内部監査のアウトソーシング

企業不祥事の防止および株主代表訴訟の原因を作らない
日本で内部監査を機能させる為にはアウトソーシングがふさわしい

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監査役 取締役
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はじめに

1997年11月24日、山一証券社長が号泣しながら自主廃業に関する記者会見は、世界に報道され見る者に驚きを与えた。巨額な「飛ばし取引」で自主廃業に追い込まれたのである。日本の歴史に永く記憶に残されることだろう。 1998年4月16日、山一の社内調査委員会は、経営陣が、2600億円の含み損を「飛ばし」という手法で、含み損の処理を先延ばしにし、傷を大きくしたことが致命傷になったことを公表した。 社内の調査報告を待つまでもなく、株主から損害賠償の訴訟が起きており山一の役員の責任はいずれ明らかになろう。

ヤクルトでは、一役員に資金運用を任せきりにしたため、1000億円を超えるデリバテイブで損失を計上するはめに陥った。幸い、巨額な内部留保があり(自己資本比率約75%)、損失を計上したとしても1000億円の自己資本が残っているが、ヤクルトにしては大打撃であった。


伝説のデイーラー堀内昭利氏は自著「市場の神々」の中で、『タテホ科学での286億円、鹿島石油の1525億円、新日鉄化学の139億円、昭和シェル石油の1653億円、大和銀行ニューヨークの債券での1100億円、住友商事の2800億円、富士銀行ニューヨークの115億円、東京証券の320億円、兼松の原油90億円、日本酸素の金利120億円、伊勢丹オランダのスワップ76億円。この連中少し頭が悪いのか、神経が並外れているのか、精神異常なのか、それらのすべてなのだろう。やった本人もさることながら、これだけの金額になっても気がつかないなどというのは、もはや経理部も監査役も必要がないということであり、そのへんの若いパートの女の子にコンピュータをいじらせておけばよいのではないか。しかも、そろいもそろって、幹部陣は知らなかったと平気でのたまう。住友商事の金額など、もうお笑いの世界の数字なのではないか。こんなこと書いている間にまたどこかで事件が起きていると思う。何度こんなことが起きても自分のところは大丈夫だと言ってやり方を再点検などしないだろうから』(堀内昭利著「市場の神々」ゼニックス) ちなみに、住友商事の外部監査役は検察OBであった。

残念ながら、ここまで辛辣に批判されても、十分反論できない状況に、日本企業はある。
はからずも、その後に次から次ぎに出てくる事件は、堀内氏の予言するとおりである

織坂濠氏は、自著「時価革命」の中で、『なぜだか知らないが、金融業者が財務部や経理部を頻繁に訪れているようであれば一度徹底的に金融取引の内容を洗って見られることをお勧めする。もし、あなたが金融に明るくないのであれば、専門家を雇えばいい。きっとビックリするような取引がでてくるはず。知らないうちにリスクを抱えているというのは、リスク管理のなかでも最低の部類に入る。しかし、日本企業ではそういう例に事欠かない。「うちにはそんな取引は絶対に無い」と胸を張っていえる社長などおるまい。日本の経営者はあまりに財務を軽視している。』(織坂濠著「時価革命」徳間書店)
上記の織坂氏の「時価革命」後、ヤクルトの資金運用による巨額な損失事件は報道されており、日本企業のリスク管理のないこと、および内部統制制度が機能していない状況が再認識されることとなった。

監査役
現行商法では、監査役という取締役を監視するコーポレートガバナンスの制度があります。監査役には、弁護士や会計士を雇ってチェックすることができるよう、監査費用を会社が不要であると証明できない限り、会社が負担しなければならない(商法第279条の2)という規定があり、法律が監査役の仕事遂行を明文を持って支援しているのです(「監査役」参照)。
監査役を機能させるかどうかは監査役自身にかかっています。


過去の主な企業不祥事とその後の推移(2002年8月現在)
発覚年月 企業名 事件の内容 経営への影響など
1987.4 東芝機械 旧ココム規制に違反して旧ソ連に工作機械を不正輸出 88年3月期決算で11年ぶりの経常赤字に転落
1989.5 ミドリ十字 非加熱血液製剤にエイズウイルス(HIV)が混入 98年4月に旧吉富製薬が吸収合併
1996.6 住友商事 元部長による銅の不正取引で巨額の損失 97年3月期決算で上場以来初の
税引き後赤字に転落
1997.11 山一証券 違法な会計処理による巨額の簿外債務が発覚 経営が破たんし、99年6月に自己破産を申請
2000.6 雪印乳業 大阪工場で製造した低脂肪乳で大規模な食中毒が発生 2001年3月期決算で経常赤字に転落。
グループ解体の危機に 今日の株価参照
2000.7 三菱自工 ユーザーからのクレーム処理を当局に報告せず隠ぺい 販売不振で2001年3月期決算で過去最大の
税引き後赤字に
2002.2 雪印食品 牛肉偽装事件 02年4月末に会社解散を決定を公表。
2002.8 日本ハム 牛肉偽装事件 偽装発覚直前の株価1,453円(6日)、株価急落
5日間で半値  
今日の株価参照
日経ネット・・・食肉偽装問題 BSE特集 参照
2004.6 三菱自動車 山口県で02年10月、三菱自動車
(三菱ふそうトラック・バスに03年分社)
製大型車のクラッチ系部品の欠陥で
運転手が死亡した事故で、神奈川、
山口両県警の合同捜査本部は10日、
業務上過失致死容疑で、
三菱自動車元社長の河添克彦容疑者
(67)ら元役員6人を逮捕した。
00年のリコール隠し事件、今年5月の
ハブ破断によるタイヤ脱落事件に続き、
安全を軽視し続けた同社首脳の責任が
三度問われる。
歴史に残る大事件である。
Yahoo!ニュース・・「三菱自動車」 参照

元社長等逮捕の日の株価は200円、
今日の株価 参照

ダイムラークライスラーが支援していたら
どうなっていただろうか?
04年5月現在、37.3%をダイムラーが保有。

産業構造審議会の企業法制分科会報告書

会社法制整備について(00年12月8日)

2000年12月8日、産業構造審議会総合部会新成長政策小委員会は、「企業法制分科会報告書」をまとめ会社法制の整備について報告した。
78ページに及ぶ長文の報告書で、広範な整備を要請している。なかんずく、「内部統制・内部監査システムの整備状況の開示」の項には、次のようになっている。

企業に対して、より良い内部統制・内部監査システムを整備するための努力を促す観点から、例えば、営業報告書の強制開示項目として、内部統制・内部監査システムの整備状況を追加する。

「現行の法制度及び解釈の下では、取締役会及び代表取締役が、内部統制・内部監査システムを整備する責任を負っている。今後、適法性モニタリングの点で、業務執行を監督すべき取締役や監査役の情報収集手段を確保するためには、情報源としての内部統制・内部監査システムを整備することが不可欠であるから、内部統制・内部監査システムを充実させることは極めて重要である。今後,異なる会社間での取組内容の比較可能性を確保しつつ、企業に対して、より良い内部統制・内部監査システムを整備するための努力を促す観点から、例えば、営業報告書の強制開示項目として、内部統制・内部監査システムの整備状況の情報開示を追加すべきである。」

2002年の商法改正に反映されると予想される。詳細は、経済産業省(旧通商産業省)白書・報告書に掲載されています。

何故不祥事が多発するのであろうか


織坂濠氏の著書「時価革命」(徳間書店)の中で、『会社の為に尽くすサラリーマンを前提として組み立てられた日本流「性善説」マネジメントが、日本企業に発生した新しい現実に対処できなくなりつつある。「何もしなくとも、サラリーマンは会社の為に最善を尽くすはずだ」という思い込みの上に成りたってきた日本流性善説マネジメントは、これまで管理というものを実質的に不要にしてきた。中間管理職のボトムアップによる御神輿経営が持て囃された。結果としての低い管理コストが、日本企業の強みになってきたといえる。性善説を前提にしているからチェック機能が働かないのである。』と分析している。

氏が言う「性善説」は、日本的経営といわれている終身雇用制、年功序列の昇進制度と密接に関連しているものと思われる。欧米のように企業間で人の流動が頻繁に行われていれば、社内にチェック・システムを機能させることは比較的容易であるが、日本のように終身雇用制度や年功序列型経営であっては、同僚をチェックして気まずい思いをしたくないという心情は止むを得ないのかもしれない。

終身雇用や年功序列制度の中では、お互いをチェックする内部統制の仕組みはなかなか機能することはできない。我が商法の監査役の制度がなかなか機能しないのも根幹はそこにあるものと思われる。無論、社長が人事権を握って強力な権限を持っていることも一因であろう。

日本企業は、社長ないし会長を頂点としたピラミッド構造をもっており、だれも上司に対して提言できる仕組みになっていない。したがって、一度歯車が狂い出すと巨額な損失を出さない限り先送りをして、経済状況が好転し業績、時価、為替などが回復するのをじっと待とうとする。過去においては、それで成功したが、バブル崩壊後はそれが効かなくなっており、公表せざるを得ない状況に追い込まれている。企業をリスクから救う手だては、リスク管理を行い、コーポレート・ガバナンスを充実することであろう。

企業の不祥事の原因は?

1997年5月14日、(財)経済広報センター(会長:豊田章一郎)では、連続して発覚している企業の不祥事について、サラリーマンの見方は厳しく、役職によって差があることが、全国の会員サラリーマンを対象に行ったアンケート調査によって明らかになった。

不祥事が発生する原因として、「問題があっても指摘しがたい企業風土」(53.8%)、「経営者の自覚が乏しい」(53.1%)、「企業倫理、企業行動基準が明確でない」(36.9%)などが上位となった。年代と役職が上がるほど経営者の自覚の乏しさを指摘し、一般社員は企業風土をあげた。

不祥事発生後の対応については、「誠実な対応しているとは思えない」が半数を超え、見方は厳しい。

不祥事再発防止策として、「問題があれば指摘できる企業風土に改善する」、「社内のチェック体制の整備」、「企業倫理、企業行動基準を具体的に策定する」などの回答が多い。役員、部長クラスは、企業倫理、経営者の自覚を強調している。

企業の不祥事の原因は?

企業風土 53.8%
経営者の自覚不足 53.1%
企業倫理が不明確 36.9%
チェック体制の不備 33.8%
営業活動を優先 33.1%

アンケート調査結果の詳細は、(財)経済広報センターで公表しています。


株主代表訴訟


1993年10月の改正商法施行により、株主代表訴訟の件数が増えている。上場会社に限らず中堅・中小企業にも及んでいる。株主代表訴訟の手数料が一律8200円に下がり、株主が取締役の経営責任を追及することが容易になったことによる。

株主代表訴訟とは、改正商法第267条で規定しており、株主側が勝訴した場合は、被告である経営者は個人で賠償金を負担し、会社に支払わなくてはならない、かつ、株主は訴訟費用を負担してもらえるというものである。

主な株主代表訴訟の例

提訴の時期 被告および、訴えの理由 賠償請求額
92年3月 日興證券前社長ら16人を損失補填で提訴 470億円
92年5月 セメダイン社長ら14人を米国での合弁事業の失敗で提訴 26億円
92年10月 日本航空電子工業社長ら3人をココム違反で提訴 7千万円
93年3月 中京銀行会長ら12人をゴルフ会員権販売会社への不当融資として提訴 6億円
93年8月 蛇の目ミシン工業の元役員ら29人を「光進」事件での債務肩代わりに対し提訴 1520億円
93年10月 野村證券社長、監査役ら58人を外国不動産投資ボンドの不正売買、法人税過少申告で提訴 235億円
94年5月 中村屋(被告不明)をワラント債等の投資で提訴 45億円
94年7月 野村證券取締役14人を特定顧客に対する損失補填で提訴 161億円
94年7月 コスモ証券取締役及び監査役総計33人を「飛ばし」行為で提訴 698億円
94年7月 鹿島建設取締役5人を代議士に対する贈賄・ヤミ献金、使途不明金で提訴 5億円
94年10月 伊予銀行取締役7人を追加融資打ち切りによる融資先会社の倒産に関し提訴 38億円
95年1月 東海銀行取締役を違法な貸し出し金債権の放棄に関し提訴 403億円
95年7月 大日本土木取締役4人をゴルフ場開発関連の回収不能の債務保証に関し提訴 64億円
95年11月 大和銀行取締役及び監査役合計38人をニューヨーク支店での違法な取引に関し提訴 11億ドル
95年5月 東京商業信用組合の理事1人及び死亡した理事の相続人6人を違法融資による貸出金の回収不能に関し提訴 69億円
96年6月 日本航空電子工業のイランへのミサイル部品不正輸出をめぐる訴訟で、東京地裁は約12億円の賠償命令 12億円
98年10月 野村証券の総会屋への利益供与をめぐる訴訟が東京地裁で3億8千万円の支払いで和解 約4億円
00年9月 旧大和銀行ニューヨーク支店の巨額損失をめぐる訴訟で、大阪地裁が7億75百万円の賠償命令 約8億円
01年3月 住友商事の不正銅取引の巨額損失をめぐる訴訟が、大阪地裁で4億3千万円の支払いで和解 約4億円
01年12月 旧大和銀行の訴訟が大阪高裁で2億5千万円の支払いで和解 2.5億円
04年12月 ヤクルトの資金運用の失敗で1千億円を超える損失を出した問題で、役員8人に総額1057億円を会社に
返還するよう求めた株主代表訴訟で、東京地裁は、熊谷直樹元副社長に約67億円の支払いを命じた。
約67億円


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なお、被告は取締役ばかりでなく、監査役、被告が死亡している場合に相続人を被告としているケースもある。

米国と比べ、日本の株主代表訴訟は容易となり、経団連は、濫訴を防止する為と称して、@ 株主の担保提供の強化、および A時効が10年と長いことについて商法の改正を求めている。

上記提訴がすべて敗訴につながるものではないが、少なくとも、社内に内部統制制度や内部監査が機能しておれば未然に防げた事項である。 内部統制制度の一環として、事前に社内で十分に適法性又は適正性のチェックを行っておれば未然に防げた提訴であるか、または敗訴とならないことは確かである。

元役員らに829億円賠償命令(過去最高額)

大和銀行ニューヨーク支店の元行員が1984年から11年間にわたって、支店保有の米国債を簿外取引で最終的に11億ドルの損失を同行に与えた事件が1985年に発覚した。隠蔽するため書類を偽造していたことを手紙で銀行首脳に告白。元行員は略式起訴処分となり、大和銀行も届け出の遅れなどを理由に米国の検察当局に起訴され、司法取引に応じて罰金3億4千万ドルを支払った。

これに対し、東京及び大阪の個人株主2人が、元役員を相手取り会社に損害を与えたとして株主代表訴訟を行った。元役員49人に対し損失した約11億ドルと米国捜査当局に支払った罰金3億4千万ドルを含む総額14奥5千万ドル(1551億円)を会社に賠償するよう求めた株主代表訴訟を行った。

2000年9月20日、大阪地裁の判決があった。判決は株主側の主張を一部認め、当時取締役ニューヨーク支店長に単独で5億3千万ドル(567億円)、当時の取締役ニューヨーク支店長及び頭取を含む現・元役員11人に計約2億4千5百万ドル(約262億円)を支払うよう命じた。賠償額は総額7億7千5百万ドル(約829億円)に上り、株主代表訴訟として過去最高。

裁判長は、当時取締役ニューヨーク支店長にのみ「取締役としての注意義務及び忠実義務に違反した事実が認められる」とし、取締役に一社員の犯罪行為を防ぐ義務があったとの判断を下した。米国での司法取引で有罪を認め罰金を支払ったことについては、当時の取締役11人の任務懈怠責任を認め、それぞれの責任の度合いに応じ、連帯して計2億4千5百万ドルを払うよう命じた。役員に健全経営を迫った判決といえよう。(日本経済新聞00年9月20日) 

今回の判決は大和銀行の現・元役員らの明確な法律違反に対する責任だけでなく、社内のリスク管理を怠ったことを注意義務違反と捉え賠償責任を正面から認めた点に特徴がある。大企業の株主代表訴訟では事実上はじめての判断。

不正取引のあったニューヨーク支店だけでなく、日本の本部も含め「大和銀行のリスク管理体制は機能してなかった」と認定した。巨大な組織である上場企業では日常業務のすべてに取締役が目を光らせるのは困難。しかし判決は、不正行為を防ぐため危機管理のシステムを整備する重い法的責任が取締役にあることを明確に打ち出した(日本経済新聞00年9月21日)。

大和銀行代表訴訟が和解成立(2001年12月11日)
大和銀行の株主代表訴訟の控訴審は2001年12月11日までに、被告の現・元役員49人全員で2億5千万円を大和銀行へ支払うことを条件に大阪高等裁判所で和解が成立した。この訴訟は上記にあるように巨額な賠償を命じたことにより、損害賠償の上限を定めた商法改正のきっかけとなった。
原告側は、@大和銀行が12月12日に持ち株会社を設立するため、大和銀行株式と持ち株会社の株式の交換により大和銀行株主ではなくなり原告適格を失う恐れがあること、A肉体的・経済的に訴訟継続が困難として、和解に応じたとしている。

株主代表訴訟の件数

1993年の商法改正で訴訟を起こすための手数料が一律8,200円に軽減されたことをきっかけに、株主代表訴訟の件数が増えつづけている。93年には年間で74件だったのが、3年後の96年には174件、6年後の99年には3.5倍の256件に達している。

株主代表訴訟で役員の賠償責任軽減(01年12月成立)

商法改正で株主代表訴訟で役員の損害賠償責任に上限(01年12月5日成立)
2001年12月5日、参議院で株主代表訴訟で取締役らの役員の賠償責任に上限を設定することを盛りこんだ改正商法が成立した。
大和銀行ニューヨーク支店に関する高額な損害賠償判決が相次いでいることから、経済界からの要望を受け入れた形となった。
2002年4月の施行が予定されている。

(1)取締役等の株主代表訴訟の賠償責任の上限
代表取締役については、犯罪行為を除いて、報酬の6年分を上限とする。
・代表取締役以外の社内取締役については、犯罪行為を除いて、報酬の4年分を上限とする。
社外取締役及び監査役については、犯罪行為を除いて、報酬の2年分を上限とする。

取締役等の責任軽減には、次の二通りの方法がある。
(イ)株主総会で責任軽減を決議するための条件を3分の2の賛成が必要な特別決議とする。
または、
(ロ)定款の規定によって取締役会が責任軽減決議する。ただし、決定に反対の株主の持ち株比率が3%以上に達すれば決定を無効にできる

(2)商法特例法の大会社(資本金5億円以上か負債200億以上の会社)について、監査役の半数(最低2人)を社外から起用、取締役会への出席や意見表明を義務ずける。

上記の通り、2001年12月5日、参議院では「株主代表訴訟における役員の賠償責任の上限」を決めた商法改正案を成立させ、2002年4月の施行が予定されている。これにより、代表取締役は、6年分の報酬額を上限として賠償責任が解除されることとなった。米国のプロキシ・ルールにある「経営責任者の報酬(Executive Compensation)」があるが、日本の場合は、役員の賠償責任の上限が商法改正によって決まったことから、米国のように、役員報酬の個人別情報開示を求める声が高まろう。「株主に対する情報開示」参照。

リスク管理が企業を救う

大和銀行ニュウーヨーク支店での一人のトレーダーによる巨額な損失により、米国監督当局から、米国市場からの撤退を要求されることになった。巨額な投資損失を出した被告本人が、損失発生の原因を詳細に明らかにしている。トレーダーである被告曰く、バックオフィスがトレーダーの行った取引確認と記録をせずに、被告本人がバックオフィスが行うべき仕事も任されていたことに、その発生原因と損失の巨額化を招いたとしている。

大和銀行経営陣は、「被告を信じて、すべてを任せていた。」と、従来の日本の経営者の常套句を記者会見で弁明していたが、後日の評価は、経営陣の管理責任を放棄した経営者であるとしてる。また、上記のように株主代表訴訟にもなっている。

株主代表訴訟の内容をみると、かなりの部分がリスク管理が無いか甘い結果起きている。未然に対応していれば、損失は小さなものになっていたことは誰の目にも確かなことである。

企業を取り巻くリスクは、あらゆる局面に存在する。商法上の監査役がすべて解決できるほど単純ではない。

広義のリスク管理は、代表取締役の能力、コーポレート・ガバナンス(情報開示・独立取締役の選任(外部取締役の用語を使っていない、”独立 Independent Director”であることが大切としている)・インサイダー取引の排除等)、株主の権利行使、金融機関の適切な企業評価、監査役の機能、内部監査の実効、環境監査の導入、内部統制の整備・機能、法務部の機能化など調和して初めて理想的な管理が行われる。

徐々にではあるが、企業生き残りの手段として、また、国際競争力を維持するため、世界標準(World Standards、グローバルスタンダードは和製英語)に近い企業の姿を求めて、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンス委員会(順法委員会)の設置、環境監査の導入などが行われつつある。

株主代表訴訟の事例を見るに、やる気になればいつでもできるリスク管理は、内部統制制度の整備・機能化、内部監査の充実である。

コーポレート・ガバナンス(企業統治)の必要性

コーポレート・ガバナンスが欧米各国で研究され、日本も遅れ馳せながらその必要性が高まってきている。

企業は誰のものか。企業は株主のものである。従って、企業は株主に最大の利益を確保しなければならない。株主の利益の最大化が経営者に課された課題である。株主の利益の最大化は、株価上昇により株主にキャピタル・ゲインを与えることと配当の最大化である。(株主の利益は配当ばかりではない。マイクロソフト社では、普通株について配当はしていないが株主に株価上昇によるキャピタル・ゲインを与えている会社もある。)

フォーチュン誌掲載の大企業1000社のうち90%以上の会社がストック・オプションを採用しており、経営者および従業員が自社株式購入権を得ており、自社の株価の上昇が経営者および従業員の株主としてのキャピタル・ゲインを得るチャンスが与えられて、企業発展の原動力にもなっている(「ストックオプション制度・マイクロソフト社の場合」参照)。企業の目的が株主の利益を最大化することが、経営者や従業員の利益にもなる仕組みが構築されている。また、年金ファンドの運用に株式投資が重要な役割を担っており、機関投資家として、企業経営者が株主の利益を無視すると経営者の交替などを要求してくることになる。


そこで、コーポレート・ガバナンス(企業統治)により経営者を監視することで、不測の損害を企業に与えたり、経営のまずさによる業績悪化などを阻止しようとするものである。

コーポレート・ガバナンスの内容は一様ではないが、参考としてナスダック企業に要請している「ナスダックの市場ルール」にあるコーポレート・ガバナンス要請(Corporate Governance Requirements)の概要は次のようになっています。

財務情報の開示を適時適切にしなければならない。
社外取締役(英語では、独立取締役 Independent Directorsとなっているが日本では社外取締役の用語が定着している)は最低2名以上を取締役会に置かなければならない。
会社は、2名以上の社外取締役が過半数を占める監査委員会(Audit Committee)を設置しなければならない。
年次株主総会を開催しなければならない。
株主総会の定足数は定款で規定しなければならないが、定足数は普通株の発行済株式数の3分の1以下であってはならない。
株主総会の委任状は保管しておかなければならない、かつ、取り纏め表をナスダックに提出しなければならない。
利害関係者間取引は適切なリビューをしなければならない、監査委員会を活用し、利害が衝突する場合は、取締役会を活用しなければならない。
新株発行、ストック・オプションなどは事前に株主の承認を受けなければならない。

カルパース(カルフォルニア州公務員年金基金)などの年金基金も運用益の確保のため、投資先企業にコーポレート・ガバナンスを要請しており、わが国でもいくつかの年金基金がカルパースのように株主を代表してコーポレート・ガバナンスを要求し始めました(「年金資金からのコーポレート・ガバナンスの要求」を参照)。

ナスダックへの新規登録の際に、内部統制制度の充実・機能、内部監査の整備などが条件となります。登録企業には、原則、内部統制制度・内部監査制度が整備されていますが、最近では、加えてコーポレート・ガバナンスが必要となっているのです。
その背景には、企業年金の資金運用に株式が組込まれており、株主である企業年金に利益の最大化を求めてきていることにあります。経営者を監視して利益の最大化、ないし経営者の独走による不測の損害を株主に与えないようにしています。

なお、コーポレート・ガバナンスについては、「会計・税金・財務情報(ディスクロージャー) http://www.hi-ho.ne.jp/yokoyama-a/」の「コーポレート・ガバナンス」の項をご覧ください。日本の場合、ナスダックの規定及び諸外国のコーポレート・ガバナンスとリンクさせ、より深い知識が得られるようにしています。


内部統制制度の充実の必要性

大企業の取締役には不正行為防止のための内部統制システムを構築すべき法律上の義務がある
2002年4月6日 日経ネットより
神鋼代表訴訟、元会長ら3億1000万円支払い和解

神戸製鋼所の利益供与事件を巡り、個人株主4人が、当時、社長だった亀高素吉元会長(75)ら8人に約3億9000万円の損害賠償を求めた株主代表訴訟は5日、7人が同社に計3億1000万円を支払い、同社が再発防止のため有識者を加えた委員会を設置することなどを条件に神戸地裁で和解が成立した。  
上田昭典裁判長は株主代表訴訟では初めて、和解を促す所見を示し、「大企業の取締役には不正行為防止のための内部統制システムを構築すべき法律上の義務がある」と指摘した。 この日の口頭弁論で、利益供与などがあった当時、社長だった亀高元会長は原告の請求を全面的に認める認諾に応じた。熊本昌弘会長(65)ら6人も原告と和解。和解調書には、熊本会長が利益供与があった時期の経営トップとしての責任を認めることが明記された。


人はすべて完全ではありません。慌てて「誤る」こともあり、ぼんやりして「誤る」こともあります。誰でもが、慌てることもありぼんやりすることもあるのです。誰でもが持っているやむを得ない事情なのです。 「誤り」はどんな人でも生ずることなのです。そこで、人が行った行為を他の人がチェックし「誤り」をなくす制度が、「内部統制制度(Internal control)」といいます。誰でも間違いが生じる可能性があることを前提として、チェックすることで間違いを排除し、損失を被らないようにする仕組みです。

内部統制制度を説明するときに、人は不正を働くものという性悪説を基礎に、内部統制制度を説明する場合がありますが、狭く解釈しすぎています。誤りをなくす仕組みで、結果として、不正を未然に防止できる仕組みです。
誤りの中には、不正も入ります。 従って、誤謬をチェックすることで、同時に、故意に不正を働く気持ちを起こさせない仕組みでもあるのです。

人間の本性は、善の部分と悪の両性を兼ね備えているものです。善の部分だけでもないし悪の部分だけでもありません。そこで、内部統制制度は、悪の部分を未然に抑止する仕組みです。

例としてふさわしいか分かりませんが、ある人に現金を任せ誰も管理していないとします。任された人が清廉潔白で不正を働かないという保証はありません。性善・性悪の双方を兼ね備えている人間だからです。
そこに、管理(定額前渡し制度の採用、出納帳の記帳、領収書の整理保存、他の人による定期的な現金実査・帳簿との照合、領収書などの証拠のチェックなど)があれば、不正の意思を消失させることができます。それが内部統制制度であります。企業にあっては、現金ばかりでなく、預金、資金の運用、デリバテイブ、商品の在庫・購入手続・販売手続き、高速道路のテイケット・商品券の購入、債務保証の手続きなど多岐の局面に管理が必要となります。

内部統制制度を、性悪説のように、人を悪と決め付ければ、働く人の労働意欲を削ぎモラルを低下させ、企業目標である成長と発展にとって逆効果となります。現在では、性悪説とはいわず、内部統制制度の充実は当然のこととして受け入れられているのです。

企業にあっては「不正」ばかりでなく、「誤り」があっても困ります。内部統制制度は、「誤り」を最小限にとどめる為に他人が当然に行うチェックなのです。チェックを性悪説の上に立っていると主張する人がいますが、現在では、「誤謬」をなくす為の当然に行われるものと解釈されています。


社長や、部長などとなると、中には、誰のチェックも受けずに独断専行する場合があります。これを、マネジメント・オーバーライドmanagement override)といい、誰のチェックも受けないで行う行為を指します。マネジメント・オーバーライドは、不測の損害が生ずる可能性が飛躍的に高まると考えられています。
リスクを少なくする為には、マネジメント・オーバーライドのないよう当事者以外のチェックが入る仕組みを構築する必要があるのです。


役員が、または担当者が、誰の目に触れず又はチェックも受けずに不測の損害を与えた損失のケースは、ヤクルトで特定の役員が資金運用による1000億円を超える巨額な損失や、大和銀行ニューヨーク支店の専任の担当者が債券投資による1100億円にのぼる損失、住友商事の特定の担当部長による銅の先物取引による2800億円にのぼる損失は、このマネジメント・オーバーライドの典型的な例です。誰の目に触れず又はチェックも受けず、ますます損失が拡大累積し、発覚するまで続けるという結果となるのです。発覚したときは、隠し切れないほどの巨額な金額となってしまっているというのが恐ろしいところです。

また、投資の損失は経済活動の中で見込み違いといえるものでも、ヤクルトの副社長(元国税庁キャリア)のようにプリンストン債の購入にかかわる6億円(故田中角栄元首相のロッキードから受領の3億円賄賂が霞む)ものリーベートを個人的に受領していたケースは前代未聞であろう。背任容疑も検討しているようである。

いずれにしても、内部統制制度が整備され、また、コーポレートガバナンスが適切に行われていれば、このような損失は避けられたであろうし、本人も犯罪者とならないで済んだはずである。内部統制制度の整備とコーポレートガバナンスの整備のコストは最小限に留めるのは当然であるが、必要経費として見込む必要があるのである。


マネジメント・オーバーライドに該当する適当な日本語がなく、日本語での説明では、通常、「内部統制の埒外で行われる取引」と説明されます。

内部統制については、別途「内部統制のチェックリスト」を参照ください。

内部監査の役割および必要性

内部監査は不正・誤謬の発見だけではなく、不正・誤謬を未然に防止し不測の損失を排除する仕組みですし、定期的に経営効率もチェックし改善することでもあります。つまり、リスクを最小化し利益を最大化のための仕組みです。

日本企業は欧米企業と比較して、内部監査にコストを掛けないできました。その差は、コスト意識の違い、換言すると、利益を生み出す経営の考え方の違いによるものです。事前のチェック体制を充実して、不足の巨額な損失の発生を未然に防止することが、結果的に利益を最大化する方法であるとする欧米企業と、それを認識しない日本企業の差であります。最近の株主代表訴訟の内容や、企業不祥事事件を見ると、日本企業にも欧米並みの内部監査が求められています。その目的は、利益の最大化であります。


内部監査(Internal Audit)は、内部統制制度(Internal Control)の一部であります。内部監査の役割は「ビジネスチャンスを最大限に拡大させつつ、重大なミスや犯罪など会社に対する重大なリスクを最小限に止めること」です。

欧米企業には、内部監査が充実し機能しています。通常インータナル・オウデイター(Internal Auditor 内部監査人)といわれ、企業規模にもよりますが4人から5人がチームとなって内部監査を行い、本社ばかりでなく海外を含めた子会社や関連会社を監査します。専門知識と監査経験を有している公認会計士が内部監査人となっている場合が多いのです。

欧米では、内部統制制度の充実と内部監査制度が機能していることが株式の上場の条件となっています。日本でも形式的には、同様の条件となっていますが、その実体は大分異なります。

内部監査は連結ベースで行うことで効果がある

2000年3月期から連結中心主義になりますが、連結により企業グループの実態がより適切に示されるからです。

ことに、子会社・関連会社との取引は、非第三者間取引(Non-Arm's Length Transactions)と称せられ、第三者間取引(Arm's Length Transactions)のように取引価格、取引内容に受給の力関係が公正に働かないものとされます。

関連当事者間取引として開示を要求されている事項です。連結会社間であれば、連結会社間取引として消去され連結財務諸表からは消去されますが、持分法を適用する関連会社間取引及び債権債務は注記を要することになります。

子会社や関連会社との取引は、グループ内の力関係で、取引自体の実態や取引価格に疑義が生ずるケースが多いのです。また、連結中心主義になる以前は、子会社へ飛ばして親会社単独決算に不利なものを移転させることが少なからずあります。また、逆に子会社を救済するために親会社が負担するケースも見うけられました。

また、連結グループ内の資金効率を考慮すべき場合があります。子会社に余裕資金がある一方他の子会社で資金ショートしており外部から借り入れしている場合は、グループ全体として資金の過剰借り入れが生じていることになります。また、海外との取引で外貨支払いと外貨入金をグループ内でマッチングさせ相殺することができれば外貨送金手数料の節約につながるなど資金効率の面からも連結グループ経営の視点が望まれます。

親会社単独の内部監査では、内部監査は有効に機能しないことになります。内部監査は、子会社・関連会社を含む連結ベースで行うことで発揮します。

日本企業では、同僚をチェックする内部監査は難しい


「和」を大切にする日本では、同僚を監査するのは、終身雇用制度や、年功序列が障害となって、欧米のような厳格で専門的な内部監査は皆無に等しい状況にあります。

また、内部監査のために専業としてかかる人件費と、収益との関係が直接結びつかないと考える日本的風土があり、その必要性が理解できない場合が多いのです。内部統制制度の未整備が、巨額な損失を生み出しているにもかかわらず、チェックの仕組みを構築する認識は希薄です。制度整備の費用対効果の計算ができないでいるのです。

一連の不測の損害により企業倒産や、倒産しないまでも巨額な損失を被った企業にとっては高い授業料を支払い、その必要性を知った会社もありますが、大方は、「自分の会社に限ってそんなことはない」と思っています。


内部監査の適切な適用


コーポレート・ガバナンスのもとでは、企業は「人、もの、金」の経営資源を有効に活用して、最大の利益をあげることにあります。

経営資源としての「人」の要素は重要な要素であります。人財の活躍なく企業成長はありえない。日本企業が、「終身雇用制度」や「和」の経営を指向することは大切なことです。米国企業の中でも、ミネソタ州に本拠を置くスリーエム社やアトランタのコカ・コーラ社も成長している会社は終身雇用制度を堅持しています。1980年代にパソコンが出てくるまではIBM社も同様でした。

しかしながら、バブル崩壊後、経済は収縮し終身雇用を維持できない企業が出てきています。終身雇用制度は、戦後一貫して右肩上がりの日本経済であったときは可能でしたが、バブル崩壊後は著名な企業であっても不可能となってきています。

終身雇用を守れなくなってきている企業は、何をすべきか。売上高を拡大できなければ、企業の再構築や経費を削減しなければならないことになりましょう。闇雲に、リストラや経費削減ではなく、有能な人財には活躍して貰いたいでしょうし、残った人財にはモラルもって活躍できなければ、企業の長期的な維持発展は困難と考えるべきしょう。

企業成長の源は、人にあります。 内部監査の理解を誤りますと、企業の成長発展を損ないかねません。内部監査を誤って導入すると、「企業文化を破壊し」「企業の雰囲気を壊し」「労働意欲を損なう」ことにもなりかねません。そうなっては、株主価値を最大化することにある内部監査は逆効果となってしまいます。

内部統制制度は、企業の規模、業種・業態、によっても異なります。同業で規模が同様であっても、企業文化や方針がそれぞれ異なります。内部統制制度の整備・充実に関しても例外ではなく、コスト/ベネフィット(費用対効果)を考慮することが必要です。一律に硬直した内部牽制制度を構築するとコストばかりで実効性のないものになります。企業の実態と、内部統制の目的を一致させ、企業規模、業態などに相応しいシステムの構築が求められます。。

内部監査は、企業の発展に寄与するものでなければなりません。その適用を誤りますと逆の効果となり、労働意欲を失わせ、モラルは低下し、企業成長の足かせとなります。企業の目標は、利益を最大にし成長発展を図ることで、株主および従業員を含めたステーク・ホルダー(利害関係者)に貢献することです。内部監査を導入するにあたっては、その目標を見失ってはなりません。著名な近代経済学者であるケインズは「冷静な頭に温かい心(cool head and warm heart)」と言いましたが、内部監査人にも必要な言葉となります。


内部監査のアウトソーシング

監査は専門性の高い分野ですが、監査理論及び監査実務経験のない人で行おうとすると実効性は減退します。欧米の内部監査は監査理論(完成度の高い監査基準が存在する)および監査実務経験を有した会計士で構成され実効性を挙げています。日本には監査知識と経験を持った人材に欠けその実効性は疑問符がつきます。監査は諸刃の刃で、監査を誤解して適用すると、企業文化を破壊し従業員のやる気を失わせる場合もありますし、逆に、癒着を生じ実効性を減退してしまう場合もあります。

そこで、人材を育成しなければなりませんが、内部監査の人材を育成するには時間とコストが必要となります。そこで、人材育成に効果的な方法として、監査の理論と実務を習得する時間を、監査知識と経験をもった外部の専門家から購入し協働する「内部監査のアウトソーシング」は、日本企業にふさわしい形態なのです。

日本では、内部統制制度の充実や内部監査を機能させるには、「性善説」や「終身雇用」、「年功序列」が障害となっています。

性善説では、誰も誤謬はないという前提ですので、内部統制制度は不要となります。現代では、性善説は成り立たなくなっています。
「終身雇用制度」や「年功序列制度」では、同僚の仕事をチェックし気まずい思いをしたくなく、「和」をもって経営する日本的経営に反することになります。

内部統制制度」や「内部監査」は、現在は、不正をチェックするというより「誤謬」をチェックする仕組みであり、不正を未然に防止する仕組みと考えられ、当然に必要な仕組みと考えられています。

あって欲しくないのですが、残念ながら人間である限り誰でも「誤謬」は生ずる可能性があり、内部統制制度や内部監査制度は、誤謬を防止するためのチェック・システムと考えられているのです。 現在では、性悪説で説明することはありません。

「終身雇用制度」「年功序列制度」は崩壊しつつありますが、企業間の人の流動が欧米の企業と比較すると少ない日本企業にあっては、同僚をチェックする内部監査は定着しがたい環境にあります。人情として、同僚をチェックして気まずい思いをしたくないものです。

日本にふさわしい「内部監査」の形態は、外部の独立した監査人が行い、経営者に対して忌憚の無い意見を述べることです。 外部の専門家であれば、専門知識を生かし、公正な意見を述べることができ、かつ、雇用関係が生ぜずコスト削減になり現実的なものになります。


整理すると次のようになります。

外部の独立した専門家が「内部監査」を行うことによって情実が入らない公正な意見が聞けます。
アウトソーシングによりコスト削減ができます。
提案した問題点を解消した場合は、株主に代表される関係者に堂々と「問題無し」と胸を張っていえます。
つまり、株主代表訴訟からの回避、または敗訴しないようになります。
4 外部専門家には、業務上知り得た機密事項は漏洩してはならないという守秘義務があり、安心して任せることができます。


米国の事情について、『コーポレート・ガバナンスを徹底し、かつ、効率よく機能させるために、今米国で主流となりつつあるのはインターナル・オーデイット(内部監査)のアウトソーシングなのだ。内部監査を外部のプロフェッショナルに任せてしまえばいいというのだ。』(織坂濠著「時価革命」徳間書店、というように、内部監査をアウトソーシングにする傾向があります。

内部監査を引受けます

内部統制制度の整備を中心に、下記の内容を「内部監査」により報告します。

入金・支払の手続きが適正であるかどうか(手形を含む)
資金運用が適切な手続きで行われリスク回避されているかどうか
仕入・納入・支払が適切な手続きとなっているかどうか
受注・出荷・代金回収が適切となってるかどうか
在庫管理が適切に行われているかどうか
債権管理が適切にされているかどうか
保証債務の手続きが適切な方法で行われているかどうか
資金管理が適切に行われているかどうか
予算管理が適切に行われているかどうか
10 税金対策が適切に行われているかどうか
11 商法上適法に行われているかどうか
12 子会社および関連会社管理が適切に行われているかどうか
13 海外子会社の管理は適切かどうか
14 監査役との連携は適切に行われているか
15 諸規定の整備の状況


なお、内部監査報告の具体的内容は、会社の規模、業種、取引の量などで個々の事情により異なります。
2000年3月期から、連結決算が求められ、連結経営が経営者に求められることになります。それに伴い税効果会計、キャッシュ・フロー計算書、企業年金会計、金融商品の時価会計など新たな会計が求められ、子会社を含めた企業グループの実態は、それを基礎に公表されることになります。経営者は、そうした変化にも対応する必要性があります。内部監査はそうしたものに対応できているかどうかについてもご報告し、ご希望により具体的なご指導を行っております。

詳細は面談により決定することになります。ご質問、相談等は下記宛てご連絡ください。

横山会計事務所

公認会計士 横山 明
Tel 047-346-5214 Fax 047-346-9636
Email: yokoyama-a@hi-ho.ne.jp

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企業経営にどのような変化を与えるか」

新しい連結決算 連結決算体制の確立 連結財務諸表作成の基礎
「キャッシュフロー計算書の読み方」 キャッシュ・フロー計算書の作り方
税効果会計 企業年金の会計 「金融商品の時価会計」
国際会計基準 国際会計基準の基礎 国際会計基準の実例
国際会計基準と日本の会計の相違点

日米企業の監査実務の豊富な経験を基礎にキーポイントを上記に記述しました。内部監査の体制確立に参考となれば幸いです。なお、企業に合わせ効果的・効率的な内部監査の確立について支援しています。興味がありましたら、下記宛てご連絡ください。

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公認会計士 横山 明
Tel 047-346-5214 Fax 047-346-9636
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参考

バーゼル銀行監督委員会が「銀行の内部監査、監督当局、内部・外部監査人との関係について見解」を公表

(仮訳)
2000年7月26日
バーゼル銀行監督委員会
プレス・リリース
バーゼル委員会が銀行の内部監査、および監督当局と 内部・外部監査人の関係について市中協議ペーパーを公表  
 バーゼル銀行監督委員会(バーゼル委員会)は、本日、銀行組織における内部監査人の作業の重要性、および銀行監督当局 と銀行の内部・外部監査人との協力関係の必要性に焦点を当てた市中協議ペーパーを公表する。  

この市中協議ペーパーは、バーゼル委員会の会計タスク・フォースが作成したものであり、銀行内において職業的専門性を 有する独立した内部監査機能を求めるものである。ペーパーでは、銀行の全ての業務・組織が内部監査の対象になるべきこと が述べられている。  

バーゼル委員会の議長を務めるニューヨーク連邦準備銀行総裁のWilliam J McDonoughは、「内部・外部監査の強固な文化 は、銀行の財務諸表の万全さに対する投資家や取引相手の信頼の基礎である。透明性は、金融市場の効率的な運営や資本の合 理的配分に必要不可欠なものであるが、公表財務諸表の正確性に多くを負っている。さらに、銀行監督当局もまた、銀行業界 の安全かつ健全な運営を確保するという責任を全うする上で、銀行の財務記録やデータの正確性に依存している」と述べてい る。  

内部監査人が銀行の自己資本の内部評価プロセスにおいて果たす役割もまた、銀行監督当局の関心事である。バーゼル委員 会のメンバーであり、その傘下の会計タスク・フォース議長でもあるオランダ中央銀行理事のArnold Schilderは、「銀行の リスクおよび自己資本についての監督上の検証は、新しい自己資本合意において重要な役割を果たすことになると我々は期待 しており、また内部監査人はこの検証の過程で重要な支援を提供し得ると信ずる」と述べている。  

監督当局、内部監査人および外部監査人の間での相互作用について、Schilderはまた、「内部監査の役割ならびに監督当 局、内部監査人および外部監査人の関係についての明確な指針もまた、銀行の内部管理を強化するものである」とも述べてい る。  

銀行の中には、内部監査機能の様々な部分をアウトソーシングしているところもある。本日公表されたこの市中協議ペーパ ーでは、アウトソーシングがなされた場合でも取締役会および上級管理職は引き続き、内部監査機能を含む内部管理システム の機能の仕方について責任を負うものであることが強調されている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

バーゼル銀行監督委員会
バーゼル銀行監督委員会は、1975年にG10諸国の中央銀行総裁会議により設立された銀行監督当局の委員会であ る。同委員会は、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、スウェ ーデン、スイス、英国及び米国の銀行監督当局ならびに中央銀行の上席代表により構成される。現在の議長は、 ニューヨーク連邦準備銀行総裁のWilliam J. McDonoughである。委員会は通常、常設事務局が設けられている バーゼルの国際決済銀行において開催される。

会計タスク・フォース
バーゼル委員会の会計タスク・フォースは、当委員会が会計および監査にかかる諸問題を検討するに当たって主 たる責任を有する。同タスク・フォースは、オランダ中央銀行の理事であるArnold Schilderを議長とし、バー ゼル委員会に参加している機関の会計専門家により構成されている。

本市中協議ペーパーの全文をどこで入手できるか 本日公表された市中協議ペーパーのテキストは、2000年7月26日の中央ヨーロッパ標準時(CET)の9時より、 インターネット上のBIS website(http://www.bis.org/)から入手することができる。また、バーゼル委員会の事務局 からも入手可能である。 <本件に関する照会先>   金融庁 総務企画部 国際課 渉外第2係(内線3185)
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