| 日本に欠けた投資家の視点に立った会計基準 |
● 投資家保護は、適時・適切に質の高い情報開示をいう。商品(株等)の品質保証はしない。 |
| @ 比較財務諸表の会計基準 会社法が直前三事業年度の財産及び損益の状況の開示を求めた(2006年5月施行会社法) 四半期報告書の初年度は単年度で比較財務諸表となっていない(2008年4月より) @-1 財務諸表の注記は、規制当局が決めた方法で日本独特、国際基準のような読み易さ はない。 始まった四半期報告書の注記も読み難い。(2008年4月より) オリンパスの注記は投資判断の役に立たない。 @−2 連結財務諸表だけでなく単独財務諸表も重複開示。 開示の重複は、投資家をミスリードする。 A 誤謬の訂正・会計方針の変更などで、過年度財務諸表を遡及して修正表示する会計基準 会社法が過年度財務情報の遡及修正を認める(2006年5月施行会社法) 企業会計基準委員会が2007年3月から議論開始、2007年中は論点整理・・のんびり議論 2008年6月20日に検討状況の整理を公表 ・・・いつ会計基準になるか不明 2009年4月10日「会計上の変更及び過去の誤謬に関する会計基準(案)」 2009年12月4日「会計上の変更及び過去の誤謬に関する会計基準」 日本は2011年(平成23年)4月1日以降開始する事業年度から適用 2011年9月の第二四半期でオリンパスが初めて適用か(12月14日までに提出しないと上場廃止) 中国では2001年1月から適用 B 営業譲渡・会社分割などで廃止(非継続)事業と継続事業とを区分表示する会計基準 ・NECの米国基準による非継続事業の区分表示の例がある(2006年6月22日遡及修正版) ・三洋電機が子会社・三洋クレジットを譲渡して2006年および2005年度について区分表示 している。米国基準のFSの注記4に簡潔に説明している。(2007年年次報告書) ・三洋電機が携帯事業を京セラに売却し非継続事業として開示(2008年年次報告書注記4参照) ・日本では会計基準の設定の議論さえない。(2010年に議論し基準設定するそうです) C すべての損益を業績表示する包括利益の会計基準 日本の対応・・金融庁、経済産業省、経団連、企業会計審議会、企業会計基準委員会、 米国会計基準SFAS157号「公正価値測定」を公表(2006年9月18日)、公正価値を売価と定義 SECとFASBが市場性が無いものの公正価値に共同でガイダンスを公表(SEC時価会計のニュース) D 国際基準および米国は、会計基準設定経緯が広く公開され意見を求めている。 日本の場合は公開されず殆ど判らない。 欧州からの要請で2006年10月初めて公開。 E 国際会計基準へのコンバージェンスで小出しの改正が期間比較を歪めミスリードの恐れ。 F 日航で露呈した巨額簿外負債は、日本の会計基準が企業の実態を表示しえないことを露呈 G 日本の会計基準として纏まったもの(current text)がない。 H EDINET版有価証券報告書の"初期表示"は目次が抜かれページがない、一括印刷できない、リンクが張れないの三重苦 I 外国会社、例えば、IFRS適用のダイムラー社の"初期表示"の財務諸表には注記が表示されない。 |
投資家保護のミッション(使命)を担当する行政府は、日本は金融庁、米国は証券取引委員会(SEC)であり、米国SECでは、ミッションとして「投資家保護」を掲げ、投資家保護は情報の適時・適切な提供という内容を明示しているが、金融庁は投資家保護の肝心な内容が明示にされていません。金融庁及び証券取引等監視委員会が投資家保護の具体的内容を明示してこなかったことが、規制当局に肝心のミッション(使命)である投資家保護の視点に欠けていることを証明しているのである。ミッションを明らかにできていなければミッションを達成することはない。日本が情報開示に遅れた原因がそこにある。
つまり、通常の商品は、品質保証をすることで商品に欠陥があれば良品に取り換えるなり返品するなりでき安心して取引ができますが、証券取引の分野では、投資判断の結果を投資家に帰属させる自己責任の原則が妥当し、金融商品取引法(旧・証券取引法)は、商品(株等)の品質(価値)を保証しません。品質を判断するための情報のみを投資家に与えて市場取引により価格を決定することが、資源の効率的配分のために必要だからです。(黒沼悦郎教授の「金融商品取引法入門」参照)
つまり、金融商品取引法や証券取引法は、当該株式などの品質保証をするのではなく、適時・適切な情報開示を行うことで投資家の投資判断を容易にすることを目指しているのだ。
しかしながら、金融商品取引法を企画立案した金融庁の担当官の理解は規制という視点から見ているようだ。(金融庁松尾直彦氏の解説 金融庁松尾直彦氏によるCESRへの文書 松尾直彦弁護士 参照)
2004年12月当時、金融庁の担当官は、日本政府等の「日本の会計基準を引き続き認めなければ、日本企業の欧州市場からの撤退の仄めかし」は、当初はWarn(警告)として、後にThreat(脅迫・脅し)の表現で英文ニュース(欧米・アジアの)に報道されている。
Naohiko Matsuo, director for international financial markets at Japan's Financial Service
Agency, said: 'Companies are saying they would not
change to international accounting standards because of the cost ... they would
have to start checking through lots of little chits from the past.''Companies
really dislike the whole idea ... if Japanese standards are rejected, there is a
real possibility that some will pull their stock listings,' an investment banker
at a US bank in Tokyo.
The FT pinpointed a direct threat to the London Stock
Exchange where companies such as Fujitsu, All Nippon Airways and Kirin Brewery
are listed.
国際会計基準の「財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク」に財務諸表の目的には次のように規定している。
| パラグラフ12 | 財務諸表の目的は、広範な利用者が経済的意思決定を行うに当たり、企業の財政状態、業績及び財政状態の変動に関する有用な情報を提供することにある |
| 13 | この目的のために作成される財務諸表は、ほとんどの利用者の共通の要求を満たすものである。しかし、財務諸表は主として過去の事象の財務的影響を表示し、必ずしも非財務的情報を提供するとは限らないため、財務諸表は、利用者が経済的意思決定を行うために必要とするすべての情報を提供するものではない。 |
| 14 | 財務諸表はまた、経営者の受託責任(stewardship)又は経営者に委ねられた資源に対する会計責任(accountability)の結果を表示する。経営者の受託責任又は会計責任を評価したいと望む利用者(パラグラフ9から11に示された投資者、従業員、貸付者、仕入先およびその他の取引業者、得意先、政府及び監督官庁、一般大衆)は、経済的意思決定を行うために、利用者それぞれの立場から評価を行う。 |
パラグラフ9には、下記の利用者ごとの必要な情報を例示として列挙している。
(a)投資者は、購入、保有又は売却すべきか否かの意思決定に役立つ情報を必要とし、また、株主は企業の配当支払い能力を評価できる情報に関心を持ち、
(b)従業員は、雇用の安定性及び収益性に関する情報に関心を有し、報酬、退職給付及び雇用機会を提供する企業能力を評価できる情報に関心を持つ、
(c)貸付者は、貸付金の利息が期日に支払われるかどうかの判断を可能にする情報に関心をもつ、
(d)仕入先及びその他の取引業者は、支払われるべき金額が期日に支払われるかどうかの判断を可能にする情報に関心をもつ、
(e)得意先は、特に当該企業に長期間関わっているか又は依存している場合に、企業の存続に関する情報に関心をもつ、
(f)政府及び監督官庁は、資源の配分、したがって、企業活動に関心を持つ。監督官庁は、企業活動の規制及び課税政策の決定のために、国民所得統計及び類似する統計の基礎として情報を要求する。
(g)一般大衆・・企業は様々な方法で一般大衆に影響を及ぼす。例えば、企業は、雇用する従業員数及び地域の仕入先の活用を含めて、様々な方法で地域経済に多大な貢献をするであろう。財務諸表は、当該企業の繁栄とその事業活動の範囲における動向及び最近の発展に関する情報を提供することによって一般大衆の役に立つであろう。
パラグラフ10では、財務諸表は、これらの利用者の情報要求をすべて満たすことはできない。しかし、すべての利用者に共通する情報要求がある。投資者は、企業のリスク資本の提供者であるので、投資者の要求を満たす財務諸表を提供することによって、財務諸表が満たすことができるその他の利用者の大部分の要求を満足させることになるであろう。
なお、国際会計基準も米国基準も財務諸表の利用者は上記のように投資者以外も含まれ、非上場企業も対象としている。会社を紹介するのに日本は会社案内を作成するが、欧米では財務諸表を含む年次報告書(Annual Report)を上記利用者に提供するため広範な利用が予定されている。
一方、日本は、企業会計基準委員会は金融庁が所管するため投資者に対する上場会社の財務諸表(有価証券報告書、四半期報告書)に限定される。日本の有価証券報告書は、役所への提出書類としての機能しかなく、欧米のように事業活動の過程で広範な利用者に利用されることはない。現在では、EDINETで電子開示用にしか作成されず(役所提出用の機能は変わらない)紙ベースで配布できるようになっていない。(「日本の制度」参照)
なお、財務諸表作成者、読者である投資家、財務諸表の監査人など関係者は、簡潔で分かりやすいプリンシプル・ベースの、高品質で単一の包括的グローバルな会計基準(a single set of high-quality, comprehensive global accounting standards)を求めている。
2009年12月17日、「IFRS導入の立役者逝く」と題して「三井物産副社長、日銀審議委員を務めた財務マンが死去した。福間年勝氏は、会計基準の国際化の重要性を早くから認識。日本へのIFRS(国際会計基準)の導入に大きく貢献した 」として、磯山友幸氏(現日経ビジネス副編集長で「国際会計基準戦争」の著者)が氏の追悼文を書いている。”「会計基準のグローバル化とわが国の責務」by福間年勝(2000年5月に国際会計基準委員会の評議委員に選任された時の文章)” 合掌
日本の会計基準設定の背景:
証券取引所に株式等を上場している企業の情報開示は証券取引法に基づき、行政、古くは大蔵省、現在は金融庁が作成してきた。財務諸表の作成基準(会計基準)の設定の主要メンバーは、官僚・会計学者・企業(大企業を代表する経団連)・会計士であるが、設定してきた会計基準は一貫して、投資家不在の行政および財務諸表作成者である企業寄りのものである。日本の会計基準には「企業に負担を掛けない」という配慮が随所に見られる。官財の視点で企業寄りの一方的なもので、企業が受けている証券市場への上場の恩恵ないし便益を考慮していない場合が多い。端的に言えば、国際的に認知された会計基準をいつまでも導入しないことに現れている。【企業会計審議会(大蔵省時代・金融庁時代(2000年7月以降))、企業会計基準委員会(2001年7月以降) 参照】(企業会計基準委員会の法的位置づけは不明・不透明である(「2004年11月29日企業会計審議会での西川ASBJ副委員長および池田金融庁企業開示参事官の発言(28ページ〜29ページ参照)」より)。)
(戦後日本の産業政策の特徴である「官」と「民」が協調する閉鎖的で不透明なシステムが会計基準設定の背景にあり、業界調整型の会計基準(例:骨抜きのリース会計、選択可能な工事契約(国際基準は工事進行基準)など)があり、今尚投資家に配慮した改革はされていない。)
換言すれば、欧米の会計基準(国際基準)が、投資家が投資判断をし易いように、読み易い、理解し易い財務諸表の開発(Development)のために弛まず国際会計基準を設定してきた。(会計の基本的枠組み「財務諸表のrelevance(目的適合性), reliability(信頼性), comparability(比較可能性),
understandability(理解可能性)」「財務会計概念書(SFAC)基礎概念」参照→2006年7月6日公表の米国FASBおよび国際基準のIASBの共同作業による「改正版(草案)」では、reliability(信頼性)に代り、Faithful Representation(忠実な表現)とし、内容は、確実性(Certainty)・正確性(Precision)を意味し、Verifiability(検証可能性)、Neutrality(中立性)、Completeness(完全性・網羅性)の3つの構成要素からなるとして、より具体的内容となっている。例えば、<S10. Neutrality is the absence of bias intended to attain a predetermined result or to induce a particular behavior. Neutrality is an essential aspect of faithful representation because biased financial reporting information cannot faithfully represent economic phenomena.>)
国際基準に従って作成された欧米の財務諸表を含む年次報告書(Annual report)は、株主(株主総会用)・債権者、取引先、証券監督機構等に配布され実際に利用されている。
日本は、上場会社の財務情報(有価証券報告書および四半期報告書)は投資家(株主)に直接送付されないことから、投資家が無視される制度的構造となっているのとは対照的である。(「これが日本の会計だ」参照)
日本で有価証券報告書が実務で利用されているケースは見たことがない。おそらく日本の個人株主の多くは制度的な理由で有価証券報告書とは無縁であろう。
有価証券報告書は、金融庁が作成した内閣府令に従って財務局の審査を経て株主ではなく内閣総理大臣へ提出をし金融庁のEDINETで開示する「官による官のための開示制度」となっている。
日本は、旧大蔵省の役人が、戦後間もない頃、様式を決め金融庁が引継ぎ表示様式を決めている。一度決めたら変えない役人の表示様式が、常に改善し意義を高めようとする専門家の設定したIAS1号の表示様式と一致するはずがない。
事例として、下記の財務諸表を見ていただきたい。
○有価証券報告書の表示
○国際会計基準による表示
長期信用銀行、山一證券、そごう、カネボウなど有名企業の破綻、メーカーの中国生産へのシフト、ソフトバンク、楽天、ヤフーなどのIT産業の勃興の一方、ライブドアの凋落など企業の浮き沈みはめまぐるしい。冷戦の終結後、中国を初めとする新興国(インド、ロシア、ブラジルなど)の急速な発展、日本企業のそうした国への進出。欧州(EU)では通貨統合され2005年から国際会計基準(IFRS/IAS)を適用。こうした経済のグローバル化を背景に、企業の提供する財務情報は、より判り易いものが求められている。財務情報の作成基準である会計基準は、国際基準では、完成度を高くするため弛まぬ努力が積み重ねられている。
資本市場の企画・立案する金融庁は投資家に自己責任を求める。資本市場が健全に機能するためには、企業の情報が分かり易く、明瞭でなければならない。企業が提供する情報が透明性が高く投資家が判断し易くなっていなければ「自己責任」は問えない。日本は、会計基準などの完成度は低く、透明性が高く理解し易い情報開示となっているとはいえない。
欧米のように、会計基準の完成度を高めるのを健全な資本市場を形成するために必要なコストと考えるのか、日本のように企業のコスト負担を減少しようと透明性を低くすること(市場の健全性を損なうこと)が投資家保護の目的に叶っているといえるのか自明の理であろう。
投資家が、理解し易く、読み易い財務諸表は、次の国際会計基準を導入することでより可能となるが、日本では導入されていない。
@ 比較財務諸表の会計基準
@-1 財務諸表の注記は、規制当局が決めた方法で日本独特、国際基準のような読み易さはない。
@−2 連結だけでなく単独財務諸表も開示。開示の重複は、投資家をミスリードする。
A 誤謬の訂正・会計方針の変更などで、過年度財務諸表を遡及して修正表示する会計基準
B 重要な営業譲渡・会社分割などで廃止(非継続)事業と継続事業とを区分表示する会計基準
C すべての損益を業績表示する包括利益の会計基準
D 国際基準および米国は、会計基準設定経緯が広く公開され意見を求めている。
E 国際会計基準へのコンバージェンスで小出しの改正が期間比較を歪めミスリードの恐れ。
F 日航で露呈した巨額簿外負債は、日本の会計基準が企業の実態を表示しえないことを露呈
G 日本の会計基準として纏まったものがない。
H EDINET版有価証券報告書の"初期表示"はページがない、一括印刷できない、リンクが張れないの三重苦
I 外国会社、例えば、IFRS適用のダイムラー社の”初期表示”の財務諸表には注記が表示されない。
例えば、資産、負債、純資産(資本)、売上高、売上総利益、販売費および一般管理費、営業利益、営業外損益、純利益が前年度と比較表示されることで、読者に、業績はよくなっているのか悪くなっているのか・財政状態はよくなっているのか悪くなっているのかが分かり、より有用な情報を提供できる。そのため、国際会計基準1号「財務諸表の表示」には複数年度の比較情報(Comparative information、IAS1号パラグラフ38)の開示を求めている。日本にはこの比較情報に関する会計基準は無く、会社法は単年度表示となっている。証券取引法の省令で有価証券報告書は比較情報となっているが、金融庁が決めた連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(連結財務諸表規則)の付則に記載の様式(連結財務諸表の様式(様式第四号)・・2期比較様式)により作成するもので国際基準の表示方法とは異なる。(個別財務諸表も同様に、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(財務諸表規則)・・2期比較様式の付則に記載の個別財務諸表の様式(様式第二号)を使用して作成する)
連結財務諸表規則は単年度のみの規定となっており、比較財務諸表を明文をもって求めていない。(第3条参照)
日本の現状では、監査報告書が単年度で公表されているように、単年度財務諸表を2期並べて、二つの監査報告書が添付される。これは、国際基準の比較財務諸表に一つの監査報告書が添付されるのと異なる。現在、国際基準に合せるために「誤謬の訂正」などの会計基準を導入することが検討されている。この基準が導入されると過年度の財務諸表を修正して再表示するこになる。この場合、前年度の監査報告書の問題が生ずる。国際基準であれば、比較財務諸表に一つの監査報告書が添付されるため問題は生じない。日本には比較財務諸表に対する監査報告基準はない。(EDINETの監査報告書 参照)
四半期報告書の初年度は単年度で比較財務諸表となっていない:
2008年4月より初めての四半期報告書と、EDINETへの初めてのXBRLの義務化がどうなったのか見てみると、かなり閲覧し難い。投資家の利便性は遥か遠い。比較財務諸表の会計基準が日本にはないため、適用初年度のみの開示となっている。そのため、業績・財政状態・キャッシュフロー等の趨勢(トレンド)が判らない。読み手に不親切である。国際基準では適用初年度であっても会計基準が比較財務諸表の開示を求めているため前年度との比較で開示することになっている。
日本でも、国の財務諸表を作成すべく、財務省・財政制度等審議会は、2004年6月17日、「省庁別財務書類の作成基準」を作成し、この基準に基づき、2005年9月26日、財務省は、「平成15年度の国の財務書類」を公表した。この作成基準は、日本で始めて比較財務諸表を求める内容である(残念ながら注記は比較情報になっていない)。財務諸表の比較表示は、有価証券報告書より国際的な表示に近いといえる。比較情報の開示の考え方は、公会計が先行した。
@-1 財務諸表の注記は、規制当局が決めた方法で日本独特、国際基準のような読み易さはない。
日本の財務諸表の注記は、次の点で国際基準と異なっている。
(1) 国際会計基準では、貸借対照表の注記と損益計算書の注記に分けて開示することはない。貸借対照表の注記と損益計算書の注記を分けて開示する方法は、日本特有の開示方法である。もともと会計では損益計算書と貸借対照表は、資産の増加と収益計上、費用の計上と負債の増加または資産の減少というように、有機的に一体であって分けることは出来ない。したがって国際会計基準では区分して開示することはない。
(2) 国際会計基準では、附属明細表(supplementary schedule)という財務諸表はない。国際会計基準が勘定または項目の内容を開示することを求めている場合は、注記で開示することになっているので、附属明細表の概念はない。昭和24年(1949年)に設定された企業会計原則に”財務諸表付属明細表”が財務諸表の体系として示されているが、金融庁が考える財務諸表の体系は、昭和24年当時のままとなっている。そろそろ国際基準に収斂してもよさそうなものである。
(3) 有価証券報告書の注記のように、単年度ごとに注記する方法は国際会計基準にはない。国際会計基準IAS1号「財務諸表の表示」では、注記で開示が求められている勘定ごと項目ごとに期間比較して注記することになっている。なお、驚くことに、日本には、国際会計基準IAS1号「財務諸表の表示」のような、期間比較の会計基準がない。有価証券報告書は、金融庁の府令により単年度財務諸表を二期表示しているに過ぎない。これは、国際基準の期間比較表示の会計基準ではない。その証拠は、有価証券報告書の財務諸表の注記によく現れている。加えて、監査人の監査報告書は単年度のみの監査報告書となっている。国際基準では比較財務諸表に監査報告書が提出される。
| 会社法が、直前三事業年度の財産及び損益の状況の開示を求めた |
2006年5月施行の、会社法施行規則120条1項6号で、公開会社の事業報告書では「直前三事業年度の財産及び損益の状況」の開示することが求められた。過年度事項の提供(会社計算規則161条3項)ができる、としている。 会社法施行規則で突然「直前三事業年度の財産及び損益の状況」の開示を求めているが、証券取引法が2期開示で会社法の方が1期多い、まして、日本には「比較情報開示の会計基準」および下記の「会計方針の変更、誤謬の訂正などの会計基準」が存在しないし、企業会計基準委員会の検討の対象にもなっていない。 事業報告書は、会計監査人の監査の対象とはなっていないが、監査役または監査委員会の監査を受け監査報告書の作成を求められている(会社法施行規則第129条、131条)。監査役または監査役会は会計監査人より高度な会計知識を求められている。なぜなら、我が国には会計基準のない事項についても監査報告書を作成しなければならないのだ。 会社法、証券取引法の整合性が図られておらず、会社法が先行したかたちで、縦割り行政のままばらばらで規定している。 |
始まった四半期報告書の注記も読み難い。
2008年4月から初めての四半期報告書と、EDINETへの初めてのXBRLの義務化がどうなったのか見てみると、かなり閲覧し難い。投資家の利便性は遥か遠い。比較財務諸表の会計基準が日本にはないため、適用初年度のみの開示となっている。そのため、業績・財政状態・キャッシュフロー等の趨勢(トレンド)が判らない。読み手に不親切である。国際基準では適用初年度であっても会計基準が比較財務諸表の開示を求めているため前年度との比較で開示することになっている。
大まかに重要な欠陥を指摘すると、次のようになる。
1.検索画面からの検索がしずらい。
2.四半期報告書について、PDFファイルを提供することで全頁が印刷できるが、肝心な「目次」がPDFファイルに含まれておらず印刷後に閲覧しずらい。会社のホームページに公開しているPDFファイルは目次も含まれているが、EDINETになると目次が無いのは読者への利便性の配慮が足りない。
3.財務諸表の注記が雑然としており、読み手にとっての利便性がない。国際会計基準のように秩序整然と記述した「注記」にすべきであろう。
新日本製鐵株式會社(新日本製鐵株式会社ではEDINETで検索できない)を例にとると、次のようにならんでいる。
(1)四半期連結貸借対照表
(2)四半期連結損益計算書
(3)四半期キャッシュフロー計算書
四半期連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項等の変更
四半期連結財務諸表の作成にあたり適用した特有の会計処理
追加情報
注記事項
事業の種類別セグメント情報
所在地別セグメント情報
海外売上高
2 その他
米国会計基準適用の日立製作所のケースでは、目次に「注記」は無く、連結キャッシュフロー計算書を開きページ左下に「次へ」を押すと次のような注記が開き、注記のページ下左の「次へ」を押すと次の注記が開く。つまり、注記が財務諸表の重要な一部であると言う取り扱いになっていない。
年度の有価証券報告書を含めて、日本では「注記」が国際会計基準のような取り扱いになっていない。
金融商品取引法の有価証券報告書の財務諸表の体系は、「企業会計原則」のままで、国際会計基準の財務諸表の体系ではない。
EDINETは、検索のし難さ、読み難い体系、各社のページにリンクできないなど、投資家などの利用者の利便性を考えているとは到底思えない。
@−2 連結だけでなく単独財務諸表も開示。開示の重複は、投資家をミスリードする。
子会社がある場合、特段の事情がない限り、連結財務諸表に加えて個別財務諸表の開示は、一つの企業に複数の財務情報を開示することで投資家をミスリードし投資判断を誤らせる恐れがある。実務的にも、完成度の高いIFRSの財務諸表を連結・個別の二つを作成する作業量は膨大なものになり非現実的。国際会計基準(IFRS)や米国会計基準は、日本の基準とは異なり情報開示としての注記等を充実しており連結財務諸表のみの開示を想定して会計基準ができている。現に、米国SECの上場会社の情報開示システム(エドガー・データ―ベース)や英国(ロンドン証券取引所)、ドイツ(フランクフルト証券取引所)の上場会社の財務諸表開示システムでは連結財務諸表のみの開示となっている。
2010年3月26日の企業会計審議会・監査部会において、金融庁の三井企業開示課長は次のように発言している。つまり、単体は別途議論することを示唆している。
○三井企業開示課長
一昨年から昨年にかけまして、いわゆる連結先行という、連結の財務諸表に係る会計基準と単体の財務諸表に係る会計基準について、従来は全く同一であるということを大前提としていたことについて、いわゆる連結先行ということで、若干時間的なずれを容認するということをここの場でご議論頂きました。この考え方の資料には少しダイナミック・アプローチという言葉をつけてございます。(資料1西川ASBJ委員長「上場会社の個別財務諸表の取扱い(連結先行の考え方)に関する検討会」 「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」参照)
企業会計基準委員会(ASBJ)は6月8日、会計コンバージェンスに基づく会計基準の策定について連結財務諸表だけを対象にし、単体の財務諸表については判断を一時的に留保する考えを示した。ASBJはこれまで基本的に連結と単体の両方を対象に会計基準の策定を行ってきたが、単体基準のコンバージェンスについて疑問の声があり、金融庁の企業会計審議会での結論が出るまで連結基準のみを議論することにした。(IFRSフォーラム)
企業会計審議会の6月8日の議事録を見ると、IFRSに関する欧州調査報告を行った三菱電機の佐藤氏の発言があり、次のように上場会社の開示は連結財務諸表のみ開示するようにしてほしい旨の発言をしている。
○佐藤参考人(三菱電機
佐藤行弘):・・・〜1点目は、金商法上の上場企業の開示につきましては、国際的な要請及び基準の相違から、連結のみ開示するという、そういう方向で検討をお願いしたいということでございます。
○山ア参考人(JFEホールディングス監査役):世界の投資家がIFRSに基づく財務諸表を必要としているのであれば、株式を公開して投資対象となっている上場会社は、そのニーズに応えざるを得ません。投資家が対象としているのは連結財務諸表でありますし、IFRSそれ自体当然に連結を対象とした規定であります。従って、上場会社の連結財務諸表は原則としてIFRSに従った開示をするということになるべきだと思います。
○安藤会長:私の理解する限りでは、今日、最初にASBJのご報告がありましたが、あれが出発点になって、この審議会がこの会を開いているということだと思います。要するに、ASBJで今、いろいろコンバージェンスに向けてやっているんだが、はっきり言えばデッドロックに乗り上げてしまった。
○西村委員(西村義明東海ゴム工業
代表取締役社長):一般の投資家に対して本当に単体が必要なのかというのは、ぜひこれは議論してもらいたいというふうに思っています。IRなどで国内は勿論いろいろ海外にも行っても、単体のことを聞く人なんかまずいません。単体の業績がどうですかなんて質問されたことは、ここもう10年ぐらいないと思いますね。ですから、やっぱりそういう面からも、本当に単体の公表が必要なのかということは、ぜひよく考えていただきたいというふうに思っております。逆に言えば、必要ないじゃないかと思います。
最後の方の発言で、○引頭委員(引頭麻実椛蝌a総研
執行役員)は、「すみません、最後になってしまいました。・・〜最後に一言ですが、単体については、本日ご意見をおっしゃったほとんどの方々が要らないということでした。」としている。
これでも単体を開示し続けるのであれば、金融庁はこの会議の議論を無視していると言わざるを得ない。
金融庁・企業会計審議会は、8月3日、会合を開き「会長発言」を公表した。「単体の会計基準は、個々の基準毎に、連と単を一致することに伴う諸々のコスト・ベネフィット、連と単を分離することに伴う諸々のコスト・ベネフィットを考慮した上で、最終的にASBJが判断(個々の基準で、会計処理の選択適用を許容することもあり得る)。連結と単体のズレの期間、幅は、経営や内外の会計を巡る諸状況(税、会社法を含む)により大きく異なる、○ 金商法における単体情報については、その投資情報としての有用性の観点に加え、会社法で単体の計算書類が作成され株主に届けられ、その情報は、投資家にも開示すべき、との観点から、引き続き開示すべき。単体の見直し(簡素化等)は行う。」としている。この会長分っているのかしら。上記のように、議論は「単体は要らない」との意見であったのに、「会長発言」で逆の発言をしている。審議会として機能していない。だから会長発言?
米国会計基準の使用は、国際会計基準の任意適用の開始に伴い、連結財務諸表規則を改正し、米国基準の使用は2016年3月期までに限定した。
ASBJは企業会計審議会に、単体の開示の廃止を提言して欲しかったはず。会長発言で、ASBJに下駄を戻してきた。ASBJは、個別財務諸表の開示の廃止を提言すべきだ。
日本でも、2010年7月29日、経団連は、「財務報告に関わるわが国開示制度の見直しについて」を公表した。1.決算短信の簡素化、2.連結財務諸表の開示のみにし、単体は廃止。3.内部統制監査の簡素化を提言した。内容はしごく当たり前のことばかり。
因みに、2010年3月期に、IFRSの連結財務諸表を日本初の適用となった日本電波工業は、会社法(単年度のみ)、決算短信(注記など多少簡略)、金融商品取引法の有価証券報告書(連結付属明細表が加えられている)、英文財務諸表(完全なIFRS財務諸表)と連結財務諸表だけでも4つ作成している。しかも、完全なIFRS財務諸表は英文のみとなっている。加えて。日本基準による個別財務諸表を会社法、金融商品取引法のものを別々に作成しているのだ。投資家にとって個別財務諸表は不要であろう。
6月末の株主総会が終了するころには、6月締めの第一四半期報告書の連結財務諸表の作成がすぐに始まる。IFRSの個別財務諸表を作成している時間はない。
A 誤謬の訂正・会計方針の変更などで、過年度財務諸表を遡及して修正表示する会計基準
当年度に正しい会計処理が発見されるという事態が生ずることは珍しくない。このため、日本では「前期損益修正損益」という科目まである。当年度に過年度の誤りを修正する科目として使用されている。
一方、国際会計基準には、原則として、「前期損益修正損益」はない。なぜなら、重要な誤謬の訂正(correction
of errors)は、過年度の財務諸表を遡及して正しい科目で修正表示するので、そうした勘定科目は必要ない。会計方針の変更も、表示されている比較財務諸表が同じ会計方針で会計処理して過年度財務諸表を修正表示することを求めている。国際会計基準では、表示された財務諸表が期間比較可能にするために過年度の財務諸表を正しく修正再表示するのだ。投資家、財務諸表の読者に、常に、正しい財務情報を、理解し易く提供しようとするものなのである。日本には、「株主総会で承認を受けた過年度の財務諸表」を修正することは考えられないのであろう。
国際基準の過年度財務諸表の遡及修正は、安易な会計方針の変更を抑止する機能がある。日本は、すでに国際基準にキャッチアップしていると思っている人があるがそれは間違い。この、会計基準を日本に導入しない限り国際基準にキャッチアップしたとは言えない。企業会計基準委員会の「プロジェクト計画表」ではいつ会計基準になるのか日程が明記されていない。(日本公認会計士協会の「追記情報の調査」 参照)
日本には「誤謬の訂正」という会計基準は存在しないが、不正・誤謬で過年度財務諸表を修正した下記の事例がある;
●2005年5月23日、ニチイ学館が「保有土地の含み益を計算し忘れたミスがあった」とし東証へ訂正した事例発生
●2006年2月14日、株式会社 宮 不正経理による改善報告書をジャスダックへ提出
●2006年3月22日、米国基準のNECも「子会社の架空取引」で遡及修正 2006年6月22日遡及修正版
誤謬ばかりでなく、実務上、かなりの頻度で必要となるのは「表示の変更」がある。ある事業部門の売上が大きくなって「区分表示」したい場合、比較可能にするため、当年度の売上高を区分表示すると伴に前年度の財務諸表の表示も当年度と同じ基準で表示しなおす。貸借対照表の項目についても、区分表示するために必要なときがあるが同様の取り扱いとなる。重要性が無くなりその他に纏める場合も同じ。国際基準による注記の例示は下記の通り簡潔明瞭になっている。(事例 参照)
「当年度の新たな表示方法で前年度財務諸表を遡及修正(単なる組替表示)した」旨、重要な会計方針に注記する。
注記の例示
重要な会計方針に
(e)Prior Year Presentation
Certain
amounts shown in the 2006 Statement of Earnings have been reclassified to
conform with the 2007 presentation.
減価償却方法の変更(Change in Depreciation Method)は、国際会計基準(IAS)8号「期間損益、基本的な誤謬および会計方針の変更」では”見積りの変更”として取り扱い遡及修正しない(IAS16号「有形固定資産」パラグラフ61により詳細に規定あり)。米国財務会計基準は、従前のAPB意見書20号「会計上の変更」では”会計方針の変更”として取り扱って遡及修正を求めていたが、改正会計基準SFAS154号「会計上の変更および誤謬の訂正」では、国際会計基準と同様に”見積りの変更”とすることになった。SFAS154号の適用開始は2005年12月15日以降開始する事業年度からである。これにより、減価償却方法の変更については、国際会計基準と米国基準は一致した。
| 有価証券報告書は1年を単位として独立 | |
| 企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書によれば、「我が国では、有価証券報告書における開示が1年を単位として独立しており過年度の修正再表示の慣行がないこと等を考慮して、期首に企業結合が行われたとみなして損益を合算する処理を求めることとした。」(19ページより)としており、有価証券報告書の考えが国際基準とは異なっていることを明記している。 注意:現代では、会計慣行が会計基準になるのではない。実態(substance over form)を表示するために会計基準を開発(develop)し、会計基準を適用・実施して、投資家等に企業の実態を開示しようとするもの。企業結合の会計では、慣行とされた「持分プーリング法」を廃止したのも、税効果会計の導入も、キャッシュフロー計算書の導入も決して慣行から会計基準ができたものではありません。 |
| 会社法では、過年度財務諸表の遡及修正を可能としている |
2006年5月施行の、会社法施行規則120条3項では、公開会社の事業報告書では、「会計方針の変更その他の正当な理由により当該事業年度の前の事業年度に係る定時株主総会において承認または報告をしたものと異なっているときは、修正後の過年度事項を反映した事項とすることを妨げない」としており、過年度財務諸表の遡及修正を可能としている。 (2006年5月施行の、会社法施行規則120条1項6号で、公開会社の事業報告書で「直前三事業年度の財産及び損益の状況」の開示することが求められた措置。過年度事項の提供(会社計算規則161条3項)ができる、としている。 事業報告書は、会計監査人の監査の対象とはなっていないが、監査役または監査委員会の監査を受け監査報告書の作成を求められている(会社法施行規則第129条、131条)。監査役または監査役会は会計監査人より高度な会計知識を求められている。なぜなら、我が国には会計基準のない事項についても監査報告書を作成しなければならないのだ。 |
| 企業会計基準委員会が2007年3月から議論開始、2007年中は論点整理・・のんびり議論 |
| 「 「過年度遡及修正」については、平成13年11月開催の第1回テーマ協議会において、「他の法制度との調整等が必要なテーマ案」の1つとして提言が行なわれていた。 その後、平成18年5月施行の会社法の下で、過年度事項の修正の容認が明示されるという環境の変化があり、国際会計基準審議会(IASB)との会計基準のコンバージェンスに向けた共同プロジェクトにおいても、「過年度遡及修正」は「長期プロジェクト」の中でも特に優先的に検討していく項目の1つとして取り上げていることから、2007年3月に過年度遡及修正専門委員会を設置し、このテーマの検討を行うこととした。」だそうです。かなり、のんびりしたものです。会社法に後塵を配し会計基準設定主体とは到底思えない。(企業会計基準委員会専門委員会 参照) 「プロジェクト計画表」によれば、2007年は「論点整理」のみで、いつ基準とするのか明らかにされていない。 2007年7月9日、企業会計基準委員会は、突如として「過年度遡及修正に関する論点整理」を公表。かなり混乱している模様。基準のない廃止事業のことや、米国基準(FASB)と国際会計基準(IFRS)の相違のあるものの取り扱いなど委員会が整理すればよいものを不毛の論点整理となっている。廃止事業については会計基準を作ればよいし、IFRSとFASBの相違点はFASB・IASBおよびASBJと合同で調整するなり、またはIFRSに一致させるなりすればよい話。委員に実務経験者が不足しているのでは?論点整理の文章を見ているとそう思えてならない。いつまで堂々巡りの議論をしているのであろうか?また、日本特有の会計基準が出来る恐れがある。 基準が無くとも国際基準があれば会社法の開示は出来ますし、国際基準に収斂することは日本の方針ともなっているのですから急ぐことは無いのかも知れません。 因みに、国際会計基準8号「期間損益、基本的な誤謬および会計方針の変更(Accounting Policies, Changes in Accounting Estimates and Errors)1979年1月設定」が会計基準の適用の変更や誤謬の訂正では過年度財務諸表を新たに選択した会計基準を適用したものに訂正、誤謬年度の財務諸表を正しく訂正し、表示されている比較財務諸表が同じ会計基準で表示されるようにする。なお、見積りの変更で、その内容が見積りの誤りで重要性がある場合は、誤謬の訂正として過年度の財務諸表を訂正する場合もあるが、単に見積もり誤差で僅少であれば当年度の財務諸表に計上することになっている。 中国の会計基準では「会計上の修正」として「会計方針の変更」「見積りの変更」「誤謬の訂正」および「貸借対照表日以後に生じた事象」を国際基準に準拠して設定し2001年1月から適用している。 2007年12月7日、突如として、企業会計基準委員会は改定「プロジェクト計画表」を公表し過年度遡及修正に関して2009年度に会計基準とする計画を明らかにした。6月15日の6ヶ月前に公表した「中期運営方針」には”過年度修正”は長期プロジェクトに含まれており検討日程に含まれていないが、3週間後の7月9日には「論点整理」を公表している。苦悩の姿が透けて見える。 2008年6月20日、企業会計基準委員会は、「会計上の変更及び過去の誤謬に関する検討状況の整理」を公表した。9月19日までにコメントを求めている。不思議なのは、2011年6月までにIFRSとの相違を無くすと「東京合意」で国際的に約束している(IFRSに一致させる約束)のにその旨の記載がない。 2009年12月4日「会計上の変更及び過去の誤謬に関する会計基準」が公表された。ほぼ国際会計基準に一致して規定されている。本会計基準は、平成23 年4 月1 日以後開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更及び過去の誤謬の訂正から適用する、としている。 四半期報告書の取り扱いは別途公表すということである。 「7. 前項に従って新たな会計方針を遡及適用する場合には、次の処理を行う。 (1) 表示期間(当期の財務諸表及びこれに併せて過去の財務諸表が表示されている場合の、その表示期間をいう。以下同じ。)より前の期間に関する遡及適用による累積的影響額は、〜」としているが、比較情報(Comparative information)の会計基準が日本にはないことから(または、金融庁の内閣府令で決めているので)比較情報の表現を「表示期間」としている。歯切れの悪い解り難い文章である。因みに、国際会計基準には、IAS1号「財務諸表の表示」パラグラフ38に「前期との比較情報を開示しなければならない」と規定している。 「20. 有形固定資産等の減価償却方法及び無形固定資産の償却方法は、会計方針に該当するが、その変更については前項(見積りの変更と同様に取り扱い、遡及適用は行わない)により取り扱う」としている。IAS16号「有形固定資産」のパラグラフ61に会計上の見積もりと明記しているが、日本には「有形固定資産」の会計基準がないための記載と思われる。 2101年4月2日、企業会計基準委員会は、かねて公表するとしていた「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」等の公表に伴う「四半期報告書に関する会計基準」(案)等を公表した。新旧対比表 参照 同時に、「一株当たり当期純利益に関する会計基準(草案)」も公表した。 |
B 重要な営業譲渡・会社分割などで廃止(非継続)事業と継続事業とを区分表示する会計基準
重要な営業譲渡・会社分割などがあった場合、営業譲渡や会社分割などで廃止(非継続)事業と、継続している事業とを区分表示して、投資家・財務諸表の読者に、それぞれの事業の規模、収益性、企業に与える影響度などを分かり易く表示することを求めている。(国際財務報告基準(IFRS)5号「譲渡のため保有する固定資産および廃止事業(Non-current Assets Held for Sale and Discontinued Operations )」参照)
日本には、投資家に判り易く表示するという配慮の会計基準はない。日本は、むしろ難解にしているように思える。
| 2XX1年 | 2XX2年 | |
| Operations 継続事業 |
xxx | xxx |
| Financing and Investing
Activities 金融および投資活動 |
xxx | xxx |
| Income Taxes 法人所得税 |
xxx | xxx |
| Discontinuing Operations 廃止事業 |
xxx | xxx |
| Net Income or Comprehensive
Income 純利益または包括利益 |
xxx | xxx |
NECの米国基準による非継続事業の区分表示の例がある(2006年6月22日遡及修正版)
C すべての損益を業績表示する包括利益の会計基準
現在、国際会計基準は、日本で純資産の部(旧・資本の部)に計上していた、評価・換算差額等(1 その他有価証券評価差額金、 2 繰延ヘッジ損益、 3 土地再評価差額金、 4 為替換算調整勘定(海外の連結子会社の財務諸表の換算差額)を、包括利益として損益計算書に表示するべく検討している。損益計算書を通さずに、純資産ないし株主持分へ直接計上される損益をなくそうとするものである。我が国は、官民上げて反対している。(「いきつくところ包括利益表示か」参照)
認識した利益および費用の計算書(Statement of Recognised Income and Expense)は、株主持分以外の資産・負債の当期変動(包括利益を含めた)を表示するとしている。要請している表示方法は;
Proposed Format for the Statement of Comprehensive Income (IAS PLUS の「業績報告」より)
| Column 1 Total 合計 (Columns 2 + 3) |
Column 2 Income and Expenses Other than Remeasurements 測定し直さない利益および 費用 |
Column 3 Income and Expenses Resulting from Revisions to Prior Expectations about Future Periods (Remeasurements) 以前の見積りの修正から生じた利益および費用 |
|
| Operations 継続事業 |
xxx | xxx | xxx |
| Financing and Investing
Activities 金融および投資活動 |
xxx | xxx | xxx |
| Income Taxes 法人所得税 |
xxx | xxx | xxx |
| Discontinuing Operations 廃止事業 |
xxx | xxx | xxx |
| Net Income or Comprehensive
Income 純利益または包括利益 |
xxx | xxx | xxx |
2006年3月に公表された、IAS1号「財務諸表の表示」に関する会計基準の草案では、上記の方法とは異なり、包括利益を損益計算書(Statement of recognised income and expense)に一つの計算書にまとめる方法と、損益計算と包括利益を二つの計算書にまとめる方法を提示している。
| −IASB理事にインタビュー−2004年3月3日 | ||
| 日本の会計風土は素晴らしいものがあるとは思うが,ほとんどの事柄に同意せず,そしてそれは他国が納得する意見ではない。われわれは日本の意見すべてに耳を傾け,理解しているが,同意はできない(例えば,IASBは「包括利益」の導入を目指しているが,日本は当期利益の考え方がなくなり,実態がわかりにくくなるとして,反対意見を表明している。「包括利益」とは貸借対照表を原則時価評価して,有価証券などの評価損益を毎期の利益に反映させる方法)。 ジェトロ・ブリュッセル・センター EUトピックスNo38 2004年3月3日より |
||
| 会計基準共通化、日本は一段の加速を――トウィーディーIASB議長に聞く。2006/03/04, 日本経済新聞 朝刊 | ||
「日本の力も貸してほしい。しかし、我々が既に決めた部分に追いつくことばかりに時間をかけていては、未来に向けた議論に入れない。現在の国際基準との共通化を済ませるのが早ければ早いほど、新たな基準作りに参加し影響力を及ぼせるはずだ」 2006/03/04, 日本経済新聞 朝刊 参照
|
参考:
企業会計基準委員会の委員長のメッセージ、日本の会計基準に対する認識 参照。
斎藤静樹委員長著「会計基準の形成と市場間統合」参照
「複数の基準をメニューとして提示し、開示する側に選択の余地を与えるとともに、〜」⇒これでは、オピニオン・ショッピングが可能となり、資本市場の信頼を得ることはできない。
斎藤静樹委員長著「グローバル・コンバージェンスと日本の会計基準」2006年8月 参照
「世界の会計基準設定主体はIASBとアメリカの財務会計基準審議会(FASB)、それに日本の企業会計基準委員会(ASBJ)の三極になるとみられている。」⇒ほんと? 実務の世界では日本の会計基準の知名度はない。日本語で、まとまった基準書はないし、英語版もない。
委員長は、金融庁・企業会計審議会第一部会会長兼務(05年1月まで)
国際会計基準審議会(IASB)の基準諮問会議(SAC)に金融庁も出席しており「議事録」が公開されています。
| 2003年5月 | 金融庁 | 「米国では国際会計基準は認められていない」 | 様子を見ながら対応する。 |
| 2003年10月 | 日本経済団体連合会 | 「会計基準に関する国際的協調を求める」 | IASBの包括利益は反対。 |
| 2004年6月 | 企業会計審議会 | 「国際会計基準に関する我が国の制度上の対応について(論点整理)」 | |
| 2004年7月 | 経済産業省 | 「我が国企業会計の国際化に関する報告」参照 | 相互承認を求めている。 |
| 2005年7月 | 金融庁 | 「CESRによる同等性評価の公表」の解説 参照 | 欧州、相互承認を認めず。 |
| 2005年9月 | 経済産業省 | 「企業会計研究会中間報告」参照 Equal footingを主張しているが、日本の土俵にIASBがのることはない |
再び同じ主張の繰返し。 |
| 2006年3月 | 企業会計基準委員会 | 「国際基準との収斂作業状況」「3回目会合・・3項目追加で合意」参照 | |
| 2006年6月 | 日本経済団体連合会 | 「コンバージェンスの加速化と相互承認を求める」 | 日本基準の孤立化への懸念 |
| 日本基準が国際基準と同等であれば孤立する懸念はないはず。本音が垣間見える。 ⇒本音版、一転して「加速化支持の立場表明」 |
|||
| 2006年7月 | 日本政府 | 骨太の方針2006の12ページで「会計基準の国際的な収斂を 促進」を突如指示 |
国際的収斂を指示 |
| 2006年7月 | 金融庁・企業会計審議会 | 会計基準のコンバージェンスに向けて(意見書) 会計基準を巡る国際的な動向について |
前向きな対応を表明 |
| 2006年8月 | 企業会計基準委員会 | ・・・・・・ | 議題にあがらず |
| 2006年9月 | 外務省の「世界の中の日本・30
人委員会」の、塩崎恭久衆議院議員がまとめた 「リーダーシップをもつオープンな日本へ」の中(31−32ページ) |
積極的に会計基準の統合 | |
| 2006年10月 | 企業会計基準委員会 | 「コンバージェンスへの取り組み」「プロジェクト計画表」 | EU対策でコンバージェンス |
| 2007年3月 | 日本企業、欧州市場で締め出しか | EUの最初の同等性評価 | |
| 2007年8月 | 企業会計基準委員会 | 日本が2011年6月末までに国際会計基準に完全収斂を約束 | 収斂を国際的に約束 |
米国会計基準SFAS157号「公正価値測定」を公表、公正価値を売価と定義
2006年9月18日、米国財務会計基準審議会(FASB)は、SFAS157号「公正価値測定(Fair value measurements)」を公表し、公正価値の定義を資産は受け取る売却価値、負債は支払う移転価値とし明確にした。再調達原価ではないとしている。公正価値評価を求められている現行会計基準の公正価値はこの定義に統一されることとなった。また、公正価値評価による影響額は、損益計算書の損益となる。2007年11月15日以降開始する事業年度から適用で、早期適用も認められる。(SmartPro SFAS157号「公正価値測定」の翻訳by岡部孝好同志社大学教授 参照)
2009年5月28日、国際会計基準審議会(IASB)は、「公正価値測定(Fair Value Measurement)」のガイダンス草案を公表し、9月までコメントを求めている。これは、IASBと米国FASBが収斂作業として纏め上げたもので、米国のSFAS157号の公正価値測定と一致したものである。(結論となった背景、例示 を参照)
D 国際基準および米国は、会計基準設定の経緯が広く公開され意見を求めている。
2002年10月29日、財務会計基準審議会(FASB)は、国際会計基準審議会(IASB)とグローバルな会計基準の統一に関して協働することで合意した。(SEC速報、 IASB速報、 FASBとIASBの共同声明(以下「ノーウオーク合意(Norwalk Agreement)NorwalkとはFASBの所在地」という) 欧州委員会速報 FASBの「IASBとの収斂」 参照)
2005年12月8日、EUの市場担当コミッショナーであるチャーリー・マクリービー氏は、EUの同等性の評価を下記の通り、米国のロードマップ(少なくとも2009年までに米国基準との差異調整表の添付を解消する)に合わせる形で、当初EUが「2007年から」としていたものを2009年まで2年延期する見解を表明している。(プレスリリース ニュース 参照)
|
Equivalence between third country
GAAP and IFRS |
2006年2月27日にFASBとIASBとの間で締結された「IASBと米国会計基準の収斂に関する2006年から2008年の計画 A Roadmap for Convergence between IFRSs and US GAAP-2006〜2008」の相互理解メモ(MOU)に従い、FASBは「FASBとIASBとの共同作業の枠組み」を明らかにし、IASBとの共同作業を含む作業状況を公開している。
その中には、「財務諸表の表示」に関する会計基準の見直し作業が含まれている。(「財務諸表の区分見直し」日経)
フェーズBで、下記のように、貸借対照表(新、財政状態計算書)、損益計算書(新、利益および包括利益計算書)およびキャッシュフロー計算書を事業活動と財務活動を区分表示しようとするものが提案されている。
|
Statement of
Financial |
Statement of Earnings and
Comprehensive Income |
Statement of Cash
Flows |
||
|
Business ・事業 |
Business
・事業 |
Business
・事業 |
||
|
Financing・財務 |
Financing
Expenses |
Financing
Cash Flows |
フェーズAでは、財務諸表の体系の若干の改正と包括利益の表示を含むIAS1号「財務諸表の表示」に関する会計基準の草案が提示されている。包括利益を損益計算書(Statement of recognised income and expense)に一つの計算書にまとめる方法と、損益計算と包括利益を二つの計算書にまとめる方法を提示している。
国際会計基準へのコンバージェンスは小出しであればあるほど財務諸表の期間比較は歪み財務諸表の読者をミスリード(誤解)させる恐れが生ずる。一挙に国際会計基準を導入することで各国と同等の水準となり比較可能性はより優れたものとなる。
| 日本の会計基準等の改正 | 2009年 (H21年) 3月期 |
2010年 (H22年) 3月期 |
2011年 (H23年) 3月期 |
2012年 (H24年) |
2015年〜 2016年 |
| 経営者による財務報告に係る内部統制の報告書および監査、 | ⇒適用 | ||||
| 四半期報告書の開示 | ⇒適用 | ||||
| 改正リース会計・・骨抜きリース会計の廃止、 | ⇒適用 | ||||
| EDINETのXBRL化・・四半期、半期報告書、年度報告書に適用 | ⇒適用 | ||||
| 工事契約の工事進行基準の適用が始まる | ⇒適用 | ||||
| 棚卸資産にLIFO評価は廃止 | ⇒適用 | ||||
| 金融商品の時価表示、2010年3月期より適用 | ⇒適用 | ||||
| 賃貸用不動産の時価開示、2010年3月期より適用 | ⇒適用 | ||||
| セグメント情報・・マネジメント・アプローチでの開示 | ⇒適用 | ||||
| 企業結合で持分プーリング法廃止、早期適用可 | ⇒適用 | ||||
| 資産除去債務、早期適用可 | ⇒適用 | ||||
| 会計上の変更、誤謬の訂正、見積りの変更、表示の変更 | ⇒適用 | ||||
| 国際会計基準(IFRS)の適用(案) ・・(金融庁)・・米国に追従する予定 |
⇒任意適用 | 適用判断 | 強制適用 |
なお、国際会計基準1号「財務諸表の表示」パラグラフ15には、”財務諸表には企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローを適正に表示しなければならない。IFRSを適用し、必要な場合は追加的開示をすれば、適正な表示をもたらす財務諸表が作成されると推定される”としている。つまり、国際会計基準及びその指針に準拠して作成した財務諸表は適正表示しているとしている。
パラグラフ16には、”財務諸表が国際財務報告基準(IFRS)に準拠する企業は、注記にIFRSに準拠している旨を明示的かつ十分に記載しなければならない。財務諸表がIFRSの全ての規定に準拠していない限り、企業は当該財務諸表がIFRSに準拠していると記載してはならない”とされている。
加えて、パラグラフ18では、”不適切な会計方針は、適用した会計方針の開示又は注記若しくは説明文書のいずれによっても救済されるものではない”として、IFRSに反した処理等は、いかなる方法でも救済されないとしている。
新たな会計基準の適用は、国際会計基準(IAS)第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」のパラグラフ28に、新たな会計基準を初めて適用し現在、過去または将来の期間に影響を及ぼすかもしれない場合、適用する会計基準又は指針、会計方針変更の内容、可能な場合影響する科目及び影響額を開示する必要がある。将に財務諸表の読者に必要な情報である。日本は、金融庁が行政に必要な情報として”状況調査”としているが、国際会計基準は投資家に必要な情報と捉えている。適用する会計基準で利益が変わり株価に影響する。米国を含む国際基準は、投資家保護に当然に会計基準の新たな適用または変更については重要な情報開示と考えられている。日本にはそうした規定はない。(連結財務諸表規則 財務諸表規則 参照)
前原誠司国交相は2009年9月25日、日本航空の再建問題に関し、同相直属の専門家チーム「JAL再生タスクフォース」を設置した。メンバーは、旧産業再生機構の委員長を務めた高木新二郎野村証券顧問ら外部の専門家5人。日航が自主再建に向けた経営計画を策定するに当たり、積極的に指導・助言を行い、妥当性を評価するとともに、実行面の監督も行う。前原国交相は、自らの人選によるタスクフォース設置で、日航再建も政治主導で行う姿勢を明確化した。
前原国交相はタスクフォース設置の趣旨について「日航の実態を厳しく客観的に把握し、従来のしがらみから自由で、抜本的な再生計画の迅速な策定と実行を主導することが望ましいと判断した」とのコメントを出した。(2009/09/25-11:09)
公表している有価証券報告書から連結財務諸表を見てみると以下の通りで実質的に債務超過状態である。
| 単位:百万円 | 2008年 3月31日現在 |
2009年 3月31日現在 |
2009年 6月30日現在 |
||
| 負債合計 | 1,651,713 | 1,553,907 | 1,517,949 | ||
| 純資産の部 | |||||
| 資本金 | 251,000 | 251,000 | 251,000 | ||
| 資本剰余金 | 155,836 | 155,836 | 155,802 | ||
| 利益剰余金 | 41,320 | △21,874 | △127,216 | ||
| 自己株式 | △890 | △917 | △938 | ||
| 株主資本合計 | 447,266 | 384,014 | 278,647 | ||
| その他有価証券評価差額金 | 2,578 | △1,440 | 644 | ||
| 繰延ヘッジ損益 | 8,167 | △201,816 | △115,551 | ||
| 為替換算調整勘定 | △4,077 | △6,101 | △5,760 | ||
| 評価・換算差額等合計 | 6,668 | △209,358 | △120,667 | ||
| 少数株主持分 | 17,136 | 22,115 | 20,807 | ||
| 純資産合計 | 471,070 | 196,771 | A | 178,787 | |
| 負債純資産合計 | 2,122,784 | 1,750,679 | 1,696,737 |
日本の会計基準では計上しなくてもよいが、国際会計基準では計上が求めれている債務は、次の通り。
| @計上していないリース・債務 | 2008年 3月31日現在 |
2009年 3月31日現在 |
||
| 「平成20年4月1日前に契約を締結した所有権移転 外ファイナンス・リース取引については、引き続き通常 の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用してい る」としてリース債務を計上していない部分。 |
△341,009 | △288,570 | ||
| 上記ファイナンスリースに対応するリース資産の帳簿価額 | 332,891 | 280,602 | ||
| 差引純資産影響額(簿外) | △8,118 | △7,968 | B | |
| A計上していない退職給付債務に関する事項 | ||||
| 退職給付債務 年金資産 退職給付引当金⇒BS計上額 前払年金費用 差引 ⇒未計上の債務 (差引内訳) 会計基準変更時差異の未処理額 未認識数理計算上の差異 未認識過去勤務債務 |
△844,232 479,214 95,485 △54,205 △323,737 △97,534 △225,654 △547 |
△800,971 408,398 94,911 △33,814 △331,476 △75,600 △256,111 235 |
||
| 差引⇒未計上の債務 | △323,737 | △331,476 | C | |
| 修正後純資産は債務超過=A−B−C | 139,215 | △142,673 | =A-B-C |
日本航空は、実質債務超過である。繰延ヘッジ損益の損失は昨年度にも関係してれば、場合によっては昨年度から債務超過であった可能性がある。日本の会計基準では実態を示しえないことが露呈した格好である。投資家にとっては、債務超過であると言われれば詐欺のように思われるであろう。会計基準設定者は、その重みを感じるべきだ。適正とした監査人もその重大さを噛みしめるべきだ。
日航は6月末現在の自己資本比率が9.3%まで下がっており、再建には今後3年間で2500億〜4500億円程度の資本増強が必要とみられる。産業再生法の適用要請はその一環で、日本政策投資銀行から数百億円規模の出資を受けることを想定している模様。メガバンクなどに対し、債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)による資本増強も求める意向だ。
しかし、産業再生法による公的資金投入は「3年後の確実な再建」が条件。日航がこれまでに示した(1)国内外50路線の廃止(2)グループ人員の6800人削減(3)外資との業務・資本提携−−などの再建案に対し、銀行団には「実現可能性が検証できない」との見方が強い。この日の面談でも政投銀から「現状のままでは支援は厳しい」との意見が出た。(毎日 日航に関するニュース 参照)
旧国鉄のように、親方日の丸が招いた結果といえるだろう。
日航 債務超過1兆円 債権放棄上積み、きょう要請 (2010年7月1日)
会社更生手続き中の日本航空は6月30日、会社更生法を一月に同時申請した子会社二社と合わせた三社の債務超過額が、一兆九億円になったと発表した。従来見通しより約一千億円膨らんだ。日航は、八月末の更生計画提出に向け、七月一日から主力銀行団と債権放棄額の上積みや新規借り入れについて本格的な交渉に入るが、難航しそうだ。
三十日記者会見した、日航の管財人である企業再生支援機構の瀬戸英雄企業再生支援委員長らによると、債務超過額が膨らんだ要因は、大型機の退役計画を三年間から一年間に短縮したことや撤退路線数が当初予定より拡大したため。負担増は二千五百億円程度だが、一方で売り上げの改善やコスト削減効果などで経常損益が千五百億円改善しており、債務超過は差し引き一千億円増となった。
この三社に他のグループ会社も加えた連結ベースの債務超過額は、約九千五百億円になり、更生法申請時の八千六百七十六億円より八百億円超膨らんだ。
また、日航は財務諸表のほか、三年間の事業収益計画を策定。これらをもとに、一日以降、主力銀行団と交渉を進め、八月上旬をめどに大筋で合意したい考え。しかし、債権放棄については、銀行団が難色を示しているうえ、新規借り入れについても政府保証などが求められそうだ。(2010年7月1日東京新聞 日本航空のニュース 参照)
参考:
米国における「進化し続ける企業年金の会計」
国際会計基準と米国基準のコンバージェンスのプロジェクト
ASBJの「退職給付会計の見直しに関する論点の整理」の公表・・平成23年を目途として、退職給付に関する会計基準等を見直すこととしております。
「退職給付・・日本の退職給付会計に対応する国際会計基準がIAS19号の比較」byデロイト
「企業年金の積み立て不足/IFRS 数理計算上の差異の償却 」by吉永康樹氏
「成長というゲームの終わり」by池田信夫氏Blog⇒「JAL年金問題は日本経済の縮図」、「”JAL 企業年金の改定について考える会”の要請」
・・・JAL年金問題は、日本経済の縮図であると同時に慣習を要約した日本会計の典型といえるのである。
何が日本の会計基準か一つに纏めたものがない。例えば、昭和24年公表の企業会計原則は、国際会計基準にはない連結付属明細表として「社債明細表」「借入金等明細表」「資産除去債務」等に日本特有なもので現在も生きている。旧大蔵省時代の企業会計審議会が公表した会計基準、金融庁の企業会計審議会の公表した会計基準、企業会計基準委員会が公表した会計基準や会計指針などがあるが、現在有効となっているものがどれなのかは、企業会計基準委員会など権威あるところで一つに纏めたものはない。これでは、毎年のように改正される会計基準に関して、財務諸表の作成者、監査人、財務諸表利用者に対して曖昧で不明確である。
例えば、米国では米国の会計基準を纏めて、FASBは、FASB Accounting
Standards
Codification(会計基準法典)を公表して非政府の会計基準の唯一のものとした。既存の会計基準にとって変わるが変更はない、としている。現在数千ある基準を約90に纏めた。2009年9月15日以降終了する事業年度より適用する。(FASB速報 ニュース 参照)
H EDINET版有価証券報告書の"初期表示"は目次が抜かれページがない、一括印刷できない、リンクが張れないの三重苦
2010年5月13日、日本電波工業は、IFRS(国際会計基準)に基づいて10年3月期の決算を発表した。金融庁は10年3月期から、会計基準にIFRSを採用することを認めており、日本電波工業がIFRS任意適用企業の第1号となる。今回、日本電波工業は初めてIFRSに基づいた財務諸表を日本語で発表していたが、2002年3月期からIFRSに基づいた財務諸表は作成していたため「初度適用には該当しない」としている。「参考」として09年3月期と10年3月期のIFRSと日本基準の差異の比較を発表した。
(日経BP)
2010年6月25日、日本電波工業は、株主総会後、有価証券報告書を提出した。提出した有価証券報告書には、国際会計基準にはない連結付属明細表として「社債明細表」「借入金等明細表」「資産除去債務」等が追加して開示されている。 注記15に短期借入金及び長期借入金等で開示している内容である。連結財務諸表の注記番号の頭に※印は無意味で目障り。英文のIFRS連結財務諸表とは異なっており、金融庁独特の開示の指示に従ったものと考えられる。これでは、株主総会前に提出は無理であったろう。読み難い有価証券報告書は会社のサイトに開示はしていない。正解である。金融庁の担当官は、審査をしているが財務諸表とは何か判っていない。(EDINET 参照・・)
電子版有価証券報告書等の情報開示であるEDINETで国際会計基準適用の第一号である日本電波工業の有価証券報告書を見ると上記に加えて、従来から改善されておらず、@各企業の有価証券報告書へ直接リンクできない、AEDINET版の"初期表示”の有価証券報告書には目次が抜かれページが付されておらず、ページ総数が判らない(会社のWeb上に開示している有価証券報告者には目次及びページがある)、B一括印刷もできない。したがって、@リンクできないことから、定期的に特定の会社の有価証券報告書を簡単に見ることができない、Aページが付されていれば、ピンポイントでページを参照して○ページの△についてと指摘できるが、これができない、B一括印刷できないので、非常に不便である。EDINETは、通常の読者を想定しているとは到底思えない。
ちなみに、他の国では、企業にリンクを張れるし、直接、特定の有価証券報告書にもリンクを張れる。無論、紙ベースのようにページが付されており1ページたりとも抜けていないことが確認できる(いわゆるpopulation control (母集団の管理・・総数と途中に抜けていないことの確認)されている)。日本電波工業の”投資家の皆様へ”のホームページには、有価証券報告書を掲載していない(会社の気持ちが分る)。閲覧したい場合は金融庁のEDINETに閲覧したい都度アクセスする必要がある。
EDINET版の有価証券報告書と、会社のホームページ”投資家の皆様へ”に掲載の有価証券報告書の違いは、会社のホームページに掲載の有価証券報告書にはページが付され一括印刷可能になっている一方、EDINET版はページが付されておらず一括印刷ができません。例えば、本田技研工業の場合が典型的です。読者への利便性を会社のホームページで保管している様子がわかる。
| 会社のホームペー掲載の | EDINET掲載の | 有価証券報告書速報 | |
| ホンダ技研工業 | 有価証券報告書 | 有価証券報告書等 | 有価証券報告書等 |
| 読者への利便性を会社の ホームページで補完しているようだ。 |
ページあり一括印刷可能 | 会社の登録書類へリンク不可 ページなし一括印刷不可 読者への利便性は他の国に比べかなり低い PDFファイルは会社が提出したページありの姿で閲覧可能 |
会社の提出したページを付した PDFファイルの有価証券報告書等 をリンクできる。 |
会社が金融庁EDINETへ提出したPDFファイルの有価証券報告書等はページが付してあり全文です。これを閲覧するには、EDINETへアクセスするより、Googleで「●●会社 有価証券報告書 searchina」と検索してSearchinaのサイトのPDFファイルを閲覧したほうが早くて確実・簡単です。
I 外国会社、例えば、IFRS適用のダイムラー社の”初期表示”の財務諸表には注記が表示されない。
東京証券取引所に上場の外国会社の財務諸表を金融庁のEDINET見てみると、投資家保護のための情報開示とは思えないことが起きていることが分る。
例えば、ドイツの車製造会社ダイムラー・ア−ゲ−(Daimler AG)が届け出た2009年度の有価証券報告書は総計363ページあるが、金融庁のEDINETでは、提出書類”初期表示”の第6経理の状況に、1.連結財務書類、2.主な資産・負債及び収支の内容、3.その他、4.国際財務報告基準(IFRS)と日本における会計原則及び会計慣行(会計基準)の相違を見ることができる。ただし、1.の連結財務書類は(1)連結損益計算書3期、(2)連結包括損益計算書、(3)連結貸借対照表、(4)連結株主持分変動計算書の四つの計算書しか掲載していない。それぞれの計算書には、”添付の注記事項は、これらの連結財務諸表の一部を構成している。”と記載してあるに関わらず「注記事項」は掲載されていない。これが金融庁がいう投資家保護の開示であろうか。PDFファイルには提出された書類の全てが表示される。提出書類”初期表示”は無駄。
なお、ダイムラー社はEDINETに363ページの有価証券報告書を提出している痕跡がある。投資家向けサイトの有価証券報告書速報にEDINETに提出の有価証券報告書が掲載されているからである。
| EDINET掲載の | 有価証券報告書速報 | |
| ダイムラー・アーゲー社 (未上場) |
有価証券報告書等 | 有価証券報告書(E05854) |
| EDINETはページがなくなる PDFファイルはすべて表示されます。 |
上記は、グーグル検索で表示されたものです。 |
基礎データ:●各国の上場会社の数 ●主要国の会計士の数 ●各国の国際会計基準適用状況
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公認会計士・税理士 横山明
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