理する。

金融商品の時価会計と連結決算

金融商品の時価会計は、連結決算でも子会社を含めた時価会計が求められますし、関連会社の財務諸表によって持分法による投資損益を計上する場合も、関連会社の財務諸表は時価会計を適用した後の財務諸表を基礎として計算することになります。
したがって、連結決算で金融商品の時価会計を適用するためには、子会社および関連会社が適切に時価会計を適用してもらえる体制作りが必要となります。すなわち、連結決算体制作りが大切となります。

なお、連結決算の手順については、「連結財務諸表作成の基礎」に詳細な解説を行っていますので、参照してください。

事例・・ソニーのケース

ソニーは米国SECに年次報告書をSEC EDGAR Databaseに直接登録しています。ここに例示したソニーの年次報告書はエドガーデータベースからダウンロードし、抜粋したものです。

1998年3月期の年次報告書(Form20F、米国SECが外国会社に適用の有価証券報告書の様式)に掲載の、連結財務諸表に注記された「重要な会計方針」に金融商品に関する事項は、次ぎのようになっています。なお、日本の「金融商品の時価会計」は、ソニーの注記の通り、米国会計基準とほぼ一致しました。

Marketable securities -

Marketable securities consist of debt and equity securities. Debt securities and equity securities designated as available-for-sale, whose fair values are readily determinable, are carried at fair value with unrealized gains or losses included as a component of stockholders' equity, net of applicable taxes. Debt and equity securities classified as trading securities are carried at fair value with unrealized gains or losses included in income. Debt securities that are expected to be held-to-maturity are carried at amortized cost. Individual securities classified as either available-for-sale or held-to-maturity are reduced to net realizable value by a charge to income for other than temporary declines in fair value. Realized gains and losses are determined on the average cost method and are reflected in income.
有価証券ー

有価証券は、負債及び持分証券(訳者注:社債及び株式を意味する)で構成する。公正価格があり、売却可能な負債証券及び持分証券は公正価格で計上し、未実現利益又は損失は税引き後で株主持分の構成部分として含めています。トレーディング証券(訳者注:売買目的の有価証券)としての負債及び持分証券は、未実現利益又は損失を利益に計上して公正価格で計上しています。満期日まで保有する目的の負債証券は償却原価で計上しています。売却可能または満期日まで保有する個別の有価証券は、公正価額が一時的に低下している以外は,利益を変更することによって、正味実現可能価額まで減額しています。実現利益または損失は平均法で行い利益に反映させています。

デリバティブについては次ぎのようになっています。

Derivative financial instruments -

Derivative financial instruments, which include foreign exchange forward contracts, foreign currency option contracts, interest rate swap agreements, and interest rate and currency swap agreements, are used in the company's risk management of foreign currency and interest rate risk exposures of its financial assets and liabilities.

Foreign exchange forward contracts:

Foreign exchange forward contracts are used to limit exposure to losses, resulting from changes in foreign currency exchange rates, on accounts receivable and payable and anticipated transactions denominated in foreign currencies. Foreign exchange forward contracts which are designated and effective as hedges of such currency exchange rate risk on existing assets and liabilities are marked to market and included as an offset to foreign exchange gains/losses recorded on the existing assets and liabilities. Such contracts on anticipated transactions, including contracts used to hedge intercompany foreign currency commitments which do not qualify as firm commitments, are marked to market with changes in value recognized in foreign exchange gains/losses.

Foreign currency option contracts:

The company enters into purchased foreign currency option contracts to limit exposure to losses, resulting from changes in foreign currency exchange rates, on accounts receivable and anticipated transactions denominated in foreign currencies. The company also enters into written foreign currency option contracts, of which the majority are part of range forward contracts corresponding to the purchased foreign currency option contracts. The carrying values of all foreign currency option contracts are marked to market with changes in value recognized in foreign exchange gains/losses.

Interest rate swap agreements and interest rate and currency swap agreements:

The company enters into interest rate swap agreements or interest rate and currency swap agreements in order to lower funding costs, to diversify sources of funding and to limit the company's exposure to loss in relation to underlying debt instruments resulting from adverse fluctuations in interest rates or foreign currency exchange rates. The related interest differentials paid or received under the interest rate swap agreements and under the interest rate and currency swap agreements are recognized over the terms of the agreements in interest expense. Currency swap portions of the interest rate and currency swap agreements which are designated and effective as hedges of exposure to losses resulting from changes in foreign currency exchange rates on underlying debt denominated in foreign currency are marked to market and included as an offset to foreign exchange gains/losses on the underlying debt.

After an underlying hedged transaction is settled or ceases to exist, all changes in fair value of related derivatives which have not been settled are recognized in foreign exchange gains/losses.

マイクロソフト社の年次報告書に見る事例(99年6月決算)

日本の会計基準が基礎とした国際会計基準は、米国会計基準を基礎としている。したがって、既に時価会計で行っているマイクロソフト社の年次報告書が参考となろう。金融商品に関連する部分を抜粋し参考に供する。

米国会計では利益剰余金に包括利益の部(下記"株主持分計算書"参照)に、売却可能な金融資産の時価会計の含み益の増加・減少(株主持分計算書の"投資の未実現利益"参照)を計上するが、日本の会計では、資本の部へ計上することとなっているだけで、包括利益概念はない。実質的な相違ではない。米国基準は国際会計基準と同様に財務諸表は非常に簡潔であるが注記に紙数を割いており、帳簿記録(Bookkeeping)を超えて会計(Accounting)は情報開示である事がわかる。

マイクロソフト社の財務諸表の抜粋
貸借対照表(抜粋)
Balance Sheets
(In millions)(百万単位)
--------------------------------------------------------------------------
June 30 6月30日 1998 1999
--------------------------------------------------------------------------
Assets 資産:
Current assets: 流動資産:
 Cash and short-term investments 現金及び短期投資 (1) $13,927 $17,236
 Accounts receivable 売掛金 1,460 2,245
 Other その他 502 752
Total current assets 流動資産合計 15,889 20,233
Property and equipment 有形固定資産 1,505 1,611
Equity and other investments 持分及びその他の投資(2) 4,703 14,372
Other assets その他の資産 260 940
Total assets 資産合計 $22,357 $37,156
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株主持分計算書(抜粋)
Stockholders' Equity Statements
 
(In millions)(百万単位)
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Year Ended June 30 6月30日終了年度 1997 1998 1999
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Retained earnings 利益剰余金
Balance, beginning of year 期首残高 3,984 5,288 7,622
Net income 純利益 3,454 4,490 7,785
Other comprehensive income:その他の包括利益:
  Net unrealized investment gains 投資未実現利益 280 627 1,052
Translation adjustments and other 換算調整その他 5 (124) 69
Comprehensive income 包括利益 3,739 4,993 8,906
Preferred stock dividends 優先株配当金 (15) (28) (28)
Common stock repurchased 普通株買戻し (3,010) (2,631) (2,886)
Reclassification of put warrant obligation ワラント債務の組替え 590 -- --
Balance, end of year 期末残高 5,288 7,622 13,614
Total stockholders' equity 株主持分合計 $10,777 $16,627 $28,438
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財務諸表の注記(抜粋)
Notes to Financial Statements 
 

Accounting Policies会計方針

Financial instruments. 金融商品


会社は、取得日に期間が3ヶ月以内の流動性の高い利付き投資のすべてを現金同等物としている。短期投資は、一般に、購入日から3ヶ月超と6年の間の満期ものである。すべての現金及び短期投資は売却可能であり、個別法で時価で記録している;未実現損益はその他の包括利益に反映している。現金及び短期投資に表示している原価は概ね時価である;実現及び未実現損益は重要性が無い。
The Company considers all liquid interest-earning investments with a maturity of three months or less at the date of purchase to be cash equivalents. Short-term investments generally mature between three months and six years from the purchase date. All cash and short-term investments are classified as available for sale and are recorded at market using the specific identification method; unrealized gains and losses are reflected in other comprehensive income. Cost approximates market for all classifications of cash and short-term investments; realized and unrealized gains and losses were not material.

持分及びその他の投資には負債証券及び持分商品を含んでいる。負債証券及び公開している持分証券は売却可能に区分し個別法で時価により記録している。未実現損益はその他の包括利益に反映している。ジョイントベンチャーを除いて、その他の投資のすべては原価で記録している。
Equity and other investments include debt and equity instruments. Debt securities and publicly traded equity securities are classified as available for sale and are recorded at market using the specific identification method. Unrealized gains and losses are reflected in other comprehensive income. All other investments, excluding joint venture arrangements, are recorded at cost.

デリバティブ金融商品は、特定の投資、国際的な収入、売掛金及び利率リスクに対するヘッジとして使用しており、売買以外の目的で所有している。これらの商品は財務諸表に認識した金額を超える信用リスク及び市場リスクの要素を含んでいるかもしれない。会社はそのポジションや取引相手の信用の質をモニターし、主に主要な金融機関が関与し、いかなる取引相手も未履行となると予期していない。
Derivative financial instruments are used to hedge certain investments, international revenue, accounts receivable, and interest rate risks, and are, therefore, held primarily for purposes other than trading. These instruments may involve elements of credit and market risk in excess of the amounts recognized in the financial statements. The Company monitors its positions and the credit quality of counter parties, consisting primarily of major financial institutions, and does not anticipate nonperformance by any counter party.

Financial Risks 財務リスク

会社の現金及び短期投資のポートフォリオは様々で主に投資適格の有価証券で構成されている。投資は高品質な金融機関、政府及び政府のエージェンシー及び企業のもので保有し、これにより信用リスクを集中的に減少させている。金利変動はポートフォリオの帳簿価値に影響する。会社は、突然の金利激変という事態にポートフォリオの収益率をオプションによって常にヘッジしている。1999年6月30日現在、オプションの想定金額の残高は、40億ドルであった。オプションの公正価値及び支払ったプレミアムは重要な金額ではなかった。会社の多くの持分証券のポートフォリオは、変動しやすくいため特定のポジションはヘッジされている。
The Company's cash and short-term investment portfolio is diversified and consists primarily of investment grade securities. Investments are held with high-quality financial institutions, government and government agencies, and corporations, thereby reducing credit risk concentrations. Interest rate fluctuations impact the carrying value of the portfolio. The Company routinely hedges the portfolio's return with options in the event of a catastrophic increase in interest rates. At June 30, 1999, the notional amount of the options outstanding was $4.0 billion. The fair value and premiums paid for the options were not material. Much of the Company's equity security portfolio is highly volatile, so certain positions are hedged.

ヨーロッパ、日本、カナダ及びアーストラリアなどの国際的な顧客への製品販売は、原則としてその国の通貨で請求している。支払いサイクルは相対的に短く90日以内が一般である。国際的な製造及び事業活動費はその国の通貨で支払っている。その国の通貨で短期の必要な運転資金を超える現金は、原則として米国ドルの現金及び短期投資に転換している。外国為替レート変動は一般的には、重要なバランスシート損益を創出しないが、会社は外国通貨建ての売掛金残高の部分を主にオプション購入によってヘッジしている。1999年6月30日現在、オプションの想定金額の残高は、6億62百万ドルであった。オプションの公正価値及び支払いプレミアムは重要な金額ではなかった。
Finished goods sales to international customers in Europe, Japan, Canada, and Australia are primarily billed in local currencies. Payment cycles are relatively short, generally less than 90 days. Certain international manufacturing and operational costs are disbursed in local currencies. Local currency cash balances in excess of short-term operating needs are generally converted into U.S. dollar cash and short-term investments on receipt. Although foreign exchange rate fluctuations generally do not create a risk of material balance sheet gains or losses, the Company hedges a portion of accounts receivable balances denominated in local currencies, primarily with purchased options. At June 30, 1999, the notional amount of options outstanding was $662 million. The fair value and premiums paid for the options were not material.

外国為替レート会社は、外国子会社の業績を換算するのに影響する。会社は、オプションを購入することによって計画された国際的収入の部分をヘッジしている。1999年6月30日現在、オプションの想定金額の残高は、22億5千万ドルであった。オプションの公正価値及び支払いプレミアムは重要な金額ではなかった。
Foreign exchange rates affect the translated results of operations of the Company's foreign subsidiaries. The Company hedges a portion of planned international revenue with purchased options. The notional amount of the options outstanding at June 30, 1999 was $2.25 billion. The fair value and premiums paid for the options were not material.

1998年及び1999年6月30日現在、売掛金の約40%及び50%は10件の顧客からのものである。1997年、1998年及び1999年の収入の、それぞれ、12%、8%及び11%が一つの顧客からのものである。
At June 30, 1998 and 1999, approximately 40% and 50% of accounts receivable represented amounts due from 10 customers. One customer accounted for approximately 12%, 8%, and 11% of revenue in 1997, 1998, and 1999.

マイクロソフト社は固定利益及び持分証券を投資収益を大きくするため貸している。適切な担保及び/又は証券利息は、借入れている者の信用価値と保証を基礎にして決めている。
Microsoft lends certain fixed income and equity securities to enhance investment income. Adequate collateral and/or security interest is determined based upon the underlying security and the credit worthiness of the borrower.

現金及び短期投資(1)
Cash and Short-Term Investments 

--------------------------------------------------------------------------
June 30 6月30日 1998 1999
--------------------------------------------------------------------------
Cash and equivalents:現金及び同等物
Cash 現金 $ 195 $ 635
Commercial paper CP 2,771 3,805
Certificates of deposit 譲渡性預金 419 522
Money market preferreds MMP 454 13
Cash and equivalents 現金及び同等物 3,839 4,975
Short-term investments:短期投資
Commercial paper CP 868 1,026
U.S. government and agency securities 米国政府及びエージェンシー 3,511 3,592
Corporate notes and bonds 企業の社債 3,998 6,996
Municipal securities 地方自治体証券 1,361 247
Certificates of deposit 譲渡性預金 350 400
Short-term investments 短期投資 10,088 12,261
Cash and short-term investments 現金及び短期投資(1) $13,927 $17,236
========= =========

持分及びその他の投資(2)
Equity and Other Investments  

----------------------------------------------------------------------------------------------------
June 30, 1999 1999年6月30日 原価
Cost
Basis
正味
未実現利益
Net
Unrealized
Gains
時価
Recorded
Basis
----------------------------------------------------------------------------------------------------
Debt securities recorded at market, maturing: 時価で記録した負債証券、期日:
Within one year 1年以内 $ 682 $ 8 $ 690
Between 10 and 15 years 10年と15年の間 533 (3) 530
Beyond 15 years (AT&T) 15年を超えるもの(AT&T) 4,731 347 5,078
Debt securities recorded at market 時価で記録した負債証券 5,946 352 6,298
Equity securities recorded at market: 時価で記録した持分証券:
Comcast Corporation common stock コムキャスト社の普通株 500 1,394 1,894
MCI Worldcom, Inc. common stock MCIワールドコム社普通株 14 1,088 1,102
Other その他 849 1,102 1,951
Unrealized hedge loss 未実現ヘッジ損失 -- (785) (785)
Equity securities recorded at market 時価で記録した持分証券 1,363 2,799 4,162
Equity securities and instruments recorded at cost: 原価で記録した持分証券及び商品:
Nextel Communications, Inc. common stock ネクステル・コミュニケーション社の普通株 600 -- 600
Comcast Corporation convertible preferred stock コムキャスト社の普通株 555 -- 555
NTL, Inc. convertible preferred stock NTL社の転換優先株 511 -- 511
Other その他 2,179 -- 2,179
Equity securities and instruments recorded at cost 原価で記録した持分証券及び商品 3,845 -- 3,845
Other investments その他の投資 67 -- 67
Equity and other investments 持分及びその他の投資(2) $11,221 $3,151 $14,372
========= ========= =========


負債証券は企業の社債及び政府債及びデリバティブ証券を含んでいる。期日が15年を超える負債証券は、すべて30年満期のAT&T社の5%転換優先負債である。この負債は、2000年12月1日以後、AT&T社の普通株に転換でき、または、2002年6月1日以後、特定の条件を満たした場合は、AT&T社により償還できる。1998年6月30日現在、時価で記録した持分証券の未実現利益は、14億ドルであった。原価で記録した持分証券及び商品は、主に公開市場で取引していなかったり取引が制限されている優先株、普通株及びワラントを含んでいる。1998年及び1999年6月31日現在、公表された市場の情報又はその他経営者の見積もりを基礎にすると、これら投資の見積もり公正価値は24億ドル及び61億ドルであった。会社は、特定の高度に変動しやすい持分証券に関し重要な市場価格の下落のリスクに対してヘッジしている。オプションは、関連する持分証券に一致させて、時価で記録している。1999年6月30日現在、オプションの想定金額の残高は、21億ドルであった;公正価値は10億ドルであった;支払いプレミアムは重要な金額ではなかった。1997年及び1998年の持分及びその他の投資からの実現利益または損失は重要な金額ではなかった;1999年の実現利益は6億23百万ドルであり、実現損失は重要な金額ではなかった。
Debt securities include corporate and government notes and bonds and derivative securities. Debt securities maturing beyond 15 years are composed entirely of AT&T 5% convertible preferred debt with a contractual maturity of 30 years. The debt is convertible into AT&T common stock on or after December 1, 2000, or may be redeemed by AT&T upon satisfaction of certain conditions on or after June 1, 2002. Unrealized gains on equity securities recorded at market were $1.4 billion on June 30, 1998. Equity securities and instruments recorded at cost include primarily preferred stock, common stock, and warrants that are restricted or not publicly traded. At June 30, 1998 and 1999, the estimated fair value of these investments was $2.4 billion and $6.1 billion, based on publicly available market information or other estimates determined by management. The Company hedges the risk of significant market declines on certain highly volatile equity securities with options. The options are recorded at market, consistent with the underlying equity securities. At June 30, 1999, the notional amount of the options outstanding was $2.1 billion; the fair value was $1.0 billion; and premiums paid for the options were not material. Realized gains and losses of equity and other investments in 1997 and 1998 were not material; realized gains were $623 million and losses were not material in 1999.

実施時期等

「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」
実施時期
(1)  金融商品に係る会計基準は、平成12年4月1日以後開始する事業年度から実施されるよう措置することが適当である。

(2)  その他有価証券については、平成12年4月1日以後開始する事業年度は帳簿価額と期末時価との差額について税効果を適用した場合の注記を行うこととし、財務諸表における時価評価は平成13年4月1日以後開始する事業年度から実施することが適当である。ただし、平成12年4月1日以後開始する事業年度から財務諸表において時価評価を行うことも妨げないこととする。

(3)  本基準のうち、金融商品の評価基準に関係しない金融資産及び金融負債の発生又は消滅の認識、貸倒見積高の算定方法については、実施に関する実務上の対応が可能となった場合には、平成12年4月1日前に開始する事業年度から適用することを妨げないこととする。

(4)  本基準の実施に際し、「外貨建取引等会計処理基準」との調整が必要となるため、当審議会において、今後早急に検討する必要がある。また、時価情報の注記方法についても所要の見直しが必要となる。 

2.経過措置
(1)  いわゆるローン・パーティシペーションやデット・アサンプションは、本基準における金融資産及び金融負債の消滅の認識要件を充たさないこととなるが、当分の間、次のように取り扱うこととする。

@  ローン・パーティシペーションは、我が国の商慣行上、債権譲渡に際して債務者の承諾を得ることが困難な場合、債権譲渡に代わる債権流動化の手法として広く利用されている。このような実情を考慮し、債権に係るリスクと経済的利益のほとんどすべてが譲渡人から譲受人に移転している場合等一定の要件を充たすものに限り、当該債権の消滅を認識することを認めることとする。

A  デット・アサンプションは、我が国では社債の買入償還を行うための実務手続きが煩雑であることから、法的には債務が存在している状態のまま、社債の買入償還と同等の財務上の効果を得るための手法として広く利用されている。従って、改めて、オフバランスした債務の履行を求められることもあり得るが、このような手続上の実情を考慮し、取消不能の信託契約等により、社債の元利金の支払いに充てることのみを目的として、当該元利金の金額が保全される資産を預け入れた場合等、社債の発行者に対し遡求請求が行われる可能性が極めて低い場合に限り、当該社債の消滅を認識することを認めることとする。

(2)  ヘッジ会計の適用に当たり、決済時における円貨額を確定させることにより為替相場の変動による損失の可能性を減殺するため、為替予約、通貨先物、通貨スワップ及び権利行使が確実に見込まれる買建通貨オプションを外貨建金銭債権債務等のヘッジ手段として利用している場合において、ヘッジ会計の要件が充たされているときは、「外貨建取引等会計処理基準」における振当処理も、ヘッジの効果を財務諸表に反映させる一つの手法と考えられるため、当分の間、振当処理を採用することも認めることとする。  なお、これらの経過措置を必要とすることに関し実務上の制約がなくなったときは、本基準に従って会計処理される必要があるため、今後、適宜、当該経過措置の見直しを行うものとする。

大蔵省の法人税の取扱い方針

2000年2月8日、日本経済新聞は、大蔵省の「金融商品:時価会計」の導入に関連して法人税の取扱い方針を次ぎのように伝えている。
2001年3月期より、短期売買目的の有価証券について「売買部門を持つ企業を対象として課税する」方針と報道した。「最も重視するのは有価証券の短期売買を手がけるディーリング部門の有無。専門の人材や場所、名前を持っているかどうかで課税対象の法人になるかどうかを判断する。さらに会社が日々の取引を記録する帳簿上、有価証券が「短期の相場変動で利益を得る目的」になっている場合に課税対象とする。この結果、独立した取引部門を持たない企業は原則として適用を受けない見通し。銀行、証券、商社などを除くと「本業以外の有価証券売買で利益を上げているところは少ない」(主税局)としている。

大蔵省は、投資目的で保有する株式等は課税しない方針である。

改正法人税法

平成12年4月1日以後開始する事業年度から、上場有価証券の評価方法として認められていた低価法が廃止されました。改正後は、次の通りとなります。

有価証券の区分 帳簿価額 期末評価
売買目的有価証券 移動平均法
または
総平均法
時価法
売買目的外有価証券 満期保有目的有価証券 原価法(償還期限及び償還金額の定めの
あるものについては償却原価法
その他の有価証券

時価法による評価損益(洗替法)を計上しなければならない売買目的有価証券の法人税法の定義は次の通りです。

改正事業年度開始の時に有しているもの
@ 旧租税特別措置法第67条の9第1項に規定する金融機関等の特定取引勘定に属する有価証券
A 保険業法第118条第1項に規定する特別勘定に属する有価証券
B 短期売買目的で保有しているものとして、「売買目的有価証券」等の勘定科目により区分した有価証券(平成12年3月31日以前6ヶ月以内に銘柄を同じくする有価証券の取得及び譲渡の実績のないもの並びに上記@及びAに該当するものを除く)
C 短期売買目的の有価証券を取得する金銭の信託として区分した金銭の信託のその信託財産に属する有価証券(平成12年3月31日以前6ヶ月以内にその信託財産に属する有価証券の取得及び譲渡の実績がない場合を除く)
改正事業年度以後取得するもの
@ 短期的な価格変動を利用して利益を得る目的(以下「短期売買目的」という)で行う取引に専ら従事する者が、短期売買目的でその取得の取引を行った有価証券
A 短期売買目的で取得したものとして、その取得の日に「売買目的有価証券」等の勘定科目により区分した有価証券(@に該当するものを除く)
B 短期売買目的の有価証券を取得する金銭信託(合同運用信託、証券投資信託等を除く。以下同じ。)として、信託財産となる金銭を支出した日に区分した金銭のその信託財産に属する有価証券


金融商品の時価会計の簡単な仕訳例

適用初年度に下記のような帳簿価額と時価との対照表を用意する。

企業会計審議会の会計基準には適用初年度の取扱いについて規定していない。日本公認会計士協会の「金融商品会計に関する実務指針(中間報告)<1>」の200項によれば、適用初年度で「評価差額を過年度分と当年度分に区分して把握し処理する必要はない」としているのでそれに準拠する。

2001年3月31日現在
株式数 帳簿価額 帳簿価額合計 時価 時価総額 含み損益
売買目的有価証券:
A社株式 100,000 700 70,000,000 750 75,000,000 5,000,000
B社株式 500,000 150 75,000,000 100 50,000,000 -25,000,000
C社株式 15,000 520 7,800,000 600 9,000,000 1,200,000
D社株式 2,000 300 600,000 450 900,000 300,000
合計 ----------
153,400,000
----------
134,900,000
----------
-18,500,000
その他の有価証券:
F社株式 1,230 740 910,200 600 738,000 -172,200
G社株式 3,456 860 2,972,160 900 3,110,400 138,240
H社株式 7,891 570 4,497,870 450 3,550,950 -946,920
合計 ----------
8,380,230
----------
7,399,350
---------
-980,880

売買目的有価証券の会計処理:

時価−帳簿価額=含み損益

時価 帳簿価額 含み損益
134,900,000 153,400,000 -18,500,000
時価への修正仕訳: 借方 貸方
有価証券評価損 18,500,000
 有価証券 18,500,000

その他の有価証券の会計処理:

時価 帳簿価額 含み損益
7,399,350 8,380,230 -980,880
時価への修正仕訳: 借方 貸方
資本の部・・その他の有価証券評価差額 980,880
投資有価証券 980,880

資本の部に計上の含み損益に対する税効果計上

有価証券含み損益X実効税率=税効果額

含み損益 実効税率 税効果額
980,880 42% 411,970
税効果会計の仕訳: 借方 貸方
繰延税金資産・・長期 411,970
 資本の部・・その他の有価証券評価差額、税効果控除後 411,970

翌年度に株式売却

2001年5月売却
売却株数 売却価額 売却代金合計
A社株式 10,000 800 8,000,000

売却損益を計算する基礎は、取得原価による。 10000株X700円=7百万円(取得原価)

売却の仕訳:
仕訳 借方 貸方
現預金 8,000,000
 有価証券(帳簿価額) 7,000,000
 有価証券売却益 1,000,000

株式購入

2001年7月購入
購入株数 購入価額 購入価額合計
F社株式 360 650 234,000
購入の仕訳: 借方 貸方
投資有価証券 234,000
現金預金 234,000

適用2年度目決算

適用初年度と同じように下記のような帳簿価額と時価との対照表を用意する。

企業会計審議会の「金融商品に係る会計基準」によれば、売買目的有価証券は「時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理する」とあり、その他の有価証券は、「時価をもって貸借対照表価額とし評価差額は洗い替え方式に基づき、(1)評価差額の合計額を資本の部に計上する、(2)評価益は資本の部へ、評価損は当期の損失として処理する、のいずれかの方法で、税効果会計を適用し、資本の部において他の剰余金と区分して記載しなければならない」とある。

ここでは、その他の有価証券の評価差額(含み損失を含む)は、すべて資本の部で処理するものとした。

2002年3月31日現在
株式数 帳簿価額 帳簿価額合計 時価 時価総額 含み損益
売買目的有価証券:
A社株式 90,000 700 63,000,000 850 76,500,000 13,500,000
B社株式 500,000 150 75,000,000 150 75,000,000 0
C社株式 15,000 520 7,800,000 700 10,500,000 2,700,000
D社株式 2,000 300 600,000 460 920,000 320,000
合計 ----------
146,400,000
----------
162,920,000
----------
16,520,000
その他の有価証券:
F社株式 1,590 720 1,144,200 550 874,500 -269,700
G社株式 3,456 860 2,972,160 960 3,317,760 345,600
H社株式 7,891 570 4,497,870 600 4,734,600 236,730
合計 -----------
8,614,230
-----------
8,926,860
-----------
312,630

売買目的有価証券の会計処理:

時価 帳簿価額 含み損益
162,920,000 146,400,000 16,520,000
時価への修正仕訳(洗い替え法): 借方 貸方
有価証券 16,520,000
有価証券評価損益 16,520,000
前期末の評価損益の戻入:
有価証券 18,500,000
有価証券評価損益 18,500,000

その他の有価証券の会計処理:

時価 帳簿価額 含み損益
8,926,860 8,614,230 312,630
時価への修正仕訳(洗い替え法): 借方 貸方
投資有価証券 312,630
資本の部・・その他の有価証券評価差額 312,630
前期末の評価損益の戻入:
投資有価証券 980,880
資本の部・・その他の有価証券評価差額 980,880

資本の部に計上の評価差額に対する税効果の計上

含み損益 実効税率 税効果額
312,630 42% 131,305
税効果会計の仕訳(洗い替え法): 借方 貸方
資本の部・・その他の有価証券評価差額、税効果控除後 131,305
繰延税金負債・・長期 131,305
前期の税効果戻入:
資本の部・・その他の有価証券評価差額、税効果控除後 411,970
繰延税金資産・・長期 411,970


JWGの公開草案(公正価値会計への潮流)・・2000年12月

1997年に、国際会計基準委員会は「金融商品の包括基準」を検討するため、主要国の会計基準設定主体で構成される作業グループ(International Joint Working Group of Standrd Setters、JWGと称す)を組織した。

JWGのメンバーは、各国の会計基準設定主体である米国(FASB)、英国(ASB)、カナダ(AcSB)、オーストラリア(AARF)、フランス(CNC)、国際会計基準委員会(IASC)のほか、ドイツ、ニュージーランド、ノルエーに日本(日本公認会計士協会より参加)の9カ国プラスIASCである。

2000年12月公開草案を公表した。これによると、@ すべての金融商品(子会社・関連会社株式を除く)について公正価値(Fair value)で評価し、A 公正価値評価による含み損益は損益計算書に計上する、B 認識と消滅(コンポネンツ・アプローチ)、C 財務リスク等の情報開示、の4つの柱で構成されている。
ヘッジ会計(ヘッジ対象とヘッジ目的のデリバティブの損益を同時に計上するため繰延べる会計処理)は認められない。ヘッジ対象もデリバティブ双方とも公正価値で評価することが求められている。

なお、日本はGWJに日本公認会計士協会から参加しており、日本公認会計士協会は、2001年1月、他の主要国と同時にこの公開草案を公表し7月末までに日本語でのコメントを集め英語でのデッドライン9月末までにIASCへ報告するとしています。

2001年から新組織となる国際会計基準委員会(IASC)がそのまま公開草案として取上げるかは明確にされていないが、主要各国の会計基準設定主体がJWGで公開草案を公表したことは、IASCの理事会メンバーに主要各国の会計基準設定主体からメンバーを募ることを考えるとこの公開草案の意味するところは重要である。国際会計基準39号「金融商品:認識と測定」が改正される可能性が高いということである。

国際標準に一致させようと国際会計基準39号に準拠したわが国の金融商品の時価会計は、「その他の有価証券」の時価会計による含み損益を資本の部に計上するとあり、2002年3月から強制適用となっているが再検討する必要が生まれるであろう。商法の規定も資本の部に計上する部分について、及び売買目的の有価証券についての税法も同様に近い将来再検討が必要となるだろう。

米国会計基準SFAS157号「公正価値測定」を公表、公正価値を売価と定義

2006年9月18日米国財務会計基準審議会(FASB)は、SFAS157号公正価値測定(Fair value measurements)」を公表し、公正価値の定義を資産は受け取る売却価値、負債は支払う移転価値とし明確にした。再調達原価ではないとしている。公正価値評価を求められている現行会計基準の公正価値はこの定義に統一されることとなった。また、公正価値評価による影響額は、損益計算書の損益となる。2007年11月15日以降開始する事業年度から適用で、早期適用も認められる。(SmartPro SFAS157号「公正価値測定」の翻訳by岡部孝好同志社大学教授 参照)

レベル1のインプットは、報告主体が測定日においてアクセスする能力をもつ、同一資産か同一負債のための活発な市場における相場価格(未修正のもの)である。
レベル2のインプットは、直接または間接に資産または負債のために観察可能な、レベル1に含まれる相場価格以外のインプットである。
レベル3のインプットは、資産または負債のための観察不能なインプットである。

2009年5月28日国際会計基準審議会(IASB)は、「公正価値測定(Fair Value Measurement)」のガイダンス草案を公表し、9月までコメントを求めている。これは、IASBと米国FASBが収斂作業として纏め上げたもので、米国のSFAS157号の公正価値測定と一致したものである。(結論となった背景例示 (ASBJの翻訳版) を参照)

2010年7月9日企業会計基準委員会は「公正価値測定及びその開示に関する会計基準(案)」等を公表した。上記、国際会計基準に一致させている。

「レベル1 の入力数値」とは、測定日において、企業が入手できる活発な市場における同一の資産又は負債に関する公表価格をいう。
「レベル2 の入力数値」とは、資産又は負債について、直接又は間接的に観察可能な入力数値のうち、レベル1 に含まれる公表価格以外の入力数値をいう。
「レベル3 の入力数値」とは、資産又は負債について、観察不能な入力数値をいい、観察可能な入力数値であるレベル1 の入力数値又はレベル2 の入力数値が入手できない場合に限り用いることができる。

米国FASB159号「金融資産・負債の公正価値会計の選択適用」(2007年11月以降開始事業年度から適用)

2007年2月15日、米国財務会計審議会FASBは、SFAS159号「金融資産・負債に関する公正価値会計の選択適用The Fair Value Option for Financial Assets and Financial Liabilities」とする会計基準を公表した。目的は、金融商品の会計の複雑性及び、関連する資産と負債を異なった測定から利益が変動し易くなるボラティリティ(volatility)を緩和するためとしている。適用は、2007年11月15日以降に開始する事業年度から適用である。この会計基準は、強制適用ではなく任意適用となっている。

金融資産に加えて金融負債も公正価値で評価することから金融危機のようなときには、金融負債の公正価値が小さくなり思わぬ利益となってしまうことがある。この会計基準には、法的に債務免除されないのに会計が先行して利益計上されてしまう欠陥がある。時価が下がったからと言って自社の社債を買戻し利益を計上すると負債利益が計上されると説明している大学教授がいたが、信用力を失った企業は運転資金に不足しており社債の買戻しはありえない。財務制限条項で欠損を計上した場合に繰上償還はあり得るが、現実無視と言わざるを得ない。保険会社や金融機関が時価会計に反対し、資産ばかりに時価会計の適用は理論に首尾一貫性がないとして負債も時価(公正価値)で計上すべきとしているが無理がある。強制適用までは更なる検討が必要で時間が掛かるものと思われる。

米国FASBは「転換社債等の公正価値会計」公表(2008年5月9日)

2008年5月9日、米国財務会計基準審議会(FASB)は、(FSP)スタッフ・ポジションNo.APB14-1を公表した。2008年12月15日以降開始する事業年度から適用するとしている。また、適用は比較目的のために転換社債の発行時に遡って適用するとしている。(New FASB Accounting Rules on Convertible Debt参照)

転換社債のうち、転換時に現金で一部または全部を償還するものを対象として、その転換社債の発行時の会計で、社債の公正価値と持分に区分し(split)て会計処理するというものである。なお、転換時に現金が償還に使われないものは従来どおり、社債額面が負債として示される。

草案によると、会計目的は、転換社債を@社債を公正する部分と、A株主持分を構成する部分とに区分する。この区分をスプリット会計(split accounting)と呼ぶ。発行時の持分の会計処理は、事後修正はしない。

IASPlusの具体的な数値による例示をすると、以下の通りとなる。(ただし、簡単化のため、発行コストはゼロと仮定し、税効果会計を除く)

2007年12月31日、会社は、償還期限10年間の額面1,000の転換社債を発行した。この社債の金利は1%で年度末に10を支払う。この会社の通常の借入金の利率は8%である。転換社債の償還期日は、10年後の2018年1月1日である。

報告される支払利息 転換社債の帳簿価額
会計年度 現行GAAP GAAP草案 現行GAAP GAAP草案
公正価値
現在価値
2007年 1,000 530 a
2008年 10 42 b 1,000 563 c
2009年 10 45 1,000 598
2010年 10 48 1,000 636
2011年 10 51 1,000 676
2012年 10 54 1,000 721
2013年 10 58 1,000 768
2014年 10 61 1,000 820
2015年 10 66 1,000 875
2016年 10 70 1,000 935
2017年 10 75 1,000 1,000
合計 100 570

a:転換社債の現在価値=社債利息10を反映させて現在価値を計算する=上記の表の通りに計算すると=530
b:支払利息=期首転換社債の現在価値X利率=530X8%=42
c:転換社債の帳簿価額=期首転換社債帳簿価額+(8%の利息額-社債の支払利息)=530+(42-10)=563(端数処理している)

(1)2007年12月31日、社債発行時の仕訳

借方 貸方
現預金 1,000
転換社債 530
資本準備金 470

(2)社債の利息支払い時の仕訳

借方 貸方
支払利息 10
現預金 10

(3)2008年年度末の転換社債を現在価値へ修正する

借方 貸方
支払利息 33
転換社債 33

これは国際会計基準32号「金融商品:開示内容と表示」と同様である。まずは負債たる普通社債部分の公正価値を測定し、転換権部分については、転換社債全体から得た対価から普通社債の公正価値を控除することによって測定することとされた(IAS 32 (revised 2003), par.31)。(「負債と資本の区分問題の諸相」by川村 義則早稲田大学商学部助教授 参照)

会社法第236条1項7号の「取得条項付転換社債」のうち、一部でも現金で取得する場合には該当する。

なお、この会計処理はかなりの企業に影響を及ぼすと考えられている。負債に初めて公正価値会計が導入されるのか去就が注目される。日本への導入はかなりの困難が伴うであろう。

上記会計基準は、転換社債の利息計上を増大し企業の利益を圧迫することから、企業が上記転換社債の発行の魅力が削がれて発行しなくなるだろうと予測している。(米国ニュース 参照)

国際会計基準32号「金融商品:表示」 −複合金融商品の負債と持分に区分する事例

国際会計基準IAS32号「金融商品:表示」には、複合金融商品(compound financial instruments)を発行する場合、発行者は負債の部分と持分の部分とに区分しなければならない(28項)。具体的事例として、例9〜例12の4例を例示している。以下、事例9について検討する。

例9には、転換社債を発行した場合の事例が掲載されている。事例では、企業が、1年目の初めに2000口の転換社債を発行し、期間は3年、1社債あたりCU1000の額面で、合計CU2百万であった。社債利息は、年率6パーセントで1年に1回支払い、それぞれの社債はいつでも満期までに普通株250株に転換できる。社債の発効日の同等の社債(ただし転換権がない社債)の利率は9パーセントであった。

負債相当部分(liability component)は、初めに測定し、それから入金した社債代金と負債の公正価値(fair value)の差額を持分(equity)に配分する。負債相当部分の現在価値(present value)は、割引率9パーセントで計算する。市場の利率は、転換権のない同等の社債の利率を使う。

その結果、下記のように区分される、としている。(複合金融商品(compound financial instruments)参照)

元金の現在価値
−3年後の2百万CUの未払い額
Present value of the principal
-CU2,000,000payable at the end of three years
1,544,367 CU (A)
利息の現在価値
−3年後の年払い12万CUの未払い額
Present value of the interest
-CU120,000payable annually in arrears for three years
303,755 (B)
負債相当額合計 Total liability component 1,848,122 (C)
持分相当額(控除による) Equity component (by deduction) 151,878 (D)=E−C
社債発行の収入額 Proceeds of the bond issue 2,000,000 (E)
CUは、通貨単位。

上記計算を下記に検算をしてみる。(⇒又は、「計算機」で検算してみる。)

1.負債相当額の現在価値の計算。

元金から現在価値を求める=CU2,000,000/(1+9%)^3=CU1,544,367(A)

利率9%でCU1,544,367を複利で運用すると3年後に元利合計CU2,000,000となるのと同じ。

現在価値(A) 割引額 元利合計
発行時 1,544,367
1年後 138,993 1,683,360
2年後 151,502 1,834,862
3年後 165,138 2,000,000

2.社債利息の現在価値の計算

社債の支払利息は、年率6%でCU120,000で毎年末に支払う。
毎年支払う社債利息の現在価値の計算は以下の通り。

利息額 現在価値の計算式 利息の現在価値
1年度末支払額 120,000 120,000/(1+9%)= 110,092
2年度末支払額 120,000 120,000/(1+9%)^2= 101,001
3年度末支払額 120,000 120,000/(1+9%)^3= 92,662
現在価値額合計 303,755 (B)

負債と持分の区分の議論の経緯については、川村義則教授の「負債と資本の区分問題の諸相」が参考になります。

IASBが「IAS39号の改正公開草案」を公表⇒改定会計基準IFRS9号「金融商品」(2009年11月12日)公表

2009年7月14日IASBは、金融危機のおける金融商品の会計(IAS39号)の複雑な会計処理が、一つの銘柄であっても複雑な評価区分を持っていたために異なる結果を生んでいた。G20からの提案に応えるため、簡素化し判りやすい基準とすることで今回の改正公開草案を公表するとしている。(ED/2007/9Financial Instruments:Classification and Measurement 概要 経緯 金融庁最近の国際会計基準を巡る動向 参照)

改正の方法は、@区分と測定(Classification and measurement)、A減損(Impairment)、ヘッジ会計(Hedge)の区分に区分し、今回は@の「区分と測定」についての公開草案を公表し2009年9月14日までにコメントを求めるが、2009年末に間に合わせたいとしているが、2012年以前には強制適用しないとしている。

この改正案によると、金融資産・負債の区分を「償却原価」か「公正価値」か2つの区分しか認めない方向である。
まず、償却原価の区分の条件を満たしていれば「償却原価」の区分に表示して償却原価法で評価する。償却原価以外のものは「公正価値」に区分し公正価値で評価する、というものである。

償却原価に区分する要件は、(a)基本的に貸付金としての特徴を備えていること、(b)金融資産・負債が契約利回りとなっていること、の二つの要件を満たす場合のみとなる。償却原価以外は「公正価値」に区分される。公開草案では、「公正価値」に区分されたものはすべて公正価値で測定される。したがって、減損会計の余地はない。フローで図示すると以下の通り。

IAS39号の金融資産・負債
Instrument within the scope of IAS39
 ↓
基本的に貸付金の特徴があるか?
Basic loan features ?
→ないNo
      ↓あるYes
契約利回りとなっているか?
Managed on a contractual yield basis ?
→ないNo
      ↓あるYes
公正価値の選択は?
Fair value option ?
→するYes
     ↓しないNo
償却原価
Amortised cost
公正価値
Fair value

公正価値の評価損益は、原則、損益計算書に計上する。ただし、戦略的持分投資(strategic equity investments)などの持分金融商品の評価損益は包括利益とすることができる。包括利益への計上は、最初の取得の時に決定し変更できない、リサイクル(recycle)による損益を損益計算に含めることは許されず、受け取った配当は包括利益とし、減損会計は求められない。

日本への影響は、銀行など国債を所有している金融機関の保有国債の会計に直接影響するでけに関心は国および金融機関の関心は高い。(ニュース 参照)

邦銀は、一定の条件以外では評価損を計上しなくて済む「相当量」の国債を分類。大量の新規国債を引き受けて償還前に売却しているが、IASBは「活発に売買していれば、時価評価になる」と指摘。これに対し、与謝野馨財務相は「財政需要があって市場で国債を消化すべきときに、このような基準変更はいかがなものか」と懸念を表明した。(共同通信 参照)

2009年8月6日、金融庁は6日、国内の銀行と保険業界を対象に、国際会計基準審議会(IASB、本部ロンドン)が7月半ばに公表した国際会計基準見直し案についての説明会を開いた。

IASBは、9月中旬までに各国から意見を集め、年内に最終案をまとめる。これを受けて、日本は2015年に国際会計基準の導入を義務化する予定だが、金融当局には「日本に有利なルール作りを主導すべきだ」(金融審議会メンバー)といった声も強く、日米欧の円卓会議などを通じて、意見表明していく考えだ。フジサンケイ 参照)

2009年11月12日IASBは、第1フェーズ「区分と測定」としてG20の要請に応える形で、金融商品の会計基準(IAS39号)を改定したIFRS9号「金融商品(Financial Instrument)」を公表した。第2フェーズ及び第3フェーズの完成する2010年末にIFRS9号の改正作業が終了する。それから3年間の導入期間を考慮して、2013年1月1日以降終了する事業年度から適用であるが、2009年度からの早期適用も認められるというもの。

金融証券
区分
BS評価額(mesurement) 会計処理法 注意

償却原価 ビジネス・モデル・テスト(business model test)及びキャッシュフロー性質テスト(cash flow characteristics test)を満たした債券は償却原価とする。 IAS39号の”期日まで保有”と”売却可能”とされる債券についてはIFRS9号は含んでいない。
公正価値 上記以外(例えば、期日前に売買する)の債券は、損益を計上する公正価値(fair value through profit and loss, FVTPL)とする。 償却原価と公正価値の間の組換(reclassification)は、ビジネスモデルが変更されたとき組み換える。






公正価値 すべての持分証券は、BS表示は公正価値で計上するとしている。原価法の例外はない。下記以外は、損益を計上する公正価値(FVTPL)で会計処理する。

しかし、取引目的(trading)でない持分投資についてはその他の包括利益に計上する公正価値(fair value through other comprehensive income, FVTOCI)で計上し、受取配当金は純利益に計上することができる。この場合、リサイクル(recycle)が禁止されているため売却損益の計上はできない。
IFRS9号では、すべての持分証券を公正価値であるとしても、原価が、公正価値の最善の見積もり(best estimate)であるときや、公正価値であるときのガイダンスを含んでいる。

FVTOCIで表示する場合、売却損益の法人税等及び税効果も忘れずにその他の包括利益に振り替える。





公正価値 すべてのデリバティブは、公正価値である。







公正価値 IAS39号の組込デリバティブはIFRS9号で言及していない。したがって、IAS39号に規定の組込デリバティブは、公正価値(FVTPL)となろう。 IAS39号の組込デリバティブはIFRS9号で言及していない。

前記草案では取り扱っていた金融負債については、IFRS9号は取り扱っていない。草案では、持分証券のその他の包括利益に計上する場合、受取配当金もその他の包括利益へ計上としていたが損益計算に計上と変更している。草案では、債券の償却原価と公正価値間の組換を禁止していたが、ビジネスモデルを変更したときは組み換えることに変更した。草案ではなかったが、償却原価を適用する要件としてビジネス・モデル・テスト等の考えを入れた。

今回のフェーズ1では、区分・認識(Classification and measurement)について決めており、フェーズ2では償却原価と減損(Amortised cost and impairement)とフェーズ3ヘッジ会計(Hedge accounting)が、米国会計基準(FASB)とコンバージェンスして2010年第四半期に完成する予定となっている。なお、今回の原本は15ポンドで販売している

欧州委員会(EU)は、2010年末に残る二つのフェーズが終了し完成するまではIFRS9は承認(endorse)しない予定。(ニュース 参照)

償却原価の計算

日本公認会計士協会『金融商品会計実務指針』の設例から、「満期保有目的の債券の会計処理」に関し約定日、決算日、および受渡日の会計処理を示せば次のようになる。

額面 ・・・ ・・・ 10,000 (D)
満期 ・・・ ・・・ X 4年12月31日
クーポン利子率 ・・・ ・・・ 6.0% (B)
実効利子率 ・・・ ・・・ 8.3% r

利払日:毎年6 月末日及び12 月末日年2 回

償却原価の計算表
利息
取得日 クーポン 金利調整 金利合計 償却原価
X2/ 1/ 1 取得原価 9,400 (A)
X2/3/31 決算日
X2/ 6/30 300 (C) 90 A 390 @ 9,490 B
X2/12/31 300 (C) 94 D 394 C 9,584 E
X3/ 6/30 300 98 398 9,682
X3/12/31 300 102 402 9,783
X4/ 6/30 300 106 406 9,889
X4/12/31 300 110 410 10,000
合計 1,800 600 2,400
(C)=(D)x(B)/2 =  300
@=(A)x r /2 =  390
A=@−(C) =    90
B=(A)+A = 9,490
C=Bx r /2 =  394
D=C−(C) =    94
E=B+D = 9,584
この実効利子率は、次の算式が成立するような率として求められる。
300/1+r x 1/2 +300/(1+r x1/2)^2 +・・・300/(1+r x1/2)^n=9,400
この算式を解くと、実効利子率r = 8.3%が求められる。

X2 年1 月1 日(取得日)
満期保有目的債券   9,400/ 現金  9,400
・取得価額で計上する。

X2 年3 月31 日(決算日)
未収収益        150 / 有価証券利息  195
満期保有目的債券   45 /

・利息配分額の計算
390 × 3ヶ月/6ヶ月= 195
・未収収益の計算
クーポンの既経過分を未収収益として計上する。

300 × 3ヶ月/6ヶ月= 150
・償却額(帳簿価額への加算額)の計算
利息配分額とクーポンの未収計上額との差額を、金利調整差額(償却額)として債券の帳簿価額に加算する。
195-150=45

X2 年6 月30 日(第1 回利払日)
現金         300/ 未収収益   150
満期保有目的債券45/  有価証券利息195
・利息計算期間の6 か月分のうち前期決算での利息配分額との差額を計上する。
390-195=195
・償却額(帳簿価額への加算額)の計算
前期未収利息戻入額と利息配分額との合計額からクーポン受取額を控除した差額を、金利調整差額(償却額)として債券の帳簿価額に加算する。
150 十195-300=45

国際会計基準審議会、負債の時価評価見直し

2010年5月11日、国際会計基準をつくる国際会計基準審議会(IASB)は、金融機関などの負債を時価評価する方法の見直しを提案した。提案では、信用力の悪化などで企業の負債の時価評価額が目減りした時に利益を計上できる仕組みを認めないようにする。提案通りに決定すれば、市況が悪化した際に銀行などの利益底上げ手段を減らすことになる。これは直観的に反する”counter-intuitive- contrary to what common sense would suggest”ものであるとして見直すもの。(ASBJの6月17日公表の翻訳版「金融負債に関する公正価値オプション(公開草案)」参照)

「信用力が悪化した企業がその分の利益を計上できるようでは有益な情報を提供しているとはいえない」(IASBのトウィーディー議長)と判断、こうした処理を認めない方向で基準を見直す考えだ。

“Whilst there are theoretical arguments for treating financial assets and liabilities in the same way, it is hard to defend the accounting as providing useful information when a company suffering deterioration in credit quality is able to book a corresponding large profit, especially when investors tell us that such information is often excluded from their financial models,” said IASB chairman Sir David Tweedie in a statement.

 IASBでは7月16日まで市場関係者などから意見を募り、その後に最終的な基準にまとめる。(日本経済新聞  Web CPA  ロイター 良くある質問 参照)

2010年10月28日IASBはIFRS9号に追加の「金融負債の会計(Financial Liability Accounting)」を公表した。これにより、自社の信用問題‘own credit’ problemによりものは損益計算書の利益にではなく、その他の包括利益に計上することになる。The new requirements eliminate P&L volatility arising from own credit.新基準では自身の信用から生じた損益影響を解消するものである。IFRS 9 requires the own credit amount to be presented directly in OCI.これでは、持分に計上され実質的な変更はなかったことになる。2013年1月1日以降開始する事業年度から適用する。(Project Summary and Feedback Statement 参照)

FASB「金融商品の会計」の改正案公表(2010年5月26日)

【ニューヨーク=川上穣】米国の会計基準づくりを担う米財務会計基準審議会(FASB)は26日、金融商品の会計処理を定めた公開草案を公表した。上場企業が保有する株式の時価変動をすべて最終損益に計上させる内容。米基準を採用する日本企業は、持ち合い株の含み損益を利益に計上する必要がある。金融機関が保有する債券や貸付金も幅広く時価評価するよう求めており、米国の金融業界から反発の声が高まる公算もある。

 債券や金融派生商品(デリバティブ)の不透明な会計処理が金融危機の温床になったとして、FASBにはより透明性の高い会計基準を策定する狙いがある。9月末までにコメントを募集し、最終的な基準を確定する。

 企業が保有する株式については時価の変動をすべて純利益に計上させる。これまでは売却時の損益や時価が大きく下落したときの減損処理に限られていたが、草案では毎期の利益に時価の変動を反映させる必要がある。日本企業はいまだ持ち合い株の比率が高く、大手銀行など米基準を採用する企業の業績に与える影響は大きい。

 金融機関の貸付金などについて将来予測される損益を毎期の決算にあらかじめ計上するようにも求める。市場環境の不透明感が高まったときに損失が膨らみかねず、米国の金融業界の反発が高まりそうだ。

 草案では時価評価が必要な金融商品の範囲が広く、一部で簿価での会計処理も認める国際会計基準(IFRS)との違いは大きい。国際基準をつくる国際会計基準審議会(IASB)とFASBは会計基準の共通化を進めており、今後は両者の違いをどう解消するかも焦点になる。【日本経済新聞電子版

ヘッジ会計を簡素化 国際会計基準審(IASB)が公開草案発表

2010年12月9日、国際会計基準(IFRS)を作る国際会計基準審議会(IASB)は、新たなヘッジ会計の公開草案を発表した。ルールが細かすぎて経済実態を反映できないという批判に対応し、金融資産と非金融資産の区別をなくすなど簡素化した。2011年3月9日まで広く意見を求める。

 現行基準では、例えば航空会社がジェット燃料の価格変動をヘッジしたい場合、ジェット燃料のデリバティブの代わりに取引が活発な原油デリバティブを使ってもヘッジ会計の対象にならず、航空会社の損益が乱高下する原因になっていた。新基準案では、こうした場合にジェット燃料がヘッジ会計の対象になりやすくなり、航空会社の損益の平準化につながるとみられる。(日本経済新聞 IASBプレス・リリース 公開草案 概要(Snapshot) Q&A ヘッジ会計の作業日程 参照)

現行IAS39号「金融商品:認識及び測定」では、ジェット燃料は非金融資産で、金融資産である原油デリバティブを行ってもヘッジ会計の対象とならなかった。会社のリスク管理が実質行われても現行の会計基準では対象とならなかった。これを、会計基準を会社のリスク管理に一致させ、同時に会社のリスク管理の方法とそのリスク管理の結果が財務諸表へどのように影響しているかを開示させることにした。この改正は、IFRS第9号金融商品(IAS39号を改定)に規定されることになっている。なお、米国FASBとの共同作業であったが現在のところ歩調が合っていない。

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