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西暦2000年3月期より、有価証券報告書に含まれる財務諸表を本格的に連結財務諸表とする方針を、大蔵省企業会計審議会の「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書(1997年6月6日)」によって明らかにされました。
一方、証券監督者国際機構(IOSCO)は1993年に国際会計基準委員会に対して40項目におよぶコア・スタンダード(核となる会計基準)を1998年までに完成させることを要請しました。1998年12月16日、国際会計基準委員会は国際会計基準第39号「金融商品:認識及び測定」を決定・公表したことで、コア・スタンダードを暫定的に完成させました。「国際会計基準(IAS)」を各国の証券監督局(IOSCO⇒米国はSEC、日本は大蔵省(現・金融庁)、英国は証券取引所などの証券監督者の国際機構)が承認するかどうかにかかっており、早ければ2000年秋に承認すると予想されていますが、注目されるところです。
新興国、冷戦後の旧共産圏など、経済活動が活発になりつつある国は、経済のインフラを整備するために資金を必要としており、西側で株式を公開して資金調達の道を探ろうとしています。現実に、中国やインドネシアの電力会社などがニューヨーク証券取引所に上場したり、52カ国470社以上の企業が国際会計基準で作成した年次報告書を使用してボーダーレス取引きを活発にしつつあります。
こうした背景から、新興国や旧共産圏の国々は会計基準が存在していないか、または未成熟であるところから、各国の証券監督局が国際会計基準を承認した場合は、国際会計基準を導入する企業が増えることが予想されます。承認している国の証券取引所であればどこでも上場し資金調達が可能となるメリットが生まれるからです。
欧州でも、ドイツやフランスのように、マルチナショナルな企業は、国内と国際双方の目的のためにグループ勘定で国際会計基準を適用すべきである、としています。
1999年1月から単一通貨ユーロ(Euro)が統一通貨として段階的に導入されたのに併せ、2000年をメドに欧州の証券取引所も統合へと動き出しました。当座は、英仏独など欧州8カ国が統合することで大筋合意したと報じています(99年6月)。証券取引所の統合は、そこで上場する企業の財務諸表に国際会計基準で作成されたものを認めるかどうかの決定を含みますが、拒否する理由はないと予想されます。
世界最大の米国市場に次ぐ欧州市場の出現で、競争関係にある米国は二つの動きをしました。一つは、ナスダック・ジャパンの日本進出(99年6月公表2000年第4四半期に稼働)と、二つ目にニューヨーク証券取引所が日本企業のニューヨーク証券取引所への上場促進のため東京事務所を開設(99年2月)したことです。ナスダック・ジャパンとニューヨーク証券取引所に株式公開する日本企業が公表すべき財務諸表は米国基準とは限らなくなりそうです。こうした動きは、「国際会計基準」が完成しIOSCOが承認する場合は、米国も「国際会計基準」が視野の中に入ってきたことを予想させます。
世界の会計基準は、「米国会計基準」及び類似した「国際会計基準」に収斂されることは誰の目にも明らかです。双方の会計基準は、精度の差程度ですので、他の新興国及び旧共産圏への影響は多大なものがあります。なぜならば,「会計基準」は市場経済のインフラだからです。
なお、国際会計基準が「いつ」世界基準(World's
standards)となるかについては意見が分かれるところですが、1998年7月、2002年7月までに世界基準となると予測している記事が「The
CPA Journal、July 1998」に掲載され、その記事を、国際会計基準委員会のホームページのニュースとして掲載しています。要約したものを、私の「国際会計基準」のホームページに掲載しましたのでご覧ください。CPA
Journalは米国の雑誌ですが、国際会計基準委員会のホームページに掲載されたことで世界を対象としたニュースとなり、世界へのインパクトは少なからずあります。その論文の中に、重要な国の一つとして日本が取り上げられていますが、日本だけが孤立している姿が示されています。かなり説得力をもった内容になっていますので原文を直接ご覧になることを推奨します。(1998年7月28日追加)
昭和24年7月、経済安定本部企業会計制度対策調査会(現金融庁・企業会計審議会)中間報告として制定された「企業会計原則」の前文に、「企業会計原則は、企業会計の実務の中に慣習として発達したものの中から、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がその会計を処理するに当たって従わなければならない基準である。」と記している。
この企業会計原則は、今もって現役である。その証拠に、最近作成されている「独立行政法人の会計基準」や、その他公益法人や特殊法人などの会計基準は、この企業会計原則を基礎に作成されたり作成しようとしている。
日本の企業会計の実務では、有価証券は原価法で評価して事業上、利益が出なくなると含み益のある有価証券や土地を売却して利益を嵩上げしたり、退職給与引当金は、要支給額(支払要する額)の40%を引当ていた。レジェンド(警告文)参照
会計ビッグバンで、「適正表示」を目的とする国際会計基準から「金融商品の時価会計」、「退職給付の会計」、「キャッシュフロー計算書」、「連結財務諸表」、「税効果会計」などの会計基準が導入されたのである。これらの新たな会計基準は、実務の中に慣習として発達したものではない。逆に、会計基準を設定することで実務に「適正開示」を実現しようとするものなのである。
会計基準は、国際的には、適正表示のために考え出された研究・開発の成果であり、かつ、一般に認められた(generally
accepted)ものである。国際的には、会計基準とは、実務の中で慣習として発達したものではなく、実務の慣習が適切でない場合に、適正開示を行うための方法を会計基準として開発(Development)し実務に導入しようとするものなのである。欧米の会計基準設定機関は、経済の変化に適切に対応できるように常設機関で調査・研究・検討を行っているのである。
国際的には、投資家や債権者の視点で、投資家保護や債権者保護は、形式を超えて企業の実態(substance over form)を「適正に表示(fair presentation)」し、投資家や債権者の自己責任で投資判断をできるようにすることです。したがって、企業の実態(substance)を「適正に表示(fair
presentation)」するための財務報告基準は民間の常設機関である会計基準設定主体で一つの会計基準を設定・改訂を行っています。
実態(substance)表示を重視する欧米の会計とは対照的に、日本では官主導で基準が作成され法形式(form)が重要視されます。証券取引法の各種規則(財務諸表規則・連結財務諸表規則など)や商法施行規則などで作成した財務諸表・計算書類は形式が重要視されます。企業が有価証券報告書を財務局へ提出するときの「財務局の審査」は正に「形式」をチェックしています。企業は、審査を通るために実態よりも形式のみを重視するようになります。世界に例を見ない「規則」や「審査」が「形式」を重視することになり、実態を示し難くしている。実態を示し得ず突然倒産した山一証券、長期信用銀行、日本債権銀行、10年以上長期にわたる銀行の不良債権処理、銀行の繰延税金資産の過大計上問題(りそな、足利銀行など)などは日本の制度的なものが色濃く出た結果と言えます。つまり、法形式は適法であっても、その実態が巨額な債務超過であると突然倒産するということがあります。
50年以上前に制定された企業会計原則の考え方は、国際的には180度異なっており、今や時代にそぐわないものとなっているのである。
米国会計基準の生成と発展の概観 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
国際会計基準(IAS/IFRS)に多大な影響を及ぼした米国会計基準の変遷の歴史は次のようなものである。
1945年、第2次世界大戦が終結した。わが国の「企業会計原則」が制定された1949年当時は、日本が参考とした米国でも会計原則の確立に模索していた時代である(詳細は「戦後日本の会計の成立ち」参照)。つまり、当時米国の会計調査公報(ARB)は、実務指針に近く強制適用をしていなかった。その意味で、当時は、日本の「企業会計原則」と類似していた。 しかし、APBの時代になって、やっと会計基準として整理され強制適用が義務つけられるようになったのである。 なお、エンロン問題で傷ついた米国会計の信頼を回復すべく、米国公認会計士協会(AICPA)がまとめた「自己規制の歴史概要」が米国会計制度の参考となります。 1998年12月、完成した国際会計基準(IAS)は、米国の会計基準の集大成に近いものとなっている。 つまり、会計基準は「適正開示(Fair Presentation)」をするために新たに開発された基準であって、財務諸表利用者にいかに適正な情報を提供するか腐心しており、経済環境の変化に的確に対応するため民間の常設の会計基準設定主体で設定している。 国際的には、会計基準は、会計実務の中から慣習として発達したものではない。その意味で、わが国の「企業会計原則」は時代の要請(適正開示)に応えられず時代に取残されているといえる。 金融機関の不良債権問題が毎年大きく取扱われ一向に解決しない。その理由は、不況や担保としている土地の下落が挙げられるが、日本の会計にも一因があるのではないか。会計の基本となる企業会計原則は、慣習を重視し適正開示については触れていない(真実性の原則は何が真実かは触れていない)。つまり、慣習を重視する会計は他社との横並び会計処理を助長し、適正開示は二の次となる結果、先送りの会計思考が蔓延ることになる。個々の銀行の問題もあろうが、企業会計原則という制度上の問題もあろう。 |
日本では誰が会計基準を設定しているのでしょうか。簡単ではありません。
株式の発行および流通を規定している証券取引法の枠内で、所轄官庁である大蔵大臣の諮問機関である大蔵省企業会計審議会により「企業会計原則」、「○○に関する意見書」を設定し、社団法人日本公認会計士協会が実務指針を作成し、大蔵省が「財務諸表規則」「○○規則」などを大蔵省令として規定します。つまり、上記、3つの機関が一つの会計基準を設定しているのが現状です。例えば、「リース会計」を例に取れば、証券取引法による財務諸表を作成する場合、上記3つの機関が作成した意見書、実務指針、規則をそれぞれ読みこなして作成するという複雑な方法を取ります。また、有価証券報告書は大蔵省に毎年提出する義務があり、提出する際に、大蔵省の「審査」を受けることになります。その審査の基礎は、大蔵省自らが作成した省令である「財務諸表規則」「連結財務諸表規則」「中間財務諸表規則」等を基礎に審査し、規則に一致していないと審査官が思えば「訂正報告書」を提出させることがあります。企業の担当者は、現実に、「訂正報告書」を要求されることを恐れており(印刷をやり直したり、訂正部分を切り貼りして対応することになるばかりでなく、社内での評価に影響する
)、指示どおり作成することが使命となっています。
日本の会計基準作成の特徴をまとめますと次のようになります。
1 | 会計基準が法律の枠にある: 会計基準の設定主体が大蔵省企業会計審議会にあり、証券取引法の枠内にあること。 したがって、現実は、証券取引法の枠外の企業には適用されていないということ。 |
2 | 会計基準の設定が簡潔ではない: 一つの会計基準に、大蔵省企業会計審議会、社団法人日本公認会計士協会、大蔵省企業財務課の3つの機関が作成しており、それぞれが作成した規定を読む必要があり、財務諸表の作成者、会計監査人でさえ難解となっていること。会計基準の内容は、3つの機関が作成したものをすべて習熟しなければ、実務上作成できないようになっていること。 企業の担当者、会計監査人は無論のこと、投資家やジャーナリズムにも理解が容易でない仕組みとなっています。 |
3 | 会計基準を「処理基準」と「開示基準」を分離している: 複雑にしている一つに、企業会計審議会の意見書には会計処理の基準と開示の基準を含んでいますが、大蔵省の財務諸表規則がデイスクロージャーを狭く解しており、会計基準の一つである「開示基準」に限定して規定しており、「会計処理基準」を含んでいないことです。資産の評価・負債の測定など会計処理に関する基準を避けていることです。不良債権の問題を想起して見てください。不良債権の評価は実質債務超過になるかどうかの重要事項となっていますが、不良債権の開示(デイスクロジャー)のみが問題とされていますが、重要なのは、引当額を決定する資産の評価基準です。その会計処理基準が企業会計原則注解に数行規定していますが、「財務諸表規則」には規定してないことです。構造的なもので、いまだ、改善の動きは見えてきません。 |
4 | 重要性の原則が理解されていないこと: 重要性の原則が理解できないような仕組みとなっていることです。欧米では常識となっている重要性の原則の規定はありますが、規定を読むと、原則無いような文章となっており、例外として、特定事項ごとに重要性の原則を盛り込んでいます。原則、重要性の原則が無く、特定事項に重要性の原則を盛り込んでいるため、現実は、重要性の原則は断りが無い限り適用がないものとなっています。これは、欧米の重要性の原則とは趣旨がまったく逆であります。この考えは、大蔵省の「審査」に密接に関連しているものと思われます。「審査」で指摘する事項は無限にあるということができます。 |
5 | 会計基準の設定対象が上場会社のみを対象としていること: 国際会計基準委員会の会計基準設定の予定を見ると、農業会計、保険会計、探鉱、石油、ガス業の特定業種の会計基準を設定する予定になっています。日本の会計基準設定の仕組み(大蔵省企業会計審議会および大蔵省令としての財務諸表規則等)が、そうした特定業種まで規定できるのであろうか。 |
6 | 財務諸表利用者に理解しやすいように設定されていないこと: 国際会計基準では、会計処理の変更や重大な会計処理の誤謬があった場合、投資家に期間比較可能性を明瞭に表示することを目的として、過去の財務諸表を新たに採用した会計処理の方法または正しい処理により再作成を求められます。我が商法が、株主総会の承認を求めており、過年度財務諸表の再作成は違法行為になる恐れが生じてしまいます。この件については、商法との調整ができない限り導入は不可能でしょうし、我が国の会計原則が、会計処理の変更の考え方が、変更年度に古い方法で処理した場合、新たに適用した方法との差異を開示させる考え方を180度変更しない限り導入は不可能となります。 |
一方、国際会計基準(International Accounting Standards,IAS)は、国際会計基準審議会(International Accounting
Standards Board ,IASB)というプライベートセクターが設定した会計基準です。
国際会計基準は、デイスカッションペーパーから検討し、各国のメンバーの意見を調整しそれを基礎に公開草案が作成され広く公開され、公開草案に対する各国からの意見を聴取し、意見を検討して最終案を作成して最後に理事会の投票により承認されて会計基準となります。国際会計基準は、会計処理基準と開示基準とから構成され、会計基準に番号を付して完結しています。完結しているとは、趣旨、内容が明確で、適用初年度の時期、適用初年度の会計処理の方法なども記載されますので、会計処理および脚注の注記事項まで作成することができます。(ただし、会計基準よっては、例外もあります。各国の事情により実務上不明瞭な点を解決する必要がある場合、解説書(Interpretation)を出す場合もあります。)
いずれにしても一つの設定主体が完結型の基準を設定しており、会計基準書を読めば、財務諸表の作成者、会計監査人、証券アナリスト、投資家、およびジャーナリズムが理解可能となっています。これは理解を容易にするために大切なことです。
重要性の基準は、会計全体の基礎にあることを規定しており、会計基準自体には原則重要性の原則に関する規定はしないことになっています。したがって、文章は理路整然とし完結していますので、理解しやすい規定にまとめられています。
昭和24年(1949年)7月9日、経済安定本部企業会計制度対策調査会中間報告(現、金融庁の企業会計審議会の前身)は「企業会計原則・企業会計原則注解」を公表し若干の修正を経ているが基本的な体系は今もって健在であり、「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」や「公益法人会計基準」などの日本の会計基準の基礎とされている。
1949年の頃は1945年8月15日の終戦後の混乱の中作成されたもので、日本では簿記(Bookkeeping)さえ広く一般に普及されておらず簿記の普及に心血が注がれた時代である。そのため、簿記から発展した会計(Accounting=説明)の概念は未成熟であった。つまり、簿記で記録・集計・分類・作表(貸借対照表や損益計算書の作表)したものを単に開示することを企業会計と称していた。、戦後50年を超えて若干は改善しているとはいえ、企業会計原則は、限りなく簿記の世界のままである。(「日本の会計」参照)
終戦後、資本市場の発展に努力した欧米では、投資家に適正な情報開示を行うことで企業の実態を把握でき投資判断を適切に行えるよう会計情報の作成基準である会計基準を独立した会計基準設定主体(常設機関)で絶えず会計基準を改善してきたのとは対照的である。欧米の会計基準を集約したものが「国際会計基準」であろう。国際会計基準がグローバル化(国際標準化)しようとしている。言語、習慣、文化の異なる国々がこぞって適用しようとしている。これは、理論的に整合しており内容が理解しやすいということでもあろう。
そこで、それぞれの体系が異なっており簡単な比較は無理にしても、企業会計原則(証券取引法上の会計)と国際会計基準を比較することも無益ではないであろう。
企業会計原則 | 国際会計基準IAS1号「財務諸表の表示」 基本的枠組みの規定 |
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フレームワーク | ||
企業会計原則は、企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したもの (1949年) 慣習が変わらない限り会計原則は変わらない。(参考:会社法の「会計慣行とは」) 自ら会計基準を開発するという考えはない。現在は、国際基準のコンバージェンスのためにIFRSの導入のみとなった。 |
広範な財務諸表利用者が経済的意思決定を行うに当たり有用な情報を提供することにある。アメリカ会計学会(AAA)の基礎的会計理論報告書(ASOBAT、1966年)を継承している。。(「情報会計の基礎」by清水哲雄教授 参照) 会計情報の質を高め経済的意思決定に資するために会計基準を開発(develop)し進化(evolution)し続ける。 リース会計、税効果会計、企業年金の会計、金融商品の時価会計、キャッシュ・フロー計算書等は、実務の中から慣習として発達したものではなく、経済的実体を表示する会計基準を設定して実務に導入したもの。こうした会計基準は、企業会計とどまらず、非営利団体の会計や国・地方政府等の公会計にも適用され、国を超えてグローバルに適用することができるようになった。 |
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会計の対象 | ||
証券取引法を基礎にしているため、上場企業など「企業会計」に限定して規定している。 | 企業に限定しておらず会計を必要とする組織・団体、会計単位を含んでいる。説明責任を達成する公会計にも対応している。 | |
真実性の原則 | ||
「真実な報告をしなければならない」としているが、何が真実なのか明記していない。 取得原価なのか時価なのか、減損が生じていたら、何が真実なのかは明らかではない。 |
IAS1号では、「適正な表示(fair presentation)」を求めており、 適正表示とは、IAS(現在41号まで公表)及び解釈指針のすべてを適用した場合に「適正表示となる」と明記している。 注:英国は、2005年の国際会計基準適用に伴って、「真実かつ公正な概観(true and fair view) 」を「適正表示(fair presentation)」に変更(2005年8月) |
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正規の簿記の原則 | ||
複式簿記で帳簿作成を求めている。 | IASには簿記及び帳簿のことには記述はない。会計についての記述だけである。近代会計が複式簿記適用を当たり前と捉えている。 | |
明瞭性の原則 | ||
会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない、としているが具体性がない。 | IAS1号では、明瞭性の原則という用語はないが、重要性のものは、合算したり、同種の内容のものを相殺して簡潔にまとめることを求めている。 | |
継続性の原則 | ||
適用した会計処理の原則及び手続きを毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない、とあり、変更した場合は注記しなければならないとだけで、注記方法及び注記内容などは規定していない。 | 継続性の原則は、IAS1号もほぼ同様である。IAS8号では、変更した場合の具体的処理(過去の財務諸表も修正するなど)を具体的に規定している。 | |
保守主義の原則 | ||
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合はこれに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない、とあるだけで具体性がない。 | IAS1号に規定はないが、たな卸資産、有形固定資産、無形固定資産などそれぞれについて具体的な会計処理の方法及び開示を規定している。 | |
総額主義の原則 | ||
費用及び収益は総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目を直接に相殺してはならない、とある。 | IAS1号では、簡潔明瞭な表示のため相殺(Offsetting)すべきものは相殺する。例えば、為替差損益の相殺、固定資産の売却損益を相殺するなどである。 | |
経常損益計算 | ||
営業損益から、営業外損益を控除した額を経常損益として表示することを求めている。 | IAS1号では、経常損益の概念は無い。IASには特別損益の概念は無い。 |
金融庁が、2010年3月期より、国際会計基準による連結財務諸表の開示を許容したことにより、国際会計基準(IFRS)による開示をする日本の会社や、外国会社が出てきており、日本の会計基準による開示の違いをことが見ることができるようなっている。まず気がつくことは、外国企業はページ数が多いことと、外国会社は連結財務諸表のみを開示し個別財務諸表は開示していないことである。投資家の視点では国内の会社に個別財務諸表を含め、外国会社には含めないのは国内企業との投資情報に整合性がなく情報格差といえましょう。財務諸表以外の開示情報もまるで役所の文書のように紋切り型で一律の開示で事業の内容がわかり難い日本企業に比べ、外国企業のほうが企業ごとの事業の特徴を現して事業内容が分り易い情報開示をしている(紙数に反映しているようだ)。投資家への情報格差は極力無くすことが必要でしょう。
IFRS開示の特徴は、@IFRSの注記による開示が日本基準と比べダントツに充実している、AIFRSには付属明細表はない、BIFRSの注記の開示方法は秩序整然と連番を付して分り易く開示している(バラバラの日本の注記と異なる)などの違いがある。下記は、IFRSで開示した有価証券報告書と日本基準による有価証券報告書の参考例です。
IFRSで有価証券報告書を 金融庁のEDINETで開示 |
IFRSで開示の有価証券報告書 | 最近のIFRS有価証券報告書 | |
日本のIFRS適用第一号 | 日本電波工業株式会社 | IFRS有価証券報告書 | 2010年3月期 有価証券報告書 (全115頁、うち個別財務諸表25頁) |
外国会社の有価証券報告書 (個別財務諸表の開示はない) |
ダイムラー社(未上場) フランクフルト取引所への登録書類 (320頁うち41頁が商法の個別財務諸表を含む) |
IFRS有価証券報告書等 (個別財務諸表含まず) |
2009年12月期 有価証券報告書 (363頁うち英文95頁) |
ドイツテレコム(未上場) フランクフルト取引所への登録書類 (238頁個別財務諸表の開示なし) |
IFRS有価証券報告書等 (個別財務諸表含まず) |
2009年12月期 有価証券報告書 (501頁うち英文89頁) |
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インフォシス(未上場) | IFRS有価証券報告書等 (個別財務諸表含まず) |
2010年3月期 有価証券報告書 (237頁うち英文38頁) |
個別財務諸表を除いたら、日本の有価証券報告書の開示内容は世界一ページ数の少ない情報開示と言えよう。経団連が喜びそうな開示内容である。
日本の個別財務諸表が有価証券報告書に残ったのは、財務局の有価証券報告書の審査体制にあるようだ。会計ビッグバンで2000年度から連結中心となりながら、証券監査官による審査体制は旧態依然の個別財務諸表中心であるところから個別財務諸表の省略をしないものと考えられる。連結財務諸表では適正であっても、個別財務諸表の関係会社株式の評価で不適切な会計処理をしたとして、金融庁から課徴金を課せられた三洋電機鰍フ2005年(平成17年)9月中間期半期報告書の事例がある。個別財務諸表を開示していない外国ではあり得ない言掛りのような罰則である。日本特有というより金融庁特有の仕組みから罰則を受けた感がある。
金融庁は、IFRSの連結財務諸表の審査が出来なく、審査ができる日本基準の個別財務諸表を残したいのでしょうか?(企業会計審議会の2010年8月3日開催の「会長発言」、11月15日開催の企業会計審議会の「会長発言」の議事録を参照)
日本基準で有価証券報告書を 金融庁のEDINETで開示 |
有価証券報告書 | 最近の有価証券報告書 |
新日本製鐵 | 日本基準の有価証券報告書 | 2010年3月期 有価証券報告書 (全154頁、うち個別財務諸表35頁) |
日産自動車 | 日本基準の有価証券報告書 | 2010年3月期 有価証券報告書 (全150頁、うち個別財務諸表25頁) |
富士通 | 日本基準の有価証券報告書 | 2010年3月期 有価証券報告書 (全177頁、うち個別財務諸表29頁) |
住友商事 | 米国基準の有価証券報告書 | 2010年3月期 有価証券報告書 (全198頁、うち個別財務諸表38頁) |
東海ゴム工業 (FASF基準諮問会議議長の会社) | 日本の有価証券報告書 | 2010年3月期 有価証券報告書 (全93頁、うち個別財務諸表30頁) |
下記の日立製作所のケースでは、米国証券取引委員会(SEC)へ登録しており米国会計基準を適用しているが、連結財務諸表の注記番号は英文とは異なっている。米国会計基準には連結附属明細表などないが有価証券報告書には表示している。米国基準をそのまま日本語版にしているものではない。その説明が不十分。まして、なぜ43頁も減らせるのであろうか。日本の投資家は米国の投資家とは異なる情報を得ていると言えよう。
日立製作所の有価証券報告書等の 日米監督当局へ登録したものの比較 |
2010年3月期決算 | ページの 増減 (内容の増減) |
メモ | |
日本 金融庁のEDINETの 有価証券報告書 |
米国 SEC提出の フォーム20F |
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開示内容 | A | B | A-B | |
企業の情報等 | 72ページ | 105ページ | −33ページ | 日本は企業の情報が希薄 |
連結財務諸表 | 58ページ | 101ページ | −43ページ | 米国基準がEDINETでは43頁減った? |
重要な持分法適用会社の 連結財務諸表を添付 |
0ページ | 39ページ | −39ページ | 重要な持分法適用会社の潟泣lサステクノロジの監査済み連結財務諸表をSEC規則に従って添付 |
個別財務諸表 | 60ページ | 0ページ | +60ページ | 情報として必要?主要国は開示していない |
合計 | 190ページ | 245ページ | −55ページ |
ダイムラーのように外国会社であれば英文を挿入することが求められるようだが、日立のような国内会社の場合はSECに登録した連結財務諸表の英文の挿入は免除されるようだ。金融庁は情報開示に関して、外国会社と国内会社とではかなりの差別が行われているように見える。投資家の視点から見れば、米国SECの情報開示のほうが適切な情報開示をしているように見える。個別財務諸表にどれほどの情報価値があるのか、SECが求めている重要な持分法の適用会社の連結財務諸表の添付は投資家にとって重要な情報であろう。証券監督局の情報開示の要求は会計基準とは別に投資家への投資情報として的確なものが求められなければならない。
ホンダ技研工業の有価証券報告書等の 日米監督当局へ登録したものの比較 |
2010年3月期決算 | ページの 増減 (内容の増減) |
メモ | |
日本 金融庁EDINETの 有価証券報告書 |
米国 SEC提出の フォーム20F |
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開示内容 | A | B | A-B | |
企業の情報等 | 76ページ | 101ページ | -25ページ | 日本は企業の情報が希薄 |
連結財務諸表(米国基準) | 44ページ | 60ページ | −16ページ | 16ページも省略されていれば最早米国基準とはいえない |
個別財務諸表 | 40ページ | − | +40ページ | 個別財務諸表でかさ上げされている投資情報 |
合計 | 160ページ | 161ページ | −1ページ | ページ数は同じでも内容が異なる |
日米の投資家向け情報はページ数は同様でも内容に大きな違いがある。一番の違いは、個別財務諸表がページ数をかさ上げしている。個別財務諸表にページ数の割に投資家にとって有用性があるとは思えない。個別財務諸表の開示は、財務局・証券監査官の審査にあるのではないか。連結実務がない者に連結財務諸表の審査能力があるとは到底思えないからだ。
日本の有価証券報告書は、その日本特有な作成・開示の仕組みから役所特有な開示文書となっている。有価証券報告書の作成をビジネスにしている印刷会社(株式会社プロネクサス(旧・亜細亜証券印刷と宝印刷の両社でほぼ寡占状態)に、有価証券報告書等を審査していた元証券監査官(旧大蔵省、現財務局)がおり審査の意向を反映した指導をして、証券監査官の審査を通り易くするサービスを売りにしていることからほぼ証券監査官の指導通りに作成されることになる。企業側にとっては証券審査官の審査を通ればよいとして、指導通りに作成する実務があり財務諸表も非財務情報も含めてすべてについて有価証券報告書は役所特有な画一的で無味乾燥な文書となる。金融庁が”市場の信頼確保”として行ってきた「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項」や「有価証券報告書の重点審査結果」が審査を補強している。
司法の場であれば、裁判官、検察官、弁護士と司法試験の合格者であるが、有価証券報告書の財務諸表は公認会計士が監査報告書を付しているが、公認会計士としての資格及び監査の実務経験を要求されていない財務局・証券監査官の審査があるのは責任の関係を含めて不可思議な仕組みである。かつて、日本で税効果会計が導入される以前に、証券監査官が税効果会計は商法違反であるとして修正させた事例がある。
米国証券取引委員会(SEC)では、有価証券報告書に相当する情報開示には、企業側の疑問に対して、SECの会計士(現在の主任会計士(チーフ・アカンタント)はハワード・シェック氏・・旧トゥシュ・ロス(現デロイト)で会計監査経験)が”スタッフ会計通牒(Staff Accounting Bulletins)”としてSECの見解を文書で明瞭に公開して、他社の利便性に供している。日本には、証拠を残したくないためか、行政指導的な不明瞭なものとなっている。文書による専門家としての責任ある回答が他の企業の利便性のために公開が必要であろう。
金融庁組織規則第六条 企業開示課に、企画官一人及び主任会計専門官一人を置く。3
主任会計専門官は、命を受けて、企業開示課の所掌事務のうち企業会計の基準の設定その他企業の財務に関する専門的事項に係る事務に従事する。そして、金融庁組織令第十三条 企業開示課は、次に掲げる事務をつかさどる。四
企業会計の基準の設定その他企業の財務に関すること。五
企業会計審議会の庶務に関すること。六
公認会計士制度の企画及び立案に関すること。七
公認会計士、外国公認会計士、監査法人、外国監査法人等及び日本公認会計士協会の監督に関すること、とある。金融庁企業開示課の主任会計専門官とは、米国SECの主任会計士(チーフ・アカンタント)に相当するのかは不明。(現在の主任会計専門官平松朗氏は東京国税局出身者、金融庁の会計に関する認識を端的に表していると言えよう)
日本が特殊の情報開示をしてきたのは、旧大蔵省・証券局およびこれを引き継いだ財務局・証券監査官の審査にあることは誰の目にも明らかである。国際会計基準(IFRS)への導入が、財務諸表作成者、監査担当の公認会計士、財務局の証券監査官の審査、有価証券報告書の印刷会社、特に”金融庁の政策”や”市場の信頼性確保”に共通した日本的仕組みをどの程度のインパクトを与えるのか見ものである。
特に、次の事項が当面興味がある。
・個別財務諸表の問題
(外国会社には求めていないで国内の会社のみ開示を求めている情報格差の問題・・現在適用会計基準で迷走中)
・株主総会前に、株主が有価証券報告書を見られるようになるのか
(日本は株主行動主義(Shareholder
activism)に欠けるとの批判に応えられるのか)
・国際会計基準にない附属明細表の開示を求め続けるのかの問題
・有価証券報告書の審査を従来通り行うのか
国際会計基準は、企業の経済的実態(substance over form)を表示しようとするもので形式(form)の表示を求めているのではない。企業の経済的実態を表示するためには、企業の監査や会計実務の経験ない者や企業行動を知らない者による審査はあり得ない。審査は、実務経験豊富な会計士としての有資格者(司法の分野であれば司法試験合格者のように有資格者)が必要となろう。加えて、国際会計基準IFRSに習熟した証券監査官が必要となる・・過去の経験では審査がIFRSの適用を歪める可能性がある。国際会計基準IFRS以前の問題として、そもそも連結実務を行ったことのない証券監査官が実効性ある審査ができるのか疑問。奇妙な財務諸表が審査を通り公開されたり、FOIのような明らかにおかしな売掛金計上がされた財務諸表が審査を通ったりしていては投資家保護にならない。
・原則主義の国際会計基準が、内閣府令による細則主義の金融庁の規則が財務局・審査に与える影響
・原則主義の国際会計基準が、既得権益の有価証券報告書の作成をビジネスにしている印刷会社に与える影響
国際 会計基準書 番号 |
国際会計基準の表題 主な内容 (概要は「国際会計基準」を参照) |
日本の会計基準 出所、内容 |
主な相違点 | ||||
IFRS1号 | 「国際財務報告基準の適用初年度 (First-time Adoption of International Financial Reporting Stamdards)」 2003年6月19日公表、2004年1月適用。 ●IAS1号が比較財務諸表の開示を要求していることから、注記を含めて2004年との比較財務諸表を表示する必要がある。2004年の数値は国際会計基準を遡及して適用した額である。したがって、2003年12月末の資産・負債の金額は2004年1月1日に繰越されるのであるから、2003年12月31日現在の金額は国際会計基準を適用した金額を確定する必要がある。 国際会計基準の遡及適用については以下の例外がある。 ・2004年1月1日までに行われた合併・買収などの企業結合 ・取得原価で引き継がれた無形固定資産、有形固定資産および投資不動産 ・従業員給付・・保険数理損益 ・為替換算差異累計 ・IAS39号「金融商品:認識と測定」の金融商品の消滅、ヘッジ会計 |
会計基準ナシ | 株主総会召集通知書に添付され株主に送付される計算書類は商法の計算規定により、単年度財務諸表(単独、連結計算書類)のみを求められており、商法には比較財務諸表の考え方が無い。 証券取引法の有価証券報告書は、株主総会終了後開示される。つまり、株主の手には届かない情報開示であり、例え、国際会計基準を適用した財務諸表を作成できても、株主の定時総会での議決権行使には役に立たない。 日本以外の国では、一つの企業では一つの財務諸表、つまり、子会社が無ければ単独財務諸表、あれば連結財務諸表のみ、具体的には比較連結財務諸表のみが情報開示され株主総会の召集通知にも添付される。日本のように、上場会社について、商法と証券取引法の二つの財務諸表(正確には、それぞれ単独、連結があるので4つの財務諸表となっている)を公開している先進国はない。 日本の会計のトライアングル体制 参照 |
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IFRS2号 | 株式報酬(ストックオプション)の会計 ・ストックオプション付与により、サービス、または財貨の提供に対応して公正価値で経費/資本準備金を計上する |
会計基準がなかったが、
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2007年3月期より日本にも導入が決定。 |
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IFRS3号 | 企業結合 ・パーチャス法(買収法)のみを認め、持分プーリング法は廃止。 ・のれん(Goodwill)は減価償却をしない。ただし、IAS36号「減損会計」を適用し毎年見直す必要がある。減損したときに取得価額と回収可能額(recoverable amount)の差額を一時償却をする。 <「IFRS3号、IAS36号、IAS38号」公表> 2007年12月4日および2008年1月10日、FASBとIASBは、企業結合の会計基準について双方の会計基準を一致させた改正基準を公表した(IASB’s IFRS 3 Business Combinations and the FASB’s Statement 141 Business Combinations)。 すべての企業結合について、どちらか一方が他方を取得する一つの方法(a single method)のみを採用する。取得時の公正価値で「のれん」を認識し、取得者ばかりでなく、従来少数株主持分(minority interests)としていた非支配の持分(non-controlling interests )にも配分する。非支配の持分(non-controlling interests )は資本取引として持分(equity)に区分表示する。(IASBニュース FASB141号草案 参照) |
2003年8月1日「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書(公開草案)」を公表した。現行IAS22号に近く、持分プーリング法を認めたり、のれんを20年以内に償却することになっており、平成18年(2006年)4月1日以降開始事業年度から適用を開始する。 企業会計審議会第27回第一部会(平成15年4月18日(金)開催)の議事録は、約四ヶ月を経過した、8月8日に公表された。 2003年10月31日、企業会計審議会第一部会は「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」が公表された。本文は草案と同じ。
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国際会計基準と持分プーリング法の適用と「のれん」の償却問題で意見は物別れとなっている。
日本の基準を理解する上で企業会計審議会第一部会の議事録(例えば企業会計審議会第27回第一部会(平成15年4月18日(金)開催)の議事録)は参考となります。
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IFRS4号 | 保険契約 ・IFRSの一部適用免除 ・保険特有な会計処理を規定 参考: 「国際会計基準審議会(IASB)、保険契約の会計処理に関する公開草案を公表 IASB プレスリリース 2003 年7 月31 日 」 「保険の国際会計基準を巡る動向(ニッセイ基礎研Report 2004.1保険研究部門 荻原 邦男氏)」 |
会計基準は存在せず、業法に規定あるのみ。 | |||||
IFRS5号 | 売却の為に保有する固定資産および廃止事業 ・公正価値と簿価(carrying amount)と比較しいずれか低い価額で評価する。 ・減価償却は行わない。 ・廃止事業は継続事業と区分して表示する。 ・重要な事業部ないし地域的事業は、その資産が譲渡される場合は、廃止事業に該当し区分表示する必要がある。 |
・固定資産は、減価償却する。 ・廃止事業(営業譲渡、会社分割などによる)を継続事業と区分表示する会計基準は存在しない。
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基本的に考え方が異なる。 日本でも、重要な事業部の譲渡、会社の分割があるが、その廃止事業を区分表示することはない。 現在、企業会計基準委員会で会計基準の設定を検討しているものとは異なる。 |
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IFRS6号 | 天然資源の探査と評価 鉱業、石油およびガスなどの天然資源の探査に係る会計基準 |
会計基準は存在せず。 | |||||
IFRS7号 | 金融商品:開示 金融商品から生ずるリスクの内容と程度、およびリスク回避の管理方法の開示 |
金融商品の時価会計参照
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IFRS8号 | 事業セグメント 会社で使用している事業セグメント、地域別、総売上の10%を超える主要顧客への売上高の開示 |
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IAS1号 | 財務諸表の表示 ・ 貸借対照表に「現金および現金同等物」を表示する。(「国際会計基準の基礎」参照) ・ 株主持分変動計算書も基本財務諸表としている。(「マイクロソフト社に見るストックオプションの会計処理」参照) ・財務諸表の重要性について具体的に規定をしている。
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有価証券報告書は、金融庁が作成した内閣府令に従って表示している。 連結財務諸表規則貸借対照表(様式1) ・ 貸借対照表に現金および現金同等物を表示しない。 ・ IASの基本財務諸表は4つ、日本は3つ、日本が抜けていたのは資本(株主持分)の変動計算書であったが、2007年3月期より導入。 ・企業会計原則に重要性に関するの事項の記載があるが有効に機能していない。
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基本財務諸表の体系は、ほぼ沿っているが、内容は基本的に相違している。 例えば、日本には、継続企業の前提に関する会計基準(企業会計審議会及び企業会計基準委員会の)はない。金融庁の内閣府令である財務諸表等規則第8条の27(継続企業の前提に関する注記)により開示を求めている。因みに、国際会計基準(IAS)1号「財務諸表の表示」に開示を求めているものである。 会社法では、会社計算規則第100条により開示を求めている。 国際基準では比較財務諸表の表示が求められるが、日本は比較財務諸表の基準がない。 日本は、旧大蔵省の役人が、戦後間もない頃、様式を決め金融庁が引継ぎ表示様式を決めている。一度決めたら変えない役人の表示様式が、常に改善して意義を高めようとする専門家の設定したIAS1号の表示様式と一致するはずがない。 事例として、下記の財務諸表を見ていただきたい。 ○有価証券報告書の表示 ○国際会計基準による表示 ・ 「現金および現金同等物」の項目を貸借対照表で使えないためキャッシュフロー計算書との関連が複雑となる。 ・ IASの基本財務諸表は4つ、日本は3つ、日本が抜けていたのは資本(株主持分)の変動計算書であったが、2007年3月期より導入。 ・注記事項が脆弱。 |
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IAS2号 | たな卸資産 ・正味実現可能価額と取得原価のいずれか低い額で評価しなければならない。 LIFOの適用はない。 |
日本には規定がなかったが、
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2009年3月期より適用。 LIFO廃止は、2010年4月から適用、早期適用可。 |
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IAS3号 | IAS27号及び28号に改訂のため廃止 | ||||||
IAS4号 | IAS16号及びIAS38号に改訂のため廃止 | ||||||
IAS5号 | IAS1号に改訂のため廃止 | ||||||
IAS6号 | IAS15号に改訂のため廃止 | ||||||
IAS7号 | キャッシュ・フロー計算書 | 企業会計審議会の「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の設定に関する意見書」(1998年3月公表) | ほぼ一致している。 | ||||
IAS8号 | 期間損益、基本的な誤謬および会計方針の変更 ・会計方針の変更 ・ 異常損益項目 ・ 事業の廃止 ・ 重大な過年度の誤謬発見などの報告方法を定めている。 会計方針の変更は、原則、過年度の財務諸表を新たに適用した会計方針で再作成して期間比較可能な財務諸表にする。それができなければ、代替的に注記で比較可能な情報を開示することができる。 |
この会計基準は存在しない。 りそなに見る「誤謬の訂正」事例 参照
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日本にはこの会計基準は存在しない。 国際会計基準を適用しようとすると、日本の会計制度の根幹に関わることになります。つまり、国際会計基準では、過年度の重大な誤謬を発見した場合に、比較可能性を確保するため過年度財務諸表を修正することを求めていること、異常損益の考え方が日本の特別損益とは基本的に異なることなど、日本には受け入れがたいものがあります。 特に、過年度の財務諸表に重大な誤謬があった場合(最近の企業倒産で明らかになったように、直前期に配当していた会社が3ヶ月も立たぬ内に債務超過の実態が明らかになったケースはこれに該当する場合があるかも知れません。こうした例は、倒産していない会社でもありうることです。)、商法が株主総会の承認を得た過年度の財務諸表を訂正できるかという問題に突き当たってしまいます。現行の日本の会計制度では、グローバル・スタンダードが商法違反及び証券取引法違反となる恐れがあるのです。 |
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IAS9号 | IAS38号により廃止 | ||||||
IAS10号 | 貸借対照表日後の後発事象 ・後発事象及び偶発損失について規定している。 ・偶発損失の計上要件 |
・後発事象は、企業会計原則に規定 ・貸倒引当金の計上要件が唯一規定しているが、不充分。 |
後発事象はほぼ一致している。 偶発損失(貸倒引当金)については不充分 不良債権問題はこの会計基準が不備であったために信頼を失ったものである(私見)。 |
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IAS11号 | 長期工事契約 ・原則、工事進行基準で収益を認識することを求めている。 |
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・ 日本は慣習(法人税法を適用)として工事完成基準と工事進行基準を採用している。 ・ 平成10年度の税制改正で大型長期工事(150億円以上の工事)について工事進行基準を求めるようになった。しかし、日本の会計基準は依然として完成基準と選択適用が可能です。 (参考:建設業経理研究会 収益認識研究部会 主査東海幹夫氏) ●矢作建設工業が2005年4月から工期1年超の工事から工事進行基準を適用。東急建設も1年超のすべての工事を対象に工事進行基準を適用している。ほかに請負金額1億円以上の長期工事について工事進行基準を適用している企業に鹿島建設、安藤建設、鉄建、東亜建設工業、ハザマ、フジタなどがある。(日刊建設通信新聞社「建設ニュース2005年11月17日」より) |
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IAS12号 | 法人所得税 | 企業会計審議会の「税効果会計に係る会計基準」(1998年10月30日公表) | ほぼ一致している。 | ||||
IAS13号 | IAS1号に改訂のため廃止 | ||||||
IAS14号 | セグメント情報 IFRS8号に改定された。 |
企業会計審議会の「セグメント情報の開示基準」、「連結財務諸表規則」 | 小さな差異を除いて、ほぼ一致している。 IFRS8号に改定された。 |
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IAS15号 | 物価変動の影響に関する情報ー2003年12月廃止(2005年1月より廃止) | ||||||
IAS16号 | 有形固定資産 | 税法の規定のみ | 一致はしていないが、問題が生じない程度。 | ||||
IAS17号 | リース会計 ・ファイナンスリースは、資産の所有に伴う危険と便益を実質的にすべて賃借人移転するリースをいう。所有権の移転の有無を問わない。 ファイナンスリースでは、賃借人はリース資産・負債の計上が求めれ、賃貸人は、リース営業債権と金利収入が計上される。 |
大蔵省企業会計審議会「リース取引きに係る会計基準に関する意見書」 ・ファイナンスリースでも、「所有権の移転が認められる場合を除いて、通常の賃貸借取引として処理」できる。
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・ 国際会計基準の趣旨内容とも全く異なる内容となっている。 ・ 例えば、ファイナンスリースで所有権が移転すると認められる場合を除いて賃貸借取引きとして会計処理できるとしている。日本のリース会計は国際会計基準の趣旨からまったく反している。 ・ また、貸手のファイナンスリースを売買取引きと同一の処理を求めている日本の基準も、国際会計基準では金融(金利)収入として認識するようになっており本質的に異なる。 貸手の会計処理は、ニューヨーク証券取引所に上場しているオリックスが日米リース会計の違いを分かりやすく解説しています。米国基準はIASに類似している。 日本のリース会計のうち、貸手の会計処理に日本独特の会計処理を求めている部分があり注意を要する。 |
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IAS18号 | 収入の認識基準 ・割賦販売は出荷時点で利息を除いた現在価値で収益を認識することを要する。 2010年6月24日、IASBと米国FASBは、同時に同じ内容の、収益の認識に関する改正会計基準を公表した。10月22日までにコメントを求めている。 IASBの草案 IASBの結論の基礎 FASBの草案 FASB概要 25. An entity shall recognize revenue when it satisfies a performance obligation identified in accordance with paragraphs 20-24 by transferring a promised good or service to a customer. A good or service is transferred when the customer obtains control of that good or service. |
企業会計原則 ・割賦販売基準で収益計上できる。 2009年9月8日、ASBJは「収益認識に関する論点の整理」を公表している。 |
若干の相違あるものの、ほぼ一致している。 | ||||
IAS19号 | 退職給付:事業主の退職給付の会計を含む | 企業会計審議会の「退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書」(1998年6月公表) | ほぼ一致している。 但し、適用初年度の移行債務は、国際会計基準では即時または5年以内の償却を要求しているが、日本の意見書(草案)では15年以内の一定の年数で償却することになっており、10年長い。 |
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IAS20号 | 政府補助金の会計と政府援助金の開示 資本の部へ貸記してはならないとし、・ 費用に関連した補助金・ 資産に関連した補助金・ 返済しなければならない補助金などそれぞれについて会計処理基準を示している |
基準なし | 日本に会計基準が欠落している。 | ||||
IAS21号 | 外貨為替の影響 ・外貨建債権債務は長短関わりなく、為替の予約をしている場合を除いて、期末日レートにより換算し評価する。 ・在外子会社の財務諸表の換算による差異は株主持分へ計上することを求めています。 |
外貨建取引等会計処理基準・同注解 ・短期外貨建債権債務は期末日レートで換算評価するが、長期は取得日レートのままとし、期末日レートで換算額を貸借対照表に注記する。 ・在外子会社の財務諸表の換算差額を資産または負債に計上することを求めています。
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・在外子会社の財務諸表の換算差額を日本は資産・負債に計上するが、国際会計基準は株主持分へ直接計上することを求めている。 ・また、日本では、長期外貨建債権債務の換算を取得日のレート換算であるが、国際会計基準は期末日レート換算することとを求めています。 上記2点で、致命的に相違しています。 日本の連結財務諸表は、外貨換算に関して、国際会計基準と基本的に異なります。
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IAS22号 | 企業結合 合併時に資産・負債を公正価値で評価する。 ・パーチャス法と持分プーリング法がある。 但し、持分プーリング法は合併会社と被合併会社の区分ができない場合に限られている。 2004年3月、IFRS3号へ改訂のため廃止 |
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IAS23号 | 借入コスト 稼動までの借入利息を資産化するか、期間費用とするか選択し継続して適用を求めている。 2007年3月29日、米国基準に一致させるため、期間費用の選択肢を廃止し、利息の資産化のみに改正した。 |
慣習として期間費用として処理。 | 2007年3月のIAS23号の改正で、期間費用として処理する選択肢は無くなったことで、不一致となる。 | ||||
IAS24号 | 関連当事者の開示 | 企業内容開示等に関する省令および日本公認会計士協会の「関連当事者との取引きに係る情報の開示に関するガイドライン」 | ほぼ一致している。 | ||||
IAS25号 | 投資の会計―IAS39号及び40号により廃止。 | ||||||
IAS26号 | 退職給付制度の会計と報告 企業年金等を事業主(企業)から受託した基金(信託会社や生保)が報告する会計基準 ・給付のため可能な純資産、約束された退職給付の保険数理上の現在価値、受給権発生発生済み給付と受給権未発生給付の区分、及び過不足発生額等の開示を求めている。 |
日本に基準なし。 |
IAS26号は、年金基金自体の事業主への年金財務の報告基準です。IAS19号が事業主の年金会計を取り扱っていますが、表裏一体の会計基準となるものです。IAS26号は、基金の財務報告を受けて会計処理及び注記を行います。 大蔵省は、証券取引法の枠で会計基準を作っており、年金基金自体の年金財務の報告基準はこの枠から外れ、大蔵省企業会計審議会が設定する限り、基金には法人格が無い会計単位であるため、日本の会計制度では制度的に会計基準を設定することには無理があります。 |
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IAS27号 | 連結財務諸表および個別財務諸表 ・ 50%超基準と ・ 実質支配基準を採用 ・連結の範囲に実質支配基準を採用し50%以下を所有する会社を連結する場合は、その会社との関係内容を注記によって開示することが求められている。 |
1997年6月6日、企業会計審議会は「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」「連結財務諸表原則」を公表し連結中心主義に方向転換した。 連結調整勘定の償却期間を20年以内としている。 1998年10月30日、企業会計審議会は「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い」を公表した。連結範囲等が拡大している。 |
ほぼ一致している。 ただし、連結子会社がなく関連会社がある場合、関連会社の投資を持分法で計上することを国際会計基準は求めるが、日本の場合は、連結ではないという理由で、持分法で計上できず持分法の部分は注記としている。 持分法を連結の枠でとらえる日本独特の考え方である。 連結等の範囲について 国際会計基準では,50%以下を所有する会社を連結する場合は、例外であるところから,「その会社との関係を注記による開示」を求めているが、日本の基準では注記による開示は明確にされておらず、作成者も読者も非常に分かりにくいものとなっている。 |
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IAS28号 | 関連会社に対する投資 | 連結財務諸表原則 | ほぼ一致している。 | ||||
IAS29号 | 超インフレーション経済下の財務報告 | 日本に基準なし | 日本に基準なし | ||||
IAS30号 | 銀行および類似金融機関の開示 | 銀行業法、類似金融機関の基準は存在しない。 | 銀行業法以外は存在しない。 | ||||
IAS31号 | ジョイントベンチャーの持分の財務報告 ・部分連結または持分法を要求している。 |
連結財務諸表原則は持分法要求しており貸借対照表の部分連結は認めていない。 | ほぼ一致している。 | ||||
IAS32号 | 金融商品:表示 転換社債などの複合金融商品(compound financial instruments)を発行する場合、発行者は負債の部分と持分の部分とに区分しなければならない(28項)。 |
企業会計審議会の「金融商品に係る会計基準(1999年1月公表)」 原則、売却を目的とする投資は時価評価し差額を損益計算書、その他の投資は時価評価し差額を資本勘定とする。時価の無いものは原価とする。 先物・オプション取引等に係る時価情報の開示に関する意見書 |
IAS32号では、転換社債に関する負債部分を現在価値で計算し、転換社債の発行による収入額から控除した額が持分(Equity)として区分され会計処理する。 |
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IAS33号 | 一株あたり利益 | 2002年9月、企業会計基準委員会は、企業会計基準第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準」を公表した。 | ほぼ一致している。 | ||||
IAS34号 | 中間財務報告 四半期報告書を含む中間財務諸表に関する会計基準 |
企業会計審議会の「中間連結財務諸表等の作成基準」(1998年3月公表) 半年の財務諸表のみで、四半期報告書は考慮されていない。 |
半年ベースの中間財務諸表は、ほぼ一致している。 ただし、四半期報告書は全く考慮に入っていない。
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IAS35号 | 廃止事業 (Discontinuing Operations) 会社分割・事業部門(子会社)の譲渡やその他の理由で廃止する事業を継続事業と区分して表示することを求めている。 2004年3月、IFRS5号へ吸収により廃止。 |
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IAS36号 | 資産の減損(Impairment of Assets)
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会計基準らしきものは存在しない。
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IAS37号 | 引当金、偶発債務及び偶発資産 | 偶発事象は企業会計原則注解18に数行の規定があるのみ。 | 偶発事象について内容はほぼ一致していると思っている人が多数派でしょうが、日本の基準は数行のみで機能しがたいものがある。
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IAS38号 | 無形固定資産 ・広告宣伝費 ・トレーニング費 ・設立費用 ・試験研究費(Research) 一定の要件を満たさない限り費用処理を要求。 試験研究費(Research)は無形固定資産としてはならない(54項)、 開発費(Development)は一定の条件で無形資産としている(57項)。研究費との区分は難しい。 同様に、創業費(start-up cost)も発生したときの費用としている。 (IFRS3号により廃止⇒無形固定資産の償却は20年を超えない耐用年数で償却する。この20年の償却期間は主に営業権(のれんgoodwill)に適用。) (IAS9号の「試験研究費」はこの基準に吸収され廃止)
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研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書(1998年3月公表)により、発生したときの費用とし、米国会計基準に一致し、一定の条件で開発費を無形固定資産とする国際会計基準と差異が生じている。 連結財務諸表の連結調整勘定の償却期間を原則として20年以内とするとし、IAS38号の規定に合わせている。
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・試験研究費は、ほぼ一致している。(商法はどうするのであろうか?) ・繰延資産の相違点: IAS38号は、創立費、開業費、試験研究費は、発生したときの費用としている。一方、企業会計原則は、繰延資産としており、商法も同様に286条から286条の3に繰延資産の規定を残している。 一定の条件で開発費(development)を無形固定資産とする国際会計基準と差異が生じている。 ・営業権の償却期間のミスマッチ: 商法第285条の7の営業権は5年内償却の規定はそのままで、連結調整勘定の償却期間20年との整合性は整えられていないまま。 |
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IAS39号 | 金融商品:認識及び測定 (1998年12月16日決定) ・株式等の持分証券及び社債等の負債証券は公正価値(Fair value)で評価しなければならない。 ・トレーディング(売却)目的で取得した金融商品の評価損益は純損益に含めなければならない。 ・トレーディング目的以外の金融商品の評価損益は(i)純損益に含めるか(ii)直接資本の部で認識する、いずれか選択可能。直接資本勘定に計上したときに、売却した場合は、売却時にその損益は純利益に含めなければならない。 ・貸付金及び未収金の減損に対する測定に、見積回収額(estimated recoverable amount)まで減額する規定がある。 |
企業会計審議会の「金融商品に係る会計基準1999年1月22日公表」 ・時価の変動により利益を得ることを目的として保有する市場性のある有価証券は、時価をもって貸借対照表価額とする。 ・売却目的の有価証券の評価損益は当期純利益に反映する。 ・その他の有価証券の評価差額は資本の部に区分して計上する。ただし、回復する見込みがあると認められる場合を除き、評価損失として処理する。また、時価が、取得原価を下回る場合は、損失として処理する。 ・新株引受権付社債の新株引受権の対価部分は仮勘定として負債に計上し、権利が行使されたときはこれを資本準備金に振り替え、権利が行使されずに権利行使期限が到来したときは、これを利益として処理する。 |
・新株引受権付社債を除き(IASに規定がない)、国際会計基準とほぼ一致している。 ・米国会計基準では、新株引受権付対価は、発行時に資本取引として資本準備金で処理する(APB14パラグラフ16)。国際会計基準も米国と同様と考えられる。 日本の会計処理は、資本取引と損益取引が明確に区分しておらず混在しており、期限到来までは仮勘定となり理論的に矛盾する。 ・貸付金及び売掛金等の貸倒見積額の規定があるが、見積回収額の規定が更正会社だけに厳格で他の不良債権には玉虫色の適用となっており、適正な貸倒引当金が引当てられるか実効性に疑問。 |
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IAS40号 | 投資不動産 公正価値評価基準を採用するには時期尚早として原価法および公正価値評価法の選択適用を認めた。 但し、原価法を適用した場合は注記に公正価値情報の開示を求めている。 |
会計基準らしきものは存在しない。 |
上記日本の会計基準で「セル」が白抜きとしてある、連結財務諸表、中間連結財務諸表、キャッシュ・フロー計算書、研究開発費、退職給付の会計、税効果会計、金融商品の時価会計の7本は、大蔵省企業会計審議会が「連結財務諸表中心主義(1997年6月)」に大きく方針転換し、国際会計基準の一部導入をしたものです。 |
なお、日本が導入していない国際会計基準1号「財務諸表の表示」には、基本的な事項を記述していますが、次の記述があります。
上記パラグラフ11.によって、国際会計基準を一部のみ導入した日本の連結財務諸表は、国際会計基準に準拠した財務諸表とは記載してはならないことになります。パラグラフ12.によって、「日本のリース会計」は、国際会計基準に準拠したことになりません。 |
国際会計基準の本文に記載していない不明な点を解釈指針(Interpretationsは、 Standing Interpretations Committee(SIC)が設定し文書には”SIC”に番号が付されている)として公表される。JICPAジャーナル誌1999年2月号に、解釈指針の討議経過が報告されています。下記は重要な点を比較してみました。
解釈指針(SIC) |
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相違点 | ||
SIC-8:会計の基本として国際会計基準を新たに適用した場合 ・各会計基準に記載している 期間比較可能性を重要視しており、表示している財務諸表を遡及的に、期首の剰余金に累積影響額を計上し注記で比較可能な数値を開示する。 |
大蔵省企業会計審議会は、新たな会計基準の適用初年度の会計処理を初めて明示したのは「税効果会計に係る会計基準」である。 それによると、過年度に発生した税効果は適用初年度の期首連結剰余金の調整項目として処理する方法を経過的な措置として認めることが適当と考える、とあります。期間比較情報としての注記は求めていません。 |
国際会計基準が表示している財務諸表の期間比較を重視しているのに対して、日本は過年度の財務諸表との比較可能性についての情報は注記などで明示されない。 | ||
SIC-12:連結-特定目的会社(Special Purpose Entities、SPEという) 金融資産の証券化、リース、研究開発などの特定目的に設立された会社等組織は、支配の条件を満たす限り連結会社として連結することを求めている。1999年7月1日より適用開始。 |
大蔵省企業会計審議会は、98年10月30日、「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取り扱い」なる文書を公表し、連結範囲を拡大する一方、特定目的会社(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律に規定する会社)の取り扱いとして、「連結する子会社に該当しないものと推定する。」としています。連結しない理由は、記載されているとは思えないのでので不明です。1999年4月以後開始する事業年度から適用するとしている。
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国際会計基準は、支配関係が存在すれば特定目的会社であろうと連結対象となります。 日本の場合は,理論というよりは、特定目的会社は連結対象会社から外すことを意図しており、連結対象会社からはずすことになります。 特別目的会社の日本の基準は米国基準を真似ています。米国で発生した「エンロン破産法申請」を参照してください。 |
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SIC-16:金庫株・自己株式の会計処理「
Share Capital-Reacquired Own Equity Instruments(Treasury
Shares)」 ・資本の科目、資本金、資本準備金、利益剰余金のそれぞれを直接控除して処理する。 金庫株からの譲渡損益は損益計算書に計上してはならない。 つまり、自己株式の譲渡は増資と同様の会計処理するため譲渡損益は生じない。 (「マイクロソフト社に見るストックオプションの会計処理」参照) |
・商法は、自己株式を資産として取得し、譲渡による損益は損益計算書に営業外損益として計上表示される。したがって、低価法による評価損が計上される。 ・証券取引法では、大蔵省企業会計審議会の「連結財務諸表原則」では、自己株式は「資本の払い戻しとして」資本の部から控除する形式で表示する、とあるが、自己株式の譲渡損益を損益計算書からはずすことは明示されておらず、現実は、商法で記録した帳簿を修正することなく自己株式の譲渡損益は損益計算書に残されたままとなる。 ・商法と証券取引法の理論的整合性はない。
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・商法と証券取引法の規定では考え方が異なる。商法は、自己株式は資産性があり譲渡した場合は譲渡損益を認識するという立場である。したがって、低価法による評価損の計上もある。証券取引法は資本の払い戻しとしているので、考え方が基本的に違う。証券取引法の貸借対照表の表示は資本の部から控除する。 商法は改正され平成13年10月から資本の部に自己株式として控除する形式で表示されることになった。 ・国際会計基準は資本の払い戻しであるとの認識から、自己株式(金庫株)の譲渡については損益は発生しない。 |
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IFRIC-13号 顧客ロイヤリティ・プログラム「Customer Loyalty Programmes」: 顧客にいわゆる”ポイント”を与えて将来の商品売上の無償または値引きを する場合、売上時に、ポイント部分の顧客に対する債務(obligetion)とし、 無償または値引きするまでは繰延収益とする会計処理について基準を 設定したもので旅行のマイレージ(travel miles)も含む。(Q&A 草案 参照) 指針では、顧客に与えたポイントの将来使用する額を見積り、無償または 値引きを実行するまで収益の繰延として負債処理することを要求している。 ポイントが期限切れとなった部分は、収益に戻入する。 この解釈指針はIAS18号「収入(revenue)」の解釈指針であってポイントを 授与した部分は繰延収益としており、引当金として費用計上する考えはない ことを明記している。(草案BC7参照) Q&Aには例示も示している。 2008年7月以降開始する事業年度から適用 |
日本では明文の会計基準はない。 日本では、経済産業省が「企業ポイント」についての報告書(2007年7月) 日本では引当金として計上し、国際基準とは異なる。 |
国際会計基準第1号「財務諸表の表示」には、「適正表示と国際会計基準への準拠」と題してパラグラフ(項)10から19までに記述している。一部抜粋してみると次の通りである。 パラグラフ(項)10. 財務諸表は、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュフローを適正に表示するものでなければならない。IASを適切に適用し、必要な場合には、追加開示をすることにより、ほとんどすべての場合に、適正表示を達成した財務諸表が作成される。 パラグラフ(項)11. IASに準拠した財務諸表を作成する企業は、その旨を開示しなければならない。財務諸表が適用すべき各基準書及び適用すべき解釈指針委員会の解釈書のすべての規定に従ったものでない限り、当該財務諸表がIASに準拠していると記述してはならない。
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商法の計算書類及び連結計算書類と国際基準との主要な相違点 |
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わが国の株主は、商法規定による計算書類を「株主総会召集通知書」に添付され送付される。株主にとって唯一手許に届く決算書類が商法の計算書類と言うことになる。 投資家保護を建前とする証券取引法に基づく有価証券報告書及び半期報告書は株主の手許には届かないばかりか、株主総会終了後(株主総会の議決権行使に役に立たない)に財務局に提出して公開される。株主の多くは、有価証券報告書及び半期報告書を見たこともないと言う人が多いのではなかろうか。 商法特例法により、大会社に連結計算書類の作成が義務つけられたが依然として、証券取引法の財務諸表と相違し商法と二重に作成することに相違は無い。企業の二重作成の負荷を解消するという目的は達成されていないばかりか国際基準にも一致しておらずコーポレートガバナンスの面からも問題視されている。(「コーポレート・ガバナンス・・ヨーロッパの文脈(チャールズ・フェア氏筆)」の主要5カ国の国際比較 参照) 相違点は多く際限無いが、主要部分で国際基準と相違する点は下記の通りである。日本企業の株主が入手する計算書類は国際会計基準1号「財務諸表の表示」だけと比較しても下記のようにかけ離れたものとなっている。商法を検討する法務省民事局および法制審議会が真剣に国際基準を検討し改善しない限り日本は国際水準に達しないであろう。 (余談であるが、1999年から3年間、ロシア支援で国際会計基準を教えた私の経験では、当時、ロシア財務省は既にキャッシュロー計算書の作成(作成様式あり)を求めていた。現在では、ロシア政府は2004年から国際会計基準を適用することを宣言している。日本の商法は、財務諸表に関してロシアより国際化していないといえる。ロシアが加盟を目指している欧州連合(EU)では、2005年から約7千社のすべての上場会社に国際会計基準の適用を求め、最大5百万社の非上場会社に国際会計基準を適用できるよう法律を整備している。各国の国際会計基準適用状況は「国際会計基準」 参照)
原則、商法と証券取引法では会計処理方法は一致しているといわれているが、研究開発費の取扱では下記の通り一致していない。
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2001年12月、国際会計士連盟(IFAC)は、国際会計基準と各国の会計基準との比較調査の結果を公表した。調査の目的は、グローバル化した資本市場に対応して財務諸表の開示基準を国際会計基準に収斂させることを目指している。
調査結果は、7つの会計事務所が調査した結果であるが、厳密な意味で相違点を包括的に網羅したものではないので注意が必要である。しかしながら、重要な点は比較的網羅されているといってよい。詳細は「GAAP 2001 REPORT」の日の丸(日本)をクリックしご参照ください。
2003年2月13日、国際的な6大会計事務所が共同で、主要国を含む59カ国の会計基準を調査した結果を「GAAP Convergence 2002(一般に認められた会計基準 収斂 2002年)」に纏め公表した。日本は、「現在、国際財務報告基準(IFRS)に収斂しようとしない国、アイスランド、日本、サウジアラビアの3カ国」として報告されている。この報告書は、会計普及国際フォーラム(IFAD、International Forum on Accountancy Development、メンバー及びオブザーバー)および国際的な事務所で紹介されている(各事務所のニュース 参照)。このような状況で日本の国際的な発言力を期待できるものか自明の理であろう。国際的な基準を使用しないためコーポレート・ガバナンスの面からも日本は評価が低い(「コーポレート・ガバナンス・・ヨーロッパの文脈(チャールズ・フェア氏筆)」の主要5カ国の国際比較 参照)。
2003年4月24日、企業会計基準委員会はIASB会議の席上、上記に関し「IASB関連情報 > 会計基準の国際的なConvergenceに対する当委員会の姿勢」を文書(英文)で配布したそうだが、文章は「日本がIFRSに収斂しようとしない国」を立証してるように思えるのだが・・・・・
加えて、国際会計基準審議会を運営するIASC財団の2002年度年次報告書(3月21日公表)の2ページ目には、旧共産国及び発展途上国を含む各国の国際会計基準に対する対応が記載されているが、日本は掲載されていない。
2002年10月、日本経済新聞の記者磯山友幸氏が「国際会計基準戦争」と題する著書を出版しました。現場を取材した視点から日本の会計がなぜ遅れたのかを探っています。最近の日本の会計制度を決めている現場を実名で活写しており貴重な資料となっています。真渕勝京都大教授の書評 参照
2000年3月27日、日本公認会計士協会と経団連は、会計基準設定主体となる民間機関を設立することを明らかにした。大蔵省も大筋で了承。企業会計審議会から、独立色の強い機関に権限を移し、基準つくりの透明性を高めるとして、5月中旬をメドに組織の概要を固め、早ければ2000年度中にも発足させる、としている(日経3月28日)。日本特有の形式的な独立であってはならないことは無論のこと、今後は、設定した会計基準の内容や質が問われることになろう。
2001年2月28日、経団連、日本公認会計士協会、全国証券取引所協議会、日本証券業協会、全国銀行協会、生命保険協会、日本損害保険協会、日本商工会議所、日本証券アナリスト協会、企業財務制度研究会など10団体が出資して「財務会計基準機構」(仮称)を7月に設立し、下部組織の「会計基準委員会(ASB)」が会計基準の設定について全権をもつとし、米国FASB型の会計基準設定主体を模したものになる。設立準備委員会の設置を公表(ロイター、日本経済新聞、毎日新聞が報道)。政府出資を見送ったことが注目に値する。それだけに責任が重くなろう。
2001年7月26日、財団法人 財務会計基準機構(FASF)の設立認可を受け、企業会計基準委員会(ASB)を8月7日正式に発足した。 国際会計基準審議会(IASB)へ英文で報告したものは、Japanese Accounting
Standards Board, ASBJ (日本会計基準審議会)となって「企業」の文字を抜いており英文とは一致していない。
国際会計基準の表題と日本の会計の体系は、根本的に異なっており、その適用範囲、開示の内容など詳細について比較し要約するのは困難ですので、上記の相違点の記述は大まかに記載しました。
特に、日本の証券取引法の会計は、上記「はじめに」記載しましたように3つの機関がそれぞれ規定しており、該当個所を探すことさえ大変な作業となります。また、日本の会計実務は、俗に「トライアングル体制」といわれるように、「商法」「税法」「証券取引法」の3つが重なり合っています。会計基準の設定の仕組みが制度的に限定されているため,企業年金の会計基準のように、証券取引法に関連して「事業主側の会計基準」を設定できても、表裏一体である基金側の会計基準は作成できないことになります。世界に類を見ない独特の会計制度です。
会計基準は、独立し中立的で企業等の財務内容が適切に示されるよう設定されるべきですし、また、作成者、会計監査人、投資家、証券アナリスト、マスコミを含め関係者に容易に分かりやすいものであることが望ましいと思います。
会計基準の不備が、「不良債権」問題の会計処理と開示の点で信頼を失ったように思いますが、一向に整備される様子は見えてきません。不良債権問題は、ゼネコンや一般事業会社の債権の回収不能見積額を測定する場合にも該当し、金融機関だけの問題ではないのです。金融機関ばかりでなく一般事業会社、特殊法人、エージェンシー他が一般的に適用できる「不良債権に係る会計基準」が必要なのです。
日本の実質的な会計基準設定主体(商法、証券取引法、税法どれですか?)は、日本の会計基準をグローバリゼイションのなかでどうするのでしょう。
フェアーで透明で健全な資本市場の活性化および発展のため、会計基準の整備・確立は、市場経済の最低限のインフラであると思うのですが・・・・・・・。
1998年12月16日、IAS39号「金融商品:認識及び測定(Financial
Instruments: Recognition and Measurement)」の暫定的完成により、証券監督局国際機構(IOSCO)からの宿題であるコア・スタンダードは一応完成しました。
2000年5月、証券監督局国際機構(IOSCO)はIASを承認した。IOSCOのメンバー国である日本の対応が注目される。
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