東芝の不正会計に見る金融庁の役割

投資者を保護できたのか?
問題の核心を外した金融庁の処分

 

日本を代表する上場企業の一つ東芝が、有価証券報告書を歔欷記載したという理由で課徴金約73億円を課され担当した監査法人にはその有価証券報告書に適正意見を表明したことにより、契約の新規の締結に関する業務の停止3月、課徴金約21億円が課され、担当した公認会計士は業務停止6か月から1か月、業務改善命令など厳しい制裁が課されることになった。

 

マスコミは、一斉に東芝の有価証券報告書の虚偽記載と内務統制の形骸化を非難し、監査法人はお粗末な監査と非難する。読者は、金融庁の東芝と監査法人に対する制裁を、固唾を飲んで待っているという状況であった。金融庁の処分が重いほどマスコミはニュース・バリューがあり、当然のように、読者は溜飲を下げる。処分によって、これで一件落着かと思われた。

 

平成2758日、東芝は過去に不適切な会計処理が行われたとして、平成273月期連結決算の公表を6月以降に延期すると発表したことに端を発し、クリスマス直前の1222日の金融庁の監査法人の処分の発表まで実に8か月かかっている。2月問題発覚なら11か月かかっていることになる)

 

さて、一連の過程を見ていると、またも、有価証券報告書の虚偽記載で投資者の保護ができていない事実は残った。投資者には年金資産も含まれ、老後に支給される年金の原資となるものが棄損することになる。

 

つまり、この事件は、投資者の保護ができなかったこと。有価証券報告書の作成者である東芝と、その監査報告書に適正意見を表明した監査法人をスケープゴートに、両者だけに責任に帰すことで一件落着という図式である。いつも繰り返されている図式だ。金融庁は、ご丁寧に「会計監査のあり方に関する懇談会」を設置した。議論を見守りたい。平成25年6月24日には金融庁企業会計審議会は、オリンパスの監査の失敗に対して「監査における不正リスク対応基準」を設定しているがすでに適用している国際監査基準に実質変わらないものとなっている。監査を改善したという金融庁の政治や世間に対するアリバイつくりであろう。その証拠に、今度は「懇談会」と名称を変えている。

 

@    投資者が保護されない、A企業が罰せられる、B監査人が罰せられる。不幸ばかりだ。不幸を生む金融庁と言われても仕方ないだろう。陰鬱な雰囲気が漂う。

つまり、投資者が保護され、企業が不正会計をしない、監査人が適切な意見を述べられる、という状況を作られないのだろうか、ということだ。関係者が正常活動を維持できる仕組みが必要だということだ。スケープゴートというようなアンフェアで貧相な発想は卒業してもらいたいものだ。

 

我が国では、金融庁設置法で金融庁の使命として、有価証券の投資者の保護のため制度の企画及び立案するとあるのだ。金融庁は、行政処分を使命とするのではなくて、投資者の保護をすることが使命であるというなら、投資者に被害を及ぼした者を処分するということは、行政の失敗といえるのではないか。金融庁はいつも新聞をにぎわす処分ばかりをしている行政府と思われている。それは、行政の失敗なのだ。そうした視点で、金融庁が、しなければならないことを金融商品取引法の視点で見直す必要がある。

 

2001年のエンロンの粉飾(アーサー・アンダーソン会計事務所消滅)にともなって、「内部統制の監査報告書」の制度が導入され、日本でも金融庁・企業会計審議会が、平成19215日「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」が公表され、「財務報告に係る内部統制の監査」としてスタートした。

 

内部統制が整備し有効に機能していれば、虚偽・不正・誤謬を未然に防止し正しく処理されるというものである。しかし内部統制には、限界もあり、内部統制を無視(Management Override)して行われた場合や、会計基準の知識が不足しているなどしてチェック能力のない場合などには無力となってしまうので注意を要する点である。

 

粉飾決算の歴史は古く、改善するために、企業の事業活動と財政状況を示す財務諸表が経済的実態(Economic substance)を表示できるように会計基準の完成度を高める努力をし、その財務諸表の監査の質を高めるために監査基準の完成度を高める努力は怠りなく、今や、日本も国際基準を導入しているのである。国際会計基準は、現在、2500ページを超えている。会計基準は、大きく分けて、会計処理の基準と財務諸表の注記による開示基準とに分かれる。会計処理基準は、借方)貸方)の仕訳として簿記として馴染みが深く広く知られている。開示基準は、知られてないケースが多い。会計処理には関係しないが、重要な情報として開示が求められている事項が多くあり、国際会計基準を適用すると注記だけで数十ページとなる。

 

例えば、財務制限条項Debt Covenants)がある。社債の発行などの時に、一定の利益剰余金が欠損した場合に、予定の償還期限前に繰上げ償還しなければならないという条項が付されている場合などは、社債の注記にその旨のを開示する、というもので、財務諸表の読者にその事実を伝える必要があるというものである。

 

また、退職給付引当金についての注記に、将来支給する退職給付の計算に使用する割引率を注記に開示するというもので、東芝の場合は、割引率を同業他社よりも高い割引率を開示しており、これにより退職給付引当金の額を小さめに表示していると問題にしている専門家もいる。

 

また、企業の買収に伴って生ずる「のれん」の減損会計について、米国会計基準で求めている、のれんの年次減損テストの報告単位を分かり易く注記に開示していないと、米国証券取引委員会(SEC)のスタッフからコメント・レターを要求されることになる。SECスタッフは、会計基準に準拠して(1)報告単位がどのように識別されたのか、(2)いくつの報告単位が識別されたのか、(3)報告単位は登録会社のセグメント報告とどのように整合しているのか、(4)登録会社がのれんの減損ストの実施のために報告単位を統合したかどうか、(5)報告単位の公正価値がどのように決定されたかを聞いてくる。東芝の場合は、米国SECに登録していないので、米国SECのスタッフからのチェックはないためか、のれんの注記は米国基準とはいいながら十分な注記をしているとは言い難いもので、東芝は、11月になって東京証券取引所の開示要求で追加開示しているが納得できる内容ではなかった。

 

米国会計基準及び国際会計基準は、作成される財務諸表は注記を含むと定義している。日本の企業会計原則は、昭和24年に設定されて、会計処理の原則のみで、注記による開示項目が貧弱で、簿記会計の授業も「注記」に関する開示事項はほとんどないといっていい。その後、キャッシュフロー計算書、連結財務諸表等、退職給付の会計基準等が追加されるようになるが、日本の会計は「企業会計原則」のまま進化しないようである。特に、規制当局の制度などは企業会計原則(簿記会計の試験に現在でも有効)の古いままのようである。

 

投資者への開示情報である有価証券報告書の財務諸表の取り扱いは、金融商品取引法では「雑則」の取り扱いである。金融商品取引法 第7章 雑則 (財務諸表の用語、様式及び作成方法) 193   この法律の規定により提出される貸借対照表、損益計算書その他の財務計算に関する書類は、内閣総理大臣が一般に公正妥当であると認められるところに従つて内閣府令で定める用語、様式及び作成方法により、これを作成しなければならない。

 

つまり、内閣府令なのだが、ネット社会なった現在でも、内閣府令のタイトルが一律で内容が分からないこともあり、該当の内閣府令を探すのは至難の業である。

 

財務諸表作成者の企業の担当者も、監査する会計士も、規制当局の担当者も、該当の内閣府令を探すのは至難の技である。

 
金融庁自体が会計基準を「雑則」扱いをして熟知していない恐れさえあり、以下に述べる金融庁の「開示検査」に会計基準という用語が出てこないのだ。

 

上場会社の重要な情報開示の基礎である会計基準(Accounting Standards)が、金融商品取引法に明示されていなく、内閣府令を通じて適用されているのである。つまり、今や100社を超える上場企業が適用を公表している国際会計基準は2500ページを超える基準となっている。国際会計基準は開示基準を含んでいるのだ。これを適用するためには、平成21年6月30日、金融庁では、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表し、平成22331日以後に終了する連結会計年度に係る連結財務諸表等から適用することになった。

 

また、のれんの償却などを追加した修正国際基準は、平成27年6月30日、金融庁が、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等の公表により適用可能になり、加えて、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件(平成二十一年金融庁告、及び、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(ガイドライン)が公表されている。

 

米国会計基準については米国証券取引委員会(SEC)に登録されて、ニューヨーク証券取引所に上場している企業以外に、東芝のように「米国預託証券の発行により19622月に米国証券取引委員会に登録しましたが、197811月に預託契約が終結したため、現在は登録していません」という会社の連結財務諸表に米国会計基準の適用を金融庁が認めている場合があり、米国SECの規制を逃れている会社がある。こうした会社の財務諸表は、規制当局である金融庁の「開示検査」を受けているかというと受けていないのである。まずは、米国会計基準に準拠しているかどうかは、米国会計基準に熟知し、かつ、米国SEC登録会社の開示実務と監査実務の経験を持った優秀な人材がいるかといえばいないと断言できるのだ。そうした人材は大手外資系監査法人が高給で遇しているはずだ。

 

つまり、東芝の場合は、金融庁の開示検査を受けておらず、監査法人さえ適正意見を入手できれば有価証券報告書は受理され金融庁の開示システムであるEDINETに乗り公衆の閲覧に供することができるのである。

 

内部統制が機能してなかったのは、米国会計基準に習熟した人材がいなく、チェックする機能が果たせない状況にあった。これは、事前に予測できたことなのだ。米国会計基準の適用を認めている金融庁は、認めたからには、米国SECに代わって米国SECと同等の「開示検査」を行うべきであった。因みに、日立製作所は日米の監査経験豊富なKPMGパートナーであった吉原 寛章氏を社外取締役に選任している。チェックばかりでなく、日立は、海外を含む合併買収にも強力な味方を得たようなものだ。

 

東芝の有価証券報告書虚偽記載は、@内部統制が機能してなかったために虚偽記載を防げなかったこと、A米国会計基準で作成した連結財務諸表が監査人の監査のみで正確性の保証を得ようとしているが、加えて、規制当局の開示検査をしていなかったことから生じたものだ。

 

改善方法は、@は内部統制に関わる人に会計基準に習熟した人材を入れて会計基準が求めている開示が不十分であったり、欠如していたり、不明瞭であったりした場合に指摘して改善するように機能するようにすることだ、Aは規制当局である金融庁の開示検査を、米国SECのスタッフによるコメント・レンターにより会計基準が求めている開示が不十分であったり、欠如していたり、不明瞭であったりした場合に指摘して、会計基準の準拠性のチェックを定期的に受けるようにすることだ。

 

つまり、内部統制が組織の中でのチェックの仕組みから、誤謬・不正を未然に防止するものであるなら、資本市場に提供される財務情報の開示にも、市場関係者が会計士監査とは別に会計基準の求めている開示事項が適切に開示されているかをチェックする必要があるのだ。当然、会計基準を認めている金融庁が、認めた責任を全うすべくその適切性についてチェック(監視)するのは当然である。

 

開示検査は、(1)正確な企業情報等が迅速かつ公平に市場に提供されるようにすること、(2)ディスクロージャー規制の違反行為を抑止することにより、証券監視委の使命である市場の公正性・透明性の確保と投資者の保護に資することを目的として行われています。”と書かれている。核心をついており立派な文章である。これを素直に実行していればよいのである。

 

これを読みかえると、東芝の連結財務諸表を米国会計基準の求めている開示をしているか、ウエスチングハウス社の「のれん」について、注記が不十分であり報告単位やのれんの時価の計算方法などを聞いたり、退職給付引当金の割引率の高さについて運用先の利率、計算方法など聞いたり、財務制限条項が具体的な記載を促して投資家の判断できるようにしたりすれば、企業の情報開示の姿勢もかわり、(1)正確な企業情報等が迅速かつ公平に市場に提供されるようにすること、(2)ディスクロージャー規制の違反行為を抑止することにより、今回の東芝の虚偽記載はなかったかもしれないのだ。

 

規制当局の監視が資本市場の内部統制のような機能をして、有価証券報告書の虚偽記載が未然に防止されるなら、金融庁設置法の理念にかなって、投資者を保護したことになろうし、不幸な処分者を出さないことにもなる。この場合、事件とならないことはジャーナリストにとっては失望かもしれないが・・・・

  

現状の開示検査

証券取引等監視委員会の佐渡賢一委員長が2010719日に1期目3年の任期を満了したのを機に同委員長に朝日新聞デジタルがインタビューした記事がある。氏は、知る人ぞ知る敏腕検事だったそうである。 

 「以前は、企業が開示義務違反があったと自ら訂正を申し立てしたのを受けて開示検査し課徴金をかけるケースが多かった。事実上の事後処理だった。いまはまったく違う。こちらが不正の端緒を見つけて企業側に指摘することが多くなった」

 

 「定期の開示検査はない。独自に端緒情報を得た場合は抜き打ちでいく。向こうで発表すれば、それを受けて検査に入る」

 

「適切な時期に開示しているか、開示内容が正しいかどうか、を受忍義務のある任意検査でチェックする。だから企業活動の全部は見られない。そういう仕事ではない」

  

検事であれば、犯罪者を見つけて起訴に持ち込むのが仕事だ。発言を見ると、いわゆる実績を上げるために摘発件数を多く上げることを志向している。

元金融庁に勤務していた弁護士松尾直彦氏の「金融商品取引法における、国際会計基準のエンフォースメント」によれば、国際会計基準の適用に際しては、作成者・監査人への萎縮効果を避ける観点から、摘発型のエンフォースメント(法の実現)を基本的に行わず、指導改善を中心に行うことが望まれる、としており同感だ。

 

金融庁設置法の目的は、投資者の保護である。金融庁・証券取引等監視委員会も目的は、投資者保護のはずである。証券取引等監視委員会=検察庁であるなら証券監視等委員会は、検察庁に特捜部が既にあるのだから不要ということになる。したがって、金融庁・証券取引等監視委員会は、犯罪者を摘発する以前に、投資者に対する情報が十分で、正確な財務情報が適時・適切に届き、投資者に損害を生じないことを使命としているはずだ。摘発も重要だが悪質なものに対しての最後の手段であって、投資者が保護されなくては使命を果たしたことにはならない。

 

証券取引等監視委員会がホームページに公開している「金融商品取引法における課徴金事例集〜開示規制違反編〜」を見ても粉飾事例のみで、会計処理に関する虚偽事例ばかりで税務職員が税務調査の結果のようだ。会計基準の準拠性については皆無である。

 

そもそも、証券取引等監視委員会の開示検査の検査内容が具体的に示されていないこと、裁量行政で検査をしている印象で不明瞭であること。立件すべき悪質事犯は別にして、検察の調査ではないのだから、調査内容は公開されている基準への準拠性を確かめることで達成できるはずで、能力ある人材であればさほど員数を増やさずできるはずだ。

 

例えば、巨額な「のれん」の開示内容が会計基準の規定している開示内容に準拠して開示しているかどうかは、開示すべき有価証券報告書の連結財務諸表の注記と会計基準を照らし合わせるだけだ。手許に有価証券報告書と、経験豊かな検査官の会計基準の知識を照合するだけなのだ。不明点を、作成者である企業にコメントすれば足りるのだ。それだけで、有効な開示検査はできるのだ。少なくとも、東芝の場合は、ウエスチングハウス社の「のれん」は大きな問題であった。

 

証券取引等監視委員会の検査

証券取引等監視委員会の東芝の課徴金支払の金融庁への勧告は、東芝の意を汲んだ第三者委員会の調査結果を基礎に遡及修正された数値を粉飾決算による虚偽記載として計算された課徴金であった。つまり、ウエスチングハウス社の「のれん」に言及しない、かつ、米国会計基準の準拠性にかんしては一言も触れていないものだった。米国会計基準の適用した連結財務諸表の虚偽記載にもかかわらず、どの規定違反か一切言及されていないのだ。たぶん、米国会計基準に知悉した検査官がいないのだろう。金融庁が使用を認めた会計基準なのにもかかわらずだ。

 

第三者委員会の意見が、東芝の意を汲んだ報告書だということから「第三者委員会」の名称も相応しくないと弁護士有志から批判されている。その報告書を基礎に証券取引等監視委員会の課徴金は計算している。米国会計基準はおろか、のれんの減損会計には一切触れていない。

 

開示検査に“会計基準への準拠性のチェック”を明示すべきだ。加えて、準拠性のチェックは、公開されている有価証券報告書と、公開されている会計基準とのすり合わせに過ぎず、米国のようにSECスッタッフのコメント・レターという文章で公開すべきだ。裁量行政を排するうえでも透明性は確保すべきだし、ほかの企業の参考にもなり、投資家情報としてより適切な情報が提供でき有用となるはずだ。

米国証券取引委員会(SEC)のスタッフは、サーベンス・オクスリー法 第408に基づき、最低、3年に1回はチェックし、重要性が高い場合は、頻度を高めているという。開示は、会計基準への準拠性及び証券取引法等が求める内容が適切かどうかリビュー内容を明示している。SECスタッフの企業への開示書類のコメント・レターは、纏められて、公開されほかの企業の参考に供される。大手会計事務所は、SECコメントをまとめて顧客企業の参考に供している。企業も会計士もSECのスタッフのリビューの動向に敏感に対応しているのだ。SECは、企業の情報開示の充実には欠かせいない役割を担っているものと思う。

 

エンロン事件後、サーベンス・オクスリー法は再発防止のために2002年に成立した。我が国は、第408条の定期的リビューの規定は導入されていない。


2016年3月8日金融庁は、会計監査の在り方に関する懇談会の提言」を公表した。案の定、実効性が疑問な提言が出てきた
○監査法人のマネジメントの強化→監査法人のガバナンス・コードの設定・・・すでに英国で導入され新日本監査法人の提携先のEYアーンスト・アンド・ヤングは導入済み。グローバル事務所として日本も導入済みと考えていい。
○会計監査に関する情報の株主等への提供の充実→企業による会計監査に関する開示の充実・・・具体的な内容に及んでいない。
○企業不正を見抜く力の向上→会計士個人の力量の向上と組織としての職業的懐疑心の発揮・・・・OJTの充実だろうが、優秀な会計士がどれだけいるかにかかっている。
○「第三者の眼」による会計監査の品質のチェック→監査法人の独立性の確保・・・当局の検査が独立性を失わせるだろう。既に当局に対して従順で、独立性は希薄である。気迫に欠ける。大手ほど・・監査報酬が高くなる竜付けに使えるため。効率的監査ができなくなり監査報酬の高騰に繋がった。当局のお墨付きがあれば、資金的な余裕のある大手監査法人ほど有利となり安泰となる。当局の肥大にもつながり、最悪の状況になってきている。

○高品質な会計監査を実施するための環境の整備→会計監査に関するガバナンスの強化・・・形式的なものになろう。

イギリスやオランダを引き合いに出しているが内容は曖昧でその効果は未定であろう。不思議で奇妙な文章だが、このような提言を受けた公認会計士自身が反論できず自らを恥じるべきかも知れない。その一方で、投資者保護の制度設計をしなければならない金融庁の役割は一切触れていないのでは問題の解決にほ程遠いといえる。驚かされるのは、「当局と大手・準大手との定期的な対話(協議会の設置)」としている。競争を制限し、当局を含めた談合を公式に認めるというバカげたもととなっている。第二の東芝が出たらどうするのだろう。早くに揉み潰し、無いことにするということだろう。大手監査法人の寡占を助長することになろう。

東芝は2016年3月9日、医療機器子会社の東芝メディカルシステムズの売却について、キヤノンに独占交渉権を付与することを決定したと発表した。応札企業の提示額は明らかにされていないが、7000億円規模と報道されている。 【富士フイルムがキヤノンにぶち切れた! 東芝メディカル争奪戦でトリッキー手法

2016年3月15日富士フイルムホールディングスは2017年3月期にも会計監査の担当を現在の新日本監査法人からあずさ監査法人に変える方針を固めた。新日本は担当する東芝の会計不祥事を見逃し、金融庁から行政処分を受けている。富士フイルムは新たな監査法人のもとで決算を公表し、投資家の信頼を高める狙いがある。行政処分を理由に新日本から他の監査法人に変える動きが表面化したのは、東芝グループ以外の主力企業では初めて。

2016年3月17日、経営再建中の東芝は、洗濯機などの白物家電事業を、中国の家電大手「美的集団」に売却することで基本合意したと発表した。売却額は数百億円とみられる。白物などの家電の子会社「東芝ライフスタイル」の株式の過半を美的に売却する。美的は、東芝ブランドを維持して家電を販売するほか、国内外にある製造拠点の閉鎖や人員削減は行わない方向だ。東芝ライフスタイルのテレビ事業は、東芝グループに移して事業を継続する。

2016年3月24日、金融庁傘下の公認会計士・監査審査会は、東芝 の不正会計問題で行政処分を受けた新日本監査法人に対する、審査会自身の過去の検査が「合理的」だったとする調査チームの報告書を公表した。監査審査会は2015年10月、審査会の非常勤委員と外部弁護士らで構成する調査会議を設置。審査会が実施した新日本監査法人への2011事務年度(11年7月―12年6月)と13事務年度の検査を検証した。金融庁のいつものことだが、金融庁は自己の正当性のアリバイ造りに終始している。

金融庁は、東芝のケースをチャンスとして、監査法人への影響力を強化する。公認会計士・監査審査会は24日、大手監査法人に対する検査手法の見直し策を発表した。

公認会計士が抗弁できない仕事をしてきたとしたら、恥ずべきは公認会計士にあると言わざるを得ない。しかし、東芝のケースが、新日本監査法人の監査の失敗だけに責任を負わせるだけでよいのであろうか。金融庁の処分を見ても、会計監査人が何をどうすれば責任を問われなかったのかは明確にしていない。逆に言えば、何が悪かったのか、具体的に述べていない。つまり、会計士が従うべき監査基準の何に違反したのか具体的に述べてはいないのだ。

課徴金の金額は、粉飾の端緒が明らかになってから数か月の作業をして固まった金額である(2月問題発覚から12月22日の処分までに11か月かかっていることになる・・58億円の追加不正額が2016年3月になって発覚)。監査人が不適正意見を述べられるのは不正額の金額(監査証拠の入手が必要)が判明する必要がある。不正の端緒が見つかった時点で、会社が自らが不正額を明らかにするか(今回はこの方法がとられた)、協力が得られない場合は、粉飾額が判明しないので、監査意見の差控えしかない。監査意見の差控えでも、意見差控えの監査証拠が必要となる。意見差控えの監査証拠が明確であれば問題ないが、不正の範囲、深さが見えない状況では、意見差控えは、監査人は監査責任を放棄したとして責任を問われる恐れがある。監査の進行状況での判断は非常に難しい。今回は、一方的に、新日本監査法人の監査が批判に晒されたが、そのお粗末とされる監査の内容は、金融庁の処分内容からは、いつどうすればよかったのか具体的に明らかにされているとは思われない。これが明らかにされない限り再発は防止できないだろう。

今後、金融庁が、大手監査法人に対する検査を強化するとしており、何を意図しているのか明らかになるだろうが、欧米の会計士に求めれれているところと相当に異なっていることは確かだ。金融庁の公認会計士への影響力の強化大手・準大手監査法人の協議会の設定など、公認会計士の職業的専門家の自立性(Professional Autonomy)が脅かされており公認会計士は危機に瀕しているのは確かだ。金融庁は、新日本監査法人の処分に当たり、東芝の監査のどこに職業的専門家としての過失・懈怠があったのか明示することで他の監査の改善に寄与することができる。しかし、処分の内容は具体性に欠け今後の監査には役に立たないどころか、無用な作業ばかりが増えて監査基準が求めている効率的監査により監査費用を高騰させないという命題からほど遠いものとなっている。今後の金融庁の対応を注視しておく必要がある。

追加:
2016年1月19日ウオールストリート・ジャーナルは、”「監査役」の選任議論=金融庁の有識者会議”と題して、金融庁の企業統治強化策を検証する有識者会議(座長・池尾和人慶大教授)が、取締役の職務執行が適法かどうかを監視する監査役や監査委員の選任の在り方を議論することが19日、明らかになった。
指名委員会等設置会社の東芝では、監査が機能しておらず、不正会計問題を防ぐことができなかった。有識者会議は、同社の監査委員会委員長に社内出身の最高財務責任者(CFO)経験者が就いていたことなどを問題視している。
【日立製作所は日米の監査経験豊富なKPMGパートナーであった吉原 寛章氏を社外取締役に選任している。なお、2002年のサーベンス・オクスリー法407条では、監査委員会には最低一人財務専門家(Financial expert)が必要と規定し、日立はこの規定の要求を満たしている】

監査法人検査を通じて見えてくる上場会社の課題】by佐々木清隆氏(現・証券取引等監視委員会事務局長)、公認会計士・監査審査会事務局長兼検査局審議官、2005年〜2010年の間、証券取引等監視委員会特別調査課長と総務課長を合わせて5年間従事。・・@2年に1度、大手監査法人は1000社ほどの上場会社を監査しており、監査事例としてわずか10〜15社をピックアップして審査している(13ページに記載)。A監査人と監査役のコミュニケーションが不十分だ(11ページに記載)。・・処分ばかりで、金融庁の使命である「有価証券の投資者の保護」の視点がどこにもない。大きな権限を持った規制当局者には cool heads but warm hearts(冷静な頭脳と温かい心情) が欲しいものである。

東京 3月24日 ロイター] - 金融庁傘下の公認会計士・監査審査会は24日、大手監査法人に対する検査手法の見直し策を発表した。東芝(6502.T)の不正会計問題で、同社の監査を長年担当してきた新日本監査法人の監査が十分機能していなかったことを踏まえ、監査法人への機動的な検査や検査後のフォローアップ体制の強化を盛り込んだ。審査会が2年ごとに行う大手監査法人の検査の際、重要な不備を指摘した場合には、検査翌年に報告を求める従来の手法を変更し、検査の翌年に立ち入り検査を行なって改善状況を確認する。また、大手監査法人のガバナンス体制などの検証に必要な情報を継続的に報告させる。一方、不正会計事案などが発生した際に、監査法人の内部管理体制を早急に確認する必要がある場合には機動的に検査を実施することとした。

しかし、大手監査法人を毎年検査しても10社〜15社程度であれば、1000社を超える監査をすべてチェックするには100年を要するのだ。フォローアップを入れると範囲を広げられないであろう。地方事務所もあり効果は限定的としか思えない。経緯を見ていると、金融庁の監査法人支配に力点が置かれ、公認会計士の専門家としての自立性(Professional Autonomy)が脅かされる恐れがある。特に、次期会長に金融庁の各種委員会の委員をしていた者がなり、日本公認会計士協会の”自主規制機関”を強調しており、会計士の自立性が脅かされるのではないかと心配している。

2016年4月23日毎日新聞は、「経営再建中の東芝は子会社の米原子炉メーカー、ウェスチングハウス(WH)の資産価値を見直し、2016年3月期連結決算に3000億円弱の損失を減損処理として計上することが22日、分かった。同時に医療機器子会社の売却益を計上することで、当初見込んでいた最終(当期)赤字は過去最大の7100億円から5000億円規模に縮小する見通しとなった。 」と報じた。これが本当であれば、のれんは時価を超えているとして減損を拒否していた経営陣は「うそ」をついていたということではないか。虎の子の優良子会社である医療機器子会社を手放して売却益を計上することでのれんの減損を計上したとは再出発に必要不可欠で当たったろうが、減損を計上してこなかったことは粉飾であろう。金融庁の東芝と新日本監査法人の処分は、米国会計基準およびのれんに関する減損について、意識的に記載していない。問題の本質を避けてきたことは、将来に禍根を残すことになろう。減損は、東京電力第一原発の事故に加えて米国でのシェールガス革命によりガス価格の低下で火力発電所の建設に変更となり原子力事業で米国に進出していたフランスのアレバ(電力公社)が2013年7月に撤退を決定したときには減損を計上すべきであったろう。ウエスチングハウス社の株を買収するときに、従前から関係の深い三菱重工が入札するとされていたところ、東芝が高値買いして三菱重工の逆鱗に触れていたものであり、のれん自体が高すぎていたのだ。【2016年4月26日Bloomberg原子力事業で減損処理2600億円、医療機器子会社の売却益3800億円計上により純損失4700億円(2月時点では純損失7100億円を見込んでいた)となたたことを発表】、【日経ビジネス・・やっと認めた原子力事業の巨額減損】


東芝の事件は、普通の粉飾決算であったことが判明した。つまり、東芝経営陣は、米国会計基準を適用して「のれん」の減価償却費を計上しなくてよいことから、ウエスチングハウス社の株を高値買していたところ、2011年3月の福島第一原子力発電所の事故で大きく目算が外れた。加えて、2013年7月、米国でのシェールガス革命で原発コストの高さが目立ってしまい火力発電所に変更するケースが続出する結果となり、フランスの原発公社アレバは米国市場から撤退を決定している。この時点で、米国会計基準では「のれん」の時価は一挙に低迷したはずである。東芝は、2014年3月期には米国会計基準で減損の計上を迫られていたはずである。

粉飾する企業の行動はどこでも考えることだが、企業を継続するのに、消却するための財源を求めるものだ。つまり、消却するための十分な利益が欲しいのである。粉飾する会社の常とう手段である。東芝の場合は、虎の子の医療機器子会社が高値で売れる唯一の利益ねん出のツールとなった。これに、キャノンが協力をしたという構図である。医療機器子会社の売却益3800億円計上することができると踏んだ東芝は、米国会計基準で処理すべき原子力事業でののれんの減損処理2600億円と公表することとなったのだ。これにより、2017年3月期の監査法人PwCあらた監査法人は監査を引受ける条件が整ったことになる。無論、企業にとっても事業再生の再スタートが切れるということになる。

この事件の本質は、原子力事業の「のれん」の減損処理が本質である。金融庁の東芝に対する課徴金73億円の内容新日本監査法人に対する課徴金21億円の内容は、のれんの減損処理を意識的に除外していると言わざるを得ない。金融庁の「会計監査のあり方に関する懇談会」の提言は核心をついていないものと言わざるを得ない。

なお、例え、東芝が2016年3月期にのれんの減損2600億円を計上したとしても、米国会計基準での減損計上時期は適正とは言えない。少なくとも2014年3月期の減損処理でなければならないだろう。問題を残したまま収束することを当事者は望んでいるようだが、企業も監査法人もスケープゴートとなり不公正な前例を作り将来に禍根を残すことになるであろう。後味の悪い結末であった。金融庁の対応次第では異なる結果を生んでいたと思う。

金融庁は、東芝の意向に沿った第三者委員会の報告書を基に企業や監査法人を処分したが、そこには独自性・独立性がなかった。金融庁が独自に米国会計基準に準拠して開示しているか判断して処分していれば、当然、「のれんの減損」に関する疑問が避けて通れなかったはずだ。第三者委員会の名に相応しくないと批判された東芝の意向を強く反映した委員会報告に依拠した処分は独自性・独立性がなく公正な処分とは言えなかった。金融庁が専門性を備え真に自立性・独立性をもって投資者保護に立ち向かわない限り企業、監査法人の質は向上せず再び同じことが起こるだろう。権力を背景とした処分だけでは改善しないということだ。

過去最大の最終赤字となった東芝2015年度決算by CNET
5月12日に発表された東芝の2015年度(2015年4月〜2016年3月)連結業績(米国会計基準)は、売上高が前年度比7.3%減の5兆6701億円、営業損益は前年の1884億円の黒字から7191億円の大幅な赤字に転落。税引前損益は1566億円から6422億円の赤字、当期純損益は前年の378億円の赤字から4832億円の赤字となった。営業損益と最終損益の赤字はいずれも過去最大となる。 代表執行役上席常務の平田政善氏は「減益要因として、構造改革費用として1105億円の影響があったほか、Westinghouseを含む原子力における2600億円の減損をはじめとした資産評価減で3251億円、不採算案件の引き当てなどで2368億円などが減益要因となった」と説明した。
東芝メディカルシテスムズの売却益として、3817億円を非継続事業からの利益として計上している。 東芝メディカルシステムズの売却益がなければ・・・・・・粉飾が継続されていたということだ。【東芝決算短信

2016年5月23日、東芝、16年3月期決算を訂正 最終赤字4600億円に縮小 ・・米原子力子会社で発生した損失計上が過剰だったとして会計監査を担当する新日本監査法人から指摘があった。税金計算などでも誤りが見つかり、12日の発表数値に比べて前期の営業赤字が104億円、最終損益が232億円縮小・改善した。 連結最終損益は4600億円の赤字(訂正前は4832億円の赤字、前の期は378億円の赤字)だった。【訂正・決算短信】【立ち直れるか・・税金計算などの計算ミスの理由については、東芝代表執行役上席常務の平田政善さんは、「最終行程が税金の計算ということで、正直いってそこにかける時間が確保できていなかった」と述べました。「時間がなかった」では、もはや、言い訳にもなりませんわね。】

金融庁の処分は核心を外していた
東芝の経営者の意向を受け、ウエスチングハウス社の「のれん」に言及しない第三者委員会の報告書に沿って金融庁は、企業と監査法人を処分した監査法人が処分の対象となった平成24年3月期の腐食額は668億円と平成25年3月期の粉飾額は639億円で合計しても粉飾額は1308億円である。平成28年3月期に計上した「のれんの減損」2476億円である。客観的な情勢から、本来平成24年3月期にはのれんの減損が生じていたはずである。つまり、平成23年3月11日の東日本大地震による東京電力福島第一原発事故発生、米国でのシェールガス革命による火力発電の燃料低下により「のれんの時価の低下」により、早くて平成24年3月期に遅くとも平成25年3月期に「のれんの減損」が生じていて粉飾があったと言わざるを得ない。監査の核心は「のれんの減損」にあった。
金融庁の処分した事項は、顧客への売り上げが計上された時点で原価は計上されて完結されるので自然消滅する。一方、「のれんの減損」は経営者の判断にある。金融庁の処分内容は、核心を外れていた。また、金融庁の「会計監査の在り方に関する懇談会の提言」は的を外していると言わざるを得ない。

減損隠して「若干グレー」新会長は東芝を再生できるかby毎日新聞2016年5月
今年のゴールデンウイークは飛び石連休だった。その谷間の5月6日金曜日、東芝は室町正志社長(66)に代わって新生・東芝の顔になるトップを発表した。社長には綱川智副社長(60)が就任し、空席だった会長に志賀重範副社長(62)が就任する。室町氏は特別顧問に退く。いずれも6月末の株主総会後に正式に決定する。 東芝本社ビル39階の会見室は、連休の谷間とあって、報道陣の数はいつもより少ない。壇上には、室町、綱川、志賀の3氏と、指名委員会の委員長を務めた小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長も加わった。
ウェスチングハウスが2012年度と13年度に減損をし、その開示責任があったのは志賀さんだ。ウェスチングハウスの中だけでとどまっていたのか、ウェスチングハウスの会長としてどういう判断だったか」志賀氏は、「昨年11月に話したように、開示については十分な認識がなかった。ウェスチングハウスの中でとどまっていたという事実はない。東芝にはすべての財務諸表は提示している」と答えた。


2016年6月22日、東芝の株主総会が開かれ、「ウエスチングハウスに関わった志賀さんは外してほしい」との株主動議があったそうだ。室町社長:「貴重な意見、ありがとうございます」 「ウエスチングハウスの買収から不正会計が始まっているという認識はない」としている。志賀副社長:「ウエスチングハウスの減損は、当社の格付け(低下)によって資金調達コストが上がったことによるもの。だが格付けや株価が戻れば価値は元に戻ると思う」【日経ビジネス

2016年6月23日証券取引等監視委員会は、128ページに及ぶ「証券取引等監視員会の活動状況」を公表した。「開示検査」については、88ページから96ページの8ページにわたって記載され、東芝事件も課徴金命令の勧告として数行記載されているが、どこにも「米国会計基準への準拠」に関して記載はない。ウエスチングハウス社の「のれん」に関する記述についても記載はない。そもそも、開示検査に重要な会計基準への準拠性について記述がない。適正開示は会計基準に準拠して初めて実現できるのにかかわらずである。

証券取引等監視委員会は、年に一度、その活動状況を公表することが、法律(金融庁設置法第22条)により求められており開示しているが、粉飾決算のみを掲載している。その中身を見ると、投資家保護とはかけ離れているように思う。金融庁設置法の趣旨に沿って欲しいものだ。2014年3月19日、東芝の粉飾の最中、証券検査課長が「証券取引等監視委員会における検査の現状等」を公演しているが東芝のケースはほど遠い検査となっている。いわゆる想定外ということだろう。ちなみにこの検査課長は、現在、総務企画局参事官兼郵便貯金・保険監督総括参事官( 財務省大臣官房付)、鈴木恭人となっている。

2016年7月11日付け日経によれば、公認会計士・監査審査会はいまの事務年度(16年7月〜17年6月)の検査基本計画に、四大監査法人の検査強化を盛り込む。これまで2年に1回の検査だったが、通常検査の翌年にも指摘した問題が改善しているかを再検査する。東芝の会計不祥事を巡って金融庁が新日本監査法人を行政処分するなど、大手監査法人の監査の質が問題となったことに対応する。

「東芝は監査法人提訴を」 個人株主、会計不祥事で損賠求める
 東芝の会計不祥事を巡り、個人株主が7月19日、東芝に対し会計監査を担当した新日本監査法人の責任を問うため、約115億円の損害賠償請求訴訟を起こすよう求める書面を送付した。到達後60日以内に東芝が提訴しない場合、株主代表訴訟を東京地裁に起こす方針。

東芝不正会計、歴代3社長の訴追で異例の応酬 監視委「明らかな粉飾」 検察「訴追困難」(2016年7月19日)
東芝の不正会計問題で、田中久雄元社長ら歴代3社長の刑事訴追の要否をめぐり、証券取引等監視委員会と検察当局が異例の応酬を続けている。「明らかな粉飾」とみて金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)罪で刑事告発を目指す監視委に対し、検察は「証拠上、疑問点が多い」と否定的だ。監視委は検察が疑問を示すパソコン事業の「Buy-Sell取引」の違法性などへの反論を伝えた、としているが、説得力がない。つまり、Buy-Sell取引について明確な会計基準がない日本の会計実務では、会社法431条では「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣習に従っている」限り責任を問えることはできない。責任が問えるとしたら、そうした実務をしている他の企業に責任を問えることになってしまう。つまり、日本の会計が曖昧だから生じた意見不一致なのだ。不良債権問題で起訴された銀行役員に、貸倒引当金の計上が不十分で利益配当していたとして責任を問うてみたが、当時の貸倒引当金の会計基準が不十分で責任が問えなかったのと全く同じ性質のものだ。金融庁が会計基準を十分に認識していないから生じている問題なのだ。

東芝粉飾決算刑事告発、検察の消極論の誤謬 by 郷原信郎(2016年8月20日)
金融庁の処分が、東芝の経営陣の意向を沿って行われた第三者委員会の報告書を基にして行政処分しており、検察が刑事訴追するのは困難とする理由は正しいように思われる。金融庁が、独自の調査で、ウエスチングハウス社の「のれんの減損」を米国会計基準に照らして粉飾として扱っておれば、郷原氏の主張の通りであったと思う。金融庁の処分が、第三者委員会の報告書に依拠した時点で核心を逃してお門違いの結論へ導いたのだ。だいたい、「Buy-Sell取引」としているが、一般には有償支給として電気・自動車などの製造業で慣行として行われている取引で、他の企業でも行っている取引だ。無論、日本には明確な会計基準などない。

世間では、東芝の不正会計に興味を失いかけているときになって、金融庁は平成28年7月15日「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者会議」を開催して、イギリス・オランダの例を参考にして監査法人のガバナンスコードを設定させようとしている。悲しいのは、有識者に監査実務に長けた人がいないということだ。官僚によるアイデア(なぜイギリスや分けの分らぬオランダの例が参考になるのか不明)をそのまま鵜呑みにさせる会議である。議事録を見れば明らかである。

8月になって、検察が東芝の役員を刑事訴追するのは困難という記事に触れて、検察の視点は正しいと感じた。嘗て、日債銀の役員を刑事訴追して最高裁で現判決を破棄して無罪となったケースと似ているからだ。当時、不良債権の会計基準が整備されていなかったことから無罪となったのだ。当時の会計基準は大蔵省が設定していた。

今は、会計・監査に関する企画・立案は金融庁にある。金融庁に基準の構築は、金融庁設置法で金融庁の所管なのである。問題の本質は、金融庁そのものにあるのである。いわゆる、日債銀から何も学んでいないのである。東芝事件の本質が的外れであることが明らかになっているのだが、その本質に迫ろうとしていないのだ。

なぜ、そうなったかを分析してみる必要がある。【有価証券報告書等の開示検査について・・東芝のケースで学ぶ】に纏めてみることにした。ことは単純ではなかった。

東芝の苦境を物語る中国原発事業の誤算By BRIAN SPEGELEウオールストリートジャーナル2016年12月30日
日本のマスコミは、東芝の原子力事業の工事現場を取材していないが、ウオールストリートジャーナルは、米国子会社ウエスチングハウスが中国浙江省に建設している原発は、作業が遅れていることを伝えている。三門1号機の建設が遅れている要因はいくつもあるが、その一つとして「安全性」が挙げられる。中国は11年3月の福島原発事故を受け、全面的な安全検査が実施されていない新規原発の承認を停止した。これが三門1号機の建設を遅らせたとウエスチングハウスは言う。2011年3月の福島原発事故は既に6年近くを経過している。今更という感がする。

東芝「倒産」はついに秒読み段階か ?取締役会議長が明かした内情by週刊現代2017年1月23日
今回、東芝の取締役会議長を務める前田新造氏が本誌の取材に応じ、その内情を率直に明かした。以下、前田氏との一問一答である。
――今回の一件を最初に認識したのはいつか。
「会見で発表した2016年12月27日の1週間〜10日ほど前に取締役会で集まった際、減損の懸念があると報告されました。正直、驚きましたよ。なにせ、フラッシュメモリ事業が頑張っていて、インフラ事業のほうも受注案件が増えて、ようやく黒字に回復できるというところまできたかな、と思った矢先でしたからね。最初に話を聞かされたときはショックでした」

東芝、米原発の巨額損失問題 週内にも対応策 by日刊工業新聞2017年1月25日
東芝は1月24日、2月14日に2016年度第3四半期(16年4―12月)連結決算を公表し、同時に米原子力発電事業での損失額を報告すると発表した。綱川智社長は当初、損失額を「数千億円規模」と説明していた。しかし現時点で7000億円規模に膨らむ可能性が出てきた

 先週末に米原発子会社の現地調査を終え、足元では監査法人とともに損失額を最終確定する作業を進めている。週内に確定値に近い数値が出てくる可能性もある。
 東芝の16年9月末の自己資本は約3600億円。7000億円規模の損失が発生した場合、17年3月期決算での債務超過が避けられない。それを回避するための「対策の要」(東芝幹部)が半導体メモリー事業の分社化だ。新会社に外部から2割程度出資してもらい、2000億円規模の資金を調達するシナリオを描いている。
 すでに入札準備に入っておりキヤノン、東京エレクトロンなど事業会社のほか、欧米のファンドなどが興味を示しているもよう。東芝周辺からは「取引先など付き合いのある企業に出資してもらえれば、ありがたい」との声も聞こえてくる。
 また保有するグループ会社株式も売却する方針。売却が容易との理由から上場しているグループ会社が主な対象とみられる。具体的には東芝テック、東芝プラントシステムなど7社で、すでに「証券会社に仲介を打診」(東芝の取引銀行幹部)している。

1月27日午前に開かれた東芝取締役会で、半導体事業の分社化が粛々と決議されたが、その直後の対策会議で東芝の社外取締役は、経営陣の説明に声を荒らげた。「そもそも、危機を招いた原発をどうするつもりなのか!」。詰め寄る社外取締役に、うつむくばかりの経営陣。社外取締役たちの底なしの不安がついに爆発した。【東芝を再転落させた「リスク管理不在経営」のDNA

2017年2月14日日本経済新聞は、「東芝が14日に開示する2016年4〜12月期の決算短信に、事業継続のリスクを示す「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する注記」を初めて記載することが分かった。この注記は業績や財務の悪化で事業の先行きに不透明感が高まった時に投資家に注意を促す意味がある。欠陥エアバッグ問題を起こしたタカタも4〜12月期の短信に記載した。 東芝は米原子力事業で6000億〜7000億円の損失が発生したもようだ。…」と伝えている。

発表されない決算、東芝に「不適切」の影再び ・・2016年4〜12月期決算の発表期日を最長で3月14日に延期すると発表した。当初はきょう2月14日昼12時に発表する予定だった。延期を決めた最大の原因は「不適切行為」の疑いが再び発生したこと。今度の舞台は傘下の米原子力大手ウエスチングハウス(WH)である。1年ほど前の米原子力サービス会社の買収を巡り、「内部統制の不備を示唆する内部通報があった」という。またも失態を繰り返した東芝。綱渡りの経営はいつまで続くのか。14日の東芝を追う。

東芝、原発関連の損失は7125億円 債務超過の見通しby朝日新聞2017年2月14日20時26分
東芝は14日、昨年4〜12月期決算(米国会計基準)で米原子力事業を巡って7125億円の損失を計上し、純損益が4999億円の赤字(前年同期は4794億円の赤字)になるとの見通しを発表した。昨年12月末時点の自己資本はマイナス1912億円と債務超過に陥る。半導体事業を分社化する新会社株式の売却割合を、これまでの20%弱から過半に引き上げることも検討し、今年3月末の債務超過回避を目指す。

東芝の“思い上がり”が生んだ原発「無限責任」by小笠原哲氏日経ビジネス2017年2月16日
排他的かつ取り消し不能の固定価格オプションが発効したら、EPC(設計・調達・建設)契約が変更され、プロジェクトの残りのコストが確定する」2016年5月26日、米スキャナ電力が1通のプレスリリースを配信した。同社が発注し、東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)がサウスカロライナ州で建設中の「VCサマー2/3号機」について、一定額以上のコスト負担を拒否するという内容だ。具体的には5億500万ドル(約570億円)を支払って「固定価格オプション」を行使することで、スキャナ電力が支払う原発建設コストの総額を最大76億7900万ドル(約8680億円)に固定する。建設工事に関してこれ以上のコスト超過が発生した場合は、スキャナ電力ではなくWHが支払うように契約を変更する。11月に米国の規制当局が承認し、実際にオプションが発動した。
東芝は本件を開示していないが、広報担当者が上記の内容を認めた。ある関係者は、WHが米ジョージア州で建設中の「ボーグル3/4号機」についても同様の契約になっている可能性を指摘する。

「契約変更の結果、WHは“無限責任”を負わされることになった」と、東芝原子力部門の元幹部は説明する。東芝の米原子力事業における損失が雪だるま式に膨れあがった原因の1つがこれだ。固定価格オプションが発動されたことで、WHはコスト超過分を電力会社に転嫁したり、交渉したりできなくなったのだ。

 東芝は2017年2月14日、WHが米国で建設中の4基の原発について、労務費や設備調達費用などの合計が当初の想定より「61億ドル(約6900億円)」も増加したと発表。この日の記者会見で畠澤守・執行役常務は「現時点からプラントが完成するまでのコストを保守的に積みあげた」と説明し、コスト超過分を含めた7125億円を減損損失として計上した


東芝の半導体入札、評価2兆円が条件 売却4月以降by日本経済新聞2017年2月22日
経営再建中の東芝が検討を進めている半導体メモリー事業の分社で、出資を検討する企業やファンドに新会社の企業価値を2兆円以上と見積もるように求めたことが分かった。3月末としていた株式の売却時期も4月以降に先送りする。時間をかけて資産内容を吟味してもらい、売却益を最大化する狙いだ。米原子力事業を巡って計上する巨額損失の影響を補う。 東芝は3月下旬に臨時株主総会を開き、同月末のメモリー分社を正式決議する。

(参考:東芝再生の中核・フラッシュメモリー、サムスン追撃の勝算(成毛康雄(東芝副社長)byダイヤモンド・オンライン2016年11月9日
     東芝4度目の危機(2)なぜ俺たちがby日経新聞2017年2月22日)

優良企業の東芝メディカルを起こした綱川智社長も悲劇的な社長であるが、稼ぎ頭のフラッシュメモリーの責任者である成毛康雄副社長も悲劇的だ。共に、原子力事業とは無縁な人たちだ。

東芝は3月14日、この日が期限だった2016年4〜12月期連結決算の発表を再度延期すると発表した。米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)の内部統制問題をめぐり、監査法人から決算の承認が得られなかったのが原因だ。WHの経営者が部下に対して「不適切なプレッシャー」をかけた問題で、追加調査が必要な状況に追い込まれた。記者会見した綱川智社長は独立監査人のレビュー報告書を受領できていない。ステークホルダーの皆様には、改めて深くおわびを申し上げます」と陳謝し、4月11日までに決算を発表する方針を示した。

東芝の原発子会社、28日にも米破産法申請・韓国電力公社に支援要請」by日本経済新聞2017年3月27日2:00
東芝の経営危機の主因である米原子力子会社、ウエスチングハウス(WH)が米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請する方針を決めたことが26日わかった。WHが28日にも開く取締役会で正式に決議する見通し。WHは適用申請後の支援先として韓国電力公社グループに協力を要請した。実現すれば東芝はWHを連結から切り離すことができ、再建への道が開ける。
東芝は、決算の日直前にドタバタする。昨年も東芝メディカルの売却で年度末にドタバタしていた。

東芝、2017年3月期の最終赤字1兆円超、債務超過6200億円 国内製造業で過去最大 by日本経済新聞2017年3月29日16:25
経営再建中の東芝は29日、傘下の米原子力大手ウエスチングハウス(WH)など2社が米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用をニューヨーク州の連邦破産裁判所に申請したと発表した。2社の負債総額は計98億ドル(約1兆900億円)。これに伴い、東芝の2017年3月期の連結最終損益が最大で1兆100億円の赤字(従来予想は3900億円の赤字)となる可能性も発表した。赤字額は09年3月期に日立製作所が記録した7873億円を上回り、国内製造業としては過去最大となる見通しだ。
これによって東芝の債務超過額は17年3月末で6200億円となる可能性も明らかにした。これまでの債務超過額見通しは1500億円としていた。 17年3月期からWHグループは東芝の連結対象から外れ、米国中心の海外原子力事業から撤退する道が開けた。
WHが原子力建設サービス会社を2015年末に買収したが、人件費や材料費などで想定外の費用が膨らんだことで事業継続が困難となった。東芝も7125億円の損失を計上する見込みとなり経営危機の主因となった。東芝はWHの破産法申請について午後5時45分から東京・港の本社で記者会見を開く。綱川智社長らが説明する。【TouTube:東芝が米原発子会社WHの破産申請承認受けて記者会見(2017年3月29日) 】

2017年4月11日、東芝の公表した四半期報告書は多くのものを開示しており、日本の開示制度、監査制度、金融行政などがみられる。市場関係者は現物を読んでみるべきだ。
2017年4月12日、麻生金融相、東芝決算「監査法人の意見不表明の原因説明が重要」 として、「企業と監査法人においては意見の不表明に至った経緯、理由を投資家に対して説明責任を果たすようしっかり対応してもらうことは重要だ」と述べた、という。14日の報道はこの発言を受けて行われた模様だ。とんでもない大臣だ。監査人の独立性を脅かす愚行だからだ。


2017年4月14日、金融庁に提出した東芝の第3四半期報告書を受領して3日後には「<東芝>PwCあらた監査法人を調査へ 金融庁審査会」の報道があった。本決算の前にPwCあらた監査法人へ調査に入る不可解さは何なんだろう。

2017年4月26日、日経は、「東芝が決算の会計監査を担当しているPwCあらた監査法人を変更する方針を固めた。米原子力子会社の過去の会計処理などを巡り意見が対立し、2016年4〜12月期決算は監査法人による「適正」との意見を得られなかった。17年3月期の本決算の監査でもあらたとの溝は埋まらないと判断し、株式の上場維持へ向け準大手の監査法人を軸に後任選びを急ぐ。」と報道した。【朝日新聞報道

なお、国際監査基準210号監査契約の約定項目の同意Agreeing the Terms of Audit Engagements」には、監査契約の締結前の範囲の制限として「7. 監査人は、提案された監査契約の約定項目で経営者又は統治責任者が監査人の作業範囲に制限を課しており、その制限が財務諸表に対する意見の不表明という結果を招くと監査人が確信するようなものである場合、法令又は規則がそうすることを要求していない限り、そのような制限された契約を監査契約として締結してはならない」として監査契約を締結する際に、意見不表明ということが確信するような場合は監査を引受けてはならないとしている。東芝のケースはこれに当たるだろう。

東芝事件は、投資家保護の企画立案してきた金融庁の施策を写した現実の究極の姿だ。@形ばかりの米国会計基準の適用、A官僚の任意裁量による企業監査法人の処分、B実体のない形ばかりのコーポレート・ガバナンス、D監査人の変更によるオピニオンショッピングを可能に思わせる監査基準(監査契約時の基準がない)は金融庁の行ってきたこと。企業と直面している専門家がいない官僚が机上で施策(形式的な作文を作る)する結果が、東芝という形式で済ませる日本企業を生んだことは確かだ。

金融庁は、審議会を通じて投資家保護の企画立案をしていることになっているが、実質は事務局をしている総務企画局の官僚が行っている。総務企画局は、金融庁のホームページを見ても分かるように頑なに扉を閉めており分かりにくい存在。過去の施策を見ると、その企画立案は事後の検証をしたことがない。例えば、オリンパス事件で設定した「監査における不正リスク対応基準」が東芝事件にどう役立ったのかなど事後検証は皆無なのだ。また、2015年の東芝の不適切会計を受けて2016年3月に「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言が公表されたが、事後検証することもなく、2016年12月に米国子会社の突然の巨額損失の計上となっている。提言は、@ガバナンスコード(統治指針)の導入、A監査法人の交代制の調査・検討、B監査報告書の長文化による透明性の向上の3点だ。どれをとっても今回の東芝事件とは関係の薄いものだ。そもそも、東芝事件の核心はウエスチングハウス社の巨額な「のれん」に関わるものであることは周知の事実であるが、東芝の設置した第三者委員会の報告書が会社の役員からの依頼で作成されたが、「第三者委員会の報告書では、東日本大震災以降の原発事業の環境変化や、買収した米ウェスチングハウスの減損問題にまったく触れていない。東芝からの委嘱の「範囲外」ということのようだが、なぜあえて、そこに触れないのか。不正を指示してまで巨額の利益かさ上げを行った本当の原因は、実は原発事業にあったのではないか。そんな疑念が残る」ものであった。そうした報告書を基に、金融庁の東芝に対する処分や新日本監査法人に対する処分が行われている。東芝事件一つをとっても、事件の本質を深く分析もせず「懇談会の提言」を纏めて済ます官僚の仕事が日本的企業の東芝を生んだと思う。官僚は民間企業や監査法人を処分して済むのかもしれないが、せっかく育った企業の技術や、監査制度は深く傷つくことになる。多くの不幸を生むことになる。イインサイダー取引や、株価操作など意図的に私益を貪る犯罪と、情報開示の虚偽記載と同列にして犯罪者を作り出そうとする金融庁の姿勢は納得できない。その後、金融庁は沈黙を続けているのみだ。

金融庁は、企業や監査法人を調査をして処分している。つまり、当事者を直接調査しており原因分析が可能な立場にある。そして、処分に当たって、処分の原因となった会計基準違反であれば、具体的に、会計基準のどの規定に違反しているのか(会計基準に具体的規定がなければ会計基準の不備を特定できる)を明らかにし、監査については、監査基準の具体的規定のどこの部分に違反していたのかを明らかにすることで、他の企業にとっても、監査人にとっても二度と同じ過ちを犯さないようにすることができる。これによって再発が抑止でき投資家保護に役立つことができる。しかし、いまだかつて調査してきた金融庁からは、処分の内容は、官僚の裁量のような不明瞭な文書で処分が行われている。しかも役所には、計画(Plan)→実行(Do)→チェック(Check)→改善(Action)がない。マスコミも学者も指摘がない。会計士協会は恰も金融庁のポチのようで独立性が疑われている。投資家保護には透明性を確保することや、金融庁も会計士協会も独立性を保持して切磋琢磨精進することで市場の信頼性を得られると信ずるものだ。

2017年5月15日、東芝は、2017年3月期、監査人了承なしで▲9400億円の当期純損失、▲5400億の債務超過を公表した。
同日の決算発表に、大西 康之氏は、「東芝、決算発表できないまま言及した「400億円」規模のリストラ計画」で、不気味なほどに明るい平田氏(平田政善専務)として「平田氏は何を聞かれても、「はい、はい、どーもー」 と明るく答えた。 この会社はすでに壊れている」と記している。核心を突いた記事を書いている。なお、決算発表には、「出席者は綱川智社長と平田専務の2人。 これまで2人の横に控え、面倒な質問を一手に引き受けてきた佐藤良二監査委員会委員長の姿はなかった。ついにシナリオライターのデロイト・グループが匙を投げたということか」と記している。

2017年7月20日金融庁は「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第一次報告)を公表した。この中で、6ページに「東芝は、証券取引法監査が導入された1951 年から会計監査を受けている。新日本監査法人は、同監査法人の前身の監査法人時期を含めると約47 年間、個人事務所の時期を含めると約63 年間にわたり、継続して同社の会計監査を受嘱し、実施していた。」としているが、東芝の米国会計基準による連結財務諸表は、新日本監査法人が監査し始めたのは2002年3月期からで2016年3月期まで15年間。米国でADR発行時の1951年から2001年3月期までの50年間は、PwC(旧中央青山監査法人)が監査を行っていた。第162期(2001年3月期)有価証券報告書参照。英文はPwCの年次報告書参照 金融庁の調査報告書には、強制ローテーションありきの文脈で、PwCの監査の事実が開示されていない。

2017年8月7日、日刊新聞は、東芝が提出を延期している2017年3月期の有価証券報告書(有報)に対して、監査法人PwCあらたが「適正意見」を出す見通しであることが6日までに分かった。全く問題なしの「無限定適正意見」、もしくは一部不適切だがその重要度は低いという「限定付適正意見」のいずれかを10日までに発表する見通し、と報じた。


2017年8月10日、 東芝は10日、2017年3月期の有価証券報告書(有報)について「限定付き適正」の意見を監査法人から受領したと発表した。同日、有報を関東財務局に提出した。法的期限から1カ月余り遅れての提出で、条件付きながら「お墨付き」を得たことになり、この件による株式の上場廃止の懸念はひとまず後退した。前期末時点の債務超過額は5529億円で確定。有報に付随する内部統制報告書については「不適正」だった。
監査意見がつき、前期末の財務数値が確定した。自己資本は、前期決算を独自に公表した6月時点とほぼ同じ5529億円のマイナスだった。前期の連結売上高は前の期比6%減の4兆8707億円、営業損益は2707億円の黒字(前の期は4830億円の赤字)、最終損益は9656億円の赤字(同4600億円の赤字)だった。【日本経済新聞

2017年9月22日日経BPは、元公認会計士・元監査法人パートナー細野裕二氏著「粉飾決算VS会計基準」を出版した。長銀、日債銀、オリンパス、東芝の粉飾を簡潔に分かりやすくまとめたものである。しかし圧巻は、東芝の粉飾を刑事訴追を想定できるような検事の視点で書かれていることにある。会計に疎い者にも分かりやすく立件できるように書かれている。東京地検にとっては強力な資料になりうる。証券取引等監視委員会が動くのが筋であるが、東京地検も動く可能性がある。

上記出版から2日後の9月24日に、共同通信が「東芝会計「虚偽記載ある 監視委委員が検査主張」と報道したのは、偶然ではなく細野氏の上記書籍の内容を検証することになったものと推察する。

まとめ

@ 会計基準が明示されていない金融商品取引法、 
A 会計基準と開示書類である金融庁のEDINETに登録された財務諸表が会計基準に準拠して十分に表示されているかどうかを規制当局が米国SECのようにリビューしていない、
   金融庁では、有価証券の投資者保護に企業の投資者に対する情報開示(有価証券報告書等)に関する事項は含めていない。金融庁の「投資者保護」サイトを参照
   一方で、内容は明示されていないので不明確だが「開示検査」を重要視する兆しがある。
B 株式の発行市場における目論見書に投資者を護る証券弁護士がいない、証券会社に証券弁護士がいない証券実務(実務界に弁護士がいないことから順法精神が薄い実務)、
C 金融庁の組織自体が、証券取引等監視委員会が検事の摘発型で企業財務を視ている、公認会計士・審査会が監査法人を視ている、それぞれが、自己完結的に縦割りで機能しており(書面では相互に協力することになってはいるが機能しない)、自らの存在をアピールしたがる摘発型に機能して企業及び公認会計士を萎縮させ、
D 総合的に、投資者保護を調整すべき金融庁が機能していない、という、目標である投資者保護は達成できない仕組みだ。

 上記の@〜Dを透明にして国民から見える形にすれば、国民の声が改善に向けさせよう。不透明=裁量行政 透明性=国民の目が裁量行政を阻む。日本は透明性がなく、再発防止の原因追及に核心が見えずポイントをはずし改善されないままで繰り返すのだ。今や、会計士のなり手が居なくなるのが危惧されている。根幹には不明瞭な会計基準の取り扱いにある。

金融庁総務企画局平成27年9月付企業内容等開示ガイドライン」1−1−2 基本的な考え方、には「開示行政の目的は、企業内容等の適切な開示を確保することにより、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することにある」としてご尤もな目的を記載しているが、企業内容開示基準である肝心かなめの”会計基準”に関する情報開示については避けているような不思議なガイドラインとなっている。。

連結決算に関し、連結財務諸表原則連結財務諸表の会計基準連結財務諸表規則が、重複して原則、基準、規則があるだ。 分かりやすく整理して!

参考:
財務諸表監査の質と監査上の懐疑に関する論点整理by鳥羽至英早大教授・・鳥羽至英教授の「監査の質と~」は、「わが国の監査制度の制度疲労ー公認会計士制度の失敗、複雑な会計・監査制度の失敗、大学学部レベルの会計・監査専門教育の失敗、公認会計士制度の失敗などーを指摘している。【わが国では、社会的に影響の大きな会計不正が起こっても、その状況や内実が監督官庁(金融庁)や会計プロフェッション(日本公認会計士協会)から十分に明らかにされることはない。

問われるファイナンシャル・ゲートキーパーの役割 by淵田康之氏 … 日本の資本市場のゲートキーパーは、監査法人だけという悲しい現実がある。米国のPCAOBの問題点は、日本のCPAAOBの問題点でもある。責任を監査法人に転嫁する。米国のPCAOBの問題点は、日本のCPAAOB(公認会計士・監査審査会)の問題点でもある。責任を過度に監査法人に転嫁する。サンドバッグのように叩かれる監査法人は、このままでは、監査人のなり手がなくなり崩壊すると危惧する。

●【米国の証券市場規制について】by西村尚剛広島大学教授著・・SEC のホームページによれば、SEC の主たる任務は「投資家を保護し、証券市場の高潔さを維持することにある。」とされている。適切なディスクロージャーを実現させることにより自由な市場機能を十分に発揮させつつ投資家を保護し、市場の高潔さを維持しようとするものである。このような視点からすれば、SEC が市場において市場の透明性を確保し、市場において投資家が不当な損害を被らないよう不正な行為を監視・取り締まる。企業財務局、この部局は主として市場における企業のディスクロージャーを担当している。主な業務は企業等から提出されるディスクロージャー資料の受理、審査等を担当している。ただし、ディスクロージャー上の不正行為等にかかるエンフォースメントはやはり法務執行局がメインになって担当することとなっている。・・日本の場合は、企業財務局がない点が大きく違う。

なぜ監査法人ばかり叩かれる・・東芝問題の不条理by上村達男早稲田大学教授・・金融庁はこれでいいのか。証券取引等監視委員会が有価証券報告書等の開示書類(財務書類)における重大な虚偽記載という金商法違反行為について、東芝本体に行ったように、監査法人に対しても、金融庁に課徴金や行政処分を勧告するという形を取れなかったのはなぜなのか。こうした金融庁の姿勢は、会計・監査を資本市場規制の中枢の問題とは捉えておらず、重要ではあるが、金商法規制ではなく、会計学や監査論の問題としかみていないことの表れではなかろうか
会社で問題が生ずると公認会計士が追及され、追及される側は監督官庁に全く抵抗できないという構図が続く。


●「不正会計への道は「善意」で舗装されている」by冨山和彦経営共創基盤代表取締役CEO・・・金融庁の摘発型行政は考える必要があろう。健全な資本市場を発展させるには、悪質なものを除いて、ディスクロージャーのリビュー型・指導型で考える必要があろう。


注目される日本風力開発株式会社金融庁の有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金に対する反論課徴金の取り消し訴訟MBOによる非公開化平成27年9月上場廃止】、日本政策投資銀行(DBJ)との約500億円の投資ファンドの組成。【スマートジャパン】と目まぐるしい展開を見せている。日本政策投資銀行がファンドを組成するということは事業の実態を認めているからと思われる。裁判の行方が注目される。【過去の有価証券報告書

上場会社の開示資料ツールは、プロネクサスか宝印刷のみ、両社には元財務官僚などを役員として受け入れており、すっかり利権化しています。 宝印刷かプロネクサスかの確認方法(招集通知編) EDINET編 東芝は行間を見ると宝印刷で作成していることが分かる。(EDINETで検証 金融庁が「開示検査」をしないのはこうした開示ビジネスの寡占化と金融庁の天下りに関係しているのではないでしょうか。

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