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はじめに


1998年6月16日、大蔵省企業会計審議会は、「退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書」及び「退職給付に係る会計基準」を公表した。

実施時期は、「2000年(平成12年)4月以降開始される事業年度から実施されるよう措置することが適当である」、「適用が困難である場合は、2001年4月以降開始の事業年度から適用するが2000年は退職給付債務及びその内訳等主要な事項について注記を行うこととする」、としています。

年金資産の時価評価が求められ、運用資産である株式時価の低迷などで含み損を抱えている企業年金が問題となっています。また、バブル崩壊後、年金資産の運用収益の実績が思わしくなく、給付するに十分な年金資産を積み立てていない場合が生じ、特に、先進的な米国の年金会計(FAS87号)適用の会社が、不足する年金資産を補充している記事が見られる。

今回の、大蔵省企業会計審議会の会計基準は、国際会計基準19号「従業員給付」および米国の会計基準書87号の退職給付の会計基準に一致はしていないが近似したものになった。企業年金を採用している企業にとっては、適用初年度の退職給付引当金の額は重要な影響を与える場合があるものと思われる。

そこで、「新たな基準の採用により生じた影響額は、通常の会計処理とは区分して、15年以内の一定の年数の按分額を当該年数にわたって費用として処理することができるよう経過的な措置を置くことが適当である」という緩和措置を講じている。

企業年金積立不足一括計上・会計基準委員会草案

企業会計基準委員会は、2010年3月18日、2011年度から企業年金の積み立て不足額を企業本体の資産・負債の状態を表す「貸借対照表」に毎期、全額計上するよう求める公開草案をまとめた。「簿外」だった不足額を全額、貸借対照表に組み入れることで、企業財務の全体像を見えやすくする。(朝日新聞 参照)

会計基準(草案)によると、13項に「退職給付債務(第16 項参照)から年金資産の額(第22 項参照)を控除した額(以下「積立状況を示す額」という。)を負債として計上する。ただし、年金資産の額が退職給付債務を超える場合には、資産として計上する」として負債の場合も資産の場合も全額計上することにしている。(改正点指針(草案) 参照)

米国では、すでに会計基準FAS87号を改正し、年金資産又は負債の全額を即時計上することを求めた米国財務会計基準FAS158号「定額給付年金及びその他の退職後給付制度の雇用者の会計(Employers’ Accounting for Defined Benefit Pension and Other Postretirement Plans)」が施行されている。

2006 年夏に制定された年金保護法(The Pension Protection Act of 2006, PPA)と並んで、米国の企業年金における制度設計や資産運用に大きな影響を与えつつあるのが、2006 年12 月15 日以降に開始する会計年度から適用されている財務会計基準158 号(Financial Accounting Standard 158、以下FAS158 とする)である。

FAS158 の特徴は、年金資産と年金債務の評価額の変動をそれらが生じた会計年度の財務諸表に全額計上することにある。評価額の変動は、@数理計算上の差異、A過去勤務債務、B会計基準の変更、によって生じる。@は、債務の割引率など評価の前提となる数値を変更した場合、および現実の資産のリターンと期待運用収益率に差があるなど実績と前提が異なる場合、に生じる。

Aは制度を変更し給付額が増減した場合を指す。従来の会計基準(FAS87)では、@〜Bによる評価額の変動を平均的な従業員の退職までの年数(残存勤務年数)など長期間にわたって徐々に会計上認識し、損益計算書や貸借対照表に反映させることになっていた。これに対し、FAS158 では包括損益計算書と貸借対照表でその変動を認識する。(「ニッセイ基礎研究所」参照)

IASBの国際会計基準IAS19号「従業員給付(Employee Benefits)」は、米国のFAS158号とコンバージェンス作業中で2011年1月から適用できるよう作業を進めている。2010年4月29日IASBは「定額給付年金の会計基準の改正案」を公表した。年金給付債務に時価で評価した年金資産を控除した債務(資産)を一括計上する方法に改めた。従来は回廊法(‘corridor’)として計上を繰り延べていた( ‘deferred recognition’ )のを廃止することとした。コメントは2010年9月6日まで。(ASBJの6月25日公表の翻訳版「IAS19号確定給付制度の修正提案」参照)

積立不足額の推定60兆から80兆円

1998年11月13日、日本経済新聞は「企業年金の積立不足額60兆円-80兆円・・民間調査機関試算」と題した記事を掲載した。資料は、長銀総合研究所が12日に公表した企業年金の会計基準を適用した場合の積立不足額を試算したものである。

その資料によると次のようになっている。

想定運用利回り(割引率%) 2.0%
の場合
2.5%
の場合
3.0%
の場合
3.5%
の場合
4.0%
の場合
4.5%
の場合
積立不足額
株主資本に占める割合
59.7兆円
31.4%
51.9兆円
27.3%
45.0兆円
23.7%
38.6兆円
20.3%
32.9兆円
17.3%
27.5兆円
14.5%
年間発生費用(兆円)
経常利益に占める割合
5.6兆円
28.9%
5.5兆円
28.0%
5.3兆円
27.1%
5.1兆円
26.3%
5.0兆円
25.4%
4.8兆円
24.5%
退職給付債務 124.8兆円 117.0兆円 110.0兆円 103.7兆円 98.0兆円 92.8兆円

(注)長銀総合研究所調べ、試算のベースは金融を除く資本金1億円以上の企業の96年度実績

つまり、新たな企業年金の会計基準を適用すると、年金資産を2%の想定運用利回りが継続すると仮定するなら、企業年金に59.7兆円の積立不足が生ずる(退職給付引当金の計上)ということです。また、年間発生費用は、5.6兆円計上することになります。

なお、ゴールドマンサックス証券の推定では、80兆9千億円(対象は東証1部上場企業)の積立額があると推定しているそうです。

記事にある「積立不足」とは、企業年金の会計基準の用語を使えば「退職給付引当金」に該当します。

また、想定運用利回りと割引率は必ずしも一致ない点や、年齢構成、人員、退職率、昇給率など個々の企業によって相当のばらつきがあります。 当然、それぞれの企業により異なった結果になるでしょうが、上記の試算は、企業年金や退職金制度のある企業にとって参考となります。

1998年11月20日に公表予定のNTTが、98年9月中間財務諸表で米国の企業年金の会計基準を適用し一括処理で4620億円の損失が発生する。日本基準では利益を確保したが、米国基準では1000億円の損失となる模様(ただし99年3月の通期では利益を確保する模様)。

厚生年金基金1.1兆円が積立不足

大企業以外の厚生年金基金の現状

企業年金とは


企業年金には次のようなものがあります。

公・私の別
具体的内容
管轄省庁
1 公的年金 厚生年金・国民年金 厚生省
2 中間的な年金 企業などの厚生年金基金・調整年金 厚生省
3 私的年金 適格年金・非適格年金/中小企業退職金共済制度 年金資産の管理規制等は大蔵省、給付規制は労働省

1.公的年金
公的年金とは、厚生年金保険法のもとで国民皆年金制度を採用しているものです。一般に、掛け金の支払は、政府管掌と組合とに分かれる。掛け金は従業員負担分と企業負担分を合計して納付します。従業員負担分は、個人所得税の課税所得から控除され、企業負担分の掛け金は企業の法廷福利費として損金算入されます。
給付は、社会保険庁に届け出て給付手続きを経て規定に従い年金が支給(給付)される仕組みです。
この公的年金は企業年金の会計の対象とはなりません。

3.私的年金
私的年金とは、一般に、企業が信託銀行または生命保険会社との間で退職年金契約を結び、掛金を積み立てておき、従業員の退職後に年金又は一時金を退職者に支払う私的制度です。掛け金(拠出金と称せられる)は、一般には、従業員の負担はなく会社負担で行われます。適格年金と非適格年金の用語は、税法の規定に適格である年金をいい掛け金の支払い時に損金算入される私的年金をいいます。非適格年金は、掛け金の支払い時には損金算入されない私的年金をさします。この私的年金は、企業年金の会計の中心的存在です。

大雑把な言い方ですが、私的適格企業年金は、年金又は一時金の支払い(給付という)が退職した従業員に直接支払われ、企業にとっては掛け金は実質的に退職金の前払いである場合、適格年金とされます。
企業が、従業員を被保険者として積み立て保険に加入し従業員が退職時に企業に保険金が戻るような年金契約は掛け金の支払い時には損金とならない非適格年金とされます。

私的適格年金の多くは、従来からあった退職給与規定を基礎に退職給与制度で社内留保の方法から、信託銀行ないし生命保険会社と退職年金契約を締結して外部積み立てに移行するケースです。

2.中間的な年金
中間的な厚生年金基金・調整年金があります。個別企業、企業グループ、組合などが厚生年金基金を設立し、自社ないしは組合独自の有利な掛け金や給付条件を付加した年金があります。税法上は、公的年金に準じて従業員・会社とも取り扱われます。政府代行部分を除く付加給付部分が企業年金会計の対象となります(変更1)。

(変更1)政府代行部分
年金債務に政府代行部分は含まないとの一般的見解は変更になるようです。厚生省の「代行部分の保険料を一時的に据え置く方針」が一時的な措置に過ぎないとのことで、「代行部分」も企業負担とのことで年金債務に含む方向で日本公認会計士協会が指針を出すべく検討中です(1999年9月8日付、日本経済新聞)。

厚生年金基金制度自体の曖昧さが露呈した形となった。まず、掛け金(積立て金)の運用収益が5.5%以上の収益を生んでいたときは、掛け金の負担者である企業・従業員は掛け金を低く押さえられたという意味で受益者であった。制度資産の運用収益率の悪化及び制度資産の時価総額が低下して、確定給付制度のもとでは、制度資産の不足が生じた。議論は、制度資産の不足に対して誰が負担するのか曖昧となっていたことによる。

利益がでているときは、企業及び従業員が利益(掛け金を低く押さえられた)を享受し、損が出たら政府が持つという論理は成立しないであろう。したがって、企業・従業員が負担するのが筋であるが、企業負担となれば収益率の回復が期待できない限り企業は政府に返上し負担を軽減することになろう。政府に返上した場合、付加給付部分は適格年金と二つあることが必要かということになる。いずれにしても、厚生年金基金制度設定時の検討が曖昧であったことが露呈しているのである。根底には、経済は生き物であること、市場経済には利益も出るが損失もあることを制度設計時に検討していなかった付けが回ってきているのである。その付けを、税金で穴埋めがないようにして欲しいものである。

<<代行部分の会計処理をめぐる論争(2005年12月31日)参照
・・【会計士側も「一次的な支払い義務は基金にある。運用資産を代行部分と私的年金とで分割管理しているわけではないので、債務も一体とするのが当然」と譲らない。】・・偏に、厚生省が制度設計の欠陥が原因で、代行部分と企業年金部分をどんぶり勘定で運営してきたつけが論争呼んでいるもの。
85%以上がすでに代行返上に動いており、2005年12月1日現在で残っているのは僅か145」だそうである。


企業年金法成立(2001年6月)
2001年6月8日、参議院で「確定給付企業年金法」が可決成立した。施行は2002年4月の予定。

確定給付企業年金
は次の三つのタイプに再編成された。
@既存の厚生年金基金
A公的年金の一部を国に代わって支給する部分を除いた「基金型企業年金」
B税制適格年金を改良した「規約型企業年金」
この法律改正により、厚生年金基金の国からの代行部分の返上を検討する企業が増えている。

この法律の成立により、平成24年(2012年)3月31日までに適格退職年金は他の企業年金に移行することになり、それ以後は税制上の優遇措置は廃止されます。適格退職年金の廃止のニュース  検索結果 参照)

確定拠出年金法は、6月22日参議院本会議で成立、施行は、2001年10月1日。

確定拠出年金は、次の二つのタイプがある。
@企業型
既に確定給付型企業年金がある場合、企業が拠出する従業員一人当たりの掛け金の限度額は月額18千円
企業年金が無い場合、企業が拠出する従業員一人当たりの掛け金の限度額は月額36千円

A個人型
企業年金がない企業の従業員の場合、一人当たり掛け金の限度額は月額15千円
自営業者などの場合、一人当たり掛け金の限度額は月額68千円


退職給与制度

企業が従業員退職規定に基づき退職時(離職・役員へ昇格)に一時金を会社が支給する制度です。退職金の支給は会社の資金を使い会社から支給されます。支給額は、通常、勤続年数に比例した掛け率を退職時の基本給に掛けて支給されます。自己の都合で退職する場合と会社の都合で退職する場合がありますが、自己都合の掛け率が低くなって一定期間を過ぎると一致する場合が多いようです。

企業は、退職金を社内留保するため退職給与引当金を計上します。税法上は、自己都合要支給額の40%(ただし、1998年4月以降から毎年繰り入れ限度額は減少し、2003年4月以降開始する事業年度からは20%となります)が損金算入限度額です。

社内留保型の退職給与制度から、退職金を外部積み立てとして上記の適格退職年金に移行する会社が増えています。自己都合および会社都合のすべて又は一部を移行する会社と、定年などの会社都合のみを移行する会社など多様です。

退職給与制度は、確定給付型の典型で、退職給付に係る会計基準の対象となります。


退職給付に係る会計基準


負債の計上


「退職給付債務に未認識過去勤務債務及び未認識数理計算上の差異を加減した額から年金資産の額を退職給付に係る負債として計上する。」とあります。
つまり、次のようになります。

項目 金額
1 退職給付債務 xxxx
2 未認識過去勤務債務 -xxx
3 未認識数理計算上の差異 +-xxx
合計 xxxx
4 年金資産の額 -xxxx
5 差引計上すべき退職給付引当金(注1 xxx
注1)の内容
注1 年金資産が企業年金制度に係る退職給付債務を超える場合の処理について
1 実際運用収益が期待運用収益を超過したこと等による数理計算上の差異の発生又は給付水準を引き下げたことによる過去勤務債務の発生により、年金資産が企業年金制度に係る退職給付債務を超えることとなった場合には、当該超過額を資産及び収益として認識してはならない。
2 複数の退職給付制度を採用している場合において、一の企業年金制度に係る年金資産が当該企業年金制度に係る退職給付債務を超えるいときは、当該年金資産の超過額を他の退職給付制度に係る退職給付債務から控除してはならない。


用語の説明

用語 会計基準に記述の説明
退職給付債務 退職給付債務とは、一定期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に従業員に支給される給付(以下「退職給付」という)のうち認識時点までに発生していると認められるものをいい、割引計算により計算される。
退職給付債務 退職給付債務の計算の項で次のように説明されてます。
1 退職給付債務は、退職時に見込まれる退職給付の総額(以下「退職給付見込み額)という)のうち、期末までに発生していると認められる額を一定の割引率及び予想される退職時から現在までの期間(以下「残存勤務期間」という)に基づき割り引いて計算する。(注2)
2 退職給付見込み額は、合理的に見込まれる退職給付の変動要因を考慮して見積もらなければならない。(注3)
3 退職給付見込み額のうち当期までに発生したと認められる額は、退職給付見込み額について全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法その他従業員の労働の対価を合理的に反映する方法を用いて計算しなければならない。(注5)
4 退職給付債務の計算における割引率は、安全性の高い長期の債券の利回りを基礎として決定しなければならない。(注6)
注2 退職給付債務の計算について
退職給付債務は、原則として個々の従業員ごとに計算する。ただし、勤続年数、残存勤務期間、退職給付見込み額等について標準的な数値を用いて加重平均等により合理的な計算ができると認められる場合には、当該合理的な計算方法を用いることができる。
注3 退職給付見積もり額の見積もりにおける退職給付の変動要因について
退職給付見込み額の見積もりにおいて合理的に見込まれる退職給付の変動要因には確実に見込まれる昇給等が含まれるものとする。また、臨時に支給される退職給付等であって予め予測できないものは、退職給付見込み額に含めないものとする。

解説
予測給付債務(Projected Benefit Obligation:PBO):
現在までの給与水準だけでなく、将来の昇給分をも考慮に入れてた将来の給付額を年金数理計算を行って現在価値に割り引いた予測給付債務です。
累積給付債務(Accoumulated Benefit Obligation: ABO)
過去及び現在の給与水準を基礎に年金数理計算を行って得られた年金給付債務の現在価値を示すものです。
日本の場合、上記注3によれば、「将来の昇給等を含める」としていますので、PBOを退職給付債務としていることになります。なお、日本の場合は、ABOの規定がありませんし、当然ABOの注記による開示を求めていません。
注5 従業員の勤労の対価を合理的に反映する方法について
従業員の労働の対価を合理的に反映する方法としては、全勤務期間における給与総支給額に対する各期の給与額の割合に基づき退職給付見込み額の各期の発生額を計算する方法が含まれる。
注6 安全性の高い長期の債券について
割引率の基礎とする安全性の高い長期の債券の利回りとは、長期の国債、政府機関債及び優良社債の利回りをいう。なお、割引率は、一定期間の債券利回りの変動を考慮して決定することができる。
未認識過去勤務債務 過去勤務債務とは、退職給付水準の改訂等に起因して発生した退職給付債務の増加又は減少部分をいう。なお、このうち費用処理(費用の減額処理又は費用を超過して減額した場合の利益処理を含む。以下同じ)されていないものを未認識過去勤務債務という。
未認識数理計算上の差異 数理計算上の差異とは、年金資産の期待運用収益と実際の運用収益との差異、退職給付債務の数理計算に用いた見積もり数値と実績との差異及び見積もり数値の変更等により発生した際をいう。なお、このうち費用処理されていないものを未認識数理計算上の差異という。
年金資産の額 年金資産の額は、期末における公正な評価額により計算する。



退職給付費用の処理

当期の勤務費用及び利息費用は退職給付費用として処理し、企業年金制度を採用している場合には、年金資産に係る当期の期待運用収益相当額を差し引くものとする。なお、過去勤務債務及び数理計算上の差異に係る費用処理額は退職給付費用に含まれるものとする。

退職給付費用には次の項目があり注記による開示も要求されている。

項目 退職給付費用の内容
1 勤務費用
2 利息費用
3 期待運用収益
4 過去勤務債務の費用処理額
5 数理計算上の差異の費用処理額
6 その他(会計基準変更時差異の費用処理額、臨時に支払った割増退職金等)
項目 退職給付
費用内容
退職給付費用の計算
1 勤務費用 勤務費用は、退職給付見込み額のうち当期に発生したと認められる額を一定の割引率及び残存勤務期間に基づき割り引いて計算する。(注8)
2 利息費用 利息費用は、期首の退職給付債務に割引率を乗じて計算する。
3 期待運用収益 期待運用収益相当額は、期首の年金資産の額について合理的に予測される収益率(以下「期待運用収益率」という。)を乗じて計算する。
4及び5 過去勤務債務及び数理計算上の差異 過去勤務債務及び数理計算上の差異は、原則として、各期の発生額について平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理しなければならない。(注1)(注9)(注10)(注11)
注1 年金資産が企業年金制度に係る退職給付債務を超える場合の処理について
1 実際運用収益が期待運用収益を超過したこと等による数理計算上の差異の発生又は給付水準を引き下げたことによる過去勤務債務の発生により、年金資産が企業年金制度に係る退職給付債務を超えることとなった場合には、当該超過額を資産及び収益として認識してはならない。
2 複数の退職給付制度を採用している場合において、一の企業年金制度に係る年金資産が当該企業年金制度に係る退職給付債務を超えるいときは、当該年金資産の超過額を他の退職給付制度に係る退職給付債務から控除してはならない。
注9 過去勤務債務及び数理計算上の差異の費用処理について
1 過去勤務債務及び数理計算上の差異の費用処理については、未認識過去勤務債務及び未認識数理計算上の差異の残高の一定割合を費用処理する方法によることができる。この場合の一定割合は、過去勤務債務及び数理計算上の差異発生額が平均残存勤務期間以内におおむね費用処理される割合としなければならない。
2 数理計算上の差異の発生額については、当期の発生額を翌期から費用処理する方法を用いることができる。
注10 基礎率の見直しについて
割引率等の基礎率に重要な変動が生じていない場合は、これを見直さないことができる。
注11 退職従業員に係る過去勤務債務について
退職従業員に係る過去勤務債務は、他の過去勤務債務と区分して発生時に全額を費用処理することができる。



貸借対照表及び損益計算書の表示

1 貸借対照表において退職給付に係る負債を計上するにあたっては、当該負債は原則として退職給付引当金の科目をもって計上する。
2 新たに退職給付制度を採用したとき又は給付水準の重要な改訂を行ったときに発生する過去勤務債務に係る当期の費用処理額が重要であると認めれれる場合には、当該費用処理を特別損失として計上することができる。


複数事業主制度の企業年金の取り扱い


複数の事業主により設立された企業年金制度を採用している場合においては、退職給付債務の比率その他合理的な基準により自社の負担に属する年金資産等の計算を行うこととする。(注12)

注12 総合設立の厚生年金基金を採用している場合のように、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができないときは、当該年金基金への要拠出額を退職給付費用として処理する。
この場合においては、掛け金拠出割合等により計算した年金資産の額を注記するものとする。


注記事項


退職給付に係る次の事項について注記しなければならない。

1 企業の採用する退職給付制度
2 退職給付債務等の内容
(1)退職給付債務等及びその内訳
1 退職給付債務
2 年金資産
3 前払年金費用
4 退職給付引当金
5 未認識過去勤務債務
6 未認識数理計算上の差異
7 その他(会計基準変更時差異の未処理額)

(2)退職給付費用の内訳
1 勤務費用
2 利息費用
3 期待運用収益
4 過去勤務債務の費用処理額
5 数理計算上の差異の費用処理額
6 その他(会計基準変更時差異の費用処理額、臨時に支払った割増退職金等)

(3)退職給付債務等の計算基礎
1 割引率、期待運用収益率
2 退職給付見込み額の期間配分方法
3 過去勤務債務の処理年数
4 数理計算上の差異の処理年数
5 その他(会計基準変更時差異の処理年数、実際運用収益等)

注記事例・・・ソニーの年次報告書(米国基準)の場合

下記に掲載のソニー株式会社の注記は,ソニーが自主的に米国SEC エドガー・データーベースに登録している年次報告書の「年金及び退職金」に関する注記部分を掲載したものです。日本の年金会計に近似(一致はしてないが)しており参考となります。

なお、訳文は私が簡単に訳しており洗練されておらず、できれば原文を読んでいただくとよい。また、関連する財務諸表(貸借対照表、キャッシュフロー計算書等)を見る必要がありますが省略しています。

12.年金および退職金制度

雇用契約が解除された場合,日本における親会社及び子会社の従業員は、慣習により、下記に記述してある一括払いの退職金または年金を受給する権利があります。自己都合による退職者については、通常、最低限の金額は,勤続年数及び現在支払いの給与を基礎にした金額です。定年規定を強制適用のために退職する従業員を含む、会社都合による退職者に対する最低限の金額を計算する場合には,会社は追加的な給付を支払う。取締役退任に関しては,一括払い退職金は同様な計算式を使って計算され、通常、株主総会の承認を受けて支払われる。

12. Pension and severance plans:

Upon terminating employment, employees of the parent company and subsidiaries inJapan are entitled, under most circumstances, to lump-sum indemnities or pensionpayments as described below. For employees voluntarily retiring, under normalcircumstances, minimum payment is an amount based on current rates of pay andlengths of service. In calculating the minimum payment for employeesinvoluntarily retiring, including employees retiring due to meeting mandatoryretirement age requirements, the company may grant additional benefits. Withrespect to directors' resignations, lump-sum severance indemnities arecalculated using a similar formula and are normally paid subject to the approvalof the company's stockholders.
日本における親会社および大方の子会社は、掛け金積立て確定給付年金制度があり、それは日本の厚生年金保険法に準拠してる。掛け金積立て年金制度は、政府の厚生年金制度の一部をカバーし、掛け金負担は会社および従業員が行う。追加部分は非拠出年金である。
拠出年金制度においては,確定給付は、一般に、現在の従業員に対する規定で退職金の60%をカバーしている制度の非拠出部分を示す。残りの退職金は会社の退職金制度でカバーされている。年金給付額は、前記の規定に明文化されており、勤続年数と給与金額を基礎に決定され,退職者が一括支給か月次年金かを選択して、支給される。年金制度への掛け金は、該当の法律および規則に従い、いくつかの金融機関に積立られる。

The parent company and most subsidiaries in Japan have contributory fundeddefined benefit pension plans, which are pursuant to the Japanese WelfarePension Insurance Law. The contributory pension plans cover a portion of the governmental welfare pension program, under which the contributions are made by the companies and their employees, and an additional portion representing the substituted noncontributory pension plans. Under the contributory pension plans,the defined benefits representing the noncontributory portion of the plans, ingeneral, cover 60% of the indemnities under the existing regulations to employees. The remaining indemnities are covered by severance payments by thecompanies. The pension benefits are determined based on years of service and thecompensation amounts, as stipulated in the aforementioned regulations, arepayable at the option of the retiring employee in a lump-sum amount or on amonthly pension. Contributions to the plans are funded through several financialinstitutions in accordance with the applicable laws and regulations.
大部分の海外子会社は、実質的にすべての従業員を対象とした確定給付年金制度、または退職金制度を持っており、給付原価は積立てられ、または未払費用として計上している。これらの制度で与えられた給付額は、現在支払われている給与及び勤続年数を基礎にしている。

Most foreign subsidiaries have defined benefit pension plans or severanceindemnity plans which substantially cover all of their employees, under whichthe cost of benefits is currently funded or accrued. Benefits awarded underthese plans are based primarily on current rate of pay and lengths of service.
純年金と退職金費用及び、従業員拠出部分と予定金利を含む、関連する積立年金の状況は、下記の通り

Net pension and severance costs and the related pension plans' funded statusincluding the employees' contributory portion and rate assumptions are shownbelow:
Japanese plans: 日本の制度
単位:百万円 Yen in millions
---------------------
3月31日に終了する年度 Year ended March 31
---------------------
1996 1997 1998
--------- --------- ---------
Net pension and severance cost (credit): 純年金・年金費用(収益):
Service cost -- benefits earned during the year 勤務費用ー年間給付発生額 29,276 32,772 39,436
Interest cost on projected benefit obligation 予測給付債務に係る利息費用 11,090 11,959 13,303
Actual return on plan assets 年金資産実際運用益 (9,545) (14,373) (7,843)
Net amortization and deferral 純償却費用および繰延 7,245 14,053 7,037
--------- --------- ---------
Actuarial net pension and severance
cost for the year
当年度の純年金・退職費用の実際額 38,066 44,411 51,933
Employee contributions 従業員負担額 (4,098) (4,073) (4,118)
---------- ---------- ----------
Net pension and severance cost for the year 当年度の純年金・退職費用 33,968 40,338 47,815
========= ========= =========
Foreign plans: 外国の制度
単位:百万円 Yen in millions
---------------------
3月31日に終了する年度 Year ended March 31
---------------------
1996 1997 1998
--------- --------- ---------
Net pension and severance cost (credit): 純年金・退職金費用(収益):
Service cost -- benefits earned during the year 勤務費用--年間給付発生額 10,790 15,988 15,625
Interest cost on projected benefit obligation 予測給付債務に係る利息費用 3,197 4,108 4,911
Actual return on plan assets 年金資産実際運用益 (4,122) (3,897) (6,149)
Net amortization and deferral 純償却費用および繰延 1,860 870 2,365
-------- -------- --------
Net pension and severance cost for the year 当年度の純年金・退職金費用 11,725 17,069 16,752
======== ======== ========
Pension plans' funded status: 年金制度積立状況 日本の制度
Japanese plans
外国の制度
Foreign plans
単位:百万円 Yen in millions Yen in millions
--------------------- ---------------------
3月31日現在 March 31 March 31
--------------------- ---------------------
1997 1998 1997 1998
--------- --------- --------- ---------
Actuarial present value of obligations - Vested benefit 給付債務の年金数理に基づく現在価値-確定給付 268,719 327,802 50,325 57,119
Nonvested benefit 未確定給付 53,311 61,508 4,060 5,850
--------- --------- --------- ---------
Accumulated benefit obligation 累積給付債務 322,030 389,310 54,385 62,969
Additional benefits related to projected salary increase 昇給予測による給付増加額 71,418 86,758 20,288 22,190
--------- --------- --------- ---------
Projected benefit obligation 予測給付債務 393,448 476,068 74,673 85,159
Plan assets at fair value 年金資産の公正価値 204,491 236,966 43,837 54,597
--------- --------- --------- ---------
Excess of projected benefit obligation over plan assets 年金資産を超える予測給付債務 188,957 239,102 30,836 30,562
Unrecognized net loss 未認識純損失 (59,740) (91,343) (4,805) (4,617)
Unrecognized net transition asset 未認識運用開始時純資産 3,104 2,729 1,453 492
Unrecognized prior service cost 未認識過去勤務債務 (12,807) (12,496) -- 2,651
Adjustment required to recognize minimum pension liability 最低限の年金債務の認識による修正 -- 20,692 -- --
----------- ----------- ----------- -----------
Net pension liability recognized in the balance sheet 貸借対照表に計上した純年金債務 119,514 158,684 27,484 29,088
========= ========= ========= =========
Assumptions used in developing the pension obligation as of March 31: 3月31日現在の年金債務計算上の想定率
Discount rate 割引率 3.5% 3.0% 6.5 - 9.0% 6.5 - 8.0%
Long-term rate of salary increase 長期昇給率 3.0% 3.0% 2.5 - 8.5% 2.5 - 8.5%
Long-term rate of return on funded assets 長期年金資産の運用利率 3.7% 4.0% 7.0 - 10.0% 6.5 - 9.8%
財務会計基準(FAS)87「事業主の年金会計」が要求している通り,想定を状況の変化に照らして見直した。想定の見直しは、基本的には予測給付額の変化によるものである。

As required under FAS 87 "Employers' Accounting for Pensions", the assumptionsare reviewed in accordance with changes in circumstances. Such changes in assumptions are the primary reason for the fluctuation in the projected benefit


年金債務・年金費用・制度資産の関係(Financial Statements: Pension Plans)

年金債務・年金費用・制度資産との関連を以下に示します。表中の数値の ( )は貸方残高または貸方残高の増加を示します。

(単位:億円)

期首残高 償却額 期末残高
前期末残高
実際額
勤務費用 利息費用 制度資産
期待収益
移行時純債務
(純資産)
過去勤務
費用
保険数理
損益
制度への
拠出掛け金
給付の
支払
予想金額
年金債務(PBO) (1,673) (177) (92) 116 (1,826)
制度資産の公正価値 829 27 229 (116) 969
-------- -------- -------- -------- -------- -------- -------- -------- -------- --------
差引 (844) (177) (92) 27 229 0 (857)
未認識項目:
移行時純債務(純資産) 34 (5) 29
過去勤務費用 112 (13) 99
保険数理的損益 (213) 3 (210)
-------- -------- -------- -------- -------- -------- -------- -------- -------- --------
財務諸表認識額 (911) (177) (92) 27 (5) (13) 3 229 0 (939)
======== ======== ======== ======== ======== ======== ======== ======== ======== ========

上記表の「期末残高」から続く
前提
(1)年金給付債務(POB)を計算した結果、前期末1,673億円、当期末2,021億円であった。また、当期の勤務費用は177億円であった。

(2)制度資産の公正価値は、前期末829億円、当期末964億円であった。

(3)前年度末にPBOの計算に使用した割引率は5.5%、長期期待収益率は3.3%であった。
上記、利息費用は、期首PBOx5.5%=92億円、制度資産の期待収益は、期首制度資産の公正価値x3.3%=27億円

(4)新基準の移行時(8年前)純債務は、74億円であった。15年で償却している。74億円/15年=5億円当年度償却

(5)6年前に制度改正があり、190億円の過去勤務費用が発生した。15年で償却している。190億円/15年=13億円当期償却

(6)保険数理損益を会計処理するにあたって、回廊アプローチを採用しており、POBと制度資産の公正価値の大きい方の10%を超える額を回廊超過額として、従業員の平均残存勤務年数にわたって損益を認識することとしている。
期首の未認識保険数理損益は213億円であった。従業員の平均残存勤務年数は15年である。
(213億円−期首の年金債務(PBO)1、673億円x10%)/15年=3億円当期償却額

(7)年金制度に拠出した掛け金は229億円、制度の年金受給者に対する給付額は116億円であった。
期末残高
予想金額 差異
純損失(利得)
実際額
年金債務(PBO) (1,826) (195) (2,021)
制度資産の公正価値 969 (5) 964
-------- -------- --------
差引 (857) (200) (1,057)
未認識項目:
移行時純債務(純資産) 29 29
過去勤務費用 99 99
保険数理的損益 (210) 200 (10)
-------- -------- --------
貸借対照表認識額 (939) 0 (939)
======== ======== ========
回廊アプローチとは
保険数理損益を繰延べ処理するための方法としてSFAS87号及びIAS19号は、「回廊アプローチ」と呼ばれる方法を適用しています。回廊アプローチとは、未認識の保険数理損益が一定の幅(この幅を「回廊(corridor)」とよぶ)を超過しなければ保険数理差異を認識しなくてよいとういものです。IAS19号は年金債務の10%と制度資産の公正価値の10%のいずれか大きい方としています。

日本の場合は回廊アプローチを適用されず、未認識の保険数理差異は翌期以降に、平均残存勤務期間以内で規則的に処理(償却)することとしています(注解9参照)。

なお、上記資料は、(財)企業財務制度研究会編「年金会計」中央経済社刊を基礎にしています。

注記事項(制度の概要の注記を除く):

2001年
勤務費用 177
給付債務にかかる利息費用 92
年金資産の期待運用収益 (27)
過去勤務費用償却額等 15
--------
当年度の退職給付費用 257
========
2001年
3月31日現在
退職給付債務 (2,021)
年金資産の公正価値 964
--------
年金資産を超える退職給付債務 (1,057)
未認識の移行時純債務 29
未認識の過去勤務債務 99
未認識数理計算上の利得 (10)
--------
貸借対照表に計上した退職給付債務 (939)
========


2001年
割引率 5.5%
期待収益率 3.3%


簡単な将来給付債務(PBO)の計算例

前提:従業員Aは、11期目の初めに退職し、昇給を見込んだ退職時の退職給付額が5940が見込まれる。割引率は10%とする。

年度ごとの給付均等割当額=5940/勤続年数10年=594である。

勤務費用(現在価値)、利息費用及び将来給付債務の計算

会計年度 均等割当額 計算式 現在価値
(勤務費用)
利息費用 期末PBO
(a) (b) (c)=
期首POB x10%
(d)
1 594 (a)/(1+0.1)^(10-1)= 252 0 252
2 594 (a)/(1+0.1)^(10-2)= 277 25 554
3 594 (a)/(1+0.1)^(10-3)= 305 55 914
4 594 (a)/(1+0.1)^(10-4)= 335 91 1,341
5 594 (a)/(1+0.1)^(10-5)= 369 134 1,844
6 594 (a)/(1+0.1)^(10-6)= 406 184 2,434
7 594 (a)/(1+0.1)^(10-7)= 446 243 3,124
8 594 (a)/(1+0.1)^(10-8)= 491 312 3,927
9 594 (a)/(1+0.1)= 540 393 4,860
10 594 (a)/1= 594 486 5,940
合計 5,940 4,015


上記POBの計算をまとめると下記の通りとなります。

1期 2 3 4 5 6 7 8 9 10
期首PBO 0 252 554 915 1,341 1,844 2,435 3,124 3,927 4,860
利息費用 (c) 0 25 55 91 134 184 243 312 393 486
勤務費用 (b) 252 277 305 335 369 406 446 491 540 594
費用合計 252 302 360 426 503 590 689 803 933 1,080
期末PBO (d) 252 554 915 1,341 1,844 2,435 3,124 3,927 4,860 5,940

こうして計算した全社員の合計が、企業の退職給付債務となります。ここでは給付債務の支払い額を昇給を反映した額としましたが、実際は、昇給率のを反映した計算、一時給付ばかりでなかく年金給付や中途退職率を反映して計算します。複雑な計算は、単純化のため省略しています。実際の計算は、通常、専門家である保険数理士(アクチュアリー、Actuary)が行います。

なお、上記資料は、(財)企業財務制度研究会編「年金会計」中央経済社刊を基礎にしています。


企業会計審議会の意見書の記載事項で会計基準に影響する事項

小規模企業等における簡便法の採用


意見書では、従業員数が比較的少ない小規模な企業などのあっては、合理的に数理計算上の見積もりを行うことが困難である場合が考えられる。このような場合には、期末の退職給付の要支給額を用いた見積もり計算を行う簡便な方法を用いて退職給付費用を計算することも認められると考える、としている。


実施時期等


実施時期
本基準書は、平成12年(2000年)4月1日以後開始される事業年度から実施されるよう措置することが適当である。
なお、企業年金に関する数理計算実施上の関係者の環境整備の状況から、平成12年4月1日以後開始される事業年度から直ちに本基準書に基づく会計処理を適用することが困難であると認められる会社については、平成13年4月1日以後開始される事業年度から本会計基準に基づく会計処理を適用することとし、平成12年4月1日以後開始される事業年度においては、本基準書に基づく退職給付債務及びその内訳等主要な事項について注記を行うこととするよう措置することが適当である。
会計基準の変更による経過措置 新たな会計基準の採用により生じる影響額は、通常の会計処理とは区分して、15年以内の一定の年数の按分額を当該年数にわたって費用として処理することができるよう経過的な措置を置くことが適当である。
日本公認会計士協会の実務指針等 本基準書を実務に適用する場合の具体的指針については、次の事項を含め、今後、日本公認会計士協会が関係者と協議のうえ適切に措置していくことが適当である。
1 数理計算において用いる予測数値
2 退職給付債務及び年金資産等の計算方法
3 過去勤務債務、数理計算上の差異に係る計算法
4 複数事業主制度に係る計算手法
5 小規模企業等における簡便法


連結財務諸表と退職給付の会計


連結財務諸表で退職給付の会計を適用する場合は、子会社から入手する「連結資料」に十分な内容を含んでいなければなりません。退職給付の会計を適用できていない重要な子会社がある場合は、連結修正仕訳で訂正する必要がありますし、求められている連結財務諸表の注記事項も子会社の数値を含むからです。正確で効果的な連結財務諸表を作成するには、退職給付に関する事項を含んだ連結資料を入手しておくことです。

連結作業は、通常、次のような手順で行いますが、「連結資料」が正確で十分な情報を提供していて初めて効率的な連結作業となります。

@ 連結資料の入手⇒ A 連結資料のチェック B 連結資料の集計・仕訳作成(試算表集計、投資と資本の消去資料の集計・仕訳作成、少数株主持分の集計・仕訳作成、連結会社間取引の消去の集計・仕訳作成、連結会社間債権債務の消去・仕訳作成、連結会社間取引の未実現利益の集計・仕訳作成、連結会社間債権消去に伴う貸倒引当金の戻入仕訳作成、持分法の集計・仕訳作成、税効果会計の集計・仕訳作成、その他連結修正すべき事項の集計・仕訳作成、キャッシュフロー計算書作成資料の集計、税効果会計・退職給付の会計・債務保証等の偶発事象・セグメント情報等の注記事項の集計等) C 連結精算表の完成 D 連結キャッシュフロー計算書の作成⇒ E 連結財務諸表の注記事項の作成 F 連結財務諸表・キャッシュフロー計算書・注記事項の期間比較等により分析し正確性を確かめる G 役員への報告

なお、連結決算の手順は「連結財務諸表作成の基礎」に詳細に記載しましたので参照してください。

企業年金基金の会計基準は日本には存在しない

国際会計基準(IAS)第26号「退職給付制度の会計と報告(Accounting and Reporting by Retirement Benefit Plans)」は、受託者である企業年金基金側の会計基準(財務報告の基準)を規定しており、1988年1月1日より適用されている。

今回公表された上記の大蔵省企業会計審議会の「退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書」及び「退職給付に係る会計基準」は、企業年金をしている事業主側の会計基準のみである。国際会計基準第19号「事業主の財務諸表における退職給付の会計(Accounting for Retirement Benefits in the Financial Statements of Employers,1985年1月適用)」に該当する部分である。

企業年金については委託者側のみの会計基準では方手落ちである。委託者側である事業会社と受託者である保険会社及び信託会社側の企業年金にかする会計基準は表裏一体で設定すべきものである。事業者側は、委託先の年金基金自体の財務報告(Financial Report)を受けて、それを基礎に事業者の会計処理及び注記を行うのである。一方の受託者側(基金)の会計基準が存在しないのでは論理的に矛盾する。

日本では、企業年金の運用機関は、信託法及び保険業法ならびに監督官庁である大蔵省に厳しく指導され、年金資金の幹事会社は今もって生命保険会社及び信託銀行に限られている(解禁された投資顧問業等は幹事会社にはれない)。

問題は、信託銀行は顧客である事業会社から預かった年金資金を区分経理して年金資産の時価を的確に管理しているが、生命保険会社は一般保険料と年金掛け金を「どんぶり勘定」で運用しており、顧客である事業会社に対し区分経理されおらず、顧客企業ごとの年金資産の時価を適格に管理できていないということである。これは、預かり資産とそれ以外の資産が区分されていないということは、生命保険会社が倒産したときには元本さえ保証されない恐れがあるということである。

本来は、年金資産の時価会計等を明示した基金側の会計基準に基づく決算をうけて、事業者側の年金会計を行うのである。加えて、受託者である企業年金基金の会計基準を設定し公表されていないということは、上記生命保険会社の問題を曖昧にし先送りしているに過ぎない。

厚生省管轄の企業年金基金と、大蔵省管轄の税制上の適格企業年金に関する企業年金基金の運用委託先である保険会社及び信託会社は、それぞれの規制に絡み複雑であるが、いずれにしても透明性高い仕組みが求められよう。

1999年1月8日、日本経済新聞によれば、厚生省は労働、大蔵省などと連携して、企業年金についての受給者保護規定を盛り込んだ「企業年金基金法」の策定に乗り出す、と報じている。それによると、政府自民党が確定拠出型年金(401k)を2000年度中に導入する方針を固めたため,これに併せて基本法を制定することを狙っている。この基本法では,加入者に対する情報開示など受給者保護策も必要となるとしている。情報開示(会計基準)を法律で決めようとする日本的対応か。

1999年11月28日、日本経済新聞によれば、厚生省、労働省、大蔵省、通産省の四省が、日本版401kの制度設計しており、2000年秋に導入を目指している。厚生年金基金や適格退職年金から移すことができる上限は一人当たり43万2千円に勤続年数をかけた額とする。また、従業員の所得から控除できる掛け金を最大年間43万2千円とする考えである。

なお、国際会計基準との関係は「国際会計基準」および「国際会計基準と日本の会計の相違点」を用意しています。興味のある方はご参照ください。


外部監査の受託

企業年金(厚生年金及び企業適格年金)を受託している信託銀行及び生命保険会社の決算報告における外部監査を当事務所では受託しております。外部監査の受託内容は、@ 受託年金資産の管理体制が有効に機能し適切に管理できているかどうか、A 保有有価証券の実在性、 B 評価が上記退職給付の会計基準で求めれている時価会計を適切に適用しているかどうか、が中心となります。

なお、区分経理ができていない場合は、管理体制の不備により外部監査で意見を形成する条件を満たしておりませんので、区分経理など管理状況の予備調査に基づく助言となります。

おわりに


現在の日本の適格企業年金は、将来の退職時に給付される額が一定の計算式で確定しており、その確定給付額を支給するに足る資金を月次ないし年度で掛け金を積み立てる、いわゆる確定給付型の年金である。


したがって、年金資産の実際運用益が期待より小さい場合は年金資産の不足が生ずる恐れがある。また、年金資産が株式で運用されている場合は、株式の時価が下がることにより年金資産の目減りが生ずることになる。いずれも、上記の会計基準では、多くの場合、退職給付引当金の不足として認識されよう。

最近、米国の401kプランの確定拠出型企業年金を日本でも導入の議論がされているが(政府は2000年秋の導入を目指している〕、確定拠出型企業年金とは、年金掛け金が確定しいるが将来受け取る給付額は実際運用益を加算した額だけを給付するので、企業の追加負担は生じない。したがって、退職給付引当金は発生しない。(401kプランの内容は、ダイワベンチャーのホームページ「401(k)情報」に非常に詳しい調査結果報告が掲載されています。) 

米国でも新興企業であるマイクロソフト社は、401kプランを導入しているため(新興企業は確定給付型企業年金はない場合が多い)、年金債務に関する債務及び注記は無い(「キャッシュフロー計算書の読み方」にマイクロソフト社のB/Sを掲載しましたので参照してください)が、ストックオプションに関する注記に401kについての下記の注記が開示されている(「マイクロソフト社に見るストックオプション」参照)。日本にも国際会計基準第19号「従業員給付」に求めている会計基準(確定拠出年金及びストックオプションの開示を求めている)が必要となろう。新興企業は、確定給付型企業年金よりも確定拠出型企業年金(401kプラン)を選択する企業が増大することが予想されるからである。

マイクロソフト社の401kに関する注記:
Savings plan. 貯蓄プラン
会社は、内国歳入規則401(k)条に適合する貯蓄プランを持っている。参加従業員は税引き前給与の15%まで繰り延べることができる。会社は、参加者の1ドル当たりの積立に対し、参加者の所得の3%を給付限度として、50セント給付する。 給付額は、1995年、1996年および1997年に、それぞれ、12百万ドル、15百万ドルおよび28百万ドルであった。


すでに米国会計基準FAS87号「雇用主の企業年金会計(Employers' Accounting for Pension)」で連結財務諸表を作成している会社では、年金数理による計算は、受託している生命保険会社や信託銀行ないし専門の年金数理士(Actuaries)から計算のサービスを受けて年次報告書への注記等を掲載し監査を行っている実務がある。

最近では、日本総研のホームページに「FAS87号について」があり、米国財務会計基準書第87号「雇用主の年金会計」の説明など簡潔に行っており、かつ、FAS87号に準拠した年金数理計算のシュミレーションをエクセルで提供している。日本の会計基準にある「退職給付債務」は、FAS87号の「予測給付債務(Projected Benefit Obligation:PBO)(下記参照)」に該当し参考となります。

予測給付債務(Projected Benefit Obligation:PBO):
現在までの給与水準だけでなく、将来の昇給分をも考慮に入れてた将来の給付額を年金数理計算を行って現在価値に割り引いた予測給付債務です。


企業にとっては、どの程度の影響を及ぼすものか事前の調査を必要としよう。

なお、連結財務諸表を作成する会社は、適用年度までに体制つくりをしておく必要があります。つまり、子会社から企業年金に関する注記事項の基礎資料を入手しなければなりませんので、「連結資料」の設計に工夫が必要となるからです。適用直前に体制を作ろうとしても無理があります。連結子会社の理解を求めるのに時間を要しますので早期の準備をお勧めします。

進化し続ける企業年金の会計

米国財務会計審議会(FASB)は、2006年3月31日、「定額給付確定年金に関する会計基準(草案)」を公表し5月31日までにコメントを求めている。これによると、給付債務の計上をより厳格に求めるという内容となっている。運用資産の予定利回りが、実際の利回りより大きかった場合、従来は注記による開示であり猶予期間があったが、即座に年金債務の計上不足を計上させようとするもの(解説 FASBが年金会計オーバーホール 参照)。

2006年9月FASBはSFAS158号従業員定額給付年金およびその他の退職金の会計ーSFAS87号、88号、106号および132(修正)の改正(Employers’ Accounting for Defined Benefit Pension and Other Postretirement Plansーan amendment of FASB Statements No. 87, 88, 106, and 132(R))」を公表した。

従来、期末現在での積み立て不足や過大積み立ての状況が即座に貸借対照表に必ずしも常時反映されていなかった。SFAS158号は、年金の積み立て不足および過大積み立てを期末現在で認識し貸借対照表に反映させようとするものである。(SmartPro より)


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公認会計士 横山明

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参考:「退職給付制度による会計及び報告」(国際会計基準(IAS)26号の概要)

この会計基準は、退職給付制度による会計及び報告に適用される。つまり、適格企業年金等で保険会社又は信託銀行等に年金資産の運用を委託している場合、受託された保険会社又は信託銀行が年金制度の財務内容を事業主に報告するための基準である。会計単位が事業主(企業)ごとの退職給付制度という預り金の会計報告で法人格はない。

一方、事業主(企業)の確定給付制度の会計基準はIAS19号「従業員給付」に規定している。IAS19号は、上記日本の会計基準に導入されたもので、この会計基準に基づいて報告された会計情報から事業主の退職給付の会計が行われ、表裏一体の関係にある。

概要は次の通り

退職給付制度(retirement benefit plans)とは、企業がその従業員に退職時又は退職後に給付する規定を持っており、その給付又は企業の掛け金を、規定に基づいて又は企業の実務に基づいて決定又は見積りする協約である。退職給付制度には大きく分けて、確定拠出制度と確定給付制度とがある。

確定拠出制度とは、基金への掛け金に投資運用益を加えた額を退職給付として支払う退職給付制度で、掛け金が決められているところから確定拠出制度といわれ、日本でも導入が予定されている日本版401kがこれにあたる。

確定給付制度とは、給付額を勤続年数又は従業員の給与を基礎に計算した額を退職給付として支払う退職給付制度で、予め給付額が決められていることから確定給付制度といわれる。これは、企業年金及び税制適格企業年金が該当する。 確定給付年金は、生命保険会社又は信託銀行等に積立てる。積立てとは、事業主である企業から分離された一つの会計単位(Fund)に資産を移すことである。生命保険会社並びに信託銀行に、積立てられた資産から退職した従業員に退職給付が行われる。

給付に可能な純資産(net assets available for benefits)とは、約束された退職給付の保険数理計算による現在価値以外の未払債務を控除した制度資産をいう。 約束された退職給付の保険数理計算による現在価値(actuarial present value of promised retirement benefits)とは、現在及び過去の従業員に対して、すでに提供したサービスに対応する退職給付制度による将来支払額の現在価値である。

約束された退職給付債務には、受給権発生給付(vested benefit)と受給権の発生していない給付(non-vested venefit)とがある。受給権発生給付とは、退職給付制度の条件のもとに、受給権が確定した給付をいう。保険数理では、退職給付制度で受給権が生じていない者も将来の退職給付の見積もり計算に含める。

確定拠出制度
確定拠出制度の報告は、給付に可能な純資産の計算書及び基金積立て方針の記述を含まなければならない。

確定給付制度
退職給付制度の投資は公正価値でなければならない。市場性のある有価証券の公正価値は市場価格である。

確定給付制度の報告は、(イ)給付に可能な純資産、(ロ)受給権発生給付額と非受給権発生給付額を区分して、約束された退職給付の保険数理計算による現在価値、及び(ハ)結果としての過不足額を含んだ計算書が求められる。
給付に可能な純資産の計算書には、(イ)約束された退職給付の保険数理計算による現在価値、受給権発生給付額と非受給権発生額を区分に関する注記、または(ロ)添付の保険数理報告書(actuarial report)の情報に参照させるか、いずれかによる。

報告書の日付現在で、保険数理計算ができていない場合は、最も近い計算を開示する計算書の日付とする。

開示要求事項
確定給付制度又は確定拠出制度いずれにおいても、退職給付制度の報告書には、(イ)給付に可能な純資産の変動に関する計算書、(ロ)重要な会計方針、(ハ)制度の記述及び当期変動の影響を含んでいなければならない。

計算書の開示例(カナダのケース):
下記に参考として三つの計算書(注記を除く)、つまり、(1)確定給付及び給付可能な純資産の計算書、(2)給付可能な純資産の変動計算書、(3)将来給付の変動計算書を示している。

ABC会社の年金制度
確定給付及び給付可能な純資産の計算書
1997年及び1998年12月31日現在
確定給付
将来給付の保険数理計算による現在価値: 1997 1998
受給権発生給付額
受給権未発生給付額
$4,600
532
$5,802
654
-----
5,132
-----
6,456
給付可能な純資産
時価評価による投資:
社債
株式
抵当証券
不動産
3,040
2,129
710
625
3,112
2,770
1,230
625
-----
6,504
-----
7,737
未収金:
未収掛け金
未収利息及び配当金
150
133
150
119
-----
283
-----
269
現金 1,613 1,555
総資産 -----
8,400
-----
9,561
未払金
未払費用
311
32
210
43
総負債 -----
343
-----
253
給付可能な純資産 -----
8,057
-----
9,308
将来給付の保険数理計算による現在価値を超える給付可能な純資産 -----
$2,925
=====
-----
$2,852
=====
財務諸表の注記参照

 

給付可能な純資産の変動計算書
1997年及び1998年12月31日終了する事業年度
投資収益: 1997 1998
投資の市場価格の増加(減少)
受取利息
受取配当金
受取家賃
$(38)
176
75
32
$215
280
110
35
-----
245
-----
640
差引:投資経費 (17) (39)
-----
228
-----
601
受取掛け金 1,050 1,284
増加合計 -----
1,278
-----
-----
1,885
-----
退職給付の支払い
管理費
492
63
557
77
控除合計 -----
555
-----
634
純増加額 -----
723
-----
1,251
期首給付可能な純資産 7,334 8,057
期末給付可能な純資産 -----
$8,057
=====
-----
$9,308
=====
財務諸表の注記参照


将来給付の変動計算書
1997年及び1998年12月31日現在
1997 1998
期首の将来給付の現在価値 $4,119 $5,132
当年度増加(減少):
給付額の増加
退職給付の支払い
割引期間の減少
保険数理仮定の変更
1,433
(492)
53
19
1,769
(557)
130
(18)
期末の将来給付の現在価値 -----
$5,132
=====
-----
$6,456
======
財務諸表の注記参照

以下、年金制度の説明、会計方針等の注記が続く省略する。
欧米では、この年金財政の会計報告には外部監査人の監査報告書が添付される。

参考:欧米の年金財政の財務諸表・・Yahoo!   Google  bing



なお、金融庁は2010年3月期決算から国際会計基準の任意適用に関連して、金融庁が指定した「指定国際会計基準」を決めた。これによるとIAS26号も含んでいる。生命保険会社及び信託銀行はIAS26号を適用した企業年金の財務諸表を作成し事業主に報告するのであろうか?

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日米双方の連結実務の豊富な経験を基礎にキーポントを上記に記しました。本格的な連結決算制度の体制確立に参考となれば幸いです。なお、企業に合わせ正確かつ効果的・効率的な連結決算体制の確立について支援しています。興味がありましたら、下記宛てご連絡ください。

横山会計事務所
公認会計士 横山明

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