会計基準の適用の誤り(不適切会計)

Mistake in the application of accounting principles

はじめに
財務諸表の虚偽記載とは
会計基準の適用の誤り
2009年に行われた過年度決算の遡及修正
事例米GE、不正会計問題でSECと和解−罰金5000万ドル

 :東芝の不適切会計(2015年5月)・・新日本監査法人存亡の危機
  ◎本命は原子力事業の「のれん」の減損未処理にある・・注記がお粗末 
  ◎
金融庁は「開示検査」をしていなかったことを露呈した
  金融庁は投資者を保護できたのか?
  有価証券報告書等の開示検査について・・東芝のケースで学ぶ

   :不適切会計は東芝だけじゃない、件数は右肩上がり、最多は東証1部企業

   :日立、米SECにFCPA違反で制裁金19百万ドル支払(15年9月)
主要国では、監査役に一人会計に関する知識・経験をもった人を要求
日本経団連の対応
金融庁社外役員の義務化は見送り」で、経団連の要望どおりとなった。
結論

はじめに

2008年8月27日米国SECは、米国上場企業に対し2014年を国際会計基準(IFRS)適用日程(Roadmap)とする案を公表した。具体的には、株式時価総額7億ドルを超える大企業(large accelerated filers約110社)については2年以内の2009年(2009年12月15日以後終了する年度で登録は2010年)のIFRSの早期適用を可能にし2014年から義務化し、株式時価総額7千5百万ドル〜7億ドル未満の企業(accelerated filers)は2015年から、7千5百万ドル未満の中小企業(non-accelerated filers)は2016年からIFRSの適用を義務化する。ただし、2011年にSECは、IFRSの適用が公共の利益および投資家にとって良いのか決定する、として含みをもたせている。(SECのコックス委員長の談話 英文ニュース 日本語ニュース 参照)

2009年1月28日金融庁の企業会計審議会が開かれた。公表された「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)(案)」によれば、「2010年3月期の年度の財務諸表からIFRSの任意適用を認めることが考えられる(13ページ)」「IFRSの強制適用の判断の時期については、とりあえず2012年を目途とすることが考えられる(15ページ)」としている。2月4日、金融庁から公表され4月6日までにコメントを求めている中間報告(案)は同じもの。(ニュース 参照) 米国SECのロードマップを強く意識したものとなっている。

財務諸表の虚偽記載とは

財務諸表の虚偽記載には、不正(Fraud)または誤謬(Error)がある。不正は意図的に虚偽記載をするもの、誤謬は意図的でない誤りで、いずれも虚偽記載となり読者にミスリードさせる結果となる重要な問題である。

誤謬とは、財務諸表の虚偽記載の原因となる意図的でない誤りであって、次のようなものをいう。

  ・ 財務諸表の基礎となる会計データの収集又は処理上の誤り
  ・ 事実の見落とし又は誤解に基づく会計上の判断又は見積り
  ・ 会計処理、表示科目または開示に関する会計基準の適用の誤り

  (監査基準委員会報告書240 財務諸表監査における不正 )

我が国の会計が、戦後、「企業会計原則」という初歩的な基準(注記が基本財務諸表となっておらず限りなく簿記で、読者への説明する(account for)ことを目的とする会計基準とは程遠い)を適用していた時代には、一度覚えた会計知識に重要な変更が比較的少なく、かつ、”会計基準の適用の誤り”は少なくて済むが、国際会計基準へのコンバージェンスが進むに従って会計基準の完成度が高く、改正が多くなり、複雑になるに従って会計基準の習得に多大な時間を要するようになる。最新の会計基準を習得していなければ”会計基準の適用の誤り”は多発する。そうした時代に日本は入っている。

今の日本は、半世紀以上前に制定された企業会計原則の考え方は、国際的なものとは180度異なっており、今や時代にそぐわないものとなっており新たな会計知識と経験が必要な時代になっている。

加えて、日本の会計は複雑になりつつある。それは、法律の数ほど、省令や内閣府令による会計規定があり複雑になりつつある。これをフォローするのは素人ではできなくなりつつある。

参考:国際監査基準240パラグラフ5  ISA240の不正・誤謬の解説
ISA 240 paragraph 5 defines error
iii) Mistake in the application of accounting principles relating to the measurement, recognition, classification, presentation or disclosure e.g. recognition of revenue under IAS 18, recognition of intangible assets under IAS 38 etc.
米国監査基準AU Section 312A Audit Risk and Materiality in Conducting an Audit
財務諸表監査の不正への対応」監査基準委員会報告書第
35平成181024日本公認会計士協会
NECの場合・・収益認識の時期の誤りの事例  IHIの場合・・原価見積りの誤りの事例  

会計基準の適用の誤り

米国会計基準での監査で多くある財務諸表の誤りは、米国会計基準の知識不足からくる”会計基準の適用の誤り”である。米国会計基準が25千ページにわたる基準であるため詳細について知っている人が経理に少ないという現実がある。(国際会計基準IFRSで25百ページを超えている)

”会計基準の適用の誤り”を訂正させることで会計監査人の監査報告書を無限定適正意見を表明できるようにする。会計監査人は、適正意見を述べるために修正を指導するが、近年は、公認会計士法第三十四条の十一の二  「監査法人は、当該監査法人又は当該監査法人が実質的に支配していると認められるものとして内閣府令で定める関係を有する法人その他の団体が、大会社等から第二条第二項の業務(財務書類の調製に関する業務その他の内閣府令で定めるものに限る。次項において同じ。)により継続的な報酬を受けている場合には、当該大会社等の財務書類について、同条第一項の業務を行つてはならない」とされており、会計監査人が無限定適正意見を述べるため指導すると非監査業務(財務書類の調整)の恐れがあり、公認会計士法違反として金融庁の懲戒処分の対象となる恐れがあることから担当公認会計士は慎重とならざるを得ない。

これは、企業側に正確な財務報告のために、会計基準の正確な理解者を必要としていることを意味している。監査役が会計基準の正確な理解者であることが望ましい。

参考:「監査証明業務と同時提供が禁止される非監査証明業務」倫理委員会報告第4号平成21 年4月14 日日本公認会計士協会
非監査業務の金融庁の処分・事例1, 事例2, 結果⇒監査のやり直し

2009年に行われた過年度決算の遡及修正

日本経済新聞の記事によれば、2009年に過年度決算を修正した企業は2008年より3社増えて20社となったと伝えている。

なお、企業会計基準委員会が2009年(平成21年)12月4日に公表した「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の適用は、「2011年(平成23 年)4 月1 日以後開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更及び過去の誤謬の訂正から適用する」としており、当該会計基準適用前の2009年で20社が過年度決算を修正しているとすると、会計基準適用時や、監査人変更時には、相当増加することが予想される。会計基準の完成度が高くなり高度化すると、過年度決算の修正の可能性が高くなり米国のように会計担当者の能力が問われる機会が多くなろう。(「会計基準成立の経緯」参照)

日本経済新聞の記事「2009年の過年度決算修正」.pdf へのリンク参照

事例

米GE、不正会計問題でSECと和解−罰金5000万ドル

【ニューヨーク共同】米証券取引委員会(SEC)は2009年8月4日、米電機・金融大手ゼネラル・エレクトリック(GE)が不適切な会計処理を行い、投資家に誤解を与えたとして、同社に5千万ドル(約48億円)の罰金を科したと発表した。GE側は支払いに同意した。

 発表によると、GEは2002年に航空機エンジン部品の売り上げを「不適切に変更」し、同年の純利益を5億8500万ドル水増ししたほか、02〜03年に売買が完了していない機関車の売却代金3億7千万ドル以上を売上高に計上するなど、計4件の会計ルール違反を犯した。

SECの調査は、それぞれ異なる期間に実施されていた4項目に集約された。それは「金融派生商品(デリバティブ)」、「コマーシャル・ペーパー(CP)発行による資金調達」、「予備部品の売却」、「売り上げの認識」である。調査委員会によると、GEは02-03年、実際には発生していないエンジンの売り上げを3億7000万ドル計上した。2002年には、航空機エンジン部門の予備部品の会計手続きを変更し、純利益を5億8500万ドルかさ上げした。

 さらに03年初めには、CPの発行にかかわるヘッジ取引の会計処理方法を変更し、02年の税引き前利益を2億ドル引き上げた。同委員会は、1株利益において1.5セント、アナリスト予想に届かない決算を避けるためだった、と指摘する。

 同委員会のボストン支局のディレクター、デビッド・Pバーガーズ氏は、「企業が会計処理を変更する目的は、会計処理を改善するためであるべき。事業目的の達成ではない。GEは財務諸表をより良く見せようとして、会計規則を乱用した」と述べた。

 今回の和解によってGEの会計調査には終止符が打たれたが、SECはほかの企業では、今後も同様の調査を続けるという。(ブルームバーグ 英文ニュース 参照)

高い授業料をGEは支払うこととなった。 なお、GEは2005年の年次報告書(Form10-K)の遡及修正の報告書、2006年度の四半期報告書(Form10-Q)の遡及修正の報告書で財務諸表の修正表示は終了していた。

監査報酬は、2004年度及び2005年度は異常に高騰し、連結ベースで年間8千万ドルから9千万ドル近い

東芝、不適切会計(2015年5月)

ビジネスジャーナル】2015年5月8日(金)、東芝は過去に不適切な会計処理が行われたとして、2015年3月期連結決算の公表を6月以降に延期すると発表した。【過去の有価証券報告書

東芝は4月3日、14年3月期のインフラ関連工事の会計処理に問題があったとして、室町正志会長をトップにした特別調査委員会の設置を発表している。特別調査委の調査が進む中で、原価の見積もりの過小評価以外にも、調査が必要な事案が出てきた。不適切な会計処理が14年3月期より前の期にも行われていた可能性が明らかになった。「調査結果に対する信頼をさらに高める」(東芝)ため、第三者委員会の設置を決めたというが、5月8日の公表時には第三者委員会の具体的な人選などは明らかにされなかった。どう調査を進めるかも公表されていない。

 不適切な会計処理が行われたのは、コミュニティ・ソリューション、電力システム、社会インフラシステムの社内カンパニー3社とその関連会社だという。508億円の最終利益を上げた14年3月期連結決算については、「少なくとも修正の必要がある」と説明している。不適切な会計処理がいつから、誰の指示で行われていたかなどは究明されていない。「売り上げや利益がドレッシング(化粧)され、水増しされていた可能性が極めて高い」(市場筋)のだ。

 第三者委員会を設置するほどの重大かつ深刻な問題なのに、東芝はタイムリー・ディスクロージャー(迅速な情報開示)を怠ってきた。東京証券取引所は上場企業に対し、決算期末後45日以内に決算の内容を公表するよう求めている。東芝は5月15日が期限だが、大幅に遅れる。6月以降としているが、東芝の不適切な会計処理が故意であれば、東証は投資家に注意を促すために「特設注意市場銘柄」に東芝を指定し、改善報告書の提出を求めることになる。

東洋経済の6月8日の記事より

報道されている東芝の不適切会計の内容・範囲を見ると、内部統制の統制環境はかなり酷いものがある。根本的な改善はかなり困難なものとなろう。社内に派閥が形成されているという報道があり、これが本当であれば、全社での改善は並大抵では整備できない。

そもそも、遠い遠い昔に米国証券取引委員会(SEC)に登録するときに米国会計基準で連結財務諸表を作成していたが、私はSECに登録された東芝の連結財務諸表(FORM20-F)を見たことがない。また、金融庁の有価証券報告書は米国会計基準で作成した連結財務諸表を長年受理されてきたが、SECに登録・管理されていない会社に、なぜ米国会計基準の連結財務諸表が受理(財務局の統括証券監査官がチェックして受理することになっている)されているのか不明であった。つまり、金融庁は、内閣府令の下記(イ)で特別扱いをして、野放しにしているのである。特別扱いするのであれば、SECに代わって日本のルール・メーカーである金融庁が管理・監督すべきであった。少なくとも、ルール・メーカーとしての金融庁の責任は逃れない

ア.米国証券取引委員会(以下「SEC」という。)に米国式連結財務諸表を登録している日本企業が、金融商品取引法上の連結財務諸表の作成基準として、米国基準を使用できる規定について、平成28年3月31日までとする使用期限を撤廃することとします。
また、新規にSECに米国式連結財務諸表を登録した日本企業は、改正府令の公布・施行の日以後、金融商品取引法上の連結財務諸表の作成基準として、米国基準を使用できることとします。
上記を踏まえ、連結財務諸表規則に第8章を新設するとともに、連結財務諸表規則等の一部を改正する内閣府令(平成21年内閣府令第73号)附則第2条第3項を削除します。

イ.SECに米国式連結財務諸表を登録していない日本企業のうち、連結財務諸表制度の導入(昭和52年)前から米国基準を使用している日本企業が、金融商品取引法上の連結財務諸表の作成基準として、米国基準を使用できる規定について、平成28年3月31日までとする期限を撤廃し、当分の間、米国基準を使用できることとします。

東芝は米国預託証券の発行により1962年2月に米国証券取引委員会に登録しましたが、1978年11月に預託契約が終結したため、現在は登録していません 1978年3月22日に金融庁の前身である大蔵省の承認を受けて米国会計基準による財務諸表を有価証券報告書に適用している、としている。【役員責任調査委員会の調査報告書25ページ

なお、2015年1月29日、東芝は、2017年3月期から、従来の米国会計基準から国際会計基準(IFRS)を任意適用すると発表している

東芝は、藤沼亜起氏の言うところの「ナンチャッテ米国基準」を使っており、米国SECに登録せずSECにチェックされていない会社なのだ。11月7日、東芝は、米国における集団訴訟について、「当社は米国預託証券の発行に関与していません。米国証券関連法令の適用がないこと等を理由に、集団訴訟の棄却を裁判所に申し立てる予定です」としている。金融庁の開示ルールが生んだモンスターと言える。
米国OTC市場におけるわが国企業のスポンサーなしADRとSECによる国際証券規制by岡村 雅仁氏】・・東芝株は勝手ADR株(米国証券会社が売買している)でSECに登録していない。

役員責任調査委員会の調査報告書の受領及び当社元役員に対する損害賠償訴訟の提起並びに
米国における訴訟等に関するお知らせ2015年11月7日土曜)
東芝は11月7日(土曜日)、田中久雄・前社長ら歴代3人の社長と財務担当役員2人の計5人に対して、合計3億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたと発表した。

東芝は本当に反省しているのか 過少な賠償請求…「不正なし」なお強調(磯山友幸著)参照
東芝:3億円賠償提訴は「過小」請求 株主反発も(毎日新聞)参照・・平田政善上席常務は厳しい対応を迫られている。

なお、東芝の「米国における訴訟等に関するお知らせ」を見ると、「米国カルフォルニア州で提起されております当社の不適切会計問題に係る集団訴訟について、本日、その訴状を日本において正式に受領しましたので、併せてお知らせします。」としており、最後の5ページ目に「米国における訴訟として、当社は当該米国預託証券の発行に関与していません。当社は、本年中を目途に、米国証券関連法令の適用がないこと等を理由に、本件集団訴訟の棄却を裁判所に申し立てる予定です。

東芝が米国会計基準で作成して有価証券報告書を作成していたのは、金融庁が決めた内閣府令である。金融庁の上記のルールは何だったのでああろう。よく言えば温情、悪く言えば無知。


免震偽装の東洋ゴムの社外調査チームが2015年6月22日、最終報告書を発表した。最終報告書は「会社に不祥事の風土」があったとしたが組織的な不祥事隠しについては否定した。所謂、内部統制の統制環境が酷いものであったということだ。統制環境とは、組織の気風(tone of an organization)を決定し、組織内のすべての者の統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなし、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング及びITへの対応に影響を及ぼす基盤をいう。

所謂、内部統制の統制環境が酷いものであったのは、東芝と同様なものであろう。その証拠に、6月23日の報道では、東芝の不適切会計問題で、インフラ関連に加えて半導体とパソコン事業にも不適切な案件があったことが分かった。価値が下がった半導体の在庫の評価損を計上しなかったなどで、過去の決算の修正が必要になりそう。現時点で約550億円を見込んでいる利益の減額幅はさらに膨らむ見通しだ。東芝は、内部統制の基本から再構築すべきだ。「経営者による内部統制の無視(Management Override of Internal Controls)」、いわゆるマネジメント・オーバーライドは古くて新しい問題だ。東芝、東洋ゴムなど未だ大企業で起きており、日本の後進性が露呈しているようだ。日本も適用した国際監査基準240号30項から32項監査基準委員会報告書240・・30項から33項、平成24年4月1日以降開始する事業年度)があるが監査法人が基準通りに適用しているか問われよう。

2015年7月20日、東芝は、不適切会計問題を調べてきた第三者委員会(委員長:上田広一元東京高検検事長)の報告要旨を公表した。報告は、歴代社長ら「経営トップの関与に基づき、組織的に不適切会計が実行・継続された」と断じるとともに、過年度の利益の過大計上が総額1562億円にのぼったことを明らかにした。報告が示した税引前利益の過大計上額は2009年3月期から2014年4−12月期までの累計。第三者委の調査で1518億円、東芝の自主チェックで44億円が判明した。東芝は過大計上額を548億円と発表していたが、3倍近くに膨らんだ。

同社は半導体やパソコン事業の減損処理や繰延税金資産の取り崩しについて検討を迫られることになり、追加損失の計上は避けられない見通しだ。同社は8月31日までに14年度決算を公表する。

報告は不適切会計が行われた原因について、田中社長、前社長の佐々木副会長ら経営トップが高い収益目標を達成するため、「社長月例」と呼ばれる定例会議で、目標実現を事業部門に強く迫ったためであると指摘。「歴代社長の利益至上主義のもと、事業部門は目標必達のプレッシャーを強く受けていた」とし、事業部門が不適切な会計処理に追い込まれていた実態を明らかにした。
間接的な原因として、内部統制の不備もあげた。経理部や財務部のほか、取締役会、監査委員会の内部統制が機能せず、会計監査人の外部統制も十分に機能しなかったと指摘した。報告は「経営トップらは適切な会計処理の意識が希薄だった」とする一方、同社には「上司の意向に逆らうことのできない企業風土が存在」すると言明。再発防止策として、社外取締役と監査委員会を増員し、外部の人材を監査委員長に起用するよう提言した。【ロイター

歴代トップ辞任 第3者委、組織的関与強調・・西田厚聡(あつとし)相談役や、佐々木 則夫副会長、田中久雄社長の歴代3社長らが、21日付で辞任し、室町正志会長が、9月下旬に予定される臨時株主総会まで、社長を兼務するという。【FNN


東京 2015年7月22日 ロイター] - 企業統治の仕組みを他社に先駆けて整備し、「先進的な」企業のイメージを内外株主に与えてきた東芝 。今回の不適切会計問題はその仕組みが「空文化」していることを露呈した。

東芝の監査委員会は5人で構成。委員長は財務部門出身で社内取締役の久保誠が務め、3人が社外取締役。そのうち2人は外交官出身。「監査委員会の布陣だけでも、実質的な監査能力に疑問が浮かぶ」(上場企業の財務部門関係者)との見方も出るなか、報告書は社内取締役の島岡聖也監査委員の指摘ですら、監査委員会で取り上げられなかった事実を明らかにした。

東京 23日 ロイター] - 東芝(6502.T)の久保誠・前監査委員会委員長(粉飾の当事者である)が、金融庁に対して、同庁の企業会計審議会・会計部会の臨時委員を辞任する意向を伝えていたことがわかった。関係者が23日、明らかにした。

金融庁が、企業会計審議会会計部会委員に人選したこと自体驚きである。かつての財務担当取締役久保誠氏が監査委員会の長となっておりガバナンスの利いていない状況であっても、企業会計審議会の委員に人選しているということは金融庁の認識がこの程度かとよく分かる。

忖度(そんたく)・財務部門出身で社内取締役の久保誠氏は東芝の粉飾当事者で、金融庁の企業会計審議会の委員をしていた。証券取引等監視委員会は開示検査に忖度して開示検査をしてなかったのではないか。裁量で検査していてはどうにでもなる。公務員の裁量を排除するには法制化するほかない。

第三者委員会は「東芝から嘱託を受けて、東芝のためだけにおこなわれた」として監査法人の監査については言及せづ、巨額ののれんの減損会計の可否について触れていない。監査法人は適正意見を表明するには、のれんの減損をする必要がないとの監査証拠を得ている必要がある。監査法人の監査の検証は注目されるところである。

2006年2月6日、東芝は、「本日、当社は、英国原子燃料会社(British Nuclear Fuels.plc:以下、BNFL)と、同社のグループ会社であるBNFL USA Group Inc.およびWestinghouse Electric UK Limited(以下、両社を併せてウェスチングハウス社)の全株式の取得に関する契約を締結しました。取得額は54億ドル(約6,210億円、115円/ドルで換算)です」と発表し、「ウェスチングハウス社が当社グループの一員となることにより、当社原子力事業の規模は、相乗効果も合わせると、2015年までに現状の約3倍に拡大するものと予想しています」としていました。

 その後、2011年の東日本大震災以降、国内では“原発ゼロ”の状況が長く続き、原発の定期検査という収益源がなくなったことで、国内部隊は赤字に陥った。一方、海外を主戦場とするウェスチングハウスも最近は苦戦が続いているという。当然、のれんの減損の検討が必要になる重大な事故が発生したのである。

2007年3月期の有価証券報告書を見ると、のれんの注記8には、単に、当期取得額350,785百万円とあり、注意深く最後まで注記を見ていくと注記27に「ウェスチングハウス社の買収」という項目を設けて説明しており、「のれん」350,785百万円、ほかに技術関連無形資産等に251,976百万円計上としている。双方の注記の「のれん」は一致しているが、注記8と関連する注記27に参照していないので判りにくい。貸借対照表の「のれん」には注記8が参照されているのみで注記27には参照していない。投資家には読み取れない判りにくい財務諸表となっている。
注記8には、米国財務会計審議会基準書FASB142号「のれん及びその他の無形資産」に従い「減損テストをした結果減損をしていない」としています。しかし、のれんの評価方法の記載がないし、減損テストがどんな方法で行われたのかさえ記載がない。米国証券取引委員会SECに登録してある企業であれば(東芝はSEC登録会社ではない)、もっと分かり易い開示がされているはずだ。
2011年の東日本大震災以前は、のれんの減損問題は特になかったと思われる。

のれん及びその他の無形資産は、2006年3月期から以降次のような数値になっている。

単位:百万円 のれん のれん以外の
無形資産
のれん
及び無形資産合計
参考値
当期純利益
参考値
株主資本の額
2015年9月7日に東芝が発表した
過年度修正額及び影響額
2001年3月31日終了する事業年度まではプライス・ウオータークーパー(PWC)
2002年3月31日終了する事業年度からアーンスト・ヤング(E&Y)会計事務所が
監査報告書を提出している。

PWC(現あらた監査法人)の提携先の中央青山監査法人は2007年に解散した。
E&Yの提携先の新日本監査法人は2002年3月31日期からである。
決算
訂正額
訂正後
当期純利益
2006年3月期 24,191 91,480 115,671 137,429 1,002,165
2007年3月期 368,537 378,183 746,720 137,429 1,108,321 2006年10月、ウェスチングハウス社ののれん計上
ほかに技術関連無形資産等に251,976百万円計上

危機はすでに始まっていた・・2017年2月の記事)
2008年3月期 328,552 325,358 653,910 127,413 1,022,265 2008年10月西田厚聰、東芝社長(プレジデントの記事)
2009年3月期 310,715 319,105 629,820 ▲343,559 447,346 ▲76,400 ▲398,900 リーマン・ショック直後の09年3月期の巨額赤字
@財務制限条項に関する注記
2010年3月期(平成22年3月期) 315,234 303,497 618,731 ▲19,743 797,455 ▲41,500 ▲53,900 金融庁が新日本監査法人を処分
2011年3月期(平成23年3月期) 283,453 275,793 559,246 137,845 868,119 7,100 158,300 3.11の東日本大震災後の初年度
2012年3月期(平成24年3月期) 442,761 268,904 711,665 73,705 867,268 ▲8,400 3,200 金融庁が、東芝及び新日本監査法人を処分
2013年3月期(平成25年3月期) 509,700 402,428 912,128 77,366 1,034,268 ▲84,700 13,400 金融庁が、東芝及び新日本監査法人を処分
2014年3月期 580,158 426,482 1,006,640 50,826 1,229,066 1,400 60,200
2014年4月〜12月 53,300 107,200
合計 ▲224,800 ▲110,500
2015年3月期 673,817 450,790 1,124,607 ▲37,825 1,083,996 2015年9月7日訂正後第176期有価証券報告書を公表した。
2016年3月期 337,256 302,633 639,889 ▲483,229 312,549 23,216 ▲46,0013 決算短信 のれんの減損を計上した新日本監査法人の最後の監査、来期はPwCあらた監査法人
過去最大の最終赤字となった東芝2015年度決算by CNET
東芝、16年3月期決算を訂正 最終赤字4600億円に縮小
訂正・決算短信
2017年3月期 ▲965,600 ▲552,900 東芝、原発関連の損失は7125億円 債務超過の見通しby朝日新聞2017年2月14日
東芝が業績見通しを公表した。監査人の了承はない2017年5月15日
債務超過額5529億円、最終損失9656億円 2017年8月10日
2015年8月18日、東芝は、「新経営体制及びガバナンス体制改革並びに過年度決算の
修正概要及び業績予想について
」と題して過年度修正の概要を公表した。
繰延税金資産については「未だ検証中である」旨の説明があるが、
ただし、ウエスチングハウスののれんについては一言も触れていない。
つまり、東電福島原発の事故や発電コストの安いシェ−ルガス革命の出現が
ウエスチングハウス関連の「のれん」の公正価値を低下させていることは明らかと
世間は見ています
。東芝はこれに応える義務がある。また監査人は適切に監査する
義務がある。
2015年8月31日、東芝は不正会計の追加と決算発表の9月7日までの再延期を発表
2015年9月7日、東芝は、「過年度決算の修正、2014年度決算の概要及び第176期有価証券報告書
の提出並びに再発防止策の骨子等についてのお知らせ
」を公表した。
訂正後第176期有価証券報告書を公表した。課徴金84億円引当計上ですと。金融庁向けですか?
金融庁の本格調査がこれからであるという。つまり、引当金の計上要件を満たしていないのに
課徴金を見積もり計上するのは時期尚早である。会計に対する意識が非常に低いことを証明しているのだ。

のれん
の注記を見ると、前年と全く同じ様式で数値を入れてるのみで何も進展なし。
ウエスチィングハウスの買収に関し、その後の福島原発事故、シェールガス革命の発生が
当初計画を狂わせておりこれに対する疑問に全く答えていないのだ。
会計に習熟した人材が不足しているようだ。【日経ビジネス】参照 かなり深刻な状況だ。
前田氏の持っている、財務関係の知見・知識というのは、この作業に必要であると判断した
【室町社長談】
Toshiba U.S. unit Westinghouse books $1.3 billion impairment loss

東芝の米原子力子会社、過去決算で減損1600億円(日経ビジネススクープ11月12日)
東芝、米ウェスチングハウス社の減損処理連結未計上で異例の再コメント
口先だけの是正策、本気で「再建」に取り組む気があるのか?
当社子会社であるウエスチングハウス社に係るのれんの減損について11月17日

@財務制限条項Debt Covenants)は、社債や長期借入金の契約に係る財務制限条項がある場合は、社債及び長期借入金の注記に開示するが
日本では有価証券報告書の第2【事業の概況】「事業等のリスク」に開示することも認められているそうだ。つまり、財務諸表だけを見ていては
判らないようになっているということだ。因みに、東芝の場合は、7)「資金調達環境の変化等」に一般的な概要が説明されているだけで、具体的な
財務制限条項の内容は示されていない。米国基準で、作成する場合は、財務制限条項は具体的に注記することで分かり易くなる。
最近の財務諸表は、財務諸表の開示だけでは判らなくなっているようだ。特に、財務制限条項が、東芝のように具体的な条項を開示していなく、
一般説明に終わっているケースがあるからだ。繰り上げ返済に追い込まれる経営者にとっては深刻な条項である。投資家にとっても重要な
判断材料と思うのだが・・   のれんの減損テストには、財務制限条項の規定に関する金融機関への対応が大きな足かせとなりうるのだ
東芝の財務諸表は、バラバラの開示(金融庁の開示規則が纏まりがない)なので、パズルのように分かりにくい。

思えば、財務制限条項は、日本企業で米国SECに登録の会社が注記に記載していた事項で、日本の企業の財務諸表に開示がないことから、
当時の大蔵省(現金融庁)が財務諸表規則を改正して「追加情報の注記」をすることで日本の会社でも開示を求めることにしたものである。
監査・保証実務委員会実務指針第77 号「追加情報の注記について」の5項目目に経緯の痕跡が微かに留めている。
その時に、他にも同じような開示の漏れを避けるために、網羅的な規定にしようとたと聞いている。
「財務制限条項(コベナンツ)」と明確な用語としてあるのに、曖昧な規定のままなのだ。進化しない日本の規定の典型だ。

監査法人は、注記の通り会社は減損テストをしたと記載されているので、会社の減損テストが米国会計基準に準拠して適切にテストされていることを検証して監査意見を形成しているはずだ。この減損テストは、毎年行うこととされている。関東財務局の統括証券監査官が有価証券報告書を審査している。
東芝の合併買収に係る注記は分かりにくい。のれんの主要な発生原因・相手先別の明細がなく、減損対象の”のれん”がいくらなのか分からない。投資家の判断ができ難い開示である。

2014年3月31日終了する事業年度の有価証券報告書には、のれんは1,006,640百万円と増加して、注記10「のれん及びその他の無形固定資産」には「当社グループは、ASC350に従い、のれんについて減損テスト(Impairment Test)を行った結果、2012年及び2013年度において減損は認識していません」とあるのみだ。説得力に欠ける開示だ。のれん発生原因・相手先別の開示はない。減損の評価は、発生原因別・相手先別に帳簿上ののれんと公正価値と比較して公正価値を超える部分ののれんを減損するが、帳簿価額が公正価値を超えていないとしており、その監査証拠を基礎に意見を述べているはずである。因みに、2014年3月31日現在、利益剰余金は652,367百万円であり、株主資本は1,229,066百万円である。東芝の監査では、監査計画書(Audit Planning)に「のれんの減損テストに関する監査」が最重要な事項(Critical Audit Area)となっているはずである。一般的には、強力な監査証拠が求めらる。監査意見を形成しようと考える会計士であれば誰でもがそう思うはずである。これは経営者が秘匿したという問題ではない。減損テストの監査証拠が入手できなければ意見が述べられないはずなのだ。

第三者委員会報告書は、「のれんの減損テスト」には言及していない。不思議なくらい「のれんの減損テスト」について避けている印象だ。不測の事故であった3.11の東日本大震災が、のれんの公正価値を毀損して減損が生じていると考えるのが自然ではないのか。加えて、シェールガス革命が原発に与えた影響もあろう。これに誰も応えようとはしていない。これらの問題に真摯に向かう姿勢を見せることが、東芝が信頼を回復唯一の道なのではないだろうか。のれんの償却はキャッシュフローに関係していない。償却して与信が揺らぐかどうかは、与信をする金融機関の判断で、与信に揺らがない金融機関が支えることになろう。その金融機関の預金者の目が注がれているが・・
なお、有価証券報告書の受理・審査は、証券監査官が財務局に設置され,証券取引法に基づく有価証券届出書又は報告書などの審査事務を所掌している。加えて、証券取引等監視員会が開示をチェックしている。【有価証券報告書の審査・検査・調査 小谷融氏著】【金融庁、虚偽記載問題への対応策公表 大和総研】【金融庁の虚偽記載問題対応策(第二弾)大和総研】しかし、東芝の企業結合及びのれんの開示は投資家の判断が付きかねるが、東芝に関しては指摘がない。金融庁の所管である証券取引等監視員会公認会計士・監査審査会の今後の対応が注目される。

金融庁がオリンパスの粉飾事件を契機として、「主として、財務諸表及び監査報告について広範な利用者が存在する金融商品取引法に基づいて開示を行っている企業(非上場企業のうち資本金5億円未満又は売上高10 億円未満かつ負債総額200 億円未満の企業は除く。以下「上場企業等」という。)に対する監査において実施することを念頭に作成されている」監査基準「監査における不正リスク対応基準の設定」が平成25年3月13日に公表されているが、改めて読んでみるが、国際監査基準に特段加える特に目新しいことはなく、東芝に関して有効と思える規定はない。

2015年8月31日は、東芝が「2015年3月期の有価証券報告書を提出する」と公表していた日である。夕方になって、東芝は、国内外の子会社にあらたな不適切会計が見つかり9月7日まで決算発表を延期すると表明した。報道によると内部通報が相次いだそうだ。このため、監査法人に関連の書類を提出したのが30日になり、監査法人側から決算の監査を終えるのに7日程度かかると連絡を受けたとしています。 前代未聞である。

2015年10月5日、金融庁は、「会計監査の在り方に関する懇談会」(第1回)の開催について」として懇談会を開催した。東芝の監査人(新日本監査法人)の責任を問う報道に、金融庁は自らの責任で判断できず審議会に意見を聞くという方法に逃げ込んだものであろう。日本版SECとして発足した「証券取引等監視員会」は機能しているのといえるのであろうか?平成17年から「開示検査」をしているというが東芝のケースを検査しないで検査しているといえるのでしょうか。証券取引等監視委員会のホームページを見ると米国SECのしていることとは格段に異なることが分かる。日本にプロが存在しているのか不安になる。企業も投資家も、規制当局には、日本的で、官僚ばかりが意思決定し経験豊富なプロが意思決定していないことを見透かしているのだ。特に東芝のケースは顕著であろう。懇談会のメンバーを見てもまともな結論が出るとは到底思えない。議事要旨を見ても、東芝の監査の何が悪いのかさえ総括されず委員が勝手にしゃべっているだけだ。結論は、事務局の緊急庁が用意しているのだろう。

金融庁は素人:
産経ニュース】によると、金融庁の担当者は「新たな方策を練り上げることで、不正の端緒が見つかったときに、仁王立ちして問題を指摘できる監査人を確保していきたい」としているが、中小企業を相手にしている場合はいざ知らず、東芝のように広範囲の事業(パソコン事業、映像事業、半導体事業、原子力事業など)を行って、黒字事業が赤字事業を補完できるケースで単純にそのような監査人を期待するとは現実的ではない。規制当局及び懇談会のメンバーに監査の知識と深く広く実務経験を持った見識ある人がいるとは到底思えない。議論の経緯を注視する必要がある。事務局がどのような方向性で議論を誘導するか見ものだ。前回のオリンパスの時もひどかったが今回はそれ以上であろう。

また、ある報道によれば「9月11日、青山学院大学で日本監査研究学会が開かれた。同学会には、金融庁幹部も出席し、公認会計士に反面調査の権限を与えることに言及、「立法措置もあり得る」と明らかにしたという」 まず、東芝のケースでは、工事進行基準等の不適切会計に対し反面調査が有効とは思えない。反面調査などしている世界の会計監査人がいるとは聞いたことがない。会計士は取引先に直接確認書を発送し直接回答を得ることが求められている。多くの取引先に反面調査など時間的・コスト的に見合わないし、なにより取引先が事業の妨げとなり協力できず非現実的なことは明らかであろう。記事にする記者も見識がない。肝心な日本の監督官庁に会計監査の深く広い知識・経験者いなく理解できていないことが日本の一番の問題だ。

監査法人の指針策定を 公認会計士・監査審査会、千代田邦夫会長】千代田邦夫会長が「監査法人の行動原則を定めたコード(指針)の策定について「いいアイデア。議論する価値がある」と述べ、前向きな考えを示したとあるのは、英国財務報告評議会(FRC)と英国勅許会計士協会(ICAEW)が2010年1月に公表した監査事務所ガバナンス・コード(Audit Firm Governance Code)である。ロンドン証券取引所に上場している会社の約95%を監査している7つの監査事務所が適用している。

10月5日の同日高橋洋一氏は、現代ビジネスに、金融検査官の経験からわかることとして、「新日本監査法人は、日本公認会計士協会からは1999年3月期と2014年3月期の、金融庁の公認会計士・監査審査会からは2011年3月期の、それぞれの東芝決算を抽出して検査を受けたが、いずれも適正と判断されたというのだ。
2011年3月期と2014年3月期は、東芝が粉飾決算を行っていた期間(2009年3月期〜2015年3月期の第3四半期)に該当する。
冒頭の公認会計士・監査審査会千代田邦夫会長は、東芝の一件を「粉飾決算」というが、自らが新日本監査法人を検査して見逃していたわけだ。」としている。【ユーチューブ・金融庁も見逃していた】【品質管理リビュー(勧告)

2015年11月9日、東芝は、「役員責任調査委員会の調査報告書公表についてのお知らせ」を公表した。その内容を見ると、明らかな粉飾であることが明確に示されている。経緯を読むとほかの粉飾決算と変わりない悪質なものだ。不適切会計という生易しいものではない。
東芝粉飾、調査報告書に重大な疑惑 意図的に室町社長への追及せず、当事者は無罪放免】by文=湯之上隆/微細加工研究所所長

2015年11月26日東芝の第3者委員会が取りまとめた報告書に、「不合格」の評価
弁護士など8人で構成される「第3者委員会報告書格付け委員会」が、東京都内で会見し、東芝の会計処理問題を調査した第3者委員会の報告書について、委員の3人が、最低評価の「不合格」とした。調査の範囲を自ら設定せず、東芝から委嘱された案件のみ調べたことを問題視したほか、子会社で、アメリカの原子力大手「ウエスチングハウス」の減損処理を調査しなかったことについても、「依頼会社からの独立性の欠如は致命的」と厳しく指摘した。

東京 27日 ロイター] - 東芝は27日、米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)社の業績の詳細について説明会を開き、2014年度―2029年度の15年間で、原発の新規建設64基の受注を目指す計画を公表した。東芝の連結決算に計上されている3400億円規模のWHの「のれん代」の評価は「適正」とあらためて強調。・・東芝は、減損会計をした志賀重範副社長ダニエル・ロデリックWH社長(2012年9月25日付で米GE日立ニュークリア・エナジー上級副社長だったダニエル・ロデリック氏をCEOとして招聘。志賀氏は再び会長職専任になった )らが同席したそうだ。東芝は、シェールガス革命の影響について答えていない。この説明で納得するする者がいるとは思えない。監査人の交代が報じられる中、新たな監査人がこの説明で納得するとは思えない。

日経ビジネス11月28日】「(巨額減損について)私は全く認識していなかった」 東芝の室町正志社長は質問した記者に対して、こう言い切った。
いずれも室町社長に向けられた質問だったが、最高責任者が直接回答することはなかった。電力・社会インフラ事業グループを所管する志賀重範・副社長や、平田政善・CFO(最高財務責任者)【不正会計時のCFO前田恵造氏)が財務顧問に就任】がマイクを奪い、東芝の「公式見解」を代弁したからだ。
参考挙動不審の米ウェスチングハウス?2012年05月29日の記事・・4月1日付で社長就任予定だったジム・ファーランド同社米州地域総責任者が、突如この3月末に退職。2日付で東芝常務の志賀重範氏が暫定的に社長に就任した。4日、退社したファーランド氏は、米重機大手のバブコック&ウィルコックスCEOに就任。WH内における経営路線の対立が一因とも言われている。】

2015年11月29日、ウエスチングハウスのCEOも務めた志賀副社長が会見の場に「揺れる東芝 原子力のキーマンは何を語ったか」によれば、「福島の原発事故の影響で、20%程度で伸びてきた売上高平均成長率は鈍化するだろう。その分、業務効率を高め、利益率を上げることに注力する。利益は今までの成長軌道をさらに高くしたい。再び新規建設が伸びるので、その時に高収益・高成長を目指す」と語っている。安全基準が厳しくなりコストアップになることが明らかな中で夢のようなことを語っている。

東芝は米国SECに登録していないが金融庁の開示ルールで米国会計基準の適用を許されている会社だ。もし、米国SECに登録していれば開示について、重要な開示が会計基準で要求している開示に十分でない場合、SECのスタッフがコメントレターで企業に書面によって質問され回答を要求されたり、開示の改善を促されることにより投資家により適切な情報開示をすることで投資家保護を行っている。残念ながら、東芝は監督当局の無チェックに近い状況で今日を迎え、情報開示に消極的になって世間を騒がせることになった不幸な会社と言えよう。監督当局が米国のように専門家が開示のチェックをしていれば会社の開示姿勢ももっと前向きになっていたことと思われる。【米国SECのコメント・レターの仕組み、 SECコメントレター デロイト翻訳版

2015年9月30日、金融庁・証券取引等監視委員会 佐々木清隆事務局長(7月から現職)は、東芝の不適切会計に関する件でブルームバーグに対して【佐々木氏は東芝で問題となった開示検査についても重視していく意向を示した。「適正な開示が行われないということは、市場の公正性にとどまらずコーポレートガバナンス(企業統治)、日本経済発展の上でも極めて重要な問題だ」と述べた】という。開示検査をしてこなかったことを監督当局自ら露呈している。現に、佐々木清隆氏の「監査の役割」には、三様監査(内部監査、監査役監査、会計監査人監査)で当局検査は金融機関の場合としているのだ。今後、SECのスタッフ・コメント・レターのように透明性の高い形で検査できるかが問題だ。法律の裏付けと、専門性の高い良質のコメントレターを発出と回答の入手が透明性高く行われる必要があるからである。過去に一度も実施されていないこうした開示チェックは投資家保護に重要な要素であるからだ。【証券取引等監視委員会の過去20年について】・・平成24年度末の定員は714人だそうです。【開示検査に関する基本指針】・・本基指針は、平成25年8月30日から施行する。米国SECのコメントレターのような透明性がなく不透明で典型的な裁量行政となっている。

2015年12月7日金融庁・証券取引等監視委員会は、東芝に73億7350万円の課徴金を課すよう金融庁に勧告した。一連の不適切な会計処理が投資家に与えた影響が大きかったと判断した。課徴金の金額は今までで最大だったIHIの約16億円を超えて、最大規模になる見通し。東芝はすでに引当金として84億円を計上している。 金融庁は監視委からの勧告を受け、東芝の主張を聞く審判手続きに入る。東芝が違反事実を認めれば、通常1カ月前後で課徴金命令が下る。【日本経済新聞

7日同日、監視委の佐々木清隆事務局長らが記者会見し、金融庁と連携して東芝の企業体質の改善を今後も監視するとともに、開示検査の手法を見直す方針を明らかにした。企業の開示書類に重大な虚偽記載があるかどうかを調べる監視委の検査は、これまで内部通報窓口への情報提供などを端緒に実施してきた。東芝への検査も今年2月、監視委に寄せられた内部通報がきっかけだったが、東芝では以前から不適切な会計処理が常態化。当局には「早期に問題を発見し指摘できていれば、ここまで傷口が広がらなかった」との反省がある。【証券取引監視委企業への監視体制を強化東芝問題受け】・・開示検査は、会計基準に準拠して開示しているかどうかの検査をしていればよいのであって、事務局長は勘違いしている。SECの開示検査を知るべきだ。会計監査の経験のない事務局長では理解に限界があるようだ。

公認会計士・監査審査会は、12月8日、会計不祥事を起こした東芝の監査を担当した新日本監査法人に対し、行政処分をするよう金融庁に勧告する方針を固めた。新日本が監査法人として果たすべき監査をしていなかったと判断した。月内にも勧告し、金融庁が行政処分の詳細を決める。【日本経済新聞
15日、「新日本有限責任監査法人に対する検査結果に基づく勧告について」と出して、行政処分その他の措置を講ずることを勧告した。監査審査会天谷知子事務局長は15日、「改善策の徹底が不十分で甘い」と新日本を強く批判した。勧告内容を見ると具体性に欠け曖昧なところが多く分かりにくい。
新日本の理事長ら経営層から個別企業の監査を担う「業務執行社員」まで、幅広い層の責任を明記したものの、勧告に具体的な案件として「東芝」の記載はなかった。監査委員会が東芝の個別案件にとどまらず、新日本の監査全般を問題視している様子が浮き彫りになる。【東芝の粉飾を見逃した「新日本監査法人」が存亡の危機

公認会計士・監査審査会前会長の友杉芳正氏の「監査品質の向上を目指して」を見ると、金融庁の開示検査の視点が欠けており、投資家保護の目的で設置された金融庁の役割が全く欠如しているのが分かる。「証券取引等監視委員会」は、アメリカの 「公開会社会計監督審査会」( PCAOB : Public Company Accounting Oversight Board ) に倣って設置され、その役割はPCAOBに似ている。開示検査は米国証券取引委員会(SEC)が行っており、これは、日本の証券取引等監視委員会の役割ということだろう。しかし、金融庁の中で縦割り行政となってしまって、投資家保護の情報開示検査が二の次になってしまっているのだ。少なくとも金融庁設置法の趣旨の投資家保護(投資者その他これらに準ずる者の保護を図るprotect investors)をもっと考えるべきだ。

2015年12月22日クリスマスが迫った日に、金融庁は、東芝の監査法人と担当会計士に対する処分を「監査法人及び公認会計士の懲戒処分等について」として発表した。いかにも金融庁らしい処分である。監査法人への課徴金など事前にリークして10日の朝日新聞が報道していた通りとなった

1.監査法人
(1)処分の対象者   新日本有限責任監査法人(所在地:東京都千代田区)
(2)処分の内容    契約の新規の締結に関する業務の停止 3月(平成28年1月1日から同年3月31日まで)
              業務改善命令(業務管理体制の改善。詳細は下記4参照)
              ※併せて、同日、約21億円課徴金納付命令に係る審判手続開始を決定
(3)処分理由  
新日本有限責任監査法人(以下「当監査法人」という。)は、株式会社東芝(以下「東芝」という。)の平成22年3月期、平成24年3月期及び平成25年3月期における財務書類の監査において、下記7名の公認会計士が、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。
当監査法人の運営が著しく不当と認められた。

2.公認会計士 7名の担当公認会計士が業務停止6か月から1か月
3.事案の概要・・すでに報道されている粉飾事案のみ。 背景にあったとされるウエスチングハウス社の「のれん」の減損に関する情報開示については一言も記述がない。

東芝事件の金融庁の処分は、東芝に対する会計基準違反であれば会計基準の○号○項の規定に違反し〜、新日本監査法人に対しては、監査基準違反であれば、監査基準○号○項の規定に反し〜というように、具体的に基準違反であることを明示すべきだ。再発防止に役立つし、基準に不備があれば整備すべきだ。

東芝の不正会計事件を含めて、【わが国では、社会的に影響の大きな会計不正が起こっても、その状況や内実が監督官庁(金融庁)や会計プロフェッション(日本公認会計士協会)から十分に明らかにされることはない。】by鳥羽至英早稲田大学教授著

東芝に課徴金73億円勧告 改革監視、異例の継続【毎日新聞】・・佐々木清隆事務局長のコメントが印象的

新日本有限責任監査法人が7月22日、数百人いる幹部社員(パートナー)むけに開いた「臨時パートナーミーティング」で持永勇一専務理事が、「公認会計士・監査審査会(当時は佐々木清隆事務局長)からは2011年(平成23年)3月期の、それぞれの東芝の決算を抽出して検査を受けたが、いずれも適正と判断された」と説明した、として処分されていないようだ。【WEBRONZAより

東芝の意向を受けた第三者委員会の報告書に纏められた粉飾を処分理由としており、米国会計基準に関する財務情報(のれんの減損を含む)についての言及はない。所謂、証券取引等監視員会のパンフレットにあるように平成17年7月から「開示検査」をしているはずである。
米国SECのように開示検査コメント レター Filing Review Process)を効果的に行っていれば東芝も適切に準拠して適正な開示をして粉飾はなかったかもしれないし、監査法人の監査の失敗もなく処分されることもなかった可能性はあると考えている。金融庁の処分は、行政の怠慢を隠してスケープゴートにされた感がある。【米国SECのコメント・レターの仕組み、 SECコメントレター デロイト翻訳版

規制当局は、投資者保護のために、企業が会計基準に準拠して適切に情報開示しているかどうかについて、自ら作成したパンフレットの通りに開示検査をすべきだ。企業は、規制当局の監視によっても適切な情報開示をする姿勢を示すことになる。現在の監査報告書には限界があり、改善に向けて米国及び国際会計士連盟は監査報告書の報告内容を検討中である。第一次的には、投資家に正確な情報を適時適切に報告させ、規制当局の処分を受けるという不幸は未然に防止し、不祥事の再発防止に努めるべきだ。

来年度の監査契約を辞退 ・・追加情報
「東芝」は「新日本監査法人」から来年度、監査の契約を辞退する申し出があったことを明らかにしました。辞退の理由について新日本監査法人では「不正な会計処理の問題に関する第三者委員会の報告書で、東芝では長年にわたり、組織的な隠蔽が行われていたと指摘していることを踏まえた」としています。これを受けて東芝では、代わりとなる新しい監査法人を選ぶ作業を進めていて、決まりしだい、公表することにしています。

新日本監査法人は、2015年12月22日付(金融庁の行政処分発表の日)に、「弊法人の責任の明確化について」と題した文書を公表した。理事長は1月末退任、品質管理部長は8月6日付で職を解任、常務理事11月30日付退任、関係者として東芝の監査担当の業務執行社員6名は12月21日付退職、月額報酬減額が1月より、理事長50%1か月(1月退任する)、副理事長2名40%3か月減額、経営専務理事(Q&RM管掌))1名40%3か月減額、経営専務理事2名30%3か月減額、常務理事20%3か月減額。その他として、東芝の監査契約を辞退します、としています。かなりぶっきらぼうな文書です。同日公表の「幣法人の改革(案)」は、公表が遅いし内容は目新しいものはなく今までの内容が酷いことを証明しているように見える。

12月24日、元検事でIHIの監査役の郷原信郎氏が、【新日本監査行政処分から見えてくる「東芝会計不正の深い闇」】と題しての記述があり、興味深いのは品質管理本部長のM氏の行動だ。加えて、監査役として「来期の監査契約を行うかどうかを判断する重要な責務を担うことになる」として、山口利明弁護士も指摘している「課徴金納付命令を受けた新日本の再任の可否について判断を適切に行わなければ、善管注意義務違反に問われることになる」としている点だ。新日本監査法人の存亡の危機が現実味を帯びてきたかも知れない

品質管理トップの持永勇一・専務理事も処分は報酬減額にとどまり、同様に居座ったまま。「彼も出世は確実」(新日本関係者)というから自浄作用があるとは言い難い。【ダイヤモンド・オンライン


ウエスチングハウス社の「のれん」を減損しないまま引き受ける監査法人があるとは思えない。監査を引き受ける条件として、リスクを避けるために、必ず、「のれん」の減損を条件としてくるだろう。東芝の説明に説得力はない。かつ、新日本監査法人の金融庁の処分内容を見ると監査報告書に疑念があるためだ。なお、上場を維持するとなると、たな卸があるので年度末以前に監査人の変更が必要となる。

2016年1月24日、毎日新聞は、「原発で損失計上検討 米子会社は1600億円」と題して、「関係者は「損失処理の手立ては考えている。あまり時間はかけられない」と指摘。損失計上した場合の金額は、WHの損失計上(1600億円弱)と同規模との見方もある」と報じている。真偽のほどは分からないが、PwCあらた監査法人が後任の監査法人であれば、引受ける条件として当期末に十分な減損を計上することを約束しているはずだ。

2016年1月27日東芝は、PwCあらた監査法人を来年度(2017年3月期)の会計監査人として内定したことを公表した。もともと1962年2月のADR発行時の監査人はプライスウオータハウス・クーパー(PwC)で2001年3月期まで40年近く監査をしていた。元に戻っただけのことだが、PwCあらた監査法人はリスクを避ける条件を東芝がのんだものと思われる。なお、元金融庁長官五味廣文氏は一時期プライスウオータークーパー総合研究所理事長に天下っていた。無関係ということはない。【我が国の監査は役に立つのかbyPwC代表執行役木村浩一郎氏2015年10月05日】
東芝の監査委員会委員長佐藤良二氏(トーマツOB)は、東芝も約5年に1回、見直しを行う方針だ、という。欧州のローテーションがなぜ東芝で有効なのか分からない。問題の米国子会社ウエスチングハウス社の監査を考えて発言しているのか、不思議なことを言う人だ。今は、事業に専念してもらって事業基盤を固めをしてもらう時ではないのか。監査委員長が適格者だろうか?【定期交代制の前に監査法人がやるべきことby木村浩一郎氏2015年12月8日】

監査法人検査を通じて見えてくる上場会社の課題】by佐々木清隆氏(現・証券取引等監視委員会事務局長)、公認会計士・監査審査会事務局長兼検査局審議官、2005年〜2010年の間、証券取引等監視委員会特別調査課長と総務課長を合わせて5年間従事。・・@2年に1度、大手監査法人は1000社ほどの上場会社を監査しており、監査事例としてわずか10〜15社をピックアップして審査している(13ページに記載)。A監査人と監査役のコミュニケーションが不十分だ(11ページに記載)。・・処分ばかりで、金融庁の使命である「有価証券の投資者の保護」の視点がどこにもない。大きな権限を持った規制当局者には cool heads but warm hearts(冷静な頭脳と温かい心情) が欲しいものである。

2016年1月27日金融庁審査会、大手監査4法人の検査厳格化へ、として大手監査法人に対する検査回数の引き上げを検討する、そうだ。これで、投資者が保護されるのでしょうか?

2016年2月10日、折しも、「堤義明氏らが西武側に226億円賠償へ 訴訟の大半が決着」と報道があり、西武鉄道の2004年3月期の有価証券報告書虚偽記載の件がほぼ決着したようだ。「堤氏と旧経営陣4人が、保有していた西武HD株の売却益などから計約255億円を支払う。残りは裁判の遅延損害金に充てる。西武HDはこの金額を16年1〜3月期決算に特別利益として計上する。かつて上場していた西武鉄道などが株主から起こされていた損賠訴訟は十数件あったが、訴訟の大半が決着したため、西武HDは昨年8月、同社がそれまで支払ってきた金額を堤氏らに請求していた。西武HD関連株をすべて手放した堤氏は「会社に資産の提供を申し出、身をゆだねることとした」とのコメントを発表した。

2016年3月3日、「東芝、2千億円借り入れへ…リストラ費用確保」と題して、「経営再建中の東芝が、半導体事業の縮小などに伴うリストラ費用を確保するために、三井住友銀行やみずほ銀行など主力3行から計2000億円規模の融資を今月中にも受ける見通しとなった。東芝は経営再建策として半導体の一部やパソコン、テレビ、白物家電など事業の売却を進めている。これに伴い、今月末までに、計1万人を超える人員削減を実施する計画を立てている。主力行からの新たな融資を主にリストラで支払う退職金にあてる。 来週にも売却先を決める医療機器子会社「東芝メディカルシステムズ」の売却収入の一部を、金融機関への返済にあてる方針だ。東芝メディカルの売却額は6000億円を大きく上回ると予想されている。」と厳しい状況を報じている。

2016年3月8日金融庁は、会計監査の在り方に関する懇談会の提言」を公表した。案の定、実効性が疑問である提言が出てきた
○監査法人のマネジメントの強化→監査法人のガバナンス・コードの設定・・・すでに英国で導入され新日本監査法人の提携先のEYアーンスト・アンド・ヤングは導入済み。グローバル事務所として日本も導入済みと考えていい。
○会計監査に関する情報の株主等への提供の充実→企業による会計監査に関する開示の充実・・・具体的な内容に及んでいない。
○企業不正を見抜く力の向上→会計士個人の力量の向上と組織としての職業的懐疑心の発揮・・・・OJTの充実だろうが、優秀な会計士がどれだけいるかにかかっている。
○「第三者の眼」による会計監査の品質のチェック→監査法人の独立性の確保・・・当局の検査が独立性を失わせるだろう。既に当局に対して従順で、独立性は希薄である。気迫に欠ける。大手ほど・・監査報酬が高くなる竜付けに使えるため。効率的監査ができなくなり監査報酬の高騰に繋がった。当局のお墨付きがあれば、資金的な余裕のある大手監査法人ほど有利となり安泰となる。当局の肥大にもつながり、最悪の状況になってきている。
○高品質な会計監査を実施するための環境の整備→会計監査に関するガバナンスの強化・・・形式的なものになろう。

イギリスやオランダを引き合いに出しているが内容は曖昧でその効果は未定であろう。不思議で奇妙な文章だが、このような提言を受けた公認会計士自身が反論できず自らを恥じるべきかも知れない。その一方で、投資者保護の制度設計をしなければならない金融庁の役割は一切触れていないのでは問題の解決にほ程遠いといえる。驚かされるのは、「当局と大手・準大手との定期的な対話(協議会の設置)」としている。競争を制限し、当局を含めた談合を公式に認めるというバカげたもととなっている。第二の東芝が出たらどうするのだろう。揉み潰し、無いことにするということだろう。大手監査法人の寡占を助長することになろう。


2016年4月23日、毎日新聞は、「経営再建中の東芝は子会社の米原子炉メーカー、ウェスチングハウス(WH)の資産価値を見直し、2016年3月期連結決算に3000億円弱の損失を減損処理として計上することが22日、分かった。同時に医療機器子会社の売却益を計上することで、当初見込んでいた最終(当期)赤字は過去最大の7100億円から5000億円規模に縮小する見通しとなった。 」と報じた。これが本当であれば、のれんは時価を超えているとして減損を拒否していた経営陣は「うそ」をついていたということではないか。虎の子の優良子会社である医療機器子会社を手放して売却益を計上することでのれんの減損を計上したとは再出発に必要不可欠で当たったろうが、減損を計上してこなかったことは粉飾であろう。金融庁の東芝と新日本監査法人の処分は、米国会計基準およびのれんに関する減損について、意識的に記載していない。問題の本質を避けてきたことは、将来に禍根を残すことになろう。減損は、東京電力第一原発の事故に加えて米国でのシェールガス革命によりガス価格の低下で火力発電所の建設に変更となり原子力事業で米国に進出していたフランスのアレバ(電力公社)が2013年7月に撤退を決定したときには減損を計上すべきであったろう。ウエスチングハウス社の株を買収するときに、従前から関係の深い三菱重工が入札するとされていたところ、東芝が高値買いして三菱重工の逆鱗に触れていたものであり、のれん自体が高すぎていたのだ。【2016年4月26日Bloomberg、原子力事業で減損処理2600億円、医療機器子会社の売却益3800億円計上により純損失4700億円(2月時点では純損失7100億円を見込んでいた)となたたことを発表】、【日経ビジネス・・やっと認めた原子力事業の巨額減損】


東芝の事件は、普通の粉飾決算であったことが判明した。つまり、東芝経営陣は、米国会計基準を適用して「のれん」の減価償却費を計上しなくてよいことから、ウエスチングハウス社の株を高値買していたところ、2011年3月の福島第一原子力発電所の事故で大きく目算が外れた。加えて、2013年7月、米国でのシェールガス革命で原発コストの高さが目立ってしまい火力発電所に変更するケースが続出する結果となり、フランスの原発公社アレバは米国市場から撤退を決定している。この時点で、米国会計基準では「のれん」の時価は一挙に低迷したはずである。東芝は、2014年3月期には米国会計基準で減損の計上を迫られていたはずである。

粉飾する企業の行動はどこでも考えることだが、企業を継続するのに、消却するための財源を求めるものだ。つまり、消却するための十分な利益が欲しいのである。粉飾する会社の常とう手段である。東芝の場合は、虎の子の医療機器子会社が高値で売れる唯一の利益ねん出のツールとなった。これに、キャノンが協力をしたという構図である。医療機器子会社の売却益3800億円計上することができると踏んだ東芝は、米国会計基準で処理すべき原子力事業でののれんの減損処理2600億円と公表することとなったのだ。これにより、2017年3月期の監査法人PwCあらた監査法人は監査を引受ける条件が整ったことになる。無論、企業にとっても事業再生の再スタートが切れるということになる。

この事件の本質は、原子力事業の「のれん」の減損処理が本質である。金融庁の東芝に対する課徴金73億円の内容新日本監査法人に対する課徴金21億円の内容は、のれんの減損処理を意識的に除外していると言わざるを得ない。金融庁の「会計監査のあり方に関する懇談会」の提言は核心をついていないものと言わざるを得ない。

なお、例え、東芝が2016年3月期にのれんの減損2600億円を計上したとしても、米国会計基準での減損計上時期は適正とは言えない。少なくとも2014年3月期の減損処理でなければならないだろう。問題を残したまま収束することを当事者は望んでいるようだが、企業も監査法人もスケープゴートとなり不公正な前例を作り将来に禍根を残すことになるであろう。後味の悪い結末であった。金融庁の対応次第では異なる結果を生んでいたと思う。

金融庁は、東芝の意向に沿った第三者委員会の報告書を基に企業や監査法人を処分したが、そこには独自性・独立性がなかった。金融庁が独自に米国会計基準に準拠して開示しているか判断して処分していれば、当然、「のれんの減損」に関する疑問が避けて通れなかったはずだ。第三者委員会の名に相応しくないと批判された東芝の意向を強く反映した委員会報告に依拠した処分は独自性・独立性がなく公正な処分とは言えなかった。金融庁が専門性を備え真に自立性・独立性をもって投資者保護に立ち向かわない限り企業、監査法人の質は向上せず再び同じことが起こるだろう。権力を背景とした処分だけでは改善しないということだ。

過去最大の最終赤字となった東芝2015年度決算by CNET
5月12日に発表された東芝の2015年度(2015年4月〜2016年3月)連結業績(米国会計基準)は、売上高が前年度比7.3%減の5兆6701億円、営業損益は前年の1884億円の黒字から7191億円の大幅な赤字に転落。税引前損益は1566億円から6422億円の赤字、当期純損益は前年の378億円の赤字から4832億円の赤字となった。営業損益と最終損益の赤字はいずれも過去最大となる。 代表執行役上席常務の平田政善氏は「減益要因として、構造改革費用として1105億円の影響があったほか、Westinghouseを含む原子力における2600億円の減損をはじめとした資産評価減で3251億円、不採算案件の引き当てなどで2368億円などが減益要因となった」と説明した。
東芝メディカルシテスムズの売却益として、3817億円を非継続事業からの利益として計上している。 東芝メディカルシステムズの売却益がなければ・・・・・・粉飾が継続されていたということだ。【東芝決算短信

2016年5月23日、東芝、16年3月期決算を訂正 最終赤字4600億円に縮小 ・・米原子力子会社で発生した損失計上が過剰だったとして会計監査を担当する新日本監査法人から指摘があった。税金計算などでも誤りが見つかり、12日の発表数値に比べて前期の営業赤字が104億円、最終損益が232億円縮小・改善した。 連結最終損益は4600億円の赤字(訂正前は4832億円の赤字、前の期は378億円の赤字)だった。【訂正・決算短信】【立ち直れるか・・税金計算などの計算ミスの理由については、東芝代表執行役上席常務の平田政善さんは、「最終行程が税金の計算ということで、正直いってそこにかける時間が確保できていなかった」と述べました。「時間がなかった」では、もはや、言い訳にもなりませんわね。】

金融庁の処分は核心を外していた
東芝の経営者の意向を受け、ウエスチングハウス社の「のれん」に言及しない第三者委員会の報告書に沿って金融庁は、企業と監査法人を処分した監査法人が処分の対象となった平成24年3月期の粉飾額は668億円と平成25年3月期の粉飾額は639億円で合計しても粉飾額は1308億円である。平成28年3月期に計上した「のれんの減損」2476億円である。客観的な情勢から、本来平成24年3月期にはのれんの減損が生じていたはずである。つまり、平成23年3月11日の東日本大地震による東京電力福島第一原発事故発生、米国でのシェールガス革命による火力発電の燃料低下により「のれんの時価の低下」により、早くて平成24年3月期に遅くとも平成25年3月期に「のれんの減損」が生じていて粉飾があったと言わざるを得ない。監査の核心は「のれんの減損」にあった。
金融庁の処分した事項は、顧客への売り上げが計上された時点で原価は計上されて完結されるので自然消滅する。一方、「のれんの減損」は経営者の判断にある。金融庁の処分内容は、核心を外れていた。また、金融庁の「会計監査の在り方に関する懇談会の提言」は的を外していると言わざるを得ない。

減損隠して「若干グレー」新会長は東芝を再生できるかby毎日新聞2016年5月
今年のゴールデンウイークは飛び石連休だった。その谷間の5月6日金曜日、東芝は室町正志社長(66)に代わって新生・東芝の顔になるトップを発表した。社長には綱川智副社長(60)が就任し、空席だった会長に志賀重範副社長(62)が就任する。室町氏は特別顧問に退く。いずれも6月末の株主総会後に正式に決定する。 東芝本社ビル39階の会見室は、連休の谷間とあって、報道陣の数はいつもより少ない。壇上には、室町、綱川、志賀の3氏と、指名委員会の委員長を務めた小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長も加わった。
ウェスチングハウスが2012年度と13年度に減損をし、その開示責任があったのは志賀さんだ。ウェスチングハウスの中だけでとどまっていたのか、ウェスチングハウスの会長としてどういう判断だったか」志賀氏は、「昨年11月に話したように、開示については十分な認識がなかった。ウェスチングハウスの中でとどまっていたという事実はない。東芝にはすべての財務諸表は提示している」と答えた。

東芝「倒産」はついに秒読み段階か ?取締役会議長が明かした内情by週刊現代2017年1月23日
今回、東芝の取締役会議長を務める前田新造氏が本誌の取材に応じ、その内情を率直に明かした。以下、前田氏との一問一答である。
――今回の一件を最初に認識したのはいつか。
「会見で発表した2016年12月27日の1週間〜10日ほど前に取締役会で集まった際、減損の懸念があると報告されました。正直、驚きましたよ。なにせ、フラッシュメモリ事業が頑張っていて、インフラ事業のほうも受注案件が増えて、ようやく黒字に回復できるというところまできたかな、と思った矢先でしたからね。最初に話を聞かされたときはショックでした」

1月27日午前に開かれた東芝取締役会で、半導体事業の分社化が粛々と決議されたが、その直後の対策会議で東芝の社外取締役は、経営陣の説明に声を荒らげた。「そもそも、危機を招いた原発をどうするつもりなのか!」。詰め寄る社外取締役に、うつむくばかりの経営陣。社外取締役たちの底なしの不安がついに爆発した。【東芝を再転落させた「リスク管理不在経営」のDNA

2017年1月29日、東芝、原子力事業を統括する会長が退任へと題して、米原子力事業で7000億円規模の損失が見込まれる東芝は、原子力事業を統括する志賀重範会長を退任させる方針を固めた、という記事が躍った。志賀氏は米原子力発電子会社「ウェスチングハウス(WH)」の会長などを経て東芝会長に就任した。主力事業である原子力での経験を買われ、エネルギー事業の統括を担っていた。今回の損失の端緒となった米原発建設会社「ストーン・アンド・ウェブスター(S&W)」は、WHが2015年12月に買収した。志賀氏は当時、電力担当の副社長で、S&Wの買収にどこまで関わったか不透明なところが残るが、今月に入って「責任は相当大きい」との声が高まっていた。WHのダニー・ロデリック会長も、退任の方向で調整が進んでいる。

2017年2月6日、ダイアモンド紙は「東芝を再転落させたリスク管理不在経営のDNA」と題して、リスク管理がないまま、再び巨額損失を出してしまった新ガバナンス体制が全く機能していないことが露呈されかつ原子力事業の責任者でる志賀会長とロデリックの退任の方向を伝えている。

2017年2月14日日本経済新聞は、「東芝が14日に開示する2016年4〜12月期の決算短信に、事業継続のリスクを示す「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する注記」を初めて記載することが分かった。この注記は業績や財務の悪化で事業の先行きに不透明感が高まった時に投資家に注意を促す意味がある。欠陥エアバッグ問題を起こしたタカタも4〜12月期の短信に記載した。 東芝は米原子力事業で6000億〜7000億円の損失が発生したもようだ。…」と伝えている。

発表されない決算、東芝に「不適切」の影再び ・・2016年4〜12月期決算の発表期日を最長で3月14日に延期すると発表した。当初はきょう2月14日昼12時に発表する予定だった。延期を決めた最大の原因は「不適切行為」の疑いが再び発生したこと。今度の舞台は傘下の米原子力大手ウエスチングハウス(WH)である。1年ほど前の米原子力サービス会社の買収を巡り、「内部統制の不備を示唆する内部通報があった」という。またも失態を繰り返した東芝。綱渡りの経営はいつまで続くのか。14日の東芝を追う。

東芝、原発関連の損失は7125億円 債務超過の見通しby朝日新聞2017年2月14日20時26分
東芝は14日、昨年4〜12月期決算(米国会計基準)で米原子力事業を巡って7125億円の損失を計上し、純損益が4999億円の赤字(前年同期は4794億円の赤字)になるとの見通しを発表した。昨年12月末時点の自己資本はマイナス1912億円と債務超過に陥る。半導体事業を分社化する新会社株式の売却割合を、これまでの20%弱から過半に引き上げることも検討し、今年3月末の債務超過回避を目指す。

東芝の“思い上がり”が生んだ原発「無限責任」by小笠原哲氏日経ビジネス2017年2月16日
排他的かつ取り消し不能の固定価格オプションが発効したら、EPC(設計・調達・建設)契約が変更され、プロジェクトの残りのコストが確定する」2016年5月26日、米スキャナ電力が1通のプレスリリースを配信した。同社が発注し、東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)がサウスカロライナ州で建設中の「VCサマー2/3号機」について、一定額以上のコスト負担を拒否するという内容だ。具体的には5億500万ドル(約570億円)を支払って「固定価格オプション」を行使することで、スキャナ電力が支払う原発建設コストの総額を最大76億7900万ドル(約8680億円)に固定する。建設工事に関してこれ以上のコスト超過が発生した場合は、スキャナ電力ではなくWHが支払うように契約を変更する。11月に米国の規制当局が承認し、実際にオプションが発動した。
東芝は本件を開示していないが、広報担当者が上記の内容を認めた。ある関係者は、WHが米ジョージア州で建設中の「ボーグル3/4号機」についても同様の契約になっている可能性を指摘する。

「契約変更の結果、WHは“無限責任”を負わされることになった」と、東芝原子力部門の元幹部は説明する。東芝の米原子力事業における損失が雪だるま式に膨れあがった原因の1つがこれだ。固定価格オプションが発動されたことで、WHはコスト超過分を電力会社に転嫁したり、交渉したりできなくなったのだ。

 東芝は2017年2月14日、WHが米国で建設中の4基の原発について、労務費や設備調達費用などの合計が当初の想定より「61億ドル(約6900億円)」も増加したと発表。この日の記者会見で畠澤守・執行役常務は「現時点からプラントが完成するまでのコストを保守的に積みあげた」と説明し、コスト超過分を含めた7125億円を減損損失として計上した


東芝の半導体入札、評価2兆円が条件 売却4月以降by日本経済新聞2017年2月22日 (参考:NANDをはじめとする半導体事業の責任者東芝SDS社社長成毛康雄社長の事業展望
経営再建中の東芝が検討を進めている半導体メモリー事業の分社で、出資を検討する企業やファンドに新会社の企業価値を2兆円以上と見積もるように求めたことが分かった。3月末としていた株式の売却時期も4月以降に先送りする。時間をかけて資産内容を吟味してもらい、売却益を最大化する狙いだ。米原子力事業を巡って計上する巨額損失の影響を補う。 東芝は3月下旬に臨時株主総会を開き、同月末のメモリー分社を正式決議する。

(参考:東芝再生の中核・フラッシュメモリー、サムスン追撃の勝算(成毛康雄(東芝副社長)byダイヤモンド・オンライン2016年11月9日
     東芝4度目の危機(2)なぜ俺たちがby日経新聞2017年2月22日)

優良企業の東芝メディカルを起こした綱川智社長も悲劇的な社長であるが、稼ぎ頭のフラッシュメモリーの責任者である成毛康雄副社長も悲劇的だ。共に、原子力事業とは無縁な人たちだ。

東芝は3月14日、この日が期限だった2016年4〜12月期連結決算の発表を再度延期すると発表した。米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)の内部統制問題をめぐり、監査法人から決算の承認が得られなかったのが原因だ。WHの経営者が部下に対して「不適切なプレッシャー」をかけた問題で、追加調査が必要な状況に追い込まれた。記者会見した綱川智社長は「独立監査人のレビュー報告書を受領できていない。ステークホルダーの皆様には、改めて深くおわびを申し上げます」と陳謝し、4月11日までに決算を発表する方針を示した。

東芝の原発子会社、28日にも米破産法申請・韓国電力公社に支援要請」by日本経済新聞2017年3月27日2:00
東芝の経営危機の主因である米原子力子会社、ウエスチングハウス(WH)が米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請する方針を決めたことが26日わかった。WHが28日にも開く取締役会で正式に決議する見通し。WHは適用申請後の支援先として韓国電力公社グループに協力を要請した。実現すれば東芝はWHを連結から切り離すことができ、再建への道が開ける。
東芝は、決算の日直前にドタバタする。昨年も東芝メディカルの売却で年度末にドタバタしていた。

東芝、2017年3月期の最終赤字1兆円超、債務超過6200億円 国内製造業で過去最大 by日本経済新聞2017年3月29日16:25
経営再建中の東芝は29日、傘下の米原子力大手ウエスチングハウス(WH)など2社が米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用をニューヨーク州の連邦破産裁判所に申請したと発表した。2社の負債総額は計98億ドル(約1兆900億円)。これに伴い、東芝の2017年3月期の連結最終損益が最大で1兆100億円の赤字(従来予想は3900億円の赤字)となる可能性も発表した。赤字額は09年3月期に日立製作所が記録した7873億円を上回り、国内製造業としては過去最大となる見通しだ。
これによって東芝の債務超過額は17年3月末で6200億円となる可能性も明らかにした。これまでの債務超過額見通しは1500億円としていた。 17年3月期からWHグループは東芝の連結対象から外れ、米国中心の海外原子力事業から撤退する道が開けた。
WHが原子力建設サービス会社を2015年末に買収したが、人件費や材料費などで想定外の費用が膨らんだことで事業継続が困難となった。東芝も7125億円の損失を計上する見込みとなり経営危機の主因となった。東芝はWHの破産法申請について午後5時45分から東京・港の本社で記者会見を開く。綱川智社長らが説明する。【TouTube:東芝が米原発子会社WHの破産申請承認受けて記者会見(2017年3月29日) 】

2017年4月11日、東芝の公表した四半期報告書は多くのものを開示しており、日本の開示制度、監査制度、金融行政などがみられる。市場関係者は現物を読んでみるべきだ。
2017年4月12日、麻生金融相、東芝決算「監査法人の意見不表明の原因説明が重要」 として、「企業と監査法人においては意見の不表明に至った経緯、理由を投資家に対して説明責任を果たすようしっかり対応してもらうことは重要だ」と述べた、という。14日の報道はこの発言を受けて行われた模様だ。とんでもない大臣だ。監査人の独立性を脅かす愚行だからだ。

2017年4月14日、金融庁に提出した東芝の第3四半期報告書を受領して3日後には「<東芝>PwCあらた監査法人を調査へ 金融庁審査会」の報道があった。本決算の前にPwCあらた監査法人へ調査に入る不可解さは何なんだろう。

2017年4月26日、日経は、「東芝が決算の会計監査を担当しているPwCあらた監査法人を変更する方針を固めた。米原子力子会社の過去の会計処理などを巡り意見が対立し、2016年4〜12月期決算は監査法人による「適正」との意見を得られなかった。17年3月期の本決算の監査でもあらたとの溝は埋まらないと判断し、株式の上場維持へ向け準大手の監査法人を軸に後任選びを急ぐ。」と報道した。【朝日新聞報道

なお、国際監査基準210号監査契約の約定項目の同意Agreeing the Terms of Audit Engagements」には、監査契約の締結前の範囲の制限として「7. 監査人は、提案された監査契約の約定項目で経営者又は統治責任者が監査人の作業範囲に制限を課しており、その制限が財務諸表に対する意見の不表明という結果を招くと監査人が確信するようなものである場合、法令又は規則がそうすることを要求していない限り、そのような制限された契約を監査契約として締結してはならない」として監査契約を締結する際に、意見不表明ということが確信するような場合は監査を引受けてはならないとしている。東芝のケースはこれに当たるだろう。

東芝事件は、投資家保護の企画立案してきた金融庁の施策を写した現実の究極の姿だ。@形ばかりの米国会計基準の適用、A官僚の任意裁量による企業監査法人の処分、B実体のない形ばかりのコーポレート・ガバナンス、D監査人の変更によるオピニオンショッピングを可能に思わせる監査基準(監査契約時の基準がない)は金融庁の行ってきたこと。企業と直面している専門家がいない官僚が机上で施策(形式的な作文を作る)する結果が、東芝という形式で済ませる日本企業を生んだことは確かだ。

金融庁は、審議会を通じて投資家保護の企画立案をしていることになっているが、実質は事務局をしている総務企画局の官僚が行っている。総務企画局は、金融庁のホームページを見ても分かるように頑なに扉を閉めており分かりにくい存在。過去の施策を見ると、その企画立案は事後の検証をしたことがない。例えば、オリンパス事件で設定した「監査における不正リスク対応基準」が東芝事件にどう役立ったのかなど事後検証は皆無なのだ。また、2015年の東芝の不適切会計を受けて2016年3月に「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言が公表されたが、事後検証することもなく、2016年12月に米国子会社の突然の巨額損失の計上となっている。提言は、@ガバナンスコード(統治指針)の導入、A監査法人の交代制の調査・検討、B監査報告書の長文化による透明性の向上の3点だ。どれをとっても今回の東芝事件とは関係の薄いものだ。そもそも、東芝事件の核心はウエスチングハウス社の巨額な「のれん」に関わるものであることは周知の事実であるが、東芝の設置した第三者委員会の報告書が会社の役員からの依頼で作成されたが、「第三者委員会の報告書では、東日本大震災以降の原発事業の環境変化や、買収した米ウェスチングハウスの減損問題にまったく触れていない。東芝からの委嘱の「範囲外」ということのようだが、なぜあえて、そこに触れないのか。不正を指示してまで巨額の利益かさ上げを行った本当の原因は、実は原発事業にあったのではないか。そんな疑念が残る」ものであった。そうした報告書を基に、金融庁の東芝に対する処分や新日本監査法人に対する処分が行われている。東芝事件一つをとっても、事件の本質を深く分析もせず「懇談会の提言」を纏めて済ます官僚の仕事が日本的企業の東芝を生んだと思う。官僚は民間企業や監査法人を処分して済むのかもしれないが、せっかく育った企業の技術や、監査制度は深く傷つくことになる。多くの不幸を生むことになる。イインサイダー取引や、株価操作など意図的に私益を貪る犯罪と、情報開示の虚偽記載と同列にして犯罪者を作り出そうとする金融庁の姿勢は納得できない。その後、金融庁は沈黙を続けているのみだ。

金融庁は、企業や監査法人を調査をして処分している。つまり、当事者を直接調査しており原因分析が可能な立場にある。そして、処分に当たって、処分の原因となった会計基準違反であれば、具体的に、会計基準のどの規定に違反しているのか(会計基準に具体的規定がなければ会計基準の不備を特定できる)を明らかにし、監査については、監査基準の具体的規定のどこの部分に違反していたのかを明らかにすることで、他の企業にとっても、監査人にとっても二度と同じ過ちを犯さないようにすることができる。これによって再発が抑止でき投資家保護に役立つことができる。しかし、いまだかつて調査してきた金融庁からは、処分の内容は、官僚の裁量のような不明瞭な文書で処分が行われている。しかも役所には、計画(Plan)→実行(Do)→チェック(Check)→改善(Action)がない。マスコミも学者も指摘がない。会計士協会は恰も金融庁のポチのようで独立性が疑われている。投資家保護には透明性を確保することや、金融庁も会計士協会も独立性を保持して切磋琢磨精進することで市場の信頼性を得られると信ずるものだ。

2017年5月15日、東芝は、2017年3月期、監査人了承なしで▲9400億円の当期純損失、▲5400億の債務超過を公表した。
同日の決算発表に、大西 康之氏は、「東芝、決算発表できないまま言及した「400億円」規模のリストラ計画」で、不気味なほどに明るい平田氏(平田政善専務)として「平田氏は何を聞かれても、「はい、はい、どーもー」 と明るく答えた。 この会社はすでに壊れている」と記している。核心を突いた記事を書いている。なお、決算発表には、「出席者は綱川智社長と平田専務の2人。 これまで2人の横に控え、面倒な質問を一手に引き受けてきた佐藤良二監査委員会委員長の姿はなかった。ついにシナリオライターのデロイト・グループが匙を投げたということか」と記している。

2017年7月20日金融庁は「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第一次報告)を公表した。この中で、6ページに「東芝は、証券取引法監査が導入された1951 年から会計監査を受けている。新日本監査法人は、同監査法人の前身の監査法人時期を含めると約47 年間、個人事務所の時期を含めると約63 年間にわたり、継続して同社の会計監査を受嘱し、実施していた。」としているが、東芝の米国会計基準による連結財務諸表は、新日本監査法人が監査し始めたのは2002年3月期からで2016年3月期まで15年間。米国でADR発行時の1951年から2001年3月期までの50年間は、PwC(旧中央青山監査法人)が監査を行っていた。第162期(2001年3月期)有価証券報告書参照。英文はPwCの年次報告書参照 金融庁の調査報告書には、強制ローテーションありきの文脈で、PwCの監査の事実が開示されていない。

2017年8月7日、日刊新聞は、東芝が提出を延期している2017年3月期の有価証券報告書(有報)に対して、監査法人PwCあらたが「適正意見」を出す見通しであることが6日までに分かった。全く問題なしの「無限定適正意見」、もしくは一部不適切だがその重要度は低いという「限定付適正意見」のいずれかを10日までに発表する見通し、と報じた。

2017年8月10日、 東芝は10日、2017年3月期の有価証券報告書(有報)について「限定付き適正」の意見を監査法人から受領したと発表した。同日、有報を関東財務局に提出した。法的期限から1カ月余り遅れての提出で、条件付きながら「お墨付き」を得たことになり、この件による株式の上場廃止の懸念はひとまず後退した。前期末時点の債務超過額は5529億円で確定。有報に付随する内部統制報告書については「不適正」だった。
監査意見がつき、前期末の財務数値が確定した。自己資本は、前期決算を独自に公表した6月時点とほぼ同じ5529億円のマイナスだった。前期の連結売上高は前の期比6%減の4兆8707億円、営業損益は2707億円の黒字(前の期は4830億円の赤字)、最終損益は9656億円の赤字(同4600億円の赤字)だった。【日本経済新聞

2017年9月22日日経BPは、元公認会計士・元監査法人パートナー細野裕二氏著「粉飾決算VS会計基準」を出版した。長銀、日債銀、オリンパス、東芝の粉飾を簡潔に分かりやすくまとめたものである。しかし圧巻は、東芝の粉飾を刑事訴追を想定できるような検事の視点で書かれていることにある。会計に疎い者にも分かりやすく立件できるように書かれている。東京地検にとっては強力な資料になりうる。証券取引等監視委員会が動くのが筋であるが、東京地検も動く可能性がある。

上記出版から2日後の9月24日に、共同通信が「東芝会計「虚偽記載ある 監視委委員が検査主張」と報道したのは、偶然ではなく細野氏の上記書籍の内容を検証することになったものと推察する。




不適切会計の発端説明 監視委が検査・・東芝株主総会での説明【ロイター
市場欺く悪意見えず…刑事事件化は回避か 過大計上も赤字転落の可能性低く【産経ニュース
粉飾決算「東芝」が上場廃止にならない「奇妙な理屈」 - 【磯山友幸(国際会計基準戦争の筆者)】
監査法人は本当に「騙された」のか【磯山友幸
監査法人に大甘な東芝「不適切会計」第三者委員会報告書−【郷原信郎(元検事)】
第三者委員会報告書(要約版)への雑感−本調査は東芝からの委嘱を受けて、東芝のためだけに行われたものである」と明記されています(要約版14頁)【山口利昭(弁護士)】
膨らんだ「のれん代」1兆円超 東芝がひた隠す「原発事業の不都合な真実」【現代ビジネス
企業風土の抜本改革が必要【河北新社・社説
空文化した東芝の企業統治、指名・監査委の機能化が課題に・・監査委員の委員長は財務部門出身で社内取締役の久保誠氏が務め【ロイター
ウエスチングハウス社へ追加出資、東芝が悩む「次の一手」【日本経済新聞
巨額損失処理の恐れ 東芝を襲う“米ウエスチングハウス爆弾”【週刊現代
原発撤退が相次ぐアメリカ なぜ簡単に原発からの撤退を決められるのか【ファフィントンポスト
第三者委員会報告でも終わらない東芝問題の根深さ【八田進二・青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授に聞く
その絶望的状況 不正会計発覚時の経営トップが再建主導、「老害」相談役の暴走【Business Journal
東芝「出直し新体制」を操る「最高実力者」の危険な影響力【ファフィントンポスト
速報:東芝、不正会計時のCFO(前田恵造氏)が財務顧問に就任//自浄作用が働く日はいつ来るのか【日経ビジネス
退職給付債務割引率【河野太郎衆議院議員 細野祐二】・・細野氏の視点は正しいし監査上重要な問題。しかし過去の経緯からすると、金融庁に分かる人がいるとは思えない。
「インド」「米国」でも望み薄「原発ビジネス」の落日【2015年12月21日新潮社フォーサイト】・・室町が公表した「2029年度までに64基の新規受注」についても、業界関係者は異口同音に「実現性はゼロに近い」と断言する。
混迷極める新日本監査法人、経営幹部が総退陣へ【DIAMOND 2016.01.20】
「なぜ監査法人ばかり叩かれる」by早稲田大学教授 上村達男氏【読売新聞2016年01月20日】・・監査法人の責任は当然、問われるべきだが、日本の会計監査の仕組みそのものが大きな問題を抱えていると、上村達男教授(会社法、金融商品取引法)は指摘している。教授としての視点が傾聴に値する。
最後の砦は半導体事業、東芝は生き残れるかby湯之上隆氏・・京都大学大学院(修士課程原子核工学専攻)を卒業後、日立製作所で半導体事業部に従事、エルビータメモリーに出向、半導体の専門家の見方
<小出裕章さんに聞く>日本のメーカーはなぜ原発にこだわり続けるのか・・・小出元京都大学原子炉研究所・助教が簡潔に説明しています。

問われるファイナンシャル・ゲートキーパーの役割 by淵田康之氏 … 日本の資本市場のゲートキーパーは、監査法人だけという悲しい現実がある。米国のPCAOBの問題点は、日本のCPAAOBの問題点でもある。責任を監査法人に転嫁する。米国のPCAOBの問題点は、日本のCPAAOB(公認会計士・監査審査会)の問題点でもある。責任を過度に監査法人に転嫁する。サンドバッグのように叩かれる監査法人は、このままでは、監査人のなり手がなくなり崩壊すると危惧する。

日立、米SECにFCPA違反で制裁金19百万ドル支払(2015年9月)

 (ブルームバーグ):日立製作所が南アフリカ共和国で2つの発電所建設に関連する契約を獲得するため同国与党に「不適切な支払い」を行ったとされる問題で、同社は1900万ドル(22億8000万円)を支払うことで米証券取引委員会(SEC)と和解した。

SECが2015年9月28日にウェブサイトに掲載した発表資料によると、日立は南ア子会社の株式25%をチャンセラー・ハウス・ホールディングスに売却することで、チャンセラー・ハウスと与党アフリカ民族会議(ANC)が利益を共有できるようにしたという。同資料によれば、日立はチャンセラー・ハウスがANCのフロント企業であることを承知しており、チャンセラー・ハウスには「成功報酬」100万ドルを含む計600万ドル(500万ドルは配当)が渡ったという。

SEC法執行局のアンドルー・セレスニー局長は「日立の内部統制の甘さは、同社子会社が南ア政府から契約を勝ち取るため政界とつながりがあるANCのフロント企業に数百万ドルを支払うことを可能にした」と指摘。「日立はその後、これら支払いを帳簿上で違法に偽る形で、コンサルティング費用やその他の合法的な支払いとして計上していた」と述べた。

日立の子会社日立パワーアフリカ(HPA)は、メデュピ発電所とクシレ発電所向けに石炭火力発電プラント用ボイラー設備を納入する385億ランド(現在の為替レートで約3300億円)の契約を南アの国営電力会社エスコム・ホールディングスから受注した。日立は昨年2月、チャンセラー・ハウスからHPAの株式を買い戻した。

SECによると、和解合意は裁判所の承認が必要。日立はSECに指摘された疑惑について認めることも否定することもせずに和解に同意した。

エスコムの広報担当者は電話取材に対し、同社としてはこの問題を認識していなかったためコメントできないとした。ANCのコドワ報道官はSECの発表文を見ておらず、直ちにはコメントできないと述べた。日立の南ア事務所に通常の営業時間外に電話取材を試みたが返答はなかった。

SECの文章を見ていると、下記組織の協力に感謝している旨の記載がある。企業側が隠しても反面調査で分かるとアピールし、抑止を期待しているのかも知れない。
The SEC appreciates the assistance of the Justice Department’s Fraud Section, the Federal Bureau of Investigation, the Integrity and Anti-Corruption Department of the African Development Bank, and the South African Financial Services Board.

“We particularly appreciate the assistance we received from the African Development Bank’s Integrity and Anti-Corruption Department and hope this is the first in a series of collaborations,” said Kara Brockmeyer, Chief of the SEC Enforcement Division’s FCPA Unit.  


海外腐敗行為防止法
(the Foreign Corrupt Practices Act (FCPA) とは
、1976年2月に米議会の公聴会で暴き出されたロッキード事件が引き金となって急きょ翌年に成立した連邦法である。【続・ロッキード事件余話

かれこれ立法から40年になろうとしているが、途上国が発展しつつある中で新たに発生しているようだ。【続・ロッキード事件余話】  米国監査では、会計監査人はこの法律に遵法して賄賂が公務員等に支払われていない旨の文章が含まれる「経営者確認書Representation Letter)」を上場会社の経営者から入手することになっている。当然、米国基準で行っている監査人はこの確認書を経営者から入手していたはずである。

なお、日立は、法令順守をするために内部統制を充実して、違反した事項について再発防止をするための手段を講じている旨の宣誓をしている。【リスクマネジメント】 ガバナンスの強化がますます必要となっている。

日立の今回のケースは、金額的に大きくないが、2008年12月にシーメンス社とその子会社は、連邦証券取引委員会との間で、FCPA違反事件に関して和解の合意に達し、委員会に3億5000万ドルの課徴金を支払うことに合意した。同社はさらに、司法省による刑事訴追に対しても有罪を認め、4億5000万ドルの罰金を支払うことを約した。さらに、ミュンヘンの検察庁に対して3億9500万ユーロの罰金を支払うことにも合意した。同社はこれとは別に、2007年にミュンヘン検察庁に対して2億100万ドルの罰金を支払っていた。こうなると金額僅少と言ってはいられぬ額となる。シーメンス社が本件に関して支払った課徴金・罰金の総額は、FCPA違反に関して支払われた金額としては史上最大のものである。
委員会の訴状によると、同社は、2001年から2007年の間に、南米、アジア、中近東、アフリカの諸国の公務員4000人以上に対して約14億ドルの賄賂を支払ってビジネスを獲得し、11億ドルの利益を上げた。【ウイキペディア


主要国では、監査役に一人会計に関する知識・経験をもった人を要求

エンロン事件後、主要各国は、会計基準の高度化に伴い財務報告の正確性を担保するため、監査役会の監査役に会計に関する知識・経験をもった人を最低一人入れることを要求している。

米国では、2002年7月30日発効の「2002年サーべンス・オクスリー法(SARBANES−OXLEY ACT OF 2002〕407条 「監査委員会には最低一人の財務専門家(Financial expert)が必要とする」規則をSECが作成することとした。

SECは、407条に関して監査委員会の財務専門家(audit committee financial expertsの数、氏名、経営者からの独立性についての情報開示、(SEC Final Rule「Disclosure Required by Sections 406 and 407 of the Sarbanes-Oxley Act of 2002」 参照)を求めた。

米国ニューヨーク・証券取引所、ナスダック、カナダのトロント証券取引所では、正確な財務報告を行うには、内部統制の整備・充実し機能していることに加え、監査委員会の委員に財務能力(Financial literacy)をもった人を最低一人コーポレート・ガバナンスの面から要求している。米国では、サーベンス・オクスリー法407条で監査委員会の財務専門家(audit committee financial expertsの数、氏名、経営者からの独立性について年次報告書に情報開示を求めている(SEC Final Rule「Disclosure Required by Sections 406 and 407 of the Sarbanes-Oxley Act of 2002」 参照))。

ニューヨーク証券取引所上場会社マニュアル
303A.00 Corporate Governance Standards コーポレート・ガバナンス基準 抜粋

303A.07 Audit Commitee Additional Requirements
(a) The audit committee must have a minimum of three members.
Commentary: Each member of the audit committee must be financially literate, as such qualification is interpreted by the listed company's board in its business judgment, or must become financially literate within a reasonable period of time after his or her appointment to the audit committee. In addition, at least one member of the audit committee must have accounting or related financial management expertise, as the listed company's board interprets such qualification in its business judgment. While the Exchange does not require that a listed company's audit committee include a person who satisfies the definition of audit committee financial expert set out in Item 401(h) of Regulation S-K, a board may presume that such a person has accounting or related financial management expertise.

参考:「米国とカナダにおけるコーポレート・ガバナンスの要請」・・ニューヨーク証券取引所・ナスダック・トロント証券取引所のコーポレート・ガバナンスの要請を比較したもの。

英国は、コーポレートガバナンスに関する統合規範(COMBINED CODE)により次のように規定している。

C.3.1取締役会は最低3人、小会社の場合は2人、の監査委員会を設置しなければならない。監査委員のすべては独立の非執行取締役で無ければならない。監査委員会のメンバーの最低1人は、最近、財務の経験を持った人でなければならない
C.3.1 The board should establish an audit committee of at least three, or in the case of smaller companies two, members, who should all be independent non-executive directors. The board should satisfy itself that at least one member of the audit committee has recent and relevant financial experience.

2009年3月26日ドイツ法務省は国際会計基準の適用を自営業者、中小企業に緩和する商法(the Commercial Code (ComC) in Germany)近代化会計法(the Act to Modernise Accounting Law(BilMoG))案が国会を可決成立したと発表した。2010年1月1日以後開始する事業年度から適用し、早期適用も可としている。

改正株式会社法第100条第5項「少なくとも1名は会計または決算監査の領域に専門的知識をもつ独立した監査役を有しなければならない」とした。上場企業は既に同様の規定があり実施しているが、会社法関係でも要求することとしている。

Composition of the supervisory board and audit committee
In order to implement the Directive on statutory audits at least one independent member of the supervisory board must have specialist knowledge in the fields of financial reporting or annual audits in capital market oriented companies (section 100(5) draft Stock Corporation Act (Aktiengesetz ? AktG-E)).

参考:ドイツ会計基準近代化法byE&Y  「近代化会計法(BilMoG)」by Simmons&Simmons2008年7月

中国のコーポレート・ガバナンス規定には、上場会社に、独立取締役(independent directors)の招聘を求め、 取締役会には、会社の戦略委員会(a corporate strategy committee)、監査委員会(audit committee)、指名委員会(nomination committee)、報酬・評価委員会(remuneration and appraisal committee)、及びその他の特別委員会(other special committee)を設置できるとしている。監査委員会の独立取締役には、最低一人の会計専門家でなければならないとしている。(下記一部抜粋参照)

(5) Independent Directors
49. A listed company shall introduce independent directors to its board of directors in accordance with relevant regulations. Independent directors shall be independent from the listed company that employs them and the company's major shareholders. An independent director may not hold any other position apart from independent director in the listed company.

(6) Specialized Committees of the Board of Directors
52. The board of directors of a listed company may establish a corporate strategy committee, an audit committee, a nomination committee, a remuneration and appraisal committee and other special committees in accordance with the resolutions of the shareholders' meetings. All committees shall be composed solely of directors. The audit committee, the nomination committee and the remuneration and appraisal committee shall be chaired by an independent director, and independent directors shall constitute the majority of the committees. At least one independent director from the audit committee shall be an accounting professional.

日本経団連の対応

2009年4月14日、(社)日本経済団体連合会は「より良いコーポレート・ガバナンスをめざして」題して、提言をまとめた。

近年、欧米政府や機関投資家から日本企業のコーポレート・ガバナンス制度の見直しを求める要求が出されているほか、金融庁の金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」、経済産業省「企業統治研究会」東京証券取引所(以下、東証)「上場制度整備懇談会」ならびに日本監査役協会上場会社に関するコーポレートガバナンスの諸課題について」などにおいて、コーポレート・ガバナンスに関する議論が行われている。

これらの議論に社外独立取締役の議論に経団連として以下の立場を打ち出している。
1.社外取締役の設置

・社外取締役がいさえすればガバナンスとして優れているという形式論は無意味。ガバナンスのあり方は、各企業の自主的な選択が認められるものとすべき。

・適正な監督を行う識見や能力を備えた取締役がいるかどうか(取締役の質)については、開示情報に基づいて判断されるものであるべき。

2.社外性要件の独立性要件への見直し

・社外役員のあり方については、形式的要件を厳格化するのではなく、多様性が認められるべきであり、充実した開示によって、株主の判断に委ねるべき。

3.監査役の役割と権限

・現行法制上、監査役には十分な権限が与えられている。監査役が既に与えられている権能を十分に発揮できるために、体制整備や社内連携の強化等に取締役会と監査役会が協調して取り組むなどの、一層の企業努力が必要。

4.いわゆる「インセンティブのねじれ」注意:ある参議院議員が言った言葉とのこと、国際的な議論は聞いたことがない日本独特の議論。

・監査役に会計監査人の選任議案や報酬を決定するという業務執行権限を与えることとなれば、監査役は経営陣から独立の存在として監督機能を果たすという制度趣旨に反し、業務執行の意思決定の二元化をもたらしかねない。

5.総会における議決権行使結果の公表

・企業の自主的な取り組みを評価。実際の対応については、個別の実態に即した各企業の判断に委ねるべき。

6.大規模第三者割当増資

・発行会社としてのアカウンタビリティを充実させ、既存株主の権利が不当に毀損されないよう配慮する必要。

アメリカにおいて金融破綻の原因となった巨大金融機関のガバナンス機構が、各州の会社法やNYSE(ニューヨーク証券取引所)で求められている形式的要件を整えていながら、実質的に十分なガバナンス機能を発揮していなかったことが明らかである、としている。


こうした経団連の意見に、金融庁の金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」で斉藤東京証券取引所社長は、「金融危機で米企業のガバナンスが機能しなかったからといって、日本の制度が良いという主張は論理の飛躍だ」と指摘。「(少数株主を軽視しがちな)日本企業のガバナンスに投資家は不信感を抱いている。社外取締役の導入に前向きな姿勢を示し、低迷する日本市場に海外からの投資を呼び込むべきだ」と反論した(5月18日日経朝刊より)。

「金融危機の最大の原因は経営者のモラルにある。厳格な会計基準が危機の悪化を招いているという議論は大きな誤解だ」---。2009年5月15日に都内で開催された「国際会計基準フォーラム IFRSが企業に与える衝撃」の特別講演で、日本経済団体連合会(経団連)の経済法規委員会企業会計部会の島崎憲明・部会長(住友商事代表取締役)はこう強調した。(ITpro 参照)

いつの時代であっても「経営者のモラル」は問題である。だからこそ、独立取締役が経営者に対等の立場で意見が述べられるガバナンスが必要なのである。国際会計基準に関しては、会計が高度化することから、主要国ではコーポレート・ガバナンスとして監査委員会の委員に、会計・監査のエキスパートを最低一人を入れることを求めているのだ。経団連は拒否しているが経団連の島崎部長の意見は矛盾している。

遅れて、2009年5月22日日本公認会計士協会は「監査役の権限強化 会計士協提言 意思決定不統一 経団連は反発」したそうである。しかし、会計士協会の提言は目新しいものではなく、会社法(旧商法)と金融商品取引法(旧証券取引法)の開示の一元化は、2002年(平成14年)4月に経済産業省経済産業政策局企業行動課がまとめた企業経営と財務報告に関する研究会」(座長:伊藤邦雄一橋大学教授)の報告書で既に指摘していたもので両者は「似て非なるもの」として一向に改正しようとしないでいるもの。

2009年5月26日経済産業省は、上場企業のコーポレートガバナンス(企業統治)向上策として検討していた社外取締役の設置義務付けを見送る方針を固めた。設置は任意のままとするが、設置しない場合は独自の経営監視制度を導入するよう求める。2008年末から義務付けを検討してきたが、日本経団連などが「機能しているかどうか疑問がある」などと反対していた。(日経 参照)

制度案に絡む法律の改正はないとのこと。何のための制度案であったのか?「一定の社内業務を経験した外部出身取締役の起用」「経営諮問委員会の設置」て何?

2009年6月10日金融庁金融審議会我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディーグループ報告(案)」が公表された。結論は、社外役員の義務化は見送られ、経団連の要望の通りとなった。「東京証券取引所の上場会社のうち委員会設置会社の形態をとる企業は全体の2.3%(2008年8月現在)にとどまり、近い将来に委員会設置会社化を選択することは、多くの上場会社等にとって、現実的なこととは考えにくい状況にある。」(10ページ)とか「東京証券取引所の上場会社のうち55%の会社が社外取締役を一人も選任していないとの現状とは相当の乖離があり、改善に向けて努力の余地があると言わざるを得ない。」(11ページ)と現状を嘆いているばかり。(産経ニュース 参照)

社外取締役の義務化は見送り 金融審議会報告書
課題だった社外取締役の義務化については、日本経団連などの反発が強く盛り込むのを見送った。社外取締役の義務化は、経済産業省の企業統治研究会が、社外取締役を置くか別の対策をとるかの「選択制」を提言したことに足並みをそろえ、見送った。ただ東証上場企業の55%が社外取締役を置いておらず、報告案では「改善に向けた努力の余地がある」と指摘した。 報告案を受け金融庁は、金融商品取引法の省令改正などを検討する。

おわりに

金融庁、経済産業省、東京証券取引所が求めようとしている「独立取締役ないし独立監査役」のコーポレートガバナンスの国際基準への収斂に対して経団連は真っ向から反論したが、財務報告が国際会計基準を適用することになれば事態は一変し変更せざるを得ないのではないか。



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