これが日本の会計・情報開示 |
日本の制度会計と米国会計基準との相違点 |
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金融庁は、証券取引法による投資家保護を目的として従来紙媒体であった有価証券報告書(年次報告書 Annual Report)、半期報告書(Semi-Annual
Report)および証券を売出すときの有価証券届出書(Prospectus)を、インターネット上(システムは「EDINET: Electronic Disclosure for Investors' NETwork」)、エディネットと呼ばれる電子開示を、2004年6月1日以降、原則義務化し、2008年4月1日からXBRL化することとしている。(金融庁「EDINET(開示用電子情報処理組織)を使用して行う電子開示手続等に係る規定の整備等」 参照 ⇒⇒「証券取引法・商法分野における電子提出」によれば、EDINETは日本IBMが1998年に落札、1999年1月に第1次試行が実施されたもの。
⇒⇒ 投資家・利用者側が証券取引所のホームページで株価を閲覧し、同時に、有価証券報告書等(EDINET)の企業情報を検索しようとしても取引所のホームページからは閲覧できません。(「証券取引所から閲覧できない有価証券報告書等の企業情報」参照)
一方、1961年から始まった政府刊行物として有価証券報告書の縮刷版(最近は1冊2000円)を購入することになりますが、2004年度から販売廃止となりました(国立印刷局からのお知らせ 政府刊行物「有価証券報告書の販売」 参照)。
有価証券報告書等をまとまった形で見るには、財務省(旧大蔵省)または各証券取引所で閲覧するか、上記、EDINETや会社のホームページなどで公表の投資家向け情報をインターネットを通じて閲覧したりダウンロードすることになります。
なお、証券取引法には証券監督局(証券取引法第24条には、「内閣総理大臣に提出」となっている)に提出する規定があるのみで、株主になっても有価証券報告書および半期報告書(2008年4月から四半期報告書)は株主の手許に届くことはありません。
加えて、2008年(平成20年)4月からXBRL(eXtensible Business Reporting Language)の新システムを稼動し、XBRL形式による提出へ移行することを計画している。それに先立って、EDINETパイロット・プログラムへの参加を募って実証実験を行う。パイロット・プログラムで使用する書類は、原則として、既にEDINETに提出済みのもので且つ、平成18年5月1日以後終了の事業年度及び連結会計年度並びに中間会計期間及び中間連結会計期間に係るものとします。
内容は、現行の有価証券報告書の内財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主持分等変動計算書、キャッシュフロー計算書で注記を除く)を忠実にXBRLの形式に置き換えるものである。(金融庁「EDINET再構築に伴うパイロット・プログラム実施のご案内(2007年4月3日)」、「EDINETパイロット・プログラムに関する資料の公開及び説明会の開催について4月27日」、「EDINETパイロット・プログラム参加申込み方法について(2007年6月1日)」「EDINETパイロット・プログラムに関する開示書類閲覧用ページの公開について(2007年8月13日)」「よくあるご質問(FAQ)」「パイロット・プログラムの結果概要(2007年10月29日)」「EDINET再構築に係る各種仕様等の公開(2007年11月16日)」、「日本公認会計士協会・・平成20年4月から金融庁の電子開示システム(EDINET)が新しくなりますが、新しいEDINETの円滑な導入が図れるよう、金融庁から監査人にも協力の依頼があります。監査人として当面の対応をご紹介しております(2007年12月25日)」「開示用電子情報処理組織による手続の特例等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)(2007年12月27日)米国式連結財務諸表を作成している会社が提出する連結財務諸表については、従来どおり、HTML 形式により作成します」2008年3月13日「パブリックコメントの結果等」・・日本独特の表示の硬直化を招く恐れがある。)
2008年3月17日より、EDINETの閲覧ホームページがXBRL化に伴って閲覧ホームページEDINETは、PDFファイル(全ページ閲覧可能となった)およびXBRLファイルを追加変更された。
XBRL 形式による書類の提出は、2008 年4 月1 日以後開始事業年度等を直近の事業年度等とする財務諸表等を掲げる有価証券報告書、四半期報告書、半期報告書及び有価証券届出書をEDINET へ提出する場合に適用されます。
日本のXBRL化は日本の会計基準のみ対応しており、米国会計基準で登録している大企業は従来どおりHTMLでの登録となる。XBRLは日本語勘定科目と英語表記と一対となっている。勘定科目はXBRL化により画一的な傾向となる。したがって、英語表記はもっと画一的となる。すでに、見難い表となったり、奇妙な日本語や英語が散見される。
なお、米国SECでは国際会計基準と米国会計基準の収斂を進行しつつ、XBRL化を試行しているが、成功しているとは到底いえない。(SECの「任意でXBRL形式で提出している会社」「ADOBE SYSTEMS INC の年次報告書Form10-K」「国際会計基準(IASB)による米国基準のXBRLとの収斂」 「2007年9月25日SECはタクソノミを完成させ会計基準設定主体、作成者、証券アナリスト、投資家などにリビューをお願いすることになったと発表した」参照)
会計が「企業実態(substance)」を表現しようとするのに、EDINETのタクソノミが一律の「表示様式(Form)」を求めることで実態を表さない表示で「虚偽記載」になる恐れが生ずる。または、逆に、タクソノミーを見ると、重要性と合算(Materiality and aggregation)や相殺(Offsetting)を無視してやたら詳細になり読みにくくなる恐れもある。慎重な検討が望まれるが、日本は、官僚主導の規制型の画一性と、XBRLの画一性がマッチしており、世界に先駆けて強制適用する。(タクソノミーとインスタンスの関係は東証のHPが判り易い)
XBRLの採用にあたって、金融庁はXBRLデータで用いる用語やデータ構造の統一を図っている。例えば決算の勘定科目は「わずかな言葉遣いの違いも含めて6万もの用語が使われているが、EDINET向けのXBRLではこれを約4000個に集約した」(金融庁企業開示課の武田敦専門官)。(ITニュースより) 役人の手で集約されては実務をしている者にとって無謀と思われる。まるでロシアの財務諸表みたい。
ちなみに、法人税申告書の電子申告(e-Tax)に添付される決算書はxmlファイルとなっており国税が用意した勘定科目に当てはまらないものでも無理して近似した科目に表示することになっている。私が実際に電子申告(e-Tax)で決算書を作成した限りかなり使い勝手が悪い。会計が分かっている者にとっては予想できたこと。法人税の申告書は課税所得が正しく計算できればよいので多少の科目違いは許されるが、投資家保護の財務諸表は事実を正確に表示するものでなくてはならない。限られた表現ではミスリードされる恐れがある。XBRL(eXtensible Business Reporting Languageは、各種財務報告用の情報を作成・流通・利用できるように標準化されたXMLベースの言語です。国際会計基準審議会(IASB)のXBRLを含めて各国が苦慮しているのは実務上、タクソノミーが実態を表示することができるか検討中であると言うことです。国際会計基準に収斂することを約束した日本は、検討せず導入日程だけが先行している。(「日本はXBRLの先進国」と話す金融庁企業開示課課長補佐の長谷川修氏 金融庁「EDINETの高度化に関する研究会」 金融庁「システムの再構築に18年度19年度の2年間で35億円」 「日本の電子申告は個人・法人含めて利用実績は2.89%(2006年度)と極めて低い」参照)
仮令、日本が先行し自画自賛したとしても株主等の多くの読者が利用しなければ価値はない。パイロット・プログラムを読む限り、EDINETや電子申告のe-Tax同様に業者にまる投げのような印象で、作成者・利用者の使い勝手は置き去りである。(EDINET XBRLのパイロット参加をしている会計士のブログが判り易い)
2007年7月11日、ジャストシステムは、xfy XBRL EDINET対応版2008を公表した。2008年2月26日に販売を始める。 (ジャストシステムの製品・サービス 参照)
2008年3月11日、富士通は、財務データを簡単な操作でXBRL形式に変更できるソフトウェア「XWand Tool for EDINET」を発表し、5月1日に販売開始することを公表した。金融庁による義務付けで5000社に及ぶ企業がXBRLに対応する必要があるが、企業の中であせる気持ちはないようだ。なぜなら、多くの企業は財務諸表の作成、提出に専門の代行業者を使っているから。企業は従来どおりに財務データを提出すれば、代行業者がXBRL形式のデータを作成してくれる。そのため、富士通は「XWand Toolの市場は小さい」(富士通 公共ソリューションビジネスグループ ソリューション開発センター センター長 遠藤明氏)とみている。(@IT情報マネジメント 参照)
企業会計基準委員会(ASBJ)が予定している会計基準の開発と改正にソフトがタイムリーに対応しているのであろうか?(中期運営方針 導入時期の様子 参照)
2008年8月22日、有価証券報告書などの電子開示システム「EDINET」におけるXBRL(Extensible Business Reporting Language)の導入が順調に進んでいる。今年度から義務づけられたXBRL形式での財務諸表の提出件数は、8月14日までに2,700件を超えるなど、特に目立った混乱も見られないという。金融庁 総務企画局で開示業務参事官を務める土本一郎氏が、 8月22日に開催された日本オラクルのセミナー「金融サミット 〜ベターレギュレーションによる市場競争力の向上〜」の基調講演中で明らかにした(マイコミジャーナル 参照)。
世界のXBRLの導入状況:「EUではXBRLの導入が遅れている」(2008年3月17日WebCPA)
米国SECの米国会計基準のXBRLのテスト | ||||||||||||||||||
米国SECもXBRLのテストを行っており、既に、XBRLの任意で登録を受付けている。(Interactive Data Viewers 参照) SEC’s Interactive Financial Report Viewer・・既にXBRLでSECに任意で登録している会社の財務諸表(年次・四半期)が見られる。改善する余地が多々ある。とりあえず4ヶ月のコメント期間は妥当。2008年1月初旬で65社が293の四半期および年次報告書がXBRLで開示している。かなり少ない。なお、従来どおりのHTMLのファイルも同じサイトから一括で閲覧できるようになっている。注記はHTMLファイルしかないので従来のHTMLファイルは残るのではないか。 Beta release 1.0 of the US GAAP Taxonomies and Documentation・・2007年12月5日から2008年4月4日までの4ヶ月間コメントを受付け広く意見を求めている。
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日本の上場会社の制度会計による情報開示は、下記の通り、(T)商法(会社法=法務省所管)と(U)証券取引法(金融商品取引法=金融庁所管)にしたがって作成した財務諸表(それぞれ個別・連結の2X2=4つの財務諸表)を公表します。内容の重複は縦割り行政の弊害です。国際化の中で情報開示の充実が今後ますます求められますが、日本では、まずは、会社法と金融商品取引法に関して重複部分を解消することが必要です。欧米では、重複することなく、情報開示は一つで内容が充実しています。日本は重複した情報が多く煩雑で整然としておらずバラバラで読みにくい。(ちなみに、中国でさえ会計は会計法を基礎に一元的基準となっている。)
(T)会社法(旧・商法)の計算書類
株主総会の召集通知書に添付され株主に送付される計算書類(財務諸表)は商法の規定にしたがって作成されたものを株主に送付します。(商法第232条 総会ヲ招集スルニハ会日ヨリ2週間前ニ各株主ニ対シテ書面ヲ以テ其ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス)(会社法299条、437条で類似規定となっている)(「株主に対する情報開示」 参照)
会社法第431条 では、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」として、日本独特なものとなっており国際基準を受け入れられない原因ともなっている。英語への意訳は以下の通り。
参考:会社法第431条の英訳>The accounting of kabushiki kaisha shall be in accord with corporate accounting
customs which are generally accepted accounting practices.
会社法第431条は、中小会社を含むすべての株式会社(下記では251万社、国税庁の統計では平成20年6月末現在283万社)に会計基準の適用を求めているものである。上場会社等の金商法の会社及び資本金5億円または負債200億円以上の大会社(会社法第2条)の法定監査会社約1.49万社、つまり、99%以上は中小会社である。会社法が、99%以上の中小会社(多くは会計基準を必要としない⇒"all costs and zero benefits of switching to GAAP"の世界・・下記米国の会計実務を参照)が会計基準に準拠して会社法違反しないことを期待しているとしたら、非現実的で、日本の会社法立法者は実務界を知らないといわざるを得ない。実務が理解できるようになれば、いずれ、ドイツのように中小企業と上場会社(IFRS適用)を分けるようになろう。戦後の「企業会計原則」は僅かなページの内容で中小企業も適用可能な基準であったが、今や、2500ページを超すIFRSを適用することが検討されている時代である。
会社の数 | 法定監査 | % | 金融商品取引法 適用会社 |
会社法 適用会社 |
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@ | 上場企業 | 約3,900社 | 約3,900社 | 0.15% | 約3,900社 | 約3,900社 |
A | 金融商品取引法開示企業 | 約1,000社 | 約1,000社 | 0.04% | 約1,000社 | 約1,000社 |
B | 会社法大会社 (資本金5億円以上、負債2百億円以上) |
約10,000社 | 約10,000社 | 0.40% | - | 約10,000社 |
C | 上記以外の株式会社(主に中小企業) | 約2,500,000社 | - | - | 約2,500,000社 | |
総合計 | 約2,514,900社 | 約14,900社 | 0.59% | 約4,900社 | 約2,514,900社 | |
出展:金融庁調べの資料より なお別資料があるが正確な統計資料が定期的に金融庁から公表されていない。 |
2009年9月16日、民主党の鳩山由紀夫代表は、召集された特別国会の首相指名選挙で第93代総理大臣に選出され、同日夜、民主党はじめ社民、国民新の3党による鳩山連立内閣が正式に発足した。民主党の”政策集INDEX2009”によれば「公開会社法」を制定するとあり、「株式を公開している会社等は、投資家、取引先や労働者、地域など様々なステークホルダー(利害関係者)への責任を果たすことが求められます。公開会社に適用される特別法として、情報開示や会計監査などを強化し、健全なガバナンス(企業統治)を担保する公開会社法の制定を検討します」とある。(民主党の公開会社法素案が報道by Japan Law Express、 公開会社法素案関係記事 )民主党になって変化の兆しが出てきた。
2009年3月18日の金融庁・金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」では、早稲田大学大学院法務研究科教授上村達男メンバー が持論の「公開会社法要綱案」を披歴している。氏は、公開会社法要綱案(11案)とは欧米の公開会社法に一気に論理で追いつき、追い越すための提案、としている。(公開会社法要綱案第11条案 概要 参照)
米国の場合は、各州の会社法に従うが一般的には非上場の中小企業の財務諸表は「現金基準か税法基準 cash- or tax basis」である。"中小企業のIFRS"をIASBで纏め上げた米国公認会計士ポール・パクター氏(現:IAS Plus デロイト香港)も欧州や日本の商法や会社法の存在に驚いていた様子が窺える。下記は、氏の文章の一部である。米国人にとっては、会計基準は15千社のSEC登録会社及び僅かの規制企業が準拠すべき基準と考えている。日本は会社法(旧商法)があるため全株式会社を対象としているのとは異なる。
By law, only a relative handful of those are required by law to publish U.S. GAAP financial statements, audited or unaudited - generally the 15,000 SEC registrants plus a few other regulated entities. Sometimes, lenders or contracts impose such requirements. But for the vast majority of American private companies, there is no requirement to prepare U.S. GAAP statements. |
日本が模範としたドイツの場合は、中小会社については別途に計算規定を明らかにした。
商法(会社法)と国際会計基準との主要な相違点
会社法(商法)は、証券取引法とは別途計算規定(会計規定)を規定しており、金融商品取引法(証券取引法)と自動的に連動していることはなく、国際基準とも下記のような主要な相違点が見られ、国際的に見た場合、透明性に劣る。
特に、商法は債権者保護を目的としているといいながら、日常の事業活動からどの程度のキャッシュ(現金預金)を創出しているのか、つまり支払能力を明示するキャッシュフロー計算書の開示は求められていない。
新会社法・規則等の計算書類等のひな型 (2007年2月 経団連)参照
会社法(商法)の計算書類 及び連結計算書類 |
国際基準の財務諸表 | 主要な相違点 | 検討開始事項 | ||
(1)計算書類の体系: ・貸借対照表 ・損益計算書 ・利益処分案
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(1)財務諸表の体系: ・貸借対照表 ・損益計算書 ・株主持分変動計算書 ・キャッシュフロー計算書 ・説明的注記 「国際会計基準」参照 |
商法では、株主持分変動計算書、キャッシュ・フロー計算書 などの基本財務諸表はなく、注記が貧弱。 国際基準では、開示すべき事項は「注記」まとめられ、「「附属明細書」という書類は存在しない。 会社法の附属明細書は、開示書類ではなく株主の手許には届かない。 昭和24年(1949年)に設定された企業会計原則に”財務諸表付属明細表”が財務諸表の体系として示されているが、会社法が考える計算書類の体系は、昭和24年当時のままとなっている。そろそろ国際基準に収斂してもよさそうなもの。
商法が配当利益の計算を重視していると主張していることから、キャッシュ・フロー計算書の開示をしないのは論理的矛盾とする国際会計からの視点がある。 |
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(2)開示する計算書類(大企業): ・個別計算書類 ・連結計算書類(2005年3月期以後) |
(2)開示する計算書類: 子会社があれば連結財務諸表のみ 子会社が無ければ個別のみ つまり、企業の実態を表す一つの 財務諸表を作成開示する。 |
国際基準では、一企業は一つの財務諸表を開示する。 つまり、子会社があれば連結財務諸表のみを開示する。 一つの企業に複数の財務諸表は投資家(利用者)をミス・リードし惑わすもので情報の垂れ流しで無責任。 債権者保護から個別財務諸表を主張する学者がいるが、必要ならば、ドイツのように連結財務諸表の注記に、新聞に掲載の決算公告程度の要約個別財務諸表の開示をすればよい。必要性を感じないが・・・ |
2010年6月8日、金融庁・企業会計審議会は、「単体の会計基準のあり方」について」検討を開始した。IFRSのコンバージェンスに関連してASBJで議論が行き詰ってしまったために、個別財務諸表については企業会計審議会で議論することとなった。 議論の推移を見守る必要がある。 ASBJは、ダイナミック・アプローチ(連結先行)としているが、ASBJが会計基準設定の権限を放棄したといえよう。 2010年7月29日、経団連は、「財務報告に関わるわが国開示制度の見直しについて」を公表した。 1.決算短信の簡素化 2.連結財務諸表の開示のみにし、単体は廃止。 3.内部統制監査の簡素化 を提言した。内容はしごく当たり前のことばかり。 金融庁・企業会計審議会は、2010年8月3日、会合を開き「会長発言」を公表した。「金商法における単体情報については引き続き開示すべき」としている。(議論 参照) |
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(3)単年度計算書類のみ ・当年度のみ表示 配当可能利益の計算及び債権者保護を目的としているため、前年度の数値は意味がない。
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(3)比較財務諸表 ・前年度の数値と比較で表示 |
国際基準では、前年度と比較した財務諸表の開示を求められる。単年度財務諸表は、国際基準では認められない。 期間比較することで、業績等が良くなったか悪くなったか一目瞭然となり分かり易くなるからである。 会社法施行規則で突然「直前三事業年度の財産及び損益の状況」の開示を求めているが、証券取引法が2期開示で会社法の方が1期多い、まして、日本には比較情報開示の会計基準が存在しない。 会社法、金融商品取引法の整合性が図られていない縦割行政のまま。 |
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(4)注記は貧弱 ・作成根拠となった会計基準が注記に記載されない。 |
(4)注記は重要な財務諸表の一部 ・国際会計基準に準拠して作成した旨注記に記載する。 |
国際基準では注記による開示が多く充実している。 日本には、日本の会計基準を纏めた権威あるテキストが存在しない。 |
2006年2月22日、金融庁は、会社法の改正に伴い整合性のために、特定信託財産、投資信託財産、特定目的会社、投資法人等の計算規則等の改正を行った。計算書類は会社法と同じに、純資産の部、社員資本等変動計算書または投資主資本等変動計算書の作成、、注記表の作成、単年度表示であり、キャッシュフロー計算書の作成は要求されていない。施行は会社法の施行と同時としている。(概要については(別紙1)、具体的な改正内容は(別紙2)〜(別紙38)をそれぞれご参照ください。)
2日遅れの24日、金融庁は、、「ストック・オプション等に関する会計基準」等の会計基準の公表並びに上記と同様の理由で、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則、企業内容等の開示に関する内閣府令その他の内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)の公表について」を公表している。
このHPを開設したころ上記国際会計基準との重要な相違を明示したが、その後、2006年5月の施行の会社法は、@株主資本等変動計算書、A注記表、B比較財務諸表の開示等を導入した。なお、会社法は、未だキャッシュ・フロー計算書を認知していないし、半期報告書または四半期報告書を株主に提供することはない。(過去のアーカイブ#1 #2 参照)
(U) 証券取引法(現・金融商品取引法)の財務諸表等⇒有価証券報告書および四半期報告書(投資判断?)
株主総会(通常、決算から3ヶ月以内開催)で利益処分案を含む計算書類(財務諸表)を承認後、つまり、株主総会終了後は個別財務諸表の「利益処分案または損失金処理案」が「利益処分計算書または損失金処理計算書」に変り、連結財務諸表および個別財務諸表を含む有価証券報告書を証券監督局である財務省・財務局(電子開示のEDINETは金融庁)へ提出しなければなりません。(金融商品取引法第24条 事業年度終了後3ヶ月以内に「内閣総理大臣」に提出することを要する。)⇒2006年(平成18年)5月1日施行の会社法により、利益処分案は廃止し、株主資本等変動計算書に変更された。有価証券報告書が株主総会後に開示されることは変わっていない。⇒金融商品取引法の投資家の保護の元来の意味は黒沼悦郎教授の「金融商品取引法入門」⇒「証券取引の分野では、投資判断の結果を投資家に帰属させる自己責任の原則が妥当し、法は商品の品質(価値)を保証しません。品質を判断するための情報のみを投資家に与えて市場取引により価格を決定することが、資源の効率的配分のために必要だからです。」 SECの投資家保護 金融庁の投資者保護 参照
この有価証券報告書および四半期報告書は、投資家保護のため「一般投資家向け情報開示」とされますが、
(a)株主総会終了後に開示されますので総会での議決権の行使には役立たず、かつ、(下記(注1)参照)
(b)投資家である株主の手許には届きません。
欧米では、株主総会の議決権行使のため株主に提供されますし、事業説明等に「年次報告書(米国ではForm10−K)」を顧客等の取引先に配布しています。日本の金融商品取引法の「有価証券報告書」と会社法の事業報告書と計算書類を1冊の読み物として要領よく纏めたものが「年次報告書(Form10−K)」といえます。日本は、縦割り行政のため、法務省と金融庁とばらばらに規定し、重複した内容や情報開示が複雑となっています。他国に例がない仕組みです。日本では、単価が高いせいもあって有価証券報告書を自社を説明するのに銀行等を除いた取引先等に配布している例は見たことがありません。
四半期報告書は2008年4月以降開始する事業年度から開示されることになったが、原則、連結子会社がある場合は「連結財務諸表」のみの四半期報告で個別財務諸表は不要とされる。年度も連結財務諸表だけにすれば年度と四半期が整合するし欧米同様になるのに・・・
(財務省・関東財務局「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項について (平成24年3月期版) 」「有価証券届出書等の審査」「有価証券報告書等の受理業務等について」参照 →平成18年9月の半期報告書から企業会計基準委員会が「半期報告書の作成要領」を有料で販売)
(c)証券取引所のホームページから有価証券報告書は閲覧できません。日本では株価検索と企業情報である有価証券報告書等が分断され閲覧が容易でない。利用者の利便性が考慮されていない。(「証券取引所から閲覧できない有価証券報告書」参照)
(d)武田薬品工業のように、日本の会計基準で作成した有価証券報告書のほかに、同じ日本の会計基準に準拠したアニュアル・リポート(連結財務諸表・・不要な個別財務諸表はつけない)を作成して読者の利便性に供している会社がある。有価証券報告書では明らかに読者の利便性がないと判断して、利便性の高いアニュアルリポートを別途作成している例と見てよい。米国の上場会社が有価証券報告書に該当するForm10kを取引先等に渡して実務に利用されているケースが見られるが、日本の上場会社で、有価証券報告書が取引先等に供して実務で利用されているケースは見たことがない。日本の企業がIFRSを適用しても同じことが言える。例えば、HOYAのようにIFRS適用しても有価証券報告書は実務では利用されず、別途アニュアル・リポートを作成して実務で利用することになる。
⇒(注1):2009年10月6日、有価証券報告書等の定時株主総会前の提出を可能とする内閣府令(案)を金融庁が公表。(有価証券報告書の総会前提出について,2010年2月3日)
(3)有価証券報告書等の定時株主総会前の提出を可能とするため、有価証券報告書の添付書類とされている、定時株主総会において承認を受けた、又は報告した計算書類・事業報告書に加えて、定時株主総会において承認を受け、又は報告しようとする計算書類・事業報告書を追加することとします。また、有価証券報告書等を定時株主総会前に提出した場合において、その決議事項が修正・否決されたときは、臨時報告書においてその旨及び内容の記載を求めることとします。(第17条1項1号ロ、第19条2項9号の2)企業内容等の開示に関する内閣府令 参照
現場の一声・・2010年05月20日「有報の早期提出」、2010年05月31日「株主総会議長セミナー」by ゆっきーお嬢 参照
2010年2月12日、金融庁は、議決権行使の内容を義務つける規則改正案を公表した。この開示を臨時報告書で求めることで株主総会後の提出を求めるようになった。金融庁も多少考えるようになったようだ。
(4)議決権行使結果について
臨時報告書において、株主総会における議案ごとの議決権行使の結果(得票数等)を開示。
有価証券報告書の財務諸表は、財務諸表等規則および連結財務諸表規則に従って作成する。
財務諸表等規則第1条2項および連結財務諸表規則第1条2項には、「企業会計審議会により公表された企業会計の基準は、一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に該当するものとする」として「企業会計基準委員会の会計基準」はどこにも規定していない。驚かされるのは、財務諸表等規則第1条3項には、金融庁長官が会計基準を設定できる規定があることである。金融庁長官に会計基準の設定権限を留保しておきたいとの強い意志が透けて見える。
日本には、継続企業の前提に関する会計基準(企業会計審議会及び企業会計基準委員会の)はない。金融庁の内閣府令である財務諸表等規則第8条の27(継続企業の前提に関する注記・・平成14年10月18日付け改正で加えられた)により開示を求めている。因みに、国際会計基準(IAS)1号「財務諸表の表示」に開示を求めているものである。会社法では、会社計算規則第100条により開示を求めている。
財務諸表等規則第1条2項は、企業会計基準設定主体を旧大蔵省の企業会計審議会から民間に移す議論が沸騰する直前の1998年(平成10年)11月24日付け改正で抵抗していた当時の大蔵省が挿入したもの。2001年(平成13年)7月26日、金融庁所管の公益法人として企業会計基準委員会が創設されたが金融庁は企業会計基準委員会の会計基準を会計基準とする旨の規定改正はしていない。
2009年6月30日、金融庁は、初めて国際会計基準の適用を認めるとともに内閣府令を改正し企業会計基準委員会も会計基準設定主体として認めた。
企業会計基準委員会 (会計基準設定・・2001年7月以降)(注3) |
⇒ | 金融庁 内閣府令を作成(注1) 企業内容開示に関する情報 ・省令・内閣府令・ガイドライン |
⇒ | 有価証券報告書 金融庁のEDINET(注4)に開示 |
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今後は民間の企業会計基準委員会(2001年7月、民間の会計基準設定主体を創設)が会計基準の開発を行うことになっています(企業会計基準委員会の「企業会計基準等」は、金融庁からの補助金がありますが、何故か会員以外には公開していませんし、出版物は「国際会計基準一式(£60.00)」より超高価です。ちなみに米国会計基準書(FASBの基準書)は無償で広く公開しています)。 ・2009年1月から企業会計基準委員会(ASBJ)も無料公開とするとしている。 会計基準設定事例: 「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」 「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」 「債券の保有区分の変更に関する当面の取り扱い」実務対応報告第26号(2008年12月5日) 「企業会計基準等」「印刷物」 「有価証券報告書作成上の留意点」by財務会計基準機構 金融庁が委員会にオブザーバーとして出席し、ASBJの決定した基準等を受けて連結財務諸表等の規則を改正すると発言している。(Webcast 参照) |
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財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(財務諸表規則) 個別財務諸表の様式(様式第二号)(注2) (世界に類を見ない日本特有の役所の様式) 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(連結財務諸表規則) 連結財務諸表の様式(様式第四号)(注2) (世界に類を見ない日本特有の役所の様式) 財務諸表等の監査証明に関する内閣府令 企業内容等の開示に関する内閣府令 (企業内容等の開示に関する内閣府令・様式) 四半期、内部統制報告書、監査証明など(案) 結果 四半期財務諸表等規則ガイドライン(案) 四半期連結財務諸表規則ガイドライン(案) 内部統制府令ガイドライン(案) (参考:「監査小六法(平成20年版)」) EDINETに関するパブリックコメント等2008年3月 英文開示の対象拡大に関する内閣府令2008年5月30日 改正金融商品、工事契約および資産除去債務の会計基準の公表に伴う内閣府令(案)(2008年6月12日) XBRLのタクソノミで様式・科目等で府令の改正 2008年7月31日改正内閣府令 四半期報告書等 2008年8月7日、パブリックコメント回答・新旧比較 2008年8月27日、企業内容開示の内閣府令(案) 「債券の保有目的区分の変更に関する当面の取扱い(実務対応報告第29号)」に対応する改正内閣府令(2008年12月12日) 同改正ガイドライン(案)2008年12月12日 2009年3月24日「企業結合、セグメント情報、賃貸不動産の時価情報に関する規則改正」 2009年4月20日「継続企業の前提に関する注記」財務諸表 規則の改正・・会計基準はない、連結財表規則もない 2009年6月30日、IFRS適用可能となる内閣府令(案) 2009年10月6日、有価証券報告書等の定時株主総会前の提出を可能とする内閣府令(案) 2009年12月1日、IFRS適用に関する改正府令(案)等 2009年12月11日、IFRS適用に関する改正府令等施行 パブリックコメントの概要、金融庁の考え方 IFRS適用初年度の連結財務諸表の開示例 2009年12月11日、IFRS適用に関する会社計算規則等 2010年1月20日、IFRS9号等に関する指定IFRSの追加案 2010年2月12日、役員報酬1億以上の開示と、財務・会計の知見を有する監査役・監査委員の有無(案) 2010年3月3日、IFRS9号等に関する指定IFRSの追加 2010年3月31日、コーポレート・ガバナンスの充実、役員報酬の開示等の改正 2010年8月4日、会計上の変更、誤謬の訂正等の府令(案) 2011年8月30日、米国基準の適用期限撤廃案等 米国証券取引委員会(SEC)に米国式連結財務諸表を登録している日本企業が、米国会計基準を使用できるものとする規定について、平成28年3月31日までとされていた使用期限が撤廃されました。 2012年3月23日、指定国際会計基準等に係る一部改定案 2012年5月11日、指定国際会計基準に係る一部改定 2012年9月21日、退職給付、純資産、資産除去債務、包括利益の会計基準の改正に係る規定改正 2012年11月21日、指定国際会計基準の改定(IFRS10号連結財務諸表で「投資企業」の投資の非連結で、公正価値評価の早期適用可) 2014年1月14日、単体開示の簡素化 資料3 |
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上場企業等は、有価証券報告書の財務諸表等を作成、財務局の審査を経て(証券監査官)、財務局へ提出 「有価証券報告書の作成・提出」 但し、財務局は、突然「平成22年3月31日以降の有価証券報告書は現時点において調査は実施しておりません。今後の予定については、決定次第、お知らせします」とのこと。 (財務局から有価証券報告書の印刷を行っている」としています。(株)プロネクサス(旧・亜細亜証券印刷)と宝印刷へ定期的に天下っている。・・財務省「再就職状況の公表について」参照) 「平成19年3月期に係る有価証券報告書の重点審査結果について」by金融庁 「有価証券報告書作成上の留意点」by財務会計基準機構 上場会社の開示資料ツールは、プロネクサスか宝印刷のみ、両社には元財務官僚などを役員として受け入れており、すっかり利権化しています。 宝印刷かプロネクサスかの確認方法(招集通知編) (EDINET編) 東芝は行間が広く宝印刷で作成していることが分かる。(EDINETで検証) 西武鉄道事件で金融庁は、「『ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応について』を公表し」2005 年7 月から、虚偽記載に係る検査・報告徴求権限を関東財務局から証券取引等監視委員会に移管することとしている。(大和総研) |
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2001年7月以前の会計基準: 証券取引法では、「企業会計原則」を初めとして「大蔵省企業会計審議会が各種意見書(会計基準)」を設定してきましたが、2000年7月に金融庁(「金融庁設置法」「金融庁組織令」参照)が発足し企業会計審議会(「企業会計審議会令」 審議会⇒?参照)は同庁へ移管されました。しかし、2003年10月31日公表の「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」を最後に官による会計基準設定の使命は終わりました(監査基準は企業会計審議会に残されたまま)。 |
国際会計基準1号「財務諸表の表示」に融合しない規則・内閣府令となっている。制度的に国際基準との融合を妨げているといえる。 特に、国際基準では「(e)会計方針及び説明的注記(Accounting policies and explanatory notes)」を財務諸表の一部としているが金融庁の内閣府令(財務諸表規則等)には「注記」に関する事項は脆弱。とても国際基準に同等といえるものではない。 なお、2006年5月施行の会社法および会社計算規則」(第91条個別計算書類、93条連結計算書類)は、「個別注記表」を計算書類の一部とし国際基準に合せている。 会社法の「附属明細書」(国際基準にはない)も大幅に削減したが、内閣府令の「附属明細表」は不変。日本公認会計士協会の「附属明細書のひな型」(草案)(2006年4月17日)参照
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金融商品取引法は、投資家保護といいながら株主に提供されず、内閣総理大臣に提出とされる不思議な仕組みの有価証券報告書。 実態は、多くの株主には無縁であろう。 EDINETで、国際基準に求められていない「附属明細表」を閲覧可能でも、各社の財務諸表の「注記」を閲覧することはかなり困難。
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2008年5月、「金融庁は、この「ベター・レギュレーション」をこれからの金融行政における大きな課題として位置付けています」とのことです。 |
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金融庁の自己評価では「我が国会計基準は、企業会計審議会等において、ここ数年精力的に改訂がなされ、諸外国に比べても遜色のない高品質なものとなってきています」としていますが、上記の制度の中で金融庁が実質会計基準を設定している限り国際基準には欧州・カナダ・韓国・中国のように短期間では一致しない(財務諸表規則等の内閣府令がIAS1号の規定に基本的に一致しないのが原因)。日本は金融庁が金融庁設置法により、会計の制度設計を行い、企業内容開示を行う有価証券報告書は財務局の審査を経て株主ではなく内閣総理大臣へ提出をし金融庁のEDINETで開示する「官による官のための開示制度」となっている。旧大蔵省の役人が、戦後間もない頃、表示様式を決め金融庁が引継いでいる。一度決めたら変えない役人の表示様式は、常に改善して意義を高めようとする専門家の設定したIAS1号の表示様式とは一致するはずがない。仕組み自体が国際化を阻んでいるといえる。しかし、金融庁は審議会の議を経ずに突如として「米国式連結財務諸表を認める」こともある。要は、国際的・専門的な認識のズレの問題。最近では、金融庁は行政処分(課徴金や業務停止処分等)ばかりしていることから、「金融処分庁」という呼び名が定着し恐れられている。 金融庁の幹部の天下り先は変化しつつあり、最近は日本証券業協会が多い。(金融庁の「再就職状況」「月刊テーミス」 参照) つい最近までは「公認会計士協会と6大監査法人はすべて大蔵省(現・金融庁)OBの天下りを受け入れている」のも事実であった。(大阪市立大学秦彰宏氏著「日本における会計士監査の課題」21ページ”会計士と大蔵省の関係”より(2000年1月)) 失った信頼を取り戻すのは並大抵ではない。 日本公認会計士協会の役員には金融庁の天下りはない旨の記載があるが、民主党の要請で衆議院調査局が行った天下りに関する予備調査によると金融庁総務企画局企業開示課の担当所管官庁から日本公認会計士協会へ10人の常勤者(常勤者総数の5.6%)が天下っているとのこと。金融庁の「再就職状況」には掲載されないようにしているのか?因みに会計基準の設定をするASBJの母体(財)財務会計基準機構の企画部長は金融庁から2004年7月31日就任。 (注1):会計基準の設定・改変ごとに金融商品取引法第24条の有価証券報告書を作成するために、金融庁は上記のように関連内閣府令の改正を行う。内容は会計基準と重複。開示様式は画一的で紋切り型・硬直的な役所へ提出の文書で、国際基準が求めている、読者に読み易い情報開示(ディスクロージャー)とはいえない。注記がどこに開示されているのか探すのが容易でなく、さりとて企業が見易くする工夫はできない。これは、戦後まもなくの大蔵省時代から約60年間同じ仕組み。こうした構造では、洗練された国際基準への収斂や、機動的な会計基準の整備は期待できない。日本が立ち遅れた大きな要因である。金融商品取引法第24条が国際会計基準の導入を阻んでいると言える。 2006年3月13日、金融庁は、証券取引法を改正し「金融商品取引法」を国会に提出し、6月7日成立した。その中に、財務報告に関する内部統制の報告書の提出(金融商品取引法第24条の4の4、第193条の2の第2項関係)、内部統制の監査報告書の提出(金融商品取引法第24条の4の4、第193条の2の第2項関係)、四半期報告書の義務化(金融商品取引法第24条の4の7関係)が、2008年度から導入される。(概要図 概要文 要綱案 法律案)これに伴い内閣府例が作成されよう。 2006年4月25日、金融庁は、上記内閣府令草案に寄せられたコメントに関し「主なコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」を公表した。 (注2):国際会計基準(IAS)1号「財務諸表の表示」と有価証券報告書の内閣府令による表示様式は異なり日本の制度とは融合しない。 証券取引法の企業内容開示制度が創設された昭和23年(1948年)当時から、当初の当期業績主義から商法と利益を一致させるために包括主義に変わりはしたものの、基本的な表示方法は約60年間変わっていない。特に、制度上古い個別財務諸表(簿記の世界に近く、会計に進化していない部分が多い)は改善されないままとなっていることから国際基準の表示とはかなりかけ離れたものとなっている。例えば、たな卸資産や売上原価の表示などである。たな卸資産は会計基準が存在しないことも原因か・・ 古い表示方法のため、内部統制が整備されている場合の表示方法がない。なお、「廃止事業」などの新たな国際基準を導入できる表示方法ではない。 事例として、下記の財務諸表を見ていただきたい。 ○有価証券報告書の表示 ○国際会計基準による表示 (注3):企業会計基準委員会の法的位置づけは不明・不透明である(「2004年11月29日企業会計審議会での西川ASBJ副委員長および池田金融庁企業開示参事官の発言(28ページ〜29ページ参照)」より)。 ドイツ会計基準委員会 (DRSC)のように法務省との契約により法的位置づけを明確にするのも一つの方法であろう。 米国では、米国証券取引委員会(SEC)の会計連続通牒(Accounting Series Release, ASR)150号で、明文をもって民間(private sector)の財務会計基準審議会(FASB)が設定した会計基準を承認(endorse)している(SEC委員長のスピーチより)。 (注4):EDINETは企業ごとにリンクできないため、東京証券取引所等のサイトから投資家が有価証券等を閲覧できない。先進国の中では唯一証券取引所から上場会社の財務情報が直接閲覧できない国となっている(「主要国の証券取引所の上場会社の財務諸表の閲覧」参照)。 2008年(平成20年)4月からXBRL(eXtensible Business Reporting Language)の新システムを稼動し、XBRL形式による提出へ移行することを計画している。それに先立って、EDINETパイロット・プログラムへの参加を募って実証実験を行う。パイロット・プログラムで使用する書類は、原則として、既にEDINETに提出済みのもので且つ、平成18年5月1日以後終了の事業年度及び連結会計年度並びに中間会計期間及び中間連結会計期間に係るものとします。 内容は、現行の有価証券報告書の内財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主持分等変動計算書、キャッシュフロー計算書で注記を除く)を忠実にXBRLの形式に置き換えるものである。(金融庁「EDINETパイロット・プログラム参加申込み方法について」「EDINETパイロット・プログラムに関する資料の公開及び説明会の開催について」参照) 会計が「企業実態(substance)」を表現しようとするのに、EDINETのタクソノミが一律の「表示様式(Form)」を求めることで実態を表さない表示で「虚偽記載」になる恐れが生ずる。慎重な検討が望まれるが、日本は、世界に先駆けて強制適用する。 なお、米国SECでは国際会計基準と米国会計基準の収斂を進行しつつ、XBRL化を試行しているが、成功しているとは到底いえない。(SECの「任意でXBRL形式で提出している会社」「ADOBE SYSTEMS INC の年次報告書Form10-K」参照) |
監査報告書の日付と株主総会との関係D | ||||||||||||||||||||||||||
ニューヨーク 証券取引所 に上場の 日本企業 |
決算日 | SEC登録の決算書の 監査報告書の日付 B |
SECへ決算書 Form20−F の登録日 |
株主総会 開催日 |
有価証券報告書の 監査報告書の日付 A |
有価証券報告書の EDINETの登録日 @ |
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本田技研 | 3/31/2005 | 4/26/2005 | 7/11/2005 | 6/23/2005 | 6/23/2005 | 6/23/2005 | ||||||||||||||||||||
キャノン | 12/31/2004 | 1/27/2005 | 6/16/2005 | 3/25/2005 | 3/30/2005 | 3/30/2005 | ||||||||||||||||||||
ソニー C | 3/31/2005 | 5/27/2005 | 6/23/2005 | 6/22/2005 | 6/22/2005 | 6/23/2005 | ||||||||||||||||||||
NTTドコモ | 3/31/2005 | 6/21/2005 | 6/27/2005 | 6/21/2005 | 6/21/2005 | 6/22/2005 | ||||||||||||||||||||
@有価証券報告書は、株主総会終了後、EDINETへ提出されます。 2009年12月11日に内閣府令が改正され、12月以降終了する年度から株主総会前にEDINETへ提出も可能となったが、2010年3月期に株主総会前に提出する会社は、わずか10社(0.4%)であった。2012年3月期で20社が予定されているそうだ。その中には総会前1日と言うのがあり、あまり意味ないものもあるそうだ。 なお、3月31日改正の内閣府令による役員報酬1億円以上の開示について、2010年3月期の決算で、資生堂が役員報酬1億円以上の開示を会社法の事業報告書に開示したことで、株主総会前に開示したとマスコミが取り上げている。 A有価証券報告書に含まれる財務諸表の個別・連結ともに監査報告書の日付は株主総会後となる。EDINETから見られますが、米国のように株主に送付されてくることはありません。 改定監査基準(2003年3月期から適用)では、監査報告書の日付は「監査人が自らの責任において監査が終了したと判断したときに監査報告書を作成することが基本であると考えられる。しかし、これは、財務諸表の開示制度上あるいは監査の終了をどう捉えるか等の問題であり、改訂基準においては特定の時点を示すことはしなかった」とある。会社法(商法)は監査終了日で報告書が作成され、有価証券報告書が株主総会終了後に開示される世界に例を見ない日本の仕組み。法務省と金融庁の縦割り行政の弊害。一般には理解し難いものがある。 BSEC登録会社で米国会計基準の連結財務諸表では、監査報告者の日付は意見が形成された監査最終日です。 C商法計算書類等は、ニューヨーク証券取引所に上場しているソニーの場合、米国会計基準による連結財務諸表および商法による 単独財務諸表を作成し2005年5月12日付けの連結及び単独財務諸表の監査報告書を株主総会通知書に添付しています。 商法の連結計算書類は2005年3月期が最初です。制度上、日本の株主に連結財務諸表が届くのは史上初めてのことです。 D日本公認会計士協会の監査・保証実務委員会報告第75号「監査報告書作成に関する実務指針」に記載の「監査報告書の日付は、 株主総会後の日付にすることとする」旨の規定を削除したことにより、監査報告書の日付は監査終了の日となった。(2008年4月4日改正)
●2009年05月21日、日本公認会計士協会は、 はじめて「上場会社のコーポレート・ガバナンスとディスクロージャー制度のあり方に関する提言 −上場会社の財務情報の信頼性向上のために−」を公表し、会社法と金融商品取引法の財務諸表と監査を統合する提言をまとめた。もっと解り易くシンプルな提言でよい。遅すぎる提言であるがないよりましということか・・ ●2014年7月「企業情報開示等をめぐる国際動向」by経済産業政策局 企業会計室・・調査が遅すぎる 3.株主総会実務に関する国際比較 (総会開催スケジュール)、 (議決権行使の基準日)、招集通知の発送のタイミング等の国際比較 |
証券の発行と売り出しに関する目論見書について: 我が国の場合、投資家保護のための弁護士が関与していない |
ロンドン証券取引所など海外で株式・社債等の証券を発行する場合、目論見書(prospectus)を作成する。目論見書には、最近の監査済み財務諸表と直近の四半期報告書(非監査)を開示して引受人(購入者)の投資判断に資する情報を盛り込む。 |
(V) 法人税等の確定申告
商法の計算書類を基礎に法人税(法人所得税)の確定申告を作成し、通常決算から3ヶ月以内に、税務当局(国及び地方政府)に申告・納付します。
(「法人税法第74条 内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から2月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき〜申告書を提出しなければならない。」⇒いわゆる確定決算主義といわれる条文、「第75条の2により、会計監査人の監査を受けなければならないことその他これに類する理由により決算が確定しない場合、確定申告書の提出期限の延長の特例があり1ヶ月間延長できる。」)
つまり、下記の通り商法と証券取引法の二重開示制度なのである。
(会計の二重開示の問題は、二重の監査報告書の問題でもあり、商法および証券取引法にそれぞれ会計監査の規定が存在し、会計監査人はニ種類の監査報告書を作成しなければならない。)
世界が共通の会計基準へ移行しつつあるなか、日本だけが、商法と証券取引法の二重開示がなぜ必要なのか、株主総会終了後に開示され、投資家である株主に送付されない有価証券報告書は投資家保護と言えるのか。これらの疑問は、同法を所管する法務省と金融庁に解決して貰うしかないのである。
日本の会計制度--商法と証券取引法の二重開示制度の事例 連結・単独財務諸表を会社法・金融商品取引法ともに重複開示 |
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会社名 | 商法の計算書類(法務省所管) | 証券取引法(金融庁所管) |
株主総会召集通知書に添付し株主に送付 | 総会後開示、株主に送付されない 株主権の行使に役立たない |
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NTT Do Co Mo | 定時株主総会招集ご通知添付書類 | 有価証券報告書等 |
SONY Corp | 株主総会召集通知書 | 有価証券報告書等 |
Nissan Motor Co., Ltd. | Business Report | "Yukashoken−Houkokusho" |
NTTドコモの場合、規則改正により平成14年度(2003年3月期)から米国基準による連結財務諸表で開示しています。 加えて、商法上の連結計算書類も早期に開示しています。 具体的な他社事例は、各社ホームページで公開しています。下記の検索エンジンをクリックしてみてください。 「株主総会」をキーワードとして検索 ⇒ ⇒ Google Fresheye 金融庁が行っている個別企業の有価証券報告書等の電子情報開示制度EDINETは、個別企業には直接リンクできません。 EDINETへアクセスしてその都度企業検索を行って見る必要があります。利便性に欠ける日本だけのシステムです。 下記に、ダイムラー・クライスラー社を例に、米国SECのEDGARデータベース、ドイツ証券取引所のシステムに直接リンクしました。 |
2010年6月15日、日本公認会計士協会は、租税調査会研究報告第20号「会計基準のコンバージェンスと確定決算主義」を公表した。確定決算主義の歴史的背景、国際比較など詳しく述べ労作である。結論では、「確定決算主義の放棄を議論するのは時期尚早と考えるが、上述の逆基準性などの問題から、少なくとも損金経理要件の見直しが必要である」としている。しかし、経済産業省、金融庁・企業会計審議会で検討が始まってしまい残念である。会計の専門家として後出しジャンケンではなく議論が始まる前に公表すべきであった。
会計基準の設定主体 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
● 証券取引法(金融商品取引法)では、「大蔵省企業会計審議会が各種意見書(会計基準)」を設定してきましたが、2000年7月に金融庁(「金融庁設置法」参照)が発足し企業会計審議会は旧大蔵省から同庁へ移管されました。しかし、2003年10月31日公表の「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」を最後に国による会計基準設定の使命は終わりました(監査基準は企業会計審議会に残されたまま)。今後は民間の企業会計基準委員会(2001年7月創設)が会計基準の開発を行うことになっています。(2002年2月から、開発された「企業会計基準等」 「有価証券報告書における「事業等のリスク」等の開示に関する検討について(中間報告)―抜粋―」 参照。) (企業会計基準委員会の「企業会計基準等」は、金融庁からの補助金がありますが、何故か会員以外には公開していませんし、出版物は「国際会計基準一式(£60.00)」より超高価です。ちなみに「米国会計基準」は無償で公開しています。) 「弁護士さんの怒り」参照 有価証券報告書の財務諸表は、財務諸表規則および連結財務諸表規則に従って作成する。 財務諸表規則第1条2項および連結財務諸表規則第1条2項には、「企業会計審議会により公表された企業会計の基準は、一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に該当するものとする」として「企業会計基準委員会の会計基準」はどこにも規定していない。驚かされるのは、財務諸表規則第1条3項には、金融庁長官が会計基準を設定できる規定があることである。 企業会計基準委員会の法的位置づけは不明・不透明であるが(「2004年11月29日企業会計審議会での西川ASBJ副委員長(現委員長)および池田金融庁企業開示参事官の発言」より)、金融庁では、開発された会計基準に従って財務諸表規則、連結財務諸表規則などの規則を作成し、企業はその規則に従って有価証券報告書(株主総会後開示され、株主総会で株主権の行使に役立たない、しかも、株主の手許に届かない)を作成します。 審議会とは、中央省庁の官僚たちの手で企画・立案・運営されることから、官僚の隠れ蓑と称されています。つまり、審議会の委員の人選、議題の設定、提出資料の作成などすべて所管官庁に任されている以上、そこに自分たちが実現したい政策立案のため、恣意的な判断が入り込む余地が生ずる仕組みです。建前は国民の代表を選ぶとしているが答申をまとめるのにサポートしてくれる委員が過半数になるように審議会を構成するのが状態である。(前税制調査会会長石弘光教授「政策決定過程改革の方向」日経2006年12月18日より) なお、企業会計審議会の場合、金融庁が、会計・監査に関して「金融庁設置法」「金融庁組織令」に従って、企画・立案・運営されているものです。2001年7月26日、金融庁所管の公益法人として、財団法人 財務会計基準機構(FASF)の設立認可を受け、企業会計基準委員会(ASB)を8月7日正式に発足した。企業会計基準委員会の委員長は、企業会計審議会第一部会会長兼務(05年1月まで)ですし、企業会計基準委員会の各委員会には、金融庁の職員がオブザーバーで出席しているそうですし、企画部長は金融庁から2004年7月31日から就任しています。 2007年4月、企業会計基準委員会は、新委員長に副委員長の西川氏を委員長に昇格した。新委員長の挨拶によると、会計基準委員会は「研究体制を整備〜」としており、研究機関の位置づけのようである。いつまで研究するつもりであろうか? なお、金融庁の企画官が「EUの会計基準の同等性に関し期限に間に合わせる」とフィナンシャル・タイムズの「日本企業、EU市場から締め出しか」の記事に対して寄稿しているが、まさに、金融庁が取り仕切っているのだということが判る。であるなら、日本国内向けに責任を明確にしたらどうであろう。また、新委員長は「日本基準を生かしながら共通化作業を進める。コストはかかるが混乱は避けられる。」としているが、混乱のない改革があるのであろうか?日本特有な会計基準を作り続けてコスト面でも無駄にならないのだろうか? 少なくとも共通化は、国際基準にキャッチアップするだけでエンドレスの改正が求められる。企業結合の会計など未だ一致しない。おりしも、IASBでは、米国会計基準と一致させるべく、3月29日に、借入金の利息を資産化する会計基準(IAS23号)の改正が行われ、新たな改正が続いているのだ。 ⇒注意:2009年6月30日、ASBJを会計基準設定主体と認め、かつIFRS適用可能となる内閣府令(案)を金融庁が公表。12月11日に公表適用開始された。 国際会計基準審議会(IASB)はグローバルな世界の基準を設定しているが、年間運営費は約13百万ポンド(約31億円=1ポンド230円換算)。一方、日本の企業会計基準委員会は一部の会計基準を設定しているに過ぎないが平成18年度(2006年度)で約8億円の運営費を費やしている。国際会計基準審議会は成果物である国際会計基準書の出版収入で11億円稼いでいる。 聞くところによると、日本の企業会計基準委員会は30数名の常勤者が従事しており国際会計基準審議会(IASB)に匹敵する陣容とのことである。コストが掛かり過ぎるかどうかは成果物の価値による。国際会計基準は、上場会社のみならず非上場会社、中小企業、および非営利組織を含む会計基準の設定、IAS26号の退職給付制度の事業主への財務報告の基準も設定している。かつ、XBRLも取り扱っている。 一方、日本は、2011年6月末までに国際会計基準に収斂(convergence)することを国際的に約束した。会計基準の設定範囲は、上場会社(金融庁の管轄)の会計基準に限定されている。今までは、整合していないテーマに分かり難い構成や表現、かなりの部分、委員の独善による日本固有の基準が設定され質の面でも疑問視されていた。
IASBの2009年度決算では会費収入16,584千ポンド(1ポンド=130円換算で21億5千万円)だから日本は法人会費だけでIASBの6割相当の会費収入である。 参考:米国財務会計基準審議会(FASB)の母体である「米国財務会計財団(FAF)の2007年と2006年の年次報告書」は地方自治体の会計基準(GASB)を含んでいる。
● 会社法(旧商法)では、原則、会計基準に従いますが、キャッシュ・フロー計算書の作成は要求さていませんし、注記事項は脆弱で、財務諸表は単年度表示(比較財務諸表ではありません)となります。国際基準からは程遠い情報開示となります。このような商法の計算書類が、株主総会の召集通知書(Proxy Statement)に添付されて株主の手許に届く唯一の財務諸表です。2006年5月施行の会社法第444条に会計監査人設置会社は連結計算書類の作成が義務となった。計算規定は「会社計算規則」に規定され、個別財務諸表に関しては第90条から92条、連結財務諸表は第93条から101条に規定されている。 ■ 証券取引法は金融庁、会社法(旧商法)は法務省が所管しており、会計規定についてタイムリーに自動的な相互調整が行われることはなく、矛盾した規定もあり縦割り行政の弊害が存在したままとなっている。法務省は、会社法で「臨時計算書類」を規定し、一方、金融庁は「四半期報告書」およびそのリビューについて検討して、相互に調整した気配はない。政治が相互調整すべきであるがそれもできていない。なお、金融庁は、突如として2002年に米国SECに登録している日本企業に対して日本でも「米国式連結財務諸表を証券取引法上認める」ことにしたが、企業会計審議会に諮った形跡はない。 ▼公認会計士協会も会計基準を決める 金融商品取引法では、すべての信託の受益権が有価証券とされるなど、その定義する有価証券自体の範囲が拡大されているため、従来の取扱いのままでは、特定金銭信託のような単独運用の金銭の信託及び貸付金や不動産などの金銭以外の信託の信託受益権も例外なく有価証券となり、企業会計上、必ずしも適切なものとはならないのではないかという指摘がなされております。 会計基準に基づいて企業会計上の有価証券として取り扱うこととなる具体的な範囲については、今後、日本公認会計士協会から会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正により示されることとなります。当委員会では、その前提となる本会計基準に関する所要の改正について検討してまいりましたが、今般、平成19年6月15日の第130回企業会計基準委員会において、標記の企業会計基準について次の改正を行うことを承認しましたので、本日公表いたします。 なお、今回の改正は、現行の会計上の取扱いを大きく変えないための技術的なものであるため、公開草案の手続を経ずに公表するものです。(企業会計基準委員会・2007年6月15日 「金融商品に関する会計基準」の改正 「金融商品に関する会計基準」 参照) |
日本は法律の数だけ会計規定がある | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
日本は、会社法、金融商品取引法など法律ごとに会計規定がある。 縦割り行政の中、法令所管の官庁が省令や内閣府令などで会計規定を作成しており同じような内容のものが重複しており以下の通りである。会計基準は完成度の高いものを公会計で一つ作ればよく、重複して同じような条文・規定を作る必要はない。世界は会計基準を国際会計基準一つに収斂し、読者に判り易くしようとしているときに・・・・。(国際公会計基準"IPSAS" 参照) 何が悪いかといえば、会計基準で理解し易い財務諸表を作成しても反映されず官僚のさじ加減で情報開示がされ、次の欠陥が野放しとなっていることにある。 1.比較財務諸表になっていない 2.注記がお粗末 3.それぞれの法律によって開示内容が異なりバラバラで読者の利便を考えていない。 4.新たな会計基準の新規適用ないし改正が適時適切に反映することを保証しない。官僚が部分的に骨抜きにすることが可能。 日本の会計の特徴を端的に見ることができる。それは、会計基準を設定している母体である企業会計基準委員会財団の財務諸表と会計の専門家集団である新日本監査法人の財務諸表に見ることができる。
会社法第431条 では、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」 金融庁: 財務諸表規則第一条 金融商品取引法〜財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書)は、 一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。 2 金融庁組織令 (平成十年政令第三百九十二号)第二十四条第一項 に規定する企業会計審議会により公表された企業会計の基準は、前項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当するものとする。 公認会計士法第三十四条の十五の二 監査法人の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。 第三十四条の十六の三 監査法人は、会計年度ごとに、業務及び財産の状況に関する事項として内閣府令で定めるものを記載した説明書類を作成し、当該監査法人の事務所に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならない。 経済産業省・中小企業庁: 2010年2月15日、経済産業省・中小企業庁は、第一回「中小企業の会計に関する研究会」を開催した。研究会は、中小企業の実態に即した会計のあり方を議論する,としている。(毎日新聞) 平成14年(2002年)3月11日にも同じ研究会が同じメンバーで議論し、最終的に「中小企業の会計指針」の公表となった。今回は、金融庁がIFRS導入の方針を明らかにしつつあり、IFRSについての議論となるようだ。中小企業庁の役割と思っているようだ。縦割り行政そのもの。 資料:「我が国の中小企業の実態」「会社法会計、金商法会計、税務会計について」「会計基準の国際化を巡る現状について」「中小企業の会計に関する研究会について」 総務省と財務省の合同: 独立行政法人通則法第三十七条 独立行政法人の会計は、主務省令で定めるところにより、原則として企業会計原則によるものとする。 地方独立行政法人については、別途地方独立行政法人法があり、所管する総務省自治行政局行政課が「地方独立行政法人の会計基準」を作成して公表している。 公益法人: 私立学校法施行規則第四条の四 法第四十七条第一項 に規定する書類(事業報告書にあつては、財務の状況に関する部分に限る。)の作成は、一般に公正妥当と認められる学校法人会計の基準その他の学校法人会計の慣行に従つて行わなければならない。 私立学校法第二十九条 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第七十八条 の規定は、学校法人について準用する。 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百十九条 一般社団法人の会計は、その行う事業に応じて、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。 医療法第五十条の二 医療法人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。 「認定こども園」は学校法人や社会福祉法人が幼稚園と保育所を同じ施設で運営しているケースが多い。学校法人は文部科学省、社会福祉法人は厚生労働省と所管が分かれ、幼稚園は学校法人会計基準に基づく会計書類を、保育所は社会福祉法人会計基準による書類を作成するよう義務付けられている。このため、両方の施設を運営する事業者は補助金や資金収支、貸借対照表などについて2つの会計基準に準拠した書類を別々に作成しなければならない。文科省、厚労省の縦割り行政による事務負担の重さが普及の妨げと指摘され、こども園は09年4月時点で358か所、11年度目標の2000か所に程遠い。両省は10年度から兼営している場合いずれかの会計基準だけで作成すればよいことにする。(日経2010年1月26日朝刊参照) 日本では、そもそも「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」または「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」とは具体的に何を指すかは統一した見解はない。(「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」by武田昌輔教授) このような不明瞭な国は日本だけである。一方、国際会計基準は事業体の実態を表す会計基準を設定する努力が重ねられているがそれが反映されるまでに時間がかかり過ぎるのである。 欧米では、一つの会計基準に一つの財務諸表である。つまり、上場会社の財務諸表と非公開会社や非営利団体の財務諸表は、一つの会計基準である以上同じである。日本のようにバラバラではない。上記の海外の事例を見るがよい。 2006年3月、国際会計士連盟(IFAC)が開発した国際公会計基準(IPSASs)を適用している国または準拠している国を調査した結果を公表しているが、日本は含まれていない。ちなみに、発生主義会計を行っており、広い範囲でIPSASsに一致している国は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国および米国としている。 2011年7月27日、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長、厚生労働省社会・援護局長、厚生労働省老健局長の連名で「社会福祉法人会計基準の制定について」という文章を県知事、指定都市市長、中核市市長あて発出した。社会福祉法人の新会計基準は平成24年4月より適用で、27年3月までに完全適用とする。 2000年以来、約10年ぶりの全面的な見直し。事業ごとに複数の会計基準を用いている現行制度を改め、法人の全事業を同じ基準で会計処理できるようにすることが柱となっている。(ニュース 全国厚生労働関係部局長会議(厚生分科会)資料 参照) 社会福祉法第44条(会計)には、会計基準の規定はない。施行令、施行規則にも会計基準についての規定はない。 社会福祉法人の新たな会計基準の作成設定者名も明記していない不思議な文章である。 文部科学省 2012年3月30日、文部科学省・高等教育局私学部参事官室は、学校法人会計基準の問題点や課題等を整理した、「学校法人会計基準の諸課題に関する検討について(課題の整理)」がとりまとめられましたので公表した。平成17年3月31日文部科学省令第17号による「学校法人会計基準の一部を改正する省令」以後初めての検討である。基本金1号〜4号に分ける意味がどれほどあるのだろう。役所の視点である。民間では「資本金・資本準備金」に1号・2号などない。 学校法人会計基準の在り方に関する検討会(平成24年度)・・2012年8月28日第一回 9月24日第二回 〜六回 (私学の会計基準を改正 透明性高め健全化促す 文科省が14年度、導入後初 ) ・退職給与引当金の計上等に係る会計方針の統一について(通知) ・2013年の大学改革 学校法人会計基準の抜本改正、今春に改正の手続きを済ませ、14年度から本格導入する。(2013年1月25日) ・学校法人会計基準の在り方について、報告書(平成25年1月31日) ・学校法人会計基準の一部改正について(平成25年4月22日) ○ 学校法人会計基準の一部を改正する省令案新旧対照表 参考:「アメリカの私立大学では、財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board)による会計基準(FASB)の非営利組織に共通の会計基準を用いており、とくに大学のみを対象とした会計基準は存在していない。」「制度的特徴とその実態」by両角亜希子(東京大学)・・学校法人会計基準の課題 理念を維持し制度の改善を |
中国では・・ | |||||||||
2005年11月7日と8日に、中国財務省(MOF)の中国会計基準委員会(CASC)と国際会計基準審議会(IASB)が北京で会合を開き、中国の一般企業の会計基準を国際会計基準(IAS)と共通化することで合意した。中国は年内にもIASに合わせた企業合併や金融商品に絡む会計ルールづくりを完了する。中国企業の国際化に対応する一方、資本市場の信頼性の向上を目指すのが狙い。 共通化するのは非上場企業を含めて、中国企業全般に適用されている会計基準。現在は、外国人投資家が投資可能な外貨建てのB株について、中国基準に加えIASに沿った決算内容も開示することになっている。(日本経済新聞2005年11月14日 IASBの2005年11月14日のニュース CASCとIASBの共同声明 Wang Jun氏(財政部の王軍・副部長) 参照) 12月22日には、Wang Jun氏(中国監査基準審議会CASB議長でもある)は、ニューヨークの会合で、監査基準でも国際監査・保証基準(IAASB)と収斂することで合意し共同声明書を公表した。 ちなみに、中国の企業会計基準は・・「Accounting Standard for Business Enterprises」参照 中国の企業会計システムは「Accounting System for Business Enterprises」参照 中国の会計法は「Accounting Law(和訳要点)」参照
2006年1月から、国際会計基準委員会の評議委員(Trustee)に中国はLiu Zhongli氏, President, Chinese Institute of Certified Public Accountants; former Minister, Ministry of Finance, People's Republic of Chinaを投入した。元財務大臣で中国公認会計士協会会長である。(2005年4月のイングランド・ウェールズ勅許会計士協会でのスピーチ 参照)ちなみに、米国は前・公開会社会計監視審議会PCAOBの議長・元ニューヨーク連邦準備銀行の議長であったWilliam McDonough氏である。(2005年12月21日IASBとIASC財団ニュース 参照) |
日本 極端に閉鎖的・不透明 |
米国 Contact Us |
ディスクロージャーの本丸が自ら 示す監査済情報開示・・透明性高い |
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証券監督局 | 金融庁 EDINET 金融庁の予算・決算(注1−1) 証券取引等監視委員会 (SESC) 公認会計士・監査審査会 (CPAAOB) 企業会計審議会 ご意見箱(すべて金融庁) 増加する金融庁の行政処分 不明瞭な日本の ノーアクションレター制度 |
証券取引委員会(SEC) ・・電子情報開示EDGAR含む 公開会社会計監視審議会 (PCAOB) |
(注1)SEC自身の監査済財務諸表: 2004年度・・監査初年度で、財務報告に係る内部統制の監査では不適正意見、財務諸表監査は適正意見であった。 2005年業績・アカウンタビリティ報告書 ・GAOは、財務報告手続の欠陥、不正利得の返還および罰金の管理および情報セキュリティの管理の3点について重要な欠陥(material weaknesses)を報告。 SECの年次報告書 SECの2006年度の業務・説明責任報告書 ・GAOは、財務報告に関しては重大な欠陥ではないと判断され再度の指摘はない。後者2点については重要な欠陥ではないとしつつ、固定資産の欠陥を新たに加えて3点が重大な欠陥(significant deficiencies)として報告さtれている。 (注2)PCAOB年次報告書: 2003年度初年度・非営利組織の会計 2004年度(比較財務諸表含む) |
官による開示システム | EDINET 個別企業にリンクできない 有価証券報告書等にページがなく 一括印刷不能 |
電子情報開示EDGARデータベース 個別企業にリンク・フリー |
米国のEDGARデータベースはリンク・フリーとなっているため民間はEDGARにリンクすることで企業情報が簡単にいつでも見ることが出来ます。 金融庁のEDINETは個別企業へのリンクは閉ざされており、その都度検索して閲覧することになる。 |
民による開示システム | IR-BOX(注6) Yahoo!ファイナンス |
上記EDGARの個別企業にリンクするだけ Yahoo!FINANCE |
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証券取引所 | 東京証券取引所 ジャスダック |
ニューヨーク証券取引所(NYSE) ナスダック |
ニューヨーク証券取引所年次報告書 ナスダックのSEC登録財務報告書類 |
会計基準設定主体 | 企業会計基準委員会 (ASBJ) ご意見の受付け(目安箱)について 委員会動画配信(Webcast)2008年7月より |
財務会計基準審議会(FASB) | 国際会計基準審議会IASBの連絡先 |
(注5)注記の脆弱な財務情報 ・単年度・・読み物としての纏まりなし |
(注3)監査済FAF年次報告書 ・・・・FASBの母体 |
(注4)・・参考:国際会計基準委員会財団の年次報告書 | |
会計基準書 | 今後は、民間の企業会計基準委員会(2001年7月、民間の会計基準設定主体を創設)が会計基準の開発を行うことになっています(企業会計基準委員会の「企業会計基準等」は、金融庁からの補助金がありますが、何故か会員以外には公開していませんし、出版物は「国際会計基準一式(£60.00)」より超高価です)。 2006年10月受験生用に開いているサイト「会計基準R」が「一般のサイトで誰でも企業会計基準を見れてしまうと、財団会員になるメリットがなくなって、会員がいなくなってしまうことにもなりかねない」というASBJの回答に転載できなくなりました。【お知らせ】企業会計基準委員会の会計基準について 「弁護士さんの怒り」参照 2009年1月6日より公開: 「ASBJ公表物への閲覧制限を見直すことと致しました」とのことである。 |
2003年7月から、FASBは1号から現在までに公表した基準書の原書をホームページから無償ダウンロードできるようにした。 | 2009年4月からIASBも 「最新版IFRS本文」を私用目的のみ に無償公開しました 「国際会計基準一式(£60.00)」 中国では会計基準委員会が無償公開(原文) 英語の39のタイトル参照 |
公認会計士協会 | 日本公認会計士協会 (JICPA) 金融庁の指導監督状況 天下り常勤者現在10人(5.6%が天下り)(注8) |
米国公認会計士協会 (AICPA) |
(注3)AICPAの年次報告書 ・・非営利組織の会計 (注7)国際会計士連盟(IFAC)の年次報告書 |
総括計算書類・事業報告(注3a) | 年次報告書(注3) | 日米ディスクロージャーの考え方がそれぞれ反映 |
米国は「Contact Us」として常時Emailで広く意見を求めているが、現在、日本は金融庁を頂点として共通してEmailで意見を受付けるということはない。「密告を期待するもの」や、中には江戸時代の「目安箱」の感覚で時代錯誤しているホームページを開設していたり、今どきファックスのみで受付けているところもあり、ひどい場合、全く閉ざしているところもある。閉鎖性を指摘されても仕方ない。開かれた金融行政等で信頼を確保する時代ではないのだろうか。金融庁の監督下にある組織・機関は金融庁と歩調を合わせており金融庁が開かれた行政をしない限り歩調を合わせ続けることであろう。偏に金融庁の対応にかかっている。(中国の会計基準委員会(CASC)、ドイツ会計基準委員会(DRSC)でさえ「Contact us」で聞く耳あり)
上記の通り、SECを含む米国のディスクロージャー(情報開示)の本丸は、自ら読み易く透明性の高い財務諸表を作成し監査を受けて情報開示している。ニューヨーク証券取引所は、現在、株式上場を検討しているが、上場会社並みの情報開示している。ナスダックは上場。
(注1)連邦政府機関であるSECの財務諸表は連邦政府の会計基準(FASAB)及びFASABが連邦政府の会計に適用を指定している民間の会計基準(FASB)によって作成している。監査は会計検査院(GAO)が行った。財務報告に係る内部統制の監査報告書が含まれる。
(注1−1) 金融庁の予算・決算と米国SECの年次報告書のようなまとまりのある情報開示と比較すると、国民に対する情報開示の姿勢が両国で明確に違っている。国民からすれば、読み易く判り易いものを期待しているはずである。金融庁は、頑なに扉を閉ざしている。
(注2)サーベンス・オクスリー法により創設されたPCAOB(非営利組織)は、財務会計基準(SFAS)117号「非営利組織」の会計基準に準拠して作成され規模の小さい民間監査人が監査報告している。
(注3)民間非営利組織は、財務会計基準(SFAS)117号「非営利組織」の会計基準に準拠して作成され規模の小さい民間監査人が監査報告している。米国公認会計士協会(AICPA)の年次報告書には、加えて、上場会社より早く1999年の年次報告書に、すでに、経営者の財務報告に関する内部統制の報告書に監査意見を表明している。
(注3a)日本公認会計士協会は、監事監査報告のみであったが、2007年4月1日以降開始する事業年度から欧米に見習って会計監査人を初めて公募することした。(ニュース 参照) 会計(ディスクロージャーの)専門家の集団が、作成した基準の記載も無く、注記もなく、比較財務諸表でもない単年度の「収支計算書・貸借対照表」を公表していてよいはずはない。欧米では会計基準を実質設定している集団です。「信頼をカタチにする」ためにも、範を示して、せめて、米国並みのディスクロージャーをすべき。
(注4)・・参考:国際会計基準審議会(IASB)の母体である国際会計基準委員会財団(IASC
Foundation)は、非営利組織であるが国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards,IFRS)で作成し、所在地英国ロンドンで監査を受けている。
(注5)自らの財務報告が判り易くディスクローズできて、初めて完成度の高い満足な会計基準が設定できるのではないだろうか・・、 単年度で、かつ、注記の脆弱な財務諸表では、理解し難いのでは・・・、国から受領した補助金(税金)は何処にどのように表示されているのか分かりにくく・・・、国民に対して、会費を支払っている会員に対して十分な説明責任を果たしているといえるのであろうか・・・・、証券取引法のもとにおける上場会社の投資家に対する情報開示だけに会計基準があるのではない、非営利組織や上場会社以外にも適用されるのであって、会計基準の基本を考える必要がある。改定監査基準にあるように、「財務諸表の作成責任は経営者にある」とある。
金融庁は、【「会計ビッグバン」などを通じて、日本の会計基準は急速に整備され、国際的な会計基準と整合性のあるものとなっている】と主張している。であるなら、会計基準設定主体として国際的に整合した模範となるディスクロージャーを期待する。米国及び国際会計基準委員会財団の年次報告書は国際基準に準拠して作成しており比較することで判るであろう。監査報告書のあて先は、米国のFAFが「評議委員会(Board of Trustees)宛て」、国際会計基準委員会IASCFは「評議委員(Trustees)宛て」、日本はFASFの「理事長宛て」となっており、ガバナンスの違いが現れて興味深い。日本の評議委員の役割は?
(なお、2001年7月26日、金融庁所管の公益法人として、財団法人 財務会計基準機構(FASF)の設立認可を受け、企業会計基準委員会(ASBJ)を発足したことから、FASFの計算書類は、総務省が作成した「公益法人会計基準」で作成されている。ここにも官僚を中心とした縦割り行政が蔓延って、簡単なものを複雑にして判りにくくしている。)
(注6)有価証券報告書の印刷会社、株式会社プロネクサス(旧・亜細亜証券印刷)が運営する国内上場企業のIR・ディスクロージャーに関する最新状況をお伝えするためのサイトです。上場企業等の有価証券報告書の印刷は、宝印刷と両社でほぼ寡占状態です。(両社の四半期業績 参照) その背景には、旧・大蔵省の有価証券報告書の審査をしていた人材が両社に天下って有価証券報告書の作成の指導をしています。(プロネクサス総合研究所 参照) こうした仕組みが日本特有の有価証券報告書を生み出していますし、会計基準の国際化を阻んでいる要因の一つと考えています。これが投資家にとって読み易い情報開示になっていれば問題ないのですが・・(国際的には、株主に提供されないし、株主総会後に開示される異常な開示)。両社が作成した上場企業の有価証券報告書でさえ、両社にとってもEDINETの個別企業へはリンクできていません。
(注7)国際会計士連盟(IFAC)の年次報告書は、自ら設定している国際公会計基準(International Public Secter Accounting Standards, IPSASs)によって作成しており、ニューヨークの会計事務所が国際監査基準で監査している。日本は政府としてもIPSASsを適用していない。
(注8)日本公認会計士協会の役員には金融庁の天下りはない旨の記載があるが、民主党の要請で衆議院調査局が行った天下りに関する予備調査によると金融庁総務企画局企業開示課の担当所管官庁から日本公認会計士協会へ10人の常勤者(常勤者総数の5.6%)が天下っているとのこと。金融庁の「再就職状況」には掲載されないようにしているのか?我々の会費が監督当局の食い物にされていると思うのは私だけであろうか。非常勤の役員よりも、常勤者の方が実質的に力を発揮するし、支出が大きい。因みに会計基準の設定をするASBJの母体(財)財務会計基準機構の企画部長は金融庁から2004年7月31日就任。金融庁の閉鎖的な体質が協会にも類似するのはこんなところにもあるようである。
2008年4月18日、金融庁は、「金融サービス業におけるプリンシプル」等を公表し、透明性高い金融サービス提供者(銀行、保険、証券業など)に関する業務および行政の方針を明らかにした。(金融庁の新聞報道、WTO)
従来の思いつきの行政指導から国際基準である透明性高い公正な行政を望みたい。いつ実現するかは未知数である。過去に実現したことがない。
日本の会計基準を欧州の証券市場で認めて貰うための金融庁の活動状況等 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
● 2004年1月27日、金融庁 ロンドン証券取引所で上場している日本企業に対して、2005年以降も日本の会計基準を継続して認めてもらうために、金融庁は、「英国金融サービス機構(FSA)の上場規則見直し提案への パブリック・コメント・レターの発出について 」(英文本文)を英国金融サービス機構(FSA)へ送付。(社)日本経済団体連合会および東京証券取引所も同様のコメントを送付した。 |
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1月28日 アジアン・ウォール・ストリート・ジャーナル(AWSJ)は、「世界が共通の会計基準へ移行しつつある中、東京では、企業にこれまで通り日本の会計基準を続ける選択も認める方向にあるようだが、これでは外国人投資家は日本から遠ざかることになるかもしれない」と警告している。そして、「日本の経済界には"日本は違う"という考え方が根強く残っている。日本は世界第2の経済大国なのだから、ほかに合わせて慣行を変える必要はないと考える企業人も多い。『わが国の会計・監査基準はすでに国際的に遜色のない水準まで整備されている』というコメントを経団連は10月に発表した。日本最大の経済団体がこのような見解を示していることからして、国際基準が実施された後も、日本政府が企業に日本の会計基準をひとつの選択肢として認めるというのもうなずける」と皮肉気味である。(出所:英米主要16紙誌の論調分析(2004年1月8日〜2月5日)(財) 経済広報センター「論調分析」担当より) |
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2月3日 日英会計交渉の初会合が行われた。英国は「これは欧州連合(EU)指令に基づいた措置」と主張。日本政府は今後、ブリュッセルの欧州委員会とも20日に交渉する構えだ。(時事通信) |
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2月20日 日本側は、日本の会計基準をIASと同等のルールとして認めるよう要求。これに対してEUは、作業部会を通じて早期に認定を審査する方針を説明し、日本の理解を求めた。(時事通信) 外務省「日・EU規制改革対話 ブリュッセル会合(平成16年2月20日)」 欧州連合(EU) 参照 |
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● 4月19日、金融庁 金融庁では、我が国の会計基準が、国際財務報告基準(IFRS)及び米国会計基準(USGAAP)と整合的であること等を、海外において広く知っていただくために英文パンフレットを作成しました。「日本の会計基準のPR用パンフレットの作成について」 「英文本文・(Evolving Japanese GAAP - High Quality Accounting Standards - (April 19, 2004)」 参照 ちなみに、「企業会計審議会」「金融庁」および「企業会計基準委員会」の英語版のWebsiteから日本の会計が理解できるでしょうか?⇒そもそも設定した日本の会計基準はどこに! |
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4月24日 企業会計審議会第9回企画調整部会議事録「資料」によれば、日本の会計基準のPR、日本のEUへの対応などが報告されている。国際会計基準と同等性についての評価に関して日本側との対話を十分に行いたいとのことである。十分に対話して真実を明らかにすることが重要であろう。議事録に「発行開示を規定している目論見書指令は確定しており」としている目論見書指令は、EUのProspectus Directive を参照、 継続開示については、「EUで上場する会社の透明性義務のサイト」を参照。 なお、EUの国際会計基準適用の規則については、2002年7月19日承認の「No1606/2002国際会計基準の適用に関する規則」を参照。この規則は、継続開示の透明性指令に引用されている重要な規則です。第9条には、経過措置として、負債証券のみを上場している会社と、域外で上場している会社で国際的に認められた会計基準を使用している会社については、2007年1月1日から適用する、としている。 |
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● 2004年5月11日、EU 欧州経済財務大臣会議はEU議会が3月30日に承認の「透明性指令」を支持することを表明。EUレベルで、第三国の会計基準が国際会計基準に相当するか評価するメカニズムを創設する、としている。(3月30日承認の「透明性指令」 非公式の透明性指令(Transparency Directive )5月11日 「EUで上場する会社の透明性義務のサイト」 参照 |
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5月26日 米国SECはEUの欧州証券規制委員会(The Committee of European Securities Regulators (CESR))と共同して大西洋を横断(transatlantic)する証券市場規制を統一するため協力する、と表明。6月4日に初会合が持たれるとしている。(SEC速報 参照) 6月4日 米国SECと欧州連合CESRは初会合を開き、2004年第2四半期から2005年の期間では四つの主要な問題を取上げる、として、その一つとして、「国際会計基準の使用を支援する効果的なインフラを構築し、国際会計基準と米国会計基準との調整を回避することを最終目的とする。 Development of an effective infrastructure to support the use of International Financial Reporting Standards, in particular with respect to consistent application, interpretation and enforcement of these standards with the final objective of avoiding reconciliation with local GAAPs.」としている。(SEC速報 (CESR) 参照) |
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● 6月11日、経済産業省 経済産業省は、経団連の主張していた同じ内容の相互承認を求めるとする「中間報告(日本の証券取引法の会計基準と国際会計基準および米国会計基準と比較した表を添付している)」を作成し公表している(資料概要 「Report on the Internationalization of Business Accounting in Japan・June 2004」 参照)。2003年12月19日、経済産業省経済産業政策局は「企業会計の国際対応に関する研究会」を立ち上げ検討し具体的対応について2004年5月に「中間とりまとめ」をしたいとしていたもの(プレス発表 参照)。 2004年10月14日、経済産業省は「企業会計研究会」を設置し「会計ビッグバンの評価、会計・商法・税法との関係等を検討しつつ、我が国会計基準の基本的な考え方等を来春(2005年春)を目途に取りまとめる予定である」としている。 議事録参照 ● 6月23日、金融庁 金融審議会は、金融分科会第一部会報告として「外国会社等の我が国における開示書類に係る制度上の整備・改善について--外国会社等による「英文開示」-- を公表し、外国株価指数連動型上場投資信託(外国ETF)」について、平成17年度(2005年)から、「本国の開示基準・英語」により記載した有価証券報告書及び半期報告書の提出を可能とすることが適切である、とし、その他の有価証券を対象とした外国会社等による「英文開示」の実施時期に ついては、平成19年度(2007年)を目途とす ることが適切である、とした。 >6月24日 金融庁・企業会計審議会は「国際会計基準に関する我が国の制度上の対応について(論点整理)」(Issues on the International Accounting Standards and Japan's Treatment )を公表した。特に進展はない。 金融庁松尾直彦氏によるCESRへの文書 松尾直彦弁護士 参照 |
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● 6月29日、CESR 欧州委員会(EC)は欧州証券規制委員会(The Committee of European Securities Regulators (CESR))に、米国・日本・カナダの会計基準が国際的な基準と同等("third country GAAP" (a non-European national GAAP) as being equivalent to those prepared in accordance with IFRSs)かどうかについて評価し2005年6月に結論を提出するように求めた。法的な手続きを経て2005年12月正式に採用することを目標としている。同等と認められた場合は、2007年1月以降も適用が認められる。(「ECによるCESRに対する正式な指示」 「CESR プレスリリース」 参照)⇒8月12日、ECは、2004年11月に議会の承認後、EUの新市場担当コミッショナーとなるチャーリー・マクリービー氏(Charlie McCreevy)となることを公表。氏はアイルランド勅許会計士出身の政治家で財務大臣。前任者のフリッツ・ボルクスタイン氏は石油メジャーのロイヤルダッチシェル社の産業界出身者であった。(EU速報 EU速報・ティームメンバー ICAI速報 12月6日パリでのスピーチ 12月20日フランクフルトでのスピーチ⇒「2大会計基準(IFRSとFASB)と表現を変え双方の収斂に力点をおいている」⇒日本基準は視野になくなっている。 参照)⇒2005年3月、出身のアイルランドでは非上場会社を含めたすべての会社にIFRSを適用する法案が成立。⇒■氏は、各地でスピーチや米国との相互調整(USGAAPとIFRSの差異調整なしの相互承認を求めて)など精力的に活動している(Charlie McCreevy氏のニュース 参照)。 >2005年2月に金融庁で意見交換のJohn Tiner氏はCESR-Finの議長で、英国FSAのチーフエグゼクティブで、英国のアーサーアンダーセン出身の英国勅許会計士とあります。(日本公認会計士協会会長のウイークリー2月7日 参照) 参考⇒IFRSと主要国の会計基準の比較(日本基準は04年6月に経済産業省がまとめたものを8月に掲載)IAS PLUSより > カナダ会計基準審議会(AcSB)は、2004年5月31日に「自国の会計基準に固執して孤立するのか、放棄してIAS/IFRSにするのかUSGAAPにするのかどうか等」いくつかの選択案を公表し、2004年9月15日までにコメントを求めている。 なお、カナダの上場会社のうち実に480社(カナダの上場会社の約半数と言われている)が米国の証券市場(ニューヨーク証券取引所、アメックス、ナスダック、OTCブリティンボード)に上場しており米国会計基準との差異調整表を開示している実務が存在している(「SECに登録している外国会社・・カナダ 2003年12月末現在」参照)。 >2004年9月16日、金融庁の「EU指令への対応」 参照 >2004年10月12日、IASBおよび企業会計基準委員会は、「日本の企業会計基準委員会とIASBは相互の差異を縮小するための話し合いをスタートさせた」旨、公表した。(IASBのプレスリリース 企業会計基準委員会のプレスリリース 参照) >2005年1月21日、IASBおよび企業会計基準委員会は、同時に、「共同プロジェクトの進め方に合意(IASB and Accounting Standards Board of Japan agree to next steps in launching joint project for convergence >2005年3月9日と10日に、IASB議長デビット・トゥイディ氏一行が訪日し企業会計基準委員会(ASBJ)を訪問、共同プロジェクトの作業を開始した。日本側が検討したくない事項が沢山あることに注意すべき。 日本側が提示した最初の検討事項は、@たな卸資産の評価(IAS1号)、Aセグメント情報(IAS14号)、B関連当事者の開示(IAS24号)、C海外子会社の会計方針の統一(IAS27号)、D投資不動産(IAS40号)の5件のみで、すべて日本に会計基準としては存在しないもの。検討日程などは示されていないので結論がいつになるか不明。次の代表者の会議は9月にロンドンで会合を持つとしている。 (IASB3月11日のニュース <2005年1月25日、ASBJはNIKKEI NETに、検討する5項目を選定し既に公表していた> 参照) |
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● 10月21日、CESR 欧州証券規制委員会(CESR)は、「第三国の会計基準(日本、カナダおよび米国の会計基準)が国際基準に相当するかどうかを評価するときのコンセプト・ペーパー」を公表し、12月22日までにコメントを求めている。2005年6月30日にECに評価の結果を報告することになっている。 三カ国の会計基準の評価は、国際会計基準のフレームワークおよびIAS1号に規定の「理解しやすさ(Understandability)」「目的適合性(Relevance)」「信頼性(Reliability)」「比較可能性(Comparability)」の四つの特性について検討し、その結果、相違する程度により、具体的施策(Remedies)として、差異調整表(Statements of reconciliation)と説明の添付、または全面的に国際会計基準に置き換える(Restatement)かを決める、としている。これを受けて、2004年12月21日、金融庁はCESRに対しコメント・レターを発出した。 日本の企業会計基準委員会(ASBJ)では、会計基準開発・設定の基本となる『財務会計の概念フレームワーク』2004年9月24日の中で、国際会計基準の「比較可能性(Comparability)」に対し、日本では「内的な整合性(Internal Consistency)」を強調しており、基本的な視点でIAS/IFRSとは水と油となっています。1996年11月、フリー・フェアー・グローバルを大きな柱として金融面での大幅な規制緩和・自由化を推進し、低迷している東京市場をニューヨークやロンドン市場に匹敵する国際市場に育成することが大きなねらいであった日本版ビッグバンはどこに行ってしまったのでしょう。 >2004年11月18日、金融庁11月23日訪欧公表、CESR(欧州証券規制当局委員会)の公聴会への参加について 欧州証券規制委員会(CESR)は11月23日、パリで企業会計基準に関する公聴会を開き、EU市場で日米カナダの会計基準の継続利用を認めるかどうかの審査にあたって、機関投資家を中心に市場参加者の意見を参考にする方針を強調した。ジョン・タイナー議長は「審査作業は透明性を高くし、専門的な観点を重視する」と強調。市場参加者による助言組織をつくることを明らかにした。タイナー議長は「欧州の投資家保護が目的」と比較の狙いを説明した。(NIKKEI NETより) >2004年12月8日のAccountancyAge.com, 08 Dec 2004に掲載のフィナンシャルタイムスの記事を引用した「EUは日本企業の上場廃止の脅迫に直面(EU faces Japanese delisting threat)」の記事によれば富士通は国際会計基準を採用する方向で検討中とのことです。(国際会計基準適用の事例 金融庁松尾直彦氏 参照) 日本政府等の「日本の会計基準を引き続き認めなければ、日本企業の欧州市場からの撤退の仄めかし」は、当初はWarn(警告)として、後にThreat(脅迫・脅し)の表現で英文ニュース(欧米・アジアの)に報道されている。 Naohiko Matsuo, director for international financial markets at Japan's Financial Service Agency, said: 'Companies are saying they would not change to international accounting standards because of the cost ... they would have to start checking through lots of little chits from the past.''Companies really dislike the whole idea ... if Japanese standards are rejected, there is a real possibility that some will pull their stock listings,' an investment banker at a US bank in Tokyo. The FT pinpointed a direct threat to the London Stock Exchange where companies such as Fujitsu, All Nippon Airways and Kirin Brewery are listed. 金融庁松尾直彦氏によるCESRへの文書 松尾直彦弁護士 参照 |
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● 2005年1月28日、金融庁 金融庁、企業会計審議会は「企業会計審議会の今後の運営について」と題し、【E U における同等性評価や会社法現代化の動向等を踏まえ、審議事項の企画調整を行うとともに、必要な審議・検討を行う。】として企画調整部会( 部会長 加古 宜士 早稲田大学教授)で検討が行われる旨公表した。 ● 2005年3月31日、カナダ(EUが会計基準の同等性を評価する3カ国の一つ) カナダ会計基準審議会(AcSB)は「カナダの会計基準に関する戦略的計画(7月末までにコメント要請)」を公表した。これによると、上場会社、非上場会社、非営利組織の会計基準に区分し、上場会社の会計基準については、下記の通り、5年の経過期間をおいてカナダ会計基準を国際会計基準(IFRS)に収斂させ、5年後にはカナダ会計基準を廃止する、としている。
●2005年4月4-5日、英国勅許会計士協会(ICAEW)の125回記念コンファレンスが、ブラッセルで、「グローバルな資本市場:ビジネス、政府および専門職の挑戦」と題して行われた。各国、国際機関から錚々たる人物が出席しスピーチしており、日本からは金融庁の式部透氏( 5日には、EUの市場担当コミッショナーとなったチャーリー・マクリービー氏がスピーチしている(スピーチ 参照)。■氏は、アイルランドの勅許会計士の元財務大臣で専門知識経験が豊富、各地でスピーチや米国との相互調整(@USGAAPとIFRSの差異調整なしの相互承認を求めて、A現在、EU企業の米国株主が300を超えるとSECに登録しコーポレートガバナンスの規定に準拠する必要があり、SOX法適用後費用が嵩みかつ登録抹消が困難であることから、その基準を引上げ3000の米国株主とするよう要請、BIASCのボルカー氏と面談し欧州のIASBの影響力を増やす要求)など精力的に活動している(Charlie McCreevy氏のニュース 参照)。 ●2005年4月22日、EUの市場担当コミッショナーとなったチャーリー・マクリービー氏、訪問していた米国で、米国SECと欧州が適用した国際会計基準(IFRS)の同等性について合意に達した。すなわち、米国は2007年に、遅くとも2009年までに、SECが課している米国会計基準との差異調整表の開示義務を無くすことで合意した(EUのニュース SEC速報 SEC登録外国会社約1200社の半数以上が欧州・カナダの会社 参照)。 |
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● 2005年4月27日、EU同等性評価で、日本企業に追加情報を要請・EUが発表 |
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【ロンドン=田村篤士】欧州連合(EU)の証券規制委員会(CESR)は27日夜、EU市場に上場する日本企業に対し、2007年から追加的な決算情報の開示を義務付けるよう求める中間報告(138ページ)を正式発表した。企業の合併・買収にかかわる会計処理などで日本基準と欧州企業の利用する国際会計基準に違いが大きいと判断したため。 日本を孤立させないため、外交の常套手段『相手国の面子を立てておく』という外交辞令で政策的に会計基準の同等性を認めたものの、日本の会計が国際基準との相違が大きいとして補完的な計算書(supplementary statement)の開示を求めている三つの事項は、それぞれ次のものである。なお、中間報告書( DRAFT TECHNICAL ADVICE ON EQUIVALENCE OF CERTAIN THIRD COUNTRY GAAP AND ON DESCRIPTION OF CERTAIN THIRD COUNTRIES MECHANISMS OF ENFORCEMENT OF FINANCIAL INFORMATION 「第3国会計基準の同等性及び第3国の財務情報の法執行メカニズムの説明に関する技術的助言書(案)」)のパラグラフ133によると、情報の基礎は、企業会計基準委員会(ASBJ)、日本経団連、金融庁(JFSA)および日本公認会計士協会(JICPA)から入手した情報によるとしている。
補完的な計算書(supplementary statement)とは何かは、昨年10月21日公表の「第三国の会計基準(日本、カナダおよび米国の会計基準)が国際基準に相当するかどうかを評価するときのコンセプト・ペーパー」のパラグラフ58(中間報告書ではアネックス3のパラグラフ61)では「測定および認識の差異が複雑で多い場合は、国際基準との差異調整の開示では非常に複雑で分かり難くなる(complicated)ので、投資家に分かり易い要約財務諸表(要約損益計算書、貸借対照表、可能であればキャッシュフロー計算書)の開示を求める」とあり、再作成(Restatement)よりは簡単な要約財務諸表(condensed financial statements)を求めているが、限りなく再作成に近い厳しい内容といえる。このようになった理由は、日本基準が「測定および認識の差異が複雑で多い場合」に該当したと判断したことになる。 今回公表された中間報告書の本文パラグラフ87−89に次のように記述されていおり、別途、要約財務諸表を作成するようなもの。合併や特別目的会社のある場合は稀であっても、欧州市場に上場する日本企業には知名度を上げるための国際企業が多く、海外子会社がある会社が多いのではないだろうか。該当する場合は、この補完的な計算書の作成は欠かせないことになる。
中間報告書のパラグラフ139に、国際会計基準(IFRS/IAS)の個別会計基準ごとに詳細に日本基準との相違を検討・評価し、重要な相違ごとに救済措置(Remedy)として追加情報の程度(Disclosure A〜C)を記載している。その中で、補完的な計算書(Supplementary statements)を求めている項目は上記3つであるが、会計処理方法の違いを文章(narrative)および数値(quantative)で説明を加えることが求められている事項は、IFRS2号「ストックオプションの会計」を含んで多岐にわたり【上記日経の記事では23項目、具体的にはパラグラフ139(39〜56ページに規定)参照】、@相違点を纏めるには実務上は相当な作業量となること、A相違点を文章または数値で簡潔明瞭に分かり易く説明することは(パラグラフ90で要求)、国際基準で財務諸表を作成するより困難が伴うこと、が予想される。 つまり、日本の会計基準について国際基準と同等であると認めることによって、@日本基準の財務諸表での開示を認めるが、加えて、A投資家の理解を容易にするため国際基準との相違に関する追加情報(補完的な計算書を含む)の開示を求める、という、単に国際会計基準で再表示(Restatement)するより複雑な開示を求められることとなった。(パラグラフ132) なお、国際会計基準に準拠した財務諸表に再表示(Restatement)を求めるのは、同等性がないと評価した場合にのみ適用される(パラグラフ64、65)。 海外連結子会社がある場合は、海外では100カ国(地域・国際機関を含む)を超えて国際会計基準を適用する現況を見れば、海外の子会社が国際会計基準に収斂される中にあっては、親会社の日本が国際会計基準を適用する方が簡単になることは明らかであるし、追加情報で説明を加えることことが必要となる場合は、初めから、国際会計基準を適用したほうが投資家にとっても分かり易いということができよう。 CESRの中間報告書発表の直前、2005年4月4-5日、英国勅許会計士協会(ICAEW)の125回記念コンファレンスが、ブラッセルで、「グローバルな資本市場:ビジネス、政府および専門職の挑戦」と題して行われた。各国、国際機関から錚々たる人物が出席しスピーチしており、日本からは金融庁の式部透氏( なお、経済産業省は「我が国企業会計の国際化に関する研究会中間報告」を公表し、日本経団連は「2005年問題-産業界の対応-」で、ともに「相互承認」を主張し、官民挙げての大政翼賛会状態である( 「2005年5月9日五味金融庁長官記者会見の内容」参照)。 CESRの今回の中間報告は、日本の会計の現状が初めて公の場で明らかにされたという功績はあるが、日本自らが日本の会計を真摯に分析し判断すべき内容であった。日本は、会計ビッグバンで会計基準を改善したのだから「国際基準と同等になった」と設定者・当局等の自己評価・方針のみであった。これまでに失われた時間は大きい。日本は、二度と同じ過ちを繰り返して欲しくないものだ。これを契機にレジェンド(警句)の解消も視野に入れた日本の会計のビジョンを内外に示すべきとき。 伊藤金融担当大臣が4月29日から5月4日にかけて訪米し、米国SEC、FASB、日米証券関係者と対話を進めると表明したが、日本のビジョンが明示されなければ米国側は目的がわからず困惑するのでは?単なる日本側の勉強会か?SECは速報で5月3日に意見交換した旨伝えているが、FASBおよび日本の企業会計基準委員会(ASBJ)の双方はニュースに取り上げていない(05年5月10日の伊藤金融担当大臣記者会見内容 金融庁の5月11日のニュース⇒「ハイレベル・ミーティングEU-Japanの例を見る限り実りあるものは期待できない」 参照)。(注意:なお、米国会計基準を適用している国は米国以外にはなく、米国以外の海外連結子会社は国際会計基準を適用するケースが多い。) 同時に会計基準の同等性を評価されたカナダでは、中間報告書が出る直前の3月31日、カナダ会計基準審議会(AcSB)は「カナダの会計基準に関する戦略的計画(7月末までにコメント要請)」を公表した。これによると、上場会社、非上場会社、非営利組織の会計基準に区分し、上場会社の会計基準については、5年の経過期間をおいてカナダ会計基準を国際会計基準(IFRS)に収斂させ、5年後にはカナダ会計基準を廃止する、としている(上記●2005年3月31日カナダ参照)。 米国については、2005年4月22日、EUの市場担当コミッショナーであるチャーリー・マクリービー氏(前アイルランド財務大臣、勅許会計士)が、訪米し、米国SECと欧州が適用した国際会計基準(IFRS)の同等性について合意に達した。すなわち、米国は2007年に、遅くとも2009年までに、SECが課している米国会計基準との差異調整表の開示義務を無くすことで合意した(EUのニュース SEC速報 同日、SECの主任会計士ドナルド・ニコライセン(Donald T. Nicolaisen)が会計基準収斂の道筋(Roadmap)を描いて見せている 欧米のマスコミ報道 日本の報道なし 参照)。欧州・米国双方の理念は一致しており統一の努力が計画的・着実に重ねられてきている。 なお、これまでの日本に関する経緯は、1993年11月に開催された国際会計基準委員会の定例理事会で企業間・国際間で比較可能な財務諸表を作成するための会計基準設定に、理事国14か国中日本は唯一反対した時を、あたかも第二次世界大戦直前の国際連盟を脱退したときの松岡洋右にたとえ、日本が国際会計基準を背にして今日に至る経緯を克明に著した「国際会計基準戦争」(2002年10月、日本経済新聞の記者磯山友幸氏著)がある。石川純治駒沢大学教授の書評 参照 2005年4月6日、ASEANは、 「2010年までに証券市場の一体化で合意」し、これに先立って、ASEANの主要取引所であるシンガポール証券取引所は、上場会社に国際会計基準、米国会計基準、シンガポール会計基準のいずれかの財務諸表の提出を要求(ASEANの規制 参照)。
参考;「英米で上場している日本企業」 「国際会計基準の適用事例」 参照 |
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●欧州・米国サミットで会計基準の統一で合意(2005年6月20日) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2005年6月20日、米国ワシントンで行われた米国・欧州サミットで、「可能な限り早く会計基準を収斂させることを促進する"promoting convergence of accounting standards as soon as
possible".」 ことで合意した。(ホワイトハウス速報 欧州連合速報 参照) |
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●米国FASBと国際会計基準審議会IASBが、企業結合の会計基準ではじめて公開草案を共同公表 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2005年6月30日、FASBとIASBは、企業結合の会計基準について双方の会計基準を一致させた草案を公表した(IASB’s IFRS 3 Business Combinations and the
FASB’s Statement 141 Business
Combinations)。 すべての企業結合について、どちらか一方が他方を取得する一つの方法(a single method)のみを採用する。取得時の公正価値で「のれん」を認識し、取得者ばかりでなく、従来少数株主持分(minority interests)としていた非支配の持分(non-controlling interests )にも配分する。非支配の持分(non-controlling interests )は資本取引として持分(equity)に区分表示する。(IASBニュース FASB141号草案 参照) |
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●2005年7月5日、CESRの最終結論(141ページ)が5日遅れで提出された。4月27日の中間報告(138ページ)と大きな相違はない。(CESRニュース 欧州上場の域外企業に追加開示義務付け・EU委報告 EU May Seek More Disclosure From U.S., Japanese Firms 参照) 金融庁が解説しています。⇒「EUにおける我が国会計基準の同等性評価の進展状況」 @カナダは、「カナダの会計基準に関する戦略的計画(7月末までにコメント要請)」を公表し、5年の経過期間をおいてカナダ会計基準を国際会計基準(IFRS)に収斂させ、5年後にはカナダ会計基準を廃止する、としており、A米国は2007年に、遅くとも2009年までに、SECが課している米国会計基準との差異調整表の開示義務を無くすことで合意した(EUのニュース SEC速報 参照)。欧州・米国双方の理念は一致しており統一の努力が計画的・着実に重ねられてきている。(上記「企業結合の会計基準」IASBニュース参照)。 日本も国際会計基準との差異を無くす努力がはじめられつつあるが、緒に就いたばかり。2005年3月9日と10日に、IASB議長デビット・トゥイディ氏一行が訪日し企業会計基準委員会(ASBJ)を訪問、共同プロジェクトの作業を開始した。日本側が提示した最初の検討事項は、@たな卸資産の評価(IAS1号)、Aセグメント情報(IAS14号)、B関連当事者の開示(IAS24号)、C海外子会社の会計方針の統一(IAS27号)、D投資不動産(IAS40号)の5件のみ。検討日程などは示されていないので結論がいつになるか不明。日本は常に不透明。 (IASB3月11日のニュース 参照) 今回CESRから評価を受けた日本の会計基準は、証券取引法を所掌とする旧大蔵省(現金融庁)が設定してきたもの。現在でも、金融庁は、金融庁設置法第4条「十七 企業会計の基準の設定その他企業の財務に関すること」を行うことになっているのである。2000年7月に発足した金融庁は、唯一日本で会計基準の設定権限を金融庁設置法という法律の下に持っている組織として、CESRのこの評価を受けてどのように対応するか注目されるところである。2001年8月に発足した企業会計基準委員会には法的に認められた権限はない。金融庁は「財務諸表等規則等に係る事務ガイドライン(企業会計基準委員会の公表した各会計基準の取扱いについて)」を公表することで権限を堅持してる。したがって、法律では、日本の会計をどうするかは金融庁の判断次第なのである。(金融庁総務企画局企業開示課 参照) ↓ ↓ ↓ ↓ |
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●「会計基準の国際化に関する質問主意書」 提出者伴野豊氏 2005年6月27日162回国会#87衆議院提出 経過へ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
会計基準の国際化に関する質問主意書 5 わが国の現行の会計基準は、EU域内において「国際的な会計基準と同等なもの」と認められると考えているか。 右質問する。 2005年7月5日の金融庁の回答 5について 欧州委員会(EC)は、我が国、米国及びカナダの会計基準が国際会計基準と同等であるかどうかの評価を行っており、そのため、欧州証券規制当局委員会(CESR)が欧州委員会に対して技術的助言をすることになっている。我が国の会計基準は、これまでの整備や改善を通じて国際的にも質の高いものとなっており、欧州証券規制当局委員会が本年四月二十七日に発表した技術的助言案では、我が国の会計基準は米国やカナダの会計基準とともに一定の補完措置をとる必要があるとされているものの、全体として国際会計基準と同等であると評価されている。欧州委員会は、本年末又は二千六年初めまでに最終的な評価を行う予定であり、我が国の会計基準が全体として国際会計基準と同等なものであると評価されるように、金融庁において、国内の官民の関係機関と緊密に連携して、適切な対応に努めてまいりたい。 結論は今もって金融庁は会計基準に対して具体的なビジョンなし。 企業会計基準委員会の創設のときと同じように、最後の最後まで引延ばすであろう。 2005年8月31日、金融庁の「平成16年度の実績評価書」が公表され「会計制度の国際的対応の促進」について評価している。内容は自画自賛の評価であり、目新しいものは全くない。 1989年11月、ソニーは米国映画会社コロンビア・ピクチャー(現ソニー・ピクチャー・エンターテイメント)を約6千5百億円で買収、うち「のれん」は3千5百億円を計上、1994年には減損会計を適用し2,650億円の未償却のれんを一時償却する。 翌年の1990年11月、松下電器産業はソニー同様、米国映画会社MCAを61億ドル(約7,800億円)で買収し巨額の「のれん」を計上した。松下は1995年4月、MCAをカナダの会社に57億ドルで売却する。 ソニーおよび松下は、米国SEC登録の会社で米国会計基準で会計処理をしており、当時は、無形固定資産である「のれん」の最長耐用年数が40年であったため、償却負担が少なく企業買収が可能であったと言えよう。日本の商法(現・商法施行規則第33条)では「のれん(営業権)」の償却期間は5年であった。つまり、日本企業が、国際的競争の中でハンデを負っているのである。 最近、日本のIT企業が「日本の企業結合の会計」について、国際的な競争力を高めるため国際基準に合わせて買収法のみとし「のれん」に減損会計を適用して欲しいとする要望が出されているが、上記ソニー、松下のケースを思い出して欲しい。
●2005年(平成17年)8月5日(金)、経済産業政策局企業行動課の「企業会計研究会」(経済産業政策局長の私的研究会、座長:安藤英義一橋大学商学研究科教授)において、中間報告書(案)が取りまとめられました。9月4日までコメントを求めています。経済産業省が、日本企業に不利な日本の企業結合の会計基準(のれんの償却を強制)を支持するのは不思議。9月6日、「企業会計研究会中間報告書」を公表。 ●2005年12月8日、EUの市場担当コミッショナーであるチャーリー・マクリービー氏は、EUの同等性の評価を下記の通り、米国のロードマップ(少なくとも2009年までに米国基準との差異調整表の添付を解消する)に合わせる形で、当初EUが「2007年から」としていたものを2009年まで2年延期する見解を表明している。(プレスリリース ニュース 参照)
欧州連合(EU)25カ国の上場会社約7000社が2005年1月1日から国際会計基準(IAS/IFRS)の適用を義務つけられ、現在米国基準で開示している会社も2007年まで適用を延期している。そのうち、約300社から450社が米国SECに登録している欧州の会社と見られている。 2004年12月8日、SECの主任会計士ドナルド・ニコライセン(Donald T. Nicolaisen)は米国公認会計士協会の総会で国際会計基準の取り扱いについて語った。「現在、SECに登録されている欧州企業のうち国際会計基準の財務諸表を登録している会社は50社以下であるが、2005年以降は500社を超える会社がIASで登録してくることが予測される。2006年の第二四半期に、2005年度のIASと米国会計基準との差異調整表を検討し、できる限り速やかに差異解消を促進したい」としている。(米国は、上記ロードマップで2009年までに差異調整表を解消するとしている) (現在、SEC規則で、米国以外の会計基準(国際会計基準を含む)で開示している外国の上場会社には「米国会計基準との差異調整表(U.S. GAAP Reconciliationという・・「Regulation S-X Article 4-Rules of General Application § 210.4-01.(a)(2)」参照)」を開示することを義務付けている。) EU grants U.S. and Japan reprieve on accounting rules (Bloomberg News FEBRUARY 1, 2006) reprieve━━ n., vt. 【法】(死)刑の執行延期(をする); 一時的に救う ((from)); (苦しみなどの)一時的な軽減. ●2006年3月24日、日・EU規制改革対話ブリュッセル会合で、「会計基準の同等性判断決定についてEU側より、欧州証券規制当局委員会(CESR)の技術的助言、国際会計基準(IAS)のEUにおける導入後の状況、日本や米国の会計基準のIASとのコンバージェンス作業の進捗を考慮する必要があるとした上で、欧州委としては、マクリーヴィ委員が既に発言しているとおり、最大限のコンバージェンスが実現するよう、同等性判断の決定時期を2年間延期し、2009年まで現状を維持することが最善の道筋と考えており、欧州委としての提案内容が決定次第、日本の当局にも送付する旨述べた。」⇒下記原文の提案では2008年まで現状維持となっている。 ●2006年4月20日、日経金融新聞記事「会計基準統合、09年決着目標――金融庁、EUと協議へ」 ●2006年4月24日、欧州委員会の会計規制委員会(the European Commission's Accounting Regulatory Committee (ARC) )は、米国、日本、カナダに対して、2008年12月31日まで会計基準の同等性の評価の決定を2年延期する提案をした。(6月に、目論見書指令および透明性指令の改正で決定 )
・Draft Amendment of Prospectus Regulation (PDF 24k) ●2006年5月2日、中国証券管理委員会(CSRC)と米国証券取引委員会(SEC)は対話を促進することで合意し、会計基準の国際会計基準への収斂、両国の報告基準の調和などに関して検討するとしている(SEC速報 参照)。(日本もSECと協調・対話する旨、2006年1月30日に公表しているが、中国の方が具体的・・SEC速報 金融庁「日米ハイレベル証券市場対話」・・SECの英文と異なり曖昧で具体性に乏しい。 参照) ●2006年5月15日から19日まで、欧州連合(EU)域内市場コミッショナー、チャリー・マクリービー氏が、中国(北京・上海・香港)を訪問し中国当局と会計基準・上場規制などについて対話を開始した。(EUニュース 会計・監査基準の協働について(16日北京) チャリー・マクリービー氏のスピーチ(18日上海・上場規制について) ロイター 16日新華通信ネットジャパン 参照) ●2006年5月19日、企業会計基準委員会ASBJは、米国財務会計基準審議会(FASB)とグローバル・コンバージェンスを目指して協議を開催したと報じた。しかし、ゴール(例えば、いつまでに米国が日本基準との差異調整を解消することを目標とするなどのロードマップは示されていない)が何なのか具体性を欠く協議。 ●「日系企業が中国携帯電話市場から続々撤退、日本政府の「過保護」が裏目に(日経BP2006年03月20日)」⇒日本政府(金融庁・経済産業省)の支援で国際会計基準に背を向けて続けており結果として「国際会計基準EU域内上場の日本企業にも◆負担増、22社が撤退 2007年問題 野村、商船三井など(読売05年9月14日)」「欧州での上場廃止に向かう日本企業(大和総研06年5月30日)」として日本政府の過保護が裏目に出ている。独りよがりに世界基準に同等だと主張するが理解を得られず日本の会計基準が孤立しているのを見るに携帯電話の2G時代の日本標準と同様に見える。・・ただし、携帯電話の場合は、2G時代の経験・教訓を生かして、国際的に普及している3G標準で、日本政府は早期に3G免許を交付し、自国の通信事業者と設備製造業を発展させ、海外進出を刺激することを決めた。 さて会計基準は・・・・ ●2006年7月7日開催される欧州会計規制委員会(ARC)の同等性の決定2年延期に関する「透明性指令改正案」および「目論見書指令改正案」が公表されている。日本・カナダ・米国の会計基準について、同等性の決定を2年間延期するが、日本の国際会計基準審議会との差異を無くす努力、カナダの5年後には国際会計基準を適用、米国の2009年までに差異調整を無くす努力についてモニターし、その進捗度合いによって2009年以降についての対応を決めるとしている。日本の時間稼ぎも限界にきていると言えよう。 ●2006年6月、日本経団連は「会計基準のコンバージェンスに対する経済界の考え方を公表」し日本経団連として会計基準のコンバージェンスの加速化を支持する立場を表明した。初めてのことである。 ●2006年7月24日、IASBは、2009年1月1日までは新たな会計基準や現存の会計基準の変更について適用を凍結することを発表した。頻繁な会計基準の公表や改正が各国の翻訳・法律化の時間的制約もあって追いつかないという要請に応え、かつ、欧州のIFRSの適用定着を見据えることもあって適用を凍結した。この2009年の設定は、まだIFRSを適用していない国々に新たに適用するターゲットの日を提供することにもなるだろう。(日本のニュース IASBのニュース 参照)・・・暗に日本に向けて凍結しているかのようである。 ●日本政府が一転して「会計基準の国際的な収斂の促進を指示」(2006年7月) 2006年7月7日、日本政府は「骨太の方針2006」を閣議決定し、その12ページには、「平成21年(2009年)に向けた国際的な動向を踏まえ、会計基準の国際的な収斂の推進を図る。」と指示している。
企業会計審議会は、具体的な方向性を示しておらず、政府の方針が出ても意見統一できていない。正しく現状認識ができていない。そもそも「工程表」の期日さえ明示されていない。EUと交渉を継続というけれで、もともとEUと2004年から交渉して2005年に26項目の補正措置がでてきたのであって、それを予測できない日本の当局者達に何を期待しようというのか不思議な意見書である。そもそも投資家保護のインフラである会計基準が交渉で決まるはずはない。偏見のない中立性(neutrality)が求められるのだから(財務報告の目的 参照)。時間の浪費はまだ続く。 【注意:@国際基準の表示(IAS1号)は、2期比較であることから、2009年だけでなく2008年も同一基準の財務諸表を作成する必要があり2007年末の在庫評価(IAS2号)など2007年末の貸借対照表を確定しておかなくてはならない(IFRS1号)、A監査も国際基準が求められ欧州と同様に国際監査基準の適用も制度化する必要がある。26項目に及ぶ相違を、2009年に国際基準に収斂させるための日程は残されていない。】 「M&A(企業の合併・買収)の会計処理に適用する企業結合会計などが修正要求の対象で、金融庁はEUの要請に応じる意向(2006年7月29日日本経済新聞)」(ニュース 参照) ●2006年8月2日、米国証券取引委員会(SEC)と欧州証券規制委員会(CESR)は、両市場に上場会社の財務報告に関し、高品質の会計基準の開発、国際基準の高品質で一貫した適用、両市場での適用に関する相互理解、国際基準と米国基準の整合ある規制および適用に係る共同作業を開始した。半年に1回会合し、必要と認めた場合は追加会合することを決めた。(SEC速報 CESR-SECの作業計画 会計共通化のニュース 参照) ▲2006年8月22日、ロンドン証券取引所のAIMが日本の会計基準を認めないとするルールを公表した。2005年12月21日の当初案では、米国会計基準に加えて日本の会計基準も認める案であったが最終的に日本の会計基準は認めないこととなった。(日本語ニュース 参照) 米国は2008年までに欧州と相互調整し、カナダは5年内に、オーストラリアは2005年に国際会計基準に移行することを表明していた。日本だけが理解不能・不明瞭・曖昧であった。(孤立の日本 参照) 2007年2月20日、ロンドン証券取引所AIMは、改定ルール(AIM27)を公表し、19項で、年次報告書について日本の会計基準で作成した財務諸表でもよいと一転した。 AIMとは、Alternative Investment Marketの略称で、国際的な新興の小さな成長企業(smaller growing companies)を対象とし、投資家は95%が機関投資家(投資の専門家)というユニークな市場で、1995年ロンドン証券取引所に創設し2006年8月16日現在約1590社が上場している。2006年7月16日、指紋認証技術をもった日本企業のセキュアデザイン(株)(Secure Design Institute KK (SDI) )が初めてAIMへ上場している(AIMニュース SDI社のプレスリリース 参照) ちなみに、ロンドン証券取引所の筆頭株主は米国ナスダックである(ニュース参照)。
●政策提言(2006年9月7日)「リーダーシップをもつオープンな日本へ」の中(31−32ページ)で、「(ハ)開かれた市場ルールの構築と会計基準の国際化・・国際会計基準審議会(IASB)というIAS設定の機構にメンバーシップを持つにも拘わらず、日本は、日本企業の競争力阻害の要因ともなっている独自の会計基準の正当性を主張し、こうした動きに距離を置いている。しかし、様々なルールが、「開かれた市場ルール」として国際標準の地位を得ようと競争を行っている中、政府は、規範形成における主導権発揮の基盤として、まず、この構築に邁進すべきである。すなわち、日本の会計基準を国際的な会計基準の方向性にあわせた改正を行い、企業の競争力強化を図るとともに、国際的な会計基準作りでの主導権発揮にも取り組まなければならない。将来にわたる日本企業の世界での活動への影響が懸念されており、日本はむしろ積極的に会計基準の統合を進めなければならない。また、情報通信技術にかかる法制を見直して整備することも必要である。」としている。まとめたのが、外務省の「世界の中の日本・30 人委員会」塩崎恭久衆議院議員(小泉政権当時・外務副大臣/安部政権の現在・官房長官)。(「塩崎官房長官と公開会社法制の行方」by山口利昭法律事務所) ●日本経団連経済法規委員会の八木良樹企業会計部会長は9月17〜20日に訪欧し、欧州委員会、国際会計基準審議会(IASB)、欧州産業連盟(UNICE)、現地欧州企業を訪問し、会計基準に対する日本経団連の考え方「会計基準の相互承認を求める」に対する理解と協調を求める。(日本経団連タイムス2006年9月7日)(日本経団連タイムス2006年9月21日 参照) ●2006年9月12日、EUの会計規制委員会(ARC)は9月26日にミーティングを開催し、その中で、第三国(日本、米国、カナダ)の会計基準について、特に米国のGAAPについて同等性の議論をするとしている。 規則(草案) 委員会の最終結論(草案) これによると、2007年4月1までに欧州証券規制委員会と欧州議会に第一回目の同等性の報告書を提出し、2008年4月1日までに相違に関する進捗の程度を報告し、2009年4月1日までに同等性に関するメカニズムを決定しなければならない、としている。 ●2006年9月28日、29日、企業会計基準委員会(ASBJ)と国際会計基準審議会(IASB)は、コンバージェンスに係る共同作業の4回目の会合をロンドンで行った。具体的には何も進展はない。工程表の話はどうなっているのでしょうか? (IASBニュース 参照 ASBJには10月2日に掲載) ●2006年10月12日、企業会計基準委員会は、「我が国会計基準の開発に関するプロジェクト計画についてーEUによる同等性評価等を視野に入れたコンバージェンスへの取り組みー」を公表し、「工程表」に該当する「プロジェクト計画表」「EUの指摘事項26項目の対応」をやっと公表した。欧州証券規制当局委員会(CESR)からの補正措置に対応して作成されたもので、日本の会計基準の全体像を示すものではないようである。なぜなら、継続事業と事業譲渡・会社分割など廃止事業の区分表示の会計基準(IFRS5号)や、財務諸表の表示に関する会計基準(比較財務諸表を求めているIAS1号)についてはこのプロジェクトに含まれていない。 国際会計基準に全面移行したほうが判り易い。なぜなら、今後は、既に出ている企業会計基準委員会の委員の考えや財務諸表規則等を管轄する金融庁の考えなど、日本特有な考えが反映され、国際基準との齟齬を把握する方が困難となる恐れがある(会計基準の数ほど差異が発生する可能性あり・・「企業結合の会計基準」然り、「純資産の部」然り)。加えて、株主に提供する会社法の計算書類があり、日本は、複雑怪奇な会計の時代がやってくる。例えば、四半期報告書は、有価証券報告書と同様に、株主に提供しないのでしょうか?(現行会社法に規定なし) ●欧州委員会(EC)は、2006年10月25日、目論見書指令および透明性指令の導入を公表し、第三国の会計基準の国際会計基準への収斂状況のタイムテーブルを2007年4月1日までに第一回目の報告として欧州証券委員会と欧州議会へ提示しなければならない。 2009年になる6ヶ月前までに結論を出すがそれまではコンバージェンスの進捗状況をモニタリングするとしている。
金融庁で、2006年11月27日、第一回日EU・会計基準の動向に関するモニタリング会合が行われ、金融庁側からは、企業会計基準委員会によるコンバージェンスに向けた工程表及びそれに沿った着実な進展について説明が行われた。2007年前半で第二回目の会合が予定されている。 ●2006年12月28日、安倍内閣の、経済財政諮問会議の二十一世紀ビジョンに関する専門調査会の一つであるグローバル化改革専門調査会(会長・伊藤隆敏東大教授)は経済連携協定(EPA)の締結の拡大とそのために必要な農業改革、金融・資本市場の強化策のそれぞれを検討する作業部会の設置を決めた。金融・資本市場の作業部会の検討項目としては@東京証券取引所をロンドンに並ぶ市場にするための方策、A金融・証券取引の監督手法の在り方、B日本の会計基準や証券税制を国際的に調和させることーなどを設定。 ↓ 日本政府の本気! 訪英中の山本金融相は、年明けの2007年1月9日、証券制度の改革や、会計基準の国際基準への統一などを進めるため経済諮問会議の下に研究会を発足させる方針を表明した。「改革を進めなければ東京市場は香港、上海、シンガポール市場に取り残される」と強い危機感を表明。(毎日新聞) 金融・資本市場ワーキンググループでは1月中に第1回会合を行い、2・3月集中的に議論した後にグローバル化改革専門調査会に報告し、春先にはグローバル化改革専門調査会としての報告書を取りまとめる見通し。(伊藤グローバル化改革専門調査会会長 記者会見要旨) 金融・資本市場ワーキンググループでは、かなり面白い議論が展開されている。・・4月13日「国際会計基準(IFRSs)に基づく開示の容認(論点整理)」 経済産業省提出の資料(6ページ目) <競争力ランキング>
・・日本はかなり低い位置にある。日本を擁護していた経済産業省も真実の資料を提出しつつある。自画自賛の金融庁からは出てこない資料。 ●シティ・オブ・ロンドン(ロンドンのシティ地区の行政機関)が金融センターとしての競争力(国際金融センター指標GFCI)を初めて公表(2007年3月15日)。トップはロンドン、二位ニューヨーク、三位香港、四位シンガポール、東京は九位。東京については、人材が乏しく、規制環境がよろしくない旨の、下記の注記が付されている。(報告書 参照) Does not fare well in terms of regulation and business environment, but the size of the Japanese economy means Tokyo has good liquidity. It fares poorly on people but has good infrastructure and market access. ●2007年1月30日、東証とニューヨーク証券取引所の提携問題など急速なグローバル化のためか、金融庁は、金融審議会に「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ(座長池尾和人慶大教授)」を設置したと公表した。 この10年間を見ても判るとおり、金融庁主導で改革をしても遅々とし進まず無理なことが十分なほど立証されている、政府主導で行わなければならない。 金融庁・金融審議会の我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループが、上記、内閣府の金融・資本市場ワーキンググループに対抗して議論を開始した。過去の経緯を見るに、権限を維持するため、金融庁は、政府に率先してグローバル化をすることはない。 ●日本企業、欧州市場で締め出しか 2007年3月14日、フィナンシャルタイムスは、欧州委員会がEU議会に向けて米国、日本、カナダの会計基準がどの程度国際会計基準に収斂されているか(国際基準との同等性)を4月1日に第一回目の報告をすることになっている。 最終結論は、2008年7月1日までに出すことになっているが、日本の会計基準が認められなければ日本企業(株式上場13社および社債上場71社)は、2009年から欧州での資金調達に支障がでる恐れがある。(CESR ニュース 報告書原文 フィナンシャルタイムズ(FT)14日の記事 AccountancyAge14日の記事 金融庁企画官黒澤利武氏26日の署名記事←金融庁は、今頃になって英文で”期限に間に合わせるにはきつ過ぎる”と言い訳をしている。→Japan to request EU accept its accounting rules 金融庁3月26日プレスリリース 第2回 日EU会計基準・監査の動向に関するモニタリング会合 27日企業会計審議会・・参考資料 27日と28日のIASBとASBJのミーティング・・・この重要な時期に斎藤委員長が退任した。金融庁の意思が働いているようだ(金融庁企画官黒澤利武氏26日の署名記事)。副委員長の西川氏が委員長に昇格した。新委員長・副委員長共に旧大蔵省の企業会計審議会からの委員で踏襲の変更はないものと思われる。 参照) 奇しくも、3月15日、韓国は、2011年から上場会社の連結財務諸表は国際会計基準を適用と公表された。2009年の早期適用も可能としている。 金融監督委員会では国際会計基準を取り入れ、資産2兆ウォン以上の企業は2011年から、資産2兆ウォン未満の企業は2013年から連結財務諸表に、その他のグローバル業績も発表を義務付ける内容のロードマップを発表した。(記事) ●2007年3月29日、東京で開催のIFRS地域ポリシー・フォーラムで、「日本はIFRS を採用せずに国際的なコンバージェンスを目指している(西川氏)」と明言した。 カナダ、韓国が2011年にIFRSを採用すると明言している中、「日本はIFRS(国際会計基準)を採用せず」としているのはかなり挑戦的、会計界の北朝鮮にならないことを祈る。 日本は、いまだIFRSに追いつくことも出来ず、コンバージェンスはいつまでも達成できない幻想です。現に、借入金の利息を資本化する会計基準(IAS23号)を米国基準と一致させたことが報じられ、日本の会計基準は国際基準との間で新たな相違が生じているのです。コンバージェンスの作業はエンドレスになり、相違はいつまでもなくならないことは誰の目にも明らか。(2007年3月29日、IAS23号を米国基準に一致させるため、期間費用の選択肢を廃止し、利息の資産化のみに改正した。) 日本は例外だ。日本の会計風土は素晴らしいものがあるとは思うが,ほとんどの事柄に同意せず,そしてそれは他国が納得する意見ではない。われわれは日本の意見すべてに耳を傾け,理解しているが,同意はできない(例えば,IASBは「包括利益」の導入を目指しているが,日本は当期利益の考え方がなくなり,実態がわかりにくくなるとして,反対意見を表明している。「包括利益」とは貸借対照表を原則時価評価して,有価証券などの評価損益を毎期の利益に反映させる方法)。IASB理事の意見(2004年3月)参照 ●2007年4月13日、金融・資本市場ワーキンググループは、論点整理を公表し、東京市場のグローバル競争力を高め、その国際金融センターとしての地位を向上させるためには、本格的な改革を着実に実施していく以外にはない、とし一層の制度整備を進めるなど3本の柱を明示した。その中に、「国際会計基準(IFRSs)に基づく開示の容認」が初めて謳われた。 20日には、第一次報告「真に競争力のある金融・資本市場の確立に向けて」がまとめられ、国際会計基準については「我が国では、我が国企業が米国基準に準拠して作成した連結財務諸表を受け入れているが、これを国際会計基準(IFRSs)についても基本的に認める方向で検討がなされるべきである。」と明記した。役人言葉で”検討”とは実施しないという意味のようであるが、ごまかしが効く時代ではないと信じたい。 東京金融市場:アジア市場の台頭で、漂う危機感・・・毎日新聞5月2日 二つの報告書(「掛け合い漫才」「お決まり文言の羅列に、よくも飽きずにお金と時間と労力をつぎ込んでいることか」)・・時事通信5月16日 ●2007年4月30日、[ワシントン 30日 ロイター] ブッシュ米大統領とドイツのメルケル首相、欧州委員会のバローゾ委員長らは30日、ホワイトハウスで会談し、欧米双方の企業や消費者のコスト低減に向けて、規制面で協力関係を強化し、会計基準に関する提案の履行や国際決済銀行(BIS)の新銀行自己資本比率規制(バーゼル2)の導入を促すことで合意した。 合意内容には、米国市場に上場する外国企業に対し、欧州の国際会計基準に基づいた決算報告を2009年までに認可する提案が含まれている。(日本語ニュース ホワイトハウス・プレス:プログレス・リポート 2007年US−EUサミット 米側:Framework for Advancing Transatlantic Economic Integration Between the United States of America and the European Union EU側 SmartPros 参照) SECサイトの「スポット・ライト:国際財務報告基準に関する”Roadmap"」 参照 ●欧州委員会のチャーリー・マクリービィ域内市場・サービス担当委員が2007年6月12日から15日まで来日、政府閣僚および産業界の代表とさまざまな会合を持ち、金融サービス、政府調達、知的財産権、郵政民営化、規制改革の総体的進捗状況などについて意見交換をする予定です。(駐日欧州委員会代表部ニュース 参照) 2007年6月15日、チャーリー・マクリービーECコミッショナーの来日直後、ASBJは新たな「中期運営方針」を公表し2009年を目途に加速とのこと。EUの同等性の判断は2008年末までに決定されるとしているのに、のんびりと「2009年を目途に加速させる」としている。日本は、駆け引きばかりしてないで、米国とEUの合意のように日程を区切って目標を明らかにして進捗状況等を誰にでも分かりやすく明らかにすることであろう。先送りして無駄な時間をいつまで続けるのか。 チャーリー・マクリービー氏の初めての訪日に際して、会計基準の同等性についての記事が見られなかったが、氏へのインタビューを掲載した「日本は更に株主行動主義に(Japan to see more shareholder activism)」というコメントを残している。「日本には、まだ株主行動主義(shareholder activism)の文化に欠けているがグローバルな財務環境へのシフトを続けることにより変化するかも知れない」と語った。(2007年6月13日英文ニュース ロイター 参照) 株主行動主義(shareholder activism )については「21世紀のコーポレート・ガバナンスと株主価値経営」by若杉敬明教授が詳しい。 企業の透明性と民主主義のための道具としての株主行動(Shareholder Activity as a Tool for Corporate Transparency & Democracy ●2007年7月6日、欧州委員会(EC)は、会計基準の同等性評価に関して、日本に国際基準への収斂加速を、欧州証券委員会および欧州議会に対して最初の報告をした。欧州に上場の日本企業84社としている。(ECの報告書 日本のニュース ロイター 欧米のニュース 参照) Regarding Japan, the release in October 2006 of the "ASBJ Project Plan” focusing on projects specifically related to convergence is welcome. In releasing the ASBJ Project Plan, primary emphasis has been placed on mapping out the work to be completed by the end of 2007, and also on clarifying the prospects of convergence status as of the beginning of 2008. Priority was given to initiatives related to the 26 issues for which the remedies were advised by CESR in their advice to the Commission in 2005. The Commission is encouraged by these positive developments but stresses that it is necessary to keep up the pace of,and in certain areas even accelerate, convergence activities. In order to achieve the objectives as defined by the work program the Japanese authorities have to keep the level of convergence activity very high and provide accurate and complete information on progress, including any delays if they arise.. The program is ambitious but achieving its objectives is an important basis for the equivalence decision. ECが2年前の2005年4月に公表の同等性評価の内容と変わったところがない。日本の相互承認の主張はひとかけらもない。 ●2007年8月8日、ついに、日本の会計基準委員会(ASBJ)と国際会計基準審議会(IASB)は2011年6月30日までに相違を無くすことに合意(東京合意"Tokyo Agreement"と呼ぶ・・東京が合意したと言う意味で、国際会計基準審議会IASBが合意したと言う意味ではない・・IASBは国際会計基準の適用を内外の会社に認めることを求めたが日本は拒否した)した、と発表した。EUとの相違については2008年中に相違をなくす努力をし、残りの国際基準との相違については2011年6月30日までに相違を無くす約束をした。(IASBニュース ASBJニュース 参照 日本は、相変わらず適用時期が何時になるのかを明らかにしていない。インドは、2011年4月1日以降開始する事業年度から適用とし(7月24日公表)、韓国では2011年に全面適用と公表(3月15日公表)している。 このニュースは、国内では大きな反響があるが(ブログ参照)、明快でないことと気の抜けたサイダーのようで海外ではメジャーが報道していない(海外ニュース 参照)。理解し易い明快なメッセージを発信すればもっと日本の会計基準を知ってもらうチャンスがあったものと思われる。 一方、国際会計基準の財務諸表を内外の企業に認めるかどうかは金融庁が決める。(金融庁総務企画局審議官(国際担当)丸山純一氏の発言 参照) ちなみに、米国では外国企業に国際会計基準の財務諸表を認める方向にあり、一歩踏み込んで、米国企業にも国際会計基準の財務諸表を認めよとする声にSECは2007年8月7日「コンセプト・リリース」を公表し11月13日までにコメントを求めている。 日本では、三角合併とJDRの創設が外国企業について国際会計基準の財務諸表を認めざるを得なくするであろう。その時、併せて米国同様、国内企業にも公平に国際会計基準の適用を認める方向で議論されるであろう。金融庁が主張している「日本の会計基準は国際会計基準(IFRS)と同等である」が本当なら何の障害も無いはずだが、金融庁は沈黙のままである。(金融庁の姿勢は「金融庁丸山純一審議官2007年7月談(2009年7月現在、横浜税関長に転任)」参照) 8月8日、日本経団連は「今後の会計基準のコンバージェンスの進め方について」を公表したが目新しいものはない。仰天なのは、2008年にEUからIFRSに同等と認められた場合は、日本の会計基準と国際会計基準を適用した欧州企業の財務諸表を相互承認すべきであるとしていることである。中途半端な日本の会計基準と相互承認とはどう見ても驚きである。(日本の国際基準の対応は「外国会社等の我が国における開示書類に係る制度上の整備・改善について--外国会社等による「英文開示」--」参照) ●2007年9月27日28日、ASBJはIASBへ出向き、東京合意後、初めての会合を持った。しかし相互理解のみで何の進展も無かった。次回は2008年4月に開催予定とのこと。 ●2007年10月30日、東証がロンドン証取とプロ向け市場AIMについて2008年に合弁を設立と発表(ニュース)・・日本市場で国際会計基準での開示に風穴をあける可能性あり・・斉藤社長は、金融審議会(首相の諮問機関)第一部会に、新市場の創設に向けて法令改正の必要性も訴えた。「アジアの企業が東証に上場をしたがらない最大の理由は言語と会計のコストだ」と指摘して、英文の開示資料や、国際会計基準でも上場が認められる法令改正を求めた。(ニュース 参照) ○2007年10月31日、欧州議会の経済・金融問題委員会(ECON)は、日本を訪問し、日本に「最終目標は国際会計基準(IFRS)へ完全収斂することであることを明確に伝えた」としている。(EUニュース ECONニュース 翻訳文 参照) 下記11月14日の法案の議会承認の事前確認のようである。 The delegation clearly conveyed the message that the final objective must be to move fully to IFRS. ○2007年11月7日、米国会計基準審議会FASBは、SECのコンセプト・リリースに対して回答し、すべての米国上場企業に”改善された国際会計基準”で財務諸表を作成すべきとの意見を明らかにした。つまり、二つの会計基準はいらず、高品質の会計基準は世界に一つとの意見を表明したことになる。 米国に上場する外国会社の財務諸表に関しては、国際会計基準審議会(IASB)が設定した国際会計基準(IFRS)に準拠して作成している場合にのみ、米国基準への差異調整表の開示を免除することを提案している。(意見書 参照) つまり、SECは、欧州版国際会計基準を認めない姿勢を明らかにしたものでる。(「SECの姿勢はグローバルな会計基準を一つに確立するのに役立つ(2007年12月21日)」 参照) 欧州の適用した国際会計基準は、フランスの銀行家が金融商品の時価会計(IAS39号)に反対し時価会計の免除及びヘッジ会計の維持をしていることから欧州版国際会計基準となっている。(「フランスの抵抗」 「EU版IFRS(IAS39)ガイダンス」 参照) ○2007年11月14日、欧州委員会は、証券発行時の届出目論見書(prospectus)に関し、第三国企業の証券発行者に第三国の会計基準による財務諸表を認める条件として、EU議会で以下の規則改正を行った。発行市場が決まれば、流通市場の年次報告書も同様な結論となることが予測できる。 第三国の会計基準に責任ある官庁は、2011年12月31日以前に国際会計基準(IFRS)に収斂する計画を2008年6月30日までに公に約束(public commitment)し、その計画を遅延無く確実に実施すること。収斂の実施状況の評価は、各国ごとにEU委員会が行う。導入日程はカナダの国際会計基準への移行日程と同じになっている。(2007年11月14日EU議会法案付議状況 法律 3月6日のCESRが欧州委員会に提出した助言書 参照) ○2007年11月15日、SECは、米国に上場する外国会社の財務諸表について、国際会計基準審議会(IASB)が設定した国際会計基準(IFRS)に準拠して作成している場合にのみ、従来開示を求めていた米国基準への差異調整表の開示を免除することを決定した。2007年11月15日以降に終了する事業年度から適用する。日本のようなコンバージェンス(収斂)版の会計基準は免除しない。(SECプレスリリース 参照) Having considered extensive and informative public comment on its June 2007 proposal, the Commission today approved rule amendments under which financial statements from foreign private issuers in the U.S. will be accepted without reconciliation to U.S. Generally Accepted Accounting Principlesonly if they are prepared using International Financial Reporting Standards (IFRS) as issued by the International Accounting Standards Board. なお、コックス議長は、米国企業にIFRSの適用を認めるかどうかについて意見を聴取するため12月13日および15日の二日にラウンドテーブルを召集すると発表した。 米国公認会計士協会(AICPA)は、10月24日の上院公聴会で「米国の上場会社にも国際会計基準(IFRS)の適用を認めるべきである」と証言し、11月15日のSECへの提言にも同じ意見を提出している。 「IFRS:会社の正しいステップ」by米国プライスウォタークーパー(2007年10月) 2007年12月28日、SECは最終ルールを公表した。(SEC最終ルール WebCPA 参照) ・外国企業がIASBが公表した国際会計基準(IFRS)で作成した財務諸表を登録した場合は、米国会計基準への調整表の開示は不要とする。 ・外国企業がIASBが公表した国際会計基準(IFRS)以外の会計基準で作成した財務諸表は、米国会計基準への調整表の開示を要求する規定は変更しない。 ・外国企業が、欧州企業のように、欧州版国際会計基準を使用した場合は、IASBが公表したIFRSへの調整表を注記で開示する提案を受け入れる。 SECルール Regulation S-X [17 CFR Part 210] § 210.4-01 (a)(2) によれば、米国会計基準またはIASBが設定した国際会計基準(IFRS)以外の会計基準で作成した財務諸表は財務諸表の一部として差異調整表も登録する。さもなくば、米国会計基準またはIASBが公表した国際会計基準(IFRS)に準拠した財務諸表とする。 ○2007年11月27日、欧州委員会のチャーリー・マクリービーECコミッショナーは、米国企業で欧州市場で上場し米国会計基準で開示している場合、IFRSへの差異調整の開示は要求しないつもりであることを公表した。正式には、来年決定することとなる。SECの15日の決定を受けて同様の決定となる旨の意見表明である。(ニュース 参照) ●2007年12月18日、欧州証券規制委員会(CESR)は第三国(米国、日本、中国)の会計基準が同等であるかどうかの検討を開始した。日本については8月の東京合意にしたがって2011年6月末までに国際基準へ収斂する作業しており、これに従って収斂作業が行われていないという証拠がない限り、2008年6月に”同等である”旨の評価をする、としている。2005年にCESRが指摘した差異事項に関して、その差異を除去するために、2007年末までに3つの会計基準、2008年末までに更に8つの会計基準を公表することを意味している、としている。(CESRニュース コンサルテーション・ペーパー プレス・リリース 12月6日、ASBJの改定プロジェクト計画表 参照) ○2007年12月19日、欧州市場に関するコミッショナーであるチャーリーマクリービー氏は「法定監査パッケッジ」を公表した。これによると、欧州に上場している企業の監査人は欧州の監査監視機構に登録を義務つけられるが、第三国は2011年までは現行通りとする。その間に、欧州は、国際監査基準の導入状況も含まれる第三国の監査監視機構の監視状況の同等性を評価するとしている。 ●2008年1月8日、欧州委員会のチャーリー・マクリービーECコミッショナーは、欧州委員会(EC)は12月21日欧州議会が決定した「第三国の会計基準の同等性の評価メカニズム」を採用する旨公表した。第三国の会計基準に責任ある官庁は、2011年12月31日以前に国際会計基準(IFRS)に収斂する計画を2008年6月30日までに公に約束(public commitment)し、その計画を遅延無く確実に実施すること。収斂の実施状況の評価は、各国ごとに欧州委員会が行う。(ECニュース 欧州議会が決定した第三国の会計基準の同等性の評価メカニズム(EC)No.1569/2007 参照) ●2008年4月22日、KPMGは、”IFRS研究所”を創設し米国上場会社のIFRSへの変更について支援する、ことを公表した。背景には、SECが数週間後に、外国企業と同じように米国上場企業に対してもIFRSの適用を許容する案が公表されることを見越してのこととしている。 KPMG Establishes IFRS Institute to
Foster Smooth Adoption in the
●2008年9月17日、金融庁は沈黙を破り、「我が国企業会計のあり方に関する意見交換会」を開き、国際会計基準」の導入に向け、10月中旬以降に長官の諮問機関である企業会計審議会を開き、対象企業や採用方法などを議論する。2011年度以降の導入を念頭に置いたロードマップ(行程表)を早急にまとめたい考え、と報道された。(日経) 一方、1ヶ月以上もたって金融庁のサイトに7月31日に開催した第一回目の意見交換会における意見が公開されている。意見交換というより、金融庁の考えを公開しているようなもの。IFRSについて「以下のような様々な議論があった」としながら、@ロードマップの作成を含め議論を行うこと、A作成者・監査人の準備が大変、BIASCFのガバナンス改革の三つしか議論の内容はない。報道によればC外国企業が日本企業をM&A(合併買収)がし易くなると懸念しているとある。委員はいつものメンバーで金融庁の代弁者ばかりである。これで、導入について偏見のない適切な議論が出来るのであろうか。 Aに、監査人である会計士がIFRSを習得するのが大変とあるが、日本だけでなく100カ国以上の会計士が習得しているので乗り越えるのは宿命である。これを乗り越えることで100カ国以上で通用することになり日本の会計士が仕事の広がりが生れる。孤立するよりよい。チャンスは多いほど良い。 BIASCFのガバナンスは重要に違いないが、”会計基準”や会計基準の”適用時期”を決め、ASBJを実質支配している金融庁にも透明性の高いガバナンスが求められよう。 C外国企業が日本企業をM&A(合併買収)がし易くなると懸念はあっても、日本企業が”のれん”を償却しないことで外国企業を含めて合併・買収し易くなるというメリットが生れる。 いずれにしても、日本の将来に禍根を残さないよう偏見のない適切な議論をしてもらいたいものだ。 ●2008年9月19日、企業会計基準委員会(ASBJ)の西川委員長は「国際会計基準の先行導入に実験的に取り組むべきだ」との考えを示した、と報じた。(産経ニュース) ASBJのサイトには密かに「プロジェクト計画表の更新」が公表されたが、委員長の先行導入に関して公式見解が記載されておらず不明。 日本は「国際基準と同等と認められた」と喧伝しておきながら、いざIFRS適用となると、内容はかなり曖昧な部分を残しており不透明である。つまり、2009年4月から適用の場合IASBのIFRS1号では遡及して適用し2008年3月期の比較財務諸表と、2007年4月1日の貸借対照表を開示する必要がある。また、2009年4月からの四半期報告書は前年同期のIFRS適用の比較情報の開示が必要となるが、2010年3月期の年度の財務諸表からIFRSの任意適用を認める、という語句は2009年4月からの四半期報告書は含まないようである。金融庁の案はいずれにしても典型的な官僚の作文で不明瞭。IFRSを理解しているとは到底思えない。
数週間後に公開された議事録によれば、三井秀範企業開示課長が「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)(案)」を作成したとしているが、氏は法律家で「事務局としては国家主権があるだろうからやはり留保したいという気持ちはあるかもしれませんが、本当に強制適用という段階になったときに我が国の独自の状況があるためと称してこれをやってしまったら、IFRSのアドプションにならないと思うのです。この問題は、はっきりと考えるべきだと思います」とのコメントに「最高裁の判例によりますと、裁判所に最終的な判断権があるということでございますので、そこは現行の判例を踏襲しているということで、ご容赦頂ければと思います」と答えているのには違和感を覚える。 ●2009年3月13日、財務会計財団(FAF)及び財務会計基準審議会(FASB)は、SECのIFRS導入のロードマップに関して134ページに及ぶ意見書を提出した。
注1:任意適用2010年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2009年3月期と比較し、IFRS適用の2008年3月期(2008年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。 注2:任意適用2011年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2010年3月期と比較し、IFRS適用の2009年3月期(2009年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。 注3:任意適用2012年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2011年3月期と比較し、IFRS適用の2010年3月期(2010年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。 注4:任意適用2013年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2012年3月期と比較し、IFRS適用の2011年3月期(2011年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。 注5:任意適用2014年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2013年3月期と比較し、IFRS適用の2012年3月期(2012年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。 注6:任意適用2015年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2014年3月期と比較し、IFRS適用の2013年3月期(2013年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。 注7:任意適用2016年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2015年3月期と比較し、IFRS適用の2014年3月期(2014年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。 注意:米国SECに登録している会社は、現行3年間の開示が求められており、上記の国際会計基準より1年前の財務諸表が必要となる。ただしSECは国際基準に一致させるか考慮中。(PwC) 目を引くのは、連結財務諸表規則及び財務諸表等規則の改正案(未定稿)で、@企業会計基準委員会の会計基準を”一般に公正妥当な会計基準である”と認める規則改正と、A指定国際会計基準の規定を挿入しようとしていることである。 (「案を作成した金融庁総務企画局 企業開示課長 三井秀範氏の肉声」が金融庁官僚の理解の程度を知る上で最も参考になります。 「 金融商品取引法における国際会計基準のエンフォースメント」by松尾直彦元金融庁担当官、2009年9月著←金融庁(役所)の考えそのもの 参照) 松尾直彦氏は、金融庁OBの多い西村あさひ法律事務所の弁護士に、元金融庁長官五味廣文氏が顧問となっている。米国の証券弁護士を目指しているようだ。(EUとの交渉時の発言 参照) なお、元金融庁長官の五味廣文氏が、このほど新設される株式会社プライスウォーターハウスクーパース総合研究所(以下 PwC総合研究所 )の理事長に2009年10月1日付で就任することになりました(PwC ニュース 参照)とのことである。 ●2009年5月15日、米国公認会計士試験に、2011年からIFRSを出題することが承認される(国際監査基準の理解も含む)。 1年前にIFRSをCPA試験に提案していたもの。 ●2009年6月30日、金融庁は、2010年(平成22年)3月期の年度の連結財務諸表から国際会計基準による作成を容認する方針が示されたことを踏まえ、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「連結財務諸表規則」という。)及び企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」という。)等について所要の改正を行う。(金融庁内閣府令(案) 連結財務諸表規則案 財務諸表規則案 我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)(PDF:359K) 参照) 連結財務諸表規則案第1条の2で、IFRS適用の条件の一つに、外国子会社の資本金が20億円以上というのがある。担当課長は判りやすいと言っているが、何を言っているのか分からない。(金融庁企業開示課長が明かす「任意適用の4条件」参照) ●2009年8月19日、日本公認会計士協会(JICPA))は、やっとIFRSに関するウエッブを掲載し紹介し始めた。 さしずめ米国SECにおけるStaff Accounting Bulletins, SABで、規制当局SECの会計に関する見解を明らかにしている。(TABLE OF CONTENTS 参照) 2008年5月18日、米国公認会計士協会(AICPA)は、AICPAの倫理規定202条および203条のアペンディックスAを改定して、国際会計基準(IFRS)を会計基準設定主体であることを追加した。SECが外国企業にIFRSの適用を認めたことにより、米国会計士もIFRSによる財務諸表監査が必要となってきていることによる。加えて、会計士に国際会計基準の情報を提供するためにIFRS.comおよびcpa2biz.com. を立ち上げ会員を支援する、としている。(http://www.ifrs.com/ http://www.cpa2biz.com. AICPAニュース Webcpa 参照) ●2009年8月25日、SEC委員長メアリー・シャピロ女史は、ジェームス・クローカー(James Kroeker 40才)を主任会計士に任命すると公表した。氏はデロイトのパートナーで、2007年からSECの主任会計士代行となっており、前政権時代にロードマップ作成に関与していた人物。(SECニュ−ス・リリース ブルーミングバーグ 2009年3月の米議会での時価会計の議論 Kroeker's SEC role raises hopes for US adoption of global rules 参照) 因みに、デロイトは、IFRS普及に情熱を注ぎ100カ国以上の国がIFRS適用することとなった立役者の一人であるポール・パクター氏の勤務先である。 日本では、「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)(案)」を作成した金融庁の三井秀範企業開示課長に該当しよう。しかし、三井秀範課長のほうが業法まで権限を有しており、米国の主任会計士より強力な権限を持っている。日本では、会計監査が専門化していないのである。日本では、会計・監査が進化しないのは”官僚独裁”が原因である(戦前の”軍部独裁”が敗戦により民主化されたことに対比される)。担当官僚に知識経験があればもっと積極的に対応できたはず。日本も、経済大国としての資本市場を維持発展するためには欧米のように知識経験豊富な専門官を必要としている。つぎに問題とされる国際監査基準では、国際会計基準と同じ対応が議論されているのだ。金融庁は、欧米同様に複雑化した時代に対応して人材を専門化すべきであろう。 片山善博氏(キャリア官僚→鳥取県知事→慶応義塾大学教授の経歴の持ち主)によれば、「今の事務次官は省庁の権益の守護者にすぎません。国民の利益に反することばかりしている。他の幹部職員も専門知識など持っていません。得意なのは根回しと場つなぎぐらいではないですか」とのことですが、全く同感である。 7月−8月にKPMGと米国会計学会(AAA)が行った共同調査によると、500人の会計学教授の半数近くがIFRSを導入すべきであるとの回答を得たとしている。 ●2009年9月25日、20カ国・地域(G20)首脳会議は、ピッツバーグサミットで2011年6月までにIFRS収斂の完了を要請するコミュニケを公表した。(FEI Summary AICPA・IFRS ・IFRS Blog)。鳩山首相の外交デビュー、その実行性が問われることになる。 14. We call on our international accounting bodies to redouble their efforts to achieve a single set of high quality, global accounting standards within the context of their independent standard setting process, and complete their convergence project by June 2011. The International Accounting Standards Board’s (IASB) institutional framework should further enhance the involvement of various stakeholders. 日本のASBJは、IASBとFASBのコンバージェンスが加速していることから、9月2日に、IFRSコンバージェンスを前倒しで行うと公表してた。更なるコンバージョンの完成が求められよう。 ●2009年10月9日、「IFRS Returns to the Front Burner」(CFO.com 参照) ●2009年(平成21年)10月9日(金)13:01〜13:28 場所:金融庁大臣室、亀井静香内閣府特命担当大臣は記者の質問に対して以下の回答をしている。仰天発言である。 問)週刊エコノミストの濱條です。時価会計の凍結と言っていらっしゃって、ただ、6月に企業会計審議会は、この2010年3月から国際化基準の任意適用を認めると。2012年には、もう2015、16年をめどに強制適用みたいな形のことを言われていますが、これは見直しですか。 答:亀井静香内閣府特命担当大臣) そんなことはやりません。 問)では、6月の中間報告は、もう白紙という理解で良いですか。6月の中間報告は、白紙撤回ということですか。 答:亀井静香金内閣府特命担当大臣) 中間報告なんかしているの。 問)前政権でやっているのですけれども。 副大臣)いや、まだ中間報告の内容については、十分に検討した上で対応するということですから、それについて、今、ご回答は、ちょっと…。 答:亀井静香内閣府特命担当大臣) 小泉・竹中のやったものを私は踏襲する気はないのです。それを、アメリカやそこらがあてにしていったら大間違い。そうですよ。私は5月にアメリカへ行ってシーモアとかビューターだというけれども、この亀井静香をCIAが暗殺でもしない限りは、アメリカの言うとおりにはならないよと。わかりやすいでしょう。 因みに、日本の企業会計基準委員会ASBJは、半年に一回の会合である。(「IASBとのコンバージェンスプロジェクト」 「Webcast」 参照) ●2009年11月27日、欧州委員会(EC)委員長マニュエル・バロッソ氏(Jose Manuel Barroso)は、新市場担当コミッショナーにミシェル・バルニエ氏(Michel BARNIER)を選任したと発表した。任期は2014年10月31日までの4年間である。バルニエール氏は、現EUの市場担当コミッショナーであるチャーリー・マクリービー氏の後任となる。2010年1月26日に議会の承認後就任する予定。(EC速報 英語ニュース 参照) ECを調べるには⇒EC⇒A to Z ⇒Internal market⇒Businesss environment⇒Accounting⇒Auditing(第三国との関連) ●2009年12月1日、金融庁は、6月に草案を公表していたIFRSの適用規定について「改正府令等につきましては、本年12月11日(金)に公布の予定です(公布の日から施行します)が、本日、別紙のとおり、改正府令(案)等を公表します」との公表がありました。不思議な文章です。(「IFRS任意適用の条件、並行開示内容が本決まりへ」参照) ・改正内閣府令案の概要・・「特定会社」の定義が官僚の作文で規制されており判りにくいので注意が必要。要するに、金融庁は早期適用をさせたくないようだ。 ・監査対象外ながら、日本基準による要約連結財務諸表、会計方針の変更に関する説明、さらに収益など主要項目に関する日本基準とIFRSの差異について、概算額による説明が求められる(いずれも当期と前期)。翌年度以降は、差異についての概算額による説明のみが求められる。これは、日本特有の金融庁が求めている二重の平行開示である。IFRSと日本基準の二重開示で投資家(読者)は判断に迷うのではないでしょうか。少なくとも作成者・投資家にとって判り易くはない。 ・任意適用の条件を満たす単体決算の企業(連結財務諸表を作成していない企業)についても日本基準による財務諸表に加えて、「国際会計基準による財務諸表を作成することができる」と記載している。 (「並行開示を取りやめる方向で、抜本的に見直し頂きたい」by日本貿易会は当然のコメント。 12月11日、金融庁は、IFRS適用に関する改正府令等を公表。そのなかで、パブリックコメントの概要、金融庁の考え方も併せて公表した。平行開示については、かなり独断的である。「並行開示は、導入初年度における要約連結財務諸表の開示(前年度及び当年度財務諸表各1年分)に限定し、かつ、監査対象外とします」とする一方、「差異に関する事項については、日本基準を適用している会社の財務諸表との比較可能性等を考慮し、記載を求めることとします」としており金融庁がIFRSを理解しているとは思えない内容だ。 ●2010年2月8日、ブラッセルの欧州委員会(European Commission in Brussels )が招いた会計・監査の国際化に関するコンファレンスで、金融庁国際担当の河野正道監督局審議官(53)が「日本のIFRS適用の進捗状況」で「Japan’s Roadmap for IFRSs ApplicationについてVoluntary Application From: Fiscal year ending 31 March 2010Voluntary」と強調して説明している。なお、当日のビデオが公開されている。IASBのアプトン氏、SECのチーフ・アカウンタントのエアハルト女史の発表の後、27分頃金融庁の河野審議官が約8分間金融庁の考えを発表している。 ●2010年4月19日、経済産業省の企業財務委員会
企業会計検討ワーキンググループ(座長:加賀谷哲之・一橋大学大学院准教授)は、日本のIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)適用について提言する中間報告書を公表した。金融庁を中心に行われてきたIFRSを巡る議論を補う内容といえるが、これまでの議論に疑問を投げかける指摘もある。 中間報告の骨子は3つだ。 ●2011年2月に、東京証券取引所は、2011年3月期より決算短信の簡素化をしている。(決算短信様式・作成要領等 「見直しの概要」参照) IFRSの決算短信はこうなる、東証が方針を示す(2010年3月26日)⇒東証も記事も双方とも判りにくい。民僚の文章だ。 決算短信様式・作成要領等の27ページに記載のとおり「投資者ニーズを踏まえた開示が求められる事項(個別財務諸表及び注記等)」は任意開示となった。 「投資者ニーズを踏まえた開示が求められる事項」の(具体例): ・ 連結財務諸表に関する注記事項(セグメント情報、1株当たり情報、重要な後発事象を除く) ・ 個別財務諸表及び注記事項 ・ 利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当 ・ 事業等のリスク ・ 企業集団の状況 ・ 役員の異動 ・ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 ・ 経営管理上重要な指標 ・ 生産、受注及び販売の状況 ・ 設備投資、減価償却費、研究開発費の実績値・予想値 ・ 主要な連結子会社の業績の概況 等 ●2011年5月26日、米国証券取引委員会(SEC)の主席会計士事務所は、国際会計基準(IFRS)の米国会計制度への導入の仕方についての作業計画案Work Planである”Condorsement (CovergenceとEndorsementとの造語)"を公表した。IFRSを米国の会計基準に5年から7年の間にコンバージェンスすることで、コンバージェンスが完了した時には、米国会計基準に準拠することがIFRSに準拠することにもなるというもの。それ以後は、IFRSの新規設定や改変については承認(Endorsement)する。そのときのFASBの役割は、FASBは存続しFASBがIFRS設定に参加するものとなっている。SECは、この案について7月末までにコメントを求めている。SECは2011年末までにIFRS導入の意思表示することを表明しており、SECスタッフのこの公表は注目されている。(ジャーナル・オブ・アカンタンシー 参照) ●2011年6月30日、金融庁、金融担当大臣 自見庄三郎(国民新党)は、企業会計審議会の開催あいさつで、@IFRSの適用に関し3年としていた準備期間を、5月26日のSECの作業計画案と同様5〜7年の準備期間を置く(2015年3月期の強制適用はない)、A2011年3月期までとしていた米国会計基準の適用期限を撤廃するとしている。(「2年前に逆戻りしたIFRS議論ー大幅増員した審議会で結論は?」 「企業会計審議会総会」 「企業会計審議会企画調整部会」 「自見大臣のIFRS適用の見解(英語ニュース )」 「IFRS推進派、反対派」 「IFRSはこうなる」by田中弘氏・・自見氏を称賛している。 参照) 2011年6月30日の企業会計審議会は、IFRS反対意見のオンパレードである。真っ先に発言したのが、三菱電機常任顧問佐藤行弘氏(経済産業省で2010年4月19日「企業財務委員会」中間報告を公表した人)。元国税庁長官で、現・中小企業の会計・税務ソフト会社TKC全国会会長、大塚ホールディング役員、労働組合の連合、反対学者など、金融庁が管轄している上場会社の投資家保護の視点から逸脱したような意見ばかりが突出しており、かつ、過去の経緯を無視した意見を誘導した会議となっておりフェア―とは言えない。委員を選定した事務局担当者の見識を疑う。なお、会長は、昨年審議を無視して報告書をまとめず「会長発言」を公表した人。慎重派&賛成派の意見 (茶番) 2013年5月28日、企業会計審議会は、J−IFRSの創設について議論になり、斎藤静樹委員は「日本の資本市場に対する国際的な信認を高めるうえで最優先の課題は、日本基準をどうやって国際化していくかということであって、結果として日本基準を現状で凍結して置いてきぼりにするような方針はとるべきではない。もちろん、そんなことはさせないのであって、日本基準もどんどん国際化しますよと言うのは簡単ですけれども、私は、金融庁にもASBJにも、それを進めるだけのリーダーシップがあるとは思っていないです。それが私の意見です」と言っており、一方、ASBJの西川委員長は、6月12日にこれに反論して「そもそも、エンドースメントIFRSを支持される理由のところに、ASBJにその策定能力があるということを前提にされているようなところが聞かれますので、私どもは、もちろん、エンドースメントの作業をしたことはないのですけれども、これまでの基準開発であるとか、IASBに対する意見発信をしてきた作業と関連して、過去に2回ほど、エンドースメントの前提となるような日本基準とIFRSの差異を分析して、それに軽重をつけるような作業を過去2回ほど行っております」と言ってやる気十分あるというニュアンスである。ASBJの西川発言は、金融庁の下請けとなった感がある。元ASBJ委員長の斎藤静樹氏は、J−IFRSにどんな意味があるのか疑問を呈している。 ●2012年2月8日フーガーホーストIASB議長来日し、金融庁の自見庄三郎担当大臣と会見した。フーガーホースト議長によると自見大臣は、「日本がIFRSから離れていくような解釈はしないでほしい。日本のコミットは変わっていない。IASBとの緊密な関係は続いている」などと述べ、フーガーホースト議長は「日本にとってのフルアドプションは真剣な選択肢であることに変わらない」との印象を受けたという。(IFRSフォーラム Itpro 参照) ●2013年1月24日、オバマ大統領は、SEC委員長にメアリー・ジョー・ホワイト女史(Mary Jo White)を指名した。SEC委員長に検事出身のホワイト氏を指名。ニューヨークの法律事務所デベボイス・アンド・プリンプトン のパートナーで、金融の政策決定や証券業界に染まった弁護士らに運営される傾向にあったSECに新風を吹き込むことになりそうだ。ただ、この分野でホワイト氏の経験が比較的少ないことと、バンク・オブ・アメリカ(BOA)のケン・ルイス前最高経営責任者(CEO)をはじめとする法人顧客の弁護を担当してきた職歴と合わせて、一部の議員や投資家の支援者から反発を招く可能性がある。 (ブルームバーグ メアリー・ジョー・ホワイト・小さな巨人)(White Houseニュース ) ○2013年6月6日、IFRS財団(日本公認会計士協会が紹介)は、IFRSの国際的なアドプションに向けた進展評価に関する重要なイニシアチブの第一段階を完了しました。G20は、高品質な財務報告基準の単一のセットの国際的なアドプションを求めました。当該イニシアチブは、利害関係者が、各国のG20の目標達成に向けた進展を分析できるような重要な情報源を提供することを意図しています。
@のれんの償却で毎年償却する日本の方法は、償却費の負担が長期に利益を圧迫して不利になり、積極的に大型企業買収を進める企業にとっては不利となることは立証されている。 不思議なのは、IFRSは、のれんの耐用年数が合理的に見積れないので減損会計としたのに、日本基準は、20年以内の耐用年数で償却するとしている。耐用年数を合理的に見積もれるとでもいうのだろうか? Aその他の包括利益の会計処理で、日本のリサイクリング処理する方法は、純資産が不変であり、企業実態に変化はない。つまり株価に中立である。 そもそも、この修正国際基準なるものは、(a)ASBJの行政(金融庁)からの独立性を失った証拠となり、(b)「のれんの償却」は特定の学者の理論であることは知られている。ASBJの委員は、委員の構成も含めて、会計基準設定にふさわしい独立性を保持した委員とは到底思えない。ASBJの創設当時の「我が国の会計基準設定主体のあり方について」、「企業会計基準設定主体のあり方について」をもう一度振り返ってみる必要があるようだ。さもなくばASBJは企業会計審議会の委員のように御用学者の集まりと変わらないことになる。信頼を失墜することは確かだ。 ●2014年12月4日、日本公認会計士協会の研修会で、元米国財務会計基準審議会(FASB)の議長ボブ・ハーツ(Robert H Herz)氏の講演「国際的コンバージェンスと米国におけるIFRS」と題して説明があった。氏は国際会計基準審議会(IASB)の創設時のボードメンバーであった。米国でのIFRSの導入に積極的であった。しかし、現状は、全くの不透明になった。そのいきさつを話してくれた。IASBとFASBとの共同作業による基準の統一は、収益認識の基準や公正価値会計は一致したが、金融商品、リース会計、保険契約などは一致を見ていないで、共同作業は解消した。 米国では、株式市場は世界第一位で健在のところ、国内企業の上場会社の大半が国際的な会社ではないことから会計基準をIFRSに統一する意味がないという声が多いということだ。世界に米国基準とIFRSの二つがあってもよいという意見が多いそうだ。また、リーマンショックから、開示基準である会計基準以外の重要な懸案があり、会計基準の問題は優先順位を失ってしまった。そのことから、今後、米国がIFRSの導入の可能性は低いということだ。日本のように選択適用を認めることはあっても・・・・ ●2014年12月15日、金融庁・企業会計審議会・会計部会は、第1回の会計部会を開催した、そうだ。(ニュース)その中で、委員の一人である住友理工(旧 東海ゴム工業)の西村義明社長は「JMISを日本で積極的に推進すべき」とし、「2015年からのIFRS任意適用に向けて準備を進めているが、JMISが制度化されたら適用を考えていきたい」と語った、そうだ。住友理工の財務で公認会計士の棚橋潤哉氏がサポートすることになるのでしょう。 また別のニュースでは、三井物産の岡田譲治副社長ら21人が委員を務める。岡田副社長はIFRSを採用する企業を増やすため、米証券取引委員会(SEC)に登録していない企業にも米会計基準の適用を認める特例の見直しを提案した、としているが、当局が米国会計基準の財務諸表の有価証券報告書を審査できるとでも思っているのでしょうか。この部会の委員は、不思議な人ばかりで、奇妙な委員会である。記事の書き方が悪いのか? 「有価証券報告書等の業務」には、(3)有価証券報告書等開示書類の受理・審査があり、必要に応じて提出者に対して訂正指示等の措置を講じる、とあります。証券取引法に基づき権限を委任された各財務局(関東財務局理財部統括証券監査官等)が提出書類の受理/審査を行う、としています。 ●2015年6月29日、企業会計基準委員会は国際会計基準の一部を日本仕様に変更する修正国際基準(JMIS)の導入を決議した。これにより、日本基準、米国基準、IFRSに続く第4の会計ルールとなる。金融庁の手続きを経て2016年3月期から導入される。ただし、修正国際基準の採用が実際に普及するか不透明としている。(日経) いずれにしても金融庁の権限誇示のためである
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