ストック・オプション制度

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はじめに


1997年5月16日の参議院本会議で改正商法が可決し、成立したことで、6月1日からストック・オプション制度の導入が決まった。6月2日、日本経済新聞夕刊によれば、上場・店頭公開企業の29社が導入するとしている。 議員立法では必然的に発生する関連法規の調整が後回しとなり、ご多分にもれず、会計処理、開示、一株当たり利益の計算方法、税法の取り扱い(法人税および所得税)など整備されていない状況にあり、今後の整備を待たなければならない。

商法の改正


商法改正の内容は、使用人に譲渡するための自己株式取得規定(商法第210条の2)を、@従業員のみから役員にも対象を拡大する(商法第210条の2第1項)、A自己株式保有期間を6ヶ月から10年に延長する(商法第211条)、B取得できる株式数の上限を発行済み株式総数の3%から10%に引き上げる(商法第210条の2第1項および第3項)、というものである。

ストック・オプション制度とは、自社株式をあらかじめ決められた価格で購入する権利を従業員、管理職、役員等に与える制度である。自社株を与える方法は、@新株引受権を与える、A 市場から会社が自社株式を購入しておき与える、B分離型新株引受権付社債を発行し、分離した新株引受権を買戻して与える方法(擬似ストック・オプションといわれる)がある。
ストックオプション制度に参加した従業員等は、株価があらかじめ決められた価格より上昇した時に会社から自社株を購入して売却すると、あらかじめ決められた購入価格と譲渡価格の差額が利益として得ることができる。一方、会社は給与や報酬という形で自己資金を使うことなく、従業員等に利益を与えることができる。
米国では、自己資金の乏しい上場直前の企業が人材確保のため採用し大きな成果をあげ、現在では、フォーチュン誌掲載の大企業1000社のうち90%以上が採用しているという。

商法改正・ストックオプション制限撤廃(2001年11月成立)
2001年11月21日、参議院本会議でストックオプション(新株予約権)の制限撤廃を含む商法改正案が可決成立した。施行は2002年4月の予定とされている。従来、ストックオプションの付与対象者が自社の役員・従業員に限定されていたが、付与対象者は限定されないこととなった。

「新株予約権」という用語が使用され、新株引受権やストックオプション、自己株式の移転義務を総称して「新株予約権」として規定を設けている。したがって、新株予約権は、新株引受権付社債や転換社債を含んでいる。
新株予約権
従来のストックオプション 新株予約権によるストックオプション
権利の付与対象者 自社の取締役と従業員 制限なし
権利の付与条件 発行済み株式の10% 制限なし
権利の行使期間 10年間 制限なし
定款の定め 必要 不要
付与対象者の指名明示 必要 不要
株主総会決議 特別決議(自社株方式は普通決議) 特別決議

付与条件等は、定款で株主総会が決する旨を定めている以外は、取締役会が決定し(改正商法第280条の20関係)、有利発行をする場合は株主総会の特別決議を要する(改正商法第280条の20第2項関係)。

新株予約権の行使による新株の発行価額は、@各新株予約権の発行価額及びA各新株予約権の行使に際して払込みをすべき金額との合計額の一株当たりの額をその新株一株の発行価額とみなす(改正商法第280条の20第4項関係)。

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金庫株(自己株式)の会計処理について

日本の場合:
連結財務諸表は、1997年2月7日の企業会計審議会の「連結決算制度見直しに関する意見書案(公開草案)」において、「第二部 連結財務諸表の改訂について、8.(3)自己株式等の取り扱い」によれば、「現行の連結原則注解では、自己株式及び子会社が所有する親会社の株式は、資本の部から控除する形式で表示することとされているが、自己株式等の取得は原則として禁止されており、例外的に取得しても短期間のうちに処分することが必要とされているため、売却目的の自己株式及び子会社の保有する親会社株式については、個別財務諸表と同様、流動資産として表示し、その売却差額は損益として処理するものとする。なお、利益消却目的の自己株式については、連結決算日において失効手続きが完了したものとみなして表示することとする。」としていた。
6月6日付の「同意見書」では、次のように変更している。「(3)自己株式の取扱い、自己株式及び子会社が所有する親会社の株式は、株主に対する資本の払い戻しとしての性格を有していると考えられるため、資本に対する控除項目として表示するという現行の取扱いによることとする。」 草案とは180度変更しているが、変更の理由は何等記載されていない。

では、個別財務諸表の資産計上するという商法の論理はどうなるのだろうか。
保有期間が10年間に延長され実質的に長期間保有することになれば、会計的にはワン・イヤー・ルールが適用され、市場から購入した自己株式を流動資産に計上するのは適当ではなくなり、非流動資産となり「投資等」に表示されることになる。資産となれば、購入価額と従業員等への譲渡価額の差額は売却損益として損益計算書に含めることになるし、期末には低価法による評価損を計上することになる。評価損や、売却損益の計上は相応しいだろうか。自己株式の範囲が緩和され、発行済み株式総数の10%となり金額的に大きくなる可能性がある。

この自己株式の性格は資産というよりは、資本から控除する性質のものではないだろうか。総資本利益率(=純利益/総資産x100%)、自己資本利益率(ROE=純利益/資本の部合計x100%)を考慮すると、純利益に貢献しない自己株式は、総資本(総資産)を構成するに相応しくない。

商法計算書類規則第34条4項創設(2001年10月創設)
自己株式(金庫株)解禁(2001年6月22日)にともない、自己株式を資産の部に計上することを定めた商法計算書類規則第12条1項及び22条の2を削除し、商法計算書類規則第34条4項に「自己株式は、資本の部に別に自己株式の部を設けて控除する形式で記載しなければならない」の条文を加えた。

9月中旬(日付なしの文書)、法務省は自己株式の表示を含む改正「計算書類規則」を公表した。7月30日に公表した意見募集の内容に変更なく第34条4項で「自己株式は、資本の部に別に自己株式の部を設けて控除する形式で記載しなければならない」と規定した。2001年10月1日より施行としている。自己株式の譲渡については2002年4月から解禁としており、自己株式の譲渡時の会計処理について何ら規定されていない。
10月12日企業会計基準委員会の自己株式等専門委員会は「自己株式の会計処理について」及び「法定準備金の取り崩しの会計処理」を検討するとし、自己株式の会計処理については、資本取引であり処分損益は損益計算書に認識しないことを基本合意したようだ。(「自己株式等専門委員会」参照)


国際会計基準及び米国の場合:
国際会計基準解釈指針(SIC)16号「自社株式(金庫株)の買戻し(Share Capital-Reaquired Own Equity Instruments(Treasury Shares)」に規定があり、金庫株=自社株式の買戻しは株主持分からの控除として会計処理し、金庫株=自己株式の譲渡、発行又は解約から損益を損益計算書に認識してはならない、としているが米国の会計処理と一致している。

日本の商法は株式の消却を除いて自己株式の取得は資産として計上し譲渡等で損益を認識している。証券取引法の連結財務諸表になると自己株式は資本の控除項目としており、商法及び証券取引法とで会計処理が整合していない。

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会計に関する開示の内容について


現行商法および会計原則には開示については何も触れていない。何を、どの程度開示するかは今後の検討によることになろう。

ストックオプションの会計に関し費用計上を要求する会計基準を公表(2005年)

2004年3月31日、米国財務会計基準委員会(FASB)は、ストックオプションの会計に関し、現行、費用計上が任意となっている基準を、国際財務報告基準IFRS 2「株式報酬(ストックオプション)の会計(2005年1月から適用)」にほぼ一致させ費用計上を要求する会計基準草案を公表した。コメント期日は2004年6月30日(FASB速報 参照)。

2004年12月16日FASBは会計基準書SFAS123号「持分を基礎とした報酬(Equity-Based Compensation)」を公表し、上場大企業には2005年6月15日以降開始する事業年度から費用計上を求めた
マイクロソフト社は、2004年6月決算にSFAS123号を早期適用し3年間表示しているため2002年まで遡及して適用している。(「マイクロソフト社の2004年の年次報告書Form 10-K」 参照)

2004年12月28日日本の企業会計基準委員会企業会計基準公開草案第3号「ストック・オプション等に関する会計基準(案)」を公表し、2006年4月1日以降開始する事業年度から適用するとし、2月28日までにコメントを求めている。人件費の相手勘定を、負債の部と資本の部の中間に「新株予約権」として独立項目として計上する(4項参照)。

2005年10月19日企業会計基準委員会は、企業会計基準公開草案第11号ストック・オプション等に関する会計基準(案)企業会計基準適用指針公開草案第14号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針(案)」の公表を公表した。人件費の相手勘定を、貸借対照表の純資産の部に新株予約権として計上する(4項参照)、と変更している。

日本の基準 国際基準
ストック・オプション(草案)では、費用として計上し、貸方は負債と資本の中間に独立して計上(4項)。(2004年12月28日)
   ↑ ↑
国際基準に明らかに反している。
企業結合の新国際会計基準・米国会計基準の「少数株主持分」を株主持分の区分へ表示する基準を共同公表 参照


2005年8月10日、企業会計基準委員会の、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(案)」で「新株予約権」は純資産の部へ表示と変更している(19項(1)参照)。
2005年12月9日、企業会計基準委員会確定版を公表。
国際基準との比較 参照
   ↓ ↓
2005年10月19日企業会計基準委員会は、企業会計基準公開草案第11号ストック・オプション等に関する会計基準(案)」で、人件費の相手勘定を、貸借対照表の純資産の部に新株予約権として計上する(4項参照)、と変更している。
米国基準(SFAS123号)では費用を計上し貸方は資本剰余金(早期適用実例 参照)

国際会計基準(IFRS2号)では貸方は所有者持分(Owners' equity、具体的には資本剰余金)へ計上(IFRS2,パラグラフBC100  モデル・ケース 参照)。

有価証券取引法の開示

証券取引法に関する証券行政では、1997年5月30日付の「企業内容開示に関する取扱通達」により、有価証券届出書(第2号様式)、有価証券報告書(第3号様式)で、@「株式の状況」欄に「ストック・オプション制度」の項を設けて、ストック・オプション制度全体の概要の説明(付与の対象者、株式の種類、株式数、権利行使期間、権利行使についての条件の記載を含む)A「使用人への譲渡に係る自己株式等の状況」欄の記載(取締役への譲渡も含む)B「資本金の推移」欄に転換社債や新株引受権と同様に、新株発行予定残数、発行価格、資本組入額、発行予定期間を注記する。
この開示は、ストック・オプションそれ自体の開示を求めているもので、財務諸表の本体の会計処理および開示を含んではいない。

米国方式の会計処理および開示


米国方式は、ストック・オプション自体の開示はストック・オプション・プランそれ自体を開示させている。

財務諸表には、注記に文章にて概要を記述させ、ストック・オプションの株式の付与、行使、キャンセル、残高、期中株価を開示している。

会計処理は、ストック・オプションのための株式を市場から購入したときは資本金、資本準備金、利益剰余金を借方記入し貸方現預金で処理している。当然のこととして、ストック・オプションに関連して自己株式の市場からの購入、ストック・オプションを行使し株式の発行と株式代金が会社に入るので、キャッシュフロー計算書(Statement of Cash Flows)に、ストック・オプションの行使、自社株式の購入、新株式引受権の行使、新株の発行などが示されるし、株主持分計算書(Statement of Stockholders' Equity)には、資本金、資本準備金、剰余金などの期中増減の内容および残高が示され、株主持分の内容が一目で分かるようになっている。また、ストック・オプションを含む資本の変動に関する財務諸表の注記を参照するようになっている。

日本では、連結財務諸表の改訂についての企業会計審議会の意見書は、キャッシュフロー計算書が新たに作成することになったが、資本の部の計算書(株主持分計算書)は、連結剰余金計算書を除いて、何故か含まれていない。 資本の部の計算書が望まれる。

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一株あたり利益の計算

財務諸表規則同取扱要領第192の2には、潜在株式調整後一株あたり当期純利益金額の規定があり、「期末に行使されていない新株引受権(これに準ずる権利を含む、以下同じ)のうち期末における行使価格が・・期中平均価格より低いものについて…」と規定があるが、もともと新株引受権付社債を想定した規定であり、新制度であるストック・オプション制度の導入で従業員等に付与する新株引受権または株式購入権とは、希薄化の影響は同様でも明瞭に記載するのが望ましい。

税法について

1997年の商法改正時点では、個人所得税の課税の時期(ストック・オプションを付与した時か、株式を購入し譲渡した時に課税か)、キャピタル・ゲイン課税か普通所得課税かの区分が明確になっていない。また、法人税法は改正があるのか不明である。

上記の商法改正を受けて、1998年1月の閣議決定された「平成10年度税制改正の要綱」(下記参照)によれば、一定の要件の基に株式を譲渡したときに譲渡益課税するとしている。

平成10年度税制改正の要綱(平成10年1月閣議決定)

ストック・オプションに係る税制上の措置
個人所得税

商法改正によるストック・オプションの一般化に伴い、特定の取締役等が受ける新株の発行に係る株式の取得に係る経済的利益の非課税等の特例措置を、次のように改組する。

@ 株式会社の取締役又は使用人(一定の大口株主である者を除く。)等が、

イ.その株式会社の定時総会の決議に基づきその株式会社と締結した契約により与えられた権利で、あらかじめ定めた価額でその株式会社からその株式をその者に譲渡すべき旨を請求するもの、又は

ロ.その株式会社の株主総会の特別決議に基づきその株式会社と締結した契約により与えられた新株の引受権

で、次に掲げる要件等を満たすものを行使して株式を取得した場合の経済的利益については、一定の要件の下で、所得税を課さない。

a.その権利の行使が株主総会の決議の日から2年以内はできないこと
b.その権利の行使に係る譲受け価額等の年間の合計額が1000万円を超えないこと
c.その権利の行使により取得する株式はその株式会社により、その者に代わって、一定の方法によって証券会社、銀行等に保管の委託等がされているものであること

A 上記@の非課税措置の適用を受けて取得した株式(以下「特定株式」という。)をその取得の日以後に譲渡した場合には、その特定株式の譲渡による所得については、行使価額を取得価額とした上で、株式等に係る譲渡所得等の申告分離課税を行うこととし、上場株式等に係る譲渡所得等の源泉分離課税は適用しない。

B その保管の委託等の解約等により特定株式の全部又は一部の引渡しがあった場合には、一定の方法によりみなし譲渡課税を行う。

C 次の調書提出制度を設ける。

イ.株式会社による上記@のイ.またはロ.の権利を付与した場合におけるその被付与者の氏名及び住所、付与した株数、1株当たりの行使価額等を記載した調書の提出制度。

ロ.証券会社、銀行等によるその保管の委託等を受けている特定株式に係るその年中の異動状況、年末の株式数等を記載した調書の提出制度。

外資系企業のストックオプションの取扱い
平成10年度税制改正要綱をホームページに掲載した時点で、外資系企業の日本の子会社役員・従業員が受領する親会社ストックオプションの取扱いが明記されていないので心配していたが、その後、マクドナルド等が摘発され、課税当局は外資系企業の従業員等へ一斉調査していると報じている。外資系企業のストックオプションについて明記されていないので、現行税法で課税することになる。したがって、外資系企業の従業員等が受けたストックオプションは、権利行使時に給与として課税されてしまうことになる。

問題は、税法を創設する場合にあろう。
(1)米国の税制を真似ているにもかかわらず、課税の公平性からみて、米国企業等の日本法人に対する差別的取扱いに当たろう。
(2)グローバル経済の時代に外資系企業の日本法人の存在を失念して税法を創設したとするなら、立法に携わる人の知識・経験不足は否めない。
いずれにしても、グローバル経済にあっては、課税の公平性はストックオプション制度の立法時に確保すべきであったろう。


法人課税では、現行商法が、自己株式を流動資産に計上し、売却時に売却損益を認識、期末に保有している場合は低価法の評価損を計上しており、法人税もそれを容認している。

法人税法上の自己株式取得に関する「みなし配当」の取扱

2001年10月施行の改正商法により自己株式取得解禁に伴って、法人税法第24条第1項五号に「自己の株式の取得」が加わりました。

つまり、法人税法第24条第1項第五号は次のようになりました。
五 自己の株式の取得(証券取引所の開設する市場のおける購入による取得その他の政令で定める取得を除く。
政令とは「法人税法施行令第23条第2項で、外国の法令に基づき設立された証券取引所及び店頭売買登録銘柄を含むとされています。
つまり、証券取引所の開設する市場から購入した自己株式は「みなし配当」の適用はありません(上記法人税法第24条)が、上場会社の「相対取引」による自己株式の取得及び「非上場企業」の自己株式の取得は、みなし配当部分がある場合は「みなし配当」の規定が適用され源泉徴収が必要となりますので注意を要するところです。自己株式を取得する際には、事前に専門家に相談することをお勧めします。


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米国の会計処理と開示例


財務諸表の開示例を見ると、会計処理および開示の双方が解る。適当なホームページ゛を覗くと次のような典型例が見られる。

C o n s o l i d a t e d S t a t e m e n t s o f S h a r e h o l d e r s' E q u i t y
連 結 株 主 持 分 計 算 書


(単位千ドル、株式数は除く)

資本金 資本準備金 利益剰余金 短期投資の
未実現利益
換算調整累計 株主持分合計
1993年12月1日残高 $ 61 $34,399 $35,711 - $(295) $ 69,876
ストック・オプションの行使(103,760株) 1 783 - - - 784
従業員株式購入プランの株式の発行(19,120株) - 293 - - - 293
ストック・オプション報酬 - 2 - - - 2
従業員のストック・オプションの行使から生じた税効果 - 3,003 - - - 3,003
純利益 - - 14,388 - - 14,388
換算調整 - - - - 171 171
1994年11月30日残高 62 38,480 50,099 - (124) 88,517
株式分割(Stock split) 62 (62) - - - 0
ストック・オプションの行使 (525,688株) . 5 4,991 - - - 4,996
従業員株式購入プランの株式の発行 (25,118株) - 460 - - - 460
ストック・オプション報酬 - 2 - - - 2
従業員のストック・オプションの
行使から生じた税効果
- 2,596 - - - 2,596
短期投資の未実現利益 - - - 133 - 133
純利益 - - 16,684 - - 16,684
換算調整. - - - - 93 93
1995年11月30日残高 129 46,467 66,783 133 (31) 113,481
ストック・オプションの行使(136,703株) 1 1,108 - - - 1,109
従業員株式購入プランの株式の発行(47,429株) - 736 - - - 736
金庫株(自己株式)の購入(457,500株) (4) (7,201) - - - (7,205)
ストック・オプション報酬 - 2 - - - 2
従業員のストック・オプションの
行使から生じた税効果
- 197 - - - 197
短期投資の未実現利益 - - - 108 - 108
純利益 - - 5,497 - - 5,497
換算調整 - - - - (132) (132)
1996年11月30日残高 $126 $41,309 $72,280 $241 $(163) $113,793


連結財務諸表の注記参照。
(訳者注・・普通株式の額面は一株あたり0.01ドルとなっている)

N o t e s T o C o n s o l i d a t e d F i n a n c i a l S t a t e m e n t s
連結財務諸表の注記

注記 5: 株主持分( Shareholders' Equity)

普通株式
1995年9月25日に、取締役会は株式配当(stock dividend)により1株に対し2株となる株式分割(stock split)の承認を行った。1995年11月25日に、1995年10月25日の業務終了後の株主名簿記載の株主に対して株式を交付した。1994年の会計年度の全ての株式と一株あたり金額は、この株式分割を反映させるため再表示(restate)してあります。

1996年に、普通株式を457,500株について$7,205,000で購入しました。1996年に購入した株式のうち 396,500株は1996年9月30日に有効期限が到来する取締役会の事前承認に基づいて購入したものです。
1996年9月に、取締役会は、1997年9月30日までに会社の普通株式をストックオプションに関連して発行する株式を含む種々の目的で会社の株式を購入することが現金の有効活用と信ずる場合は、会社の普通株式を3,000,000株購入できることを承認をしました。
.
1996年11月30日現在、再購入のため承認されている普通株式は、2,939,000株あります。
.
ストック・オプション
1994年8月に、会社の株主は「1994年株式報奨プラン(1994 Stock Incentive Plan,"1994Plan")」および1993年取締役ストックオ・プション・プラン(1993 Director's Stock Option Plan,"Director's Plan")を承認し適用しました。
1992年4月に、株主は、1992年報奨および 非適格ストック・オプション(1992 Incentive and Nonquarified Stock Option Plan,"1992 Plan")を承認し適用し、1984年報奨ストック・オプション(1984 Incentive Stock Option Plan、"1984 Plan")は終了しました。.1984年プランで付与しましたオプションで未行使部分は契約条件内で未だ行使可能ですが、1984年プランの基で新たなオプションを付与することはありません。

1994年プランはオフィサー(業務執行役員)、従業員およびコンサルタントに対し株式報奨金を付与することができます。1994年プランの報奨金は、ストック・オプション(報奨および非適格の双方)、条件付き株式の付与、株式の無制限の付与、事業目標達成や株価上昇の達成による株式の付与を含んでいます。

取締役のプラン(Director's Plan)では、非従業員である各取締役は、最初に取締役に就任した日に普通株式20,000株を購入するオプションが与えられる。 1993年12月31日現在就任中の非従業員である全ての取締役は、一度だけ自動的に20,000株を購入するオプションを付与される。また、取締役は再選された時は、以前にオプションを付与されていても、追加の普通株式20,000株購入のオプションを付与される。全てのオプションの行使価格はオプション付与の日の公正な市場価値である。全てのオプションは付与の日から6年間以上付与されます。
.
合計2,000,000株が、1992年プランおよび1994年プランに関して発行でき、そのうち 1996年11月30日で1,226,716株が付与可能です。合計300,000株が取締役のプランで発行可能で、そのうち180,000株が1996年11月30日に付与可能です。

ストック・オプションの付与および行使状況の一覧は次の通り;

報奨 Incentive 非適格 Nonquarified
株式数 一株あたり
行使価格
株式数 一株あたり
行使価格
93年12月31日現在残高. 1,110,858 $ .45 - 22.31 379,748 $ 1.00 - 19.83
付与Granted 470,270 16.00 - 21.56 472,968 16.00 - 21.56
行使Exercised (103,760) .45 - 16.88
解約Canceled . (108,474) 2.50 - 22.31 (72,100) 16.50 - 21.56
94年11月30日現在残高 1,368,894 $ .45 - 22.31 780,616 $ 1.00 - 21.56
Granted 469,872 18.25 - 34.00 383,000 21.63 - 28.13
Exercised (497,810) .75 - 25.69 (27,878) 1.00 - 21.63
Canceled (148,360) 2.50 - 21.63 (36,684) 16.50 - 21.63
Outstanding at 11/30/95 1,192,596 $ .45 - 34.00 1,099,054 $ 1.00 - 28.13
Granted . 958,713 13.50 - 21.63 485,750 13.50 - 16.12
Exercised (119,701) .45 - 21.63 (17,002) 1.00 - 21.63
Canceled (362,636) 2.50 - 34.00 (370,476) 15.50 - 28.13
Outstanding at 11/30/96 1,668,972 $ .75 - 22.31 1,197,326 $ 1.00 - 21.63
96年11月30日現在、行使可能残高
Exercisable at 11/30/96
587,758 $ .75 - 22.31 539,260 $ 1.00 - 21.63


1996年11月30日現在、全てのストック・オプションに関連して普通株式4,273,014株を保有しています。

1995年10月に、財務会計基準委員会(Financial Accounting Standards Board )は財務会計基準書第123号“株式による報酬の会計”(Accounting for Stock-Based Compensation、SFAS 123)を公表した。会社はこの基準を1997年の会計年度の最初の四半期から適用する。SFAS 123が認めている通り、会計基準委員会意見書第25号“従業員に対して発行する株式の会計”(Accounting for Stock Issued to Employee、APB Opinion No.25)を継続して適用しSFAS123が要求している概算数値の開示を行います。適用による連結財政状態および業績の結果に与える重要な影響はありません。

従業員株式購入プラン(Employee Stock Purchase Plan)
1991年従業員株式購入プランは適格の従業員に会社の普通株式を最高 300,000株を市場価値の85%で購入する権利を与えています。このプランで、1996年、1995年および1994年に、それぞれ、47,429株, 25,118株および 19,120株発行しました。1996年11月30日現在、186,987株がこのプランに関し行使可能で発行のため保有されています。

以上が、米国の財務諸表(年次報告書・アニュアルリポート)に示されたストック・オプションに関する会計処理および開示であるが、米国税制が反映して分かり難いところがある。

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米国税制の概要


米国の税制上、奨励型ストック・オプション(Incentive Stock Option)と非適格ストック・オプション(Nonquarified Stock Option)とに分類され、個人所得税の課税と法人側の所得税の課税と密接に連動している部分がある。奨励型は、従業員側は売却時にキャピタルゲインとして低率で課税される。非適格の場合は、権利行使時に行使価格とオプション付与時の市場価格との差額が普通所得(Ordinary income)として課税され、売却時に売却価格とオプション付与時の市場価格の差額がキャピタルゲインとして低率課税される。
一方、会社側は、非適格オプションは行使時に個人の普通所得相当分の控除(deduction)が認められる。株主持分計算書に示された「ストック・オプションの行使から生じた税効果」は、法人所得の申告に祭し控除された税金相当額を、借方.税金−税効果/貸方.資本準備金として処理されたもので、法人所得税に関する財務諸表の注記に同額税効果計上額として明示している。 適格、非適格の要件などを含め税制が複雑であること、紙数が限られるところから、米国税制の概要もインターネットから取得できますので、ご興味のある方是非とも研究していただきたい。

おわりに

ストック・オプション制度は、会計処理と開示の問題として、会計基準の設定が待たれる。
商法の計算書類では、証券取引法の財務諸表での開示では、どのようになるのか待つしかない。商法、税法、証券取引法の調和のある「トライアングル」か、身動きできない「三すくみ」かが試されようとしている。個別財務諸表が資産計上で、連結が資本からの控除というように、同じ自己株式が法律ごとに理念が異なる。理念が異なれば、損益も変わる。相互調整が機動的にできないものなのだろうか。

作成者、投資家、会計監査人およびその他の財務諸表利用者は、明快な回答を求めている。

1999年11月29日、日本経済新聞報道によれば、米プライスウォターハウス・クーパーが米国ネット関連の公開企業112社を対象に調べたところ、CEOの年間報酬平均額は現金が174万ドルだったが、ストックオプション(自社株購入権)など株式報酬は、4億7千万ドルと突出した額となった、と報じている。ストックオプションは、CEOだけではなく従業員を含むが、労働意欲の面で励みになることは確かであろう。労働意欲の向上により業績拡大⇒株主価値の増大、企業も株主も満足する優れた仕組みである。


1997年(平成9年)6月16日
平成10年1月の税制改正の要綱を除くは、1998年3月記述
1999年11月29日見直し

マイクロ・ソフト社の年次報告書に見るストック・オプション制度」を別途掲載しています。

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