これが日本の会計・情報開示

日本の制度会計と米国会計基準との相違点
English
日本の制度会計
会社法と金商法の重複開示
●連結・単独の重複開示
金融庁(金商法)・法務省(会社法)・財務省(税法)の縦割り行政が国際会計準の導入を阻む
日本は法律の数だけ会計規定がある
外国企業には個別財務諸表の開示を求めない投資情報の不公平
◎一元化の提言(2015年11月)
官による官のための開示制度
株主に届かない有価証券報告書・四半期報告書
●証券取引所から上場会社の有価証券報告書等が直接閲覧できない国
●国際会計基準とは全く異なる表示方法を決めている内閣府令(連結財務諸表規則等)・・特に注記について
EU、日本の会計の同等性評価へ
(2004年5月

2005年4月、EU同等性評価で
日本企業に追加情報の開示を要請


EUが条件付きで日本基準を認める
(2008年12月)
弁護士が関与しない日本の証券発行

エフオーアイの粉飾に学べ!(2010年)

小説「証券検査官」は金融庁の実態?
米国SECのように法曹人等の専門家
の組織ではなく国家公務員の金融庁
↓←--B
桑原総務企画局長が
J−IFRSの必要性を説明
(2014年5月30日)

独立性を失ったASBJ


ASBJ公表の奇妙な
修正国際基準(案)
2014年7月31日


金融庁 総務企画局長
池田唯一氏の驚愕の見解


金融庁がIFRSをようやく受け入れ?

奇妙な部会
企業会計審議会会計部会
2014年12月15日

金融庁・IFRS適用リポート公表
2015年4月15日


修正国際基準H28年3月期導入
2015年6月29日)(
(2015年9月4日)

金融審議会(2016年4月)
ディスクロージャー・ワーキング・グループ報告
役人の作文・・2019年前半と明記)


会計基準の設定主体

日本とIASBの台所比較

金融庁・企業会計審議会で、単体の会計基準について検討開始(2010年6月8日)・・8月3日には、安藤会長は、ASBJが決めることと議論を放棄(会長発言参照)


株主総会と監査報告書
総会後有価証券報告書公開
株主総会前開示わずか10社
(2010年3月期)

小手先の対応に限界

東京証券取引所
決算短信で
個別財務諸表の開示を
2011年3月期より
任意
とした


    ↓←--A
任意適用300社に
自民党会計委が要請

中間提言
(2013年6月)

エンドースメントされたIFRS
金融庁の役人が創出
金融庁が日本版IFRSの採用
を押し切った格好となった

会計・監査の専門家不在の悲劇
2013年6月 強引
ASBJ7月10日の議論

ASBJの対応

日本版「国際会計基準」が登場?


各国IFRS適用状況
2013年6月13日現在


ASBJ(西川委員長)の
エンドースメントされたIFRS策定

(2013年9月)

IFRS対応方針協議会
金融庁  ASBJ
(2013年11月8日)

大山鳴動して鼠一匹
となろう。


決められない日本

IFRS適用に旗を振れない金融庁
(2014年4月)


ダンマリ決め込む金融庁

日本版IFRSはIFRSと認めず

大義失った日本版IFRS
(2014年7月14日

B
       ↓←--------@
二年前に逆戻りしたIFRS議論2011年
背後でシナリオを描いた人物 
経済産業省平塚敦之氏・・反対派

古賀氏の主張が頷ける

1年議論しても結論出せず
狙いは金融庁の先延ばし作戦
(2012年)
オックスフォード・リポート
by鈴木 トモ (オックスフォード大学教授)
日本名:鈴木智英
金融庁の委託研究2012年6月

■米国SECが再度延期
(2012年7月)

オバマ大統領選挙待ち
(2012年11月6日オバマ再選

金融庁IFRS適用判断
2013年以降に延期

3年間の民主党政権崩壊
(2012年12月)

金融庁河野正道氏を
IFRS財団モニタリングボード議長に選出

(2013年3月

任意適用規制緩和を求める
(2013年4月)

金融庁にガバナンスがあるのか(強引)
監査基準と会計基準を
同一課長が取り仕切る


「国際先端テスト」のお粗末

A
戦後の日本の会計

日本の会計の国際的位置

◆IASBがIASのコア・スタンダード完成
1998年12月

◆証券監督者国際機構(IOSCO)が
国際会計基準(IAS)を承認
(2000年)


◆金融庁はIOSCOに
法的拘束力なし
としてIASを無視する方針をとる

(2000年)

◆企業会計基準委員会を創設
2001年7月

有力会計学者が
国際会計基準は
全面時価会計と喧伝

2003年1月


金融庁が、日本の会計基準は
高品質と主張
(2004年)

■ 日欧会計戦争に敗北した日
(2005年)


■2011年にIFRS収斂を約束した日
(2007年)


■IFRS導入検討開始を表明した日
(2008年)


■IFRS任意導入を認めた日
(2009年)


米国の対応に揺れる金融庁 (2010年)

@
日本の閉鎖性 日本基準では大型買収できない EUが同等性評価2年延期案公表 中国が国際基準と収斂で合意
投資家の視点に欠ける日本の会計 EUと中国当局が対話開始 中国当局、米国SECと対話開始
企業会計基準委員会が「プロジェクト計画表」をはじめて公表(2006年10月12日)
(欧州委員会が日本の会計基準の国際基準への収斂をモニタリング(監視)するための工程表)
2007年7月6日欧州委員会は日本に国際基準への収斂加速を助言
2007年8月8日ついに日本は2011年6月末までに国際会計基準に完全収斂を約束した東京合意
一方、金融庁は、内外の企業に国際会計基準の適用を認めていない
2007年11月7日、米国会計基準審議会が、すべての米国上場会社に改善IFRSへの準拠を提言

2007年11月14日欧州議会が、第三国に2011年12月までに国際会計基準に収斂するよう規則改定

2007年11月15日、SECはIASBが設定したIFRSを適用した場合のみ差異調整表の免除を決定
2008年5月6日米国会計士協会は会計士試験にIFRSを出題する提案をした
2008年8月27日米国SECは、米国上場企業に対し2014年を国際会計基準(IFRS)適用日程(Roadmap)とする案を公表
2008年10月14日日本経団連が「国際会計基準の選択適用」を初めて求めた
2008年12月17日米国SECはXBRLによるインターラクティブな情報開示の要求日程を公表
2009年1月28日金融庁は「2010年3月期からIFRS任意適用(案)」公表
2009年6月11日金融庁は、2015年のIFRS適用の義務化を目指す、最終決定は2012年
2009年6月11日ピッツバーグサミット(G20)で2011年6月までにIFRS収斂の完了を要請
2009年10月28日日本経団連はIFRS適用に関してオーストラリア(豪州)で9月に行った現地調査報告を公開 
2011年5月26日、SECスタッフがIFRS導入に関するワーク・プランを公表した
2011年6月30日、IFRS導入議論二年前に逆戻り、適用反対の合唱
2011年11月16日、SECのスタッフが「IFRS実務の分析」と「IFRSと米国基準の比較」を公表
2012年2月8日、自見庄三郎金融担当大臣、フーガ―ホーストIASB議長に
「日本がIFRSから離れていくような解釈はしないでほしい。日本のコミットは変わっていない。IASBとの緊密な関係は続いている」
と述べた。

はじめに

金融庁は、証券取引法による投資家保護を目的として従来紙媒体であった有価証券報告書(年次報告書 Annual Report)、半期報告書(Semi-Annual Report)および証券を売出すときの有価証券届出書(Prospectus)を、インターネット上(システムは「EDINET: Electronic Disclosure for Investors' NETwork」)、エディネットと呼ばれる電子開示を、2004年6月1日以降、原則義務化し、2008年4月1日からXBRL化することとしている。(金融庁EDINET(開示用電子情報処理組織)を使用して行う電子開示手続等に係る規定の整備等」 参照 ⇒⇒証券取引法・商法分野における電子提出」によれば、EDINETは日本IBMが1998年に落札、1999年1月に第1次試行が実施されたもの。

⇒⇒
 投資家・利用者側が証券取引所のホームページで株価を閲覧し、同時に、有価証券報告書等(EDINET)の企業情報を検索しようとしても取引所のホームページからは閲覧できません。(「証券取引所から閲覧できない有価証券報告書等の企業情報」参照)

一方、1961年から始まった政府刊行物として有価証券報告書の縮刷版(最近は1冊2000円)を購入することになりますが、2004年度から販売廃止となりました(国立印刷局からのお知らせ 政府刊行物「有価証券報告書の販売」 参照)。

有価証券報告書等をまとまった形で見るには、財務省(旧大蔵省)または各証券取引所で閲覧するか、上記、EDINETや会社のホームページなどで公表の投資家向け情報をインターネットを通じて閲覧したりダウンロードすることになります。

なお、証券取引法には証券監督局(証券取引法第24条には、「内閣総理大臣に提出」となっている)に提出する規定があるのみで、株主になっても有価証券報告書および半期報告書(2008年4月から四半期報告書)は株主の手許に届くことはありません。

加えて、2008年(平成20年)4月からXBRL(eXtensible Business Reporting Language)の新システムを稼動し、XBRL形式による提出へ移行することを計画している。それに先立って、EDINETパイロット・プログラムへの参加を募って実証実験を行う。パイロット・プログラムで使用する書類は、原則として、既にEDINETに提出済みのもので且つ、平成18年5月1日以後終了の事業年度及び連結会計年度並びに中間会計期間及び中間連結会計期間に係るものとします。

内容は、現行の有価証券報告書の内財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主持分等変動計算書、キャッシュフロー計算書で注記を除く)を忠実にXBRLの形式に置き換えるものである。(金融庁「EDINET再構築に伴うパイロット・プログラム実施のご案内(2007年4月3日)」、「EDINETパイロット・プログラムに関する資料の公開及び説明会の開催について4月27日」、「EDINETパイロット・プログラム参加申込み方法について(2007年6月1日)」「EDINETパイロット・プログラムに関する開示書類閲覧用ページの公開について(2007年8月13日)」「よくあるご質問(FAQ)」「パイロット・プログラムの結果概要(2007年10月29日)」「EDINET再構築に係る各種仕様等の公開(2007年11月16日)」、「日本公認会計士協会・・平成20年4月から金融庁の電子開示システム(EDINET)が新しくなりますが、新しいEDINETの円滑な導入が図れるよう、金融庁から監査人にも協力の依頼があります。監査人として当面の対応をご紹介しております(2007年12月25日)」「開示用電子情報処理組織による手続の特例等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)(2007年12月27日)米国式連結財務諸表を作成している会社が提出する連結財務諸表については、従来どおり、HTML 形式により作成します」2008年3月13日「パブリックコメントの結果等」・・日本独特の表示の硬直化を招く恐れがある。)

2008年3月17日より、EDINETの閲覧ホームページがXBRL化に伴って閲覧ホームページEDINET、PDFファイル(全ページ閲覧可能となった)およびXBRLファイルを追加変更された。

XBRL 形式による書類の提出は、2008 年4 月1 日以後開始事業年度等を直近の事業年度等とする財務諸表等を掲げる有価証券報告書、四半期報告書、半期報告書及び有価証券届出書をEDINET へ提出する場合に適用されます。

日本のXBRL化は日本の会計基準のみ対応しており、米国会計基準で登録している大企業は従来どおりHTMLでの登録となる。XBRLは日本語勘定科目と英語表記と一対となっている。勘定科目はXBRL化により画一的な傾向となる。したがって、英語表記はもっと画一的となる。すでに、見難い表となったり、奇妙な日本語や英語が散見される。

なお、米国SECでは国際会計基準と米国会計基準の収斂を進行しつつ、XBRL化を試行しているが、成功しているとは到底いえない。(SECの「任意でXBRL形式で提出している会社」「ADOBE SYSTEMS INC の年次報告書Form10-K」「国際会計基準(IASB)による米国基準のXBRLとの収斂」 「2007年9月25日SECはタクソノミを完成させ会計基準設定主体、作成者、証券アナリスト、投資家などにリビューをお願いすることになったと発表した」参照)

会計が「企業実態(substance)」を表現しようとするのに、EDINETのタクソノミが一律の「表示様式(Form)」を求めることで実態を表さない表示で「虚偽記載」になる恐れが生ずる。または、逆に、タクソノミーを見ると、重要性と合算(Materiality and aggregation)や相殺(Offsetting)を無視してやたら詳細になり読みにくくなる恐れもある。慎重な検討が望まれるが、日本は、官僚主導の規制型の画一性と、XBRLの画一性がマッチしており、世界に先駆けて強制適用する。(タクソノミーとインスタンスの関係は東証のHPが判り易い)

XBRLの採用にあたって、金融庁はXBRLデータで用いる用語やデータ構造の統一を図っている。例えば決算の勘定科目は「わずかな言葉遣いの違いも含めて6万もの用語が使われているが、EDINET向けのXBRLではこれを約4000個に集約した」(金融庁企業開示課の武田敦専門官)。(ITニュースより) 役人の手で集約されては実務をしている者にとって無謀と思われる。まるでロシアの財務諸表みたい。

ちなみに、法人税申告書の電子申告(e-Tax)に添付される決算書はxmlファイルとなっており国税が用意した勘定科目に当てはまらないものでも無理して近似した科目に表示することになっている。私が実際に電子申告(e-Tax)で決算書を作成した限りかなり使い勝手が悪い。会計が分かっている者にとっては予想できたこと。法人税の申告書は課税所得が正しく計算できればよいので多少の科目違いは許されるが、投資家保護の財務諸表は事実を正確に表示するものでなくてはならない。限られた表現ではミスリードされる恐れがある。XBRL(eXtensible Business Reporting Languageは、各種財務報告用の情報を作成・流通・利用できるように標準化されたXMLベースの言語です。国際会計基準審議会(IASB)のXBRLを含めて各国が苦慮しているのは実務上、タクソノミーが実態を表示することができるか検討中であると言うことです。国際会計基準に収斂することを約束した日本は、検討せず導入日程だけが先行している。(「日本はXBRLの先進国」と話す金融庁企業開示課課長補佐の長谷川修氏 金融庁「EDINETの高度化に関する研究会」 金融庁「システムの再構築に18年度19年度の2年間で35億円」 「日本の電子申告は個人・法人含めて利用実績は2.89%(2006年度)と極めて低い」参照)

仮令、日本が先行し自画自賛したとしても株主等の多くの読者が利用しなければ価値はない。パイロット・プログラムを読む限り、EDINETや電子申告のe-Tax同様に業者にまる投げのような印象で、作成者・利用者の使い勝手は置き去りである。(EDINET XBRLのパイロット参加をしている会計士のブログが判り易い)

2007年7月11日ジャストシステムは、xfy XBRL EDINET対応版2008を公表した。2008年2月26日に販売を始める。 (ジャストシステムの製品・サービス 参照)

2008年3月11日、富士通は、財務データを簡単な操作でXBRL形式に変更できるソフトウェア「XWand Tool for EDINET」を発表し、5月1日に販売開始することを公表した。金融庁による義務付けで5000社に及ぶ企業がXBRLに対応する必要があるが、企業の中であせる気持ちはないようだ。なぜなら、多くの企業は財務諸表の作成、提出に専門の代行業者を使っているから。企業は従来どおりに財務データを提出すれば、代行業者がXBRL形式のデータを作成してくれる。そのため、富士通は「XWand Toolの市場は小さい」(富士通 公共ソリューションビジネスグループ ソリューション開発センター センター長 遠藤明氏)とみている。(@IT情報マネジメント 参照)

企業会計基準委員会(ASBJ)が予定している会計基準の開発と改正にソフトがタイムリーに対応しているのであろうか?(中期運営方針 導入時期の様子 参照)

2008年8月22日、有価証券報告書などの電子開示システム「EDINET」におけるXBRL(Extensible Business Reporting Language)の導入が順調に進んでいる。今年度から義務づけられたXBRL形式での財務諸表の提出件数は、8月14日までに2,700件を超えるなど、特に目立った混乱も見られないという。金融庁 総務企画局で開示業務参事官を務める土本一郎氏が、 8月22日に開催された日本オラクルのセミナー「金融サミット 〜ベターレギュレーションによる市場競争力の向上〜」の基調講演中で明らかにした(マイコミジャーナル 参照)。

世界のXBRLの導入状況:「EUではXBRLの導入が遅れている」(2008年3月17日WebCPA)

米国SECの米国会計基準のXBRLのテスト
米国SECもXBRLのテストを行っており、既に、XBRLの任意で登録を受付けている。(Interactive Data Viewers 参照)

SEC’s Interactive Financial Report Viewer・・既にXBRLでSECに任意で登録している会社の財務諸表(年次・四半期)が見られる。改善する余地が多々ある。とりあえず4ヶ月のコメント期間は妥当。2008年1月初旬で65社が293の四半期および年次報告書がXBRLで開示している。かなり少ない。なお、従来どおりのHTMLのファイルも同じサイトから一括で閲覧できるようになっている。注記はHTMLファイルしかないので従来のHTMLファイルは残るのではないか。

役員報酬・・2006年度から約500社の大手企業の役員報酬を開示。併せて、会社の株式時価総額よ総収入を表示している。投資家の便宜に供している。

Beta release 1.0 of the US GAAP Taxonomies and Documentation・・2007年12月5日から2008年4月4日までの4ヶ月間コメントを受付け広く意見を求めている。

SEC Financial Exproler・・XBRLで登録した会社の財務情報から主要な財務分析をチャートにして視覚で判るように表示し、投資家の便宜に供しようとするものをSECは開始した。(2008年2月15日SEC速報 参照) 内容が良いかどうかは別にして、SECの投資家に対する姿勢が窺える。

2005年から3年間、XBRLの開示を任意で行ってきたが、時価総額50億ドル以上(フォーチュン500社相当)の会社について、2008年末頃から(2009年の早い時期)からXBRLの開示を求める、それ以外の米国会計基準の企業には2年の猶予期間をおいてXBRLの開示を求め、国際会計基準(IFRS)での開示する企業には2010年末頃からXBRLでの開示を求める、としている。(2008年5月16日SEC速報 SEC Proposal (Release No. 33-8924)参照)

2008年8月20日、SECは、「すべてのSECの財務情報は2年以内にインターラクティブにする」とし、新データベース『IDEA』(Interactive Data Electronic Applications の略) を公表した。SEC では現行の財務情報検索システム『EDGAR』から IDEA へ徐々に移行していく計画だ。(SEC速報 SmartPro  internet.com 参照)
しかし、米企業の約8割、社内にXBRLの専門家なし(2008年8月20日CnetJapan 参照)。

2008年10月10日を効力発効日として、SECは、ルール12g3-2(b)を改訂します。これにより、外国会社は、@紙によるファイリングは廃止され、A完全な英訳が必要となる情報と書類の範囲が拡大されます。

2008年12月18日SECは、一般流通株式(public float)が50億ドルを超え米国会計基準を適用している国内および外国の大企業約500社について、2009年6月15日以降終了する第一四半期報告書(外国企業はForm10-Qの年次報告書)からインターラクティブな報告を求める、と公表した。早期登録大企業(large accelarated filers)は1年後適用で、その他の会社についても2年以内(2011年12月までに投資家が利用できるよう)に適用する。(SEC速報 ニュース 参照)

2009年1月31日、SECは「財務報告に関するインターラクティブ・データの最終ルール」を公表した。(XBRL Web 参照)
対象会社 適用時期
流通株が50億ドル以上で米国会計基準適用の大企業 国内企業 2009年6月15日以後終了する第一四半期報告書から適用
外国企業 2009年6月15日以後終了する年次報告書(Form20-F)から適用
その他の早期適用大企業(large accelarated filers
で米国会計基準を適用している企業
国内企業 2010年6月15日以後終了する第一四半期報告書から適用
外国企業 2010年6月15日以後終了する年次報告書(Form20-F)から適用
残るすべての上場企業(米国会計基準適用会社、
国際会計基準適用の外国会社)
国内企業 2011年6月15日以後終了する第一四半期報告書から適用
外国企業 2011年6月15日以後終了する年次報告書(Form20-F)から適用
SECに登録の日本企業流通株式時価が50億ドル(約4500億円)の大企業は、2010年3月期からXBRLの財務報告が必要となる。

日本の制度会計

日本の上場会社の制度会計による情報開示は、下記の通り、(T)商法(会社法=法務省所管)(U)証券取引法(金融商品取引法=金融庁所管)にしたがって作成した財務諸表(それぞれ個別・連結の2X2=4つの財務諸表)を公表します。内容の重複は縦割り行政の弊害です。国際化の中で情報開示の充実が今後ますます求められますが、日本では、まずは、会社法と金融商品取引法に関して重複部分を解消することが必要です。欧米では、重複することなく、情報開示は一つで内容が充実しています。日本は重複した情報が多く煩雑で整然としておらずバラバラで読みにくい。(ちなみに、中国でさえ会計は会計法を基礎に一元的基準となっている。)

(T)会社法旧・商法)の計算書類
 株主総会の召集通知書に添付され株主に送付される計算書類(財務諸表)は商法の規定にしたがって作成されたものを株主に送付します商法第232条  総会ヲ招集スルニハ会日ヨリ2週間前ニ各株主ニ対シテ書面ヲ以テ其ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス)(会社法299条437条で類似規定となっている)(「株主に対する情報開示」 参照)

会社法第431条 では、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」として、日本独特なものとなっており国際基準を受け入れられない原因ともなっている。英語への意訳は以下の通り。

参考:会社法第431条の英訳>The accounting of kabushiki kaisha shall be in accord with corporate accounting customs which are generally accepted accounting practices.

会社法第431条は、中小会社を含むすべての株式会社(下記では251万社、国税庁の統計では平成20年6月末現在283万社)に会計基準の適用を求めているものである。上場会社等の金商法の会社及び資本金5億円または負債200億円以上の大会社(会社法第2条)の法定監査会社約1.49万社、つまり、99%以上は中小会社である。会社法が、99%以上の中小会社(多くは会計基準を必要としない⇒"all costs and zero benefits of switching to GAAP"の世界・・下記米国の会計実務を参照)が会計基準に準拠して会社法違反しないことを期待しているとしたら、非現実的で、日本の会社法立法者は実務界を知らないといわざるを得ない。実務が理解できるようになれば、いずれ、ドイツのように中小企業と上場会社(IFRS適用)を分けるようになろう。戦後の「企業会計原則」は僅かなページの内容で中小企業も適用可能な基準であったが、今や、2500ページを超すIFRSを適用することが検討されている時代である。

会社の数 法定監査 % 金融商品取引法
適用会社
会社法
適用会社
@ 上場企業 約3,900社 約3,900社 0.15% 約3,900社 約3,900社
A 金融商品取引法開示企業 約1,000社 約1,000社 0.04% 約1,000社 約1,000社
B 会社法大会社
(資本金5億円以上、負債2百億円以上)
約10,000社 約10,000社 0.40% - 約10,000社
C 上記以外の株式会社(主に中小企業) 約2,500,000社 - - 約2,500,000社
総合計 約2,514,900社 約14,900社 0.59% 約4,900社 約2,514,900社
出展:金融庁調べの資料より  なお別資料があるが正確な統計資料が定期的に金融庁から公表されていない。

2009年9月16日、民主党の鳩山由紀夫代表は、召集された特別国会の首相指名選挙で第93代総理大臣に選出され、同日夜、民主党はじめ社民、国民新の3党による鳩山連立内閣が正式に発足した。民主党の”政策集INDEX2009”によれば「公開会社法」を制定するとあり、「株式を公開している会社等は、投資家、取引先や労働者、地域など様々なステークホルダー(利害関係者)への責任を果たすことが求められます。公開会社に適用される特別法として、情報開示や会計監査などを強化し、健全なガバナンス(企業統治)を担保する公開会社法の制定を検討します」とある。(民主党の公開会社法素案が報道by Japan Law Express、 公開会社法素案関係記事 )民主党になって変化の兆しが出てきた。

2009年3月18日金融庁金融審議会我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」では、早稲田大学大学院法務研究科教授上村達男メンバー が持論の「公開会社法要綱案」を披歴している。氏は、公開会社法要綱案(11案)とは欧米の公開会社法に一気に論理で追いつき、追い越すための提案、としている。(公開会社法要綱案第11条案 概要 参照)

米国の場合は、各州の会社法に従うが一般的には非上場の中小企業の財務諸表は「現金基準か税法基準 cash- or tax basis」である。"中小企業のIFRS"をIASBで纏め上げた米国公認会計士ポール・パクター氏(現:IAS Plus デロイト香港)も欧州や日本の商法や会社法の存在に驚いていた様子が窺える。下記は、氏の文章の一部である。米国人にとっては、会計基準は15千社のSEC登録会社及び僅かの規制企業が準拠すべき基準と考えている。日本は会社法(旧商法)があるため全株式会社を対象としているのとは異なる。

By law, only a relative handful of those are required by law to publish U.S. GAAP financial statements, audited or unaudited - generally the 15,000 SEC registrants plus a few other regulated entities. Sometimes, lenders or contracts impose such requirements. But for the vast majority of American private companies, there is no requirement to prepare U.S. GAAP statements.

日本が模範としたドイツの場合は、中小会社については別途に計算規定を明らかにした

商法(会社法)と国際会計基準との主要な相違点

 会社法(商法)は、証券取引法とは別途計算規定(会計規定)を規定しており、金融商品取引法(証券取引法)と自動的に連動していることはなく、国際基準とも下記のような主要な相違点が見られ、国際的に見た場合、透明性に劣る
 特に、商法は債権者保護を目的としているといいながら、日常の事業活動からどの程度のキャッシュ(現金預金)を創出しているのか、つまり支払能力を明示するキャッシュフロー計算書の開示は求められていない

新会社法・規則等の計算書類等のひな型 (2007年2月 経団連)参照

会社法(商法)の計算書類
及び連結計算書類
国際基準の財務諸表 主要な相違点 検討開始事項
(1)計算書類の体系:
・貸借対照表
・損益計算書
・利益処分案

2005年会社法改正で株主資本等変動
計算書
が加えられ、利益処分又は損失
処理については会社法上規定しないこと
になった。(06年4月以降の法施行以後)


2006年2月7日法務省が公布した、
会社計算規則」第91条個別計算書類
・貸借対照表(会社法435条2項)
・損益計算書(会社法435条2項)
・株主資本等変動計算書
・個別注記表
第93条連結計算書類 参照
(1)財務諸表の体系
・貸借対照表
・損益計算書
・株主持分変動計算書
・キャッシュフロー計算書
・説明的注記


国際会計基準」参照
商法では、株主持分変動計算書、キャッシュ・フロー計算書
などの基本財務諸表はなく、注記が貧弱。
国際基準では、開示すべき事項は「注記」まとめられ、「「附属明細書」という書類は存在しない。
会社法の附属明細書は、開示書類ではなく株主の手許には届かない。

昭和24年(1949年)に設定された企業会計原則に”財務諸表付属明細表”が財務諸表の体系として示されているが、会社法が考える計算書類の体系は、昭和24年当時のままとなっている。そろそろ国際基準に収斂してもよさそうなもの。

2006年5月施行の会社法及び会社計算規則(平成18年法務省令第13号)への対応から「附属明細書」の記載内容が大幅に削減された
日本公認会計士協会「附属明細書のひな型」(草案)(2006年4月17日)参照

商法が配当利益の計算を重視していると主張していることから、キャッシュ・フロー計算書の開示をしないのは論理的矛盾とする国際会計からの視点がある。


(2)開示する計算書類(大企業)
・個別計算書類
連結計算書類(2005年3月期以後)
(2)開示する計算書類:
子会社があれば連結財務諸表のみ
子会社が無ければ個別のみ

つまり、企業の実態を表す一つの
財務諸表を作成開示する。
国際基準では、一企業は一つの財務諸表を開示する。
つまり、子会社があれば連結財務諸表のみを開示する。


一つの企業に複数の財務諸表は投資家(利用者)をミス・リードし惑わすもので情報の垂れ流しで無責任。

債権者保護から個別財務諸表を主張する学者がいるが、必要ならば、ドイツのように連結財務諸表の注記に、新聞に掲載の決算公告程度の要約個別財務諸表の開示をすればよい。必要性を感じないが・・・
2010年6月8日、金融庁・企業会計審議会は、「単体の会計基準のあり方」について」検討を開始した。IFRSのコンバージェンスに関連してASBJで議論が行き詰ってしまったために、個別財務諸表については企業会計審議会で議論することとなった。
議論の推移を見守る必要がある。
ASBJは、ダイナミック・アプローチ(連結先行)としているが、ASBJが会計基準設定の権限を放棄したといえよう。

2010年7月29日、経団連は、「財務報告に関わるわが国開示制度の見直しについて」を公表した。
1.決算短信の簡素化
2.連結財務諸表の開示のみにし、単体は廃止。
3.内部統制監査の簡素化

を提言した。内容はしごく当たり前のことばかり。

金融庁・企業会計審議会は、2010年8月3日、会合を開き「会長発言」を公表した。「金商法における単体情報については引き続き開示すべき」としている。(議論 参照)
(3)単年度計算書類のみ
・当年度のみ表示
配当可能利益の計算及び債権者保護を目的としているため、前年度の数値は意味がない。
2006年5月施行の、会社法施行規則
では、公開会社の事業報告書で「直前
三事業年度の財産及び損益の状況」
の開示することが求められた。
(規則120条1項6号)

過年度事項の提供
会社計算規則161条3項)

参考: 公益法人独立行政法人、「中小企業の会計に関する指針」などすべて日本は単年度表示
(3)比較財務諸表
前年度の数値と比較で表示

国際基準では、前年度と比較した財務諸表の開示を求められる。単年度財務諸表は、国際基準では認められない。
期間比較することで、業績等が良くなったか悪くなったか一目瞭然となり分かり易くなるからである。


会社法施行規則で突然「直前三事業年度の財産及び損益の状況」の開示を求めているが、証券取引法が2期開示で会社法の方が1期多い、まして、日本には比較情報開示の会計基準が存在しない。
会社法、金融商品取引法の整合性が図られていない縦割行政のまま。
(4)注記は貧弱
・作成根拠となった会計基準が注記に記載されない。
(4)注記は重要な財務諸表の一部
国際会計基準に準拠して作成した旨注記に記載する。
国際基準では注記による開示が多く充実している。
日本には、日本の会計基準を纏めた権威あるテキストが存在しない

2006年2月22日金融庁は、会社法の改正に伴い整合性のために、特定信託財産、投資信託財産、特定目的会社投資法人等の計算規則等の改正を行った。計算書類は会社法と同じに、純資産の部、社員資本等変動計算書または投資主資本等変動計算書の作成、、注記表の作成、単年度表示であり、キャッシュフロー計算書の作成は要求されていない。施行は会社法の施行と同時としている。(概要については(別紙1)、具体的な改正内容は(別紙2)〜(別紙38)をそれぞれご参照ください。)
2日遅れの24日金融庁は、、「ストック・オプション等に関する会計基準」等の会計基準の公表並びに上記と同様の理由で、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則、企業内容等の開示に関する内閣府令その他の内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)の公表について」を公表している。

このHPを開設したころ上記国際会計基準との重要な相違を明示したが、その後、2006年5月の施行の会社法は、@株主資本等変動計算書、A注記表、B比較財務諸表の開示等を導入した。なお、会社法は、未だキャッシュ・フロー計算書を認知していないし、半期報告書または四半期報告書を株主に提供することはない。(過去のアーカイブ#1 #2 参照)

(U) 証券取引法(現・金融商品取引法)の財務諸表等有価証券報告書および四半期報告書(投資判断?

 株主総会(通常、決算から3ヶ月以内開催)で利益処分案を含む計算書類(財務諸表)を承認後、つまり、株主総会終了後は個別財務諸表の「利益処分案または損失金処理案」が「利益処分計算書または損失金処理計算書」に変り、連結財務諸表および個別財務諸表を含む有価証券報告書を証券監督局である財務省・財務局(電子開示のEDINETは金融庁)へ提出しなければなりません。金融商品取引法第24条 事業年度終了後3ヶ月以内に「内閣総理大臣」に提出することを要する。)⇒2006年(平成18年)5月1日施行の会社法により、利益処分案は廃止し、株主資本等変動計算書に変更された。有価証券報告書が株主総会後に開示されることは変わっていない。⇒金融商品取引法の投資家の保護の元来の意味黒沼悦郎教授の「金融商品取引法入門」⇒「証券取引の分野では、投資判断の結果を投資家に帰属させる自己責任の原則が妥当し、法は商品の品質(価値)を保証しません。品質を判断するための情報のみを投資家に与えて市場取引により価格を決定することが、資源の効率的配分のために必要だからです。」 SECの投資家保護 金融庁の投資者保護 参照

 この有価証券報告書および四半期報告書は、投資家保護のため「一般投資家向け情報開示」とされますが、

(a)株主総会終了後に開示されますので総会での議決権の行使には役立たず、かつ、(下記(注1)参照)
(b)投資家である株主の手許には届きません

欧米では、株主総会の議決権行使のため株主に提供されますし、事業説明等に「年次報告書(米国ではForm10−K)」を顧客等の取引先に配布しています。日本の金融商品取引法の「有価証券報告書」と会社法の事業報告書と計算書類を1冊の読み物として要領よく纏めたものが「年次報告書(Form10−K)」といえます。日本は、縦割り行政のため、法務省と金融庁とばらばらに規定し、重複した内容や情報開示が複雑となっています。他国に例がない仕組みです。日本では、単価が高いせいもあって有価証券報告書を自社を説明するのに銀行等を除いた取引先等に配布している例は見たことがありません。

四半期報告書は2008年4月以降開始する事業年度から開示されることになったが、原則、連結子会社がある場合は「連結財務諸表」のみの四半期報告で個別財務諸表は不要とされる。年度も連結財務諸表だけにすれば年度と四半期が整合するし欧米同様になるのに・・・

(財務省・関東財務局
有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項について (平成24年3月期版) 」「有価証券届出書等の審査」「有価証券報告書等の受理業務等について」参照  →平成18年9月の半期報告書から企業会計基準委員会が「半期報告書の作成要領」を有料で販売

(c)証券取引所のホームページから有価証券報告書は閲覧できません。日本では株価検索と企業情報である有価証券報告書等が分断され閲覧が容易でない。利用者の利便性が考慮されていない。(「証券取引所から閲覧できない有価証券報告書」参照)

(d)武田薬品工業のように、日本の会計基準で作成した有価証券報告書のほかに、同じ日本の会計基準に準拠したアニュアル・リポート(連結財務諸表・・不要な個別財務諸表はつけない)を作成して読者の利便性に供している会社がある。有価証券報告書では明らかに読者の利便性がないと判断して、利便性の高いアニュアルリポートを別途作成している例と見てよい。米国の上場会社が有価証券報告書に該当するForm10kを取引先等に渡して実務に利用されているケースが見られるが、日本の上場会社で、有価証券報告書が取引先等に供して実務で利用されているケースは見たことがない。日本の企業がIFRSを適用しても同じことが言える。例えば、HOYAのようにIFRS適用しても有価証券報告書は実務では利用されず、別途アニュアル・リポートを作成して実務で利用することになる。

⇒(注1):2009年10月6日有価証券報告書等の定時株主総会前の提出を可能とする内閣府令(案)を金融庁が公表。(有価証券報告書の総会前提出について,2010年2月3日)
(3)有価証券報告書等の定時株主総会前の提出を可能とするため、有価証券報告書の添付書類とされている、定時株主総会において承認を受けた、又は報告した計算書類・事業報告書に加えて、定時株主総会において承認を受け、又は報告しようとする計算書類・事業報告書を追加することとします。また、有価証券報告書等を定時株主総会前に提出した場合において、その決議事項が修正・否決されたときは、臨時報告書においてその旨及び内容の記載を求めることとします第17条1項1号ロ、第19条2項9号の2)企業内容等の開示に関する内閣府令 参照

現場の一声・・2010年05月20日「有報の早期提出」、2010年05月31日「株主総会議長セミナー」by ゆっきーお嬢 参照

2010年2月12日、金融庁は、議決権行使の内容を義務つける規則改正案を公表した。この開示を臨時報告書で求めることで株主総会後の提出を求めるようになった。金融庁も多少考えるようになったようだ。
(4)議決権行使結果について
臨時報告書において、株主総会における議案ごとの議決権行使の結果(得票数等)を開示。

会計基準と有価証券報告書の財務諸表等との関係:

有価証券報告書の財務諸表は、財務諸表等規則および連結財務諸表規則に従って作成する。
財務諸表等規則第1条2項および連結財務諸表規則第1条2項には、「企業会計審議会により公表された企業会計の基準は、一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に該当するものとする」として「企業会計基準委員会の会計基準」はどこにも規定していない。驚かされるのは、財務諸表等規則第1条3項には、金融庁長官が会計基準を設定できる規定があることである。金融庁長官に会計基準の設定権限を留保しておきたいとの強い意志が透けて見える。

日本には、継続企業の前提に関する会計基準(企業会計審議会及び企業会計基準委員会の)はない。金融庁の内閣府令である財務諸表等規則第8条の27(継続企業の前提に関する注記・・平成14年10月18日付け改正で加えられた)により開示を求めている。因みに、国際会計基準(IAS)1号「財務諸表の表示」に開示を求めているものである。会社法では、会社計算規則第100条により開示を求めている。

財務諸表等規則第1条2項は、企業会計基準設定主体を旧大蔵省の企業会計審議会から民間に移す議論が沸騰する直前の1998年(平成10年)11月24日付け改正で抵抗していた当時の大蔵省が挿入したもの。2001年(平成13年)7月26日、金融庁所管の公益法人として企業会計基準委員会が創設されたが金融庁は企業会計基準委員会の会計基準を会計基準とする旨の規定改正はしていない。

2009年6月30日金融庁は、初めて国際会計基準の適用を認めるとともに内閣府令を改正し企業会計基準委員会も会計基準設定主体として認めた

企業会計基準委員会
(会計基準設定・・2001年7月以降)(注3)
金融庁
内閣府令を作成
注1

企業内容開示に関する情報
・省令・内閣府令・ガイドライン
有価証券報告書
金融庁EDINET注4)に開示
今後は民間の企業会計基準委員会2001年7月民間の会計基準設定主体を創設)が会計基準の開発を行うことになっています(企業会計基準委員会企業会計基準等は、金融庁からの補助金がありますが、何故か会員以外には公開していませんし、出版物は「国際会計基準一式(£60.00)」より超高価です。ちなみに米国会計基準書(FASBの基準書)は無償で広く公開しています)。
2009年1月から企業会計基準委員会(ASBJ)も無料公開とするとしている。

会計基準設定事例:
貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準
貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針

債券の保有区分の変更に関する当面の取り扱い実務対応報告第26号(2008年12月5日)


企業会計基準等印刷物

有価証券報告書作成上の留意点」by財務会計基準機構


金融庁が委員会にオブザーバーとして出席し、ASBJの決定した基準等を受けて連結財務諸表等の規則を改正すると発言している。(Webcast 参照)
法令;
財務諸表規則連結財務諸表規則
企業内容等の開示に関する内閣府令
財務報告の内部統制に関する内閣府令

財務諸表等規則等に係る事務ガイドライン
(企業会計基準委員会の公表した各会計基準
の取扱いについて)
」によって規範性が与えられる?


財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則財務諸表規則
個別財務諸表の様式(様式第二号)注2
(世界に類を見ない日本特有の役所の様式)

連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則連結財務諸表規則
連結財務諸表の様式(様式第四号)注2
(世界に類を見ない日本特有の役所の様式)

財務諸表等の監査証明に関する内閣府令

企業内容等の開示に関する内閣府令
(企業内容等の開示に関する内閣府令・様式

四半期、内部統制報告書、監査証明など(案)  結果

四半期財務諸表等規則ガイドライン(案)
四半期連結財務諸表規則ガイドライン(案)
内部統制府令ガイドライン(案)

(参考:「監査小六法(平成20年版)」)

EDINETに関するパブリックコメント等2008年3月
英文開示の対象拡大に関する内閣府令2008年5月30日

改正金融商品、工事契約および資産除去債務の会計基準の公表に伴う内閣府令(案)(2008年6月12日)

XBRLのタクソノミで様式・科目等で府令の改正

2008年7月31日改正内閣府令 四半期報告書等 
2008年8月7日、パブリックコメント回答・新旧比較
2008年8月27日、企業内容開示の内閣府令(案)

債券の保有目的区分の変更に関する当面の取扱い(実務対応報告第29号)」に対応する改正内閣府令(2008年12月12日)
同改正ガイドライン(案)2008年12月12日

2009年3月24日企業結合、セグメント情報、賃貸不動産の時価情報に関する規則改正
2009年4月20日「継続企業の前提に関する注記」財務諸表
規則の改正・・会計基準はない、連結財表規則もない

2009年6月30日IFRS適用可能となる内閣府令(案)
2009年10月6日有価証券報告書等の定時株主総会前の提出を可能とする内閣府令(案) 
2009年12月1日IFRS適用に関する改正府令(案)等
2009年12月11日IFRS適用に関する改正府令等施行
パブリックコメントの概要、金融庁の考え方
IFRS適用初年度の連結財務諸表の開示例
2009年12月11日
IFRS適用に関する会社計算規則等

2010年1月20日、IFRS9号等に関する指定IFRSの追加案
2010年2月12日、役員報酬1億以上の開示と、財務・会計の知見を有する監査役・監査委員の有無(案)
2010年3月3日、IFRS9号等に関する指定IFRSの追加
2010年3月31日、コーポレート・ガバナンスの充実、役員報酬の開示等の改正
2010年8月4日、会計上の変更、誤謬の訂正等の府令(案)
2011年8月30日、米国基準の適用期限撤廃案等
米国証券取引委員会(SEC)に米国式連結財務諸表を登録している日本企業が、米国会計基準を使用できるものとする規定について、平成28年3月31日までとされていた使用期限が撤廃されました
2012年3月23日、指定国際会計基準等に係る一部改定案
2012年5月11日、指定国際会計基準に係る一部改定
2012年9月21日、退職給付、純資産、資産除去債務、包括利益の会計基準の改正に係る規定改正
2012年11月21日、指定国際会計基準の改定IFRS10号連結財務諸表で「投資企業」の投資の非連結で、公正価値評価の早期適用可)
2014年1月14日、単体開示の簡素化 資料3

金融商品取引法第24
第二十四条  有価証券の発行者である会社は、〜、内閣府令で定めるところにより、事業年度ごとに、当該会社の商号、当該会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項その他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書(以下「有価証券報告書」という。)を、当該事業年度経過後三月以内に、内閣総理大臣に提出しなければならない


上場企業等は、有価証券報告書の財務諸表等を作成、財務局の審査を経て(証券監査官)、財務局へ提出
 「有価証券報告書の作成・提出」

但し、財務局は、突然「平成22年3月31日以降の有価証券報告書は現時点において調査は実施しておりません。今後の予定については、決定次第、お知らせします」とのこと。
(財務局から有価証券報告書の印刷を行っている」としています。(株)プロネクサス(旧・亜細亜証券印刷)と宝印刷定期的天下っている。・・財務省「再就職状況の公表について参照)

「平成19年3月期に係る有価証券報告書の重点審査結果について」by金融庁

有価証券報告書作成上の留意点」by財務会計基準機構


上場会社の開示資料ツールは、プロネクサスか宝印刷のみ、両社には元財務官僚などを役員として受け入れており、すっかり利権化しています。

宝印刷かプロネクサスかの確認方法(招集通知編)
EDINET編 
東芝は行間が広く宝印刷で作成していることが分かる。(EDINETで検証


西武鉄道事件で金融庁は、「『ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応について』を公表し」2005 年7 月から、虚偽記載に係る検査・報告徴求権限を関東財務局から証券取引等監視委員会に移管することとしている。(大和総研
2001年7月以前の会計基準:

証券取引法では、「企業会計原則」を初めとして「大蔵省企業会計審議会が各種意見書(会計基準)」を設定してきましたが、2000年7月金融庁(「金融庁設置法」「金融庁組織令」参照)が発足し企業会計審議会(「企業会計審議会令」 審議会参照
同庁へ移管されました。しかし、2003年10月31日公表の「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」を最後に官による会計基準設定の使命は終わりました(監査基準は企業会計審議会に残されたまま)。

国際会計基準1号「財務諸表の表示」に融合しない規則・内閣府令となっている。制度的に国際基準との融合を妨げているといえる。

特に、国際基準では「(e)会計方針及び説明的注記(Accounting policies and explanatory notes)」を財務諸表の一部としているが金融庁の内閣府令(財務諸表規則等)には「注記」に関する事項は脆弱。とても国際基準に同等といえるものではない。

なお、2006年5月施行の会社法および会社計算規則」(第91条個別計算書類、93条連結計算書類)は、「個別注記表」を計算書類の一部とし国際基準に合せている。

会社法の「附属明細書」(国際基準にはない)も大幅に削減したが、内閣府令の「附属明細表」は不変。日本公認会計士協会「附属明細書のひな型」(草案)(2006年4月17日)参照

2008年10月23日企業会計審議会の企画調整部会(資料 参照)は、日本企業への国際会計基準(IFRS)の導入について議論を開始した。資料の「連結先行について」は、連結に関連する現行規則が纏められている。
金融商品取引法は、投資家保護といいながら株主に提供されず、内閣総理大臣に提出とされる不思議な仕組みの有価証券報告書
実態は、多くの株主には無縁であろう。

EDINETで、国際基準に求められていない「附属明細表」を閲覧可能でも、各社の財務諸表の「注記」を閲覧することはかなり困難。

上場企業等の有価証券報告書の印刷は、株式会社プロネクサス(旧・亜細亜証券印刷)と宝印刷両社でほぼ寡占状態です。(両社の四半期業績 参照) その背景には、旧・大蔵省の有価証券報告書の審査をしていた人材が両社に天下って有価証券報告書の作成の指導をしています。かつては、印刷会社名が有価証券報告書に印刷されていましたが、現在は、削除されています。こうした仕組みが日本特有の有価証券報告書を生み出しています。

プロネクサス、宝印刷の元社員のインサイダー取引
財務省「再就職状況の公表について参照
総務省・国家公務員法第106条の25第1項等の規定に基づく国家公務員の再就職状況の報告に変更

2008年5月、金融庁は、この「ベター・レギュレーション」をこれからの金融行政における大きな課題として位置付けています」とのことです。

金融庁の自己評価
では「我が国会計基準は、企業会計審議会等において、ここ数年精力的に改訂がなされ、諸外国に比べても遜色のない高品質なものとなってきています」としていますが、上記の制度の中で金融庁が実質会計基準を設定している限り国際基準には欧州・カナダ・韓国・中国のように短期間では一致しない(財務諸表規則等の内閣府令がIAS1号の規定に基本的に一致しないのが原因)。日本は金融庁金融庁設置法により、会計の制度設計を行い、企業内容開示を行う有価証券報告書は財務局の審査を経て株主ではなく内閣総理大臣へ提出をし金融庁のEDINETで開示する「官による官のための開示制度」となっている。旧大蔵省の役人が、戦後間もない頃、表示様式を決め金融庁が引継いでいる。一度決めたら変えない役人の表示様式は、常に改善して意義を高めようとする専門家の設定したIAS1号の表示様式とは一致するはずがない。仕組み自体が国際化を阻んでいるといえる。しかし、金融庁は審議会の議を経ずに突如として「米国式連結財務諸表を認める」こともある。要は、国際的・専門的な認識のズレの問題。最近では、金融庁は行政処分(課徴金や業務停止処分等)ばかりしていることから、「金融処分庁」という呼び名が定着し恐れられている。

金融庁の幹部の天下り先は変化しつつあり、最近は日本証券業協会が多い。(金融庁の「再就職状況月刊テーミス」 参照)
つい最近までは「公認会計士協会と6大監査法人はすべて大蔵省(現・金融庁)OBの天下りを受け入れている」のも事実であった。(大阪市立大学秦彰宏氏著日本における会計士監査の課題」21ページ”会計士と大蔵省の関係”より(2000年1月)) 失った信頼を取り戻すのは並大抵ではない。

日本公認会計士協会の役員には金融庁の天下りはない旨の記載がある
が、民主党の要請で衆議院調査局が行った天下りに関する予備調査によると金融庁総務企画局企業開示課の担当所管官庁から日本公認会計士協会へ10人の常勤者(常勤者総数の5.6%)が天下っているとのこと。金融庁の「再就職状況」には掲載されないようにしているのか?因みに会計基準の設定をするASBJの母体(財)財務会計基準機構企画部長金融庁から2004年7月31日就任。


注1):会計基準の設定・改変ごとに金融商品取引法第24の有価証券報告書を作成するために、金融庁は上記のように関連内閣府令の改正を行う。内容は会計基準と重複。開示様式は画一的で紋切り型・硬直的な役所へ提出の文書で、国際基準が求めている、読者に読み易い情報開示(ディスクロージャー)とはいえない。注記がどこに開示されているのか探すのが容易でなく、さりとて企業が見易くする工夫はできない。これは、戦後まもなくの大蔵省時代から約60年間同じ仕組み。こうした構造では、洗練された国際基準への収斂や、機動的な会計基準の整備は期待できない。日本が立ち遅れた大きな要因である。金融商品取引法第24条が国際会計基準の導入を阻んでいると言える。

2006年3月13日
金融庁は、証券取引法を改正し「金融商品取引法」を国会に提出し、6月7日成立した。その中に、財務報告に関する内部統制の報告書の提出(金融商品取引法第24条の4の4、第193条の2の第2項関係)、内部統制の監査報告書の提出(金融商品取引法第24条の4の4、第193条の2の第2項関係)、四半期報告書の義務化(金融商品取引法第24条の4の7関係)が、2008年度から導入される。
概要図 概要文 要綱案 法律案これに伴い内閣府例が作成されよう。

2006年4月25日金融庁は、上記内閣府令草案に寄せられたコメントに関し「主なコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」を公表した。

注2):国際会計基準(IAS)1号「財務諸表の表示」と有価証券報告書の内閣府令による表示様式は異なり日本の制度とは融合しない。
証券取引法の企業内容開示制度が創設された昭和23年(1948年)当時から、当初の当期業績主義から商法と利益を一致させるために包括主義に変わりはしたものの、基本的な表示方法は約60年間変わっていない。特に、制度上古い個別財務諸表(簿記の世界に近く、会計に進化していない部分が多い)は改善されないままとなっていることから国際基準の表示とはかなりかけ離れたものとなっている。例えば、たな卸資産や売上原価の表示などである。
たな卸資産は会計基準が存在しないことも原因か・・ 古い表示方法のため、内部統制が整備されている場合の表示方法がない。なお、「廃止事業」などの新たな国際基準を導入できる表示方法ではない。

事例として、下記の財務諸表を見ていただきたい。
有価証券報告書の表示 
国際会計基準による表示


注3):企業会計基準委員会の法的位置づけは不明・不透明である(「2004年11月29日企業会計審議会での西川ASBJ副委員長および池田金融庁企業開示参事官の発言(28ページ〜29ページ参照)」より)。 ドイツ会計基準委員会 (DRSC)のように法務省との契約により法的位置づけを明確にするのも一つの方法であろう。
米国では、米国証券取引委員会(SEC)の会計連続通牒(Accounting Series Release, ASR)150号で、明文をもって民間(private sector)の財務会計基準審議会(FASB)が設定した会計基準を承認(endorse)している(SEC委員長のスピーチより)。


注4):EDINETは企業ごとにリンクできないため、東京証券取引所等のサイトから投資家が有価証券等を閲覧できない。先進国の中では唯一証券取引所から上場会社の財務情報が直接閲覧できない国となっている(「主要国の証券取引所の上場会社の財務諸表の閲覧」参照)。

2008年(平成20年)4月からXBRL(eXtensible Business Reporting Language)の新システムを稼動し、XBRL形式による提出へ移行することを計画している。それに先立って、EDINETパイロット・プログラムへの参加を募って実証実験を行う。パイロット・プログラムで使用する書類は、原則として、既にEDINETに提出済みのもので且つ、平成18年5月1日以後終了の事業年度及び連結会計年度並びに中間会計期間及び中間連結会計期間に係るものとします。

内容は、現行の有価証券報告書の内財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主持分等変動計算書、キャッシュフロー計算書で注記を除く)を忠実にXBRLの形式に置き換えるものである。(金融庁「EDINETパイロット・プログラム参加申込み方法について」「EDINETパイロット・プログラムに関する資料の公開及び説明会の開催について」参照)

会計が「企業実態(substance)」を表現しようとするのに、EDINETのタクソノミが一律の「表示様式(Form)」を求めることで実態を表さない表示で「虚偽記載」になる恐れが生ずる。慎重な検討が望まれるが、日本は、世界に先駆けて強制適用する。

なお、米国SECでは国際会計基準と米国会計基準の収斂を進行しつつ、XBRL化を試行しているが、成功しているとは到底いえない。(SECの「任意でXBRL形式で提出している会社」「ADOBE SYSTEMS INC の年次報告書Form10-K」参照)


監査報告書の日付と株主総会との関係D
ニューヨーク
証券取引所
に上場の
日本企業
決算日 SEC登録の決算書の
監査報告書の日付

B
SECへ決算書
Form20−F
の登録日
株主総会
開催日
有価証券報告書の
監査報告書の日付
A
有価証券報告書の
EDINETの登録日
@
本田技研 3/31/2005 4/26/2005 7/11/2005 6/23/2005 6/23/2005 6/23/2005
キャノン 12/31/2004 1/27/2005 6/16/2005 3/25/2005 3/30/2005 3/30/2005
ソニー C 3/31/2005 5/27/2005 6/23/2005 6/22/2005 6/22/2005 6/23/2005
NTTドコモ 3/31/2005 6/21/2005 6/27/2005 6/21/2005 6/21/2005 6/22/2005
@有価証券報告書は、株主総会終了後、EDINETへ提出されます。
2009年12月11日内閣府令が改正され、12月以降終了する年度から株主総会前にEDINETへ提出も可能となったが、2010年3月期に株主総会前に提出する会社は、わずか10社(0.4%)であった。2012年3月期で20社が予定されているそうだ。その中には総会前1日と言うのがあり、あまり意味ないものもあるそうだ。

なお、3月31日改正の内閣府令による役員報酬1億円以上の開示について、2010年3月期の決算で、資生堂役員報酬1億円以上の開示を会社法の事業報告書に開示したことで、株主総会前に開示したとマスコミが取り上げている

A有価証券報告書に含まれる財務諸表の個別・連結ともに監査報告書の日付は株主総会後となる。EDINETから見られますが、米国のように株主に送付されてくることはありません。
改定監査基準(2003年3月期から適用)では、監査報告書の日付は「監査人が自らの責任において監査が終了したと判断したときに監査報告書を作成することが基本であると考えられる。しかし、これは、財務諸表の開示制度上あるいは監査の終了をどう捉えるか等の問題であり、改訂基準においては特定の時点を示すことはしなかった」とある。会社法(商法)は監査終了日で報告書が作成され、有価証券報告書が株主総会終了後に開示される世界に例を見ない日本の仕組み。法務省と金融庁の縦割り行政の弊害。一般には理解し難いものがある。

BSEC登録会社で米国会計基準の連結財務諸表では、監査報告者の日付は意見が形成された監査最終日です。


C商法計算書類等は、ニューヨーク証券取引所に上場しているソニーの場合、米国会計基準による連結財務諸表および商法による
単独財務諸表を作成し2005年5月12日付けの連結及び単独財務諸表の監査報告書を株主総会通知書に添付しています。
商法の連結計算書類は2005年3月期が最初です。制度上、日本の株主に連結財務諸表が届くのは史上初めてのことです。

D日本公認会計士協会の監査・保証実務委員会報告第75号「監査報告書作成に関する実務指針」に記載の「監査報告書の日付は、
株主総会後の日付にすることとする」旨の規定を削除したことにより、監査報告書の日付は監査終了の日となった。(2008年4月4日改正)

九州親和ホールディングスの2007年3月期の監査報告書のケース
会社法の
監査報告書
株主総会 EDINET
有価証券報告書の
監査報告書
東証
管理ポスト割当
2007年5月11日付け 2007年6月28日 株主総会終了後提出 6月28日
無限定適正意見 意見変更⇒ 意見不表明
平成 19 年6月 28 日付けで、当社の証券取引法監査を依頼している監査法人から、当社の平成 18 年4月1日から平成 19 年3月 31 日までの第5期事業年度の有価証券報告書の「経理の状況」に関する監査について、意見を表明しない旨の監査報告書が、当社に提出されました。

2009年05月21日日本公認会計士協会は、 はじめて「上場会社のコーポレート・ガバナンスとディスクロージャー制度のあり方に関する提言 −上場会社の財務情報の信頼性向上のために−」を公表し、会社法と金融商品取引法の財務諸表と監査を統合する提言をまとめた。もっと解り易くシンプルな提言でよい。遅すぎる提言であるがないよりましということか・・

2014年7月企業情報開示等をめぐる国際動向」by経済産業政策局 企業会計室・・調査が遅すぎる
   3.株主総会実務に関する国際比較 (総会開催スケジュール)、 (議決権行使の基準日)、招集通知の発送のタイミング等の国際比較

証券の発行と売り出しに関する目論見書について
我が国の場合、投資家保護のための弁護士が関与していない

ロンドン証券取引所など海外で株式・社債等の証券を発行する場合、目論見書prospectus)を作成する。目論見書には、最近の監査済み財務諸表と直近の四半期報告書(非監査)を開示して引受人(購入者)の投資判断に資する情報を盛り込む。

発行の2〜3週間前に、目論見書の草案(Draft)を作成し、幹事証券会社、幹事証券会社の弁護士、発行会社、発行会社の弁護士、財務諸表の監査人である公認会計士が一同に会しミーティング(全体会議Due Diligence Meeting)を行う。幹事証券会社の弁護士から口火が切られる。投資家に情報開示すべきと考えられる事項を提示され、会社側弁護士がこれに応える。必要な場合は、会計士から開示方法が提案される。会議の結果、加筆・訂正等が決まり、このミーティングが終了してから、幹事証券会社が草案を英国などの印刷所で加筆・修正したものを関係者全員に回付(ファックスやEmailで)して再度チェックして完成させる。これが、2〜3回繰り返される。

私の会計士として関与した経験では、関与される弁護士は、いわゆる証券弁護士securities attorney)で証券法・証券取引法・会社法・会計知識及び証券発行業務の実務経験豊富な人たちでポイントを熟知している人たちが多くミーティングはスムースに行われる。いわゆる、投資家の保護と会社の保護を弁護士が補完していると言えよう。株式を上場する企業は資金調達に株式等の証券を発行するので、上場準備段階から弁護士がチームに加わるのが不可欠となっている。(「証券ローヤーはどんな仕事をしているか」「グローバル化と弁護士業務」参照)

米国では、証券売り出し・募集の時、1933年証券法第11条のデューディリジェンスの抗弁("due diligence" defense)のため弁護士や会計士が登録届出書(目論見書)のディスクロージャーに関与する。(「目論見書規制に関する一考察by東京大学大学院法学政治学研究科修士課程芳谷剛伸・・日米の目論見書規制を解説)

デューデリジェンス(Due Diligence)
この英語を直訳すると「不断の努力」「相当の入念さ」といった意味になります。この言葉はもともと米国において証券発行時の情報が証券法の開示基準に適合するか否かを弁護士が確認する業務のことを言っていました。現在では不動産取引、M&A、プロジェクト・ファイナンス等を行う場合に、詳細で多角的な調査を行うことをデューデリジェンスといいます。「証券発行時の引受証券会社のデューディリジェンス」参照】

一般に、発行会社の弁護士は、証券取引規制の下で提出される開示書類の作成に関与してきている。これは、流通市場での認証および発行市場での認証に共通していえることである。今日、アメリカでは、特に流通市場での認証の不完全性との関係で、当該市場における弁護士のゲートキーパーの可能性およびその責任の必要性が強く認識されることとなった」22ページより(「証券取引法の視点からのコーポレートガバナンス」by 野田耕志上智大学法学部助教授2004 8 月より)

なお、200ページくらいの目論見書を短期間に適法・正確に作成する必要から、パラリーガルparalegal)と呼ばれる法律事務専門職が証券弁護士の補助として作成・チェックに加わる。

一方、日本の株式等の証券発行に伴う目論見書に弁護士が関与して作成することはない新株式発行届出書等は、財務局の審査を受け届け出た日本企業の「有価証券届出書」(EDINET 参照)に弁護士事務所の記載が無いことで分かる。日本でも、企業に関わる法律関係は複雑(インサイダー取引、合併・買収、三角合併、連結・親子会社関係、規制業種であれば業界規制、環境問題、特許侵害ほか)であり、投資家の保護の見地から弁護士の関与が望まれる。なお、外国会社に代理人として弁護士事務所が記載されているのは海外の証券発行実務だからです。EDINET・・最近日本で上場した米シティ・グループでは弁護士事務所が代理人となっている 参照)

日本に足らないのは、弁護士の数と弁護士の関与実務であり、法律のみを幾ら手をつけても、法律を機能させる法曹人が実務に関与しなくては法律は定着しない。これを専門家のインフラストラクチャー(Professional Infrastructure)という。日本は、官と学者ばかりで、実務を担う会計士も含めて、この専門家インフラストラクチャーが脆弱なのです。

2010年5月12日
エフオーアイ(東証マザー上場)FOI上場半年で粉飾疑惑で強制調査が入り、上場に際し100億円の架空売上の計上を認め、18日は東証上場廃止発表、21日には東京地裁へ自己破産へを申請した。上場時の証券発行の目論見書に米国同様にデューデリジェンス(Due Diligence)をしていれば有能な弁護士が過大売掛金について追及していたものと思われる。

(
参考:日本の「大手法律事務所の弁護士の数2006年」、「企業内弁護士2006年2007年←野村證券に弁護士がいないのが日本の証券界を象徴している・・野村證券が法令遵守に問題発生」、「行政庁内弁護士2006年金融庁が急激に弁護士を増やしている五味金融庁元長官法律事務所に再就職現在日本全国に弁護士は約21,100人います」「法曹人口国際比較 2000年頃」「弁護士(法曹)の国際化への対応強化についてby日弁連(2003年6月5日)」 参考値:医師の数27万人で増加中  参照)

2007年11月16日金融庁金融研究研修センターは「
金融専門人材に関する研究会」を立ち上げ「我が国金融システムを担う専門人材に必要とされる知識及び資質についての幅広い検討を行うため」としていますが、学者と官僚で何が出てくるのか注目。(渡辺内閣府特命担当大臣記者会見)

金融庁金融研究研修センター(センター長:吉野直行 慶應義塾大学教授)では、2008年4月30日、「金融専門人材について(基本コンセプト)」を公表し、金融士(仮称)の創設を提言している。金融庁ニュース
世界に類を見ない新たな資格を創設するそうだ。外資系では役に立たないこと請合。

日本の証券発行に関して:
目論見書(prospectus 又は offering circular)とは、有価証券(新株又は社債)の募集あるいは売出しにあたって、その購入の申込を勧誘する際等に投資家に交付する文書で、当該有価証券の発行者や発行する有価証券などの内容を説明したものをいう(証券取引法第5条)。

財務大臣への届出を要する起債の場合には、発行者は必ず目論見書を作成することが義務づけられている(証券取引法第13条)。

目論見書を交付する目的は、投資家の投資判断の基準となる情報を提供することにある。
一般に、目論見書には、発行者名、事業内容、資本構成、財務諸表、手取金の使途などの発行者に関する情報、発行総額、発行価格、利率、払込日、満期日などの発行する有価証券に関する情報、および引受人名、引受額、手数料などの引受に関する情報が記載されている。

届出の効力が発生する前に目論見書を使用して有価証券の取得の申込を勧誘する場合には、内容が未確定の旨を表示して、仮目論見書を交付する。

なお、投資判断の基礎資料となる目論見書の重要な事項について虚偽の表示がある、又は重要な事実の表示が欠けているときは、発行者及び当該目論見書を使用して有価証券を取得させた者は、当該有価証券の募集又は売出しに応じて当該有価証券を取得した者に対し、損害賠償責任を負う(証券取引法第17条、第18条)。
ただし、目論見書の使用者が、相当な注意を用いたにもかかわらず、誤りを知ることができなかったことを証明したときはその限りではない。


目論見書に記載の財務情報については、幹事証券会社から監査人へコンフォート・レターcomfort letter)の作成を要請される。

FOI上場半年で粉飾疑惑で強制調査(2010年5月12日)参照

(V) 法人税等の確定申告
 商法の計算書類を基礎に法人税(法人所得税)の確定申告を作成し、通常決算から3ヶ月以内に、税務当局(国及び地方政府)に申告・納付します。
法人税法第74条  内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から2月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき〜申告書を提出しなければならない。」⇒いわゆる確定決算主義といわれる条文、「第75条の2により、会計監査人の監査を受けなければならないことその他これに類する理由により決算が確定しない場合、確定申告書の提出期限の延長の特例があり1ヶ月間延長できる。」

つまり、下記の通り商法と証券取引法の二重開示制度なのである。
(会計の二重開示の問題は、
二重の監査報告書の問題でもあり、商法および証券取引法にそれぞれ会計監査の規定が存在し、会計監査人はニ種類の監査報告書を作成しなければならない。)

世界が共通の会計基準へ移行しつつあるなか、日本だけが、商法と証券取引法の二重開示がなぜ必要なのか、株主総会終了後に開示され、投資家である株主に送付されない有価証券報告書は投資家保護と言えるのか。これらの疑問は、同法を所管する法務省と金融庁に解決して貰うしかないのである。

日本の会計制度--商法と証券取引法の二重開示制度の事例
連結・単独財務諸表を会社法・金融商品取引法ともに重複開示
会社名 商法の計算書類法務省所管 証券取引法金融庁所管
株主総会召集通知書に添付し株主に送付 総会後開示、株主に送付されない
株主権の行使に役立たない
NTT Do Co Mo 定時株主総会招集ご通知添付書類 有価証券報告書等
SONY Corp 株主総会召集通知書 有価証券報告書等
Nissan Motor Co., Ltd. Business Report "Yukashoken−Houkokusho"
NTTドコモの場合、規則改正により平成14年度(2003年3月期)から米国基準による連結財務諸表で開示しています。
加えて、商法上の連結計算書類も早期に開示しています。

具体的な他社事例は、各社ホームページで公開しています。下記の検索エンジンをクリックしてみてください。
「株主総会」をキーワードとして検索 ⇒ ⇒  Google    Fresheye 

金融庁が行っている個別企業の有価証券報告書等の電子情報開示制度EDINETは、個別企業には直接リンクできません。
EDINETへアクセスしてその都度企業検索を行って見る必要があります。利便性に欠ける日本だけのシステムです。
下記に、ダイムラー・クライスラー社を例に、米国SECのEDGARデータベース、ドイツ証券取引所のシステムに直接リンクしました。

2010年6月15日日本公認会計士協会は、租税調査会研究報告第20号「会計基準のコンバージェンスと確定決算主義」を公表した。確定決算主義の歴史的背景、国際比較など詳しく述べ労作である。結論では、「確定決算主義の放棄を議論するのは時期尚早と考えるが、上述の逆基準性などの問題から、少なくとも損金経理要件の見直しが必要である」としている。しかし、経済産業省金融庁企業会計審議会で検討が始まってしまい残念である。会計の専門家として後出しジャンケンではなく議論が始まる前に公表すべきであった。

会計基準の設定主体
● 証券取引法(金融商品取引法)では、「大蔵省企業会計審議会が各種意見書(会計基準)」を設定してきましたが、2000年7月金融庁(「金融庁設置法」参照)が発足し企業会計審議会は旧大蔵省から同庁へ移管されました。しかし、2003年10月31日公表の「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」を最後に国による会計基準設定の使命は終わりました(監査基準は企業会計審議会に残されたまま)。今後は民間の企業会計基準委員会2001年7月創設)が会計基準の開発を行うことになっています。(2002年2月から、開発された「企業会計基準等」 「有価証券報告書における「事業等のリスク」等の開示に関する検討について(中間報告)―抜粋―」 参照。) 

(企業会計基準委員会企業会計基準等は、金融庁からの補助金がありますが、何故か会員以外には公開していませんし、出版物は「国際会計基準一式(£60.00)」より超高価です。ちなみに米国会計基準」は無償で公開しています。) 「弁護士さんの怒り」参照

有価証券報告書の財務諸表は、財務諸表規則および連結財務諸表規則に従って作成する。
財務諸表規則第1条2項および連結財務諸表規則第1条2項には、「企業会計審議会により公表された企業会計の基準は、一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に該当するものとする」として「企業会計基準委員会の会計基準」はどこにも規定していない。驚かされるのは、財務諸表規則第1条3項には、金融庁長官が会計基準を設定できる規定があることである。


企業会計基準委員会
の法的位置づけは不明・不透明
であるが(「2004年11月29日企業会計審議会での西川ASBJ副委員長(現委員長)および池田金融庁企業開示参事官の発言」より)、金融庁では、開発された会計基準に従って財務諸表規則、連結財務諸表規則などの規則を作成し、企業はその規則に従って有価証券報告書(株主総会後開示され、株主総会で株主権の行使に役立たない、しかも、株主の手許に届かない)を作成します。

審議会とは、中央省庁の官僚たちの手で企画・立案・運営されることから、官僚の隠れ蓑と称されています。つまり、審議会の委員の人選、議題の設定、提出資料の作成などすべて所管官庁に任されている以上、そこに自分たちが実現したい政策立案のため、恣意的な判断が入り込む余地が生ずる仕組みです。建前は国民の代表を選ぶとしているが答申をまとめるのにサポートしてくれる委員が過半数になるように審議会を構成するのが状態である。(前税制調査会会長石弘光教授「政策決定過程改革の方向」日経2006年12月18日より)

なお、企業会計審議会の場合、金融庁が、会計・監査に関して金融庁設置法」「金融庁組織令」に従って、企画・立案・運営されているものです。2001年7月26日、金融庁所管の公益法人として、財団法人 財務会計基準機構(FASF)の設立認可を受け、企業会計基準委員会(ASB)を8月7日正式に発足した。企業会計基準委員会の委員長は、企業会計審議会第一部会会長兼務(05年1月までですし、企業会計基準委員会の各委員会には、金融庁の職員がオブザーバーで出席しているそうですし、企画部長金融庁から2004年7月31日から就任しています。


2007年4月企業会計基準委員会は、新委員長に副委員長の西川氏を委員長に昇格した。新委員長の挨拶によると、会計基準委員会は「研究体制を整備〜」としており、研究機関の位置づけのようである。いつまで研究するつもりであろうか? なお、金融庁の企画官が「EUの会計基準の同等性に関し期限に間に合わせる」とフィナンシャル・タイムズの「日本企業、EU市場から締め出しか」の記事に対して寄稿しているが、まさに、金融庁が取り仕切っているのだということが判る。であるなら、日本国内向けに責任を明確にしたらどうであろう。また、新委員長は「日本基準を生かしながら共通化作業を進める。コストはかかるが混乱は避けられる。」としているが、混乱のない改革があるのであろうか?日本特有な会計基準を作り続けてコスト面でも無駄にならないのだろうか? 少なくとも共通化は、国際基準にキャッチアップするだけでエンドレスの改正が求められる。企業結合の会計など未だ一致しない。おりしも、IASBでは、米国会計基準と一致させるべく、3月29日に、借入金の利息を資産化する会計基準(IAS23号)の改正が行われ、新たな改正が続いているのだ。


⇒注意:
2009年6月30日、ASBJを会計基準設定主体と認め、かつIFRS適用可能となる内閣府令(案)を金融庁が公表。12月11日に公表適用開始された。

国際会計基準審議会(IASB)はグローバルな世界の基準を設定しているが、年間運営費は約13百万ポンド(約31億円=1ポンド230円換算)。一方、日本の企業会計基準委員会は一部の会計基準を設定しているに過ぎないが平成18年度(2006年度)で約8億円の運営費を費やしている。国際会計基準審議会は成果物である国際会計基準書の出版収入で11億円稼いでいる。

聞くところによると、日本の企業会計基準委員会は30数名の常勤者が従事しており国際会計基準審議会(IASB)に匹敵する陣容とのことである。コストが掛かり過ぎるかどうかは成果物の価値による。国際会計基準は、上場会社のみならず非上場会社、中小企業、および非営利組織を含む会計基準の設定、IAS26号の退職給付制度の事業主への財務報告の基準も設定している。かつ、XBRLも取り扱っている。

一方、日本は、2011年6月末までに国際会計基準に収斂(convergence)することを国際的に約束した。会計基準の設定範囲は、上場会社(金融庁の管轄)の会計基準に限定されている。今までは、整合していないテーマに分かり難い構成や表現、かなりの部分、委員の独善による日本固有の基準が設定され質の面でも疑問視されていた。

国際会計基準に比べ相対的に規模の大きな日本の企業会計基準委員会の台所
国際会計基準審議会IASB
ガバナンスが厳格な独立・中立組織
企業会計基準委員会ASBJ 
金融庁の公益法人で下請け的組織
基準の利用者(費用対効果)⇒ 世界100カ国を超えて適用または
適用を認めている会計基準を設定

上場会社・非上場会社・非営利組織を対象
日本の上場会社約4千社のみ適用の基準設定
日本を代表する国際企業米国会計基準を適用
年次報告書より←欧米の開示書類 2006年度 1ポンド230円
参考:円換算
収支計算書等より
公益法人の開示書類)
平成18年度決算
2006年度決算
収入: 収入:
会費収入 10,382千ポンド 2,387百万円 会費収入(注1) 799百万円
出版収入 5,058千ポンド 1,163百万円 - -
- - - 受託事業収入
金融庁から補助金・委託費
75百万円
その他(出版販売直接費控除等) ▲2,329千ポンド ▲535百万円 その他 38百万円
収入合計 13,111千ポンド 3,015百万円 収入合計 912百万円
運営費: 運営費:
人件費(IASBの理事含め76人)
年次報告書の注記5に説明
9,177千ポンド 2,110百万円 人件費(30数名の常勤者
財務諸表等の注記はない
357百万円
宿泊費 1,238千ポンド 285百万円
理事会・委員会経費 1,241千ポンド 285百万円 基準委員会経費 175百万円
コンサルティングのための出張旅費 468千ポンド 107百万円 賃借料 114百万円
その他 1,243千ポンド 325百万円 その他 143百万円
運営費合計 12,899千ポンド 3,112百万円 運営費合計 789百万円
総資産額 14,220千ポンド 3,270百万円 総資産額 2,015百万円
現預金 5,371千ポンド 1,235百万円 現預金 650百万円
金融資産 5.947千ポンド 1,374百万円 有価証券 999百万円
注1ASBJの法人会員の会費は平成22年度に一口30万円に値上げして5億円増加し、13億円の法人会員会費収入を予算計上した。
IASBの2009年度決算では会費収入16,584千ポンド(1ポンド=130円換算で21億5千万円)だから日本は法人会費だけでIASBの6割相当の会費収入である。

参考:米国財務会計基準審議会(FASB)の母体である「米国財務会計財団(FAF)の2007年と2006年の年次報告書」は地方自治体の会計基準(GASB)を含んでいる。

会計基準の設定権限は金融庁にあり(西川氏発言)
西川 会計基準の設定権限は金融庁にあり、私たちの出す基準に対して個別にガイドラインを公表しています。ですから、委員会のメインテーブルには、金融庁の方もオブザーバーとして参加いただいています。(新日本監査法人 2003年9月3日対談西川氏発言

「常識的に考えて民間が法律でないとはいえ、社会的な規範性のある基準を出すことはあり得ない。会計基準もその例外ではなく、その設定権限は金融庁にある。そのため私どもが出す個別基準ごとに、金融庁はそれらが一般に公正妥当と認められる会計基準に該当すると認めるとのガイドラインを発信し、私どもが作成した会計基準に規範性が付与されている。」(「わが国における会計基準の開発と国際対応. ―財務会計基準機構・企業会計基準委員会の活動を中心に―」. 2004年7月西川氏発言←「過去のアーカイブから文書入手可能」)

なお、2000年6月29日公表の「企業会計基準設定主体のあり方について(論点整理)」には、「独立性については、投資家保護等の観点から行政を含む各方面からの独立性が確保される必要がある」とされ、行政を含む独立性が謳われていた。

企業会計基準委員会の創設に尽力した塩崎氏の「日本におけるガバナンス改革を行う今、会計制度も既存の審議会を若干手直しする程度でお茶を濁しては、日本の国際的信頼回復はできない。少なくとも会計基準設定主体は独立性の高い、民間の専門家を中心とした常設機関にすべきだ」との主張は実現したのか?(週刊東洋経済1999年5月15日号  参照)

小泉内閣で竹中平蔵氏のブレーンで旧大蔵省・財務省官僚であった高橋洋一氏の著書「さらば財務省!」にあるように審議会は御用学者で占められているようである。企業会計基準委員会(金融庁の公益法人)も実質は金融庁(旧大蔵省)の審議会のようである。事実、主要な委員は企業会計審議会からの横滑り。

企業会計原則は、時代にそぐわなくなっている。最新版の纏まった「日本の会計基準」はどこにあるのでしょうか?どの国でも、自国の会計基準を一冊に纏めた基準書を発行しているものです。経済大国日本なのに、日本には国際基準との同等性を主張する根拠「まとまった日本の会計基準」を示せる状況にない。西川発言からすると、金融庁がそうした「日本の会計基準」を纏める権限を持っていることになる。現に、2001年7月に設立したASBJは、創設から6年も経っても現行有効な「日本の会計基準」を一冊の会計基準として整理できていない。また、企業会計基準委員会の発行する会計基準が複雑怪奇な基準で、国際基準のような秩序整然とした体系になっていないのも問題だ。

金融庁黒澤企画官発言企業会計審議会2007年3月27日
金融庁黒澤企画官:ASBJにおかれましては、いわゆる「工程表」と私ども申し上げていますが、26項目を中心に向こう1年間に、どれだけコンバージェンスが進められるかといったようなことについて計画表を発表されています。〜ASBJの発表された工程表に従い、ASBJサイドはきちんとコンバージェンスをすすめていることが改めて両サイドから確認されたということに尽きるかと思います。引き続きこのペースでコンバージェンスを加速化する必要があるという主張が先方からなされているところでございます。

金融庁総務企画局企業開示課長三井秀範氏は「会計基準、これは国ではなくて、民間の設定主体がつくっております。日本ですとASBJ、企業会計基準委員会。国際会計基準はIASB。アメリカの会計基準は、FASB、財務会計基準審議会がつっているということであります」と、2008年4月2日(財)日本証券経済研究所講演で発言しており、ASBJの西川委員長とニュアンスを異にしており注目されるところである。(「金融資本市場法制等をめぐる最近の状況ー開示を中心としてー」←SECのコンセプトリリースに対する回答として、2007年11月にFASBがIFRSを適用する提案をSECにしたこと、AICPAがそれを指示していることなどは意図的に無視している。(14ページ) 参照)

金融庁サイドは、一見、正論通り企業会計基準委員会(ASBJ)にさじを投げた格好となっている。しかし、財務諸表規則第1条および連結財務諸表規則第1条には、「企業会計審議会により公表された企業会計の基準は、一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に該当するものとする」として「企業会計基準委員会の会計基準」はどこにも規定していない。驚かされるのは、財務諸表規則第1条3項には、金融庁長官が会計基準を設定できる規定があることである。金融庁長官に権限を留保しておきたいのが透けて見える。

⇒●2009年6月30日
金融庁は、初めて国際会計基準の適用を認めるとともに内閣府令を改正し企業会計基準委員会も会計基準設定主体として認めた

企業会計基準委員会が2011年6月末までに国際会計基準に完全収斂を約束2007年8月8日
2007年8月8日ついに、日本の会計基準委員会(ASBJ)国際会計基準審議会(IASB)は2011年6月30日までに相違を無くすことに合意(東京合意と呼ぶ)した、と発表した。EUとの相違については2008年中に相違をなくす努力をし、残りの国際基準との相違については2011年6月30日までに相違を無くす約束をした。(IASBニュース ASBJニュース 参照)
日本は、相変わらず適用時期が何時になるのかを明らかにしていない。インドは、2011年4月1日以降開始する事業年度から適用とし(7月24日公表)韓国では2011年に全面適用と公表(3月15日公表)している。
このニュースは、国内では大きな反響があるが(ブログ参照)、明快でないことと気の抜けたサイダーのようで海外ではメジャーが取り扱っていない(海外ニュース 参照)。理解し易い明快なメッセージを発信していればもっと日本の会計基準を知ってもらうチャンスがあったものと思われる。


● 会社法(旧商法)では
、原則、会計基準に従いますが、キャッシュ・フロー計算書の作成は要求さていませんし、注記事項は脆弱で、財務諸表は単年度表示(比較財務諸表ではありません)となります。国際基準からは程遠い情報開示となります。このような商法の計算書類が、株主総会の召集通知書(Proxy Statement)に添付されて株主の手許に届く唯一の財務諸表です。2006年5月施行の会社法第444条に会計監査人設置会社は連結計算書類の作成が義務となった。計算規定は「会社計算規則」に規定され、個別財務諸表に関しては第90条から92条、連結財務諸表は第93条から101条に規定されている。

■ 証券取引法は金融庁、会社法(旧商法)は法務省が所管しており、会計規定についてタイムリーに自動的な相互調整が行われることはなく、矛盾した規定もあり縦割り行政の弊害が存在したままとなっている。法務省は、会社法で「臨時計算書類」を規定し、一方、金融庁は「四半期報告書」およびそのリビューについて検討して、相互に調整した気配はない。政治が相互調整すべきであるがそれもできていない。なお、金融庁は、突如として2002年に米国SECに登録している日本企業に対して日本でも「米国式連結財務諸表を証券取引法上認める」ことにしたが、企業会計審議会に諮った形跡はない。


▼公認会計士協会も会計基準を決める
金融商品取引法では、すべての信託の受益権が有価証券とされるなど、その定義する有価証券自体の範囲が拡大されているため、従来の取扱いのままでは、特定金銭信託のような単独運用の金銭の信託及び貸付金や不動産などの金銭以外の信託の信託受益権も例外なく有価証券となり、企業会計上、必ずしも適切なものとはならないのではないかという指摘がなされております。

会計基準に基づいて企業会計上の有価証券として取り扱うこととなる具体的な範囲については、今後、日本公認会計士協会から会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正により示されることとなります。当委員会では、その前提となる本会計基準に関する所要の改正について検討してまいりましたが、今般、平成19年6月15日の第130回企業会計基準委員会において、標記の企業会計基準について次の改正を行うことを承認しましたので、本日公表いたします。

 なお、今回の改正は、現行の会計上の取扱いを大きく変えないための技術的なものであるため、公開草案の手続を経ずに公表するものです。(企業会計基準委員会・2007年6月15日 「金融商品に関する会計基準」の改正  「金融商品に関する会計基準」 参照)

日本は法律の数だけ会計規定がある
日本は、会社法、金融商品取引法など法律ごとに会計規定がある。
縦割り行政の中、法令所管の官庁が省令や内閣府令などで会計規定を作成しており同じような内容のものが重複しており以下の通りである。会計基準は完成度の高いものを公会計で一つ作ればよく、重複して同じような条文・規定を作る必要はない。世界は会計基準を国際会計基準一つに収斂し、読者に判り易くしようとしているときに・・・・。(国際公会計基準"IPSAS" 参照)
何が悪いかといえば、会計基準で理解し易い財務諸表を作成しても反映されず官僚のさじ加減で情報開示がされ、次の欠陥が野放しとなっていることにある。
1.比較財務諸表になっていない
2.注記がお粗末
3.それぞれの法律によって開示内容が異なりバラバラで読者の利便を考えていない。
4.新たな会計基準の新規適用ないし改正が適時適切に反映することを保証しない。官僚が部分的に骨抜きにすることが可能。

日本の会計の特徴を端的に見ることができる。それは、会計基準を設定している母体である企業会計基準委員会財団の財務諸表と会計の専門家集団である新日本監査法人の財務諸表に見ることができる。
法律 会社法 金融商品取引法 公認会計士法 公益法人 独立行政法人
通則法
地方公共団体 地方公営企業法
地方公営企業
水道や公立病院
省令
・所管官庁
会社計算規則
(法務省令)
財務諸表等規則
(金融庁内閣府令)
内閣府令 総務省管轄 (総務省財務省)
総務省・行政管理局
財務省・主計局
(総務省)
自治財政局財務調査課
総務省
自治財政局公営企業課
連結財務諸表規則
会計基準 企業会計基準 公益法人会計基準
病院会計準則
(厚生労働省医政局長)
独立行政法人
会計基準
地方公共団体財務書類
作成にかかる基準モデル

今後の新地方公会計の
推進に関する研究会

2010年9月〜

地方公営企業会計
制度等研究会

報告書(2009年12月)

地方公営企業会計制度の
見直しに関する説明会

今後のスケジュール(案)
2011年10月13日
地方公営企業会計制度の
見直しについて

2012年6月
地方公営企業法の適用
に関する研究会

2013年7月
事例 経団連のひな型
単年度表示
EDINET
有価証券報告書

2年比較表示
有価証券報告書速報
新日本監査法人の
財務諸表

単年度表示
キャッシュ・フロー計算書なし

注記はかなり寂しい
企業会計基準委員会の
財務諸表

2期比較表示あるが
纏まりなくバラバラで

読める代物ではない
各省の独立行政法人
の開示書類

単年度表示
財務書類の作成状況
東京都以外は
単年度表示
海外の事例 マイクロソフト社の
年次報告書
デロイトの
年次報告書

米国公認会計士協会の
年次報告
国際会計基準委員会の
年次報告書
米国地方自治体の
包括財務報告書
法務省
会社法第431条
では、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」
金融庁
財務諸表規則一条 金融商品取引法財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書)は、 一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。
 
金融庁組織令 (平成十年政令第三百九十二号)第二十四条第一項 に規定する企業会計審議会により公表された企業会計の基準は、前項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当するものとする。
公認会計士法三十四条の十五の二  監査法人の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。
       三十四条の十六の三  監査法人は、会計年度ごとに、業務及び財産の状況に関する事項として内閣府令で定めるものを記載した説明書類を作成し、当該監査法人の事務所に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならない。

経済産業省・中小企業庁

2010年2月15日経済産業省中小企業庁は、第一回中小企業の会計に関する研究会」を開催した。研究会は、中小企業の実態に即した会計のあり方を議論する,としている。(毎日新聞) 平成14年(2002年)3月11日にも同じ研究会が同じメンバーで議論し、最終的に「中小企業の会計指針」の公表となった。今回は、金融庁がIFRS導入の方針を明らかにしつつあり、IFRSについての議論となるようだ。中小企業庁の役割と思っているようだ。縦割り行政そのもの。
資料:我が国の中小企業の実態」「会社法会計、金商法会計、税務会計について」「会計基準の国際化を巡る現状について」「中小企業の会計に関する研究会について

総務省と財務省の合同

独立行政法人通則法三十七条  独立行政法人の会計は、主務省令で定めるところにより、原則として企業会計原則によるものとする。

地方独立行政法人については、別途地方独立行政法人法があり、所管する総務省自治行政局行政課が「地方独立行政法人の会計基準」を作成して公表している。

公益法人
私立学校法施行規則四条の四  法第四十七条第一項 に規定する書類(事業報告書にあつては、財務の状況に関する部分に限る。)の作成は、一般に公正妥当と認められる学校法人会計の基準その他の学校法人会計の慣行に従つて行わなければならない。

私立学校法第二十九条
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第七十八条 の規定は、学校法人について準用する。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第百十九条  一般社団法人の会計は、その行う事業に応じて、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。
医療法第五十条の二  医療法人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。

認定こども園」は学校法人や社会福祉法人が幼稚園と保育所を同じ施設で運営しているケースが多い。学校法人は文部科学省、社会福祉法人は厚生労働省と所管が分かれ、幼稚園は学校法人会計基準に基づく会計書類を、保育所は社会福祉法人会計基準による書類を作成するよう義務付けられている。このため、両方の施設を運営する事業者は補助金や資金収支、貸借対照表などについて2つの会計基準に準拠した書類を別々に作成しなければならない。文科省、厚労省の縦割り行政による事務負担の重さが普及の妨げと指摘され、こども園は09年4月時点で358か所、11年度目標の2000か所に程遠い。両省は10年度から兼営している場合いずれかの会計基準だけで作成すればよいことにする。(日経2010年1月26日朝刊参照)

日本では、そもそも「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」または「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」とは具体的に何を指すかは統一した見解はない。(「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」by武田昌輔教授)
このような不明瞭な国は日本だけである。一方、国際会計基準は事業体の実態を表す会計基準を設定する努力が重ねられているがそれが反映されるまでに時間がかかり過ぎるのである。
欧米では、一つの会計基準に一つの財務諸表である。つまり、上場会社の財務諸表と非公開会社や非営利団体の財務諸表は、一つの会計基準である以上同じである。日本のようにバラバラではない。上記の海外の事例を見るがよい。


2006年3月、国際会計士連盟(IFAC)が開発した国際公会計基準(IPSASs)を適用している国または準拠している国を調査した結果を公表しているが、日本は含まれていない。ちなみに、発生主義会計を行っており、広い範囲でIPSASsに一致している国は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国および米国としている。

2011年7月27日、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長、厚生労働省社会・援護局長、厚生労働省老健局長の連名で「社会福祉法人会計基準の制定について」という文章を県知事、指定都市市長、中核市市長あて発出した。社会福祉法人の新会計基準平成24年4月より適用で、27年3月までに完全適用とする

2000年以来、約10年ぶりの全面的な見直し。事業ごとに複数の会計基準を用いている現行制度を改め、法人の全事業を同じ基準で会計処理できるようにすることが柱となっている。(ニュース 全国厚生労働関係部局長会議(厚生分科会)資料 参照)

社会福祉法第44条(会計)には、会計基準の規定はない。施行令施行規則にも会計基準についての規定はない。 社会福祉法人の新たな会計基準の作成設定者名も明記していない不思議な文章である。 

文部科学省
2012年3月30日文部科学省高等教育局私学部参事官室は、学校法人会計基準の問題点や課題等を整理した、「学校法人会計基準の諸課題に関する検討について(課題の整理)」がとりまとめられましたので公表した。平成17年3月31日文部科学省令第17号による「学校法人会計基準の一部を改正する省令」以後初めての検討である。基本金1号〜4号に分ける意味がどれほどあるのだろう。役所の視点である。民間では「資本金・資本準備金」に1号・2号などない。 学校法人会計基準の在り方に関する検討会(平成24年度)・・2012年8月28日第一回 9月24日第二回六回 私学の会計基準を改正 透明性高め健全化促す 文科省が14年度、導入後初

退職給与引当金の計上等に係る会計方針の統一について(通知)

2013年の大学改革 学校法人会計基準の抜本改正、今春に改正の手続きを済ませ、14年度から本格導入する。(2013年1月25日)
学校法人会計基準の在り方について、報告書平成25年1月31日
学校法人会計基準の一部改正について平成25年4月22日) ○ 学校法人会計基準の一部を改正する省令案新旧対照表

参考:アメリカの私立大学では、財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board)による会計基準(FASB)の非営利組織に共通の会計基準を用いており、とくに大学のみを対象とした会計基準は存在していない。」「制度的特徴とその実態」by両角亜希子(東京大学)・・学校法人会計基準の課題 理念を維持し制度の改善を


中国では・・
2005年11月7日と8日に、中国財務省(MOF)の中国会計基準委員会(CASC)と国際会計基準審議会(IASB)が北京で会合を開き、中国の一般企業の会計基準を国際会計基準(IAS)と共通化することで合意した。中国は年内にもIASに合わせた企業合併や金融商品に絡む会計ルールづくりを完了する。中国企業の国際化に対応する一方、資本市場の信頼性の向上を目指すのが狙い。

 共通化するのは非上場企業を含めて、中国企業全般に適用されている会計基準。現在は、外国人投資家が投資可能な外貨建てのB株について、中国基準に加えIASに沿った決算内容も開示することになっている。(日本経済新聞2005年11月14日 IASBの2005年11月14日のニュース CASCとIASBの共同声明 Wang Jun氏(財政部の王軍・副部長) 参照)
12月22日には、Wang Jun氏(中国監査基準審議会CASB議長でもある)は、ニューヨークの会合で、監査基準でも国際監査・保証基準(IAASBと収斂することで合意し共同声明書を公表した。

ちなみに、中国の企業会計基準は・・「Accounting Standard for Business Enterprises」参照
       中国の企業会計システムは「Accounting System for Business Enterprises」参照
       中国の会計法は「Accounting Law和訳要点)」参照

         中国最初の会計法は1985年に公布され,同年5月より施行.その後,1993年12月に第1回目の改正,1999年10月に第2回目の改正が行われた.中国の会計法は,会計業務の基本法規であり,全人民代表大会において作成し,中華人民共和国主席令として公布され,外資,株式に関わらず,国内のすべての企業に適用される.

         中国の「会計法」の主旨は,偽りのない会計証憑に基づいて,正しい財務諸表を作成することにより社会主義市場経済秩序を維持することである.それに対して,日本の「会計原則」の主旨は,投資家,債務者を始めとする会社関係者の判断を誤らせないため,適正な財務諸表を作成することを第一義的な目的としている.(中国の会計法・会計監査より)


会計法の適用対象は、下記の通り、チャプター1一般規定、2項に「国営企業、協会、会社、企業、機関と他の組織(以下に一様に、単位として言及)は、会計事項を取り扱う際に、この法を守らなければならない。」として、非上場企業・組織等を含めている。考え方は国際会計基準と一致している。「Accounting Law和訳要点)」参照
 
Chapter 1 General Provisions
Article 2 
State organs, associations, companies, enterprises, institutions and other organizations (hereinafter uniformly referred to as units) must, in handling accounting affairs, abide by this Law.
日本では、証券取引法の企業会計原則等が上場企業を対象としていることから、中小企業を所管する経済産業省中小企業庁主導で中小企業に「中小企業の会計に関する指針」を必要として二重基準となるのとは対照的である。縦割り行政の極み。会計に縦割り行政は不要。会計は、国際基準のように簡潔明瞭が一番。

下記の通り、企業会計基準チャプター9財務報告、61項には、前年同期比較の比較財務諸表の開示を求め、会計区分・内容に変更ある場合は、当年度基準で遡及して過年度財務諸表項目の修正を求めている。国際基準に準拠している。これは、日本に会計基準が存在しない
Accounting Standard for Business Enterprises
Chapter 9 Financial Reports

Article 61
Financial statements should include comparative financial information for the corresponding previous accounting period, When so required, if the classification and contents of statement items of the previous accounting period are different from that of the current period, such items should be adjusted in conformity with that of the current period.
2006年初旬にも「国際基準」に見合う新会計制度へ
  中国大陸では、多くの企業が中国独自の会計基準を採用しているが、2006年初旬にも国際会計基準(IAS)に合致した新制度が導入される見通しとなった。22日付で新華社が伝えた。

  スイスの首都ジュネーブで21日、IASを討議する国際会議が開催され、中国からは財政部の王軍・副部長などが出席した。王・副部長はこの中で、「中国政府は、IASを一貫して支持してきた」「会計制度のIASとの共通化は時代の趨勢(すうせい)だ」と述べた。

  さらに、同行した中国登録会計士協会の陳毓圭・秘書長は、「中国における市場経済の発展をかんがみると、IASに合致した会計制度が必要」「06年初旬にも、新会計制度を発足させたい」との意向を明らかにした。(編集担当:菅原大輔・如月隼人)
 中国情報局ニュース2005/11/23(水) 22:23:12更新

2006年1月から、国際会計基準委員会の評議委員(Trustee)中国はLiu Zhongli, President, Chinese Institute of Certified Public Accountants; former Minister, Ministry of Finance, People's Republic of Chinaを投入した。元財務大臣で中国公認会計士協会会長である。(2005年4月のイングランド・ウェールズ勅許会計士協会でのスピーチ 参照)ちなみに、米国は前・公開会社会計監視審議会PCAOBの議長・元ニューヨーク連邦準備銀行の議長であったWilliam McDonoughである。(2005年12月21日IASBとIASC財団ニュース 参照)

金融関係機関のホームページでの公開性・透明性・・日米比較
北朝鮮より劣る?日本の電子政府by奥井 規晶氏
日本
極端に閉鎖的・不透明
米国
Contact Us
ディスクロージャーの本丸が自ら
示す監査済情報開示・・透明性高い
証券監督局 金融庁  EDINET 
金融庁の予算・決算注1−1

証券取引等監視委員会
(SESC)


公認会計士・監査審査会
(CPAAOB)


企業会計審議会

ご意見箱(すべて金融庁


増加する金融庁の行政処分

不明瞭な日本の
ノーアクションレター制度
証券取引委員会(SEC)
・・電子情報開示EDGAR含む




公開会社会計監視審議会
(PCAOB)

注1SEC自身の監査済財務諸表:
 2004年度
・・監査初年度で、財務報告に係る内部統制の監査では不適正意見、財務諸表監査は適正意見であった。
2005年業績・アカウンタビリティ報告書 
・GAOは、財務報告手続の欠陥、不正利得の返還および罰金の管理および情報セキュリティの管理の3点について重要な欠陥(material weaknesses)を報告。
SECの年次報告書
SECの2006年度の業務・説明責任報告書 
・GAOは、財務報告に関しては重大な欠陥ではないと判断され再度の指摘はない。後者2点については重要な欠陥ではないとしつつ、固定資産の欠陥を新たに加えて3点が重大な欠陥(significant deficiencies)として報告さtれている。

注2PCAOB年次報告書:

2003年度初年度・非営利組織の会計
2004年度(比較財務諸表含む) 
官による開示システム EDINET
個別企業にリンクできない
有価証券報告書等にページがなく
一括印刷不能
電子情報開示EDGARデータベース
個別企業にリンク・フリー
米国のEDGARデータベースはリンク・フリーとなっているため民間はEDGARにリンクすることで企業情報が簡単にいつでも見ることが出来ます。
金融庁のEDINETは個別企業へのリンクは閉ざされており、その都度検索して閲覧することになる。
民による開示システム IR-BOX注6
Yahoo!ファイナンス
上記EDGARの個別企業にリンクするだけ
Yahoo!FINANCE
証券取引所 東京証券取引所

ジャスダック
ニューヨーク証券取引所(NYSE)

ナスダック
ニューヨーク証券取引所年次報告書 

ナスダックのSEC登録財務報告書類
会計基準設定主体 企業会計基準委員会
(ASBJ)

ご意見の受付け(目安箱)について

委員会動画配信(Webcast)2008年7月より
財務会計基準審議会(FASB) 国際会計基準審議会IASBの連絡先
注5注記の脆弱な財務情報
・単年度
・・読み物としての纏まりなし
注3監査済FAF年次報告書
・・・・FASBの母体
注4)・・参考:国際会計基準委員会財団の年次報告書
会計基準書 今後は、民間の企業会計基準委員会2001年7月民間の会計基準設定主体を創設)が会計基準の開発を行うことになっています(企業会計基準委員会企業会計基準等は、金融庁からの補助金がありますが、何故か会員以外には公開していませんし、出版物は「国際会計基準一式£60.00)」より超高価です)。
2006年10月受験生用に開いているサイト「会計基準R」が「一般のサイトで誰でも企業会計基準を見れてしまうと、財団会員になるメリットがなくなって、会員がいなくなってしまうことにもなりかねない」というASBJの回答に転載できなくなりました。【お知らせ】企業会計基準委員会の会計基準について 
弁護士さんの怒り参照
2009年1月6日より公開
ASBJ公表物への閲覧制限を見直すことと致しました」とのことである。
2003年7月から、FASBは1号から現在までに公表した基準書の原書をホームページから無償ダウンロードできるようにした。 2009年4月からIASBも
最新版IFRS本文」を私用目的のみ
に無償公開しました

国際会計基準一式£60.00

中国では会計基準委員会が無償公開(原文)
英語の39のタイトル参照
公認会計士協会 日本公認会計士協会
(JICPA)

金融庁の指導監督状況
天下り常勤者現在10人(5.6%が天下り)注8
米国公認会計士協会
(AICPA)
注3AICPAの年次報告書
・・非営利組織の会計
 
注7国際会計士連盟(IFAC)の年次報告書
総括計算書類・事業報告注3a 年次報告書(注3) 日米ディスクロージャーの考え方がそれぞれ反映

米国は「Contact Us」として常時Emailで広く意見を求めているが、現在、日本は金融庁を頂点として共通してEmailで意見を受付けるということはない。密告を期待するもの」や、中には江戸時代の「目安箱」の感覚で時代錯誤しているホームページを開設していたり、今どきファックスのみで受付けているところもあり、ひどい場合、全く閉ざしているところもある。閉鎖性を指摘されても仕方ない。開かれた金融行政等で信頼を確保する時代ではないのだろうか。金融庁の監督下にある組織・機関は金融庁と歩調を合わせており金融庁が開かれた行政をしない限り歩調を合わせ続けることであろう。偏に金融庁の対応にかかっている。(中国の会計基準委員会(CASC)ドイツ会計基準委員会DRSC)でさえ「Contact us」で聞く耳あり)

上記の通り、SECを含む米国のディスクロージャー(情報開示)の本丸は、自ら読み易く透明性の高い財務諸表を作成し監査を受けて情報開示している。ニューヨーク証券取引所は、現在、株式上場を検討しているが、上場会社並みの情報開示している。ナスダックは上場。
注1連邦政府機関であるSECの財務諸表は連邦政府の会計基準(FASAB)及びFASABが連邦政府の会計に適用を指定している民間の会計基準(FASB)によって作成している。監査は会計検査院(GAO)が行った。財務報告に係る内部統制の監査報告書が含まれる。
(注1−1) 金融庁の予算・決算と米国SECの年次報告書のようなまとまりのある情報開示と比較すると、国民に対する情報開示の姿勢が両国で明確に違っている。国民からすれば、読み易く判り易いものを期待しているはずである。金融庁は、頑なに扉を閉ざしている。
注2サーベンス・オクスリー法により創設されたPCAOB(非営利組織)は、財務会計基準(SFAS)117号「非営利組織」の会計基準に準拠して作成され規模の小さい民間監査人が監査報告している。
注3民間非営利組織は、財務会計基準(SFAS)117号「非営利組織」の会計基準に準拠して作成され規模の小さい民間監査人が監査報告している。米国公認会計士協会(AICPA)の年次報告書には、加えて、上場会社より早く1999年の年次報告書に、すでに、経営者の財務報告に関する内部統制の報告書に監査意見を表明している。
(注3a)日本公認会計士協会は、監事監査報告のみであったが、2007年4月1日以降開始する事業年度から欧米に見習って会計監査人を初めて公募することした。(ニュース 参照) 会計(ディスクロージャーの)専門家の集団が、作成した基準の記載も無く、注記もなく、比較財務諸表でもない単年度の「収支計算書・貸借対照表」を公表していてよいはずはない。欧米では会計基準を実質設定している集団です。「信頼をカタチにする」ためにも、範を示して、せめて、米国並みのディスクロージャーをすべき。
注4)・・参考:国際会計基準審議会(IASB)の母体である国際会計基準委員会財団(IASC Foundation)は、非営利組織であるが国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards,IFRS)で作成し、所在地英国ロンドンで監査を受けている。

注5自らの財務報告が判り易くディスクローズできて、初めて完成度の高い満足な会計基準が設定できるのではないだろうか・・、 単年度で、かつ、注記の脆弱な財務諸表では、理解し難いのでは・・・、国から受領した補助金(税金)は何処にどのように表示されているのか分かりにくく・・・、国民に対して、会費を支払っている会員に対して十分な説明責任を果たしているといえるのであろうか・・・・、証券取引法のもとにおける上場会社の投資家に対する情報開示だけに会計基準があるのではない、非営利組織や上場会社以外にも適用されるのであって、会計基準の基本を考える必要がある。改定監査基準にあるように、「財務諸表の作成責任は経営者にある」とある。

金融庁
は、【「会計ビッグバン」などを通じて、日本の会計基準は急速に整備され、国際的な会計基準と整合性のあるものとなっている】と主張している。であるなら、会計基準設定主体として国際的に整合した模範となるディスクロージャーを期待する。米国及び国際会計基準委員会財団の年次報告書は国際基準に準拠して作成しており比較することで判るであろう。監査報告書のあて先は、米国のFAFが「評議委員会(Board of Trustees)宛て」、国際会計基準委員会IASCFは「評議委員(Trustees)宛て」、日本はFASFの「理事長宛て」となっており、ガバナンスの違いが現れて興味深い。日本の評議委員の役割は?
なお、2001年7月26日金融庁所管の公益法人として、財団法人 財務会計基準機構(FASF)の設立認可を受け、企業会計基準委員会(ASBJ)を発足したことから、FASFの計算書類は、総務省が作成した「公益法人会計基準」で作成されている。ここにも官僚を中心とした縦割り行政が蔓延って、簡単なものを複雑にして判りにくくしている。

注6有価証券報告書の印刷会社、株式会社プロネクサス(旧・亜細亜証券印刷)が運営する国内上場企業のIR・ディスクロージャーに関する最新状況をお伝えするためのサイトです。上場企業等の有価証券報告書の印刷は、宝印刷両社でほぼ寡占状態です。(両社の四半期業績 参照) その背景には、旧・大蔵省の有価証券報告書の審査をしていた人材が両社に天下って有価証券報告書の作成の指導をしています。(プロネクサス総合研究所 参照) こうした仕組みが日本特有の有価証券報告書を生み出していますし、会計基準の国際化を阻んでいる要因の一つと考えています。これが投資家にとって読み易い情報開示になっていれば問題ないのですが・・(国際的には、株主に提供されないし、株主総会後に開示される異常な開示)。両社が作成した上場企業の有価証券報告書でさえ、両社にとってもEDINETの個別企業へはリンクできていません。

注7)国際会計士連盟(IFAC)の年次報告書は、自ら設定している国際公会計基準(International Public Secter Accounting Standards, IPSASs)によって作成しており、ニューヨークの会計事務所が国際監査基準で監査している。日本は政府としてもIPSASsを適用していない

(注8)日本公認会計士協会の役員には金融庁の天下りはない旨の記載があるが、民主党の要請で衆議院調査局が行った天下りに関する予備調査によると金融庁総務企画局企業開示課の担当所管官庁から日本公認会計士協会へ10人の常勤者(常勤者総数の5.6%)が天下っているとのこと。金融庁の「再就職状況」には掲載されないようにしているのか?我々の会費が監督当局の食い物にされていると思うのは私だけであろうか。非常勤の役員よりも、常勤者の方が実質的に力を発揮するし、支出が大きい。因みに会計基準の設定をするASBJの母体(財)財務会計基準機構企画部長金融庁から2004年7月31日就任。金融庁の閉鎖的な体質が協会にも類似するのはこんなところにもあるようである。

2008年4月18日、金融庁は、「金融サービス業におけるプリンシプル」等を公表し、透明性高い金融サービス提供者(銀行、保険、証券業など)に関する業務および行政の方針を明らかにした。(金融庁の新聞報道WTO
従来の思いつきの行政指導から国際基準である透明性高い公正な行政を望みたい。いつ実現するかは未知数である。過去に実現したことがない。

日本の会計基準を欧州の証券市場で認めて貰うための金融庁の活動状況等
● 2004年1月27日、金融庁
ロンドン証券取引所で上場している日本企業に対して、2005年以降も日本の会計基準を継続して認めてもらうために、金融庁は、「英国金融サービス機構(FSA)の上場規則見直し提案への パブリック・コメント・レターの発出について 」(英文本文)を英国金融サービス機構(FSA)へ送付。(社)日本経済団体連合会および東京証券取引所も同様のコメントを送付した。
1月28日
アジアン・ウォール・ストリート・ジャーナル(AWSJ)は、「世界が共通の会計基準へ移行しつつある中、東京で、企業にこれまで通り日本の会計基準を続ける選択も認める方向にあるようだが、これでは外国人投資家は日本から遠ざかることになるかもしれない」と警告している。そして、「日本の経済界には"日本は違う"という考え方が根強く残っている。日本は世界第2の経済大国なのだから、ほかに合わせて慣行を変える必要はないと考える企業人も多い。『わが国の会計・監査基準はすでに国際的に遜色のない水準まで整備されている』というコメントを経団連は10月に発表した。日本最大の経済団体がこのような見解を示していることからして、国際基準が実施された後も、日本政府が企業に日本の会計基準をひとつの選択肢として認めるというのもうなずける」と皮肉気味である。(出所:英米主要16紙誌の論調分析(2004年1月8日〜2月5日)(財) 経済広報センター「論調分析」担当より)
2月3日
日英会計交渉の初会合が行われた。英国はこれは欧州連合(EU)指令に基づいた措置と主張。日本政府は今後、ブリュッセルの欧州委員会とも20日に交渉する構えだ。(時事通信)
2月20日
日本側は、日本の会計基準をIASと同等のルールとして認めるよう要求。これに対してEUは、作業部会を通じて早期に認定を審査する方針を説明し、日本の理解を求めた。(時事通信)  外務省「日・EU規制改革対話 ブリュッセル会合(平成16年2月20日)」 欧州連合(EU) 参照
● 4月19日、金融庁
金融庁では、我が国の会計基準が、国際財務報告基準(IFRS)及び米国会計基準(USGAAP)と整合的であること等を、海外において広く知っていただくために英文パンフレットを作成しました。「
日本の会計基準のPR用パンフレットの作成について」 「英文本文・(Evolving Japanese GAAP - High Quality Accounting Standards - (April 19, 2004)」 参照
ちなみに、「企業会計審議会」「金融庁」および「企業会計基準委員会」の英語版のWebsiteから日本の会計が理解できるでしょうか?⇒そもそも設定した日本の会計基準はどこに!
4月24日
企業会計審議会第9回企画調整部会議事録資料」によれば、日本の会計基準のPR、日本のEUへの対応などが報告されている。国際会計基準と同等性についての評価に関して日本側との対話を十分に行いたいとのことである。十分に対話して真実を明らかにすることが重要であろう。議事録に「発行開示を規定している目論見書指令は確定しており」としている目論見書指令は、EUのProspectus Directive を参照、 継続開示については、EUで上場する会社の透明性義務のサイトを参照。
なお、EUの国際会計基準適用の規則については、2002年7月19日承認のNo1606/2002国際会計基準の適用に関する規則」を参照。この規則は、継続開示の透明性指令に引用されている重要な規則です。9条には、経過措置として、負債証券のみを上場している会社と、域外で上場している会社で国際的に認められた会計基準を使用している会社については、2007年1月1日から適用する、としている。
● 2004年5月11日、EU
欧州経済財務大臣会議はEU議会が3月30日に承認の「透明性指令」を支持することを表明。
EUレベルで、第三国の会計基準が国際会計基準に相当するか評価するメカニズムを創設する、としている。(3月30日承認の「透明性指令」 非公式の透明性指令(Transparency Directive )5月11日 「EUで上場する会社の透明性義務のサイト」 参照
5月26日
米国SEC
EUの欧州証券規制委員会(The Committee of European Securities Regulators (CESR))と共同して大西洋を横断(transatlantic)する証券市場規制を統一するため協力する、と表明。6月4日に初会合が持たれるとしている。(SEC速報 参照)
6月4日
米国SECと欧州連合CESRは初会合を開き、2004年第2四半期から2005年の期間では四つの主要な問題を取上げる、として、その一つとして、「国際会計基準の使用を支援する効果的なインフラを構築し、国際会計基準と米国会計基準との調整を回避することを最終目的とする
Development of an effective infrastructure to support the use of International Financial Reporting Standards, in particular with respect to consistent application, interpretation and enforcement of these standards with the final objective of avoiding reconciliation with local GAAPs.」としている。(SEC速報 (CESR) 参照
● 6月11日、経済産業省
経済産業省は経団連の主張していた同じ内容の相互承認を求めるとする「中間報告(日本の証券取引法の会計基準と国際会計基準および米国会計基準と比較した表を添付している)」を作成し公表している(資料概要 
Report on the Internationalization of Business Accounting in JapanJune 2004 参照)。2003年12月19日経済産業省経済産業政策局は「企業会計の国際対応に関する研究会」を立ち上げ検討し具体的対応について2004年5月に「中間とりまとめ」をしたいとしていたもの(プレス発表 参照)。
2004年10月14日経済産業省は「企業会計研究会」を設置し「会計ビッグバンの評価、会計・商法・税法との関係等を検討しつつ、我が国会計基準の基本的な考え方等を来春(2005年春)を目途に取りまとめる予定である」としている。 議事録参照

● 6月23日、金融庁
金融審議会は、金融分科会第一部会報告として「外国会社等の我が国における開示書類に係る制度上の整備・改善について--外国会社等による「英文開示」-- を公表し、外国株価指数連動型上場投資信託(外国ETF)」について、平成17年度(2005年)から、「本国の開示基準・英語」により記載した有価証券報告書及び半期報告書の提出を可能とすることが適切である、とし、その他の有価証券を対象とした外国会社等による「英文開示」の実施時期に ついては、平成19年度(2007年)を目途とす ることが適切である、とした。
>6月24日
金融庁・企業会計審議会国際会計基準に関する我が国の制度上の対応について(論点整理)」(Issues on the International Accounting Standards and Japan's Treatment )を公表した。特に進展はない。
金融庁松尾直彦氏によるCESRへの文書 松尾直彦弁護士  参照

● 6月29日、CESR

欧州委員会(EC)は欧州証券規制委員会The Committee of European Securities Regulators (CESR)に、米国・日本・カナダの会計基準が国際的な基準と同等("third country GAAP" (a non-European national GAAP) as being equivalent to those prepared in accordance with IFRSs)かどうかについて評価し2005年6月に結論を提出するように求めた。法的な手続きを経て2005年12月正式に採用することを目標としている。同等と認められた場合は、2007年1月以降も適用が認められる。(「ECによるCESRに対する正式な指示」 「CESR プレスリリース」 参照)8月12日、ECは、2004年11月に議会の承認後、EUの新市場担当コミッショナーとなるチャーリー・マクリービー氏(Charlie McCreevyとなることを公表。氏はアイルランド勅許会計士出身の政治家で財務大臣。前任者のフリッツ・ボルクスタイン氏は石油メジャーのロイヤルダッチシェル社の産業界出身者であった。(EU速報 EU速報・ティームメンバー ICAI速報 12月6日パリでのスピーチ 12月20日フランクフルトでのスピーチ⇒「2大会計基準(IFRSとFASB)と表現を変え双方の収斂に力点をおいている」⇒日本基準は視野になくなっている。 参照)⇒2005年3月、出身のアイルランドでは非上場会社を含めたすべての会社にIFRSを適用する法案が成立。⇒■氏は、各地でスピーチや米国との相互調整(USGAAPとIFRSの差異調整なしの相互承認を求めて)など精力的に活動している(Charlie McCreevy氏のニュース 参照)。
>2005年2月金融庁で意見交換のJohn Tiner氏はCESR-Finの議長で、英国FSAのチーフエグゼクティブで、英国のアーサーアンダーセン出身の英国勅許会計士とあります。(日本公認会計士協会会長のウイークリー2月7日 参照)

参考⇒IFRSと主要国の会計基準の比較
日本基準は04年6月に経済産業省がまとめたものを8月に掲載)IAS PLUSより

> カナダ会計基準審議会(AcSB)は2004年5月31日に「自国の会計基準に固執して孤立するのか、放棄してIAS/IFRSにするのかUSGAAPにするのかどうか等」いくつかの選択案を公表し、2004年9月15日までにコメントを求めている
なお、カナダの上場会社のうち実に480社(カナダの上場会社の約半数と言われている)が米国の証券市場(ニューヨーク証券取引所、アメックス、ナスダック、OTCブリティンボード)に上場しており米国会計基準との差異調整表を開示している実務が存在している(「SECに登録している外国会社・・カナダ 2003年12月末現在」参照)。


>2004年9月16日
金融庁の「EU指令への対応」 参照
>2004年10月12日IASBおよび企業会計基準委員会は、「日本の企業会計基準委員会とIASBは相互の差異を縮小するための話し合いをスタートさせた」旨、公表した。(IASBのプレスリリース 企業会計基準委員会のプレスリリース 参照)

2005年1月21日IASBおよび企業会計基準委員会は、同時に、「共同プロジェクトの進め方に合意IASB and Accounting Standards Board of Japan agree to next steps in launching joint project for convergence )」を公表した。日本側が相違点を明かにして、どれをテーマに選ぶのか決める。
2005年3月9日と10日に、IASB議長デビット・トゥイディ氏一行が訪日し企業会計基準委員会(ASBJ)を訪問、共同プロジェクトの作業を開始した。日本側が検討したくない事項が沢山あることに注意すべき。
日本側が提示した最初の検討事項は、@たな卸資産の評価(IAS1号)、Aセグメント情報(IAS14号)、B関連当事者の開示(IAS24号)、C海外子会社の会計方針の統一(IAS27号)、D投資不動産(IAS40号)の5件のみで、すべて日本に会計基準としては存在しないもの。検討日程などは示されていないので結論がいつになるか不明。次の代表者の会議は9月にロンドンで会合を持つとしている。 (IASB3月11日のニュース <2005年1月25日、ASBJはNIKKEI NETに、検討する5項目を選定し既に公表していた> 参照)

● 10月21日、CESR
欧州証券規制委員会(CESR)
は、「第三国の会計基準(日本、カナダおよび米国の会計基準)が国際基準に相当するかどうかを評価するときのコンセプト・ペーパーを公表し、12月22日までにコメントを求めている。2005年6月30日にECに評価の結果を報告することになっている
三カ国の会計基準の評価は、国際会計基準のフレームワークおよびIAS1号に規定の理解しやすさ(Understandability)」「目的適合性(Relevance)」「信頼性(Reliability)」「比較可能性(Comparability)」の四つの特性について検討し、その結果、相違する程度により、具体的施策(Remedies)として、差異調整表(Statements of reconciliation)と説明の添付、または全面的に国際会計基準に置き換える(Restatement)かを決める、としている。これを受けて、2004年12月21日金融庁はCESRに対しコメント・レターを発出した。

日本の企業会計基準委員会(ASBJ)では、会計基準開発・設定の基本となる『財務会計の概念フレームワーク』2004年9月24日の中で、国際会計基準の「比較可能性(Comparability)」に対し、日本では「内的な整合性(Internal Consistency)
を強調しており、基本的な視点でIAS/IFRSとは水と油となっています。1996年11月、フリー・フェアー・グローバルを大きな柱として金融面での大幅な規制緩和・自由化を推進し、低迷している東京市場をニューヨークやロンドン市場に匹敵する国際市場に育成することが大きなねらいであった日本版ビッグバンはどこに行ってしまったのでしょう。

>2004年11月18日、金融庁11月23日訪欧公表、CESR(欧州証券規制当局委員会)の公聴会への参加について
欧州証券規制委員会(CESR)は11月23日、パリで企業会計基準に関する公聴会を開き、EU市場で日米カナダの会計基準の継続利用を認めるかどうかの審査にあたって、機関投資家を中心に市場参加者の意見を参考にする方針を強調した。ジョン・タイナー議長は「審査作業は透明性を高くし、専門的な観点を重視する」と強調。市場参加者による助言組織をつくることを明らかにした。タイナー議長は「欧州の投資家保護が目的」と比較の狙いを説明した。(NIKKEI NETより)
2004年12月8日のAccountancyAge.com, 08 Dec 2004に掲載のフィナンシャルタイムスの記事を引用した「EUは日本企業の上場廃止の脅迫に直面(EU faces Japanese delisting threat)」の記事によれば富士通は国際会計基準を採用する方向で検討中とのことです。(国際会計基準適用の事例 金融庁松尾直彦氏 参照) 
日本政府等の「日本の会計基準を引き続き認めなければ、日本企業の欧州市場からの撤退の仄めかし」
、当初はWarn(警告)として、後にThreat(脅迫・脅し)の表現で英文ニュース(欧米・アジアの)に報道されている。

Naohiko Matsuo, director for international financial markets at Japan's Financial Service Agency, said: 'Companies are saying they would not change to international accounting standards because of the cost ... they would have to start checking through lots of little chits from the past.''Companies really dislike the whole idea ... if Japanese standards are rejected, there is a real possibility that some will pull their stock listings,' an investment banker at a US bank in Tokyo.
The FT pinpointed a direct threat to the London Stock Exchange where companies such as Fujitsu, All Nippon Airways and Kirin Brewery are listed.

金融庁松尾直彦氏によるCESRへの文書 松尾直彦弁護士  参照

● 2005年1月28日
金融庁
金融庁
企業会計審議会は「企業会計審議会の今後の運営について」と題し、【E U における同等性評価や会社法現代化の動向等を踏まえ、審議事項の企画調整を行うとともに、必要な審議・検討を行う。】として企画調整部会( 部会長 加古 宜士 早稲田大学教授)で検討が行われる旨公表した。


● 2005年3月31日、カナダ(EUが会計基準の同等性を評価する3カ国の一つ)
カナダ会計基準審議会(AcSB)はカナダの会計基準に関する戦略的計画(7月末までにコメント要請)」を公表した。これによると、上場会社、非上場会社、非営利組織の会計基準に区分し、上場会社の会計基準については、下記の通り、5年の経過期間をおいてカナダ会計基準を国際会計基準(IFRS)に収斂させ、5年後にはカナダ会計基準を廃止する、としている。
Accounting Standards in Canada: Future DirectionsDraft Strategic Plan
prepared by:Accounting Standards Board、Comments are requested by July 31, 2005
For public companies:
The Board will direct its efforts primarily to participating in the movement toward the global convergence of accounting standards. The best way to achieve the objective of a single set of globally accepted, high-quality accounting standards is to converge Canadian GAAP with International Financial Reporting Standards (IFRSs) over a transitional period, expected to be five years. At the end of that period, Canadian GAAP will cease to exist as a separate, distinct basis of financial reporting for public companies.

2005年4月4-5日英国勅許会計士協会(ICAEW)の125回記念コンファレンスが、ブラッセルで、「グローバルな資本市場:ビジネス、政府および専門職の挑戦」と題して行われた。各国、国際機関から錚々たる人物が出席しスピーチしており、日本からは金融庁の式部透氏(Toru Shikibu, Deputy-Commissioner, Japanese Financial Services Agency)が日本の従来からの主張を繰り返した(金融庁主張の全文 参照)。次回はロンドン、香港、最後にニューヨークで開催するとしている。なお、香港は2005年1月から若干の差を残して国際会計基準に収斂するとしている。
5日には、EUの市場担当コミッショナーとなったチャーリー・マクリービーがスピーチしている(スピーチ 参照)。■氏は、アイルランドの勅許会計士の元財務大臣で専門知識経験が豊富、各地でスピーチや米国との相互調整(@USGAAPとIFRSの差異調整なしの相互承認を求めて、A現在、EU企業の米国株主が300を超えるとSECに登録しコーポレートガバナンスの規定に準拠する必要があり、SOX法適用後費用が嵩みかつ登録抹消が困難であることから、その基準を引上げ3000の米国株主とするよう要請BIASCのボルカー氏と面談し欧州のIASBの影響力を増やす要求)など精力的に活動している(Charlie McCreevy氏のニュース 参照)。


2005年4月22日EUの市場担当コミッショナーとなったチャーリー・マクリービー、訪問していた米国で、米国SECと欧州が適用した国際会計基準(IFRS)の同等性について合意に達した。すなわち、米国は2007年に、遅くとも2009年までに、SECが課している米国会計基準との差異調整表の開示義務を無くすことで合意した(EUのニュース SEC速報 SEC登録外国会社約1200社の半数以上が欧州・カナダの会社 参照)。
● 2005年4月27日、EU同等性評価で、日本企業に追加情報を要請・EUが発表

  【ロンドン=田村篤士】欧州連合(EU)の証券規制委員会(CESR)は27日夜、EU市場に上場する日本企業に対し2007年から追加的な決算情報の開示を義務付けるよう求める中間報告(138ページ)を正式発表した。企業の合併・買収にかかわる会計処理などで日本基準と欧州企業の利用する国際会計基準に違いが大きいと判断したため

 証券規制委は違いが大きい3点に関して国際基準ベースの補完的な財務諸表の作成を義務化した。具体的には(1)買収企業の資産評価の修正(2)親会社と海外子会社の会計基準の統一(3)特別目的会社などへの連結対象の拡大を挙げた。このほか23項目について会計処理方法の説明などの記載を求めている。

 中間報告では米国会計基準の利用企業にも特別目的会社を連結対象に加えた補完計算書の作成など求めた。しかし日本基準にはより多くの追加情報の開示を要請しており日本基準と国際基準の違いが大きいと判断した。国際基準と米基準は統合を目指すことで02年に合意している。 日本経済新聞2005年4月28日 (13:04)


英字新聞インターナショナル・ヘラルド・トリビューン 4月28日の記事「欧州、会計システムの同等性を探る」 参照
5月18日に公聴会を開き関係者の意見を聞き、27日までにコメントを求め、6月30日までに欧州委員会(EC)に対して結論を提出することになっている。5日遅れの7月5日に最終の結論が提出された。大きな変更はない。 日本の会計史に残る重要な日となろう。 金融庁がコメント発出の場合「国際関連情報:その他」に公開、注目されます。

日本を孤立させないため、外交の常套手段『相手国の面子を立てておく』という外交辞令で政策的に会計基準の同等性を認めたものの、日本の会計が国際基準との相違が大きいとして補完的な計算書(supplementary statement)の開示を求めている三つの事項は、それぞれ次のものである。なお、中間報告書( DRAFT TECHNICAL ADVICE ON EQUIVALENCE OF CERTAIN THIRD COUNTRY GAAP AND ON DESCRIPTION OF CERTAIN THIRD COUNTRIES MECHANISMS OF ENFORCEMENT OF FINANCIAL INFORMATION 「第3国会計基準の同等性及び第3国の財務情報の法執行メカニズムの説明に関する技術的助言書(案)」)のパラグラフ133によると、情報の基礎は、企業会計基準委員会ASBJ)、日本経団連金融庁JFSA)および日本公認会計士協会JICPA)から入手した情報によるとしている。

日本の基準 国際会計基準
合併会計 2003年10月31日企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」が公表された。本文は草案と同じ。
● 一定の条件の下、持分プーリング法を認め、のれんは20年以内に規則的に償却することを求めている。

IFRS3号企業結合
● パーチャス法(買収法)のみを認め、持分プーリング法は廃止。
 のれん(Goodwill)は減価償却をしない。ただし、IAS36号「減損会計」を適用し毎年見直す必要がある。減損したときに取得価額と回収可能額(recoverable amount)の差額を一時償却をする。

「IFRS3号、IAS36号、IAS38号」公表>
05年6月、IASBとFASBが改正基準で共同で公表
連結財務諸表作成に関し、親子会社適用の会計基準の首尾一貫性 連結財務諸表制度の見直しに関する意見書(平成9年6月6日)」による連結財務諸表原則では、「親子会社間の会計処理の統一 」を求めていない(「なお、実務上の事情を考慮して、財政状態及び経営成績の表示に重要な影響 がないと考えられるもの(例えば、たな卸資産の評価方法である先入先出法、 平均法等)については、敢えて統一を求めるものではない。」)ため、海外子会社の財務諸表をそのまま連結している。
つまり、海外進出した子会社はその国の会計基準で作成した財務諸表を日本の親会社の財務諸表に単純に合算・連結している。


海外子会社の会計基準、親会社と統一会計基準委方針
連結財務諸表における在外子会社の会計処理に関する当面の取り扱い(案)・・2009年3月期より適用」企業会計基準委員会2005年11月11日公表
日本経済新聞2005年11月8日より、2009年3月期から適用)
IAS27号連結および個別財務諸表
欧州では、親会社が適用の国際会計基準と同一の首尾一貫した会計基準を海外子会社も適用するものと考えているとしている。
特定目的会社の連結 エンロン事件では、最大270億ドルとも指摘されている簿外債務膨張の原因は、特別目的会社を連結対象外としたことにある。当初は、米国会計基準では連結対象外でもよいものであったが、監査後にエンロンと特別目的会社が資金取引で密接に関連していたことが判明し一部を連結対象に加えたという。

日本でも企業会計審議会(旧大蔵省)の公表した「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い(平成10年10月30日)」では特別目的会社は連結対象外としている。米国基準と類似した基準としている。原文は、金融庁(旧大蔵省時代の「答申・報告書等」)参照。


2005年7月4日、日本公認会計士協会「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてQ&A」(公開草案)公表。
IAS27号連結および個別財務諸表
国際会計基準では、特別目的会社であっても支配している場合は連結対象とするとしている。(SIC-12連結・・特定目的事業体(SPE)」 参照)
米国はエンロン事件後、会計基準を強化・改善したが、日本は改善しないままとなっているとしている。
2002年(平成14年)12月10日「特別目的会社(SPC) に関する調査結果報告」参照

補完的な計算書(supplementary statement)とは何かは、昨年10月21日公表の「第三国の会計基準(日本、カナダおよび米国の会計基準)が国際基準に相当するかどうかを評価するときのコンセプト・ペーパーのパラグラフ58(中間報告書ではアネックス3のパラグラフ61)では「測定および認識の差異が複雑で多い場合は、国際基準との差異調整の開示では非常に複雑で分かり難くなる(complicated)ので、投資家に分かり易い要約財務諸表(要約損益計算書、貸借対照表、可能であればキャッシュフロー計算書)の開示を求める」とあり、再作成(Restatement)よりは簡単な要約財務諸表(condensed financial statements)を求めているが、限りなく再作成に近い厳しい内容といえる。このようになった理由は、日本基準が「測定および認識の差異が複雑で多い場合」に該当したと判断したことになる。

今回公表された中間報告書の本文パラグラフ87−89に次のように記述されていおり、別途、要約財務諸表を作成するようなもの。合併や特別目的会社のある場合は稀であっても、欧州市場に上場する日本企業には知名度を上げるための国際企業が多く、海外子会社がある会社が多いのではないだろうか。該当する場合は、この補完的な計算書の作成は欠かせないことになる。
Supplementary statements
87. A Supplementary statement is required where the differences in measurement or recognition are complicated or numerous, or in cases where a required specific statement might not be presented. It purposes to facilitate investors’ understanding of the full implications of a significant difference in accounting standards.
補完的な計算書
87. 測定または認識の違いが複雑になるか、多数である場合、あるいは、必須の特定の計算書が提示されていないかもしれないケースには、補完的な計算書が要求される。
それは、会計基準の重要な相違のかかわりについて投資家の理解を容易にすることを目的としている。
88. Supplementary Statements are pro-forma statements, prepared and presented on the basis of third country GAAP accounting principles and of the issuer’s primary financial statements, but whose objective is to remedy the lack of equivalence on certain specific issues by modifying the amounts presented in the primary financial statements. They however do not purport to present the financial position and results of the issuer as if all IAS/IFRS had been fully complied with. 88.補完的な計算書は、発行者の基本的な財務諸表で、第三国の会計基準を基礎にして作成された、プローフォーマ計算書であるが、基本的な財務諸表に表示された金額を修正することによって、特定の問題に関して同等性の欠如を直すことで救済することが目的である。
それは、国際会計基準をすべてに準拠したかのように、発行者の財政状態および経営成績を表示する趣旨ではない。
89. Supplementary statements will at least be presented in the form of condensed income statement, balance sheet and possibly cash flow statement and supported by the range of additional disclosures described above. 89. 補完的な計算書は、少なくとも要約された損益計算書、貸借対照表およびキャッシュフロー計算書の形で表示されて、上記に規定されている追加開示の内容によって説明される。

中間報告書のパラグラフ139に、国際会計基準(IFRS/IAS)の個別会計基準ごとに詳細に日本基準との相違を検討・評価し、重要な相違ごとに救済措置(Remedy)として追加情報の程度(Disclosure A〜C)を記載している。その中で、補完的な計算書(Supplementary statements)を求めている項目は上記3つであるが、会計処理方法の違いを文章(narrative)および数値(quantative)で説明を加えることが求められている事項は、IFRS2号「ストックオプションの会計」を含んで多岐にわたり【上記日経の記事では23項目、具体的にはパラグラフ139(39〜56ページに規定)参照】、@相違点を纏めるには実務上は相当な作業量となること、A相違点を文章または数値で簡潔明瞭に分かり易く説明することは(パラグラフ90で要求)、国際基準で財務諸表を作成するより困難が伴うこと、が予想される。

つまり、日本の会計基準について国際基準と同等であると認めることによって、@日本基準の財務諸表での開示を認めるが、加えて、A投資家の理解を容易にするため国際基準との相違に関する追加情報(補完的な計算書を含む)の開示を求める、という、単に国際会計基準で再表示(Restatement)するより複雑な開示を求められることとなった。(パラグラフ132) なお、国際会計基準に準拠した財務諸表に再表示(Restatement)を求めるのは、同等性がないと評価した場合にのみ適用される(パラグラフ64、65)。

海外連結子会社がある場合は、海外では100カ国(地域・国際機関を含む)を超えて国際会計基準を適用する現況を見れば、海外の子会社が国際会計基準に収斂される中にあっては、親会社の日本が国際会計基準を適用する方が簡単になることは明らかであるし、追加情報で説明を加えることことが必要となる場合は、初めから、国際会計基準を適用したほうが投資家にとっても分かり易いということができよう。


CESRの中間報告書発表の直前、2005年4月4-5日英国勅許会計士協会(ICAEW)の125回記念コンファレンスが、ブラッセルで、「グローバルな資本市場:ビジネス、政府および専門職の挑戦」と題して行われた。各国、国際機関から錚々たる人物が出席しスピーチしており、日本からは金融庁式部透氏(Toru Shikibu, Deputy-Commissioner, Japanese Financial Services Agency)が日本の従来からの主張を繰り返した(金融庁主張の全文参照)。欧州の専門家が日本に対する回答書として作成したCESRの中間報告書と比較してみると、日本外交交渉の研究に役立つのではないでしょうか。欧州市場から日本企業の上場廃止(撤退)の脅迫(Threat)で対応し、健全な市場の理念・ビジョンを示せず(国際会計基準を無視、付け焼刃の戦略無き外交交渉であったことは確か。 (21世紀政策研究所理事長 田中直毅氏は、「日本の株式市場の設計は、いまだに総合的な戦略が定まらない」としている。・・投資社会の市場規律(2005年2月)より)

なお、経済産業省は「我が国企業会計の国際化に関する研究会中間報告」を公表し、日本経団連は「2005年問題-産業界の対応-」で、ともに「相互承認」を主張し、官民挙げての大政翼賛会状態である( 「2005年5月9日五味金融庁長官記者会見の内容」参照)。

CESRの今回の中間報告は、日本の会計の現状が初めて公の場で明らかにされたという功績はあるが、日本自らが日本の会計を真摯に分析し判断すべき内容であった。日本は、会計ビッグバンで会計基準を改善したのだから「国際基準と同等になった」と設定者・当局等の自己評価・方針のみであった。これまでに失われた時間は大きい。日本は、二度と同じ過ちを繰り返して欲しくないものだ。これを契機にレジェンド(警句)の解消視野に入れた日本の会計のビジョンを内外に示すべきとき

伊藤金融担当大臣が4月29日から5月4日にかけて訪米
し、米国SEC、FASB、日米証券関係者と対話を進めると表明したが、日本のビジョンが明示されなければ米国側は目的がわからず困惑するのでは?単なる日本側の勉強会か?SEC速報で5月3日に意見交換した旨伝えているが、FASBおよび日本の企業会計基準委員会(ASBJ)の双方はニュースに取り上げていない(05年5月10日の伊藤金融担当大臣記者会見内容 金融庁の5月11日のニュース⇒「ハイレベル・ミーティングEU-Japanの例を見る限り実りあるものは期待できない」 参照)。(注意:なお、米国会計基準を適用している国は米国以外にはなく、米国以外の海外連結子会社は国際会計基準を適用するケースが多い。)


同時に会計基準の同等性を評価されたカナダでは、中間報告書が出る直前の3月31日カナダ会計基準審議会(AcSB)はカナダの会計基準に関する戦略的計画(7月末までにコメント要請)」を公表した。これによると、上場会社、非上場会社、非営利組織の会計基準に区分し、上場会社の会計基準については、5年の経過期間をおいてカナダ会計基準を国際会計基準(IFRS)に収斂させ、5年後にはカナダ会計基準を廃止する、としている(上記●2005年3月31日カナダ参照)。

米国については、2005年4月22日
EUの市場担当コミッショナーであるチャーリー・マクリービー氏(前アイルランド財務大臣、勅許会計士が、訪米し、米国SECと欧州が適用した国際会計基準(IFRS)の同等性について合意に達した。すなわち、米国は2007年に、遅くとも2009年までに、SECが課している米国会計基準との差異調整表の開示義務を無くすことで合意した(EUのニュース SEC速報 同日、SECの主任会計士ドナルド・ニコライセン(Donald T. Nicolaisen)が会計基準収斂の道筋Roadmap)を描いて見せている 欧米のマスコミ報道 日本の報道なし 参照)。欧州・米国双方の理念は一致しており統一の努力が計画的・着実に重ねられてきている。


なお、これまでの日本に関する経緯は、1993年11月に開催された国際会計基準委員会の定例理事会で企業間・国際間で比較可能な財務諸表を作成するための会計基準設定に、理事国14か国中日本は唯一反対した時を、あたかも第二次世界大戦直前の国際連盟を脱退したときの松岡洋右にたとえ、日本が国際会計基準を背にして今日に至る経緯を克明に著した「国際会計基準戦争」(2002年10月、日本経済新聞の記者磯山友幸氏著)がある。石川純治駒沢大学教授の書評 参照

2005年4月6日、ASEANは、 「2010年までに証券市場の一体化で合意」し、これに先立って、ASEANの主要取引所であるシンガポール証券取引所は、上場会社に国際会計基準、米国会計基準、シンガポール会計基準のいずれかの財務諸表の提出を要求(ASEANの規制 参照)

2005年5月9日五味金融庁長官記者会見の内容  新聞報道とは相当異なる内容 

金融庁5月18日公聴会へ参加専門家の技術的評価に対しかなり乱暴な主張(同じ主張を米国SECとの対話でも行えるか見もの)。

(担当したCESR-Finの議長John Tiner氏は、英国FSAのチーフエグゼクティブで、アーサーアンダーセン出身の英国勅許会計士とあり、会計基準の同等性を評価したCESRのワーキング・グループは、専門家・実務家で約半数が大手国際会計事務所ビッグ・フォーに所属する現役会計士。 対する日本の戦力(参加者)は金融庁2名、企業会計基準委員会、公認会計士協会、経団連1名ずつの計5名。

5月18日公聴会ニュース・・ブルームバーグ
「世界第二位の自動車会社トヨタも欧州で上場している」との発言。1兆円を超える純利益を上げている企業がコスト負担が重いとでもいいたいのか、撤退すれば欧州市場に影響があると脅しているのか、意味不明。トヨタは米国会計基準を適用し影響は少ない。そもそも欧州市場を撤退するかどうかは個別企業の問題、国がすべきことは日本の会計制度の整備のはず。
>・・・日本経済新聞の報道・・
日本は、企業側の論理でかなり苦しい主張を行った模様。タイナー議長は証券監督規制当局として投資家保護の観点から投資家側の当然の論理を展開。

Investor Benefit
Still, CESR is ``looking at this through the lens of the investor,'' Tiner said at another point of the hearing. ``The costs generally will be incurred by the issuer and the benefits largely will go to the investor.''


米国・カナダの代表は公聴会に出席しなかったとのこと。ほぼ日本専属の公聴会になり日本側は十分主張できたはず。主張は@欧州市場からの撤退を仄めかす、A企業の負担が重くなり軽減して欲しいというもの。しかし、@企業が撤退するかどうかは個々の企業が決める問題、国が口出しする問題ではない。A企業負担が重くなるかどうかは、個々の企業の事情によって異なり(米国会計基準適用のトヨタは影響少ない)、国が口出しする問題ではない。投資家保護(Investor protection)を実現すべき立場にある証券監督者が行うべきは、国際間の不整合を解消すべく制度整備を行うことにある。これにより企業にも便益を与えることになる。米国・カナダはそれを実践している最中である。

5月27日、金融庁は「欧州連合の証券規制委員会(CESR)に対しパブリック・コメント(電話・FAX・Emailアドレスなしの不思議なレター)」を提出した、と公表した。主張は従来からの繰り返しで、@日本企業にとって「多大なコストと負担」がかかる、A会計基準の技術的詳細に基因する差異を「重要な相違」とすべきでない、とし「我々の見解を真剣に考慮してくれるとありがたく思う」というもの。(日本経済新聞2005年5月28日 報道はされなかったが、同日、企業会計基準委員会も金融庁の意に沿ったASBJのコメントを、経済産業省、経団連、日本公認会計士協会も同様のコメントを提出している。(CESRのサイト参照<日本のコメントは、日本公認会計士協会会長を除いて、Emailアドレスなど連絡先が書いておらず言いっ放しの文章であるのが気懸かり。経団連は企業名は書かれているが誰が書いたのか氏名の記載さえない。書いた人の連絡先を記載しないと相手の意見を聞こうとしない傲慢な姿勢と思われても仕方がない。連絡先を記載した所属組織のレターヘッドを使用して公式文書を出すのがビジネス文書では一般的なのだが・・・通常、レターヘッドを使用すると無責任な発言は抑制される。ただし、金融庁のように電話・ファックス・Emailアドレス・URLを全く記載しない場合は機能は半減。金融庁はロゴ入りで住所記載のレターヘッドを使用しているが、経済産業省のコメントにいたっては金融庁の主張と同様の内容のコメントを、白紙の用紙に日本政府の文書とタイプしている・・受取った方は公式文書かどうか困惑するのでは・・・>)

コメントには金融庁の「会計基準」に対する認識が明示されている。 @専門家の技術的評価の結論を、単に一刀両断で「重要な相違」とすべきではないと切り捨てる金融庁とA市場から資金を得る企業の負担は投資家の視点からやむを得ぬ範囲と考える欧州(上記英文タイナー議長の発言)との戦いである。欧州は25カ国の合意を背景としている。なお、技術上の細かい違いに着目し過ぎるとの金融庁の主張は、お門違い。なぜなら、担当したCESR-Finは財務報告に関する専門家機関で、専門的な評価をする欧州委員会のメカニズムであることを最初から表明していたのだから、当然の結論を出したものといえる。専門家を軽んじ、官僚が権限を握る日本と専門家の意見を尊重する欧州との意識の差を感ずる。

日本の企業会計基準および証券取引に関する開示制度の権限を一手に握っている金融庁の考え
は、結果として「日本の会計士の数を制限」し、「証券市場で外国企業を締め出し実質的鎖国状況となっている」ことに表れ、欧州連合の「会計基準の同等性評価」で初めて国際的な場で浮き彫りにされた。

なお、2004年6月23日金融庁の金融審議会は「外国会社等の我が国における開示書類に係る制度上の整備・改善について」を公表し、開示基準には外国会社に「対照表」および「補足情報」を日本語で求めておりEUの日本に対する要求と似たようなもの。金融庁はCESRの上記草案が出る前の2005年3月には証券取引法の改正案を衆議院へ提出し、外国会社に「補足書類」の添付を求めている(証券取引法改正条文 参議院審議状況(6月22日可決成立) 参照)。

参考;「英米で上場している日本企業」 「国際会計基準の適用事例」 参照

欧州・米国サミットで会計基準の統一で合意(2005年6月20日)
2005年6月20日、米国ワシントンで行われた米国・欧州サミットで、「可能な限り早く会計基準を収斂させることを促進する"promoting convergence of accounting standards as soon as possible".」 ことで合意した。(ホワイトハウス速報 欧州連合速報 参照)

米国FASBと国際会計基準審議会IASBが、企業結合の会計基準ではじめて公開草案を共同公表
2005年6月30日、FASBとIASBは、企業結合の会計基準について双方の会計基準を一致させた草案を公表した(IASB’s IFRS 3 Business Combinations and the FASB’s Statement 141 Business Combinations)。

すべての企業結合について、どちらか一方が他方を取得する一つの方法(a single method)のみを採用する。取得時の公正価値で「のれん」を認識し、取得者ばかりでなく、従来少数株主持分(minority interests)としていた非支配の持分(non-controlling interests )にも配分する。非支配の持分(non-controlling interests )は資本取引として持分(equity)に区分表示する。(IASBニュース FASB141号草案 参照)

2005年7月5日CESRの最終結論(141ページ)が5日遅れで提出された。4月27日の中間報告(138ページ)と大きな相違はない。(CESRニュース 欧州上場の域外企業に追加開示義務付け・EU委報告 EU May Seek More Disclosure From U.S., Japanese Firms  参照)
金融庁が解説しています。EUにおける我が国会計基準の同等性評価の進展状況

@カナダは、「カナダの会計基準に関する戦略的計画(7月末までにコメント要請)」を公表し、5年の経過期間をおいてカナダ会計基準を国際会計基準(IFRS)に収斂させ、5年後にはカナダ会計基準を廃止する、としており、A米国は2007年に、遅くとも2009年までに、SECが課している米国会計基準との差異調整表の開示義務を無くすことで合意した(EUのニュース SEC速報 参照)。欧州・米国双方の理念は一致しており統一の努力が計画的・着実に重ねられてきている。(上記「企業結合の会計基準」IASBニュース参照)。

日本も国際会計基準との差異を無くす努力がはじめられつつあるが、緒に就いたばかり。2005年3月9日と10日に、IASB議長デビット・トゥイディ氏一行が訪日し企業会計基準委員会(ASBJ)を訪問、共同プロジェクトの作業を開始した。日本側が提示した最初の検討事項は、@たな卸資産の評価(IAS1号)、Aセグメント情報(IAS14号)、B関連当事者の開示(IAS24号)、C海外子会社の会計方針の統一(IAS27号)、D投資不動産(IAS40号)の5件のみ。検討日程などは示されていないので結論がいつになるか不明。日本は常に不透明。 (IASB3月11日のニュース 参照)

今回CESRから評価を受けた日本の会計基準は、証券取引法を所掌とする旧大蔵省(現金融庁)が設定してきたもの。
現在でも、金融庁は、金融庁設置法第4条十七  企業会計の基準の設定その他企業の財務に関すること」を行うことになっているのである。2000年7月に発足した金融庁は、唯一日本で会計基準の設定権限を金融庁設置法という法律の下に持っている組織として、CESRのこの評価を受けてどのように対応するか注目されるところである。2001年8月に発足した企業会計基準委員会には法的に認められた権限はない。金融庁は財務諸表等規則等に係る事務ガイドライン(企業会計基準委員会の公表した各会計基準の取扱いについて)を公表することで権限を堅持してる。
したがって、法律では、日本の会計をどうするかは金融庁の判断次第なのである。(金融庁総務企画局企業開示課 参照)
                             ↓  ↓  ↓  ↓
●「会計基準の国際化に関する質問主意書」 提出者伴野豊氏 2005年6月27日162回国会#87衆議院提出  経過へ
会計基準の国際化に関する質問主意書
5 わが国の現行の会計基準は、EU域内において「国際的な会計基準と同等なもの」と認められると考えているか。
 右質問する。

2005年7月5日金融庁の回答

5について
 欧州委員会(EC)は、我が国、米国及びカナダの会計基準が国際会計基準と同等であるかどうかの評価を行っており、そのため、欧州証券規制当局委員会(CESR)が欧州委員会に対して技術的助言をすることになっている。我が国の会計基準は、これまでの整備や改善を通じて国際的にも質の高いものとなっており、欧州証券規制当局委員会が本年四月二十七日に発表した技術的助言案では、我が国の会計基準は米国やカナダの会計基準とともに一定の補完措置をとる必要があるとされているものの、全体として国際会計基準と同等であると評価されている。欧州委員会は、本年末又は二千六年初めまでに最終的な評価を行う予定であり、我が国の会計基準が全体として国際会計基準と同等なものであると評価されるように、金融庁において、国内の官民の関係機関と緊密に連携して、適切な対応に努めてまいりたい。


結論は今もって金融庁は会計基準に対して具体的なビジョンなし。
企業会計基準委員会の創設のときと同じように、最後の最後まで引延ばすであろう。
2005年8月31日金融庁の平成16年度の実績評価書」が公表され「会計制度の国際的対応の促進」について評価している。内容は自画自賛の評価であり、目新しいものは全くない。

1989年11月、ソニーは米国映画会社コロンビア・ピクチャー(現ソニー・ピクチャー・エンターテイメント)を約6千5百億円で買収、うち「のれん」は3千5百億円を計上、1994年には減損会計を適用し2,650億円の未償却のれんを一時償却する。
翌年の1990年11月、松下電器産業はソニー同様、米国映画会社MCAを61億ドル(約7,800億円)で買収し巨額の「のれん」を計上した。松下は1995年4月、MCAをカナダの会社に57億ドルで売却する。
ソニーおよび松下は、米国SEC登録の会社で米国会計基準で会計処理をしており、当時は、無形固定資産である「のれん」の最長耐用年数が40年であったため、償却負担が少なく企業買収が可能であったと言えよう。日本の商法(現・商法施行規則第33条)では「のれん(営業権)」の償却期間は5年であった。つまり、日本企業が、国際的競争の中でハンデを負っているのである。

最近、日本のIT企業が「日本の企業結合の会計」について、国際的な競争力を高めるため国際基準に合わせて買収法のみとし「のれん」に減損会計を適用して欲しいとする要望が出されているが、上記ソニー、松下のケースを思い出して欲しい。
◎合併会計の基準見直し訴え2005年3月10日、 12:45:16)<河北新報社 共同通信
 楽天の三木谷浩史会長兼社長ら新興企業の経営者が10日、自民党の会議で、買収する企業のブランド価値などを表す「のれん代」の会計処理の基準について、「企業再編の道を閉ざし日本経済の発展に著しい悪影響がある」と批判、合併会計基準の見直しを訴えた。  来年4月から新しい合併会計基準の適用が始まるが、本格的な企業買収時代を控え「経済実体と遊離した会計基準」(議員)との批判が出ている。有力な企業経営者から強い見直し要請が出てきたことで、今後の議論に一石を投じそうだ。  ローソンの新浪剛史社長も「企業買収がやりやすい国際会計基準と異なる基準では、平等な競争ができない」と述べた。  来年4月からの合併会計基準では、のれん代を20年以内に償却する。
◎三菱東京、UFJ合併で、米国会計基準適用の4兆6千億円の「のれん」は償却不要 参照

●2005年(平成17年)8月5日(金)経済産業政策局企業行動課の「企業会計研究会」(経済産業政策局長の私的研究会、座長:安藤英義一橋大学商学研究科教授)において、中間報告書(案)が取りまとめられました。9月4日までコメントを求めています。経済産業省が、日本企業に不利な日本の企業結合の会計基準(のれんの償却を強制)を支持するのは不思議9月6日、「企業会計研究会中間報告書」を公表。

2005年12月8日EUの市場担当コミッショナーであるチャーリー・マクリービーは、EUの同等性の評価を下記の通り米国のロードマップ(少なくとも2009年までに米国基準との差異調整表の添付を解消する)に合わせる形で、当初EUが「2007年から」としていたものを2009年まで2年延期する見解を表明している。(プレスリリース ニュース 参照)

Equivalence between third country GAAP and IFRS
 Making IFRS work in the EU puts us in a position to be able to claim an even bigger prize: greater access of EU companies to global capital markets. This should include removal of the reconciliation requirement to US GAAP for companies which list in the US. The US SEC agreed to a Road-map in April 2003 with the aim of working towards this at the earliest in 2007 and at the latest in 2009. In the EU we are, of course, also looking into the use of third country GAAP in order to establish whether these might be considered equivalent with IFRS.
 For the moment, my view is that the best way to proceed is for the EU to defer an equivalence decision and prolong the status quo, rather than taking any decision now. This option would align the EU’s equivalence agenda with the US Roadmap for dropping the reconciliation requirement for foreign issuers in the US. It would mean we could work in parallel towards common agreed objectives.

現状のままでは、EU側で新たに2007年と2008年の2年間についてだけ米国会計基準との差異説明が必要となり、2年間のみ企業に負担を強いることになる。そこで、対米国との現実的対応を迫られたマクリービー氏の上記発言があり、EUが適用を2009年まで2年延期する可能性は高くなった。日本は尻馬に乗ることになる。(2006年4月20日、日経金融新聞記事「会計基準統合、09年決着目標――金融庁、EUと協議へ」 参照)

欧州連合(EU)25カ国の上場会社約7000社が2005年1月1日から国際会計基準(IAS/IFRS)の適用を義務つけられ、現在米国基準で開示している会社も2007年まで適用を延期している。そのうち、約300社から450社が米国SECに登録している欧州の会社と見られている。

2004年12月8日、SECの主任会計士ドナルド・ニコライセン(Donald T. Nicolaisen)は米国公認会計士協会の総会で国際会計基準の取り扱いについて語った。「現在、SECに登録されている欧州企業のうち国際会計基準の財務諸表を登録している会社は50社以下であるが、2005年以降は500社を超える会社がIASで登録してくることが予測される。2006年の第二四半期に、2005年度のIASと米国会計基準との差異調整表を検討し、できる限り速やかに差異解消を促進したい」としている。(米国は、上記ロードマップで2009年までに差異調整表を解消するとしている)

(現在、SEC規則で、米国以外の会計基準(国際会計基準を含む)で開示している外国の上場会社には「米国会計基準との差異調整表(U.S. GAAP Reconciliationという・・「Regulation S-X Article 4-Rules of General Application § 210.4-01.(a)(2)」参照)」を開示することを義務付けている。)

EU grants U.S. and Japan reprieve on accounting rules
Bloomberg News FEBRUARY 1, 2006
  reprieve━━ n., vt. 【法】(死)刑の執行延期(をする); 一時的に救う ((from)); (苦しみなどの)一時的な軽減.

2006年3月24日日・EU規制改革対話ブリュッセル会合で、「会計基準の同等性判断決定についてEU側より、欧州証券規制当局委員会(CESR)の技術的助言、国際会計基準(IAS)のEUにおける導入後の状況、日本や米国の会計基準のIASとのコンバージェンス作業の進捗を考慮する必要があるとした上で、欧州委としては、マクリーヴィ委員が既に発言しているとおり、最大限のコンバージェンスが実現するよう、同等性判断の決定時期を2年間延期し、2009年まで現状を維持することが最善の道筋と考えており、欧州委としての提案内容が決定次第、日本の当局にも送付する旨述べた。」⇒下記原文の提案では2008年まで現状維持となっている

2006年4月20日、日経金融新聞記事「会計基準統合、09年決着目標――金融庁、EUと協議へ

2006年4月24日、欧州委員会の会計規制委員会the European Commission's Accounting Regulatory Committee (ARC) )は、米国、日本、カナダに対して、2008年12月31日まで会計基準の同等性の評価の決定を2年延期する提案をした。(6月に、目論見書指令および透明性指令の改正で決定 )
Article 1
An issuer whose registered office is in a third country and which uses the Generally Accepted
Accounting Principles of the United States of America, Japan or Canada, shall be allowed to
continue using such Generally Accepted Accounting Principles until 31 December 2008.
  ・Draft Commission Decision on Non-IFRS GAAP (PDF 20k)
  ・Draft Amendment of Prospectus Regulation (PDF 24k)

2006年5月2日中国証券管理委員会(CSRC)米国証券取引委員会(SEC)対話を促進することで合意し、会計基準の国際会計基準への収斂、両国の報告基準の調和などに関して検討するとしている(SEC速報 参照)。(日本もSECと協調・対話する旨、2006年1月30日に公表しているが、中国の方が具体的・・SEC速報 金融庁日米ハイレベル証券市場対話」・・SECの英文と異なり曖昧で具体性に乏しい。 参照)

2006年5月15日から19日まで、欧州連合(EU)域内市場コミッショナー、チャリー・マクリービー氏が、中国(北京・上海・香港)を訪問し中国当局と会計基準・上場規制などについて対話を開始した。(EUニュース 会計・監査基準の協働について(16日北京) チャリー・マクリービー氏のスピーチ(18日上海・上場規制について) ロイター 16日新華通信ネットジャパン 参照)

2006年5月19日企業会計基準委員会ASBJは、米国財務会計基準審議会(FASB)とグローバル・コンバージェンスを目指して協議を開催したと報じた。しかし、ゴール(例えば、いつまでに米国が日本基準との差異調整を解消することを目標とするなどのロードマップは示されていない)が何なのか具体性を欠く協議。

「日系企業が中国携帯電話市場から続々撤退、日本政府の「過保護」が裏目に(日経BP2006年03月20日)」⇒日本政府(金融庁・経済産業省)の支援で国際会計基準に背を向けて続けており結果として「国際会計基準EU域内上場の日本企業にも◆負担増、22社が撤退 2007年問題 野村、商船三井など(読売05年9月14日)」「欧州での上場廃止に向かう日本企業(大和総研06年5月30日)」として日本政府の過保護が裏目に出ている。独りよがりに世界基準に同等だと主張するが理解を得られず日本の会計基準が孤立しているのを見るに携帯電話の2G時代の日本標準と同様に見える。・・ただし、携帯電話の場合は、2G時代の経験・教訓を生かして、国際的に普及している3G標準で、日本政府は早期に3G免許を交付し、自国の通信事業者と設備製造業を発展させ、海外進出を刺激することを決めた。  さて会計基準は・・・・

2006年7月7日開催される欧州会計規制委員会(ARC)の同等性の決定2年延期に関する透明性指令改正案」および「目論見書指令改正案」が公表されている。日本・カナダ・米国の会計基準について、同等性の決定を2年間延期するが、日本の国際会計基準審議会との差異を無くす努力、カナダの5年後には国際会計基準を適用、米国の2009年までに差異調整を無くす努力についてモニターし、その進捗度合いによって2009年以降についての対応を決めるとしている。日本の時間稼ぎも限界にきていると言えよう。

2006年6月日本経団連は「会計基準のコンバージェンスに対する経済界の考え方を公表」し日本経団連として会計基準のコンバージェンスの加速化を支持する立場を表明した。初めてのことである。

2006年7月24日IASBは、2009年1月1日までは新たな会計基準や現存の会計基準の変更について適用を凍結することを発表した。頻繁な会計基準の公表や改正が各国の翻訳・法律化の時間的制約もあって追いつかないという要請に応え、かつ、欧州のIFRSの適用定着を見据えることもあって適用を凍結した。この2009年の設定は、まだIFRSを適用していない国々に新たに適用するターゲットの日を提供することにもなるだろう。(日本のニュース IASBのニュース 参照)・・・暗に日本に向けて凍結しているかのようである。

日本政府が一転して「会計基準の国際的な収斂の促進を指示」(2006年7月)
2006年7月7日、日本政府は「骨太の方針2006」を閣議決定し、その12ページには、「平成21年(2009年)に向けた国際的な動向を踏まえ、会計基準の国際的な収斂の推進を図る。」と指示している。

2006年7月19日 第11回企業会計審議会 企画調整部会 議事要旨 資料 会計基準を巡る国際的な動向

2006年7月31日
第12回企業会計審議会 企画調整部会 議事要旨

議事録
資料 会計基準のコンバージェンスに
向けて(意見書)
⇒3ページ目に「工程表
の作成を言っているだけ。依然と姑息。

「工程表」の記事
議事録を見ると、企業会計基準委員会と金融庁の認識に差があるようだ。

池田唯一企業開示課長2004年7月就任)・・我が国の、世界の中で大きい証券市場を抱えている国として、やはりそこで用いる会計基準というものは、その市場に参加する市場関係者が、まさにデュー・プロセスの中で決めていくということに、それ自体に大変大きい価値を見出しているというのが現状だというふうに理解をしています。
〜自ら決めるということを守るために、相応のコストが払われていることなのかというふうに理解をしています。金融庁設置法において、金融庁は企業会計の基準の設定、その他企業の財務に関することというものを任務としているわけであります。〜民間の設定主体にその作業を行って頂いているわけでありますけれども、金融庁自身は、そういう会計基準の設定、その他の企業の財務に関することについては、最終的には政府の一部として責任を持っているということであります。
斎藤静樹委員(ASBJ企業会計基準委員会委員長)・・企業会計審議会が会計基準設定について最終権限を持つ金融庁の諮問機関であって、その権限を実質的に引き継いだASBJとの役割分担がいまだ法定されていないという事実を考えますと、私はこの審議会がASBJにおいて審議すべき基準の内容はもちろん、審議テーマの優先順位についても、余り具体的な注文を出すことはなるべくなら避けて頂きたいと思っています。
○池田企業開示課長・・〜私ども2009年に向けた同等性評価の結果が芳しくないものであれば、冒頭に申し上げたように、会計基準の整備あるいは会計制度の整備というのは金融庁の任務であるわけですから、それは相応のご批判は受けるものだというふうに考えていて、ここに書く、書かないで、私どもの責任がなくなることは決してないというふうに理解をしています。


金融庁人事異動・・
なおEUとの交渉を進めていた総務企画局審議官(国際担当)式部透氏は、2006年7月28日に財務省に出向し近畿財務局長に就任、後任は丸山純一氏池田氏の前任者である羽藤秀雄氏は古巣の経済産業省へ戻って、従前同様に、会計とは全く関係ない仕事に従事している。・・上記議事録を読むと、官僚が決めていることがよくわかるが、金融庁が責任を負うことがあるでしょうか。過去に責任を取ったという事例があるのでしょうか。どのようにとるのでしょうか。企業会計基準委員会の創設のときのように金融庁の権限のみに興味を持っていないように思われる。ちなみに米国SECの主任会計士前任者ニコライセン氏は元PwC、現ヒューイット氏(Conrad W. Hewitt)E&Y出身者で会計の知識・経験豊富な会計士である日本側は権限を振り回すだけの素人同然。
2006年8月8日 第110回 企業会計基準委員会 議事要旨 工程表」についてなにも議論していない。
2006年8月 参考:企業会計基準委員会斎藤静樹委員長著「グローバル・コンバージェンスと日本の会計基準」 参照
 
世界の会計基準設定主体はIASBとアメリカの財務会計基準審議会(FASB)、それに日本の企業会計基準委員会(ASBJ)の三極になるとみられている。」⇒ほんと? 実務の世界では日本の会計基準の知名度はない。日本語で、まとまった基準書はないし、英語版もない。ましてや、日本企業が欧州市場から撤退していては海外に日本の会計基準を知ってもらうチャンスはなくなる。

企業会計審議会は、具体的な方向性を示しておらず、政府の方針が出ても意見統一できていない。正しく現状認識ができていない。そもそも「工程表」の期日さえ明示されていない。EUと交渉を継続というけれで、もともとEUと2004年から交渉して2005年に26項目の補正措置がでてきたのであって、それを予測できない日本の当局者達に何を期待しようというのか不思議な意見書である。そもそも投資家保護のインフラである会計基準が交渉で決まるはずはない。偏見のない中立性(neutrality)が求められるのだから(財務報告の目的 参照)。時間の浪費はまだ続く

注意:@国際基準の表示(IAS1号)は、2期比較であることから、2009年だけでなく2008年も同一基準の財務諸表を作成する必要があり2007年末の在庫評価(IAS2号)など2007年末の貸借対照表を確定しておかなくてはならない(IFRS1号)、A監査も国際基準が求められ欧州と同様に国際監査基準の適用も制度化する必要がある26項目に及ぶ相違を、2009年に国際基準に収斂させるための日程は残されていない。】
M&A(企業の合併・買収)の会計処理に適用する企業結合会計などが修正要求の対象で、金融庁はEUの要請に応じる意向2006年7月29日日本経済新聞」(ニュース 参照)

2006年8月2日米国証券取引委員会SEC)と欧州証券規制委員会(CESRは、両市場に上場会社の財務報告に関し、高品質の会計基準の開発、国際基準の高品質で一貫した適用、両市場での適用に関する相互理解、国際基準と米国基準の整合ある規制および適用に係る共同作業を開始した。半年に1回会合し、必要と認めた場合は追加会合することを決めた。(SEC速報 CESR-SECの作業計画 会計共通化のニュース 参照)

2006年8月22日ロンドン証券取引所のAIM日本の会計基準を認めないとするルールを公表した。2005年12月21日の当初案では、米国会計基準に加えて日本の会計基準も認める案であったが最終的に日本の会計基準は認めないこととなった。(日本語ニュース 参照) 米国は2008年までに欧州と相互調整し、カナダは5年内に、オーストラリアは2005年に国際会計基準に移行することを表明していた。日本だけが理解不能・不明瞭・曖昧であった。(孤立の日本 参照)

2007年2月20日ロンドン証券取引所AIMは、改定ルール(AIM27)を公表し、19項で、年次報告書について日本の会計基準で作成した財務諸表でもよいと一転した。

AIMとは、Alternative Investment Marketの略称で、国際的な新興の小さな成長企業(smaller growing companies)を対象とし、投資家は95%が機関投資家(投資の専門家)というユニークな市場で、1995年ロンドン証券取引所に創設し2006年8月16日現在約1590社が上場している。2006年7月16日、指紋認証技術をもった日本企業のセキュアデザイン(株)(Secure Design Institute KK (SDI) )が初めてAIMへ上場している(AIMニュース SDI社のプレスリリース 参照)
ちなみに、ロンドン証券取引所の筆頭株主は米国ナスダックである(ニュース参照)。

AIMの参考資料:(AIMは、投資家の95%が機関投資家で、ロンドン証券取引所の承認されたNOMADが市場のルールの説明、デュー・ディリジェンス等を行い、設立間もないアーリーステージの国際企業の株式市場というユニークな市場。最近では、米国ナスダックがサーベンス・オクスレー法により規制・コスト面で上場のハードルが高いため、比較的緩やかなAIMへの上場が増えている。)
・「AIMの人たちが、シリコンバレーに営業に来たセミナー」の参加者[渡辺千賀]さんのブログ
Nomad(ロンドン証券取引所AIMに登録のNominated Advisors)であるCANACCORD Adams社の2006年AIMの解説

金融庁
は、2004年(平成16年)12月21日付けで、CESR(欧州証券規制当局委員会:EU加盟各国の証券規制当局で構成)が2004年10月21日に公表した「第3国会計基準の同等性及び第3国の財務情報の法執行メカニズムの説明に関する概念ペーパー案」に対して、パブリック・コメント・レターを発出しました。
その中で、「EUの機関投資家は日本基準を含む第3国会計基準について十分な知識を有すると想定できるが、個人投資家が十分な知識を有するとは想定し難いため、第3国会計基準が類似の判断を可能とするかどうか評価する上で、個人投資家ではなく機関投資家の見解が考慮されるべき。個人投資家は、概ね機関投資家を通じて第3国証券発行者の証券に投資していると想定される。同等性評価においてプロ投資家と個人投資家の区別は不要。」とコメントしている。今回のAIMの日本の会計基準を排除した結論は、AIMの投資家の95%が機関投資家ということで機関投資家の意見といえよう
Therefore, we respectfully request the CESR to ensure that views of EU institutional investors, not EU individual investors, are considered in assessing whether or not third country GAAP enables a similar decision.

●政策提言(2006年9月7日)「リーダーシップをもつオープンな日本へ
の中(31−32ページ)で、「(ハ)開かれた市場ルールの構築と会計基準の国際化・・国際会計基準審議会(IASB)というIAS設定の機構にメンバーシップを持つにも拘わらず、日本は、日本企業の競争力阻害の要因ともなっている独自の会計基準の正当性を主張し、こうした動きに距離を置いている。しかし、様々なルールが、「開かれた市場ルール」として国際標準の地位を得ようと競争を行っている中、政府は、規範形成における主導権発揮の基盤として、まず、この構築に邁進すべきである。すなわち、日本の会計基準を国際的な会計基準の方向性にあわせた改正を行い、企業の競争力強化を図るとともに、国際的な会計基準作りでの主導権発揮にも取り組まなければならない。将来にわたる日本企業の世界での活動への影響が懸念されており、日本はむしろ積極的に会計基準の統合を進めなければならない。また、情報通信技術にかかる法制を見直して整備することも必要である。」としている。まとめたのが、外務省の「世界の中の日本・30 人委員会塩崎恭久衆議院議員(小泉政権当時・外務副大臣/安部政権の現在・官房長官)。(「塩崎官房長官と公開会社法制の行方」by山口利昭法律事務所)

●日本経団連経済法規委員会の八木良樹企業会計部会長は9月17〜20日に訪欧
し、欧州委員会、国際会計基準審議会(IASB)、欧州産業連盟(UNICE)、現地欧州企業を訪問し、会計基準に対する日本経団連の考え方「会計基準の相互承認を求める」に対する理解と協調を求める。日本経団連タイムス2006年9月7日)(日本経団連タイムス2006年9月21日 参照)

2006年9月12日、EUの会計規制委員会(ARC)は9月26日にミーティングを開催し、その中で、第三国(日本、米国、カナダ)の会計基準について、特に米国のGAAPについて同等性の議論をするとしている。
規則(草案)  委員会の最終結論(草案) 
これによると、2007年4月1までに欧州証券規制委員会と欧州議会に第一回目の同等性の報告書を提出し、2008年4月1日までに相違に関する進捗の程度を報告し、2009年4月1日までに同等性に関するメカニズムを決定しなければならない、としている。

2006年9月28日、29日企業会計基準委員会(ASBJ)国際会計基準審議会(IASB)は、コンバージェンスに係る共同作業の4回目の会合をロンドンで行った。具体的には何も進展はない。工程表の話はどうなっているのでしょうか? (IASBニュース 参照 ASBJには10月2日に掲載)

2006年10月12日企業会計基準委員会は、「我が国会計基準の開発に関するプロジェクト計画についてーEUによる同等性評価等を視野に入れたコンバージェンスへの取り組みー」を公表し、「工程表」に該当する「プロジェクト計画表」「EUの指摘事項26項目の対応」をやっと公表した。欧州証券規制当局委員会(CESR)からの補正措置に対応して作成されたもので、日本の会計基準の全体像を示すものではないようである。なぜなら、継続事業と事業譲渡・会社分割など廃止事業の区分表示の会計基準(IFRS5号)や、財務諸表の表示に関する会計基準(比較財務諸表を求めているIAS1号)についてはこのプロジェクトに含まれていない。
国際会計基準に全面移行したほうが判り易い。なぜなら、今後は、既に出ている企業会計基準委員会の委員の考えや財務諸表規則等を管轄する金融庁の考えなど、日本特有な考えが反映され、国際基準との齟齬を把握する方が困難となる恐れがある(会計基準の数ほど差異が発生する可能性あり・・「企業結合の会計基準」然り、「純資産の部」然り)。加えて、株主に提供する会社法の計算書類があり、日本は、複雑怪奇な会計の時代がやってくる。例えば、四半期報告書は、有価証券報告書と同様に、株主に提供しないのでしょうか?(現行会社法に規定なし)

欧州委員会(EC)は、2006年10月25日目論見書指令および透明性指令導入を公表し、第三国の会計基準の国際会計基準への収斂状況のタイムテーブルを2007年4月1日までに第一回目の報告として欧州証券委員会と欧州議会へ提示しなければならない。 2009年になる6ヶ月前までに結論を出すがそれまではコンバージェンスの進捗状況をモニタリングするとしている。
5B By 1 April 2007, the Commission shall present to the European Securities Committee and the European Parliament a first report on the work timetable of the authorities responsible for national accounting standards in the US, Japan and Canada for the convergence between IFRS and the Generally Accepted Accounting Principles of those countries.
The Commission shall closely monitor, and regularly inform the European Securities Committee and the European Parliament about the amount of progress in the convergence between International Financial Reporting Standards and the Generally Accepted Accounting Principles of Canada, Japan and the United States of America and of progress on the elimination of reconciliation requirements that apply to Community issuers in those countries. In particular, it shall inform the European Securities Committee and the European Parliament immediately if the process is not proceeding satisfactorily.

金融庁、2006年11月27日、第一回日EU・会計基準の動向に関するモニタリング会合が行われ、金融庁側からは、企業会計基準委員会によるコンバージェンスに向けた工程表及びそれに沿った着実な進展について説明が行われた。2007年前半で第二回目の会合が予定されている。

2006年12月28日、安倍内閣の、経済財政諮問会議二十一世紀ビジョンに関する専門調査会の一つであるグローバル化改革専門調査会(会長・伊藤隆敏東大教授)は経済連携協定(EPA)の締結の拡大とそのために必要な農業改革、金融・資本市場の強化策のそれぞれを検討する作業部会の設置を決めた。金融・資本市場の作業部会の検討項目としては@東京証券取引所をロンドンに並ぶ市場にするための方策、A金融・証券取引の監督手法の在り方、B日本の会計基準や証券税制を国際的に調和させることーなどを設定。

日本政府の本気!
訪英中の山本金融相は、年明けの2007年1月9日、証券制度の改革や、会計基準の国際基準への統一などを進めるため経済諮問会議の下に研究会を発足させる方針を表明した。「改革を進めなければ東京市場は香港、上海、シンガポール市場に取り残される」と強い危機感を表明。(毎日新聞)
金融・資本市場ワーキンググループでは1月中に第1回会合を行い、2・3月集中的に議論した後にグローバル化改革専門調査会に報告し、春先にはグローバル化改革専門調査会としての報告書を取りまとめる見通し。(伊藤グローバル化改革専門調査会会長 記者会見要旨)
金融・資本市場ワーキンググループでは、かなり面白い議論が展開されている。・・4月13日「国際会計基準(IFRSs)に基づく開示の容認(論点整理)」
経済産業省提出の資料(6ページ目)
<競争力ランキング>
@銀行規制 A監査及び会計プラクティス B金融スキル Cベンチャーキャピタル 
1 デンマーク 1 デンマーク 1 アイスランド 1 アメリカ
2 香港 2 フィンランド 2 スイス 2 香港
3 アイスランド 3 オーストリア 3 香港 3 フィンランド
4 フィンランド 4 スウェーデン 4 デンマーク 4 デンマーク
5 ノルウェイ 5 香港 5 アイルランド 5 オランダ
44 日本 51 日本 45 日本 23 日本
(出典)IMD World Competitiveness Yearbook 2006 より。「2007年は中国にも追い越され」「2010年国際競争力で日本は27位(前年17位)
・・日本はかなり低い位置にある。日本を擁護していた経済産業省も真実の資料を提出しつつある。自画自賛の金融庁からは出てこない資料。

シティ・オブ・ロンドン(ロンドンのシティ地区の行政機関)が金融センターとしての競争力(国際金融センター指標GFCI)を初めて公表(2007年3月15日)。トップはロンドン、二位ニューヨーク、三位香港、四位シンガポール、東京は九位。東京については、人材が乏しく、規制環境がよろしくない旨の、下記の注記が付されている。(報告書 参照)
 Does not fare well in terms of regulation and business environment, but the size of the Japanese economy means Tokyo has good liquidity.  It fares poorly on people but has good infrastructure and market access.  

2007年1月30日、東証とニューヨーク証券取引所の提携問題など急速なグローバル化のためか、金融庁は金融審議会に「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ(座長池尾和人慶大教授)」を設置したと公表した。
この10年間を見ても判るとおり、金融庁主導で改革をしても遅々とし進まず無理なことが十分なほど立証されている、政府主導で行わなければならない。
金融庁・金融審議会我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループが、上記、内閣府の金融・資本市場ワーキンググループに対抗して議論を開始した。過去の経緯を見るに、権限を維持するため、金融庁は、政府に率先してグローバル化をすることはない。


日本企業、欧州市場で締め出しか
2007年3月14日フィナンシャルタイムスは、欧州委員会がEU議会に向けて米国、日本、カナダの会計基準がどの程度国際会計基準に収斂されているか(国際基準との同等性)を4月1日に第一回目の報告をすることになっている。 最終結論は、2008年7月1日までに出すことになっているが、日本の会計基準が認められなければ日本企業(株式上場13社および社債上場71社)は、2009年から欧州での資金調達に支障がでる恐れがある。(CESR ニュース 報告書原文 フィナンシャルタイムズ(FT)14日の記事  AccountancyAge14日の記事 金融庁企画官黒澤利武氏26日の署名記事←金融庁は、今頃になって英文で”期限に間に合わせるにはきつ過ぎる”と言い訳をしている。→Japan to request EU accept its accounting rules  金融庁3月26日プレスリリース 第2回 日EU会計基準・監査の動向に関するモニタリング会合  27日企業会計審議会・・参考資料 27日と28日のIASBASBJのミーティング・・・
この重要な時期に斎藤委員長退任した。金融庁の意思が働いているようだ(金融庁企画官黒澤利武氏26日の署名記事)。副委員長の西川氏が委員長に昇格した。新委員長・副委員長共に旧大蔵省の企業会計審議会からの委員で踏襲の変更はないものと思われる。 参照)

奇しくも、3月15日、韓国は、2011年から上場会社の連結財務諸表は国際会計基準を適用と公表された。2009年の早期適用も可能としている。
金融監督委員会では国際会計基準を取り入れ、資産2兆ウォン以上の企業は2011年から、資産2兆ウォン未満の企業は2013年から連結財務諸表に、その他のグローバル業績も発表を義務付ける内容のロードマップを発表した。(記事

2007年3月29日、東京で開催のIFRS地域ポリシー・フォーラムで、「日本はIFRS を採用せずに国際的なコンバージェンスを目指している西川氏)」と明言した。
 カナダ、韓国が2011年にIFRSを採用すると明言している中、「日本はIFRS(国際会計基準)を採用せず」としているのはかなり挑戦的、会計界の北朝鮮にならないことを祈る。
 
日本は、いまだIFRSに追いつくことも出来ず、コンバージェンスはいつまでも達成できない幻想です。現に、借入金の利息を資本化する会計基準(IAS23号)を米国基準と一致させたことが報じられ、日本の会計基準は国際基準との間で新たな相違が生じているのです。コンバージェンスの作業はエンドレスになり、相違はいつまでもなくならないことは誰の目にも明らか。(2007年3月29日、IAS23号を米国基準に一致させるため、期間費用の選択肢を廃止し、利息の資産化のみに改正した。

日本は
例外だ。日本の会計風土は素晴らしいものがあるとは思うが,ほとんどの事柄に同意せず,そしてそれは他国が納得する意見ではない。われわれは日本の意見すべてに耳を傾け,理解しているが,同意はできない(例えば,IASBは「包括利益」の導入を目指しているが,日本は当期利益の考え方がなくなり,実態がわかりにくくなるとして,反対意見を表明している。「包括利益」とは貸借対照表を原則時価評価して,有価証券などの評価損益を毎期の利益に反映させる方法)。IASB理事の意見(2004年3月)参照 

2007年4月13日金融・資本市場ワーキンググループは、論点整理を公表し、東京市場のグローバル競争力を高め、その国際金融センターとしての地位を向上させるためには、本格的な改革を着実に実施していく以外にはない、とし一層の制度整備を進めるなど3本の柱を明示した。その中に、「国際会計基準(IFRSs)に基づく開示の容認」が初めて謳われた。

20日には、第一次報告「真に競争力のある金融・資本市場の確立に向けて」がまとめられ、国際会計基準については「我が国では、我が国企業が米国基準に準拠して作成した連結財務諸表を受け入れているが、これを国際会計基準(IFRSs)についても基本的に認める方向で検討がなされるべきである。」と明記した。役人言葉で”検討”とは実施しないという意味のようであるが、ごまかしが効く時代ではないと信じたい。

東京金融市場:アジア市場の台頭で、漂う危機感
・・・毎日新聞5月2日
二つの報告書(「掛け合い漫才」「お決まり文言の羅列に、よくも飽きずにお金と時間と労力をつぎ込んでいることか」)・・時事通信5月16日

2007年4月30日、[ワシントン 30日 ロイター] ブッシュ米大統領とドイツのメルケル首相、欧州委員会のバローゾ委員長らは30日、ホワイトハウスで会談し、欧米双方の企業や消費者のコスト低減に向けて、規制面で協力関係を強化し、会計基準に関する提案の履行や国際決済銀行(BIS)の新銀行自己資本比率規制(バーゼル2)の導入を促すことで合意した。
合意内容には、米国市場に上場する外国企業に対し、欧州の国際会計基準に基づいた決算報告を2009年までに認可する提案が含まれている。(日本語ニュース ホワイトハウス・プレス:プログレス・リポート 2007年US−EUサミット 米側:Framework for Advancing Transatlantic Economic Integration Between the United States of America and the European Union EU側 SmartPros 参照)

SECサイトの「スポット・ライト:国際財務報告基準に関する”Roadmap"」 参照

欧州委員会のチャーリー・マクリービィ域内市場・サービス担当委員が2007年6月12日から15日まで来日、政府閣僚および産業界の代表とさまざまな会合を持ち、金融サービス、政府調達、知的財産権、郵政民営化、規制改革の総体的進捗状況などについて意見交換をする予定です。(駐日欧州委員会代表部ニュース 参照)

2007年6月15日
チャーリー・マクリービーECコミッショナーの来日直後、ASBJ新たな「中期運営方針を公表し2009年を目途に加速とのこと。EUの同等性の判断は2008年末までに決定されるとしているのに、のんびりと「2009年を目途に加速させる」としている。日本は、駆け引きばかりしてないで、米国とEUの合意のように日程を区切って目標を明らかにして進捗状況等を誰にでも分かりやすく明らかにすることであろう。先送りして無駄な時間をいつまで続けるのか。

チャーリー・マクリービー氏の初めての訪日に際して、会計基準の同等性についての記事が見られなかったが、氏へのインタビューを掲載した「日本は更に株主行動主義に(Japan to see more shareholder activism)」というコメントを残している。「日本には、まだ株主行動主義(shareholder activism)の文化に欠けているがグローバルな財務環境へのシフトを続けることにより変化するかも知れない」と語った。(2007年6月13日英文ニュース ロイター 参照)

株主行動主義shareholder activismについては「21世紀のコーポレート・ガバナンスと株主価値経営」by若杉敬明教授が詳しい。
企業の透明性と民主主義のための道具としての株主行動
Shareholder Activity as a Tool for Corporate Transparency & Democracy) 参照

2007年7月6日欧州委員会(EC)は、会計基準の同等性評価に関して、日本に国際基準への収斂加速を、欧州証券委員会および欧州議会に対して最初の報告をした。欧州に上場の日本企業84社としている。(ECの報告書  日本のニュース ロイター 欧米のニュース 参照)
Regarding Japan, the release in October 2006 of the "ASBJ Project Plan” focusing on projects specifically related to convergence is welcome. In releasing the ASBJ Project Plan, primary emphasis has been placed on mapping out the work to be completed by the end of 2007, and also on clarifying the prospects of convergence status as of the beginning of 2008. Priority was given to initiatives related to the 26 issues for which the remedies were advised by CESR in their advice to the Commission in 2005. The Commission is encouraged by these positive developments but stresses that it is necessary to keep up the pace of,and in certain areas even accelerate, convergence activities. In order to achieve the objectives as defined by the work program the Japanese authorities have to keep the level of convergence activity very high and provide accurate and complete information on progress, including any delays if they arise.. The program is ambitious but achieving its objectives is an important basis for the equivalence decision.
ECが2年前の2005年4月に公表の同等性評価の内容と変わったところがない。日本の相互承認の主張はひとかけらもない。

2007年8月8日ついに、日本の会計基準委員会(ASBJ)国際会計基準審議会(IASB)は2011年6月30日までに相違を無くすことに合意(東京合意"Tokyo Agreement"と呼ぶ・・東京が合意したと言う意味で、国際会計基準審議会IASBが合意したと言う意味ではない・・IASBは国際会計基準の適用を内外の会社に認めることを求めたが日本は拒否した)した、と発表した。EUとの相違については2008年中に相違をなくす努力をし、残りの国際基準との相違については2011年6月30日までに相違を無くす約束をした。(IASBニュース ASBJニュース 参照
日本は、相変わらず適用時期が何時になるのかを明らかにしていない。インドは、2011年4月1日以降開始する事業年度から適用とし(7月24日公表)韓国では2011年に全面適用と公表(3月15日公表)している。
このニュースは、国内では大きな反響があるが(ブログ参照)、明快でないことと気の抜けたサイダーのようで海外ではメジャーが報道していない(海外ニュース 参照)。理解し易い明快なメッセージを発信すればもっと日本の会計基準を知ってもらうチャンスがあったものと思われる。

一方、国際会計基準の財務諸表を内外の企業に認めるかどうかは金融庁が決める。(金融庁総務企画局審議官(国際担当)丸山純一氏の発言 参照)
ちなみに、米国では外国企業に国際会計基準の財務諸表を認める方向にあり、一歩踏み込んで、米国企業にも国際会計基準の財務諸表を認めよとする声SEC2007年8月7日コンセプト・リリース」を公表し11月13日までにコメントを求めている。

日本では、三角合併JDRの創設が外国企業について国際会計基準の財務諸表を認めざるを得なくするであろう。その時、併せて米国同様、国内企業にも公平に国際会計基準の適用を認める方向で議論されるであろう。金融庁が主張している「日本の会計基準は国際会計基準(IFRS)と同等である」が本当なら何の障害も無いはずだが、金融庁は沈黙のままである。(金融庁の姿勢は「金融庁丸山純一審議官2007年7月談(2009年7月現在、横浜税関長に転任)」参照)

8月8日、日本経団連は
今後の会計基準のコンバージェンスの進め方について」を公表したが目新しいものはない。仰天なのは、2008年にEUからIFRSに同等と認められた場合は、日本の会計基準と国際会計基準を適用した欧州企業の財務諸表を相互承認すべきであるとしていることである。中途半端な日本の会計基準と相互承認とはどう見ても驚きである。(日本の国際基準の対応は「外国会社等の我が国における開示書類に係る制度上の整備・改善について--外国会社等による「英文開示」--」参照)

2007年9月27日28日ASBJIASBへ出向き、東京合意後、初めての会合を持った。しかし相互理解のみで何の進展も無かった。次回は2008年4月に開催予定とのこと。

2007年10月30日東証がロンドン証取とプロ向け市場AIMについて2008年に合弁を設立と発表ニュース)・・日本市場で国際会計基準での開示に風穴をあける可能性あり・・斉藤社長は、金融審議会(首相の諮問機関)第一部会に、新市場の創設に向けて法令改正の必要性も訴えた。「アジアの企業が東証に上場をしたがらない最大の理由は言語と会計のコストだ」と指摘して、英文の開示資料や、国際会計基準でも上場が認められる法令改正を求めた。(ニュース 参照)

2007年10月31日欧州議会の経済・金融問題委員会(ECONは、日本を訪問し、日本に「最終目標は国際会計基準(IFRS)へ完全収斂することであることを明確に伝えた」としている。(EUニュース ECONニュース 翻訳文 参照) 下記11月14日の法案の議会承認の事前確認のようである。
The delegation clearly conveyed the message that the final objective must be to move fully to IFRS.


2007年11月7日米国会計基準審議会FASBは、SECのコンセプト・リリースに対して回答し、すべての米国上場企業に”改善された国際会計基準”で財務諸表を作成すべきとの意見を明らかにした。つまり、二つの会計基準はいらず、高品質の会計基準は世界に一つとの意見を表明したことになる。
米国に上場する外国会社の財務諸表に関しては、国際会計基準審議会(IASB)が設定した国際会計基準(IFRS)に準拠して作成している場合にのみ、米国基準への差異調整表の開示を免除
することを提案している。(意見書 参照) つまり、SECは、欧州版国際会計基準を認めない姿勢を明らかにしたものでる。(「SECの姿勢はグローバルな会計基準を一つに確立するのに役立つ(2007年12月21日)」 参照)

欧州の適用した国際会計基準は、フランスの銀行家が金融商品の時価会計(IAS39号)に反対し時価会計の免除及びヘッジ会計の維持をしていることから欧州版国際会計基準となっている。(「フランスの抵抗」 「EU版IFRS(IAS39)ガイダンス」 参照)

2007年11月14日欧州委員会は、証券発行時の届出目論見書(prospectus)に関し、第三国企業の証券発行者に第三国の会計基準による財務諸表を認める条件として、EU議会で以下の規則改正を行った。発行市場が決まれば、流通市場の年次報告書も同様な結論となることが予測できる。
第三国の会計基準に責任ある官庁は、2011年12月31日以前に国際会計基準(IFRS)に収斂する計画を2008年6月30日までに公に約束(public commitment)し、その計画を遅延無く確実に実施すること。収斂の実施状況の評価は、各国ごとにEU委員会が行う。導入日程はカナダの国際会計基準への移行日程と同じになっている。(2007年11月14日EU議会法案付議状況  法律 3月6日のCESRが欧州委員会に提出した助言書 参照)

2007年11月15日SEC米国に上場する外国会社の財務諸表について、国際会計基準審議会(IASB)が設定した国際会計基準(IFRS)に準拠して作成している場合にのみ、従来開示を求めていた米国基準への差異調整表の開示を免除することを決定した。2007年11月15日以降に終了する事業年度から適用する。日本のようなコンバージェンス(収斂)版の会計基準は免除しない。(SECプレスリリース 参照)

Having considered extensive and informative public comment on its June 2007 proposal, the Commission today approved rule amendments under which financial statements from foreign private issuers in the U.S. will be accepted without reconciliation to U.S. Generally Accepted Accounting Principlesonly if they are prepared using International Financial Reporting Standards (IFRS) as issued by the International Accounting Standards Board.

なお、コックス議長は、米国企業にIFRSの適用を認めるかどうかについて意見を聴取するため12月13日および15日の二日にラウンドテーブルを召集すると発表した。

米国公認会計士協会(AICPA)は、10月24日の上院公聴会で「米国の上場会社にも国際会計基準(IFRS)の適用を認めるべきである」と証言し、11月15日のSECへの提言にも同じ意見を提出している。
IFRS:会社の正しいステップ」by米国プライスウォタークーパー(2007年10月)

2007年12月28日、SEC最終ルールを公表した。(SEC最終ルール WebCPA 参照)
・外国企業がIASBが公表した国際会計基準(IFRS)で作成した財務諸表を登録した場合は、米国会計基準への調整表の開示は不要とする。
・外国企業がIASBが公表した国際会計基準(IFRS)以外の会計基準で作成した財務諸表は、米国会計基準への調整表の開示を要求する規定は変更しない。
・外国企業が、欧州企業のように、欧州版国際会計基準を使用した場合は、IASBが公表したIFRSへの調整表を注記で開示する提案を受け入れる。

SECルール Regulation S-X [17 CFR Part 210] § 210.4-01 (a)(2) によれば、米国会計基準またはIASBが設定した国際会計基準(IFRS)以外の会計基準で作成した財務諸表は財務諸表の一部として差異調整表も登録する。さもなくば、米国会計基準またはIASBが公表した国際会計基準(IFRS)に準拠した財務諸表とする。

2007年11月27日、欧州委員会のチャーリー・マクリービーECコミッショナーは、米国企業で欧州市場で上場し米国会計基準で開示している場合、IFRSへの差異調整の開示は要求しないつもりであることを公表した。正式には、来年決定することとなる。SECの15日の決定を受けて同様の決定となる旨の意見表明である。(ニュース 参照)


2007年12月18日、欧州証券規制委員会CESR)は第三国(米国、日本、中国)の会計基準が同等であるかどうかの検討を開始した。日本については8月の東京合意にしたがって2011年6月末までに国際基準へ収斂する作業しており、これに従って収斂作業が行われていないという証拠がない限り、2008年6月に”同等である”旨の評価をする、としている。2005年にCESRが指摘した差異事項に関して、その差異を除去するために、2007年末までに3つの会計基準、2008年末までに更に8つの会計基準を公表することを意味している、としている。(CESRニュース  コンサルテーション・ペーパー プレス・リリース 12月6日、ASBJの改定プロジェクト計画表 参照)

2007年12月19日、欧州市場に関するコミッショナーであるチャーリーマクリービー氏は「法定監査パッケッジ」を公表した。これによると、欧州に上場している企業の監査人は欧州の監査監視機構に登録を義務つけられるが、第三国は2011年までは現行通りとする。その間に、欧州は、国際監査基準の導入状況も含まれる第三国の監査監視機構の監視状況の同等性を評価するとしている

2008年1月8日欧州委員会のチャーリー・マクリービーECコミッショナーは、欧州委員会(EC)は12月21日欧州議会が決定した「第三国の会計基準の同等性の評価メカニズム」を採用する旨公表した。第三国の会計基準に責任ある官庁は、2011年12月31日以前に国際会計基準(IFRS)に収斂する計画を2008年6月30日までに公に約束(public commitment)し、その計画を遅延無く確実に実施すること。収斂の実施状況の評価は、各国ごとに欧州委員会が行う。(ECニュース 欧州議会が決定した第三国の会計基準の同等性の評価メカニズム(EC)No.1569/2007 参照)

2008年4月22日、KPMGは、”IFRS研究所”を創設し米国上場会社のIFRSへの変更について支援する、ことを公表した。背景には、SECが数週間後に、外国企業と同じように米国上場企業に対してもIFRSの適用を許容する案が公表されることを見越してのこととしている。

KPMG Establishes IFRS Institute to Foster Smooth Adoption in the United States of International Financial Reporting Standards  

○2008年4月22日、欧州委員会(EC)が、第三国の会計基準の同等性評価に関する作業報告書を公表しました。(金融庁
日本基準については、ECとしては、現時点では、同等との基準を満たしつつある(on track)ことから、企業会計基準委員会(ASBJ)がコンバージェンス工程表に示された目標を達成できないという事態が起こらない限り、同等との評価を提案することとなろう。・・2011年6月までにIFRSに収斂する約束(東京合意)を守っていれば認めるというもの。

2008年5月6日米国公認会計士協会(AICPA)は、公共の利益を保護するため、公認会計士統一試験で国際会計基準(IFRS)を出題する案を公表し、7月31日までにコメントを求めている。(ニュース 公開草案 AICPA公表レター より) ⇒2009年5月15日、2011年からIFRSをCPA試験に出題することが承認される(国際監査基準の理解も含む)。

  ・デロイトは、IFRS University Consortiumを立ち上げた(5月15日
  ・E&Yは、Academic Centerを立ち上げた(5月19日)

2008年5月18日米国公認会計士協会(AICPA)は、AICPAの倫理規定202条および203条のアペンディックスAを改定して、国際会計基準(IFRS)を会計基準設定主体であることを追加した。SECが外国企業にIFRSの適用を認めたことにより、米国会計士もIFRSによる財務諸表監査が必要となってきていることによる。加えて、会計士に国際会計基準の情報を提供するためにIFRS.comおよびcpa2biz.com. を立ち上げ会員を支援する、としている。(http://www.ifrs.com/ http://www.cpa2biz.com.   AICPAニュース Webcpa 参照)


2008年5月20日日本経済団体連合会は、「今後のわが国会計基準のあり方に関する調査結果概要」を公表した。米国の方向性が見えてきたことから、日本でもIFRSの選択適用を認めよというもの。かなり反応が遅い。会計基準の相互承認を求めると言う非現実的なトーンはやっとなくなったが・・・・。

欧州連合(EU)では、米国、日本、カナダの会計基準を国際基準と同等と認めるかどうか最終決定され、2009年度が適用初年度であるため「会計の2009年問題」とされている。(会計の2009年問題 英文ニュース 「認められる可能性あり」のニュース) 
2008年6月11日欧州連合(EU)が、EU改正目論見書(prospectus)に関する指令案を公表し、議会で承認されるなら日本の会計基準はIFRS相当と認められ、2009年から日本基準で証券発行できる。ただし、条件として2011年末までにIFRSとの差を無くすこととされている。(下記2008年6月2日改正指令案(8)参照) (金融庁7月1日のニュース 参照)(2008年12月12日、米国、日本、中国、カナダ、韓国およびインドの会計基準を欧州委員会(EC)がIFRSに相当と認めた ニュース 参照)

(8) In August 2007 the Accounting Standards Board of Japan and the IASB announced their agreement to accelerate the convergence by eliminating major differences between Japanese GAAP and IFRS by 2008 and the remaining differences before the end of 2011. The Japanese authorities do not require any reconciliation for Community issuers which prepare their financial statements according to IFRS.Therefore, it is appropriate to consider Japanese GAAP equivalent to adopted IFRS from 1 January 2009.

2008年7月1日から、国際会計基準審議会(IASB)のIFRSとの収斂作業を加速していた米国財務報告基準審議会(FASB)は、IFRSの採用を視野に入れて、7名の委員から5名の委員へダウンサイジングすることとなったSmartPro FASB 参照)。日本は国際会計基準審議会と同様14名委員のまま、ただし、欠席委員が多く出席者は少なく発言も少ない(Webcast 参照)。
2007年11月7日米国会計基準審議会FASBは、SECのコンセプト・リリースに対して回答し、すべての米国上場企業に”改善された国際会計基準”で財務諸表を作成すべきとの意見を明らかにした。つまり、二つの会計基準はいらず、高品質の会計基準は世界に一つとの意見を表明したことになる。) 

2008年7月17日日本公認会計士協会の増田宏一会長は「日本も国際基準の採用に向け準備を進めるべきだ」との見解を名古屋市内で開いた研究大会で記者会見したそうだ。(日本経済新聞7月18日朝刊14面)  はじめて国際基準の採用に言及した瞬間である。反応が遅すぎるが動き出す兆しかも知れない。

2008年8月27日米国SECは、米国上場企業に対し2014年を国際会計基準(IFRS)適用日程(Roadmap)とする案を公表した。具体的には、株式時価総額7億ドルを超える大企業(large accelerated filers約110社)については2年以内の2009年(2009年12月15日以後終了する年度で登録は2010年)のIFRSの早期適用を可能にし2014年から義務化し、株式時価総額7千5百万ドル〜7億ドル未満の企業(accelerated filers)は2015年から、7千5百万ドル未満の中小企業(non-accelerated filers)は2016年からIFRSの適用を義務化する。ただし、2011年にSECは、IFRSの適用が公共の利益および投資家にとって良いのか決定する、として含みをもたせている。(SECのコックス委員長の談話 英文ニュース 日本語ニュース 参照)
同日、即、米国公認会計士協会AICPA)は「SECのロードマップを支持する声明書」を公表した。

なお、ルールの正式な公開草案は、数週間内にSECのホームページに公開される予定。⇒11月14日SEC公表のロードマップ案(全165ページ)・・直後、突然の金融危機対応のため公開が遅れていたもの。

2008年9月1日、日本公認会計士協会の増田宏一会長は1日都内で記者会見し、国内の上場企業について、国際会計基準(IFRS)を導入すべきだとの考えを表明した。これまで同協会は、自国基準を維持した上で、主要項目について国際基準との差異を解消する統合化を進めてきたが、従来方針を転換した。(時事通信 日本公認会計士協会「欧州視察報告」2008年9月 ←2008年3月の「経団連の欧州視察報告」に似ている。 参照)
世界に孤立する会計士であってはならない。海外の子会社を含む連結決算監査を行っている公認会計士の当然の帰結である。

2008年9月4日、日本経済新聞は朝刊で、「日本、国際会計基準導入へ」と題して、日本経団連、日本公認会計士協会、金融庁などが国際化に対応するため、2011年度以降に「国際会計基準」を導入する検討に入った、と報じた。経団連、会計士協会などは会計基準を巡る金融庁の協議会で9月中旬に国際基準の導入を提案。実際に会計基準委員会(ASBJ)や学識経験者らと国際基準の導入に向けた協議を始める、最終的には金融庁が導入を決めるとしている。(日経 経団連の欧州視察報告 公認会計士協会の欧州視察報告 参照)
・報道によると、いつものことながら金融庁は密室での協議で決めるようだ。相変わらず閉鎖的。(したがって、記者の希望的観測も含んでいる恐れがあり報道の内容の真偽のほどは不明。 「5日の茂木金融担当相の発言」参照)
・米国SECのように、ニュース・リリースを公表したり、広く一般に公開討論をして検討するべきであろう。
・米国FASBはSECに対してIFRS適用を提案したが、日本は記事によると金融庁がIFRS適用をASBJに提案し金融庁が導入を決めるそうだ。日本のASBJは独立性なく下請けのようだ。
・従来の審議会や委員会は、委員の学習会のようなものであったが、似て非なるものにしないためには、経験豊富な実務家が入り実態のあるIFRSの導入にして欲しいものである。

金融庁の考え方 (ロイター 参照)
金融庁としては、国際会計基準をめぐる米欧の駆け引きと自国の影響力の確保を慎重に見極めており「2011年以降の導入論」だけが先行することに警戒心が強い。ある金融庁の関係者は「この段階で、国際会計基準を導入する方向性が固まるのは、国益にとってマイナスだ。導入するならコンバージェンスは必要ないではないか、との論調になるのが最悪のシナリオになる」と警戒している。

上記の記事が正しいければ、金融庁は理解不足ということになる。コンバージェンスでは日本の会計基準であり国際会計基準(IFRS)ではない。米国が外国企業に認めたIFRSは、欧州連合(EU)のカーブアウトしたIFRSではなく、IASBが設定したIFRSとしており、コンバージェンスでは従来どおり「差異調整表」の開示を求められる(下記SECルール参照)。米国企業に認めようとするIFRSもIASBが設定したものでありコンバージェンスの米国会計基準ではないということだ。

 In all filings of foreign private issuers (see §230.405 of this chapter), except as stated otherwise in the applicable form, the financial statements may be prepared according to a comprehensive set of accounting principles, other than those generally accepted in the United States or International Financial Reporting Standards as issued by the International Accounting Standards Board, if a reconciliation to U.S. Generally Accepted Accounting Principles and the provisions of Regulation S?X of the type specified in Item 18 of Form 20?F (§249.220f of this chapter) is also filed as part of the financial statements. Alternatively, the financial statements may be prepared according to U.S. Generally Accepted Accounting Principles or
International Financial Reporting Standards as issued by the International Accounting Standards Board.SECルール Regulation S-X [17 CFR Part 210] § 210.4-01 (a)(2) 参照)

国益? 省益 金融庁の”庁益”の間違いではないか判断の先送りが国益か?
金融庁の国際会計基準に対する対応を見ると、「官僚制の逆機能」を絵で描いたような典型例で遅々とした反応である。

米国が欧州のカーブアウト(一部免除)のIFRSではなくIASBのIFRSのみを認めているのは当然で、国際会計基準IAS1号の14項に「IFRSに準拠した財務諸表を作成する企業は、その旨を開示しなければならない。財務諸表を適用すべき各基準書及び適用すべき解釈指針委員会の解釈指針すべての規定に従ったものでない限り、財務諸表がIFRSに準拠していると記述してはならない。(現パラグラフ14」としており、一つの会計基準を志向してIFRSの適用を米国上場企業に求めるのは、アダプション(適用)である。ただし、米国はIFRS適用にあたり、IASB自身の資金面、技術面、ガバナンス面で充実させるための支援を約束している。

2008年9月17日金融庁は沈黙を破り、「我が国企業会計のあり方に関する意見交換会」を開き、国際会計基準」の導入に向け、10月中旬以降に長官の諮問機関である企業会計審議会を開き、対象企業や採用方法などを議論する。2011年度以降の導入を念頭に置いたロードマップ(行程表)を早急にまとめたい考え、と報道された。(日経
一方、1ヶ月以上もたって金融庁のサイトに7月31日に開催した第一回目の意見交換会における意見が公開されている。意見交換というより、金融庁の考えを公開しているようなもの。IFRSについて「以下のような様々な議論があった」としながら、@ロードマップの作成を含め議論を行うこと、A作成者・監査人の準備が大変、BIASCFのガバナンス改革の三つしか議論の内容はない。報道によればC外国企業が日本企業をM&A(合併買収)がし易くなると懸念しているとある。委員はいつものメンバーで金融庁の代弁者ばかりである。これで、導入について偏見のない適切な議論が出来るのであろうか。
Aに、監査人である会計士がIFRSを習得するのが大変とあるが、日本だけでなく100カ国以上の会計士が習得しているので乗り越えるのは宿命である。これを乗り越えることで100カ国以上で通用することになり日本の会計士が仕事の広がりが生れる。孤立するよりよい。チャンスは多いほど良い。
BIASCFのガバナンスは重要に違いないが、”会計基準”や会計基準の”適用時期”を決め、ASBJを実質支配している金融庁にも透明性の高いガバナンスが求められよう。

C外国企業が日本企業をM&A(合併買収)がし易くなると懸念はあっても、日本企業が”のれん”を償却しないことで外国企業を含めて合併・買収し易くなるというメリットが生れる。
いずれにしても、日本の将来に禍根を残さないよう偏見のない適切な議論をしてもらいたいものだ。

2008年9月19日企業会計基準委員会(ASBJ)の西川委員長は「国際会計基準の先行導入に実験的に取り組むべきだ」との考えを示した、と報じた。(産経ニュース) ASBJのサイトには密かに「プロジェクト計画表の更新」が公表されたが、委員長の先行導入に関して公式見解が記載されておらず不明。

2008年10月14日、日本経団連、「国際会計基準を選択適用すべきとの方針」を初めて明らかにした。(経団連「会計基準の国際的統一化への我が国の対応参照) 
経団連の会計基準の考え方は欧米のそれとは異なっている。米国および国際会計基準は、上場会社と中小企業の場合は関係者(銀行などの融資する側、私募債を引受ける側など会計基準に準拠した監査済み財務諸表)が必要と認めた場合のみ会計基準を使用するものである。逆に言うと、開示を必要としない中小企業は税法会計で作成した未監査の財務諸表を法人税の確定申告書に添付しているのは米国・カナダも日本と同じ実務である。欧米では、会計基準と監査は密接不可分で、一般的には監査費用の負担能力のない中小企業に会計監査は求めないのが常識。会計基準に準拠しているかどうかの意見を述べる監査をしない財務諸表に信頼性が生れないのは自明の理。日本の場合、配当可能利益計算目的で会社法(旧商法)が中小企業の会計までも規定しているため日本独自の会計基準の考えが生じてしまい、中小企業までも適用するものと誤解してしまっている。会社法(旧商法)会計があるため、個別・連結財務諸表の考え方は日本独特で、国際的に話が合わない原因にもなっているのである

2008年10月23日企業会計審議会企画調整部会資料 議事要旨 議事録 参照)は、日本企業への国際会計基準(IFRS)の導入について議論を開始した。2011年6月末以降を視野に、導入計画としてのロードマップ(工程表)をどのように作成していくか検討していく。同日の議論では、国内企業への義務付けの意見も出たが、段階的に任意適用から始めるべきとの意見が多数を占めた。(ロイター 参照)
 議事要旨を見ると纏まりのない学者ばかりのばらばらの意見。欧米の豊富な実務経験のある者複数を参加させないと、事務局が日本流の奇妙な仕組みを構築する恐れがある。

経済産業省経済産業政策局企業行動課では、IFRSの日本導入に関して本格的に動き出し、11月25日「平成20年度総合調査研究「会計基準の国際化対応に関する調査研究」を公募入札仕様書 参照)しており、入札結果がいずれ公表されるであろ。日本での制度設計は経済産業省が行い、金融庁は金融証券取引法の関係、会社法の関係は法務省と言う従来型の縦割り行政の枠で設計されるようだ。心配されるのは、経済産業省が会計制度の内外の実務が分かっていないことにある。

●金融危機対応で遅れていたが、2008年11月14日(金曜日)SECは、「165ページに上るロードマップの公開草案」を公表した。90日以内(2009年2月19日まで)にコメントを求めている。73ページには、貸借対照表の2年間開示の方法、その他、損益計算書等の3年間の表示の仕方を提案しているが、前年度まで米国基準で開示していたことからユニークな方法を提案している。

2008年12月16日企業会計審議会企画調整部会論点メモ 議事要旨 議事録 資料 参照)が開催されたことになっているが、SECがロードマップ(草案)を公表11月14日)と欧州委員会(EU)が米国、日本、カナダ、中国等の会計基準を国際基準と相当と認め、2009年以降もこれら第三国の会計基準での財務情報の開示を認める決定(12月12日)を見て、それを土台として論点を記述し、金融庁が日本の方向付けをしている。2011年6月まではコンバージェンスに専念し、導入は、単独と切り離した連結先行論の方針であるようだ。議論は形式のみで金融庁が決めているようだ。

論点メモを見ると内容が矛盾している。「EUによる同等性評価の決定は、現時点で我が国会計基準のみならず、会計基準に基づく会計実務も含め国際的に高品質かつ整合的であることが認知されていることの証左と考えられる(4/25)」としながら、「一方で、国際会計基準を我が国において採用するにしても、乗り越えなければならない様々な課題や留意すべき事項等があり(3/25)」として国際基準とは相当相違していることを認めている。IFRS(国際基準)導入には所管官庁が自らの責任で方針を打ち出せないで時間稼ぎばかりしているは、国際会計基準(IFRS)を理解していない証左である。
欧州においては、国際会計基準の義務付けは連結のみとされ、単体は各国の裁量に委ねられている(ドイツ、フランス等では、単体について自国基準での作成を義務づけ。英国では、単体につき国際会計基準とイギリス基準の選択が可能)」(6/25)としているが、上場会社で個別財務諸表の開示が求められている国は見当たらないドイツ等欧州の証券取引所での上場会社の情報開示 参照)。日本だけが連結財務諸表に重複して個別財務諸表の開示を求めているのか金融庁は理由を明示して応える義務がある。筆者は金融庁が上場会社の情報開示に関する国際基準を理解していない証左だと思っている。

2009年1月15日、新大統領オバマ政権の新SEC委員長候補メアリー・シャピロ女史(Mary Schapiro)が上院の就任前の確認で、一つの高品質な会計基準の適用は認めているが、前委員長の公表したIFRSへのロードマップに拘束されないと発言。IFRSへの移行にコストが掛かりすぎること、移行の日程が急すぎること、IASBの独立性に疑問であること、IFRSが米国基準のように詳細に規定しておらず信頼性に疑問であることなどを理由としている。IFRSの適用がスローダウンしそうな雲息である。元FRB議長、元IASB評議会委員長ポール・ボルカー(Paul Volcker)氏がIFRSを支持しておりオバマ政権の経済回復諮問委員会委員長に就任しており注目される。(ニュース AICPA IFRS Resources 参照)

2009年1月28日金融庁の企業会計審議会が開かれた。(議事録 参照) 公表された「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)(案)」によれば、「2010年3月期の年度の財務諸表からIFRSの任意適用を認めることが考えられる(13ページ)」「IFRSの強制適用の判断の時期については、とりあえず2012年を目途とすることが考えられる(15ページ)」としている。2月4日、金融庁から公表されコメントを求めている中間報告(案)は同じもの。 (ニュース 参照)

日本は「国際基準と同等と認められた」と喧伝しておきながら、いざIFRS適用となると、内容はかなり曖昧な部分を残しており不透明である。つまり、2009年4月から適用の場合IASBのIFRS1号では遡及して適用し2008年3月期の比較財務諸表と、2007年4月1日の貸借対照表を開示する必要がある。また、2009年4月からの四半期報告書は前年同期のIFRS適用の比較情報の開示が必要となるが、2010年3月期の年度の財務諸表からIFRSの任意適用を認める、という語句は2009年4月からの四半期報告書は含まないようである。金融庁の案はいずれにしても典型的な官僚の作文で不明瞭。IFRSを理解しているとは到底思えない。

2010年3月期
2009年4月開始事業年度
2011年3月期
2010年度
2012年 金融庁は独自判断できず変更ばかりしている
下記参照
上場会社の連結財務諸表 任意適用⇒ 強制適用の目途

数週間後に公開された議事録によれば、三井秀範企業開示課長が「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)(案)」を作成したとしているが、氏は法律家で「事務局としては国家主権があるだろうからやはり留保したいという気持ちはあるかもしれませんが、本当に強制適用という段階になったときに我が国の独自の状況があるためと称してこれをやってしまったら、IFRSのアドプションにならないと思うのです。この問題は、はっきりと考えるべきだと思います」とのコメントに「最高裁の判例によりますと、裁判所に最終的な判断権があるということでございますので、そこは現行の判例を踏襲しているということで、ご容赦頂ければと思います」と答えているのには違和感を覚える。

2009年3月13日財務会計財団(FAF)及び財務会計基準審議会(FASBは、SECのIFRS導入のロードマップに関して134ページに及ぶ意見書を提出した。
SECのIFRS導入には、十分な検討を重ね、米国上場会社のすべての企業にIFRSの適用を究極的に要求することを決定するまでは、大企業に選択適用を認めるべきではないと提言した。"We continue to believe that the SEC should not permit an option unless and until there is a decision that all U.S. public companies will ultimately be required to adopt IFRS."(ジャーナル・オブ・アカンタンシー 参照) 1月に就任したシャピロSEC委員長のロードマップ見直しに呼応している意見である。

2009年6月11日金融庁企業会計審議会企画調整部会会合を開き「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)」(案)に対するコメント公開草案からの修正案概要)、連結財務諸表規則及び財務諸表等規則の改正案(未定稿)最近の国際会計基準を巡る動向を公表。2015年〜2016年にIFRS適用の義務化を目指す。最終決定は2012年としている。これは、米国が2011年に最終決定するとする日程に合せており米国の出方を見るためである。

6月11日の修正案概要 2010年3月期
2009年4月開始事業年度
2011年3月期
2010年度
2012年 3年後 2015年〜2016年 2017年〜2018年
上場会社の連結財務諸表 任意適用⇒(注1)
特定会社指定国際会計基準を適用
(注2) 強制適用の目途を
明らかにする
強制適用
金融庁独自判断できず
米国のIFRS判断待ちで
2013年以降に判断先延ばし
変更 5年から7年に延長する
二年前の議論に後戻り・・2011年6月
強制適用
国際会計基準は2期比較を要求しており、実質的に3期のIFRSによる決算が必要となる。
注1:任意適用2010年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2009年3月期と比較し、IFRS適用の2008年3月期(2008年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。
注2:任意適用2011年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2010年3月期と比較し、IFRS適用の2009年3月期(2009年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。
注3:任意適用2012年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2011年3月期と比較し、IFRS適用の2010年3月期(2010年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。
注4:任意適用2013年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2012年3月期と比較し、IFRS適用の2011年3月期(2011年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。
注5:任意適用2014年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2013年3月期と比較し、IFRS適用の2012年3月期(2012年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。

注6:任意適用2015年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2014年3月期と比較し、IFRS適用の2013年3月期(2013年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。
注7:任意適用2016年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2015年3月期と比較し、IFRS適用の2014年3月期(2014年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。
注意:米国SECに登録している会社は、現行3年間の開示が求められており、上記の国際会計基準より1年前の財務諸表が必要となる。ただしSECは国際基準に一致させるか考慮中。(PwC

目を引くのは、連結財務諸表規則及び財務諸表等規則の改正案(未定稿)で、@企業会計基準委員会の会計基準を”一般に公正妥当な会計基準である”と認める規則改正と、A指定国際会計基準の規定を挿入しようとしていることである。 (2009年6月30日の企業会計審議会の「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」 参照)

「案を作成した金融庁総務企画局 企業開示課長 三井秀範氏の肉声」が金融庁官僚の理解の程度を知る上で最も参考になります。 
金融商品取引法における国際会計基準のエンフォースメント」by松尾直彦元金融庁担当官、2009年9月著←金融庁(役所)の考えそのもの 参照)
松尾直彦氏は、金融庁OBの多い西村あさひ法律事務所弁護士に元金融庁長官五味廣文氏が顧問となっている。米国の証券弁護士を目指しているようだ。(EUとの交渉時の発言 参照)
なお、元金融庁長官の五味廣文氏が、このほど新設される株式会社プライスウォーターハウスクーパース総合研究所(以下 PwC総合研究所 )の理事長に2009年10月1日付で就任することになりました(PwC ニュース 参照)とのことである。

2009年5月15日米国公認会計士試験に、2011年からIFRSを出題することが承認される(国際監査基準の理解も含む)。 1年前にIFRSをCPA試験に提案していたもの。

2009年6月30日、金融庁は、2010年(平成22年)3月期の年度の連結財務諸表から国際会計基準による作成を容認する方針が示されたことを踏まえ、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「連結財務諸表規則」という。)及び企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」という。)等について所要の改正を行う。(金融庁内閣府令(案)  連結財務諸表規則案 財務諸表規則案 我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)(PDF:359K) 参照)

連結財務諸表規則案第1条の2で、IFRS適用の条件の一つに、外国子会社の資本金が20億円以上というのがある。担当課長は判りやすいと言っているが、何を言っているのか分からない。(金融庁企業開示課長が明かす「任意適用の4条件」参照

2009年8月19日日本公認会計士協会(JICPA))は、やっとIFRSに関するウエッブを掲載し紹介し始めた。
ケーススタディ」は、欧州において2005年から始まったIFRS適用時にCESR(欧州証券規制当局委員会)内のEECS(European Enforcers Co-ordination Sessions)に寄せられた事項の中から抜粋され、公表された事例であり、日本においても参考になると思われるためにIFRSデスクにて翻訳を行ったものだそうです。(元金融庁松尾直彦氏IFRSのエンフォースメント」参照)

JICPAケース・スタディ・・CESR執行決定データベースEECSの原文最新版CESR-Finに掲載される)
さしずめ米国SECにおけるStaff Accounting Bulletins, SABで、規制当局SECの会計に関する見解を明らかにしている。(TABLE OF CONTENTS 参照)

2008年5月18日米国公認会計士協会(AICPA)は、AICPAの倫理規定202条および203条のアペンディックスAを改定して、国際会計基準(IFRS)を会計基準設定主体であることを追加した。SECが外国企業にIFRSの適用を認めたことにより、米国会計士もIFRSによる財務諸表監査が必要となってきていることによる。加えて、会計士に国際会計基準の情報を提供するためにIFRS.comおよびcpa2biz.com. を立ち上げ会員を支援する、としている。(http://www.ifrs.com/ http://www.cpa2biz.com.   AICPAニュース Webcpa 参照)


2009年8月25日SEC委員長メアリー・シャピロ女史は、ジェームス・クローカー(James Kroeker 40才)を主任会計士に任命すると公表した。氏はデロイトのパートナーで、2007年からSECの主任会計士代行となっており、前政権時代にロードマップ作成に関与していた人物。(SECニュ−ス・リリース  ブルーミングバーグ 2009年3月の米議会での時価会計の議論 Kroeker's SEC role raises hopes for US adoption of global rules 参照)
因みに、デロイトは、IFRS普及に情熱を注ぎ100カ国以上の国がIFRS適用することとなった立役者の一人であるポール・パクター氏の勤務先である。

日本では、「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)(案)」を作成した金融庁の三井秀範企業開示課長に該当しよう。しかし、三井秀範課長のほうが業法まで権限を有しており、米国の主任会計士より強力な権限を持っている。日本では、会計監査が専門化していないのである。日本では、会計・監査が進化しないのは”官僚独裁”が原因である(戦前の”軍部独裁”が敗戦により民主化されたことに対比される)。担当官僚に知識経験があればもっと積極的に対応できたはず。日本も、経済大国としての資本市場を維持発展するためには欧米のように知識経験豊富な専門官を必要としている。つぎに問題とされる国際監査基準では、国際会計基準と同じ対応が議論されているのだ。金融庁は、欧米同様に複雑化した時代に対応して人材を専門化すべきであろう。

片山善博氏(キャリア官僚→鳥取県知事→慶応義塾大学教授の経歴の持ち主)によれば、「今の事務次官は省庁の権益の守護者にすぎません。国民の利益に反することばかりしている。他の幹部職員も専門知識など持っていません。得意なのは根回しと場つなぎぐらいではないですか」とのことですが、全く同感である。

7月−8月にKPMGと米国会計学会(AAA)が行った共同調査によると、500人の会計学教授の半数近くがIFRSを導入すべきであるとの回答を得たとしている。

2009年9月25日20カ国・地域(G20)首脳会議は、ピッツバーグサミットで2011年6月までにIFRS収斂の完了を要請するコミュニケを公表した。(FEI Summary AICPA・IFRS  ・IFRS Blog)。鳩山首相の外交デビュー、その実行性が問われることになる。

14. We call on our international accounting bodies to redouble their efforts to achieve a single set of high quality, global accounting standards within the context of their independent standard setting process, and complete their convergence project by June 2011. The International Accounting Standards Board’s (IASB) institutional framework should further enhance the involvement of various stakeholders.

日本のASBJ
は、IASBとFASBのコンバージェンスが加速していることから、9月2日に、IFRSコンバージェンスを前倒しで行うと公表してた。更なるコンバージョンの完成が求められよう。


●2009年10月9日、「IFRS Returns to the Front Burner」(CFO.com 参照)

2009年(平成21年)10月9日(金)13:01〜13:28 場所:金融庁大臣室亀井静香内閣府特命担当大臣は記者の質問に対して以下の回答をしている。仰天発言である

問)週刊エコノミストの濱條です。
時価会計の凍結と言っていらっしゃって、ただ、6月に企業会計審議会は、この20103月から国際化基準の任意適用を認めると。2012年には、もう201516年をめどに強制適用みたいな形のことを言われていますが、これは見直しですか

答:亀井静香内閣府特命担当大臣 そんなことはやりません。
もう、日本は新しい時代に入っています。そうした国際基準が、アメリカもヨーロッパも日本も同じというのは理想です。そうはいきません。これは、国々にはそれぞれの営みがあるのです。会社の経営にしたって、それに合った形でやれば良い話であって、今だってアメリカとヨーロッパはそうでしょう。今度、ヨーロッパの方が来るようだけれども。それが違うのはある面では仕方がないことなのです。日本だってそうです。日本の経営は、やはり日本の実態に合った形で会計基準も運用していくべきで、恐らく将来一緒になっていくでしょう。
だけど、なかなか世界的に一遍にはいかないのではないですか。簡単に言うとそういうことです。四角四面なことをやらせるつもりはありません。

問)では、6月の中間報告は、もう白紙という理解で良いですか。6月の中間報告は、白紙撤回ということですか。

答:亀井静香金内閣府特命担当大臣) 中間報告なんかしているの。

問)前政権でやっているのですけれども。

副大臣)いや、まだ中間報告の内容については、十分に検討した上で対応するということですから、それについて、今、ご回答は、ちょっと…。

答:亀井静香内閣府特命担当大臣 小泉・竹中のやったものを私は踏襲する気はないのです。それを、アメリカやそこらがあてにしていったら大間違い。そうですよ。私は5月にアメリカへ行ってシーモアとかビューターだというけれども、この亀井静香をCIAが暗殺でもしない限りは、アメリカの言うとおりにはならないよと。わかりやすいでしょう。

2009年10月28日日本経済団体連合会など3団体(経団連、企業会計基準委員会公認会計士協会)は、IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)適用に関してオーストラリア(豪州)で9月に行った現地調査報告を公開した。オーストラリアでは2005年にIFRSが強制適用。報告書はオーストラリア企業が経験したIFRS導入の問題点やその解決について「参考となる面があり、今後の導入過程で活用できる」と指摘した。(ニュース 参照)

日本が誤解している部分を正すには良いようである。例えば、「IFRSについての統一されたガイドラインは豪州にはないものの、原則主義の大きな問題とはならなかった」、「IFRSは原則主義と言われているが、実際はIAS39のように詳細な規則が定められている場合があり」IFRSは必要な基準を公表している。日本独自のガイドラインを作成すれば、現在の日本の基準のように日本独自のものになってしまう恐れがあることを認識すべきだ。オーストラリアの対応は当然で日本は見習うべきだ。


「豪州には約1,500千社の企業があるが、その規模に応じて、財務諸表の作成義務による開示負担が異なる。中規模の企業は、財務諸表の作成義務はあるものの、開示負担は軽減されており、小規模な企業においては、財務諸表の作成義務はない」
として日本の会社法第431条が、中小会社を含むすべての株式会社に会計基準の適用を求めているのと異なっていることが指摘されている。

2009年10月29日米国財務会計基準審議会FASBと国際会計基準審議会IASBは、コンバージェンスの目標年度の2011年まで、会計基準開発のスピードアップのため両者はミーティングを毎月行うことをニューヨークで行われたIFRSのコンファレンスで明らかにした。また、証券取引委員会SECの主任会計士ジェームス・クローカーは、この秋にロードマップを明確にすることを、30日ニューヨークで開催の米国会計士協会AICPAとIASBとのコンファレンスで明らかにした。(ジャーナル・オブ・アカンタンシー  IASB  FASB  参照)

因みに、日本の企業会計基準委員会ASBJは、半年に一回の会合である。(「IASBとのコンバージェンスプロジェクト」 「Webcast」 参照)

2009年11月27日欧州委員会(EC委員長マニュエル・バロッソ氏(Jose Manuel Barroso)は、新市場担当コミッショナーにミシェル・バルニエ氏(Michel BARNIER)を選任したと発表した。任期は2014年10月31日までの4年間である。バルニエール氏は、現EUの市場担当コミッショナーであるチャーリー・マクリービー氏の後任となる。2010年1月26日に議会の承認後就任する予定。(EC速報  英語ニュース 参照)

ECを調べるにはECA to ZInternal marketBusinesss environmentAccountingAuditing(第三国との関連)

2009年12月1日金融庁は、6月に草案を公表していたIFRSの適用規定について「改正府令等につきましては、本年12月11日(金)に公布の予定です(公布の日から施行します)が、本日、別紙のとおり、改正府令(案)等を公表します」との公表がありました。不思議な文章です。(「IFRS任意適用の条件、並行開示内容が本決まりへ」参照)
改正内閣府令案の概要・・「特定会社」の定義が官僚の作文で規制されており判りにくいので注意が必要。要するに、金融庁は早期適用をさせたくないようだ
監査対象外ながら、日本基準による要約連結財務諸表、会計方針の変更に関する説明、さらに収益など主要項目に関する日本基準とIFRSの差異について、概算額による説明が求められる(いずれも当期と前期)。翌年度以降は、差異についての概算額による説明のみが求められる。これは、日本特有の金融庁が求めている二重の平行開示であるIFRSと日本基準の二重開示で投資家(読者)は判断に迷うのではないでしょうか。少なくとも作成者・投資家にとって判り易くはない。
任意適用の条件を満たす単体決算の企業(連結財務諸表を作成していない企業)についても日本基準による財務諸表に加えて、「国際会計基準による財務諸表を作成することができる」と記載している。
(並行開示を取りやめる方向で、抜本的に見直し頂きたい」by日本貿易会は当然のコメント。)

12月11日、金融庁は、IFRS適用に関する改正府令等を公表。そのなかで、パブリックコメントの概要、金融庁の考え方も併せて公表した。平行開示については、かなり独断的である。「並行開示は、導入初年度における要約連結財務諸表の開示(前年度及び当年度財務諸表各1年分)に限定し、かつ、監査対象外とします」とする一方、「差異に関する事項については、日本基準を適用している会社の財務諸表との比較可能性等を考慮し、記載を求めることとします」としており金融庁がIFRSを理解しているとは思えない内容だ。

府令の新用語等: 特定会社連結財務諸表規則第1条の二)  指定国際会計基準(金融庁告示(ASBJの会計基準を含む) 解釈指針)
同日、会社法でもIFRS適用に関する会社計算規則等を公表して対応した。

2009年12月18日、金融庁が「IFRS適用初年度の連結財務諸表の例示を公表

2010年2月8日、ブラッセルの欧州委員会(European Commission in Brussels )が招いた会計・監査の国際化に関するコンファレンスで、金融庁国際担当河野正道監督局審議官(53)が「日本のIFRS適用の進捗状況」で「Japan’s Roadmap for IFRSs ApplicationについてVoluntary Application From: Fiscal year ending 31 March 2010Voluntary」と強調して説明している。なお、当日のビデオが公開されている。IASBのアプトン氏、SECのチーフ・アカウンタントのエアハルト女史の発表の後、27分頃金融庁の河野審議官が約8分間金融庁の考えを発表している。

2010年4月12日,企業会計基準委員会(ASBJ)は、ASBJがIFRSコンバージェンスの新計画表、「包括利益」は3カ月延期した。(ニュース
2010年4月14日,米国財務会計基準審議会(FASB)と国際会計基準審議会(IASB)コンバージェンス・進捗状況報告書を四半期報告として公表した。(ニュース

●2010年4月19日経済産業省の企業財務委員会 企業会計検討ワーキンググループ(座長:加賀谷哲之・一橋大学大学院准教授)は、日本のIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)適用について提言する中間報告書を公表した。金融庁を中心に行われてきたIFRSを巡る議論を補う内容といえるが、これまでの議論に疑問を投げかける指摘もある。 中間報告の骨子は3つだ。
1.「連単分離」(議論を切り分け)。そのうえで「単体」について関係者が一体となった検討
2.開示制度全体の再設計
3.非上場企業のための会計

注意日本経団連など経済3団体とソニーやトヨタ自動車など国際的に活動する企業の財務部門トップらでつくる研究会「企業財務委員会

2010年4月24日、金融庁(内藤純一 総務企画局長)は、国際会計基準(IFRS)に関する誤解を公表した。監督当局である金融庁の解釈を示している。特に目新しいものは何もない。
非上場の会社(中小企業など)に対するIFRSの強制適用は、将来的にも全く想定されていない」としており、、企業会計基準委員会の「非上場会社の会計基準に関する懇談会」の議論を事前に意見誘導したものとなっている。

2010年4月28日法務省法制審議会は、会社法部会を立ち上げ第一回の会議を開催し会社法の見直しをすることを決定。

2010年11月2日金融庁は、「開示制度ワーキング・グループ」を設置し、「外国企業等による我が国での資金調達を促進するための英文開示の範囲拡大」に必要な制度整備を行うためには、外国企業等にとってより使いやすい制度とする一方で、投資者保護の観点から、十分な検討を行う必要があると考えられる、として初会合が開催された
有価証券報告書を提出しなければならない外国会社等(外国会社、外国政府、外国ファンド等)は、有価証券報告書等に代えて、外国において開示が行われている有価証券報告書等に類する書類であって英語で記載されたもの(「外国会社報告書」)等を提出することができる金商法第24 条第8 項等)。(資料3)

2010年11月15日金融庁企業会計審議会は、会計監査の動向について意見交換した。しかし、意見交換ばかりで一向に進展していない。

2011年2月に、東京証券取引所は、2011年3月期より決算短信の簡素化をしている。決算短信様式・作成要領等 「見直しの概要」参照)
  IFRSの決算短信はこうなる、東証が方針を示す(2010年3月26日)⇒東証記事も双方とも判りにくい。民僚の文章だ。
決算短信様式・作成要領等の27ページに記載のとおり「投資者ニーズを踏まえた開示が求められる事項(個別財務諸表及び注記等)」は任意開示となった。
投資者ニーズを踏まえた開示が求められる事項」の(具体例):
・ 連結財務諸表に関する注記事項(セグメント情報、1株当たり情報、重要な後発事象を除く)
個別財務諸表及び注記事項
・ 利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当
・ 事業等のリスク
・ 企業集団の状況
・ 役員の異動
・ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項
・ 経営管理上重要な指標
・ 生産、受注及び販売の状況
・ 設備投資、減価償却費、研究開発費の実績値・予想値
・ 主要な連結子会社の業績の概況 等

2011年5月26日米国証券取引委員会(SEC)の主席会計士事務所は、国際会計基準(IFRS)の米国会計制度への導入の仕方についての作業計画案Work Planである”Condorsement (CovergenceとEndorsementとの造語)"を公表した。IFRSを米国の会計基準に5年から7年の間にコンバージェンスすることで、コンバージェンスが完了した時には、米国会計基準に準拠することがIFRSに準拠することにもなるというもの。それ以後は、IFRSの新規設定や改変については承認(Endorsement)する。そのときのFASBの役割は、FASBは存続しFASBがIFRS設定に参加するものとなっている。SECは、この案について7月末までにコメントを求めている。SECは2011年末までにIFRS導入の意思表示することを表明しており、SECスタッフのこの公表は注目されている。(ジャーナル・オブ・アカンタンシー 参照)

2011年6月30日金融庁金融担当大臣 自見庄三郎(国民新党)は、企業会計審議会の開催あいさつで、@IFRSの適用に関し3年としていた準備期間を、5月26日のSECの作業計画案と同様5〜7年の準備期間を置く(2015年3月期の強制適用はない)、A2011年3月期までとしていた米国会計基準の適用期限を撤廃するとしている。(「2年前に逆戻りしたIFRS議論ー大幅増員した審議会で結論は?」 「企業会計審議会総会」 「企業会計審議会企画調整部会」 「自見大臣のIFRS適用の見解(英語ニュース )」 「IFRS推進派、反対派」 「IFRSはこうなる」by田中弘氏・・自見氏を称賛している。 参照)

 @2011年6月30日議事録 (7月21日の磯山友幸氏ブログ 参照)A8月25議事録フリートーキング(「金融庁参与にIFRS慎重派、大臣が任命」「素人大臣に翻弄される金融庁」・・世も末か!「磯山友幸のブログ」参照 「自見大臣10月3日から8日まで外遊」⇒外遊後の10月11日の記者会見) B10月17 議事録 (ITPro  IFRSフォーラム  日経) C11月10日 議事録 (「連単分離は実現できるかITPro「連単分離」に傾いていた(IFRSフォーラム)」 D12月22日 議事録 藤沼委員(IFRS財団トラスティ副議長)の意見 (「適用敵否決定は2012年に拘らず、金融庁」「IFRSフォーラム」) 2012年2月8日フーガーホーストIASB議長来日 E2月17日 議事録 資料 (海外調査報告IFRSフォーラム 海外調査報告ITPro) F2月29日 議事録 資料経団連のアンケート調査報告 IFRS適用方針討議) G3月29日 議事録 資料 (監査法人のIFRS対応に意見相次ぐ 中小企業は「IFRSの影響を受けない」) H4月17日 議事録 資料 (「
証券アナリスト協会提言に異論相次ぐ」 「IFRS導入めぐる着地点いまだ見えず」・・今頃こんな議論あり?事務局が誘導しているようなもの) I6月14日、議事録 資料 (意見の溝埋まらず審議継続へ 、IFRS議論「中間的論点整理」公表 IFRS適用の論点整理案を提示 「金融担当大臣交代でIFRS問題はどこへ」by磯山友幸氏 J7月2日 「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」の公表 (金融庁、IFRS審議のまとめを公表「任意適用の積み上げを元国税庁長官大武健一郎氏・現TKC全国会会長および大塚ホールディングス役員企業会計審議会の委員脱税重婚ベトナム簿記片山さつきがかつて部下? K10月2日議事録 資料米国動向の見極めを・・進展なし IFRSの強制適用、日本の判断は2013年以降に持ち越しへ・・ロイター) L2013年3月26日5か月ぶりの審議会 議事録 資料 (経団連「適用の時間軸明示を」 経団連の「当面の対応」は参考になる。 議事録を見ると反対派意見健在、滅茶苦茶、どうなってるの?・・フェアな議論が行われているとは思われない。) M4月23日議事録 資料 (「IFRS任意適用緩和+カーブアウト」の方向性示す  当面検討すべき課題」⇒役人に纏めるつもりがないことがよくわかる。) N2013年5月28日議事録 資料 IFRS任意適用要件の緩和について 単体開示の簡素化について 最大で全上場企業のIFRS任意適用が可能に―金融庁が要件緩和を提案・・そもそも何故規制する必要があったのかが問題だ。渡り鳥の担当官、その事務局が選任した委員が真面な議論をしているとは思えない。何年も初歩的な議論をエンドレスで続けている。J-IFRSなるものを議論し始めたIAS1号に「IASに準拠した財務諸表を作成する企業は、その旨を開示しなければならない。財務諸表を適用すべき各基準書及び適用すべき解釈指針委員会の解釈指針すべての規定に従ったものでない限り、財務諸表がIASに準拠していると記述してはならない。(現パラグラフ16)」の規定によりJ−IFRSなるものは、国際会計基準に準拠していると書いてはならないと明記されている。委員は分かって議論しているか非常に疑問。4月23日の議事録で黒川委員から出た話のようだ。5月28日の議事録の中で斎藤(静)委員が話している。ただし、折衷案は反対があり纏まらなかった。) O2013年6月12日、 議事録(これほど滅茶苦茶な議論見たことがない) 資料 P2013年6月19日議事録(これが最終結論の議事録か。背筋が寒くなる。むなしいくなる委員がいても不思議はない。栗田開示課長はこれが最後の仕事) 資料 エンドースメントされたIFRS国際会計基準に「日本版」導入決定 導入加速へ金融庁 国際会計基準「日本版」を新設・・企業会計基準委員会の独立性はなく金融庁の下請けと化した。 金融庁の強引  「国際化に背を向ける、亡国の会計鎖国論争」by磯山友幸氏

2011年6月30日の企業会計審議会は、IFRS反対意見のオンパレードである。真っ先に発言したのが、三菱電機常任顧問佐藤行弘氏経済産業省で2010年4月19日「企業財務委員会」中間報告を公表した人)。元国税庁長官で、現・中小企業の会計・税務ソフト会社TKC全国会会長、大塚ホールディング役員、労働組合の連合、反対学者など、金融庁が管轄している上場会社の投資家保護の視点から逸脱したような意見ばかりが突出しており、かつ、過去の経緯を無視した意見を誘導した会議となっておりフェア―とは言えない。委員を選定した事務局担当者の見識を疑う。なお、会長は、昨年審議を無視して報告書をまとめず「会長発言」を公表した人。慎重派&賛成派の意見  (茶番

10月17日の企業会計審議会では、IFRS財団評議会の副議長 藤沼亜起氏は「大局はどうか、世界がどう流れていくかを常の意識して次の手を打たないといけない」と話した。ASBJ(企業会計基準委員会)などの基準設定主体についても「独立性を持って基準を作ってほしい。それが世界の基本。忘れてほしくない」と述べた。(IFRSフォーラム 参照)
 8月25日の議事録でASBJの委員長の発言「第1に、ASBJは、公益財団法人財務会計基準機構の中にありますが、この財団法人の運営費用の大半は上場企業や会計事務所、財務諸表の利用者などからの会費収入によって賄われております。したがいまして、これらの方々への責務を果たす必要があります。大半の市場関係者の方が我々の会員になっていただいておりますので、今後とも会員の方々からの負託にこたえるべく、市場関係者の方々の意見を十分聞いて議論を尽くした上で、個々の基準開発を行っていかなくてはいけないと思っております。会計基準は、もともと資本市場の参加者の行動ルールとして定着してきたもので、市場関係者が十分議論を尽くし、意見を集約していくことが最も大事だと思っております」に対してのように見える。独立性を保持しているとは思えない発言。

11月10日の会議
連単分離は実現できるかITPro)では、斎藤静樹教授が「そもそも連結財務諸表と単体財務諸表が原則的に異なる会計基準に基づいているというのはおかしい」と指摘した」としている。筋が通っている。他の委員が奇妙な議論している中氏の主張はかき消されている。「連単分離」に傾いていた(IFRSフォーラム)」
一方、栗田企業開示課長 は、「実態といたしまして、連結と単体に使用される会計基準が異なっているということになっております。このような運用がこれまでも続いてきたわけでございますけれども、この点については、現在のところまで大きな問題は生じていないという認識であります」として結論を誘導していますし、単体開示についても、自見大臣に「特に単体財務諸表にかかわる会計基準は、会社法、税法等との関連も深いため、その点について十分に配慮する必要があります」と発言させ開示の重要性を誘導している。

12月22日の会議では、「合同会議は月1回〜2カ月に1回のペースで開催され、一つの論点について1〜2回で議論している。このペースで進むと、11項目すべてを議論し終わるのは早くて12年いっぱいとなる見込みだ。委員からは、「半年をかけた割にペースが遅すぎる。時間がもったいないと思う。議論をもっと整理して、スムーズに進めるべきではないか」と意見を述べた」そうだ。金融庁は、時間を引き延ばして米国の結論を待つつもりだ。 時はまた失われる。

来日したフーガーホーストIASB議長2012年2月8日金融庁の自見庄三郎担当大臣と会見した。フーガーホースト議長によると自見大臣は、「日本がIFRSから離れていくような解釈はしないでほしい。日本のコミットは変わっていない。IASBとの緊密な関係は続いている」などと述べ、フーガーホースト議長は「日本にとってのフルアドプションは真剣な選択肢であることに変わらない」との印象を受けたという。(IFRSフォーラム

2012年6月14日金融庁は、IFRS議論「中間的論点整理」公表し、同時に
オックスフォード・レポート「日本の経済社会に対するIFRSの影響に関する調査研究(The Impact of IFRS on Wider Stakeholders of Socio-Economy in Japan)」を公表した。オックスフォード大学の鈴木トモ教授への委託研究としている本名は鈴木智英氏で、彼の主張は、会計を知る学者だからこそ「基準通りの会計数値は役立たず」と警告する。そこで、「創造的会計が必要です。国際会計の枠組みを乗り超えて、自社の優位性を積極的にアピールする数値・資料作りが必要です」との意見によく表れている。経済産業研究所での講演にもよく表れている。オックスフォード・リポートというよりも本名である鈴木智英調査報告書というべき個人的視点の代物である。(「金融庁が「詐称」を容認した学者」参照)

「金融庁が「詐称」を容認した学者」によれば、
金融庁ホームページには昨年6月末現在の名簿が掲示されており、八田氏も含まれている。金融庁に7月6日に問い合わせたところ、「その名簿が最新で、その後変更はない」と答えた。ところが裏では、八田氏は2月に解任されたことになっており、後任に佐藤参与がごり押ししてIFRS反対派の辻山栄子教授早稲田大学)が就任したという話なのだ。金融庁の担当部局には箝口令が敷かれ、3月以降の審議会の場でも一切名簿は配られていない」そうだ。

2013年2月4日公益財団法人日本証券経済研究所(JSRI)講演会「企業会計をめぐる諸問題について」by栗田照久(金融庁総務企画局企業開示課長(国際会計基準(IFRS)への「当面の方針」を強引にまとめた金融庁の「八方美人」の人)・・氏の理解では、日本での国際会計の導入はあり得ない。特に、IASBのアジェンダ・コンサルテーションのコメント(15頁以降・・2012年12月18日IASBフィードバック・文書を公表・・翌年1月の関係者座談会)を読むと氏のIFRSの理解の程度がよくわかる。2年の任期では専門的知識は得られようもない。まして経験さえないのだから。IFRSでの開示実務、監査実務を経験したものでなければ理解できないようだ。

2013年5月28日、企業会計審議会は、J−IFRSの創設について議論になり、斎藤静樹委員は「日本の資本市場に対する国際的な信認を高めるうえで最優先の課題は、日本基準をどうやって国際化していくかということであって、結果として日本基準を現状で凍結して置いてきぼりにするような方針はとるべきではない。もちろん、そんなことはさせないのであって、日本基準もどんどん国際化しますよと言うのは簡単ですけれども、私は、金融庁にもASBJにも、それを進めるだけのリーダーシップがあるとは思っていないです。それが私の意見です」と言っており、一方、ASBJの西川委員長は、6月12日にこれに反論して「そもそも、エンドースメントIFRSを支持される理由のところに、ASBJにその策定能力があるということを前提にされているようなところが聞かれますので、私どもは、もちろん、エンドースメントの作業をしたことはないのですけれども、これまでの基準開発であるとか、IASBに対する意見発信をしてきた作業と関連して、過去に2回ほど、エンドースメントの前提となるような日本基準とIFRSの差異を分析して、それに軽重をつけるような作業を過去2回ほど行っております」と言ってやる気十分あるというニュアンスである。ASBJの西川発言は、金融庁の下請けとなった感がある元ASBJ委員長の斎藤静樹氏は、J−IFRSにどんな意味があるのか疑問を呈している

2011年9月5日財務会計基準機構(FASF)は、「第13回基準諮問会議」でASBJの基準の策定状況を示した「プロジェクト計画表」の表示を取りやめる。理由についてASBJは、IFRSと米国会計基準とのコンバージェンスプロジェクト(MoUプロジェクト)が遅延していることや、金融庁の企業会計審議会でIFRSの適用とコンバージェンスについて見直しの議論が進んでいることを挙げている。金融庁が8月25日に開催した企業会計審議会で提案した「今後の議論・検討の進め方(案)」の11項目の一つに、「ASBJのあり方」が含まれていたからだ。(ITPro 参

2011年10月24日、米国財務会計基準審議会(FASB)議長レズリー・シードマン女史は、SECスタッフが5月に提案した「コンドースメント(Condorsement)アプローチを支持する」旨表明した。コンドースメントを通じてIFRSを採用(adoption)する方法が、一つは米国がグローバルな会計を支援できること、二つ目に実務的である、としている。(accounting Today) また、米国公認会計士協会(AICPA)の会長バリー・メランコンは、10月6日、米国の上場会社にIFRSの任意適用を認めるべきと主張した。(Journal of Accountancy)また、過半数を超える会計士(CPA)がIFRS任意適用を支援すると調査に応えている。(Journal of Accountancy

2011年11月16日米国証券取引委員会(SEC)の主任会計士事務所(chief accountant's office )と企業財務部門(division of corporate financce)は、IFRSに関する二つの調査報告書を公表した。これは、米国がIFRSへの移行するかどうかのSECコミッショナーが判断するための基礎ととなるようSECスタッフの提案である。一つは「実務におけるIFRSの分析(An Analysis of IFRS in Practice)65ページ」(IFRS適用会社183社=140社はSEC登録会社+SEC非登録会社43社、の分析をしている。SECのリビュープログラムで指摘している事項も記載している)、二つ目は「米国会計基準とIFRSとの比較(A Comparison of U.S. GAAP and IFRS52ページ」であり、(ウオールストリート・ジャーナル Journal of Accountanncy WebCPA  IFRSフォーラム 参照) 

実務におけるIFRSの分析(An Analysis of IFRS in Practice)65ページ」では、SEC登録会社とそれ以外の会社の138社の直近の年次連結財務諸表の分析をして、結論はほぼ透明性および明瞭性については強化されているとしながらも、例として、投資家の理解のうえで会計方針の開示が不明瞭であったり不十分な場合があり、使用している用語がIFRSの用語と一致してなかったり、ある国のガイダンスに従った旨記載があるが理解困難なものにしている場合がある。また、開示が不十分なためIFRSに準拠しているかどうか不明な場合がある、としている。また、IFRSの適用における多様性が、国及び産業間の財務諸表の比較可能性を困難にしている。あるケースでは、IFRSが選択適用を認めていたり、IFRSガイダンスの欠如によって、会計基準自体から多様性が生じているものがある。また、ある場合には、IFRSに準拠しないことから生ずる多様性がある。IFRSの趣旨に合致しない場合、他の処理方法を認めていることから生じている。会計基準自身の多様性は、その国の会計基準設定主体や規制当局が作成したガイダンスや追加のガイダンスや実務指針によって緩和されている。しかし、その国の会計基準設定主体や規制当局が作成したガイダンスではその国の中での比較可能性は緩和されても国際的には比較可能性は減少している、としている。

米国会計基準とIFRSとの比較(A Comparison of U.S. GAAP and IFRS52ページ」では、米国会計基準FASBの29項目にわたって行っているが、コンバージェンス・プロジェクトが進んでおり、SECルールや規則およびスタッフ・ガイダンスとの比較を行っておらず参考程度としている。

米国SECのコミッショナーは、2011年末までに、IFRSを米国の上場会社に適用するかどうかの判断を表明することになっている。これに先立ち、SECのスタッフが、米国会計基準とIFRSを具体的に比較し米国会計基準がなお役割を果たす必要性があること、各国のIFRSの適用実態を分析することでIFRSを即座に適用できないことを分析し具体的に示している。意味するところは、5月26日にSECスタッフが公表した国際会計基準(IFRS)の米国会計制度への導入の仕方についての作業計画案Work Planである”Condorsement (CovergenceとEndorsementとの造語)を補強する内容となっている。(SECサイト
Spotlight on Work Plan for Global Accounting Standards」参照)

2011年12月5日、SEC主任会計士ジェームス・クロカー氏はIFRSの適用に関するSECとしての意思決定に最低2・3カ月必要と発言した。(ジャーナル・オブ・アカンタンシー 日本経済新聞

The SEC’s decision on whether to incorporate IFRS for U.S. issuers is at least a few months away. SEC Chief Accountant James Kroeker said the SEC staff will need at least a few more months to produce a final report that would position the commission to make a determination on IFRS.

2012年2月8日フーガーホーストIASB議長来日し、金融庁の自見庄三郎担当大臣と会見した。フーガーホースト議長によると自見大臣は、「日本がIFRSから離れていくような解釈はしないでほしい。日本のコミットは変わっていない。IASBとの緊密な関係は続いている」などと述べ、フーガーホースト議長は「日本にとってのフルアドプションは真剣な選択肢であることに変わらない」との印象を受けたという。(IFRSフォーラム Itpro 参照)

2012年5月10日ニューヨークタイムスは、The Case for Global Accountingと題する記事を掲載した。IFRSの置かれた現状を簡潔に纏めたものである。
 At the Baruch conference last week, James L. Kroeker, the chief accountant of the S.E.C., asked the audience of accountants, “Does anybody know of an entity that will provide global enforcement” of international standards? No hands were raised.

米国SECの企業財務部門(SEC's Division of Corporate Finance)
では、サーべンス・オクスリー法408(c)条(Enhanced review of periodic disclosures by issuers.)により、企業がSECに登録したすべての財務諸表について最低3年に1回の割合でリビューが義務付けられており、不明瞭な開示等についてコメントレターが企業に発出せられ次年度から改善した開示を求められたり、訂正を求められたりしている。オリンパスも、米国並みの会計専門家のリビューが行われていれば、投資家に判り易い明瞭な開示が求められ、もっと早期に発見できた可能性がある。(SEC Comment Letters on Domestic Registrants SEC Comment Letters on Foreign Private Issuers Using IFRSs デロイトの翻訳版 参照) 

監督当局による会計基準のエンフォースメントとして登録財務諸表のリビューは欠かせない。監査報告書が無限定適正意見であっても、不十分な開示はありうる。2011年11月にSECが国際会計基準の適用調査の結果を見ても明らかである。適正開示のため会計基準の完成度が高くなっておりよりきめ細かな監督当局による財務諸表開示のリビューは必要となる。オリンパスの例を見るまでもなく・・・ 粉飾決算であるかどうか以前の問題で、投資判断できるような判りやすい情報にするためのものである。リビューを的確にすることで、情報開示の質を向上させ投資判断に資する投資家保護になり、かつ、粉飾決算も未然に防止できる可能性がある。

参考:「会計基準のエンフォースメント」by松尾直彦弁護士(元金融庁国際課)・・いわゆる有価証券報告書の虚偽記載などについては、エンフォ−スメントの手法による範囲の相違はあるものの、@「重要な事項につき虚偽の記載」がある場合(積極的開示)、A「記載すべき重要な事項の記載が欠けている」場合(消極的開示)、またはB「誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている」場合(不完全開示)の3つの類型が金商法に定められている、としているが、米国のサーべンス・オクスリー法408(c)条のリビューによるエンフォースメントとはかなり違う。米国のリビューは、虚偽記載と言える前の段階で、投資家の判断に応える情報開示を会計基準に的確に準拠して行うようにコメントを発し会計基準の適正な適用を促そうとするものである。日本のそれは、虚偽記載と言う犯罪行為を行政処分や刑事犯として取り締まることを視点としている。これでは、日本の情報開示は良くならない。

2012年6月20日米国SECの主席会計士ジェームス・クローカー氏(42)(元デロイト監査事務所パートナー)は、この7月で退任し、民間人となると報じた。後任は、公表されていない。SECは、先月末(5月22日)、数週間以内にIFRSに関する最終報告があると報じていた矢先である。異常?彼が民間のどこに行くのか公表されていない。11月6日の米国大統領選までは後任は公表されないだろう。後任が公表される前にIFRS適用はない。 ということは、11月のオバマ大統領の再選(?)まではIFRS適用の判断は下されない模様だ。

2012年7月6日ウオールストリートジャーナルは、2年半熟考していた米国SECは、IFRS適用の判断を再度来年に延ばすとの(Delay Seen (Again) For New Rules on Accounting)記事を配信した。(米SECは国際会計基準に関する決定を来年に先送りの公算−WSJ紙)  7月9日、SEC Shuts Down IFRS Decision Time Line

2012年7月13日米国証券取引委員会(SEC)の主任会計士事務所は、最終のスタッフ報告書として「米国の証券発行者の財務報告制度における国際会計基準の導入に関する作業計画・最終報告(Work Plan for the Consideration of Incorporating International Financial Reporting Standards into the Financial Reporting System for U.S. Issuers(127ページ))」を公表した。IFRS適用の判断を再度来年に延ばすとしている。(IFRSフォーラム Wall Street Journal  Journal of Accountancy Compliance week
Accounting Panel Expresses 'Regret' Over U.S. Stance (Wall Street Journal)
2012年7月16日SECは7月13日(金曜)に退任した主任会計士ジェームス・クローカー(42)(元デロイト監査事務所のパートナー)の後任に、ポール・A・ベスウィック(Paul A. Beswick(元アーンスト・ウイニー監査事務所のパートナー)が就任することを公表した。

2012年10月5日IMF及び世界銀行の総会が東京で来週9日開催されるときに、大手町の東京プレスクラブが、元日本公認会計士協会会長藤沼亜紀氏、前会長増田氏を迎え、元日経記者磯山友幸氏の司会で、オリンパス事件、IFRSの議論、IASBの東京のサテライトオフィス創設等について生の面白い話がされています。(大手町の東京プレスクラブ) IASB東京サテライトオフィスは旧経団連のビルで10月15日オープンだそうだ。藤沼IASB財団の副議長は来年任期満了でシンガポール他の国が攻勢をかけており日本以外の国に椅子を明け渡すこともありうるとしている。

2012年11月15日、国際会計基準(IFRS)の普及を目指すIFRS財団(ロンドン)は、東京事務所の開所式を行った。同財団の海外事務所は初めて。同財団のミッシェル・プラダ評議員会議長は記者会見で「日本の当局、企業関係者が前に進むことを期待している」と述べ、IFRSの早期導入を日本に求めた。(IFRSフォーラム  ITプロ 参照)

2012年11月15、米国ポール・パクター氏IASBを12月31日まで任期、IASB委員の米国枠後任に、SEC主任会計士室にいた、Mary Tokar女史を選任した。任期は2017年6月30日まで。(
November 19, 2012JofA)  IASBもこれで一時代が終わったようだ。

2012年11月27日、バラク・オバマ大統領はSEC議長のメアリ・シャピロが12月に退任し、後任に民主党の、 Commissioner Elisse Walter を仮に選任することを公表した。(米国のニュース 日本のニュース 2008年のウオルター女史のIFRS発言

2012年12月5日、「混迷の公認会計士協会会長選、三大事務所は候補者一本化難航(前回選挙は内紛へ、分裂選挙でダークホース木下俊男氏急浮上の可能性も)
、のニュースが飛び込んできた。私にとって、寝耳に水の内容である。「次は新日本監査法人のはずだった。ところが、同法人所属で現副会長の池上玄氏に支持が集まらず一本化に失敗」、当然であろう。氏は震災時の東京電力監査人である。

2013年1月24日、オバマ大統領は、SEC委員長にメアリー・ジョー・ホワイト女史(Mary Jo White)を指名した。SEC委員長に検事出身のホワイト氏を指名。ニューヨークの法律事務所デベボイス・アンド・プリンプトン のパートナーで、金融の政策決定や証券業界に染まった弁護士らに運営される傾向にあったSECに新風を吹き込むことになりそうだ。ただ、この分野でホワイト氏の経験が比較的少ないことと、バンク・オブ・アメリカ(BOA)のケン・ルイス前最高経営責任者(CEO)をはじめとする法人顧客の弁護を担当してきた職歴と合わせて、一部の議員や投資家の支援者から反発を招く可能性がある。 (ブルームバーグ メアリー・ジョー・ホワイト・小さな巨人)(White Houseニュース 

2013年3月1証券監督者国際機構IOSCOのIFRS財団モニタリング・ボード議長に金融庁の河野正道 国際政策統括官を議長として選出しました。(金融庁 英文ニュース IFRS) 「メンバー国の資本市場におけるIFRSの顕著な利用にどの程度貢献しているかをモニタリング・ボードは評価する予定である」とし、「当該国は、IFRSの適用に向けて進むこと、及び、最終的な目標として単一で高品質の国際的な会計基準が国際的に受け入れられることを推進すること、について明確にコミットしている」ことが求められる。

2013年4月9日会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)は、国際的な会計基準設定コミュニティのメンバーで構成される国際会計基準審議会(IASB)への技術的な助言機関であり、ASAFメンバーは、2013年4月8日及び9日に創立総会のためロンドンに集まりました。 IASB Website ASBJ サイト

2013年5月10日IASBの議長ハンス・フーガーホーストは、「日本がIFRS(国際会計基準)任意適用拡大に向けた方向性を打ち出したのは、ゴールに向けた大きなステップだと評価している」と語った。 (FASB・・Accounting Board Taps Chairman)

2013年5月10日自民党・日本経済再生本部が「中間提言を公表した。(塩崎恭久) 中間提言の40ページには、D) 金融・資本市場の魅力拡大(「5年以内に世界一へ」)として、●英文開示や国際会計基準の利用の拡大・・世界標準の情報を海外発信することによって、海外投資家に日本市場の実力を知ってもらうが必要である。今まで情報不足により投資を控えていた海外投資家からの投資を呼び込むことにもつながる。そうした問題意識から、金融商品取引法における英文開示制度や国際会計基準の利用の拡大について、更なる推進を図る。としている。本気度が試されよう。
日本経済再生本部の中間提言に異論噴出!? by磯山友幸氏著  海外勢が刮目 自民の異次元成長戦略by日経編集委員・滝田洋一氏著)

2013年6月6日IFRS財団日本公認会計士協会が紹介)は、IFRSの国際的なアドプションに向けた進展評価に関する重要なイニシアチブの第一段階を完了しました。G20は、高品質な財務報告基準の単一のセットの国際的なアドプションを求めました。当該イニシアチブは、利害関係者が、各国のG20の目標達成に向けた進展を分析できるような重要な情報源を提供することを意図しています。
66か国の調査への回答は以下のとおりです。
・95%が、国際的な適用に適した財務報告基準の単一のセットとして、IFRSの支援を公約しました。
・80%が、株式が公開されている全企業もしくは概ね全ての企業にとっての要求事項としてIFRSを既にアドプションしている一方、残りの国々の多くは、IFRSの使用に向けて大きく進展しました。
・IFRSをアドプションした国は、IFRSへの修正をほとんど行っていない一方、行われた数少ない修正は、IFRSをアドプションするための国の計画の暫定的な段階であると一般的にみなされています。さらに、ほとんど全ての場合に、IASBには、アジェンダに関する活動中のプロジェクトがあるため、各国が修正を行った基準の改訂版ができ上がる結果となります。
・過半数以上の国が、IFRS for SMEsを既にアドプションしているか、近い将来にアドプションする予定です。

2013年6月7日日本経済新聞は、自民党金融調査会・企業会計小委員会は7日午前、国際会計基準(IFRS)に関する提言案を示した。2016年末までに約300社が採用するよう金融庁や経済界に要請することなどが柱。焦点になっていた強制適用の時期については言及を見送り、3年以内に結論を出すよう求めた、伝えた。(日経) 政権が自民党に代ってIFRSに対する姿勢は変わりそうだ。

2013年6月10日経団連は10日、日本での国際会計基準(IFRS)の導入に関する提言を公表した。金融庁が制度設計に入る日本基準とIFRSの「折衷案」を容認したのが柱。折衷案の制度づくりについては、IFRSのルールのうち日本企業が受け入れにくい部分を、除外できるようにすべきだとの見解も示した。(日経

2013年6月13日自民党企業会計小委員会は、「国際会計基準への対応についての提言」を公表しました。そこには、19日の企業会計審議会で、金融庁の主張する日本版IFRSについては、「当期純利益の重視など、わが国が行ってきた主張をさらに明確に発信していく観点から、また、わが国として考えるあるべきIFRSの姿を実現する意味においても、現行の指定国際会計基準制度のほかに、わが国の会計基準設定主体であるASBJにおいて、IFRSの個別基準を具体的に検討し、わが国の会計基準として取り込むシステムについても検討を進めるべきである」と微妙な言い方で記述されている。あるべきIFRSとして決議されている100か国以上が適用しているIFRSを、わが国として考えるあるべきIFRSを今更主張してどうするのだ。IFRSとは異なるという”レジェンド(警句)”が付される
国際的に認められない基準を適用する日本企業があるとは思えない。例え、2011年7月に公表した「アジェンダ・コンサルテーション2011」において、今後3年間のアジェンダの優先順位に関する意見を募集しているとしても。

経済産業省経済産業政策局企業会計室が、2013年6月17日付で「会計基準に関する国際的な動向(IFRS、欧州等)」を纏めている。経済産業省の経済産業政策企業会計室と検索すると「企業会計、開示、CSR(企業の社会的責任)政策」が検索され、企業会計に関する「企業財務委員会」をクリックするとIFRS反対派の佐藤行弘三菱電機株式会社常任顧問が委員長をしており、そこで纏められたことが分かる。佐藤行弘氏は自見金融担当大臣が強引に企業会計審議会の委員にIFRS反対派として送り込まれたといわれる。(現代ビジネス 参照) 経済産業省はかなり偏った人材を登用し、かなり偏った政策を強引に進める傾向にある。エルビータメモリーのインサイダー取引で逮捕された官僚がいるくらいだから・・・モラルが疑われる。4月から「企業会計実務者分科会(仮)について(案)」を立ち上げ非公開とし、「企業会計のあり方について、国内における企業の財務報告の実態や課題、国際的な会計基準に関する議論について情報共有し、産業界としての技術的、政策的課題を明らかにすることで、関係団体との連携に資するため、実務者レベルにおいて議論を行う」としている。6月17日に開催された第25回企業財務委員会にて、本分科会での検討内容が"単体開示"に関し報告されました。企業財務委員会の委員の中には、IFRS諮問委員であった島崎憲明住友商事株式会社特別顧問が名が掲載されているが出席をしていない。

2013年7月10日企業会計基準委員会(ASBJ)は、第268回委員会を開き「エンドースメントされたIFRS」に関する作業計画案を提示したそうだ。「IFRSのエンドースメント手続き」ASBJは、非常に閉鎖的で公開性がなく、金融庁からの独立性も危うく、ガバナンスにも疑問点が多く完成度・信頼性に疑問符が付く。それによると、「目的として、 1 .企業会計審議会は、平成25 年6 月19 日の「IFRS に関する当面の方針」では、IFRS のエンドースメント手続の導入が記載されており、ASBJ が検討を行うこととされている。本資料は、ASBJ が実施するIFRSのエンドースメント手続に関する計画の概要の案を記載している。 2.「IFRS に関する当面の方針」では、以下のとおり記載されている。◇「具体的なエンドースメントの手続1については、まず、会計基準の策定能力を有する。ASBJ において検討を行い、さらに、現行の日本基準と同様に、ASBJ が検討した個別基準について、当局が指定する方式を採用することが適当である。◇「ASBJ において速やかにエンドースメントの検討が行われることを期待する」エンドースメント手続の完了目標を、個別基準に関する検討の開始から概ね1 年とする」としている。
 ASBJの第268回の審議「IFRSのエンドースメント手続に関する計画の概要」Webcastを聞いていると完全に金融庁の下請けの委員会である。「エンドースメントされたIFRS」は仮で名称は金融庁が決めるそうだ。驚きだ。真面な議論している委員が少ない。37分ごろから鶯地IASB委員が発言しているが常識的な発言をしている。

 2013年5月28日企業会計審議会の議事録には、斎藤静樹委員私は、金融庁にもASBJにも、それを進めるだけのリーダーシップがあるとは思っていないです」といい、西川郁生委員ASBJにその策定能力があるということを前提にされているようなところが聞かれますので、私どもは、もちろん、エンドースメントの作業をしたことはないのですけれども、これまでの基準開発であるとか、IASBに対する意見発信をしてきた作業と関連して、過去に2回ほど、エンドースメントの前提となるような日本基準とIFRSの差異を分析して、それに軽重をつけるような作業を過去2回ほど行っております」と言ってやる気十分あるというニュアンスである。ASBJの西川委員長と金融庁は密接な関係を有しており、ASBJは既に独立性はなく金融庁の下請け化した。一方、元委員長の斎藤静樹氏は憂い「日本版IFRSが抱えるこれだけの問題」の中で「IFRSの一部基準を適用しない“日本仕様”となる。これにどんな意味があるのか」と異を唱えている。

西川ASBJ委員長の3つの不思議
@IASB理事鶯地氏の「エンドースメントされたIFRSはIFRSではない」という説明に、1993-1998年 国際会計基準委員会(IASC)理事会日本代表であった西川氏が無視する不思議。90年代の日本はIASCの理事会で反対ばかりしている記事がJICPAジャーナル(2007年1月から「会計・監査ジャーナル」へ変更)に掲載されているのが印象的であった。
AASBJ前委員長の斎藤静樹教授の「私は、金融庁にもASBJにも、それを進めるだけのリーダーシップがあるとは思っていないです」といい、現ASBJは「会計基準の策定能力を有するASBJ において検討を行い」と記載する厚顔の不思議。
BASBJを創設した際に、「行政を含む各方面からの独立性が確保される必要がある」と謳って創設されたにも拘わらず、金融庁の下請けと化した不思議。

2014年3月14日、ASBJのサイトによれば「平成26 年4 月1 日付で、小野 行雄氏を企業会計基準委員会委員長に選任することを決議致しましたので、お知らせ致します。小野 行雄氏は、西川 郁生現企業会計基準委員長の後任となります」ということだ。小野氏は20年前の平成4 年〜平成7 年に 国際会計基準委員会(IASC) メンバーだったそうだ。

ASBJ: IFRSのエンドースメントに関する作業部会の設置と委員の選任」(2013年7月25日)部会長となる小賀坂氏はメンバー構成について、「各セクターからバランス良く人選した。特に実務上のコスト・ベネフィットの見極めが大切である点を考慮して、作成者の方を多めにした。IFRSの任意適用を既に始めており、結果としてどうだったかが分かっている方にも入ってもらった」と説明した。企業の委員は、経済産業省企業財務委員会の委員(IFRS反対派の佐藤行弘三菱電機株式会社常任顧問が委員長)でもある。所謂経団連を中心とした重厚長大なオールド・エコノミーの企業ばかりで、ニュー・エコノミーは入っていない。どう見ても委員のバランスが取れているとは言えない。(「勲章配分機関の経団連はもういらない」by楽天の三木谷社長 「新経済連盟」楽天・三木谷氏の野望 参照)

国際的な顧客が多く社会インフラ事業で活路を見出そうとしている日立東芝米国基準からJ-IFRSを使ったAnnual Reportを外国の顧客に渡しますか?それとも国際企業を返上しますか?J-IFRSを作っている時ではないと思うのだが・・ 三菱重工が日本基準です。 J-IFRSを適用するか去就が注目される。なお、三菱商事(IFRS適用検討中)、三菱電機は米国基準でバラバラ。新日鉄住金はJ-IFRSを使う気でいるのでしょうか?腰が引けてる印象は拭えないのではないでしょうか?厳しい状況が続いているからだろう。 元金融庁総務企画局企業開示課関口智和氏は「EUによる会計基準の同等性評価」で実績を上げたといっている人。金融庁とは相性が良い。ガバナンスなんてない。これでよいのか日本の会計基準。
(「J-IFRSは国際的な詐欺行為ではないか他」「会計基準国際化の転換点」by斎藤静樹(前ASBJ委員長)日本証券アナリスト協会理事 参照)

2013年10月号の”会計・監査ジャーナル”に「我が国におけるIFRS適用の方向性を探る〜国際会計基準(IFRS)への対応の在り方に関する当面の方針」等を読み解くとして〜として、氷見野良三金融庁総務企画局審議官は、発言の中で”修正版国際会計基準(いわゆるエンドースメントされたIFRS)の作成”という表現をしている。そして”ピュアIFRSはもちろん残しておくわけですが、これに加えまして、個別の基準を判断して、必要であれば一部修正するなどして、採択できる仕組みを設けようというご提言をいただいております”という発言をしている。自己紹介の部分では、”私はいわゆるBIS規制の仕事が長かったのですが、BIS規制については、押しつけられて仕方なしにおこなった、というイメージが、日本中に広まってしまったという反省があります”この人は、BIS規制とIFRSの問題と同一視しているようだ。つまり、会計監査にはずぶの素人であるということだし、問題を複雑にしてしまう最悪の人だ

○2014年5月23日、自由民主党は、「日本再生ビジョン」を公表した。●コーポレートガバナンス・コードの制定........ 17、(5) 会計基準等、企業の国際化、ルールの国際水準への統一 ........ 41、など盛りだくさんの施策が掲載されている。金融庁に抵抗があるようだ。

2014年5月30日、金融庁は、「第23回政策評価に関する有識者会議」を行いその内容を公表している。桑原茂裕総務企画局長は「J-IFRS」について、次のように仰天の発言をしています。
 桑原総務企画局長 総務企画局から、島崎委員のご意見の2点について申し上げたいと思います。1点目が、「エンドースメントされたIFRS」についての基本的な考え方等ということでございます。私としての解釈を申しますと、基本的にある金融危機が起こったときに、非常事態として会計基準の内容を少し変更することがございます。そのときに、日本基準であれば日本独自で変更ができます。しかしながらIFRSですと、例えば全世界的に金融危機が起こっていれば、全世界的な危機意識のもとでそういうことが議論されるんでしょうけれども、日本だけの現象の場合、対応がなされない可能性が十分にある。その場合、ピュアなIFRSだけで全部やっていると、多分身動きがとれない。そういうときに、「修正版IFRS」、「エンドースメントされたIFRS」というものがあれば、そこを若干工夫することによって、ピュアなIFRSから、割と移りやすい道を残しておくという意義があるのではないかと思っています

この局長は会計基準の独立性は行政によって無視することが想定されているようだ。「企業会計基準設定主体のあり方について(論点整理)」は無視されて発言している。会計基準を通達と勘違いしているのでは?
なお、7月からは後任として池田唯一総務企画局長となり、「日本が考えるIFRSを示し、我が国の主張を明確にすることが重要だ」と述べた、そうだ。

金融庁の総務企画局長が上記の発言をするには理由があることが分かった。ASBJの新井武広副委員長の説明では、従来の目的である@国内会計基準の調査・開発、に加えてAIFRSのエンドースメント手続き、B国際的な意見発信をすることがASBJの活動目的に加わったという。形式的にも、実質的にも、ASBJは独立性を失い、金融庁の下請け機関となったことに愕然とした。(「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」、「企業会計基準設定主体のあり方について(論点整理)」) ASBJは、金融庁の企業会計審議会から独立した意味が失われ、単なる金食い虫なっただけであるロゴマークが泣いている。なお、金融庁が絡むケースでは、ASBJ 常勤委員関口智和氏が絡んでいるので注視してみる必要がある。

2014年7月14日、ダイヤモンド・オンラインは「公開草案が出ない!大義失った日本版IFRS」と題して、「いつ草案が出るか、分からなくなってしまった」──。金融庁の会計関係者は、不安な表情でこう語った、と伝えている。6月中に出るとみられていた公開草案がいまだに出てこない(7月9日現在)。そんなものを作ったら世界からばかにされる。公開草案を出すべきではない」(塩崎恭久・衆議院議員)と、作成すること自体に批判の声も上がっている。

   7月17日、日経主催で「IFRSの必要性や重要性、課題などを討議するシンポジウム」が開催された。金融庁の池田総務企画局長(7月就任)の発言が奇妙。

2014年7月31日(木曜)、企業会計基準委員会は、「修正国際基準(案)」を公表した。本公開草案に対するコメントは、2014年10月31日(金)まで。

以下は、企業会計基準委員会による修正会計基準の一覧を示している。

企業会計基準委員会による
修正会計基準の名称
「削除又は修正」の対象となる会計基準等
企業会計基準委員会による修正会計基準第X 号
のれんの会計処理
20年を超えない耐用年数で、償却しなければならない。
・IFRS 第3 号「企業結合」・・のれんは償却してはならない。
・IAS 第28 号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」
企業会計基準委員会による修正会計基準第X 号
その他の包括利益の会計処理
資本性金融商品への投資に係る利得又は損失は
その他の包括利益に認識しなければならない。
利得又は損失の累計額を、その他の包括利益
累計額から純損益に組替調整額として振り替えなければならない。
当該投資の認識の中止を行う際には、その他の包括利益
累計額から純損益に組替調整額として振り替えなければならない。

当委員会は、純損益は包括的な指標であるべきであり、
その他の包括利益に含まれた項目はすべて、
その後、純損益へのリサイクリング処理が必要であると考えている
・IFRS 第7 号「金融商品:開示」
・IFRS 第9 号「金融商品」(2010 年)
・IAS 第1 号「財務諸表の表示」
・IAS 第19 号「従業員給付」
既に45社がIFRSを任意適用する旨公表している中で、上記の2点だけIFRSを適用しないという不利な「修正国際基準」を適用する企業は、投資家からも奇妙に感じると思うが・・
@のれんの償却で毎年償却する日本の方法は、償却費の負担が長期に利益を圧迫して不利になり、積極的に大型企業買収を進める企業にとっては不利となることは立証されている。
  不思議なのは、IFRSは、のれんの耐用年数が合理的に見積れないので減損会計としたのに、日本基準は、20年以内の耐用年数で償却するとしている。耐用年数を合理的に見積もれるとでもいうのだろうか?
Aその他の包括利益の会計処理で、日本のリサイクリング処理する方法は、純資産が不変であり、企業実態に変化はない。つまり株価に中立である。

そもそも、この修正国際基準なるものは、(a)ASBJの行政(金融庁)からの独立性を失った証拠となり、(b)「のれんの償却」は特定の学者の理論であることは知られている。ASBJの委員は、委員の構成も含めて、会計基準設定にふさわしい独立性を保持した委員とは到底思えない。ASBJの創設当時の「我が国の会計基準設定主体のあり方について」、「企業会計基準設定主体のあり方についてをもう一度振り返ってみる必要があるようだ。さもなくばASBJは企業会計審議会の委員のように御用学者の集まりと変わらないことになる。信頼を失墜することは確かだ。

2014年12月4日、日本公認会計士協会の研修会で、元米国財務会計基準審議会(FASB)の議長ボブ・ハーツRobert H Herz)氏の講演「国際的コンバージェンスと米国におけるIFRS」と題して説明があった。氏は国際会計基準審議会(IASB)の創設時のボードメンバーであった。米国でのIFRSの導入に積極的であった。しかし、現状は、全くの不透明になった。そのいきさつを話してくれた。IASBとFASBとの共同作業による基準の統一は、収益認識の基準や公正価値会計は一致したが、金融商品、リース会計、保険契約などは一致を見ていないで、共同作業は解消した。
米国では、株式市場は世界第一位で健在のところ、国内企業の上場会社の大半が国際的な会社ではないことから会計基準をIFRSに統一する意味がないという声が多いということだ。世界に米国基準とIFRSの二つがあってもよいという意見が多いそうだ。また、リーマンショックから、開示基準である会計基準以外の重要な懸案があり、会計基準の問題は優先順位を失ってしまった。そのことから、今後、米国がIFRSの導入の可能性は低いということだ。日本のように選択適用を認めることはあっても・・・・

2014年12月15日金融庁・企業会計審議会会計部会は、第1回の会計部会を開催した、そうだ。(ニュース)その中で、委員の一人である住友理工(旧 東海ゴム工業)の西村義明社長は「JMISを日本で積極的に推進すべき」とし、「2015年からのIFRS任意適用に向けて準備を進めているが、JMISが制度化されたら適用を考えていきたい」と語った、そうだ。住友理工の財務で公認会計士の棚橋潤哉氏がサポートすることになるのでしょう。

また別のニュースでは、三井物産の岡田譲治副社長ら21人が委員を務める。岡田副社長はIFRSを採用する企業を増やすため、米証券取引委員会(SEC)に登録していない企業にも米会計基準の適用を認める特例の見直しを提案した、としているが、当局が米国会計基準の財務諸表の有価証券報告書を審査できるとでも思っているのでしょうか。この部会の委員は、不思議な人ばかりで、奇妙な委員会である。記事の書き方が悪いのか?
有価証券報告書等の業務」には、(3)有価証券報告書等開示書類の受理・審査があり、必要に応じて提出者に対して訂正指示等の措置を講じる、とあります。証券取引法に基づき権限を委任された各財務局(関東財務局理財部統括証券監査官等)が提出書類の受理/審査を行う、としています。

2015年6月29日企業会計基準委員会は国際会計基準の一部を日本仕様に変更する修正国際基準(JMIS)の導入を決議した。これにより、日本基準、米国基準、IFRSに続く第4の会計ルールとなる。金融庁の手続きを経て2016年3月期から導入される。ただし、修正国際基準の採用が実際に普及するか不透明としている。(日経) いずれにしても金融庁の権限誇示のためである
のれん
の定期償却
株式売却損益
JMIS 償却する 損益に反映
日本基準
IFRS 償却しない 損益に反映しない

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