ストック・オプション制度

マイクロソフト社の年次報告書に見るストック・オプション
および日本の自己株式の会計基準について
改正商法の自己株式金庫株)の規制撤廃に関する会計処理の課題
ストックオプションの米国実務」へ
株式を活用した経営戦略の色々
・・株式交換、会社分割、トラッキング・ストック他
」へ
ホームページへ
●「会計・税金・財務情報(ディスクロージャー)」へ
会計基準・財務情報開示の総合情報サイト
Google

はじめに

1997年のマイクロソフト社の年次報告書(日本の有価証券報告書に該当)より、ストックオプション制度の会計処理および注記による開示を学ぶことはあながち無益とは言えない。というのは、マイクロソフト社は米国会計基準ばかりでなく国際会計基準にも準拠して作成している旨を会計方針に明記しており、今後、我が国の企業も国際会計基準に影響される企業が出てくるものと思われるからである。また、日本でも導入が決定されているキャッシュフロー計算書も参考になろう。

その後、国際会計基準は第1号「財務諸表の表示」の改正を行い、国際会計基準で作成している旨の注記を財務諸表に記載する場合は、「国際会計基準と国際会計基準の解釈指針(interpretations)のすべてに準拠しなくてはならない」としたため、国際会計基準と相違する米国会計基準で作成していたマイクロソフト社は「国際会計基準に準拠して作成している」の注記は削除された。

ストックオプションの会計に関し費用計上を要求する会計基準を公表(2005年)

2004年3月31日、米国財務会計基準委員会(FASB)は、ストックオプションの会計に関し、現行、費用計上が任意となっている基準を、国際財務報告基準IFRS 2「株式報酬(ストックオプション)の会計(2005年1月から適用)」にほぼ一致させ費用計上を要求する会計基準草案を公表した。コメント期日は2004年6月30日(FASB速報 参照)。

2004年12月16日FASBは会計基準書SFAS123号「持分を基礎とした報酬(Equity-Based Compensation)」を公表し、上場大企業には2005年6月15日以降開始する事業年度から費用計上を求めた
マイクロソフト社は、2004年6月決算にSFAS123号を早期適用し3年間表示しているため2002年まで遡及して適用している。(「マイクロソフト社の2004年の年次報告書Form 10-K」 参照)

2004年12月28日日本の企業会計基準委員会企業会計基準公開草案第3号「ストック・オプション等に関する会計基準(案)」を公表し、2006年4月1日以降開始する事業年度から適用するとし、2月28日までにコメントを求めている。人件費の相手勘定を、負債の部と資本の部の中間に「新株予約権」として独立項目として計上する(4項参照)。

2005年10月19日企業会計基準委員会は、企業会計基準公開草案第11号「ストック・オプション等に関する会計基準(案)」企業会計基準適用指針公開草案第14号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針(案)」の公表を公表した。人件費の相手勘定を、貸借対照表の純資産の部に新株予約権として計上する(4項参照)、と変更している。2005年12月27日企業会計基準委員会は「ストック・オプション等に関する会計基準」を公表した。

2006年3月2日、大和証券グループ、一橋大学大学院国際企業戦略研究科とストック・オプション公正価値の評価モデルを開発し公表した。(NIKKEI 研究論文は一橋大学大学院国際企業戦略研究科のホームページ 参照)

日本の基準 国際基準
ストック・オプション(草案)では、費用として計上し、貸方は負債と資本の中間に独立して計上(4項)。(2004年12月28日)
   ↑ ↑
国際基準に明らかに反している。
企業結合の新国際会計基準・米国会計基準の「少数株主持分」を株主持分の区分へ表示する基準を共同公表 参照


2005年8月10日、企業会計基準委員会の、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(案)」で「新株予約権」は純資産の部へ表示と変更している(19項(1)参照)。
2005年12月9日、企業会計基準委員会は、確定版を公表。
国際基準との比較 参照
   ↓ ↓
2005年10月19日、企業会計基準委員会は、企業会計基準公開草案第11号「ストック・オプション等に関する会計基準(案)」で、人件費の相手勘定を、貸借対照表の純資産の部に新株予約権として計上する(4項参照)、と変更している。


2005年12月27日、企業会計基準委員会は「ストック・オプション等に関する会計基準」を公表した。適用は、会社法施行に合わせるとしている(70項)。
米国基準(SFAS123号)では費用を計上し貸方は資本剰余金(早期適用実例 参照)

国際会計基準(IFRS2号)では貸方は所有者持分(Owners' equity、具体的には資本剰余金)へ計上(IFRS2,パラグラフBC100  モデル・ケース 参照)。


シスコ、新しいストックオプション評価方法を提案
 ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)企業にストックオプション(自社株購入権)の費用計上を義務付ける新会計基準が導入されるのを控え、米ネットワーク機器大手のシスコシステムズ(Nasdaq:CSCO)は、この影響を和らげるため、従業員ストックオプションを模倣した金融商品の創造を提案している。

 シスコの広報担当者は、同社が証券取引委員会(SEC)に対し、「従業員ストックオプションの特質と一致する市場取引手段」の創造を提案したことを確認した。同担当者によると、同社はSECからの回答を現在待っているという。

 シスコの提案は、オプション価値の判断に市場を利用することを目標としている。オプションの価値をいかに評価するかは、長年にわたって会計、証券当局を悩ませてきた問題。財務会計基準審議会(FASB)が承認した新会計基準により、公開企業は従業員に提供するストックオプションの価値を、財務諸表に費用として計上することを義務付けられる。大手企業の大半は、この新しい会計基準を来年まで採用しなくてもよいが、シスコの場合、会計年度末が7月であるため、2006年7月期から費用計上を開始しなければならない。

 大量のストックオプションを従業員に付与しているシスコやその他ハイテク企業は、標準的なオプション評価方法である、「ブラックショールズ」モデルを使った方法では、オプションの価値が過大評価され、純利益が不当に低く抑えられると主張してきた。

 シスコによると、ブラックショールズを使ったオプション価値の評価では、同社の今年1月末までの6カ月間の純利益は、実際に発表した数字よりも19%(5億3300万ドル)少なくなり、22億6000万ドルにとどまるという。シスコの幹部らは10日、多くのアナリストが注視している”プロフォーマ”の数字からは、ストックオプション費用を除外する予定だと述べた。

 事情に詳しい筋によると、シスコの提案について同社と当初協議したSECスタッフは、修正を加えることを提案し、シスコはこれに従ったという。こうした市場取引手段を導入するのに、シスコはSECの承認は必要としないものの、事情に詳しい2人の筋によると、問題が生じないとの保証をシスコは求めているという。SECの広報担当者はコメントを避けた。シスコの提案についてはブルームバーグ・ニュースが最初に報じた。

日本経済新聞 - 2005年5月11日

米シスコ、株式購入権を投資家に販売・市場で価値評価

 【シリコンバレー=古田彩】米シスコシステムズは従業員向け株式購入権(ストックオプション)の価値を市場で評価する新方式を導入する。従業員向けと同じストックオプションを機関投資家に販売し、指標となる市場価格を決める。米証券取引委員会(SEC)が2006年1月からストックオプションの費用計上を義務付けるのに備えた措置。

 シスコはSECに、ストックオプションを外部の投資家に販売することへの認可を申請した。同社は「従業員向けストックオプションを市場で販売するという動きは聞いたことがない」としている。SECが認可すれば、従業員向けに多くのストックオプションを与えているハイテク企業を中心に追随する動きが出そうだ。 (日本経済新聞 - 2005年5月16日16:02)

SECは、オプションに関するシスコの方法を斥けた

2005年9月10日、ニューヨークタイムズは「米政府は、オプションに関するシスコの方法を斥けたU.S. Rejects Cisco Plan on Options)」と題して、SECは、シスコが提案した市場を基礎にした(market-based approaches)ストック・オプションの費用計上額の計算方法は、公正価値の合理的な見積り(reasonable estimates of fair value)ができていないとして認めないことを報じた。(CNN 参照)
2005年9月9日、SEC議長クリストファー・コックス「議長声明
2005年9月9日、主任会計士ドナルド・ニコライセン(10月に退任する)「Speech by SEC Staff:Statement Regarding Use of Market Instruments in Valuing Employee Stock Options

2005年8月31日、SEC経済分析室(OEA)による「Economic Evaluation of Alternative Market instrument designs: Toward a Market-Based Approach to Estimating the Fair Value of Employee Stock Options
背景には「SEC、ストックオプションの費用計上方法で新指針」(2005年4月22日国際金融情報センター著)がある。
企業が懸念している格子(lattice)モデルは最も複雑なモデルであるので、企業に格子モデルの利用を要求しない」としている。

マイクロソフト社はストック・オプションの会計を早期適用(2004年6月期に適用)

2004年12月16日FASBは会計基準書SFAS123号「持分を基礎とした報酬(Equity-Based Compensation)」を公表し、上場大企業には2005年6月15日以降開始する事業年度から費用計上を求めた。

2005年3月21日、ベアー・スターンズ社の調査によれば、2005年第三四半期から開始される費用計上を求めているストック・オプションの会計により、S&P500社の2004年度の純利益を5%だけ減少させ、ナスダック100社の2004年度の純利益には22%(マイクロソフト社の25%が大きく影響している)だけ減少させる、と公表した。IT産業の多く、ストック・オプションの利用が多いナスダック企業への影響が大きい。

マイクロソフト社は、2004年6月決算にSFAS123号を早期適用し3年間表示しているため2002年まで遡及して適用している。(「マイクロソフト社の2004年の年次報告書Form 10-K」 参照)

株主持分計算書に計上したストック・オプションが下記のように表示されています。これを見ると、2002年と2003年は約4千億円、2004年は約6千億円(1ドル=105円換算)の株式報酬費用Stock-based compensation expenseを計上しており純利益(Net income)に与える影響は大きいことが判る。ちなみに、遡及修正前の前年度報告した純利益は、2002年は7,829百万ドル(遡及修正後は5,355百万ドルに減少)、2003年は9,993百万ドル(遡及修正後は7,531百万ドルに減少)であった。

STOCKHOLDERS’ EQUITY STATEMENTS
株主持分計算書

 

(単位:百万)
(In millions)                   
Year Ended June 30 6月30日に終了する事業年度    2002年(1)     2003年(1)     2004年  

Common stock and paid-in capital 資本金および資本剰余金

                        

Balance, beginning of period 期首残高

   $ 28,390     $ 41,845     $ 49,234  

Cumulative SFAS 123 retroactive adjustments 
SFAS123号の遡及修正累計額

     6,560       --
     
-
 

Common stock issued 普通株発行

     1,655       2,966       2,815  

Common stock repurchased 自己株式買戻し

     (676 )     (691 )     (416 )

Stock-based compensation expense 株式報酬費用

     3,784       3,749       5,734  

Stock option income tax benefits/(deficiencies)
ストック・オプションの税効果(不足)

     1,596       1,365       (989 )

Other, net その他、純額

     536       -       18  


 


 


Balance, end of period 期末残高

     41,845       49,234       56,396  


 


 


Retained earnings 利益剰余金

                        

Balance, beginning of period 期首残高

     18,899       12,997       15,678  

Cumulative SFAS 123 retroactive adjustments
SFAS123号の遡及修正累計額

     (5,062 )     -       -  


 


 


Net income 純利益

     5,355       7,531       8,168  

Other comprehensive income:その他の包括利益

                        

Net gains/(losses) on derivative instrumentsデリバティブの純損益

     (91 )     (102 )     101  

Net unrealized investments gains/(losses)投資損益の未実現損益

     5       1,243       (873 )

Translation adjustments and other 換算調整とその他

     82       116       51  


 


 


Comprehensive income 包括利益

     5,351       8,788       7,447  

Common stock dividend 普通株の配当

     -       (857 )     (1,729 )

Common stock repurchased 自己株式買戻し

     (6,191 )     (5,250 )     (2,967 )


 


 


Balance, end of period 期末残高

     12,997       15,678       18,429  


 


 


Total stockholders’ equity 株主持分合計

   $ 54,842     $ 64,912     $ 74,825  
    


 


 


 

(1)   June 30, 2002 and 2003 stockholders’ equity statements have been restated for retroactive adoption of the fair value recognition provisions of SFAS 123, Accounting for Stock-Based Compensation, as discussed in Note 13.
2002年および2003年の株主持分計算書は、注記13に記載の通り、財務会計基準書(SFAS)123号「持分を基礎とした報酬」の公正価値認識の規定を遡及して適用し、過去の財務諸表を作成し直しています(restated

 

See accompanying notes. 添付の注記を参照

2002年と2003年の遡及修正を、前年度公表の損益計算書と比較してみると下記のようになった。研究開発部門の従業員に対するストック・オプションが多いことがわかる。

INCOME STATEMENTS 損益計算書
(In millions) 遡及 遡及修正 遡及 遡及修正
単位:百万 修正前 修正後 株式報酬 修正前 修正後 株式報酬
Year Ended June 30 2002年 2002年 差異 2003年 2003年 差異
Revenue 売上高 $ 28,365 28,365 0 $ 32,187 32,187 0
Operating expenses:営業費用
Cost of revenue 売上原価 5,191 5,699 508 5,686 6,059 373
Research and development研究開発費 4,307 6,299 1,992 4,659 6,595 1,936
Sales and marketing 販売促進費 5,407 6,252 845 6,521 7,562 1,041
General and administrative一般管理費 1,550 1,843 293 2,104 2,426 322
Total operating expenses営業費用合計 16,455 20,093 3,638 18,970 22,642 3,672
Operating income営業利益 11,910 8,272 (3,638) 13,217 9,545 3,672)
Losses on equity investees and other (92) (92) 0 (68) (68) 0
Investment income/(loss) 投資損益 (305) (305) 0 1,577 1,577 0
Income before income taxes税前利益 11,513 7,875 3,638) 14,726 11,054 3,672
Provision for income taxes法人所得税 3,684 2,520 1,164) 4,733 3,523 1,210)
Net income純利益 $ 7,829 5,355 2,474 $ 9,993 7,531 2,462

修正前と修正後の増減分析をすると、以下の遡及修正仕訳を2002年と2003年度に計上した模様。

遡及修正仕訳 2002年 2003年
貸方は( )を付けている。 貸借対照表 損益計算書 貸借対照表 損益計算書
損益計算書:
Cost of revenue 508 373
Research and development 1,992 1,936
Sales and marketing 845 1,041
General and administrative 293 322
Provision for income taxes 税効果部分(注1 (1,164) (1,210)
貸借対照表:
Deferred income taxes benefits 2,662 2,161
Deferred income taxes credits 1,731
資本金および資本剰余金:
Balance, beginning of year - (10,198)
Cumulative SFAS 123 retroactive adjustments  (6,560) -
Common stock issued 146 46
Stock-based compensation expense  (3,784) (3,749)
Stock option income tax benefits 11
利益剰余金:
Balance, beginning of year 7,536
Cumulative SFAS 123 retroactive adjustments 5,062 -
仕訳合計 (2,474) 2,474 (2,462) 2,462

注1):ストック・オプションについて法人所得税では、従業員がストック・オプションを行使したときに、行使価格と市場価格との差異が従業員の所得とされ、同時に、法人には費用として課税所得から控除することができる。そのため、税効果部分を繰延税金資産を計上したものである。(「シスコ・システムズ、ストック・オプション優遇税制措置で連邦法人税支払いなし」の記事 参照) 現在、日本には法人に対してこうした優遇税制はない。

When an employee exercises an option to buy stock, the difference between the strike price (what the employee pays) and the market price (which is almost always higher) becomes taxable income for the employee and a tax deduction for the employer.

BALANCE SHEETS 貸借対照表
株主持分
(In millions) 修正前 遡及修正後 税効果修正
30-Jun 2003年 2003年 差異
Assets
Current assets:
Cash and equivalents $ 6,438 6,438 0
Short-term investments 42,610 42,610 0
Total cash and short-term investments 49,048 49,048 0
Accounts receivable, net 5,196 5,196 0
Inventories 640 640 0
Deferred income taxes 2,506 2,506 0
Other 1,583 1,583 0
Total current assets 58,973 58,973 0
Property and equipment, net 2,223 2,223 0
Equity and other investments 13,692 13,692 0
Goodwill 3,128 3,128 0
Intangible assets, net 384 384 0
Deferred income taxes 繰延税金 2,161 2,161
Other long-term assets 1,171 1,171 0
Total assets $ 79,571 81,732 2,161
Liabilities and stockholders’ equity
Current liabilities:
Accounts payable $ 1,573 1,573 0
Accrued compensation 1,416 1,416 0
Income taxes 2,044 2,044 0
Short-term unearned revenue 7,225 7,225 0
Other 1,716 1,716 0
Total current liabilities 13,974 13,974 0
Long-term unearned revenue 1,790 1,790 0
Deferred income taxes 繰延税金 1,731 (1,731)
Other long-term liabilities 1,056 1,056 0
Commitments and contingencies
Stockholders’ equity:
Common stock and paid-in capital 資本金・資本剰余金
- shares authorized 24,000;
Shares issued and outstanding 10,718 and 10,771
35,344 49,234 13,890
Retained earnings, 利益剰余金
including accumulated
other comprehensive income of $583 and $1,840
25,676 15,678 (9,998)
Total stockholders’ equity 株主持分合計 61,020 64,912 3,892
Total liabilities and stockholders’ equity $ 79,571 81,732 2,161

STOCKHOLDERS’ EQUITY STATEMENTS
(In millions) 修正前 遡及修正後 修正前 遡及修正後
Year Ended June 30 2002年 2002年 差異 2003年 2003年 差異
Common stock and paid-in capital
Balance, beginning of year $ 28,390 28,390 0 $ 31,647 41,845 10,198
Cumulative SFAS 123 retroactive adjustments 
SFAS123号の遡及修正累計額
6,560 6,560
Common stock issued 普通株式発行 1,801 1,655 (146) 3,012 2,966 46)
Common stock repurchased 自己株式買戻し (676) (676) 0 (691) (691) 0
Stock-based compensation expense 株式報酬 3,784 3,784 3,749 3,749
Stock option income tax benefits 
ストックオプションの税効果
1,596 1,596 0 1,376 1,365 (11
Other, net 536 536 0
Balance, end of year 31,647 41,845 10,198 35,344 49,234 13,890
Retained earnings
Balance, beginning of year 18,899 18,899 0 20,533 12,997 (7,536)
Cumulative SFAS 123 retroactive adjustments
SFAS123号の遡及修正累計額
(5,062) (5,062)
Net income 純利益 7,829 5,355 (2,474) 9,993 7,531 (2,462)
Other comprehensive income:
Net gains/(losses) on derivative instruments (91) (91) 0 (102) (102) 0
Net unrealized investment gains/(losses) 5 5 0 1,243 1,243 0
Translation adjustments and other 82 82 0 116 116 0
Comprehensive income 包括利益 7,825 5,351 2,474) 11,250 8,788 (2,462)
Common stock repurchased (6,191) (6,191) 0 (5,250) (5,250) 0
Common stock dividends (857) (857) 0
Balance, end of year 20,533 12,997 (7,536) 25,676 15,678 9,998)
Total stockholders’ equity $ 52,180 54,842 2,662 $ 61,020 64,912 3,892

設立後28年にして初めて普通株式の配当を行った。(2003年6月期)

マイクロソフト社は、設立以来、優先株式の配当は除いて、普通株式に配当はしていなかった。当然、年次報告書に普通株式に対する配当はしていないししない方針であることが記載されていた。配当はしていなかったが、急騰する株価によって株主にキャピタルゲインを実現させて報いていたことと(2003年11月のマイクロソフト社の株価(一株当たり25ドルは、1986年の株式公開から約340倍となった)、毎年のように行われていた株式分割(stock split)が株価を希薄化させるより株価が上昇することで実質的な配当の効果を及ぼしていた。現に、配当の変わりに株式分割をする旨の記載があった。

2003年6月期に、創業以来はじめて普通株式に8億5千7百万ドルの配当を行った。ちなみに、2003年6月30日現在の短期投資を含む現金同等物は490億ドル(1ドル110円換算で5兆3千9百億円)保有する。マイクロソフト社は、ソニーの株価総額3兆4370億円(2003年11月21日の株価3710円計算)を超える資金を保有する。

加えて、従業員に対するストック・オプションに代えて株式現物支給(Stock Award)とすると2003年7月8日発表した。株式現物支給(Stock Award)は、引受け価格を約束するストック・オプションより実際に株式を無償で得られる機会があり、承認されれば2003年末までに導入したいとしている(2003年6月決算の年次報告書(Form10−K)より)。
自社株(自己株式が普通)を現物支給する場合は、時価にて (借方)報酬/(貸方)資本金 となる。

マイクロソフト社のSEC提出の 年次報告書(Form 10-K)、 四半期報告書(Form 10-Q) 参照

巨額配当369億68百万ドル(約4兆円)の実施(2005年6月期)

財務諸表注記12によれば、2004年7月20日の取締役会で普通株一株当り3ドルの現金配当(総額326億4千万ドル【約3兆5400億円】)を承認し特別配当として12月2日に支払った。加えて、四半期ごとに普通株一株当り0.08ドルの現金配当を行った。利益剰余金を超える特別配当の結果、2005年6月末現在、利益剰余金は無くなり、122億98百万ドル(約1兆3527億円)の欠損となったが、株主持分合計は481億15百万ドル(約5兆2926億円)となっている。株価時価総額は下記の通り高水準で推移している。過去3年間の普通配当額は下記の株主持分変動計算書の通りであった。(「米国:米国企業は現金をどのような目的に使うつもりなのか?」byモルガンスタンレー08.09.2004  参照)

マイクロソフト 2005年7月現在、株価総額⇒ 約31兆904億円 Market Cap:US$ 282.64B


STOCKHOLDERS’ EQUITY STATEMENTS  株主持分計算書

 

(In millions) 単位:百万                   
Year Ended June 30 6月30日終了する    2003     2004     2005  

Common stock and paid-in capital 資本金および資本剰余金

                        

Balance, beginning of period 期首残高

   $ 41,845     $ 49,234     $ 56,396  

Common stock issued    普通株発行

     2,966       2,815       3,223  

Common stock repurchased 自己株買戻し

     (691 )     (416 )     (1,737 )

Stock-based compensation expense ストック・オプション費用

     3,749       5,734       2,448  

Stock option income tax benefits/(deficiencies) 税効果

     1,365       (989 )     89  

Other, net その他、純額

     ?       18       (6 )


 


 


Balance, end of period 期末残高

     49,234       56,396       60,413  


 


 


Retained earnings (deficit) 利益剰余金(損失)

                        

Balance, beginning of period 期首残高

     12,997       15,678       18,429  

Net income 当期純利益

     7,531       8,168       12,254  

Other comprehensive income: その他の包括利益

                        

Net gains/(losses) on derivative instruments デリバティブ未実現益(損)

     (102 )     101       (58 )

Net unrealized investments gains/(losses) 未実現投資益(損)

     1,243       (873 )     371  

Translation adjustments and other 換算調整とその他

     116       51       (6 )


 


 


Comprehensive income 包括利益

     8,788       7,447       12,561  

Common stock cash dividends 現金配当額

     (857 )     (1,729 )     (36,968 )

Common stock repurchased  自己株買戻し

     (5,250 )     (2,967 )     (6,320 )


 


 


Balance, end of period 期末残高

     15,678       18,429       (12,298 )


 


 


Total stockholders’ equity 株主持分合計

   $ 64,912     $ 74,825     $ 48,115  
    


 


 


 

See accompanying notes.

年次報告書のストックオプションに関連する計算書等

マイクロソフト社の事業年度終了は6月30日である。キャッシュフロー計算書、株主持分計算書、損益計算書は3期、貸借対照表は2期を表示しているのは、SEC(米国証券取引委員会)の規則に基づくものである。

年次報告書に示されたストック・オプションに関連する計算書は次の通りである。

Cash Flows Statements キャッシュフロー計算書

(In millions)単位:百万

Year Ended June 30 6月30日終了の事業年度

1995 1996 1997
Cash flows from operations: 営業活動からのキャシュフロー:
Net income 純利益 $1,453 $2,195 $ 3,454
Depreciation and amortization 減価償却費及び減耗償却費 269 480 557
Unearned revenue 繰延利益 69 983 1,601
Recognition of unearned revenue
from prior periods
過年度繰延利益の利益計上額 (54) (477) (743)
Other current liabilities その他の流動負債 404 584 321
Accounts receivable 売掛金 (91) (71) (336)
Other current assets その他の流動資産 (60) 25 (165)
Net cash from operations 営業活動からの純現金 1,990 3,719 4,689
Cash flows used for financing: 財務活動のキャッシュフロー:
Common stock issued 普通株式発行 332 504 744
Common stock repurchased 普通株式買戻し(金庫株=自己株式) (698) (1,385) (3,101)
Put warrant proceeds プットワラント代金(筆者注1 49 124 95
Preferred stock issued 優先株発行 -- -- 980
Preferred stock dividends 優先株の配当 -- -- (15)
Stock option income tax benefits ストックオプションの税効果 179 352 796
Net cash used for financing 財務活動で使用した純現金 (138) (405) (501)
Cash flows used for investments 投資活動で使用したキャシュフロー:
Additions to property, plant,
and equipment
有形固定資産の取得 (495) (494) (499)
Equity investments and other 持分投資及びその他 (230) (625) (1,669)
Short-term investments 短期投資 (651) (1,551) (921)
Net cash used for investments 投資活動で使用した純現金 (1,376) (2,670) (3,089)
Net change in cash and equivalents 現金及び現金同等物の純変動額 476 644 1,099
Effect of exchange rates on cash and equivalents 9 (5) 6
Cash and equivalents, beginning of year 期首現金及び現金同等物 1,477 1,962 2,601
Cash and equivalents, end of year 期末現金及び現金同等物 1,962 2,601 3,706
Short-term investments 期末短期投資 2,788 4,339 5,260
Cash and short-term investments
現金及び短期投資 $4,750 $6,940 $ 8,966
See accompanying notes. 添付の注記参照。

上記のキャッシュフロー計算書には、ストック・オプションに関連する項目は、普通株式発行及び普通株式買戻し(自己株式購入)である。普通株式買戻しは、毎期ストック・オプション及び従業員株式購入プラン(Employee Stock Purchase Plan)のために自社株を購入した代価を示している。普通株式の発行は、ストック・オプションおよび従業員株式購入プランの行使により発行した普通株式の発行にかかる払込み額を示している。

貸借対照表 株主持分抜粋

単位:百万
June 30 6月30日現在

1996 1997
Put warrants プットワラント(筆者注1 635 --
Commitments and contingencies: 契約と偶発事象:
Stockholders' equity: 株主持分:
Convertible preferred stock--shares authorized 0 and 100;
shares issued and outstanding 0 and 13
転換優先株 -- 980
Common stock and paid-in capital--shares authorized 4,000;
shares issued and outstanding 1,194 and 1,204
普通株 2,924 4,509
Retained earnings 利益剰余金 3,984 5,288
Total stockholders' equity
株主持分計 6,908 10,777
Total liabilities and stockholders' equity 負債及び株主持分計 $10,093 $14,387
See accompanying notes.添付の注記参照。
上記貸借対照表に示された株主持分のそれぞれの金額は、金庫株(自己株式)控除後の金額となります。下記の株主持分計算書を参照してください。米国会計基準はこの通りですが、国際会計基準も同様の会計処理となります。
筆者注1 プット・ワラントについて
プット・ワラントとは、あらかじめ決めた価格で株式を会社に売れる権利をいう。その権利を機関投資家等にを売却し売却代金を収入することができる(キャッシュフロー計算書に売却代金が表示されているので参照してください)。

プット・ワラント取得者は、株価が下落した場合は、プット・ワラントの権利を行使して決められた価格(市場価格より高い価格)で会社に売却すればキャピタル・ゲインが得られる。一方、株価が上昇すれば、市場で売却すればキャピタル・ゲインとなるので、無価値となってしまう。取得者にとってのプットワラントは金融商品(デリバティブ)に該当する。

企業にとっては、プット・ワラントの発行代金は将来株価が上昇したときには得で、株価が下落した場合は市場価格より高く自社株を購入しなけらばならなくなる。
マイクロソフト社は1996年までは負債の部に売却代金が計上されていたが、1997年から資本取引として資本準備金の増加として処理している(1996年に資本準備金の増加としているのは権利行使部分のみ)。

2000年春のIT関連株のバブル崩壊で、マイクロソフト社の株式も120ドルから40ドル台に下落した。プット・ワラントの行使価格が70ドルから78ドルとされていることから権利行使が増加する可能性があることから、2000年第2四半期(10月―12月)に約5億ドルでプット・ワラントの一部を買戻している。それでも2000年12月末で約1億1千万株のプット・ワラントが残っているが、第4四半期(4月-6月)に残りのプット・ワラントを買戻したとされている。2001年6月の年次報告書にどのような報告になるのか興味深いものがある。

なお、日本経済新聞社の記事では、プット・ワラントを原文を変えてプット・オプションとして掲載している。

Stockholders' Equity Statements 株主持分計算書

(In millions)単位:百万

Year Ended June 30 6月30日終了年度 1995 1996 1997
Convertible preferred stock 転換優先株
Convertible preferred stock issued 転換優先株の発行 -- -- $ 980
Balance, end of year 期末残高 -- -- 980
Common stock and paid-in capital 普通株式及び資本準備金
Balance,beginning of year 期首残高 $1,500 $2,005 $2,924
Common stock issued 普通株式発行 332 504 744
Common stock repurchased 普通株式買戻し(金庫株=自己株式) (30) (41) (91)
Proceeds from sale of put warrants プットワラントの発行代金(筆者注1 49 124 95
Reclassification of put warrant obligation プットワラント債務の組替え(筆者注1 (25) (20) 45
Stock option income tax benefits ストック・オプションの税効果 179 352 792
Balance, end of year 期末残高 2,005 2,924 4,509
Retained earnings 利益剰余金
Balance, beginning of year 期首残高 2,950 3,328 3,984
Net income 純利益 1,453 2,195 3,454
Preferred stock dividends 優先株の配当 -- -- (15)
Common stock repurchased 普通株式買戻し(金庫株=自己株式) (668) (1,344) (3,010)
Reclassification of put warrant obligation プットワラントの組替え(筆者注1 (380) (210) 590
Net unrealized investment gains and other 投資の未実現利益純額 (27) 15 285
Balance, end of year 期末残高 3,328 3,984 5,288
Total stockholders' equity 株主持分合計 $5,333 $6,908 $10,777
See accompanying notes.添付の注記参照。

財務諸表の注記「普通株」について

下記のように「普通株Common Stock」に株式の期中増減を開示している。

Common Stock 普通株
発行済み普通株式の数は次の通りであった。

Year Ended June 30 6月30日終了年度 (単位:百万株)

1995 1996 1997
Balance, beginning of year 期首残高 1,162 1,176 1,194
Issued 発行 38 44 47
Repurchased 買戻し=金庫株 (24) (26) (37)
Balance, end of year 期末残高 1,176 1,194 1,204


有価証券報告書(Form10-k)に記載の非会計情報として、期中の株価は次の通りとなっている。
Quarter Ended 四半期終了時

Sept. 30
四半期
Dec. 31
四半期
Mar. 31
四半期
June 30
四半期
Year
年度
1995
Common stock price per share
普通株の株価:
High 最高 29.63 32.56 37.06 46.19 46.19
Low 最低 23.44 26.94 29.13 34.38 23.44
1996
Common stock price per share:
High 54.63 51.69 53.53 62.94 62.94
Low 42.50 40.19 39.94 49.81 39.94
1997
Common stock price per share:
High 69.31 86.13 103.50 134.94 134.94
Low 53.75 65.44 80.75 89.75 53.75


金庫株(自己株式)取得の会計処理について

まず、ストックオプション行使ができるよう自社株式を市場から買戻す(金庫株=自己株式)会計処理は、上記キャッシュフロー計算書と、株主持分計算書を見ると歴然としている。

1997年を例に見ると、キャッシュフロー計算書から3,101百万ドルの普通株買戻し代金を支払ったことが分かる。また、株主持分計算書からは、普通株および資本準備金に91百万ドルが普通株買戻しとして減少され、利益剰余金では3,010百万ドルが普通株買戻しとして減少されている。
つまり、金庫株(自己株式)の取得では次の仕訳が行われていることが分かる。

借方 金額 貸方 金額
普通株および資本準備金 91百万ドル 現預金 3,101百万ドル
利益剰余金 3,010百万ドル


買戻し株式数が37百万株と注記されているので一株あたり平均取得価格は@83.81ドルと分かる。普通株および資本準備金の91百万ドルはどうして算出されたのだろうか。37百万株で割ると一株あたり@2.45ドルである。これは、期首の株式数が1,194百万株で普通株及び資本準備金の残高が2,924百万ドルであるから一株あたり平均単価は@2.45ドルである。つまり、期首の一株あたり普通株および資本準備金の価格を借方記入し、これを超える部分を利益剰余金を借方記入したことなる。利益剰余金の借方記入は、株価が上昇し買戻し額が期首の一株あたり払い込み額を超えていることにある。上記の3期間の株価が右肩上がりの時価を示している。

この仕訳から分かることは、自己株式を資本の払い戻しとして会計処理し、自己株式からは有価証券としての評価損益や売却損益は発生しないということである。
国際会計基準解釈指針(SIC)16号「自社株式(金庫株)の買戻し(Share Capital-Reaquired Own Equity Instruments(Treasury Shares)」に規定があり、金庫株=自社株式の買戻しは株主持分からの控除として会計処理し、金庫株=自己株式の譲渡、発行又は解約から損益を損益計算書に認識してはならない、としているが上記米国の会計処理と一致している。

日本の商法は株式の消却を除いて自己株式の取得は資産として計上し譲渡等で損益を認識している。証券取引法の連結財務諸表になると自己株式は資本の控除項目としており、商法及び証券取引法とで会計処理が整合していない。

ストック・オプションの行使の会計処理について
つぎに、ストック・オプションの行使(行使価額で払込があり株式を発行する)に係る会計処理である。まず、キャッシュフロー計算書で普通株式の発行で774百万ドルの払込み額があったことが分かる。株主持分計算書では普通株の発行により同額増加したようになっており、払い込み額全額が普通株および資本準備金に処理されていることが分かる。

借方 金額 貸方 金額
現預金 774百万ドル 普通株及び資本準備金 774百万ドル

因みに、一株あたり払い込み額は、発行株数47百万株で割ると@16.47ドルである。これは、ストック・オプションの行使によるもので、上記の四半期毎の最高と最低の株価と比較するといかに含み益を持っているか分かる。

その他ストック・オプションに係る資本準備金の増減について
さらに、普通株及び資本準備金の増加に、ストック・オプションの税効果が792百万ドル(1ドル120円換算で約950億円)計上されているが、これは、従業員などが税法の非適格オプションで株式を譲渡した事により普通所得となった額が法人所得税で控除(Deduction)できることからその税効果を計上したものである。

借方 金額 貸方 金額
法人所得税−税効果 792百万ドル 普通株及び資本準備金 792百万ドル

税法上の適格オプションの譲渡であれば、個人はキャピタルゲイン課税で低率の税率で納税する。その場合は、税法上は法人所得から控除する額はない。

プットワラントは、新株式引受権をストックオプションおよび従業員株式購入プランのために発行した旨注記が在る。分離型の新株引受権付社債の新株引受権は、米国会計基準では資本準備金に計上する旨の規定があるが、マイクロソフト社は負債の部に別掲して注記で内容の開示を行っている。株主持分計算書に出てくる組替えは、プットワラントの負債と資本および利益剰余金との間で組み替えているものである。

財務諸表注記「ストックオプション」について


ストックオプションに関連する注記は次の通りとなっている。

Put Warrantsプットワラント
会社の株式を買戻すことを促進するため、会社はプットワラントを第三者に売却した。これらのプットワラントは、所有者にマイクロソフト社の普通株を特定の価格で特定の日にマイクロソフト社に売却する権利を与えている。1996年および1997年の6月30日現在、13百万ワラントおよび3百万ワラントが発行済みであった。1997年6月30日現在の発行済みワラントは、1997年9月に期日到来し、一株あたり105ドルの買戻し価格である。1996年6月30日現在、マイクロソフト社の選択で、発行済みワラントを現金で清算できる買戻し債務の最高限度額である635百万ドルを株主持分からプットワラントへ組み替えた。1997年6月30日の発行済みプットワラントは、マイクロソフト社の選択で純株式清算(net-share settlement)でき貸借対照表でプットワラントを負債に計上しなかった。


Employee Stock and Savings Plans 従業員株式および貯蓄プラン

Employee stock purchase plan. 従業員株式購入プラン
会社は、従業員株式購入プランを全ての適格な従業員に与えている。このプランは、会社の普通株式を、6ヶ月毎の初めの日又は終わりの日の公正市場価格のいずれか低い価格の85%で、6ヶ月毎に購入することができる。従業員は、公募期間の総報酬額の10%を超えない価値をもった株式を購入できる。1995年、1996年、1997年に、従業員は、2.1百万、1.8百万、および1.4百万株を、それぞれ、一株あたり平均23.38ドル、37.72ドル、および59.64ドルで購入した。1997年6月30日現在、19.4百万株が将来の発行のために保管されている。

Savings plan. 貯蓄プラン
会社は、内国歳入規則401(k)条に適合する貯蓄プランを持っている。参加従業員は税引き前給与の15%まで繰り延べることができる。会社は、参加者の1ドル当たりの積立に対し、参加者の所得の3%を給付限度として、50セント給付する。 給付額は、1995年、1996年および1997年に、それぞれ、12百万ドル、15百万ドルおよび28百万ドルであった。

Stock option plans. ストック・オプション・プラン
会社は、取締役、オフィサー(業務執行役員)および全ての従業員を対象にストック・オプション・プランを持っており、それは、非適格ストック・オプションと奨励型ストック・オプションを含んでいる。
オプション行使価格は、オプション付与時の公正市場価値である。1995年以前に付与したオプションは、一般的に4年半以上の行使の権利があり、オプションを付与した日から10年で満期となる。1995年以降付与されたオプションは、一般に、オプション付与の日から7年で満期となり、4年半以上の権利行使ができる。1997年6月30日現在、113百万株のオプション権利行使でき、290百万株が将来に付与ができる。

未行使ストック・オプションの状況は次の通り:

Price per Share 一株あたり価格

Shares
株数
(百万株)
Range価格幅 Weighted
Average
加重平均
Balance, June 30, 1994 残高 228 $ 0.16 - $ 25.07 $11.65
Granted 付与 44 23.88 - 41.57 25.25
Exercised 行使 (35) 0.16 - 23.88 7.91
Canceled キャンセル (9) 2.56 - 37.50 17.70
Balance, June 30, 1995 残高 228 0.77 - 41.57 14.56
Granted 57 40.10 - 58.94 44.99
Exercised (40) 0.77 - 45.25 10.75
Canceled (7) 2.59 - 55.44 27.85
Balance, June 30, 1996 238 1.10 - 58.94 22.07
Granted 55 55.31 - 119.19 58.29
Exercised (45) 1.10 - 58.94 13.27
Canceled (9) 17.00 - 97.13 38.83
Balance, June 30, 1997 239 2.24 - 119.19 31.43



1997年6月30日現在の未行使ストック・オプションの種々の価格幅、加重平均は次の通り。

Outstanding
未行使
options
オプション
Exercisable
行使可能
options
オプション
Range of
exercise prices
行使価格の幅
Shares
株数
Remaining
life
(years)
残期間
Weighted
average
price
加重平均
価格
Shares
株数
Weighted
average
price
加重平均
価格
$2.24-$17.00
65
3.5
$ 9.64
64 $ 9.63
17.01-24.00 65 5.4 20.81 39 20.10
24.01-55.00 56 5.8 43.13 10 41.02
55.01-119.19 53 6.6 58.47 -- --


会社は、ストックオプションおよび従業員株式購入プランについて、APB意見書25号、従業員に対する株式発行の会計、に準拠している。オプション行使価格がオプション付与の日の市場価格と同一であるため、報酬コストは認識していない。もし、報酬コストをオプションを付与した日でブラック-ショルズ価値を基礎に計算し、SFAS声明書123号、株式による報酬の会計、に記述の報酬を反映したプロフォーマ(見積)の純利益と一株あたり利益は次の通り。

Year Ended June 30; 1995 1996 1997
Pro forma net income プロフォーマ 純利益 $1,243 $1,902 $3,053
Pro forma earnings per share プロフォーマ一株あたり利益 $ 0.99 $ 1.48 $ 2.32


上記に開示したプロフォーマは、1995年、1996年および1997年に権利が生じた全てのオプションの公正価値の償却を含んでいる。仮に、1996年と1997年だけオプションを付与したなら(SFAS123に記載の通り)、1996年及び1997年はそれぞれ、プロフォ―マ純利益は2073百万ドルと3179百万ドルであり、プロフォーマ一株あたり利益は1.62ドルおよび2.42ドルである。

1995年、1996年および1997年の付与されたオプションの加重平均ブラック-ショールズ価値は、それぞれ、@10.46ドル、@17.72ドル、および@23.43ドルである。その価値は5年間の期待期間を使用し、無配当、.30のボラテイリテイ、1995年、1996年及び1997年のそれぞれについて、リスク・フリーの利率7.0%、6.0%および6.5%を使用した。

財務会計基準書(SFAS)第123号「株式での報酬に関する会計,Accounting for Stock-Based Compensation」のプロフォーマ(見積)の開示について

マイクロソフト社は、上記に開示されているように、会計基準委員会意見書(APB Opinion)第25号「従業員に発行する株式の会計、Accounting for Stock Issued to Employee」に準拠して会計処理しており、オプションを付与した時の株価とオプション行使価格と同額であるので、報酬コスト(Compensation cost)を計上していない。しかしながら、SFAS第123号で開示を求められている報酬額を計上した時のプロフォーマ(見積)による純利益と一株あたり利益を前記の通り開示している。それによると、プロフォーマの純利益は1995年から1997年度まで85%から88%に減少する。プロフォーマ計算の基礎は、ノーベル経済学賞を受賞したショールズ教授など(1973年フィッシャー・ブラック教授とマイロン・ショールズ教授がブラック・ショールズモデルを公表した)の基本モデル(Black-Scholes value、Option Pricing Theory)を使ってオプションに含まれる報酬コストを計算している。ブラック-ショールズ理論と公式については、インターネト上で検索ソフトであるエキサイトで「Black-Scholes」と検索すると、ブラック-ショールズ教授の理論と公式を説明しているサイトが用意されている。

改正商法の自己株式(金庫株)の規制撤廃に関する会計処理の課題

自己株式の規制撤廃に関する計算書類規則第34条第4項の問題点

自己株式の会計処理について
従来、自己株式の取得は規制されていたが、2001年6月22日、参議院本会議で自己株式(金庫株)の取得規制が撤廃された商法案を可決成立した。

自己株式の取得 (改正商法第210条)を改正し、自己株式の取得の範囲を「会社は、定時総会の決議をもって、配当可能利益及び法定準備金の範囲内で、次の定時総会の終結の時までに取得できる自己株式の種類、総数及び取得価額の総額を定め、これに基づいて自己株式を取得することができる。
[注] 法定準備金については、株式総会の決議及び債権者保護手続きを経て、その減少手続きをした上でなければ、これをもっ て自己株式を取得することはできない。

これにより、企業は自己株式を多量に取得することが可能となった。 改正計算書類規則では自己株式の資産計上の規定を削除し、新たに第34条4項で「自己株式は、資本の部に別に自己株式の部を設けて控除する形式で記載しなければならない」と規定した。新たな規定を検討してみる。

(1)自社株の購入の場合:
自己株式を取得する典型的なものは役員・従業員等にストック・オプションを付与するために市場から購入しておく場合や企業買収に自社株を市場から購入しておく場合がある。

(2)自社株を交付する場合:
役員・従業員がストック・オプションを行使する場合、@所有する自社株式を交付する場合と、A新株を発行する場合とがある。また、企業買収する場合も同様に、@所有する自社株式を交付する場合と、A新株を発行する場合がある。つまり、@自社株式を交付する場合と、A新株を発行する場合のいずれも経済効果は同じで、双方とも相違しない会計処理が求められる。換言すれば、資本金及び資本準備金がいずれも同じ結果となる必要がある。

(3)米国の会計処理(上記参照):
このことから、米国では、自己株式の取得は資本等の払戻しとして、(イ)資本金、(ロ)資本準備金、(ハ)利益剰余金のそれぞれの項目について控除する。ストック・オプションの権利行使による払込は資本等の増加として、自己株式から交付または新株式の交付いずれであっても、(イ)資本金、(ロ)資本準備金の増加として処理する。企業買収にともなう株式交付が自己株式または新株発行のいずれであっても、同様に、(イ)資本金、(ロ)資本準備金のそれぞれの項目を増加させる。これにより、自己株式の交付からは、当然、自己株式の譲渡損益は生じない会計処理となる。

(4)改正法の問題点:
改正法の第34条4項で「自己株式は、資本の部に別に自己株式の部を設けて控除する形式で記載しなければならない」としているが、従来、(a)自己株式が制限されていたこと、(b)ストック・オプションなどの適用企業がまだ初期段階にあり少ないことから自己株式の金額が僅少であり別途「自己株式」の項目を設けて控除する形式(証券取引法)で弊害は無かったが、(A)自己株式規制が撤廃されたこと、および (B)ストック・オプションや新株予約権が認められることになると自己株式の会計処理問題は重要性を帯びることになる。米国方式でしか処理できなくなると思われる。
改正法で処理すると、@ 新株発行は資本金・資本準備金の増加となり、A 自己株式の交付は「自己株式」の項目の減少となって、同じ経済効果でも資本金・資本準備金が異なる結果となる。また、自己株式の交付から譲渡損益が認識されてしまう恐れがある。
(2001年8月25日筆)


企業会計審議会等の自己株式の処理の検討の模様
2001年6月22日に自己株式取得規制の商法改正法案が参議院本会議で通過した後、7月27日、企業会計審議会で法務省の民事法制管理官を交えて「自己株式等」の検討が行われた。議事を見ると自己株式を資本の部から控除するという方向で意見が形成されている。(詳細は、企業会計審議会第5回企画調整部会を参照)

この議論の後、7月30日、法務省民事局参事官室は「平成13年6月商法改正に伴う商法計算書類規則」の改正に関する意見募集」として計算書類規則改正案を公表している(意見募集期間は7月30日から8月29日)。上記、計算書類規則第34条4項の規定は企業会計審議会の意見を反映したものであることがよく判る。

9月7日開催の企業会計審議会第6回企画調整部会議事録」によれば、10月1日から自己株式の取得解禁されるが「会計基準が整備されていない」ので当分商法の規定とおりとなる。企業会計基準委員会(代表斎藤教授)が自己株式の会計基準を検討するようである。
なお、自己株式の譲渡は2002年4月1日からとなっているため、譲渡の会計処理は棚上げとなっている。上記マイクロソフト社のケースのように取得と譲渡は密接に関係しており、取得のみの会計処理を単独で決めるのは短絡過ぎる。

9月中旬(日付なしの文書)、法務省は自己株式の表示を含む改正「計算書類規則」を公表した。7月30日に公表した意見募集の内容に変更なく第34条4項で「自己株式は、資本の部に別に自己株式の部を設けて控除する形式で記載しなければならない」と規定した。2001年10月1日より施行としている。併せて「大会社の株主召集通知」の改正も行われています。

10月12日企業会計基準委員会の自己株式等専門委員会は「自己株式の会計処理について」及び「法定準備金の取り崩しの会計処理」を検討するとし、自己株式の会計処理については、資本取引であり処分損益は損益計算書に認識しないことを基本合意したようだ。(「自己株式等専門委員会」参照)

企業会計基準委員会が会計基準書等を公表(02年2月)
2001年12月25日企業会計基準委員会は、「自己株式の会計処理及び法定準備金の取り崩し」に関する会計基準の第一号公開草案をインターネット上に公表した。コメント期限は、2002年1月18日とあります。会計基準の第一号となります。

2002年2月21日、企業会計基準委員会は、「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準等の公表」として、32ページにわたる会計基準1号、適用指針2号及び3号を公表した。コメント収集は形式的で、企業会計審議会時代と寸分変わらず、上記草案どおり公表されている。企業会計基準委員会の考え方は、商法に基礎を置き簿記の域を出なかったため複雑なものとなっている。複雑なため、財務諸表利用者も理解するのに大変であろう。詳細をご覧ください。平成14年4月1日以後開始する事業年度から適用としている。

なお、国際会計基準解釈指針SIC-16号「自己株式の表示」では、自己株式の取得は株主持分(Equity)から控除(deduction)し、自己株式の売出し(sale)または発行(issuance)は株主持分の変動(a change in equity)として表示する、とあり、資本の部に控除項目として表示するとは規定していない。国際会計基準は上記マイクロソフト社に見るように直接、資本金、資本準備金、利益剰余金等の株主持分項目から控除する。

金融庁 連結財務諸表規則等改正を公表(02年3月)
2002年3月6日金融庁は、「平成14年4月1日から自己株式の処分が可能になり、(財)財務会計基準機構・企業会計基準委員会により自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準が整備されたことに伴い、それに対応し、資本の部の表示方法を会計基準に整合させること等を主な内容とする財務諸表等規則、連結財務諸表規則、中間財務諸表等規則及び中間連結財務諸表規則の改正を行うもの。」として規則を改正した。会計基準と規則と重複して規定を設ける意味があるのだろうか。ちなみに、米国SECでは会計基準は財務会計審議会(FASB)に依拠しており、屋上屋を重ねるような規則を作成するようなことはない。
財務諸表規則pdf 中間財務諸表規則pdf
連結財務諸表規則pdf 中間連結財務諸表規則pdf
珍しく「パブリックコメント」によって若干の修正があります。
なお、連結財務諸表規則第87条から90条において(中間連結財務諸表規則第81条で準用している)、SEC基準の連結財務諸表を作成している企業については、@SEC基準による連結財務諸表も認める、A日本語訳とする、BSEC基準との主要な相違点を注記するとした。


上記に見るように、会計基準の成立過程は、法務省の商法改正⇒企業会計基準委員会の会計基準⇒金融庁(証券取引法主管)の財務諸表規則等の改正というように日本の会計基準の設定は、商法及び証券取引法に強い影響を受けて成立している。
日本の会計制度の本家であるドイツでは、ドイツ会計基準委員会(DRSC)の設置により大改革が行われ、会計については商法の改正を提言する形をとっているが日本は旧態依然としている。いつになったら日本の会計がグローバルになるのか道は険しい。

商法、「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」という区分に改正
2002年2月15日、法務省は会計基準へ調和させるため、資本の区分を、従来の資本金、法定準備金及び剰余金という区分から、「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」という区分にすることとし、また、これに伴って、資本の欠損の状況が判然としなくなることから、資本の欠損が生じている場合には、その額を注記しなければならないとした。
新設された、新株予約権については、資本の部の注記事項とすることとした。
平成13年商法改正等に伴う「商法施行規則」の制定に関する意見募集』参照

新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理・・実務対応報告1号(02年3月)
平成13年11月28日に可決成立した改正商法で、新株予約権及び新株予約権付社債の用語が採用された。従来の新株引受権に替わるものである。これを受けて、企業会計基準委員会は、平成14年3月29日「新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」を実務対応報告第1号として公表した。平成14年4月1日から施行としている。
従来の、新株引受権の会計処理と基本的には変更がない。

例えば、新株引受権付社債の発行者は、金融商品会計基準第六・一を勘案して「新株予約権の発行価額は負債の部に計上し、権利が行使されずに権利行使期限が到来したときは利益として処理する」という結論である。また、なお、ストックオプション(新株予約権)の行使で、@自己株式を発行した場合、A新株を発行した場合、それぞれ、@自己株式を減額する、A増資増加として会計処理する、としている。企業会計基準委員会の結論は、株式を受ける株主及び株式を交付する会社にとって、自己株式発行または新株発行もいずれであっても経済的効果は同じでも会計処理が異なっているので注意が肝要である。

ストックオプション(新株予約権)の付与に関しての人件費計上については無償で付与しているので費用の認識はしない、としている。

法人税法上の自己株式取得に関する「みなし配当」の取扱
自己株式取得解禁に伴って、法人税法第24条第1項五号に「自己の株式の取得」が加わりました。

つまり、法人税法第24条第1項第五号は次のようになりました。
五 自己の株式の取得(証券取引所の開設する市場のおける購入による取得その他の政令で定める取得を除く。
政令とは「法人税法施行令第23条第2項で、外国の法令に基づき設立された証券取引所及び店頭売買登録銘柄を含むとされています。
上記法人税法第24条により、証券取引所の開設する市場から購入した自己株式は「みなし配当」の適用はありませんが、上場会社の「相対取引」による自己株式の取得及び「非上場企業」の自己株式の取得は、上記条文では除外されていませんので「みなし配当」の規定が適用され源泉徴収が必要となりますので注意を要するところです。自己株式を取得する際には、事前に専門家に相談することをお勧めします。

なお、自己株式の譲渡損益については、「平成14年税制改正の要綱」(平成14年1月17日閣議決定)で、自己株式の処分によって生ずる譲渡損益は資本積立金の増加・減少とするとして課税の対象から除外することが閣議決定されています。

「インターネットにより米国の会計実務を学ぶ」へ

「わが国のストックオプション制度の問題点」へ


このホームページのトップへ戻る

ホームページヘ戻る

「会計・税金・財務情報(ディスクロージャー)」へ
会計基準・財務情報開示の総合情報サイト

他のページへ
「年金資金からのコーポレート・ガバナンス」
「内部監査のアウトソーシング」 「監査役」 「取締役」
「コーポレートガバナンス」 「ストックオプションの米国実務」 「日本でのストックオプション導入」
株式を活用した経営戦略の色々・・株式交換、会社分割、トラッキング・ストック他

横山会計事務所
公認会計士 横山明
Tel 047-346-5214 Fax 047-346-9636
E-mail: yokoyama-a@hi-ho.ne.jp

このページのトップへ戻る     ホームページヘ戻る


●「会計・税金・財務情報(ディスクロージャー)」へ
会計基準・財務情報開示の総合情報サイト