目的 : ”可能な限りの原音再生(Hi−Fi再生)” でアーチストやクリエータの思いを汲み取る事。
◎ これまでの歩み
1970、山水からQS4ch方式が発表され、その時に発売されたQS−1を参考に(ランプとCdsによる)位相変調までコピーしたQS4chデコーダを製作しました。 残念乍、QS−1の(後方チャネルを定位させない)位相変調は若干無理がありました。
1971、CBSソニーからSQ4ch方式が発表されました。
1976、ソニーSQ4ch方式が撤退しました。
1986、山水QS4ch方式が撤退しました。そのサブセットはドルビー方式として残りました。
1989、自作プロロジックドルビーデコーダとその回路です。 但し、ドルビーデコーダは、前方と後方に連続性がなく、又、あくまで映画の効果音再生用で音楽再生には向いていない規格です。
2003、そこで、作り直す事になったのがQS4ch/SQ4chデコーダ、内部とその回路です。 左から入力セレクタ(前、後、デコーダ、3系統外部4ch入力)、音場回転、SQ・QS選択、マトリクス係数、前レベル、後レベルです。 試聴した結果、山水QS4ch方式は実用になりましたが、ソニーSQ4ch方式は分離せず全く実用になりませんでした。
2004、そして、プリとビデオセレクタも内蔵させたかったので、新たに作り直した新QS4ch/SQ4chデコーダの正面、裏側、内部その回路図です。(スイッチの接点数不足で、QS方式とSQ方式の切り替えは軸の回転を検出し、リレーを介して切り替えています) 然し、音質的にはオペアンプを使っていない初期バージョンの方が優れていました。 左からビデオ入力セレクタ、オーディオ入力セレクタ、マトリクス係数、音場回転、Quad入力セレクタ(4系統外部4ch入力、QS、SQ)、モード切り替え、前レベル、後レベルです。 ここで、SQ4ch方式の場合、精度を上げてもロジック無しでは”全く”実用にならない事が分かり、ソニーSQ方式の4ch分離改善ロジックの開発を開始しました。
2006、ソニーSQ方式の分離改善ロジック案を思い付き、実験回路で確かめてみた所、上手く行く事が分かり、次回から実装することにしました。
2007、QS4ch/SQ4ch/(上下も考慮した)QS6ch ロジックデコーダです。 正面、内部、回路図(修正中)です。 左からビデオ入力セレクタ、ステレオモード、オーディオ入力セレクタ、2chモード、デコードモード、テープモニター、バイパス、Quad入力セレクタ(4系統外部4ch入力、QS、SQ)、音場回転、Quadモード、SQミックス、ロジックON/OFF、前レベル、上レベル、後レベル、下レベルです。 その詳細です。 これにより、QS4ch方式のロジック設計の妥当性が確認できました。又、ロジック無しでは全く実用にならないSQ4ch方式も、ロジックにより実用に耐えられることが分りました。 然し、QS6chのロジックはその効果を確認できましたが、そのロジックは要再検討でした。(6chで音場空間に不連続が生じ、且つ、それに依りロジック処理に不具合が生ずる事が確認できたので.) 又、真上に設置する 天井スピーカ ですが、(特に日本家屋故)天井との距離が近くなり、頭の高さで音量バランスが大きく崩れる為、方式自体に実用上、問題がある事も分りました。
補足:不連続とは、前方→真上→真後→真下→前方→真上→、と途切れずに移動する音をエンコードすると、位相が際限なく回転する事となり、途中で不連続点の生成を余儀なくされる事です。
2011、2007作の QS4ch/SQ4ch/QS6ch ロジックデコーダはいささか過剰スペックなので、作り直したQS4ch/SQ4ch ロジックデコーダです。 正面、裏側、内部、ブロック図、回路図です 。 左からオーディオ入力セレクタ、ステレオモード、Quad入力セレクタ(4系統外部4ch入力、QS、SQ)、2chモード、テープモニター、SQミックス、ロジックON/OFF、Quadモード、F/Rモード、前レベル、後レベルです。 所で、デュアルオペアンプは60個使用しましたが、(ディジタル音源自体のA/D変換時の音質劣化と比べれば)音質劣化は僅かです。
2012、山水QSD−1との比較のため、同じく帯域を3分割し、それぞれに個別にロジックを入れたSQ4chロジックデコーダを完成しました。 尚、QSはロジックなしでも実用になる事が分ったのでロジックを入れていません。 正面、裏側、内部、ブロック図、回路図です。 左からデコードモード、入力セレクタ、Quadモード、前レベル、後レベルです。 デュアルオペアンプは81個使用しました。 2011作の帯域を分割しない普通のSQ4chロジックデコーダと比べ、音像の定位改善が図られました。
2015、再び、普通の帯域を分割しないSQロジックデコーダを製作しました。今回はプリント基板で作りました。その正面、内部、回路図です。 QSはロジックなしです。
2016、2015に製作したSQデコーダにQSロジックを増設しました。その正面、2階部分にそのプリント基板を追加した内部、(重複回路は削除した)回路図です。
2018、QSもSQも帯域を3分割して、それぞれに個別にロジックを入れたQS/SQデコーダを完成しました。今回はプリント基板で作りました。その正面、内部、ブロック図、回路図です。
補足ですが、改善の余地として、VCRへの振幅の適正化にて、(大振幅時の)歪みの改善が図れます。
因みに、各種デコーダの周波数特性とセパレーションを測定してみました。 測定結果の如く、メーカ製デコーダの周波数特性は余りフラットではない事が分かりました。
補足
調整用治具として製作した、QS4ch/SQ4ch/QS6ch方式のエンコーダの正面、後面、内部、回路です。 新たにプリント基板で作ってみました。その回路です。 尚、QS方式/SQ方式共に、真左/真右も正しいエンコード信号を生成する様に設計しました。 (参考までにデコーダに接続する6chメインアンプとその回路図です)
2022、サラウンド用パンポットをプリント基板で作ってみました。その回路です。その動作例です。
2023、又、新たに、QS/SQ4chのエンコーダをプリント基板で作ってみました。その回路です。
テスト信号(ノイズ音)。10秒間隔で周囲回転(前、右前、右、右後、後、左後、左、左前、(真上)):RT.zip (6.6MB)です。(注意:SQでは真上は理論上正しく伝送できません)
◎ 各種マトリクス方式の解説
山水QS4ch方式、ソニーSQ4ch方式、QS6ch方式のエンコード/デコード式は以下です。
・山水QS4ch方式のエンコード/デコード式
L = 0.924 * LF + 0.383 * RF + 0.924 *
LR * i + 0.383 * RR * i
R = 0.383 * LF + 0.924 * RF - 0.383 *
LR * i - 0.924 * RR * i
LF = L + 0.414
* R
RF = R + 0.414
* L
LR = (L - 0.414 * R)
* (-i)
RR = (R - 0.414 * L)
* ( i)
定位改善方式(後方±60゚シフト方式)
LF = L + 0.414 * R
RF = R + 0.414 * L
LR = ( L – 0.414 * R ) * (0.5 - 0.866
* i )
RR = ( R – 0.414 * L ) * (0.5 + 0.866
* i )
・ソニーSQ4ch方式のエンコード/デコード式
L = LF -0.707 * LR * i + 0.707 * RR
R = RF -0.707 * LR + 0.707 * RR * i
LF = L
RF = R
LR = 0.707 * L * i - 0.707 * R
RR = 0.707 * L - 0.707 * R * i
対称改善方式
LF = L
RF = R
LR = -0.5 * L * ( 1 – i ) - 0.5 * R *
( 1 + i )
RR = 0.5 * L * ( 1 + i ) + 0.5 * R * ( 1 – i )
・QS6ch方式のエンコード/デコード式 (検討中)
L = 0.924 * LF + 0.383 * RF + 0.924 *
LR * i + 0.383 * RR * i + 0.65 * ( 1 + i ) * UP + 0.65 * ( 1 – i ) * DN
R = 0.383 * LF + 0.924 * RF - 0.383 * LR
* i - 0.924 * RR * i + 0.65 * ( 1 – i ) * UP + 0.65 * ( 1 + i ) * DN
LF = L + 0.414 * R
RF = R + 0.414 * L
LR = ( L - 0.414 * R ) * (-i)
RR = ( R - 0.414 * L ) * ( i)
UP = -0.707 * L * i + 0.707 * R
DN = 0.707 * L - 0.707 * R * i
対称改善方式
LF = L
+ 0.414 * R
RF = R
+ 0.414 * L
LR = ( L
- 0.414 * R ) * (-i)
RR = ( R
- 0.414 * L ) * ( i)
UP = 0.5 * L * ( 1 – i ) + 0.5 * R * ( 1 + i )
DN = 0.5 * L * ( 1 + i ) + 0.5 * R * ( 1 – i )
◎ その他
補足
市販のSQデコーダの中で、自作機と最も近い動作をするものは (同じくクロストークキャンセル方式である) Fosgate社製のTate II 101a や Involve社製のSurroundMaster
でした。(3者を比較試聴した結果、自作機と殆ど同じ動作をする事を確認しました)
尚、ソニー社製のSQ4chデコーダは、音源が前方の時は後方をミュート、後方の時は前方をミュート、というロジックのウエーブマッチング方式ですが、試聴した結果、音源方向強調能力が若干低く、正しくデコードできない事が、少なくありませんでした。
(小音量側をミュートする設計故、小音量側の音源が大音量側に全て移動する事になり、特に大編成のオーケストラ等に於いて、全体が前後にバタ付く結果となります)
その他