退院してから、半年ぐらいのこと。リハ棟の吉田婦長と直接、話をすべく電話をかけた。メモの必要があったので、出掛け前のお袋を拘束している。こんな 時は、メモ機能があればいいと思う。
コールの後、交換台が出る。「関東労災病院です。」
「え~っと。リ・ハ・ビ・リ病棟をお願いします。」ラ行などは、スピーカー ホンだと聞き取りにくいところがあるので口調をハッキリと言う。
「リハ棟ですね。」ここの女性交換手は、必ず復唱してくれる。
「はい、リハ棟です。」知らない声。新人だろうか。
「吉田婦長、おられますか。」
「どちら様でしょうか。」
「内山と申しますが…。」
「ハイ、もしもし。お電話代わりました。」
「お早うございます。あの~っ。半年前まで、頚損でお世話になった内山です けれども。」
「わ・かっ・てる・わ・よ。なぁに?」
「その内山ですが、え~っとですね。僕が退院まで使ってたエァー・マットあ りますよね。あれの商品名とメーカーの名前と電話番号、教えて欲しいんですけ ど。」
「あら、あなた使ってたっけ?」
「ほら、退院したら、昼間は家族のものが誰も居なくなるから、病院にいる間に、エァー・マットを試しておこうっていうことで、使ってたでしょう。」
「どんなやっだったけ?」
「ほら、エァーの出てくるやつ。」
「あ、あ~っ。わかったわ。ちょっと待ってて。」
「え~っとね。いいかしら。」
「はい。お袋が横で控えてますから。」
「サンケン・マットね。メーカーは三和化研。電話番号はっ、工場になってるけど、0720-49-7123ね。住所は、いい?」
「えぇっ。かければわかりますから。じゃ、どうも。電話してみます。」
「じゃ、元気でね。」
「はっ、どうも失礼します。」
電話を切って、三和化研にかけてみる。
「毎度、有難うございます。三和化研工業です。」
「え~っと。そちらのエァー・マット。サンケン・マットですか。それを購入したいんだけど、送ってくれるのかな?」
「ご注文ですね。どちらから、お電話をおかけですか。」
「?。東京ですけど…。」
「こちらから、かけ直しますので、お電話番号を…。」
「えっ、あっ、はい。東京03-751-8885です。内山と申します。」
折り返し、電話がかかってきた。
「それで、ですね。おからだの、身体の状況の方は、どういったご様子ですか」
「?」「!。今現在、床ずれはないんですけど、床ずれ防止用に欲しいと思っ て…。」
「はい、はい。」
「…。実は、他のメーカーのものを使っていたんですけど、それがとんでもないやつで、塩化ビニール製で二枚を熱加工であわせたものなんですけど、介護者がベッド上でのケァーする時、膝をついてやってたのが悪かったんだか、合わせた部分が避けるように破れちゃいまして、3ヶ月たつと破れちゃうんですよね。」
「最初は、不良品かなって思って、クレームをつけて交換してもらったんですけ ど、交換したやつも3ヶ月たったらやっぱり破れたんですよね。」
「でもエァー ・ マットがないと、うちは昼間は誰も居ないんで困るんですよね。」
「…。それ で、病院で使ってたのが丈夫で良かったなと思って、電話番号を聞いて、電話したわけなんです。」
「病院は、どちらの?」
「関東労災です。」
「川崎の?」
「えぇ。」
「では、関東労災病院でお聞きになって…。」
「はい。」
「わかりました。横と縦。どちらを…。」
「はっ?」
使っていたのは、多分縦と呼んでいるタイプだが、横はしらない。
「空気の層を分ける溝が、縦型のものと横型のものがありましてベッドを起こす方は、横型をお薦めしていますが…。」
病院では、ギャッヂ・アップすると腰がズレたのを思いだした。
「横の方をお願いします。」
「はい。承りました。お値段は、¥×××××のところを¥×××××をさせて頂きます。」!大阪的な商売の仕方。始めてだ。
「宅配便で、送らせて頂きますので明日お届きになると思います。」
「支払方法は?」
「振込用紙を一緒に送らさせて頂きますので、銀行振込みでお支払い下さい。」
「わかりました。じゃあ、宜しくお願いします。」
「宜しくどうぞ。お大事に…。」
「…。」
「床ずれ」頚椎損傷は、高位になると寝返りがうてない。C4レベルだと、首の筋力をつかってわずかに上半身の位置を左右にずらすのみである。
できやすい箇所は、尾てい骨、ケツペタ、かかとなどの出はっているところ。背中はまだしも下半身に床ずれのできる心配がある。
首を牽引している時は、様子がまた違う。症例の場合、後頭部、肩甲骨、背骨の沿ったところにできた。意識不明や特に重りを重く(8~9Kg)しなければ ならならない事情があったので、床ずれができやすかったのかもしれない。
C4の家庭復帰を考えると、床ずれの対応と防止の策が必要になる。
入院中は、主に体交(体位交換)を3時間ごとにやって、床ずれを作らないようにする。朝も、昼も、夜も、深夜も、である。
しかし、これでは家庭復帰は難しい。限られた期間内ならまだしも、ズーット となるとこれはいけない。短いタイム・リミットのために介護者を終始拘束する のは、不自然である。
エァー・マットを利用すると、その不自然さからでる負担がかなり改善される。
症例の場合、床ずれができやすくないのかもしれないが、三和化研のサンケン ・ マットを使ってからベッドでの床すれの心配はなくなった。
体交しなくていいのである。つまり、深夜の体交もいらない。タイム・リミッ トによる拘束もとけるのである。
唯一、冬場寒いという難も、エアー・マットの下に電気敷毛布を敷くことで解決している。エアー・マットの空気の層ごと暖めるのである。マットの下である から、尿失禁をしても電気敷毛布への影響はない。メモリは微弱である。
トイレの心配も、床ずれの心配もない。
これに、ECSを加えて電話やインターホンの応対。テレビをつけたり消した りでき、思いのままにチャンネルを変えられたら、…。クーラーやクリーン・ヒ ―ターをいれて、室内温度をも管理できたら、…。
家族は、もう専従介護者ではなく、外に出て働き手になることができる。
朝、何やら寒くて眼が覚める。オデコがチョット痛い。随分、冷え込むようになって来た。
「何時だろう。」首を左右に振り、モガクようにアゴを毛布から出す。
「ストロー、ストローは、っと。」
室内は、暗い。ナイト・カーテンが閉まっている。
ECSのセンサーに差し込んであるストローを、舌先で探る。
「ツツツツツツツ、ツツツツツツツ、ピッ。」カチン。暖房(ch⑭)をつけてみる。
ミツビシのクリーンヒーター・エァコンだ。調子はあまり良くない。
燃焼確認ランプがついても、ファンが回ってくれない。2,3度、電源を入れ直すと口火が十分にあったまって、本格的に暖房が入るようだ。
朝食までもう一度眠り直す。
「RRRRR! RRRRR!」 電話のコール音。朝の電話はたいていお袋の仕事だ。
二階で、人が電話口に近づいて受話器を取る気配が感じられる。
予想に反して、インターホンからお袋の声が飛び出してくる。
「幸久、ミツビシさんから電話よ。」
ECSを使ってコール・キャッチ(ch③)する。一階と二階は、親子になっている。
「ツツツ、ピッ、ピッ。」二回の親器から回線をまわすと、動作が一つ多い。
「もしもし、お電話代わりました。」
「はい、ミツビシ・サービスですが、その後、暖房の加減ははいかがですか。」
「やっぱり、二、三回電源を入れ直さないとダメみたい何ですけど…。」
「わかりました。では、今日の午前中にもう一度お伺いします。」
「よろしく。お待ちしています。」
待機時間を経過していない。緑のランプは、まだ3ch目のシンボル・マークにある。
そのまま、「ピッ。」電話を切る。
「ツツツツツツツ、ツツツツツ、ピッ。」スタート位置に戻る。
「ツ、ピッ。」「Been! Veen!」ワン・コール。インターホンで
二階に呼び出す。(ch①)
「なあに?」とお袋。
「ミツビシ、今日の午前中のうちに来るって、…。」事後報告の後、また寝る。
午前10:00。導尿をして朝食を取る。電動椅子の日もそうである。
「ン、ガーツ」と威勢の良い機械音。
「カッコン」と停止音。
「キーッ、キーッ」内側に続いて外側の扉の開く音。
最後に、アコーディオン・カーテンが開く。
お袋の登場だ。
ナイト・カーテンが開かれ、遮られていた朝日が差し込む。
合わせて、ECSで室内の照明(Ch⑬)をつける。
ESCは、本体とセンサーとディスプレイで構成されている。
ディスプレイは、縦横とも、20Cmの正方形で、厚みは4Cm程度。
中心にインターホンのスピーカー(玄関子器との通話用)が内臓され、
その回りに赤と緑の2列のランプ群が円状に配置されている。
内側には15コの赤色のランプ。
外側には、緑色のランプがそれぞれにとスタート・ランプが配置されている。
旅行でもしない限り、メイン・スイッチは入れっぱなし。コンセントは抜いたことがない。
最初は、スタート・ランプ(緑)が点灯している。主電源確認ランプでもある。
センサーに1回息を吹き込むたびに、電子音とともに表示板の緑色のランプの「点灯」が1コづつ移動する。
13番目のchにルーム・ライトのシンボル・マークが張ってある。ここでランプの移動を止め、続いて息を吸うと内側の赤いランプが点灯し、室内照明がつく。
これがスキャニングだ。
「ツツツツツツツ、ツツツツツツ、ピッ」ストッと独特の音。照明のアダプター、ベッド真横の壁に入力信号が伝わる。
「チカチカ」とグローランプ。
「テカ、テカッ、パッ。」天井の中央の蛍光燈が2本つく。
お袋の手が、紐のスイッチにかかって1回、2回、3回、引く。
蛍光灯が4本全部つく。
照明(ch⑬)に次いでTV(ch④)をつける。
ランプの待機時間(微調整可)は、約90秒たつと緑のランプの「点灯」は、自動的にスタート・ランプに戻る。
ランプは、まだ(ch⑬)で待機している。
ストローを3回吹いて、スタート・ランプまでいったん戻してから再度スキャンをする。
ストローを4回吹いて1回吸う。TVの電源(ch④)がはいる。
画面は砂嵐。
1回吹いて1回吸う。ビデオに電源(ch⑤)がはいる。
ビデオのTVチュナーのチャンネル数が表示される。例えば、「4」チャンネル。
再度、1回吹いて1回吸う。TV/VTRの切り替え(ch⑤)が働く。
ビデオ・チュナーを通して、TVの画面に「4」チャンネル。
三度、1回吹いて2回吸う。チャンネル順送り(ch⑦)。
ビデオのTVチュナーのチャンネル表示が「4」から「5」。「5」から「6」へとかわる。
言葉にすると面倒くさく感じるが、やってみるとかなりスピーディである。
「ツ、ツ、ツ、ツ、ピツ」 テレビ電源ON (ch④)
「ツ、ピツ」 ビデオ電源ON (ch⑤)
「ツ、ピッ」 CTRとTVの切り替え (ch⑥)
「ツ、ピッ、ピッ」 チャンネル順送り (ch⑦)
随意性は、高い。
TBSの番組枠は、ドラマの再放送である。導尿後、TVを観ながら食事を取るのが日課。
食事は、一日に二度、朝10時過ぎと夜8時である。入院中は、キチンと3度取っていたが、3度の食事」は多いと思っていた。
午前10時に朝食をとって、正午に昼食はいらない。苦労して3度の食事をチビチビを取るより、2度の食を食欲いっぱい食べたほうがいい。
食事の内容に、欲はない。飯に味噌汁。漬物に生卵があればいい。
「ご飯よ。ベッド起こしなさい」とお袋。
表示板に目をやって、緑のランプが点灯位置を確認しながら、センサーの先についているストローを口に加える。
断続的に「プッ、プッ」と息を吹き込む。緑のランプがベッドを上げ(ch⑩)のシンボル・マークのところへ来るまでスキャンする。
ランプの移動は、吹き続けてマニュアル・オート・スキャンさせることもできる。
マニュアル・オート・スキャンは、もともと吸気で使うもの。
これを活かすには、『吸気』で『選択』入力方式を設定しなければならない。
症例のように『呼気』で『選択』でも、マニュアル・オート・スキャンはできるが、腹筋のない頚椎には辛い。
緑色のランプがベッド上げ(ch⑩)まできたら、今度はストローを吸う。
「カチッ」というリレー音と赤いランプの点灯。
それとともに、「ウイーン」とモータ音。
ベッドが、あがる。赤いランプが断続的に点灯する。
ベッドは、モーメンタリにチューニングしてあるので、ストローを吸い続けている間、ベッドは上がり続ける。
口で吸いながら、息を時折鼻で抜くのはテクニックだ。
赤いランプは、対応機器の作動を意味している。
ECSと周辺機器のチューニングの仕方には、二通りある。
オルターネイト・リクエスト(有電圧)。
吸う毎にONとOFFがいれ替わる(反転する)。
事故保持回路によって電気的にロックする。
症例の場合、テレビのコンセント・タイプのアダプターや室内照明と自動扉のアダプターがこれに類する。
モーメンタリー・リクエスト(無電圧)。
吸っている間だけ、ON(作動)する。アンチ・ロックである。
電動ベッドはこのモーメンタリーにチューニングしなければならない。
ほかに、ビデオのリモコンや福祉電話「ふれあい」インターホンの呼び出し信号「コール」そうである。
補足、「レシーブ」から「トーク」への切り替えは、オルターネイト。
ベッドは40度ぐらいまで。
吸うのを止めると「カチッ」リレー音。
ベッドは止まる。
いっぱいまであげるのがよいが、視線とテレビの間に人影がはいるのでつい途中で止めてしまう。
そして、食事。・・・と、思いきや。
「Been! Veen! Been! Veen!」ツー・コール。
玄関子器からの呼び出し信号だ。きっと、ミツビシだろう。
二階の親機では、ワン・コールかツー・コールを聞き取ることで、誰か来たのかそれとも症例が呼んでいるのか予めわかる。
ワン・コールは、一階室内子機から2階親機への呼び出し信号。モーメンタリーにチューニング。信号は、瞬時に親機に伝わればいい。「コール」の後、二階で親機の受信機を取ると室内子機と通話状態になる。
玄関子機と一階の室内で話すには、ECS内臓のインターホン機能を使う。評議会仕様の中でも、これがアイホンの特性である。
症例の場合、インターホン受けが(ch②)にチューニングしてある。オルターネイトである。
来訪者が玄関子機を押すと「コール」の信号が発せられ、表示板のスピーカーから呼び出し音がなる。
コール音から、45秒以内にECSでこれをキャッチする。「レシーブ」状態から「トーク」に切り替わって通話できる。マイクは、センサーの台座に内臓されている。感度は、悪くない。
「ツ、ツ、ピッ」赤いランプが点灯。「トーク」状態に切り替わる。
「はい、どなたですか。」
「ミツビシ・サービスです。暖房の調整に来ました。」
「ちょっと、待って下さい。今、ドアを開けますから・・・。」
ECSで自動扉(ch⑫)の電源を入れ、開くのを待つ。7、8秒たって、独自な音をたてながらドアが開く。
この間と同じ人。顔だけ確認して、すぐに調整をお願いした。
閉じるのを待って自動扉の電源を切る。
補足、ミツビシは販売店を通さなくてもメンテナンス・サービスが受けられるそうだ。パーツごとに保障期間が違うと言っていた。
しばらくして、サービス・マンの声。
振り向くと、目がこちらを覗いている。顔の半分ぐらい、自動扉が開いている。
「では、この間と違うところを調整してみましたので、またしばらく使ってみてください。」
「はい。じゃあ、おかしかったらまた電話します。ご苦労様。」
「では、失礼します。」
重たい自動扉を「手」で閉めている。
よくあることだ。
食事は、以前からあまり重いものを好まない。頚損になってからではない。朝食は、全介助。車椅子の日の晩飯は、MASを使って半介助で食べるように努めていたが、バルンになって以後、ガスが抜けにくくなって、夕飯も全介助となった。
MAS BFO-MASボール・ベアリング・フィーダー モビル・アーム・サポート 上肢補装具。夕飯を食べるための自助具として、利用していた。セットするのに、手間がかかる。
朝は車椅子に乗れても、MASをセットするまでの時間はないし、まして終日ベッドの日にセットできる道理はない。
さて、飯の介助の仕方。以外と解説できる。介助は、「アーン」とやる訳だが、これが結構、恥ずかしくもあり難しい。「アーン」というのは、大体相場が決まっている。ベビーでもなければ、恋人通しでもない。いい若い者が、母親に、・・・。やはり違和感がある。が、背に腹は変えられない。腹がすきゃア、飯は食う。
食介は、ハシの使い方に慣れるまで、角度が気になりとまどう。
普通、食事というのは「膳」が胸より下にある。
ハシの働きは、「下から上へ」、チョッとうつ向き加減になって、口許へ運ばれる。人間の手の仕組みは、自分の口に物を入れやすくできているが、対面で介助すると手の仕組みが反対になる。
対面で、やや上方から口許に食べ物が運ばれる。介助者の手の動きが反対だから、自然と「口の開き方」が変わってくる。
普通、人が食べ物を口に運ぶと、首の傾きはあまり変わらないで、「下アゴ」が下へ開く。症例の場合、介助の手がやや上から出てくる為、「アゴ」を前に「クイッ」と突き出しながら、口を「カパッ」と開ける。気持ちとしては、「下アゴ」を動かさないようにして、頭をチョッと後ろに倒すような感じである。この動作が身についてしまった。
ヒナが親鳥からエサを貰う時、首を前に突き出してクチバシを上に向かって開く。わかるような気がする。
更に、介助者の立つ位置によっては、ハシが横から出てくることもある。横を向くという動作が、これに加わる。
解説が過ぎると、食事の雰囲気ではない。が、食欲を満たす為に、こなしてしまう。「慣れ」である。後は、コンビネーションの問題だ。
ハシは、噛まないように「縦並び」ではなく「横並び」に口許にいれてもらう。縦で、噛んでハシを折ってしまうことがある。この衝撃は、すごい。
頚損の介助はハタから見ると、介助者が一方的に介助してるように見えるが、そうでもない。頚損の立場から言わせて貰うと、頚損者も介助者に「合わせている面」が多分にある。着脱なんかもそうだ。
食介もまた然り。慣れ合いとは、全く違うものを意味するが、介助者が代わると勝手がマチマチである。自分のペースで食べないと食べた「気」がしない。
症例のペースは、御飯とおかずを早目にかっこむ。知らない人は、「急がなくてもいいから」と言ってくれるが、そうじゃない。昔からそうなのである。味噌汁を、飯の途中で飲むことはしない。これも昔からだが、頚損になってからは尚更。
飯の途中で味噌汁を口にすると、空気も一緒に入ってしまう。ゲップが出ればいいが、腹筋がきかないから簡単にはいかない。一気に、御飯を食べて最後に味噌汁。味噌汁を飲む前に、もう一度スキャンして、ベッドを全部上げる。
いっぱいまで上がると、ベッドのモーターは止まる。味噌汁を飲みほし、続いて生卵を飲んだら朝食は終わり。ベッドを下げる。
「プッ、プッ、・・・」ストローを抜いて、緑のランプをベッド下げ(ch⑪)に合わせる。シンボル・マークに合ったら、ストローを吸う。
「カチッ」とリレーが入ってベッドが下がる。下がりきるとベッドのモーターは止まる。上がりきっても下がりきっても、吸い続けている間は、ディスプレイの赤いランプは継続的に点灯する。
2、3度、断続的に息を吸って、下がりきったことを再度、確認する。クセと言ってもいい。
食後の薬は30分を待たずにすぐ飲んでしまう。「胃薬」にNSを四錠と、膀胱の菌を押さえる「尿の薬」にウロサイダーを3錠。これを一気に飲んでしまう。
たまに何錠か重なることがあって、そのまま飲んでしまうと、咽に引っ掛かってパニックになることがある。
苦しくて、もがいて見せると介助者の方が驚いてしまう。そんな時はあせらずに、首をチュイと突き出して水を要求する。
ビックリした介助者に、ポーズを取ったり、目で水を要求しても、ストローは口に届かない。咽に詰まっても、平然とみせるのがポイント。
薬を飲んだら、一服。マイルド・セブン。フィルターを噛んで、パカパカ吸ってしまう。以前はセブン・スターだったが、さすがに頚損をやってからは、1ランク落とした。単に加えている時は、下顎をやや前に突き出し、フィルターを下の前歯と下唇で挟む。
灰を落とす時は、この状態のまま上下の唇で強く押さえながら、下の前歯を外しながら、フィルターをその歯ではじく。
はじかれた煙草の先端は、目の前に出された灰皿に、当たって灰が落ちる。「技」である。ポイする時は、安全のため取ってもらう。
一服の後、オリジナル集尿器の装着。ベッドの日は、長い「ホース」を使う。コンバーチブルだから、電動車椅子の日は、短い「ホース」に差し替えてもよいし、別個に作ってもいい。装着が終わったら、掛け布団を整える。お袋は、2階に上がって仕事に出る準備をする。
午前10:30
「それじゃあ、行ってくるよ。」
「行ってらっしゃい。」
軽く言葉を交わし、お袋が仕事に出る。他の皆も、もうとっくに出ているハズ。一人で留守番である。
時と場合によるが、ベッドの日は、よく前日に録っておいたものを観る。
「ツツツツツツツ、ツ、ピッ」スタッ。5秒でビデオの再生がかかる・・・。
ECSのメリットは、「スグ」に「自分でできる」ということ。特に、ビデオの操作はスピーディーである。リズムがいい。
「ツ、ツ、ツ、ツ、ピッ」 テレビ電源ON (ch④)
「ツ、ピッ」 ビデオ電源ON (ch⑤)
「ツ、ピッ」 VTRとTVの切り替え(ch⑥)
「ツ、ツ、ピッ」 早送り (ch⑧)
「カーツ」「カッ」と頭出し。
「ツ、ピッ」 再生 (ch⑨)
ビデオはリモコンの改造が難しいが、ECSにチューニングすることを薦める。ほぼ一日中、家に居るしテレビもつけっぱなしが多いが、ビデオにとっておいて、後でまた見るのも中々面白い。
特に、特定の番組を毎週欠かさず録画(ch⑮)するようになってから、その曜日が待ち遠しくもあり、一週間が早くも感じるようになった。
チューニング対応数には、限界」(15ch)がある。
改造するといっても、すべての操作をリモコンでやる訳にはいかない。
症例のリモコンは、スイッチが11コある。
電源、TV/VTR切替。チャンネル順送り、チャンネル逆送り。
早送り、巻き戻し。再生、停止。一時停止、コマ送り。録画。
太い強調文字が、チューニングされているスイッチ。「停止」の代りに「電源」を切って、代替している。「一時停止」が利くとCMカットなど「録画」のツナギ目がピッタリといくが、それはガマンする。
「巻き戻し」は、ビデオ・デッキの特性がカバーしている、「早送り」で巻き上がるとオート・リターンがかかって自動的に「巻き戻し」がかかる。
VHSデッキの120分ビデオ・テープは、最初から最後まで巻き上がるまで、約5分。最後から最初まで、巻き戻し終わるまで、約4分半。
巻き戻った状態で、120秒間巻き戻すと、ほとんどキッカリ2時間分録れるところで止まる。これが結構、目安になる。
正午。「笑ってる場合ですよ」バラエティー番組である。特に、トーク、コーナーのテレホン・ショッキングが、いい。
12時50分。最後のコーナーが終わった頃、日本ウィル・チェアーに電話をかけてみる。
昨日、電動車椅子にトラブルが起こった。日本ウィル・チェアーは、車椅子の製造メーカーだが、電動車椅子メーカーの販売代理店でもある。
電話のECSチューニングchは3ch目。呼気センサーを軽く加え、素早く3回息を吹き込む。「プッ、プッ、プッ。」緑色のランプの点灯が電話のシンボル・マークに移乗する。
ここで息を吸うと、瞬時に赤いランプが点滅する。モーメンタリー・リクエスト。それと同時に福祉電話「ふれあい」のダイヤリング・オート・スキャンがリレーを始める。
福祉電話「ふれあい」は受話器が左側、ダイヤル回線だが、外観はプッシュ・ボタンである。ダイヤル・ボタンは、上段の左から「1」、「2」、「3」。一段下がって「4」、「5」、「6」。もう一段下がって「7」、「8」、「9」。下段は、「A/C」、「0」、
「フックボタン」。
スキャンのランプが、ダイヤル・ボタンの上部左についている。色は、「フック・ボタン」と「A/C」が緑色で、後の数字は赤色。
ダイヤリング・オート・スキャンは、「フックボタン」から「0」を飛び越えて「A/C」へ移動し、それから「0」へ移動し、上段へ上がって「1」から順に「9」へとリレーする。
ランプのついてる時に、タイミングを計って、センサーを吸ってやる。「ピッ」というクリック音と伴に、ECSの赤色のランプが点滅する。同時に、プッシュ・ボタンの更に上にある液晶ディスプレイに、スキャンで拾った番号が表示される。
慣れると速い。「ツ、ツ、ツ、ピッ。」スキャンが始まる。
最下段 | 最上段 | 上二段 | 上三段 〔ディスプレイ〕
「F」「A/C」「0」「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」 [ 04]
「F」「A/C」「0」「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」 [ 04246]
「F」「A/C」「0」「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」 [ 042463]
「F」「A/C」「0」「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」 [ 04246315]
「F」「A/C」「0」「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」 [ 0424631511]
「F」「A/C」「0」「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」 [ 0424631511]
最後に、受話器マークのフック・ボタンをスキャンするとダイヤリングOK.フック・ボタンのランプは、点灯したままになる。
「・・・。」
「はいッ。」この返事は、一つ前のものよりはっきり大きく聞こえた。
「もしもし、内山?」
「ンッ?」
「今晩、遅くなってもいいか?」
「えっ?いいけど。今日、来れんの?」
「速い方がいいだろう。」
「オーッ、助かるぜ。」
「10時回るぐらいに行くヨ。」
「オーッ、頼む。待ってるぜ。」「ホイジャ。」
「ホーイ。」
「・・・。」
やっと中嶋らしいノリ。
仕事だから、それらしく振舞うのだろうが、最後にはチラッと軽いノリが出てしまうのが中嶋らしい。
「ツ、ツ、ツ、ピッ。」「パショッ」フックボタンのランプが消え、電話が切れる。
一安心。「フーッ」と一息つく。テレビの視聴にふけこむ。
テレビをつけてボーッとしてると、インターホンのコール。
「Been Veen! Been Veen!」ツー・コール。誰か来た。
「ツ、ツ、ピッ。」オルターネイト、表示版の赤いランプが点灯する。「コール」から「トーク」に切り替わる。
「はい、どなた?」
「宅配便です。」
「チョット、待って下さい。」
「ピッ。」そのままインターホンを切って、自動扉を開けるべくシンボル・マークまで緑のランプの点灯を移動させる。
「ツツツツツツツ、ツツツ、ピッ。」自動扉の電源がはいる。
ちょっとして、「ガーツ。」扉が開く。
テラオカのオート・ドアは、温度の変化をセンサーがキャッチしてひらくとシステム。普段は、無造作に開いても困るので電源を切ってある。電源を入れると基本になる温度計を計算するが、それには8秒かかる。
開いたところで、「ピッ。」自動扉の電源を切る。
宅配のサービス・マンが両手で小荷物を抱えている。
「どこへ・・・。」
「あっ、そこに置いちゃって下さい。どっからですか?」
「え~っと。三和か・・・。」
「あっ、はい。いいです。『認め』いります?」
「はい。」
「そこ、左を向いて、棚の一番下。黒いやつ。」
サービス・マンは、伝票に『認め』を捺印。元に戻して、「有難うございました。」と去って行く。
「ピッ。」自動扉の電源を再度入れる。
「ガーッ。」扉が閉まる。
「ピッ。」電源を切っておく。
これぐらいの応対ができると、気分も楽だ。
その晩、約束通りに中嶋は来た。早速、バッテリーは交換したが、トラブルの原因は他にあった。
バッテリーは、そろそろ換えてもいい頃だったから、無駄ではないが・・・・
やはり「どこが、おかしいか?」を、ちゃんとつきとめてから連絡すべきだった。
それには、メンテナンス・チェックのノウ・ハウを知り、人に頼んででもチェックできなければならない。
翌日のメンテの申込みを追記する。
翌朝、朝食前にイマセン技研に連絡をとった。本来なら、販売代理店を通すのがスジだが、今回は昨日のお電話で了解済みだ。イマセン TEL:0568-62-8221
「ツ、ツ、ツ、」ストローに3回、息を吹き込む。
「ピツ。」3ch目で息を吸う。
ダイヤリング・オート・スキャンがスタートする。
オート・スキャンは、「F」から「A/C」。そして「0」から「9」へと、ランプの点灯が順次、移行し、「F」へ戻る。
「0」で吸って、そのまま吸い続け、その息を「3」で鼻から抜く。
ワン・テンポおいて、
「5」、「6」と、それぞれ細かく息を抜く。
ワン・テンポ息を止め。
「8」で吸って、吸い続け、「4」で抜く。
ワン・テンポおいて、
「6」で吸って、吸い続け、「0」で抜く。
ワン・テンポおいて、
「2」で吸って、吸い続け、「6」で抜く。
ワン・テンポおいて、
「8」で吸う。
口からストローを外す。スキャンの速度が、ゆっくりになる。
鼻で2,3回息をして、呼吸を整える。
「2」で2回吸って、吸い続け、「A/C」で息を抜く。
ワン・テンポおいて、
「1」で吸って、吸い続け、「8」で抜いて、[F]で吸う。
「キーン。ツー、コロ。ツーツ、・・・。」長距離特有、かつダイヤル回線の信号音。
「ガシャッ。」
「はい、今仙技術研究所です。」
「営業の山内さん、お願いします。」
「どちら様でしょうか。」
「東京の内山です。」
「少々、お待ちください。
オルゴールが少しの時間、鳴っている。
「お電話代わりました。山内ですが・・・。」営業用の標準語ででる。
「お早うございます。内山です。」
「あぁ、内山さん。バッテリー換えた?」名古屋訛が標準語に混じる。
「えぇ。結局、中嶋に来て貰って換えたんですけど・・・。」「やっぱり、バッテりーの方じゃなかったんですよ。」
「やっぱり、断線?」
「えぇ、やっぱり、山内さんに来て貰わんと・・・。」
「内山さん。もう一度、状況言ってみて。」
「だから、リレー・ボックスの下から出てる配線が「断線」してたんですよ。」
「・・・。」
「だ・か・ら。去年の春に、立て続けに断線が起きたでしょ。」「それであんまり断線が続くんで、夏にそっちへ持って行って、配線しなおしたでしょう。」
「そ・の・と・き・に、リクライニング・シートにリレー・ボックスが固定されたままだと、リクライニング・シートなんだから、せっかく配線しなおしても、また断線してしまうから、リレー・ボックスをフレームかどこかの動かない場所に設置し直して欲しいって頼んだでしょ。
「・・・。ハイ。」
『あの時、ちゃんとリレーボックスを、フレームに固定していれば、配線が金属疲労を起こして、断線することはなかったでしょう。」
「・・・。」
「なのに、持ってきたから、そうなってなくて、クレームをつけたら、大丈夫だからって言って、山内さんが保証したでしょう。
「ハイ、ハイ。」
「だから、そこんとこをヨロシク。」
「じゃあねぇ。内山さん。遅くなっても構わないなら、あした日帰りで出るから、その帰り道で良かったら寄れますよ。」「それ以外だと、明明後日になるけど・・・。」「どうですか?」
「明日、何時でもかまわないから明日お願いします。」
「それじゃ。明日、伺います。」
「頼みますよ。ほんとに・・・。」「電動車椅子が使えないと困るんだから・・・、私の足と同じなんだから・・・。」
「ハイ、ハイ。」
「じゃ、お願いします。」
「ハイ、失礼します。」
「ツ、ツ、ツ、ピッ。」ECSを操作して、
「バショッ。」電話が切れる。
くどかったけど、これで話がついた。
入力装置は、呼吸気の圧を感知する「呼吸気センサー」を使用している。
呼吸気センサーの設定方式は、2種4類ある。
他に、オプションの入力装置もあるが、衝撃センサーなどは1種2類になる。
「呼気」または、「吸気」のみを使って入力する方式を「1入力」。
「呼気」と「吸気」の両方を使って入力する方式を「2入力」という。
1入力は、「呼気」あるいは「吸気」でセンサーに信号を送ってやる。
センサーが入力を感知すると、表示板の緑色のランプが「オート・スキャン」を開始する。
そして、操作したい機器の「ch」でタイミングを計って、・・・。
再度、「呼気」あるいは「吸気」で信号を送ると操作の対象機器の『選択』と同時に『作動』がなされる。
2入力は、「呼気」あるいは「吸気」で『選択』。
「呼気」で『選択』すれば、『作動』は「吸気」。
「吸気」で『選択』すれば、『作動』は「呼気」。
1入力より2入力のほうが随意性が高い。
C4などの高位頚損の場合、2入力に設定するが、「呼気」で『作動』か、それとも『選択』かで、操作性が微妙に違う。
例えば、福祉電話「ふれあい」のダイヤリング・オート・スキャンを使いたかったら、「呼気」を『作動』に設定する必然性がある。
他に、ベッドのギャッジ・アップ、ダウンを安全かつスムーズに、呼吸も楽に操作できるというメリットもある。
反対に、「吸気」を『選択』に設定するとマニュアル・オート・スキャンが使える。
どちらに、「吸気」を設定するかは個人の自由だが、慣れると心理的に他方に切り替えにくくなるので、設置する時に十分に考えておく必要がある。
補足 C4全般的では、「呼気」の継続よりも「吸気」の継続の方が、はるかにやさしい。「呼気」を続けるには、下げた横隔膜を上に戻さなければならないが、頚損は腹筋がないので苦しい。
ECS(環境制御装置)は、アイホン製(UAX-15)15chを使用している。
他のメーカーでは、8ch、10chのものもあるが、いずれも在宅での利用を考えた環境制御装置研究開発協議会の仕様である。
環境制御装置研究開発協議会 事務局
〒272横浜市港北区鳥山町1770番地b
横浜市総合リハビリテーション・センター
企画研究室内 畠山 卓郎
TEL:045-473-0666
アイホン 出力方式は、1系統のみ。コントロール出力ターミナルに配線をチュ-ニングする。アダプター類は、これに付加し、出力コンセントはない。
取り付けは、販売代理店のパシフィック・サプライである。
メーカー 東京特販営業所 3947-3431
取り付け パシフィックサプライ 3352-0757
メンテナンス サービス・センター 3693-1501
参考 非協議会仕様にセントラル・ユニがある。当初、施設使用を目指したため、協議会には賛同しなかったが、在宅仕様に近づいてきたと思われる。
①インターホン
アイホン製。「親機2、子機2」で1セット。ECS本体に親機もどきの機能が蔵されているので、他は「特IC-2A親機」、「特IC-DA室内子機」、「IC-DA玄関子機」の構成になる。
ECSへの配線は6本。
2階親機から4本。「コール」「レシーブ」「トーク」の線とそれぞれの共通の「マイナス」の線。
室内子機へは、単純な電気接点で「コール」と「マイナス」の2本。
チューニングには、配線に気をつける。ルーズな固定だと断線のおそれがある。
トラブルはすべて、これであった。
対応策としては、ルーズな線は固定する。ECS本体の取り出しに不都合が予想できる場合は、コネクターを利用して取り外しができるようにするとよい。
②福祉電話「ふれあい」とスピーカーホンU
申込みは、NTT。4局程度で1ブロックを形成し、在庫はブロックごとに管理されている。
問い合わせに関しては、福祉電話の担当者係りを指定する。同じブロック内でも返答が異なることがあるので、管轄局以外に近隣の局に問い合わせてみると面白い。
ECSで使用の場合は、「ふれあい」と「スピーカーホンU」。そして、これをジョイントする「アダプター」がいる。ECSを使わない通常の使用だと、他に専用センサーがいる。
「ふれあい」、「スピーカーホンU」とも電源を要するが、ECS本体に付加コンセントが内蔵されていない。
ECS本体の設置には、電話セットの置き場とコンセント口も考慮する必要がある。
キャッチ・ホン機能は、バージョンによって異なるようである。
「スピーカーホンU」はもともとビジネス・ユース。相手側から出るスピーカーの音量よりこちら側の話す声が大きくなると、スピーカーがマイクに切り替わる。
受話器のように、両方で同時に話したり聞いたりはできない。
何らかの不都合で、電話を切ることができなくともタイム・リミットで、電話が切れる。30分、60分、90分、120分の何れかを選ぶ。
ECSなどの外部入力装置を使わなくとも、通常の入力で使用できるが、呼気センサーを使ったら、呼気センサーで切らねばならなく、普通に使ったら普通に切らねばならない。
短縮ダイヤルの設定は、例えば、ナムコ福祉機器相談室(3756-7602)を「コード」18に設定したいなら、まず、バンドを「M(メモリー)」にして「A1837567602A」と入力する。最後に、バンドを戻すのを忘れないようにする。
障害者は、電話の基本料金が割引になる。
対象者
窓口 各管轄NTT営業課
また、区によって生活保護世帯には、「福祉電話の貸与」や「電話使用料の補助」がある。
窓口 障害福祉課障害福祉係
③TV/VTR
TVは、コンセント・タイプのアダプター(UAK-1A)を使用している。
VTRは、リモコンを改造。チューニングする配線の途中をコネクターにすると電池交換の時など便利である。
ビデオ・デッキは、ダビング用にもう一台、ナショナルのNV-F3を購入した。
ミニ・コンポに音声を出力するため、メイン・デッキをこれに切り替えたが、既存のNV-850のリモコンが利用できたため、新たにリモコンを改造する手間がかからなかった。
但し、1つのリモコンで2台のビデオ・デッキが同時操作するので、普段はNV850のタイマー録画スィッチをONにして、リモコンの信号を受けないようにしてある。
最近はTVもリモコンだが、チャンネル換えを考慮すると「順送り」や「逆送り」のタイプがいい。
VTRもそうだが、ダイレクト・タッチ・タイプのリモコンだとECSにチューニングしきれない。
Namcoのライフ・エイドは、チューナー・パックが内蔵されているのでこの手の心配はない。
補足 ライフ・エイドは、5ch。出力方式は2系統で、出力コンセントに直接プラグをつなぐ形式とコントロール出力ターミナルに配線をチューニングする形式がある。
④ギャッヂ・ベッド
木村寝台の「背」と「膝」が連動して動くタイプを使っている。
アウラベッドは避ける。
「背」と「膝」が別に可動するものや、ベッドの高さじたいがリフティングする多機能なものもあるが、ECSで使用するにはchが取られ過ぎる。
通常操作は、コード付のリモコンで行う。ESCへのチューニングは、リモコン改造ではなく、リモコンのコネクターに行う。
日常生活用具の特殊寝台として行政による助成が得られる。
対象者 下肢または体幹1・2級
手続き 身障手帳、ハンコ、所得証明(確定申告や源泉徴収票)。
注 意 所得制限による自己負担金制度がある。
窓 口 管轄福祉事務所
⑤自動扉
形 式 60LTD
メーカー 寺岡の精巧 TEL:755-2515
取り付け テラオカ・オート・ドア販売 TEL:449-3521
メンテナンス テラオカ・サービス TEL:753-6176
ECSへのチューニングは、メーク接点タイプ(UAK-1B)のアダプターを使用。しかし、その後、電動車椅子での利用に不備を感じ、改造。
(詳しくは、「IX玄関自動扉仕様」にて後述。)
⑥室内照明
ECSへのチューニングは、アダプターを使う。
トランスファタイプ(UAK-1C)を使っている。このタイプは、メーク接点タイプ(UAK-1B)と違い、通常スイッチとECSによる相互入力ができる。
⑦クリーン・ヒーター・エアコン
冷・暖房。ECSへのチューニングは、電気接点。
冷房機器。頚椎損傷者には、行政の助成がある。
対象者 頚椎損傷者
手続き 身障手帳、ハンコ、所得証明(確定申告や源泉徴収票)。
注 意 所得制限による自己負担金制度がある。
窓 口 管轄福祉事務所
⑧エアー・マット
三和化研のサンケン・マット。エアー噴出タイプで、床ずれ治療用だが、寒いのが難点。エアー・マットの下に電気敷毛布を敷くと、空気の層ごと暖められ、マットの下に敷くので、尿失禁などの心配はない。
頚椎損傷者には、行政の助成がある。
対象者 下肢または体幹1・2級
手続き 身障手帳、ハンコ、所得証明(確定申告や源泉徴収票)。
注 意 所得制限による自己負担金制度がある。
窓 口 管轄福祉事務所
最近、思うにECSの必然性をしみじみと感じる。突発的なアクシデントによって、ハンディ・キャプトになってのは失態と言えるがECSという福祉機器のある時代で助かった。
もともと両親共稼ぎである。最低のケァーをカバーするECSの導入が必要であった。
それに、あれこれと人に頼むのが面倒臭くなっていたこともある。
チャンネル一つ頼むのに、一々御機嫌を伺ってコビルように頼むのでは、健康的とは言えない。
メンタルな部分では、「メカに頼ってまで・・・。」とか「一人で留守番は・・・。」
などと不安もあり、直ぐに「ゴー・サイン」がでたわけではない。
普通、C4ぐらいのハンディ・キャプトになると、かなりのストレスが溜まる事は間違いないと思う。
他のハンディ・キャプトに尋ねたことはないが、私の場合、そのストレスの発散をケァーや介助に伴うコミニケーションやスキン・シップでカバーしていた面があった。
人によっては、それを「あまえ」と呼ぶ者もいり、ECSを導入するとその「カバー」が失われる恐れがあった。コミニケーションやスキン・シップの手段と機会が減ってしまうからである。
ここで無意識の選択が行われる。
ECSの導入を拒否して、一次的な欲求をみたしながら、家族によるコミニケーションやスキン・シップを選ぶか。
それともチョット大人になって、ECSを導入し、一次的な欲求はECSに任せ、ADL面での自立度を向上させるか。
拒否すれば、事態は何もかわらない。
導入すれば、チョット勇気はいるが、ADL面のできることも増え、メインの介助者を拘束する時間を減らすことができる。
拘束時間が減れば、その労働力を他に回すことができる。
結果として、お袋は職場に復帰でき、家庭の経済事情をカバーできる。
特筆すべきは、「介助者を拘束するのに、神経を費やさないようになった。」ことである。
入院中は、常に誰かがいたわけだが、横にへばり付いていればうっとうしい。
居なきゃ、居ないで困る。
勝手と云えば勝手だが、レギュラーとなるべき介助者がいなければ、誰かをキープしたくなる。
その神経の使い方は、自分でも驚くほどのエネルギーを費やしていた。
入院費もかかり、家も新築して物入りが続いて、これ以上はお金を使って欲しくない気持ちもあった。
しかし、開き直って本体価格、約50万とオプション・アダプター代と取り付け料は、新築費用の『端数』と考えることにした。
それでも、ECSの性能とその心理的効果を考えると、退院して3年目になるが、既に原価償却したと言っても過言ではない。
更に、お袋が働きに出るための投資として考えると、とっくに資金回収はされている。
経済事情、或いは精神的な疲労から来る共倒れだけは避けられたと思う。
しかし、そのECSも本人の使い方次第だろう。
折角、設置しても本人が「主体」となって使わなければ意味がない。
また、ECSの随意性の高さも裏を返せば、問題になる。
終日、ベッドで横になっている日は構わないが、電動車椅子に乗っている日にチト問題がある。
電動車椅子は、誰に依存することなく移動できるのに、特にやることがないと、ついセンサーのスポットから動かなくなるのである。
誰からかの電話を待ち、直ぐに出れるように、動けないでいる。
そこで本人が「主体」としてECSを使う意図をしっかりと認識すれば、そこからあらたなる段階が期待できる。