株主に対する情報開示

ボーイング社に見る株主総会召集通知書(Proxy Statement)を例示として
日米欧比較
  • あとがき
    • 株主代表訴訟で役員の賠償責任に上限(改正商法)
取引所の株式会社化(上場)と情報開示」へ
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はじめに

株式市場の主役は企業と出資者の株主である。株主は企業から十分な情報を入手することによって投資するかどうかの判断を下す。これは至極当然のことのように思う。

下記の通り、日本の個人金融資産約1400兆円のうち個人の株式投資は6.4%といわれ米国の18.3%ドイツの12.7%と比較するといかにも少ない。個人の株式市場への信頼は、企業の株主に対する情報開示も関係しているのではないだろうか。個人預貯金約700兆円のうち10%が株式市場に資金がシフトすれば、国家の一般会計約80兆円(税金収入50兆円プラス国債30兆円)から行う経済対策より経済効果は大きいのは明白である。

家計(個人)金融資産に占める株式投資の割合は次の通りです
郵便貯金 民間預金 保険・年金 株式 投資信託 現金 その他 合計
平成12年度 249兆円 470兆円 390兆円 64兆円 34兆円 37兆円 141兆円 1,386兆円
割合 18.0% 33.9% 28.1% 4.6% 2.4% 2.7% 10.2% 100%
平成13年度 239兆円 490兆円 411兆円 63兆円 30兆円 38兆円 146兆円 1,417兆円
割合 16.8% 34.6% 29.0% 4.5% 2.1% 2.7% 10.3% 100%
出展:郵政のホームページヘ   (郵便貯金・年金は財投で「特殊法人」へ融資されている。)
個人金融資産に占める株式の比率・・日本・米国・英国・ドイツとの比較」 参照

直接金融(株式市場)を拡大していドイツでは個人金融資産に占める株式の割合は13.1%
米国は21.2%と比較すると日本のそれは異常に低い割合である。自己資本比率では日本22%、米国37%

国家予算80兆円(内国債30兆円)に景気対策の支出は限られ効果が薄いことは明か
個人の株式投資が期待され、資本市場に信頼できるシステムが望まれているのだが・・・。


適切な情報開示により、経営者に緊張感を与えコーポレートガバナンスが機能することで投資リスクが最小限に留めることができると同時に、その企業で働く従業員にとっても、ある日突然に倒産するという山一証券の悲劇の二の舞を踏まなくて済むであろう。無論「適切な情報開示」とは何かは一概に規定することはできないが、過去の不祥事などの経験を踏まえて多方面の識者の英知を傾けて工夫すべきものであろう。

株式市場の発達した米国企業の株主総会召集通知書(Proxy Statement プロキシー・ステートメント)の実例を見、どのような内容がどの程度株主に開示され、株主が株主総会で議決権を行使するのかを紹介することで、日本の株主に対する情報開示の改善に役立つことを願ってこのホームページを公開しています。

最近プロキシー・ファイト(委任状争奪戦)という言葉を耳にします。例えば、英国医薬大手グラクソスミスクラインの株主総会で、会社側の役員報酬についての提案に対して5割以上の反対票が集められたというように、会社側と株主側の株主総会での委任状争奪戦をいいます。

なお、日本では、証券取引法の有価証券報告書及び半期報告書は財務局に提出し株主には報告されません。米国では、取引所規則であるナスダックのコーポレート・ガバナンスの規定(25)(A)(@)及び(A)にあるように、四半期報告書(Quarterly Report)、年次報告書(Annual Report)を株主に送付し、かつ、ナスダックおよびSECへの登録という構造になっています。個人株主を含めた投資家保護の観点から、株主への情報開示は基本ではないでしょうか。東京証券取引所の規則で四半期情報の開示が2003年3月期から予定されていますが、これは決算短信(プレス・リリース)の位置付けで、株主に送付するものではないようです。

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日本のケース

株主総会は、会社法第295条2項「取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款に定める事項に限り、決議をすることができる」とし、296条1項で「定時総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に召集しなければならない」。「総会を召集するには、取締役は、株主総会の2週間前までに、株主に対してその通知を発しなければならない(299条1項)。

通常は、定時株主総会では、計算書類及び事業報告書の承認(会社法第436条3項)、取締役・会計参与及び監査役の選任・退任(会社法第329条、第339条)、取締役の報酬(会社法361条)監査役の報酬(会社法387条)ほか重要な会社の譲渡・譲受、会社分割などがある。

計算書類等
株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書、その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章ににおいて同じ。)及び事業報告書ならびにこれらの附属明細書を作成しなければならない(会社法435条2項)。監査役設置会社、会計監査人設置会社にあっては、監査報告又は会計監査報告および取締役会設置会社の取締役会の承認を要する(会社法436条)。

取締役設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令の定めるところにより、株主に対し、取締役会の承認を受けた計算書類及び事業報告書(監査報告又は会計監査報告を含む)を提供しなければならない(会社法437条)。

上場株式の議決権の代理行使の勧誘に関する内閣府令
がありながら、投資家保護を目的として証券取引法第24条で求められる有価証券報告書(連結財務諸表キャッシュフロー計算書を含む)及び半期報告書は、定時株主総会終了後、所管官庁である財務省財務局に審査を受けて提出され金融庁の電子開示システムEDINETに開示されますが、株主には届きません。有価証券報告書は、定時株主総会終了後に公開されるため株主として総会の議決権行使に役立たないということです。閲覧は可能ですが有価証券報告書等は誰のためにあるのか不思議な日本の仕組みです。

なお、会社法であそぼ「委任状勧誘と議決権の代理行使」には、株主の議決権行使に関する会社法の規定と、上場株式の議決権の代理行使の勧誘に関する内閣府令(金融庁の内閣府令)の関係を判り易く解説しています。株主の議決権行使の日米の比較は、企業買収に絡む株主の議決権に関しIRジャパンの「日本の委任状争奪戦(Proxy Contest)の論点整理」が判り易い。

記載内容は米国のProxy Statementを参考にしたようで、議案については多少詳細を開示するするようになっています。

日本の会計制度--会社法(旧商法)と金融商品取引法(旧・証券取引法)の
二重開示制度の事例
会社名 会社法
(旧商法の計算書類
金融商品取引法
(旧・証券取引法
株主総会召集通知書に添付し株主に送付 総会後開示(注1)、株主に送付されない
株主権の行使に役立たない
NTT Do Co Mo 定時株主総会招集ご通知添付書類 有価証券報告書(平成14年度)
SONY Corp 株主総会召集通知書 有価証券報告書等
NTTドコモの場合、規則改正により平成14年度(2003年3月期)から米国基準による連結財務諸表で開示しています。
加えて、商法上の連結計算書類も早期に開示しています。

金融庁
が行っている個別企業の有価証券報告書等の電子情報開示制度EDINETは、個別企業には直接リンクできません。
EDINETへアクセスしてその都度企業検索を行って見る必要があります。利便性に欠ける日本だけのシステムです。


(注1):2009年10月6日有価証券報告書等の定時株主総会前の提出を可能とする内閣府令(案)を金融庁が公表。(有価証券報告書の総会前提出について,2010年2月3日)
(3)有価証券報告書等の定時株主総会前の提出を可能とするため、有価証券報告書の添付書類とされている、定時株主総会において承認を受けた
、又は報告した計算書類・事業報告書に加えて、定時株主総会において承認を受け、又は報告しようとする計算書類・事業報告書を追加することとします
また、有価証券報告書等を定時株主総会前に提出した場合において、その決議事項が修正・否決されたときは、臨時報告書においてその旨及び内容の
記載を求めることとします
第17条1項1号ロ、第19条2項9号の2)
企業内容等の開示に関する内閣府令 参照

現場の一声・・2010年05月20日「有報の早期提出」、2010年05月31日「株主総会議長セミナー」by ゆっきーお嬢 参照

2010年2月12日、金融庁は、議決権行使の内容を義務つける規則改正案を公表した。この開示を臨時報告書で求めることで株主総会後の提出を求めるようになった。
(4)議決権行使結果について
臨時報告書において、株主総会における議案ごとの議決権行使の結果(得票数等)を開示。

具体的な事例は、各社ホームページで公開しています。下記の検索エンジンをクリックしてみてください。
「株主総会」をキーワードとして検索 ⇒ ⇒  Google   Fresheye 
株主総会召集通知書をキーワードとして検索しても数件しか検索されません。下記の米国と比べると、日本の場合は株主に対する情報開示が商法の規定を順守しているとはいえ形式的といえます。

商法の抜本的改正(平成14年5月22日)

法務大臣の諮問機関である法制審議会(会長・竹下守夫駿河台大学教授)は,平成十四年二月十三日,会社法制の大幅な見直しを内容とする商法等の一部を改正する法律案要綱(以下「要綱」という。)を取りまとめ た。平成14年5月22日、参議院でこの改正商法案は可決・成立した。商法  商法施行規則  商法特例法 参照。

計算関係規定の省令委任:
会計基準の変更への迅速な対応を可能にし,商法会計と証券取引法会計との整合性を確保し続けるため,財産価額の評価方法等についての規定を法務省令で定めることとする。(「商法等の一部を改正する法律の概要」(平成14年改正商法) 参照)

商法の要綱の中で「計算関係」では次のとおりである。
計算関係
第 十 二 計算関係規定の省令委任  
一  会計帳簿における財産の価額の評価方法    
1  株式会社の会計帳簿に記載又は記録すべき財産については、第三十四条の規定にかかわらず、法務省令の定めるとこ ろにより、その価額を付さなければならないものとする。    
2  第二百八十五条ノ二及び第二百八十五条ノ四から第二百八十五条ノ七までの規定は、削除するものとする。  
二  貸借対照表等の記載事項及び記載方法    
1  貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に記載又は記録すべき事項及び記載又は記録の方法は、法務省 令をもって、定めるものとする。    
2  第二百八十六条から第二百八十七条ノ二まで及び第二百九十一条第四項の規定は、削除するものとする。    
3  商法中改正法律施行法第四十九条の規定を削除するほか、所要の規定を整備するものとする。   三  配当可能限度額及び中間配当可能限度額の算定    
1  第二百九十条第一項第四号及び第六号の規定を削除し、当該各号に定める事項は法務省令で定めるものとする。    
2  第二百九十三条ノ五第三項第三号及び第五号の規定を削除し、当該各号に定める事項は法務省令で定めるものとす る。

第 十 三 大会社についての連結計算書類の導入  
一  連結計算書類の作成及び監査    
1  大会社の取締役は、当該大会社の決算期における当該大会社及び当該大会社がその経営を支配する他の会社等(法務 省令で定めるものに限る。以下「連結子会社」という。)から成る企業集団の財産及び損益の状況を示すために必要か つ適当なものとして法務省令で定めるもの(以下「連結計算書類」という。)を作成しなければならないものとする。      

(注)連結計算書類を作成すべき大会社の範囲については、当分の間、証券取引法第二十四条第一項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出すべきものに限るものとする。    

2  連結計算書類は、3の監査を受ける前に取締役会の承認を受けなければならないものとする。    
3  2の承認を受けた連結計算書類は、1の決算期に関する定時総会の開催前に、法務省令で定めるところにより、監査 役及び会計監査人の監査を受けなければならないものとする。    
4  取締役は、2の承認を受けた連結計算書類を3の定時総会に提出し、当該定時総会において、その内容を報告し、か つ、法務省令で定めるところにより3の監査の結果を報告しなければならないものとする。    
5  第二百八十三条第二項の規定(定時総会ノ招集ノ通知ニ際シテハ第二百八十一条第一項各号ニ掲グルモノ及監査報告書ノ謄本ヲ交付スルコトヲ要ス)は、2の承認を受けた連結計算書類について準用するものとする。  

二  会計監査人及び監査役の権限等    
1  会計監査人及び監査役は、その職務を行うため必要があるときは、連結子会社に対して会計に関する報告を求め、連結子会社の業務及び財産の状況を調査することができるものとする。    
2  第二百七十四条ノ三第二項の規定は、1の場合について準用するものとする。
上記(注)を見ると、商法が証券取引法と開示の一元化をするのは年度決算の有価証券報告書のみで、証券取引法第24条の5に規定の「半期報告書」は考慮されていないようである。したがって、年度決算は株主総会に報告されるが、半期報告書は依然として株主には届かない恐れがある。証券取引法と商法の開示の一元化は道半ばか・・・将来は、四半期報告書の導入も求められように・・・・。

平成13年4月18日の「法律要綱中間試案の解説」より
かねてより,経済界等から,我が国では,商法と証券取引法という二つの法律が企業会計を規制しており,そのために,各会社が商法に基づく計算書類と証券取引法に基づく財務諸表との二種類の書類を作成しなければ ならず,会社の負担となっているとの指摘がされていたところである。この指摘に対応するためには,商法会計と証券取 引法会計の調整の問題を解決する必要があり,これまでも適宜商法の規定を改正するなどして対応してきたところである が,国際的に整合性のある会計基準の確立が求められている状況にかんがみると,今後,資産の評価基準が変更され,商法がそれに速やかに対応することが要請されるものと考えられる。  そこで,試案は,大会社を前提とした立法技術的な限界,企業会計をめぐる国際的な動きの速さと法改正に要する時間 とのギャップ等の問題を解決するため,商法中には,一般的な規定のみを置くこととし,商法中の資産の評価規定等を法務省令に委任することにより,その要請に対応しようとするものである。これに伴い,配当限度額の算定及び中間配当額 の算定に係る規定についても,その一部を法務省令によって規定することとしている。  なお,この点に関連し,証券取引法第二十四条の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出すべき株式会社が二種類の計算書類を作成しなくてよいようにする観点から,財務諸表等規則の定めに従い貸借対照表及び損益計算書を作成 しなければならないものとすることが適当であるとの意見が出されているところである。

詳細は「商法等の一部を改正する法律要綱中間試案」及び「商法等の一部を改正する法律要綱中間試案の解説」をご覧ください。
証券取引法第二十四条の規定(金融商品取引法第24条に引継がれた)
主務官庁が大蔵省時代の旧規定では、有価証券報告書は大蔵大臣に提出しなければならない、とされていましたが、省庁再編成で金融行政を金融庁に再編されたため、下記の通り、改正により「内閣総理大臣に提出」とされました。省令については、大蔵省令から内閣府令に改められています。

この条文にある通り、有価証券報告書は内閣総理大臣に提出する書類であって、投資家である株主には交付されません。半期報告書も同様です。また、有価証券報告書は株主総会が終了してから財務省財務局に提出またはEDINETに電子登録されるため、株主総会出席の株主は事前に目にすることはできません。つまり、株主が株主総会で議決権を行使できる唯一のチャンスに、有価証券報告書は株主総会前に株主に対して情報開示できない。これが日本の投資家(株主)保護の仕組みです。世界に類を見ない仕組みです。(「主要各国の取引所の株式上場」の株主総会(AGM) 参照)
証券取引法 (昭和二十三年四月十三日法律第二十五号) 最終改正:平成一三年六月二九日法律第八〇号

二十四条  有価証券の発行者である会社は、その会社が発行者である有価証券(政令で定める有価証券(以下この条において「特定有価証券」という。)を除く。第一号から第三号までを除き、以下この条において同じ。)が次に掲げる有価証券のいずれかに該当する場合には、内閣府令で定めるところにより、事業年度ごとに、当該会社の商号、当該会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項その他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書(以下「有価証券報告書」という。)を、当該事業年度経過後三月以内(当該会社が外国会社である場合には、公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして政令で定める期間内)に、内閣総理大臣に提出しなければならない。ただし、当該有価証券が第四号に掲げる有価証券に該当する場合において、その発行者である会社の資本の額が当該事業年度の末日において五億円未満であるとき、及び当該事業年度の末日における当該有価証券の所有者の数が政令で定める数未満であるとき、並びに当該有価証券が第三号又は第四号に掲げる有価証券に該当する場合において有価証券報告書を提出しなくても公益又は投資者保護に欠けることがないものとして政令で定めるところにより内閣総理大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
 一  証券取引所に上場されている有価証券
 二  流通状況が前号に掲げる有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券
 三  その募集又は売出しにつき第四条第一項本文若しくは第二項本文又は第二十三条の八第一項本文の規定の適用を受けた有価証券(前二号に掲げるものを除く。)
 四  当該会社が発行する有価証券(株券その他の政令で定める有価証券に限る。)で、当該事業年度又は当該事業年度の開始の日前四年以内に開始した事業年度のいずれかの末日におけるその所有者の数が政令で定める数以上であるもの(前三号に掲げるものを除く。)
 ○2  前項第三号に掲げる有価証券に該当する有価証券の発行者である会社で、少額募集等につき第五条第二項に規定する事項を記載した同条第一項に規定する届出書を提出した会社のうち次の各号のいずれにも該当しない会社は、前項本文の規定により提出しなければならない有価証券報告書に、同項本文に規定する事項のうち当該会社に係るものとして内閣府令で定めるものを記載することにより、同項本文に規定する事項の記載に代えることができる。
 一  既に、前項本文に規定する事項を記載した有価証券報告書又は第二十四条の五第一項に規定する事項を記載した半期報告書を提出している者
 二  第四条第一項本文又は第二項本文の規定の適用を受けた有価証券の募集又は売出しにつき、第五条第一項第二号に掲げる事項を記載した同項に規定する届出書を提出した者(前号に掲げる者を除く。)
 ○3  第一項本文の規定の適用を受けない会社が発行者である有価証券が同項第一号から第三号までに掲げる有価証券に該当することとなつたとき(内閣府令で定める場合を除く。)は、当該会社は、内閣府令で定めるところにより、その該当することとなつた日の属する事業年度の直前事業年度に係る有価証券報告書を、遅滞なく、内閣総理大臣に 提出しなければならない。
 ○4  第一項第四号に規定する所有者の数の算定に関し必要な事項は、内閣府令で定める。
 ○5  第一項から第三項までの規定は、特定有価証券が第一項第一号から第三号までに掲げる有価証券のいずれかに該当する場合について準用する。この場合において、同項本文中「有価証券の発行者である会社」とあるのは「有価証券の発行者である会社(内閣府令で定める有価証券については、内閣府令で定める者を除く。)」と、「事業年度ごと」とあるのは「当該特定有価証券につき、内閣府令で定める期間(以下この条において「特定期間」という。)ごと」と、「当該事業年度」とあるのは「当該特定期間」と、同項ただし書中「当該有価証券が第四号に掲げる有価証券に該当する場合において、その発行者である会社の資本の額が当該事業年度の末日において五億円未満であるとき、及び当該事業年度の末日における当該有価証券の所有者の数が政令で定める数未満であるとき、並びに当該有価証券が第三号又は第四号」とあるのは「当該有価証券が第三号」と、第二項中「有価証券の」とあるのは「特定有価証券の」と、第三項中「第一項本文」とあるのは「第五項において準用する第一項本文」と、「発行者」とあるのは「発行者(内閣府令で定める有価証券については、内閣府令で定める者を除く。)」と、「有価証券が」とあるのは「特定有価証券が」と、「その該当することとなつた日」とあるのは「当該特定有価証券につき、その該当することとなつた日」と、「事業年度」とあるのは「特定期間」と読み替えるものとする。
 ○6  有価証券報告書には、定款その他の書類で公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定めるものを添附しなければならない。
 ○7  第六条の規定は、第一項から第三項まで(これらの規定を第五項において準用する場合を含む。)及び前項の規定により有価証券報告書及びその添付書類が提出された場合について準用する。

第154回国会で審議されている法案(2002年4月〜5月)
2002年4月に衆議院を可決し、参議院に回付された商法改正案は、抜粋すると次のようになっている。
商法  商法施行規則  商法特例法
(株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部改正)「商法特例法
(連結計算書類)  
第十九条の二 大会社の取締役は、当該大会社の決算期における当該大会社並びにその子会 社及び連結子会社から成る企業集団の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものと して法務省令で定めるもの(以下「連結計算書類」という。)を作成しなければならない。

計算書類・附属明細書の作成・監査に関する条文⇒商法第二百八十一条の改正案
第二百八十一条に次の一項を加える。   
第一項第一号乃至第三号ニ掲グルモノ及同項ノ附属明細書ニ記載又ハ記録スベキ事項及其 ノ記載又ハ記録ノ方法ハ法務省令ヲ以テ之ヲ定ム

計算書類の承認・株主総会召集通知書に添付に関する条文⇒商法第二百八十三条の改正案
第二百八十三条に次の一項を加える。   
第四項ノ要旨ノ記載方法ハ法務省令ヲ以テ之ヲ定ム

つまり、大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上の会社)は、法務省令に定めた規定に従って連結計算書類を作成し(監査特例法第19条の2)、取締役会の承認を要する計算書類(商法第281条)、株主総会召集通知書への添付(商法第283条)の具体的内容は法務省令で定めることなっている。法務省令は、平成14年11月12日、平成14年商法改正に伴う「商法施行規則改正案」として公表された。法務省令の連結財務諸表は、キャッシュフロー計算書は不要で、単年度のみの開示(期間比較の比較財務諸表となっていない)となっている。

配当制限条項である商法第290条では、連結計算書類作成により影響されていないので、単独財務諸表を基礎とした配当制限の規定のままとなっている
平成14年5月改正の「商法特例法」・・連結計算書類の部分
商法特例法(株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律 平成十四年五月二十九日法律第四十四号 )

(連結計算書類)

第十九条の二 大会社の取締役は、当該大会社の決算期における当該大会社並びにその子会社及び連結子会社から成る企業集団の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの(以下「連結計算書類」という。)を作成しなければならない。
2 連結計算書類は、次項の監査を受ける前に取締役会の承認を受けなければならない。
3 前項の承認を受けた連結計算書類は、第一項の決算期に関する定時総会の開催前に、法務省令で定めるところにより、監査役及び会計監査人の監査を受けなければならない。
4 取締役は、第二項の承認を受けた連結計算書類を前項の定時総会に提出し、当該定時総会において、その内容を報告し、かつ、法務省令で定めるところにより前項の監査の結果を報告しなければならない。
5 商法第二百八十一条第三項の規定は連結計算書類の作成について、同法第二百八十三条第二項及び第三項の規定は第二項の承認を受けた連結計算書類について準用する。

この特例法第19条の2第5項によれば、連結計算書類は株主総会召集通知(商法第283条第2項及び第3項の規定)を準用するとあり、連結計算書類についても株主総会召集通知書に添付が必要で、かつ、第4項で、定時株主総会に監査の結果を報告することを求めている。

   
会社の計算関係の改正については、西山芳喜金沢大学法学部教授が「法律時報・平成一四年九月号《特集・商法改正ーその将来への視座」に簡潔に述べていますのでご参照ください。
平成14年商法改正に伴う「商法施行規則」の改正(平成14年11月12日)
法務省は、平成14年11月12日、平成14年商法改正に伴う「商法施行規則改正案」を公表し、平成15年1月5日(日)までにコメントを求めて、次のように記している。(法務省「平成14年商法改正に伴う「商法施行規則」の改正に関する意見募集」 参照)

 第154回国会において,商法等の一部を改正する法律(平成14年法律第44号。以下「改正法」といいます。)が成立し,平成14年5月29日に公布されました。改正法は,商法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成14年政令第216号)により,平成15年4月1日から施行されることとされています。
 改正法においては,財産価額の評価方法等の規定が法務省令へ委任されたほか,連結計算書類制度,委員会等設置会社制度等が導入されましたので,その施行に伴い,商法施行規則(平成14年法務省令第22号)の一部を改正する必要が生じました。
 さらに,改正法の施行に伴う一部改正に関連して,関係各界からの要望が強い財務諸表等の用語,様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号。以下「財務諸表等規則」といいます。)等のいわゆる証券取引法会計に関する諸規定との調整や,株主総会の招集通知に添付すべき参考書類に関する規定の整備等を行うことも検討しています。
 その内容は,商法施行規則改正案のとおりですので,これに対する皆様の御意見をお寄せください。  なお,いただきました御意見につきましては,当参事官室において取りまとめた上,規則制定の際の参考にさせていただきますが,その内容を公開する可能性があること,個々の御意見に直接回答することはないことをあらかじめ御了承願います。  法務省民事局参事官室

⇒⇒成立した商法  商法施行規則  商法特例法 を参照してください。

連結計算書類の作成時期:

2003年4月1日施行日された商法特例法附則8条により、その次の決算期からとなり、3月期決算であれば、平成17年(2005年)3月期からとされています。4月決算の場合は、平成16年(2004年)4月期からとなります。

連結計算書類の作成が義務付けられるのは、商法特例法上の大会社で有価証券報告書を提出している会社に限定されています(商特19条の2@、同附則9条A)。

● 連結計算書類は取締役会の承認後、監査役及び会計監査人の監査を受けなければなりません(商法特例法第19条の2第2項3項)。
● 連結計算書類は定時総会に提出し、その内容を報告しかつ監査の結果を報告しなければなりません(商法特例法第19条の2第4項)。
● 連結計算書類は定時総会の招集通知に含める必要があります(商法特例法第19条の2第5項)。

日本監査役協会・会計委員会 参考資料
「連結計算書類制度の Q&A」の公表にあたって 平成 15 年 6 月 12 日 会 計 委 員 会 委員長 伊藤 進一郎
連結計算書類の監査役監査要綱 」平成15年9月24日 (社)日本監査役協会・会計委員会

米国式連結財務諸表について:参考:米国式連結財務諸表作成会社の上場会社
商法施行規則(計算書類の用語及び様式の特例):
第200条  有報提出大会社の貸借対照表、損益計算書又は連結計算書類の用語又は様式の全部又は一部については、第五章第三節第二款及び第三款並びに第八章第二節第二款及び第三款の規定にかかわらず、財務諸表等規則又は連結財務諸表規則の定めるところによることを妨げない。
                       
連結財務諸表規則:
2002年4月1日から施行の改正連結財務諸表規則(第87条を新設)により「米国式連結財務諸表を証券取引法上認める。」ことになったことから、上記商法第200条の規定により、商法でも米国式連結財務諸表でよいことになる。ただし商法は単年度開示。

商法施行規則による計算書類等のひな型
平成15年5月27日、日本経済団体連合会(以下”経団連”)は、2003年4月1日施行の「商法施行規則による株式会社の各種書類のひな型」を公表した。
内容は、以下のひな型を掲載しています。
・営業報告書
・附属明細書
・貸借対照表
・損益計算書及び注記
・決算公告要旨
・議決権の行使についての参考書類
・議決権行使書面
・監査役会監査報告書

[本ひな型の適用時期]
平成15 年4 月1 日以降に終了する営業年度に係る計算書類に適用する。な お、平成15 年4 月1 日前に終了する営業年度に係る計算書類についても、改 正後の商法施行規則に基づき作成する旨決定した株式会社については適用す る。
また、連結計算書類に関する規定については、平成15 年4 月1 日以降に終 了する営業年度に関する定時総会の終結の時までは適用しないものとされて おり、本ひな型では記載例等を示していない。

平成15 年8月12 日日本公認会計士協会は、商法施行規則(平成14 年法務省令第22 号)第5章第3節第 5款に規定する附属明細書のひな型の一例 として会計制度委員会研究報告第9号附属明細書のひな型」(草案)を公表した。

会社法の計算書類及び連結計算書類と国際基準との主要な相違点

商法特例法により、大会社に連結計算書類の作成が義務つけられたが依然として、証券取引法の財務諸表と相違し商法と二重に作成することに相違は無い。企業の二重作成の負荷を解消するという目的は達成されていないばかりか国際基準にも一致しておらずコーポレートガバナンスの面からも問題視されている。(「コーポレート・ガバナンス・・ヨーロッパの文脈(チャールズ・フェア氏筆)」の主要5カ国の国際比較 参照)

相違点は多く際限無いが、主要部分で国際基準と相違する点は下記の通りである。日本企業の株主が入手する計算書類は国際会計基準1号「財務諸表の表示」だけと比較しても下記のようにかけ離れたものとなっている。商法を検討する法務省民事局および法制審議会が真剣に国際基準を検討し改善しない限り日本は国際水準に達しないであろう。

会社法の計算書類
及び連結計算書類
国際基準の財務諸表 主要な相違点
(1)計算書類の体系:
・貸借対照表
・損益計算書
・利益処分案

2005年会社法改正案で株主持分変動
計算書が加えられ、利益処分又は損失
処理については会社法上規定しないこと
になった。
(1)財務諸表の体系:
・貸借対照表
・損益計算書
・株主持分変動計算書
・キャッシュフロー計算書
・説明的注記
商法では、株主持分変動計算書、キャッシュフロー計算
書 などの基本財務諸表はなく、注記が貧弱。
国際基準に利益処分案という計算書は存在しない。
商法第281条第1項の附属明細書は開示書類では
なく株主の手許には届かない。


商法が配当利益の計算を重視していると主張している
ことから、キャッシュフロー計算書の開示をしないのは
論理的矛盾とする国際会計からの視点がある。
(2)開示する計算書類(大企業)
・個別計算書類
・連結計算書類
(2)開示する計算書類:
子会社があれば連結財務諸表のみ
子会社が無ければ個別のみ
国際基準では、一つの財務諸表を開示する。
つまり、子会社があれば連結財務諸表のみを開示する。
(3)単年度計算書類のみ
・当年度のみ表示
(3)比較財務諸表
・前年度数値と比較で表示
国際基準では、前年度と比較した財務諸表の開示を求め
られ、単年度財務諸表は、国際基準では認められない。
期間比較することで、業績等が良くなったか悪くなったか
一目瞭然となるからである。
(4)注記は貧弱 (4)注記は重要な財務諸表の一部 国際基準では注記による開示が多く充実している。

下記は、平成15年5月9日
首相官邸・構造改革特区推進室の 「別添2 特区において認められなかった事項の論点整理(各省庁からの回答)」 のうち「国際会計基準(IAS)による会計処理の容認」の要望に関する法務省部分「管理コード5.02」部分です。 商法所管の法務省はIAS導入を反対していますが、その理由は正確性を欠いたものです。

国際会計基準(IAS)は、@有形固定資産について、時価による評価替を認めているが(IAS16号)、利益処理を認めおらず、評価差額は資本剰余金(revaluation surplus)として計上し配当可能利益には含まれない(IAS 16「有形固定資産参照)ので法務省が危惧しているようなことはありませんし、A下記の通り、ドイツ企業、ロシア、中国企業が国際会計基準の財務諸表でSECに登録しニューヨーク証券取引所に上場している事実があるように(SEC基準においても容認されていない。)ということはありません。
ニューヨーク証券取引所は活性化のため外国会社の上場を歓迎していますし、「強い批判があるとされている」より、下記のとおり米国会計基準と国際会計基準は双方の会計基準を収斂のため共同作業しているのです。

日本では、株主総会召集通知書に添付される商法計算書類は株主の手許に届く唯一の財務諸表。法務省の国際会計基準(IAS)に対する正しい理解が望まれます。
管理コード 規制の特例事項 根拠
法令等
各省庁からの回答(法務省の見解
5.02 国際会計基準(IAS)による会計処理の容認 (法務省) 商法第32条第1項 ○国際会計基準は、有形固定資産について、時価による評価替及び評価替による資産の増加額の利益処理を認めているが(IAS16号)、商法は、取得価額又は製作価額を計上することを要求している(商法34条2号)。これは、評価替により未実現の不確実な評価益を配当財源とすることによって債権者等を害することを防止することを目的とするものである。上記国際会計基準によって会計処理を行った場合には、我が国の債権者等の利益を害するおそれが高く、また、違法な利益配当行為として違法配当罪(商法489条3号)の対象となる可能性がある。刑法に関するものはネガティブリストの項目として掲げられており、この趣旨に照らしても特区における特例措置に含めることは不適当である。さらに、上記国際会計基準の有形固定資産の評価替を認める処理については、多くの国々で認められておらず(SEC基準においても容認されていない。)、強い批判があるとされている。

ドイツの製薬会社でDAX30社の中の、バイエル社(Bayer AG)のケース
2002年1月、ニューヨーク証券取引所に上場したバイエル社の2001年の年次報告書では、「連結財務諸表は、国際会計基準に準拠し、かつ、ドイツ商法第292a条に従って作成されている。また、これは、欧州連合の連結財務諸表のガイドライン(指令83/349/EEC)に準拠したものである。」旨、会計方針に記載されている。

2002年1月、バイエル社が、米国証券取引委員会(SEC)へ登録した外国会社の年次報告書(From20-F)では、国際会計基準(IAS)で作成した連結財務諸表である。ただし、注記44にIASと米国会計基準の差異調整表と説明を開示している。なお、欧州連合(EU)では、米国会計基準でニューヨーク証券取引所に上場している企業であっても、2年間の猶予期間を設けて2007年までにIASで開示することを求めていることから、バイエル社はIASでニューヨーク証券取引所へ上場したものと思われる。

2002年10月29日
財務会計基準審議会(FASB)は、国際会計基準審議会(IASB)とグローバルな会計基準の統一に関して協働することで合意した。SEC速報、 IASB速報、 FASBとIASBの共同声明 欧州委員会速報 参照) 相互統一により、IASと米国会計基準の差異調整表を不要にすることができ、EUと米国は収斂することになる。2007年までに収斂させようとしている。

ロシアの通信会社ロステレコム社
ROSTELECOM)は、ニューヨーク証券取引所に1998年2月17日から上場しており、SECへ登録した外国会社の年次報告書(Form20−F)は、国際財務報告基準(IFRS⇔IAS)で行っている。米国が国際会計基準を認めていないということはありません。

中国の石油会社中国石油天然気集団公司PetroChina)は、2000年4月にニューヨーク証券取引所に新規株式公開(IPO)を行い、SECへ登録した外国会社の年次報告書(Form20−F)は、国際財務報告基準(IFRS⇔IAS)で行っている。米国が国際会計基準を認めていないということはありません。なお、ペトロチャイナについては、石油公団企画調査部 佐藤美佳著「驚くべき変貌を遂げた中国国有石油会社の民営化」参照

インターネットによる電子投票が解禁された(02年4月施行)

商法等の一部を改正する法律案が平成13年11月21日可決成立し、平成14年4月1日施行となった改正法によれば、下記の米国同様、事前に株主の同意を得れば、株主総会の召集通知書に株主の登録番号と暗証番号を同封し、株主はホームページに登録番号などを入力して投票することができるようになった。

電子投票のサービスは、信託銀行や証券代行業者等が専用サイトを運営しており、上場会社等が契約してそのサービスを受けることになる。

例えば、東京証券代行株式会社が運営する専用サイトに接続し、「議決権を行使される株主様は、議決権行使番号と議決権行使専用パスワードを入力して下さい。」とあり、召集通知書に記載の番号等を入力し、総会の議案に賛成、反対の票を投ずることができる。商法の規定により、議決権の行使期限は株主総会の前日となります。

株主総会召集通知の改正条文
第二百三十二条 総会ヲ招集スルニハ会日ヨリ二週間前ニ各株主ニ対 シテ書面ヲ以テ其ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス
A総会ヲ招集スル者ハ前項ニ規定スル書面ヲ以テ為ス通知ノ発出ニ代ヘテ政令ニ定ムル所ニ依リ株主ノ承諾ヲ得テ電磁的方法ニ依リ通知ヲ発スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ前項ノ規定ニ依ル通知ヲ発シタルモノト看做ス
B前二項ノ通知ニハ会議ノ目的タル事項ヲ記載又ハ記録スルコトヲ要ス
C前三項ノ規定ハ其ノ総会ニ於テ議決権ヲ行使スルコトヲ得ザル株主ニ付テハ之ヲ適用セズ
事例:平成14年4月1日、NECソフト(株)が、6月開催の「株主総会召集通知の電子化のご案内」を掲載しています。

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会計監査人の情報・・会社法と証券取引法とでは異なる情報

上場会社の場合、株主総会の議案と一緒に届く事業報告書に、親会社と子会社の両方について会計監査人との関係を説明するように求められる(「会社法施行規則案第79条、「会社法」第437条)。

会計監査を巡るカネボウ事件のような不祥事を繰り返さないよう、企業と会計監査人の馴れ合いを強くけん制しようとするものである。

具体的には、@会計監査人の名称、A当該事業年度に係る報酬の額、B会計監査人に就任してからの年数、C会計監査人に非監査業務の報酬を支払った場合は、その非監査業務の内容、D解任または不再任の方針、E業務停止の処分を受けている場合で業務停止期間を経過していない者であるときは、当該処分に係る事項、F過去5年間に業務停止の処分を受けた者であるときは、当該処分を受けた事項、G会社との責任限定契約の内容などである。

一方、証券取引法の有価証券報告書にも似たような開示を求めている(「企業内容等の開示に関する内閣府令(案)・・2005年3月8日金融庁」 「企業内容等の開示に関する内閣府令(昭和48年大蔵省令第5号)」参照)

具体的には、「コーポレート・ガバナンスに係る開示の充実として
 有価証券届出書等において、@業務を執行した公認会計士の氏名、所属する監査法人名及び提出会社に係る継続監査年(新設)数(当該年数が7年を超える場合に限る。)、監査業務に係る補助者の構成並びに監査証明を個人会計士が行つている場合の審査体制について具体的に、かつ、分かりやすく記載する、A監査報酬の内容(公認会計士法(昭和23年法律第103号)第2条第1項に規定する業務に基づく報酬とそれ以外の業務に基づく報酬に区分した内容)について具体的に、かつ、分かりやすく記載すること」となっている。

会社法の「事業報告書」と、証券取引法の「有価証券報告書の”コーポレート・ガバナンスに係る開示”」を比較すると以下の通りである。

項目 事業報告書 有価証券報告書
監査人の名称
現金報酬
非金銭報酬
継続年数の開示対象 監査法人に焦点 関与会計士中心
非監査業務の依頼内容
監査人の解任方針
業務停止の状況
会社との責任限定契約の内容

欧米の4大法人が、「ある企業の監査人就任100周年記念パーティ」など行う場合があるが、日本の会社法では監査法人の長期監査は好ましくないと断定しているようだ(「簿記・会計の歴史的概観」参照・・欧米の監査の歴史は長い)。いずれにしても、会社法と証券取引法の所管である法務省と金融庁が調整して開示内容を統一して欲しいものである。

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株主総会の開催日と財務諸表の監査終了日の国際比較

日本の上場会社で3月決算会社の場合、定時株主総会は横並びで6月25日から27日ごろ行われている。米国の場合、マイクロソフト社の定款を見ると「定時株主総会は150日以内に開催する」とあり、日本に比べると決算日から株主総会の日まで2ヶ月の差がある。一方、ドイツの会社であるダイムラー・クライスラー社は、12月決算で4月7日に株主総会を開いており日本の会社と類似し決算日から約3ヶ月で開催している。

日本を除いて海外では、株主総会召集通知書に添付する財務諸表は一つで、証券監督局への登録する財務諸表と同一である。どうやら、日本の会社が商法と証券取引法の有価証券報告書の二重開示制度を行っている原因は、法務省と金融庁の縦割り行政にある。欧米同様に複数の財務諸表は不要にし単一の財務諸表にすべきなのである。

世界が共通の会計基準へ移行しつつあるなか、日本だけが、商法と証券取引法の二重開示がなぜ必要なのか、投資家である株主に送付されない有価証券報告書は投資家保護と言えるのか。偏に法務省と金融庁に解決して貰うしかないのである。

なお、有価証券報告書の監査報告書の日付がEDINETへの登録日(通常、株主総会終了日)と一致しており、3月決算ですと3ヶ月後の6月25日前後に集中する。
ちなみに、下記ソニーの2003年3月期の場合、SEC提出の連結財務諸表の監査報告書は5月21日、約1ヶ月後の6月20日の株主総会が終了した後、有価証券報告書の監査報告書の日付は6月20日、EDINETへは6月25日に提出している。日本の場合、監査の早期終了を証券取引法が妨げているといえる

ダイムラー・クライスラー社のSEC登録日が50日以内(しかも監査報告書の翌日に登録)と驚異的に短いのは定時株主総会に株主に配布する監査済み財務諸表のためと思われる。電子登録をフル活用してタイムリー・ディスクロージャーを実現している模様。

会社 決算日 監査報告書の日付 監査済み財務諸表の
SEC登録日
株主総会開催日
日本 ソニー 2003年3月31日 2003年5月21日 2003年9月2日 
日本の有価証券報告書は
90日以内にEDINET登録
2003年6月20日
(通常3ヶ月以内に開催)
ドイツ ダイムラー社 2003年12月31日 2004年2月18日 2004年2月19日 2004年4月7日
米国 マイクロソフト社 2003年6月30日 2003年7月17日
(2003年9月3日)
2003年9月5日
(規定は90日以内)
2003年11月11日
(新定款では150日以内)

マイクロソフト社の監査報告書の日付が9月3日については財務諸表の注記20に記載の偶発事象を追加したもの。
米国基準では、監査報告書の日付は往査最終日(監査終了の日)です。
ダイムラー・クライスラー社は、監査終了の日の翌日にSECへ登録したことになっている。ソニーおよびダイムラー・クライスラーが60日以内に監査報告書を会計監査人は提出している。マイクロソフト社にいたっては、6月決算で7月17日に監査報告書を提出し、後日、9月3日に偶発事象に関して追加している。ただし、2004年度の監査報告書は8月24日となって通常ベースに戻っている。
なお、エンロン事件を契機に、SECでは段階的に90日以内の登録期間を60日以内の登録に短縮することになっている。2005年12月15日以降終了する事業年度からは年次報告書は60日以内、四半期報告書は35日以内に登録するよう登録期限の短縮を1年延期する案を提出した。(SmartPro記事 SEC最終ルール 参照)

日本では、大会社の場合、商法特例法 第12条1項ないし第21条の27第1項で株主総会の8週間前(56日=8週間X7日))に計算書類を会計監査人に提出することが要求されているため株主総会を早期に開催することができません。
3月決算の場合、6月29日(3月決算から90日後)が株主総会のピークとされ、多くの会社がこの時期に集中します。

2006年施行が予定されている新会社法299条第1項では、委員会設置会社でそうした8週間の規制を廃止し、株主総会の2週間前までに計算書類等を添付会社法第437条)し株主総会を召集する規定だけで、株主総会の早期開催を可能とすることにしています。
ただし、金融商品取引法24条の有価証券報告書の提出期限の3ヶ月(90日)以内を、米国のように2ヶ月(60日)以内に短縮することは制度上無理なのではないでしょうか。

日本公認会計士協会の監査・保証実務委員会報告第75号
「監査報告書作成に関する実務指針」に記載の「監査報告書の日付は、株主総会後の日付にすることとする」旨の規定を削除したことにより、監査報告書の日付は監査終了の日となった。(2008年4月4日改正)

2009年12月11日内閣府令が改正され、12月以降終了する年度から株主総会前にEDINETへ提出も可能となったが、2010年3月期に株主総会前に提出する会社は、わずか10社(0.4%)であった。(日本経済新聞6月5日朝刊

会社法・法務省令で早期監査終了が可能となった。(ただし、証券取引法監査は変更なし)
現行法においては,計算書類を監査役等に提出する期日は,定時株主総会の期日を起点として「○週間前」と規定されているため,監査開始のために計算書類を提出する時点で定時株主総会の期日を逆算して定めなければならないこととなっていたが,本省令においては,監査報告の通知期限として,計算書類を受領した日から「○週間を経過した日」等と規定することにより,現行法と同様の監査期間を各監査機関に確保しながら,監査役等による監査が早期に終了した場合には,定時株主総会を早期に開催することを可能にしている(省令13条1項19条1項21条1項26条1項。)
なお,監査役等と取締役の合意による監査期間の短縮も認めている。

株式会社の監査に関する法務省令案の概要  株式会社の監査に関する法務省令案)参照


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米国のケース

米国では、会計基準に準拠した決算情報である年次報告書は定時株主総会召集通知書に添付され株主に送付することが求められますし、四半期報告書も同様に株主に送付することが求められ、株主中心主義です。(ナスダックのコーポレート・ガバナンス規定 ニューヨーク証券取引所上場会社マニュアル・・年次報告書の開示(株主への送付は強制規定) 四半期報告書の開示(株主への送付は任意規定) 参照)

ニューヨーク証券取引所上場会社マニュアル・・年次報告書の開示(株主への送付は強制規定)抜粋
203.01 Annual Report Requirement
The Exchange requires that companies publish at least once a year and distribute to shareholders an annual report containing financial statements of the company and its consolidated subsidiaries prepared in conformity with generally accepted accounting principles. The company must distribute its annual report to its shareholders not later than 120 days (225 days for Non-U.S. issuers) after the close of each fiscal year. Notwithstanding the foregoing, domestic issuers must make this distribution at least fifteen days in advance of the annual meeting. (Non-U.S. issuers are encouraged to do so when possible.) When the annual report is distributed to shareholders, two copies should be sent to the Exchange together with advice as to the date of distribution to shareholders.

Companies may satisfy the annual distribution requirement either by distributing an annual report to shareholders, or by distributing to shareholders the Form 10-K (or Form 20-F for Non-U.S. issuers) filed with the SEC, with an indication that it is distributed in lieu of a separate annual report. When the annual report (or Form 10-K or Form 20-F) is distributed to shareholders, two copies should be sent to the Exchange, together with advice as to the date of distribution to shareholders.
203.01 年次報告書の要求
取引所は、会社が一般に認められた会計基準に準拠して作成した子会社を含む会社の連結財務諸表を含む年次報告書を少なくとも年に一度公表して、株主に配布することを要求する。会社は、会計年度終了後120日以内(米国以外の発行会社は225日以内)に、株主に対しその年次報告書を配布しなければならない。前述のことにもかかわらず、国内の発行会社は、少なくとも、定時株主総会の15日前までにこの配布をしなければならない。(米国以外の発行会社は、可能な場合そうするのを奨励される。)年次報告書が株主に配布されるときに、二部を取引所に送付しなければならない。
株主に配布する年次報告書はSEC(米国証券取引委員会)に登録の有価証券報告書(Form 10-K, Form- 20-F)でよい。以下省略。


日本の証券取引法で作成される有価証券報告書は定時株主総会終了後に開示され、かつ、株主に送付されず所轄官庁に提出、半期報告書また現在検討している四半期財務情報も株主に送付されず所轄官庁または取引所に提出するという、所轄官庁中心主義の日本と対照的です。

ボーイング社のケース

ボーイング社(Boeing Company)が2001年の定時株主総会のために株主に送付した株主総会召集通知書(Proxy Statement プロキシー・ステートメント)は、表紙を含めて約61ページの大部のものです。ここでは全部を紹介することはできませんので、目次を下記に紹介します。

なお、Proxyとは「代理・委任」、Proxy Statementで「議決権委任勧誘状」、つまり議決権の代理行使を意味しますが、記載されている内容が日本の株主総会召集通知書となっていますので意訳しました。株主総会で議決権を行使するための情報を提供して併せて議決権代理行使の委任状(proxy card を同封)の勧誘をしているものです。

Proxy Statement は、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して株主が議決権を行使できるだけの情報を株主に送付するよう要請しているものです。根拠法令は、1934年の証券取引法におけるプロキシー・ルール(Proxy Rules・・Regulation 14A 及び Schedule 14Aなど開示すべき内容を規定した詳細な規定)によります。(SEC Division of Corporate Finance  インターネットで、株主総会資料(年次報告書Form10-K)の送付および議決権行使ができるようになったITT社のプロキシー・ステートメント事例 参照)

はじめに、取締役会議長の株主宛て文書があり、次に株主総会の開催場所、日時、議題内容をまとめた副社長の文書が続き、3ページ目に下記の「もくじ」がつづきます。

TABLE OF CONTENTS Pgae もくじ
General Information for Shareholders......................................................................
  Outstanding Securites.............................................................................................
  Attendance at the Annual Meeting......................................................................
  Voting at the Annual Meeting or by Proxy........................................................
  Voting by Participants in Employee Plans..........................................................
  Vote Required and Method of Counting Votes.................................................
  Voting by Telephone or the Internet..................................................................
  Receiving Proxy Materials on the Internet.......................................................
  Voting Results...........................................................................................................
  Expenses of Solicititation......................................................................................
  Independent Auditors..............................................................................................
Proposal 1: Election of Directors..............................................................................
 Nominees....................................................................................................................
 Continuing Directors................................................................................................
 Compensation of Directors.....................................................................................
 Retirement Policy......................................................................................................
 Commitees of the Board of Directors.................................................................
 Board and Committee Meeting..............................................................................
 Report on the Audit Committee of the Board of Directors...........................
 Corporate Governance Principles........................................................................
 Compensation Committee Interlocks and Insider Participation....................
 Related Party Transactions....................................................................................
 Section 16(a)Beneficial Ownership Reporting Compliance.............................
 Securities Ownership of Certain Beneficial Owners and Management........
 Executive Compensation.........................................................................................
  Summary Compensation Table..............................................................................
  Fiscal Year-End Option Values............................................................................
  Performance Shares Under the Long-Term Incentive Plan........................
  Long-Term Incentive Plan....................................................................................
  Pension Plans............................................................................................................
  Employment Contracts and Termination of Employment Arrengement.....
  Compensation Committee Report on Executive Compensation.................
  Performance Graph.................................................................................................
Proposal 2: Shareholder Proposal on Offsets in Foreign Military Contracts...
Proposal 3; Shareholder Proposal on Military Activities in Space.....................
Proposal 4; Shareholder Proposal on Linking
          Executive Compensation to Social Performance...................
Proposal 5; Shareholder Proposal on Simple Votes.............................................
Proposal 6; Shareholder Proposal on Annual Election of Directors................
Proposal 7; Shareholder Proposal on Pension Plans............................................
Proposal 8; Shareholder Proposal on Audit Committee Members...................
Proposal 9; Shareholder Proposal on Stock Option Plans..................................
Shareholder Information..............................................................................................
Annual Report and Form 10-K...................................................................................
Shareholder Proposal for 2002..................................................................................
Appendix A; Charter of the Audit Committee of the Board of Directors.........
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54
54
54
A-1
株主に対する一般情報
 発行済み有価証券
 年次総会の出席
 年次総会での議決権行使
 従業員制度参加者による議決権行使
 求められる議決権と議決権行使の数え方
 電話又はインターネットによる議決権行使
 インターネットによる委任状の受領
 議決権の結果
 委任状による議決の法的手続きの費用
 独立監査人
議案1;取締役の選任
 候補者
 継続した取締役
 取締役の報酬
 退職方針
 取締役会の各種委員会
 取締役会と委員会の開催
 監査委員会の報告書
 コーポレートガバナンス原則
 報酬委員会の構成員とインサイダー忌避
 関連当事者間取引
 証券取引法のSECへの報告順守
 経営者が所有する自社株
 上級経営者の報酬
   報酬の一覧表
   会計年度末のオプション価値
   長期奨励制度の業績株式
   長期奨励制度
   年金制度
   雇用契約と解雇条件
   経営者報酬の酬委員会報告書
   業績グラフ
議案2;外国軍隊契約の相殺を株主提案
議案3;宇宙での軍隊活動を株主提案
議案4;経営者報酬と社会活動の関連づけ
を株主提案
議案5;単純議決権行使の主提案
議案6;取締役年次選任の株主提案
議案7;年金制度の株主提案
議案8;監査委員会メンバーの株主提案
議案9;ストックオプションの株主提案
株主情報
年次報告書およびフォーム10-K
2002年度の株主提案(議案)
添付:監査委員会規則

むろん「もくじ」だけでは内容の詳細は分かりませんが、どのような事項を株主に情報開示しているか、議案1には会社の議案内容があり、議案2以降には株主提案となっていること、株主提案が1年前に出され経営者の考え方が明かにされて議案となっており、即断せずじっくりと無理のない回答の仕方をしていることは参考になります。

財務情報は、年次報告書(Annual Report)といわれ、上場会社は証券取引委員会(SEC)にフォーム10K(日本の有価証券報告書に該当)を登録します。株主総会召集通知書に同一のフォーム10Kを挿入します。なお、四半期報告書をフォーム10-Qといいますが株主に送付すると同時にSECへ登録することが求められています。

日本の場合は、商法の計算書類の一部が株主総会召集通知に添付されますが、投資家保護として有価証券報告書が作成されますが財務省財務局に審査を受けて提出するだけで(閲覧は可能)、株主には届きません。

上記の場合、21ページから32ページにかけて役員報酬(Executive Compensation)について詳細な説明文があります。これは、SECの情報開示の規定によっています。SECへの登録するフォーム10-Kには株主総会召集通知書(Proxy Statement)に開示している旨記載し重複して記載することを避けています。

米国証券取引委員会(SEC)は規則を改定し、株主への信頼性強化を目的として、2000年3月15日以降に終了する事業年度から、独立取締役(Independent director)の過半数で構成される監査委員会の報告書(内部統制制度 systems of internal control の整備状況を含む)を及び監査委員会規則(Charter of the Audit Committee of the Board of Directors.)を株主総会召集通知(Proxy Statement)に含めることを規定しました。上記、ボーイング社の株主総会召集通知書はこの規定にしたがって監査委員会の監査報告書と監査委員会の規則が添付されています。

ボーイング社の場合は、下記ベルサウス社とは異なり、取締役会議長(通常最高経営執行責任者CEO)が株主に対して経営者の報告書(Report of Management)」と呼ばれる報告書に内部統制の整備状況等を記述した報告書を添付していない。
しかしながら、内部監査人によってCOSOリポート「粉飾決算」参照)に準拠した内部統制の整備状況が調査され(「ボーイング社の事例」参照)、監査委員会と密接な連携が行われていることが監査委員会規則に記載されている。

ベルサウス社のケース

ジョージア州アトランタの国際通信会社であるベルサウス社の2001年度の定時株主総会の株主召集通知書(Proxy Statement についてみてみよう。86ページに及ぶ長文である。構成は上記ボーイング社とは多少異なるが、インターネット上での株主召集通知であり似たような構成である。添付されている財務諸表はフォーム10-Kと同一の財務諸表になります。

Notice of 2001 Annual Meeting
Proxy Statement
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2001年年次株主総会通知
プロキシー・ステイトメント
資料はPDFでダウンロードもできます。
TABLE OF CONTENTS もくじ
Notice of Annual Meeting
Proxy Statement:
  Voting Information
  Election of Directors
  Board of Directors
  Committees of the Board
  Director Compensation
  Stock Ownership of Directors and Executive Officers
  Audit Committee Report
  Ratification of Appointment of Independent Auditors
  Shareholder Proposal
  Compensation Committee Interlocks and Insider Participation
  Executive Nominating, Compensation and Human Resources
    Committee Report on Executive Compensation
  Executive Compensation
  Five-Year Performance Comparison
  General Information
    Attendance at the Annual Meeting
    Other Matters to Come Before the Meeting
    Shareholder Proposals for the 2002 Proxy Statement
    Director Nominees or Other Business for Presentation
      at the 2002 Annual Meeting
    Section 16(a) Beneficial Ownership Reporting Compliance
    View Proxy Statements and Annual Reports on the Internet
    Other Information
    Solicitation of Proxies

Exhibit A:
BellSouth Board of Directors Audit Committee Charter

Appendix:
Annual Financial Statements and Review of Operations:
   Selected Financial and Operating Data
   Management's Discussion and Analysis of
      Financial Condition and Results of Operations
   Report of Management
   Report of Independent Accountants
   Consolidated Statements of Income
   Consolidated Balance Sheets
   Consolidated Statements of Cash Flows
   Consolidated Statements of Shareholders' Equity
     and Comprehensive Income
   Notes to Consolidated Financial Statements
   Market for Registrant's Common Equity and
    Related Stockholder Matters
年次総会の通知
プロキシー・ステイツメント
 議決情報
 取締役の選任
 取締役会
 取締役会の各種委員会
 取締役の報酬
 取締役と経営責任者の株式所有制度
 監査委員会の報告書
 独立監査人の選任の批准
 株主の提案した議案
 報酬委員会の構成員とインサイダー忌避
 経営責任者の候補、報酬及び人的資源
   委員会の経営責任者の報酬報告
 経営責任者の報酬
 5年間の業績比較
 一般情報;
   年次総会の出席
   総会前のその他の事項
   2002年のプロキシーのための株主の議案  
   取締役候補者または2002年年次総会で
    公表するその他の事業
   証券取引法のSECへの報告順守
   インターネット上での年次報告等の閲覧
   その他の情報
   議決権代理行使の法手続き

添付A;
ベルサウスの監査委員会の規則

資料;
年次財務諸表及び業績のリビュー
  主要な財務及び業績データ
  経営者の財務状況と業績についての
    検討と分析
  経営者の報告書
  独立監査人の監査報告書
  連結損益計算書
  連結貸借対照表
  連結キャッシュフロー計算書
  連結株主持分及び包括利益計算書

  財務諸表の注記
  登録者の普通持分の事項と
    関連株主の事項

ベルサウスの場合、監査委員会の報告書(Audit Committee Report )に加えて、取締役会議長(通常最高経営執行責任者CEO)が株主に対して経営者の報告書(Report of Management)」と呼ばれる報告書に内部統制の整備状況等を記述した報告書を添付している。

具体的な事例は、各社ホームページで公開しています。下記の検索エンジンをクリックしてみてください。
「Proxy Statement」をキーワードとして検索 ⇒ ⇒  WiseNut  AltaVista  Lycos 
上記検索で分かることは、ヒットする件数の多いこと、株主に対する情報開示に各社真摯に競っているということです。加えて、Proxy Statement に付随するビジネスが派生していることです。米国の株主が入手する情報の豊富さをインターネットで体験してみてください。

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米国SECが「株主に取締役候補推薦可能となる委任状(proxy)規則案」提案(2003年10月8日)
2003年10月8日、米国SECは、一定の株主が取締役候補者名を株主総会委任状(proxy material)に推薦(会社の取締役会の規模による・・取締役が8人以下の会社は一人、取締役が9人から19人の場合は二人、20人以上は三人を推薦)できるような規則案を提示した。現行規則では、取締役候補を推薦できても、取締役会が承認しない限り選任されないが、新規則では、取締役会の承認がなくても株主の意向が直接選任過程に反映させることができるというもの。

取締役会のガバナンス機能を強化するため、株主の取締役選任をできるようにしている。提案権を持つ株主の保有株式数などは意見を公募して決める。

外国会社は対象外。60日間のコメント期間を設けて最終規則の是非を投票で決める。(「SEC速報」 「2003年7月15日付、取締役候補者と選任に関する委任手続きの再検討・・スタッフ報告書staff report: Review of the Proxy Process Regarding the Nomination and Election of Directors)」 参照)

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潜在株主に対する情報開示

投資家が上場株式または上場社債等を購入するに当たって入手する企業内容の情報は、投資家保護を目的とする証券取引法により情報開示が義務つけられています。現在では、インターネットの普及でインターネット経由で情報が入手できるようになりました。ただし、日本では2001年6月から段階的に電子登録が行われて一部の企業に止まっています。

日本の場合

証券監督局が2001年3月期(1年延長され2001年6月1日から実施、2004年6月1日以降、原則義務化)よりインターネット上(システムは「EDINET: Electronic Disclosure for Investors' NETwork」、エディネットと呼ばれ、有価証券報告書の電子開示を目指している。(金融庁EDINET(開示用電子情報処理組織)を使用して行う電子開示手続等に係る規定の整備等」参照 )

有価証券報告書をまとまった形で見るには、財務省(旧大蔵省)または各証券取引所で閲覧するか、1961年から始まった政府刊行物として縮刷版(最近は1冊2000円)を購入することになりますが、2004年度から販売廃止となりました(国立印刷局からのお知らせ 政府刊行物「有価証券報告書の販売」 参照)。時間と金をかけなければ見ることはできません。

1999年11月22日、財務省(旧大蔵省)は、金融審議会第二部会で、2001年3月期の企業決算の発表から有価証券報告書などの情報開示を紙媒体からインターネットなどの電子媒体を使う方式に切り替える方針を報告した(23日の日経)。「EDINETの試験運用(財務省・関東財務局)」が2000年10月から開始されたが、有価証券報告書等のみで、日本企業及び外国企業の英文財務情報は考慮されていない。

金融庁のEDINETで「有価証券報告書等の開示書類を閲覧するホームページ」へ
企業が株主総会終了後財務省・財務局で審査を受け提出した有価証券報告書が、やっと金融庁で電子開示されました。ただし、有価証券報告書の項目ごとに見る仕組みになっており、下記のSECのように全文が一度に見られるようにはなっていませんので閲覧に時間を要します。有価証券報告書が株主総会終了後開示されるということは株主の株主総会での議決権行使には役立たないことを意味します。

●有価証券報告書等は、連結財務諸表に加えて個別財務諸表が含まれ二つの異なった情報は企業および読者に負担を強いている
米国は原則、連結財務諸表のみ。ドイツは商法上(HGBの328(2)条)、個別財務諸表を要求しているため個別財務諸表を含むが、個別損益計算書および貸借対照表を2期比較したものをA4版1枚に要約して挿入しており企業および読者に負担にならない。

●紙媒体の有価証券報告書とEDINETでは、次の点で異なり、利便性に欠ける;

(1)EDINETでは、限られた画面であるにも拘らず、左に「目次」が表示されたまま、少ない右のスペースに財務諸表等を表示
  
細切れのファイルとなっており、一覧性が無く非常に見難いものとなっている。
(2)監査報告書が画面の上部に別途表示されている。有価証券報告書の綴り方と相違している
(3)有価証券報告書には一連のページが付されていますが、EDINETではページはありません
(4)また、「注記事項」は本来財務諸表の一部ですが、「目次」に表示が無く、「注記事項」は、キャッシュフロー計算書のページ下に表示されています。


●2004年11月24日、金融庁は、「EDINETの高度化に関する協議会」を開催し、EDINETの利便性を高めるための研究をしたいとしている。
 2005年5月31日、金融庁はEDINET改革案として「有価証券報告書等に関する業務の業務・システム見直し方針(案)」を公表した。
2005年10月3日より、以下のEDINETシステム変更を実施する。

 検索機能の拡充
 用語検索を行うことができる開示書類の範囲を従来の有価証券報告書、半期報告書、臨時報告書からEDINETに提出された開示書類全体に拡大する。 また、従来の会社コード等による検索に加え、提出会社名、業種、提出書類様式、日付を検索条件とした検索機能を追加する。

 印刷機能の拡充
 開示資料ファイルの利用者端末へのダウンロード、当該ファイルから文書全体の印刷を可能とする機能を追加する。

民間では、Yahoo!Financeが株価、株価チャート、企業情報などの情報を提供しており便利。ただし、金融庁のEDINETへはリンクしていない。EDINETでは、掲載の個別企業情報へリンクできないようになっている。東京証券取引所もEDINET同様に個別企業の株価にリンクできない。米国の場合、SECのEDGARデータベース(Form20−Fとは外国会社の年次報告書(有価証券報告書です))、ニューヨーク証券取引所およびナスダックに掲載の個別企業情報に直接リンクできます(下記ASEC Filingsを参照してください)。

日本 米国
会社 金融庁
EDINET
東京証券取引所 Yahoo!Finance Yahoo!Finance ニューヨーク
証券取引所
SEC
EDGAR
データベース
ソニー(株) @有価証券報告書等
サーチナより
@株価検索 株価チャートほか 株価チャートほか 株価・企業情報
ASEC Filings
Form20-F
本田技研工業 @有価証券報告書等
サーチナより
@株価検索 株価チャートほか 株価チャートほか 株価・企業情報
A
SEC Filings
Form20-F
トヨタ自動車 @有価証券報告書等
サーチナより
@株価検索 株価チャートほか 株価チャートほか 株価・企業情報 
ASEC Filings
Form20-F

 上記@の情報開示を目的としたEDINET、および株価を形成する目的の東京証券取引所は、個別企業の有価証券報告書等や株価検索に直接リンクできない。個別企業の情報を「お気に入り」に入れていても立ち上げることができないことを意味する。日本のEDINETおよび東京証券取引所は、その都度検索しなければならず利便性が悪いEDINETや東京証券取引所の利便性の悪さは広く意見を求めないことに原因がある。特に、金融庁のEDINETがリンク・フリーとなっていないことから証券取引所や投資家等がリンクできないでいる。
 米国では
SECエドガー・データベース、ニューヨーク証券取引所、ナスダック(下記のマイクロソフト社の事例参照)は個別企業の検索結果に直接リンクでき利用者の利便性に優れている。SECエドガー・データーベースにリンク可能であることを利用して、ニューヨーク証券取引所は、SEC Filings(上記A参照)としてSEC登録書類(日本の有価証券報告書等に該当)にリンクして閲覧できるようにしている。

金融関係機関のホームページでの公開性・透明性・・日米比較
日本
極端に閉鎖的・不透明
米国
Contact Us
参考
証券監督局 金融庁  EDINET 

証券取引等監視委員会

公認会計士・監査審査会

ご意見箱(すべて金融庁)
証券取引委員会(SEC)

上場会社会計監視審議会(PCAOB)
PCAOBが4大会計事務所の監査に関する2003年度限定的調査報告公表:
Deloitte & Touche, LLP (8/26/2004)
Ernst & Young, LLP (8/26/2004)
KPMG, LLP (8/26/2004)
PricewaterhouseCoopers, LLP (8/26/2004)
(日経金融新聞2004年8月31日「監査の一部調査公表 米会計監査委 リボ払いなど対象」 参照)
証券取引所 東京証券取引所
ジャスダック
ニューヨーク証券取引所(NYSE)
ナスダック
会計基準設定主体 企業会計基準審議会
ご意見の受付けについて
財務会計基準審議会(FASB) ドイツ会計基準委員会 (DRSC) 
FAQ(よくある質問)
公認会計士協会 日本公認会計士協会 米国公認会計士協会(AICPA)

米国は「Contact Us」としてEmailで広く意見を求めているが、日本は金融庁を頂点として共通してEmailで意見を受付けるということはない。中には江戸時代の「目安箱」の感覚でホームページを開設していたり、今どきファックスのみで受付けているところもあり、ひどい場合、全く閉ざしているところもある。過去に会計基準を設定したり、現在は監査基準を設定している企業会計審議会では、自立した機能は持ち合わせていないようで、自立したホームページは無く、発表は実質金融庁からの”大本営発表”状態。閉鎖性が投資家の利便性の仕組みを構築できないでいる。


米国の場合

SEC(米国証券取引委員会)は1996年5月より、EDGAR Databaseを公開し何時でも何処からでもアクセスして有価証券報告書(Form10-K(年次報告書)、Form10-Q(四半期報告書)など)の企業情報を入手することができるようになっています。1998年1月1日より、すべてEDGARデータベースによる電子登録となり、紙媒体によるSEC登録は受理されなくなりました。紙媒体でSECへ郵送した場合は、返送する旨注意書きがSECのホームページに記載されていました。2002年11月4日以降は、外国会社にもEDGARへの電子登録が義務付けられました。

SECへの登録書類は豊富にありますが、主なものに次のようなものがあります。
Form (フォーム名) 主な内容
Form 10-K (フォーム・テン・ケイ) 年次報告書(Annual report)と呼ばれ、日本の有価証券報告書に該当する。
株主総会用として株主送付される財務諸表は、同じものです。
Form 10-Q 四半期報告書(Quarterly report)と呼ばれ、株主に適時情報として送付されるもの。
Form 20-F 外国会社の年次報告書。日本企業など外国会社の年次報告書。
Form 8-K 重要事項が発生した場合の報告書
参考:会社更正法申請のエンロン(Enron)SECへ提出したForm 8-K参照。
エンロンのニュースは「日経NET」、英語のニュースは「AllTheWeb.com」参照。
Prospectus (プロスペクタス) 目論見書。株式や社債を発行する企業が、売出す証券の説明や企業内容を開示した書類。
新株や社債を購入する者に対する情報開示。
Proxy Solitation Materials 株主総会議決権勧誘委任状等の株主総会に関する書類。役員報酬などが開示される。

なお、SECは、かねてから検討していた登録期限短縮を、エンロン問題を契機として、2002年2月13日、年次報告書Form10-Kを60日以内(現行90日以内)に、四半期報告書Form10-Qを35日以内(現行45日以内)にする方針を明かにしました。

2002年6月12日、SECは、投資家の信頼を促進するため、@四半期報告書及び年次報告書に、社長及び財務担当責任者の証明を求める、A特別な契約を締結、事業関係の解消、偶発債務の発生、リストラ、除却、毀損、格付けの変更、会計監査人の以前に表明した意見の差替え、経営者の変更など(最終ルールでは追加8項目)をForm 8-K(臨時報告書)で報告を義務付け、BForm 8-Kの報告期日を現在の5日から15日内を2事業日内(最終ルールでは4事業日内に変更)に短縮する、などの方針を固めた。(SEC速報  SEC追加Form8−K開示最終ルール(2004年8月23日施行) New Form 8-K Requirements 参照)

2002年11月16日、SECは、5月8日に公表していた外国会社のEDGAR Databaseでの情報開示について、2002年11月4日が適用開始時期であることを再確認している。(SEC速報 参照)

(「 "完全な情報開示"で投資家の信頼を取り戻す(CIO Magazine 2003年8月号に掲載)」参照)

EDGAR Database の画面で、Search the EDGAR Archivesをクリックすると「Search EDGAR Archives」の画面となり、空欄に企業名を入力すると求める企業の財務情報を入手することができます。テキストファイルないしHTMLファイルですので迅速かつ簡単に入手できます。複数社のデータ入手も簡単です。

例えば、ナスダック市場に上場しているマイクロソフト社の年次報告書を見ようとすれば、会社名に Microsoft Corp と入力しリターン・キーを押すと、マイクロソフト社が登録した報告書の一覧表が示されます。見たいものが年次報告書であればForm10-Kを最近の四半期報告書であればForm10-Qを選んでクリックすると瞬時に見ることができます。年次報告書の財務諸表部分はA4版で約40から50ページ位です。FDへの保存、プリンターへの印刷も可能です。

会社 SEC EDGAR Database Yahoo! Financeの提供情報 ナスダック市場 ニューヨーク
証券取引所
マイクロソフト社の事例 年次報告書(Form10-K)
四半期報告書(Form10-Q)
株価・チャートほか 株価検索 N/A
GE社の事例 年次報告書(Form10-K)
四半期報告書(Form10-Q)
株価・チャートほか N/A 株価検索

エドガー・オンライン社(旧サイバーネット・データ・システム社・1995年11月設立)は、1996年1月からエドガー・オンライン(EDGAR Online)を投資家及び企業に対して公開しており、SECへの上場会社の登録財務情報ほか各種豊富な情報入手を誰にでも可能としています。また、1999年5月、EDGAR ONLINE, INC.自らナスダック・ナショナルマーケットへ株式公開(Initial Public Offering, IPO)した。ナスダックのシンボルマークはEDGRです。

他にフリー・エドガー(FreeEDGAR)やインベスター・ガイド(InvestorGuide)ほか、無償・有償の企業財務情報提供サービス・サイトが存在する。

2005年春よりXBRLで登録が可能となる
2004年9月27日、SECは、2005年の春から、エドガー・データーベースへの登録を、任意でXBRLの形式で行うことができるように法案を提出した。SEC Proposed Rules: XBRL voluntary financial reporting program on the EDGAR system 参照

外国会社のうち、米国市場で証券を取引しているのではないが、300名以上の株主が米国に存在している外国企業679社は、米国証券取引委員会(SEC)へ免除規定による書類を提出している。日本基準の財務諸表で英文財務諸表を作成している企業が入っている。(SEC June 10, 2004 「List of Foreign Issuers That Have Submitted Information Under the Exemption Relating to Certain Foreign Securities」)

ドイツの情報開示

ドイツ取引所(フランクフルト証券取引所の運営会社)が、市場別に情報開示の統計を2001年11月30日現在で下記の通り集計しています。
大手企業市場DAX30社のうち25社が国際会計基準または米国会計基準で情報開示し、たった5社のみがドイツ商法による開示です。最後までドイツ商法にこだわると思われたフォルクスワーゲン社でも2001年度の決算では国際会計基準に変更しており、ドイツ商法での開示は減少の一途を辿っています。2005年までに国際会計基準での開示が求めれていることが原因です。
また、新興市場のノイアマルクトでは、国際会計基準または米国会計基準での開示が求められており、ドイツ商法の開示は禁止されています。
なお、欧州委員会は、米国会計基準で開示している企業は、2年の経過期間をおいて2007年までに国際会計基準の開示を求めています。そこで、製薬会社のバイエルは、2002年春にニューヨーク証券取引所に上場しましたが米国会計基準ではなく国際会計基準で作成した年次報告書(Form20-F)をSECに登録しています。無論、SECの規定どおり米国会計基準との差異調整表を注記で開示しています。

ドイツ取引所取引区分別会計基準適用状況 
Date: 2004年7月現在 出展:ドイツ会計基準委員会
適用会計基準 DAX30社 MDAX50社 SDAX50社 TecDAX30 備考
HGB**
ドイツ商法
11 13 2 ドイツ取引所とはフランクフルト
証券取引所の運営会社です。

DAX30社には、ドイツを代表する企
業アディダス、ダイムラークライスラ
ー、BMW、BASF、バイエル、ドイツ
銀行、ドレスナー銀行、ドイツテレコム、
ヘンケルなど有名企業30社です。
詳細は、ドイツの動向を参照

IAS ***
国際会計基準
19 28 28 9
US-GAAP ****
米国会計基準
11 9 19
合計 30 50 50 30
** Handelsgesetzbuch (German Commercial Code)
*** International Accounting Standards
**** U.S.-Generally Accepted Accounting Principles

日本の商法はドイツ商法を基礎にしていると言われている。本家ドイツはアングロサクソン型会計にシフトしている。
1999 年10 月、日本銀行金融研究所古市峰子女史著「会計基準設定プロセスの国際的調和化に向けたドイツの対応」 参照。    豊橋創造大学井戸一元教授著「ドイツの財務報告」(2001年)参照
ドイツ取引所の証券市場区分の変更(マーケットの新構造
2002年9月26日、ドイツ取引所は現在の証券市場区分(ノイアマルクト、SMAXなど)を変更し、「最も優れている基準(Prime Standard)」と「国内基準(Domestic Standard)」の二つの市場に分ける案を公表した。
区分の基準は、プライム・スタンダード市場は、国際会計基準または米国会計基準、四半期報告書の開示、英語でも開示するなど透明性の高い市場とし、ドメスティック基準市場は国内基準で開示する市場とする。この改革により、2003年6月5に、ノイア・マルクトおよびSMAX市場は、二つのいずれかの市場に区分され閉鎖された。

2002年10月31日、ドイツ取引所は、2003年3月24日から有効となる新インデックスを公表した。上記、国内基準としていたものをゼネラル・スタンダード(General Standard)に改称した。企業をクラッシック・セクターと技術・セクターに分けて、TecDaxを新設するとしている。

2004年6月30日現在のプライムス・タンダード企業の適用会計基準  プライム基準企業の適用会計基準統計 上場センター」 参照。

2005年、欧州連合の一員として新市場の構造を変更し、大きく分けて、EU規制市場(EU-regulated markets)と取引所規制の非公式市場(Regulated Unofficial Markets)の二つに分け透明性基準(transparency standards)により、EU規制市場(EU-regulated markets)はプライム・スタンダード(Prime Stamdard)とジェネラル・スタンダード(General Standard)の二つに、取引所規制の非公式市場(Regulated Unofficial Markets)はエントリ−・スタンダード(Entry Standard)とオープン・マーケットOpen Market)に区分した。
透明性基準(transparency standards)により、プライム・スタンダード(DAX, MDAX, TecDAX and SDAX 銘柄など)に上場する企業は、国際会計基準(IFRS)での年次報告書と中間報告書の情報開示が義務つけられている。ジェネラル・スタンダード(General Standard)に上場する企業は、IFRSか米国基準のいずれかで開示すること。
エントリ−・スタンダード(Entry Standard)に上場する企業は、国内の会計基準で開示し、オープン・マーケットOpen Market)は透明性の要求はない(no transparency requirements for companies)。2010年6月現在の上場会社数は、プライム株式銘柄366社、ジェネラル株式銘柄311社、エントリー株式銘柄120社=合計797社の上場会社となり、世界の上場会社数のドイツ取引所の上場会社数とほぼ一致する。

参考:ドイツにおけるベンチャー企業と資本市場問題by三田村智三田商学研究2007年1月
拡大するドイツ個人投資家向けストラクチャ−ド・プロダクト市場」by斎田温子野村資本市場研究所


なお、上場株式を「EUROLAND」から見ることができます。オープンマーケットを見ると日本企業など「勝手上場」されているようです。

ドイツには日本にはない取引所制度がございまして、その他というのところでございます。いわゆる日本で自由市場と言われているものでございまして、1万社、この中の大半の企業は上場会社自身が取引所に登録申請しておりません。ここに出席していらっしゃる企業の中でも、恐らくここで取引されている銘柄がたくさんあるかと思います。発行企業の知らないうちにブローカー・ディーラーが日本の国外、ここですとドイツですけれども、ドイツで取引をしたいという場合にはブローカー・ディーラーが、発行企業に断りなく勝手に取引所に登録するということによってここでの上場はされます。そうしますとドイツの国内でのブローカー・ディーラーの取引ができるようになると、こういうふうなものでございまして、日本の場合はこのような制度はございません。「企業会計審議会議事録 ドイツとフランスの取引所 参照」

ドイツ取引所の電子情報開示市場改革のため2008年から「ドイツ取引所の場合参照
ドイツ取引所(DAXやノイアマルクト市場を運営)の会社情報は、単純明解に電子情報として入手できます。例えば、DAX30社の会社情報を入手するには、「会社情報」にアクセスし、見たい会社(フォルクスワーゲンを例とすると)フォルクスワーゲンをクリックするとフォルクスワーゲン社の情報一覧(株価チャート含む)が表示されます。次に、年次報告書および四半期報告書を見たい場合は、ニュースを開くと会社の報告書(Company Reoprts・年次や四半期報告等の)で株主宛て年次報告書、四半期報告書の一覧が表示されます。該当の財務諸表をクリックするとPDFファイルで簡単に閲覧・ダウンロードできます。ちなみに、フォルクスワーゲン社は2001年度より国際財務報告基準(IFRS)で連結財務諸表を作成しており株主総会において株主に配布している。監査最終日を意味する監査報告書の日付と株主総会開催日の関係は次の通りです。なお、上場会社の開示は連結財務諸表のみです。個別財務諸表は開示を求められていません。

会社 決算日 監査報告書の日付 株主総会開催日 ドイツ取引所 米国SEC
登録財務諸表
フォルクスワーゲン社
VOLKSWAGEN AG
2003年12月31日 2004年2月18日 2004年4月22日 株価検索ほか
財務諸表
ダイムラー AG 2003年12月31日 2004年2月18日 2004年4月7日 株価検索ほか
財務諸表
ドイツ・テレコムAG 2009年12月31日 2010年2月8日 2010年5月3日 株価検索ほか
財務諸表
20−F
IFRSで登録

また、ドイツ取引所自身が自らの株式を上場しており上場会社としての情報開示を下記の通り行っている。

会社 IR 決算日 監査報告書の日付 株主総会開催日 財務諸表等 ドイツ取引所
ドイツ取引所 Investor
relations
2003年12月31日 2004年2月25日 2004年5月19日 年次報告書
四半期報告書
株主総会
株価検索ほか
1993年に株式会社化し、Deutsche Borse AGとなる。2001年2月株式上場。国際会計基準で連結財務諸表を作成。

なお、日本が手本としたドイツ商法であっても、ドイツ取引所の情報開示書類はご覧の通り、
@ 日本のように商法計算書類と証券取引法の有価証券報告書の二つの情報開示書類の作成を求めてはいませんし、
A 日本のEDINETのように連結財務諸表と個別財務諸表の二つの財務諸表をフルで開示を要求してはいません
   但し、ドイツは商法上(HGBの328(2)条)、配当可能利益の計算、投資家保護目的で、個別財務諸表を要求しているが、個別損益計算書および貸借対照表を2期比較したものをA4版1枚に要約して挿入しており企業に負担にはならない。
B 有価証券報告書と半期報告書は証券取引法で開示し、四半期業績情報は東京証券取引所の規則で開示するとういうことはなく、年次報告書と四半期報告書の開示は一貫して開示しています。(例えば、フォルクスワーゲン社の株主宛て年次報告書、四半期報告書の一覧 参照)
C
 情報開示のあて先は一貫して株主となっています。簡潔明瞭です。

(ドイツ取引所の上場会社ルール、 ドイツ・コーポレート・ガバナンス・規範(定時株主総会、取締役会、監査役会、財務諸表の作成と公表、取締役会のメンバーの個人別報酬を連結財務諸表の注記をすることなどを規定) 参照)

ドイツ取引所の「コーポレート・ガバナンス・規範」の抜粋
7.1 Reporting
7.1.1 Shareholders and third parties are mainly informed by the Consolidated Financial Statements. They shall be informed during the financial year by means of interim reports. The Consolidated Financial Statements and interim reports shall be prepared under observance of internationally recognised accounting principles. For corporate law purposes (calculation of dividend, shareholder protection), Annual Financial Statements will be prepared according to national regulations (German Commercial Code), which also form the basis for taxation.
7.1 報告
7.1.1 株主および第三者は、主に連結財務諸表によって知らされる。彼らは、中間報告書によって会計年度の中間に知らされる。連結財務諸表と中間報告書は、国際的に認められた会計原則に遵守して作成されなければならない。会社法の目的(配当の計算、株主保護)のために、年次の財務諸表は国家の規則(ドイツ商法)によって作成され、それはまた、課税の基礎となる。

ドイツ取引所の「コーポレート・ガバナンス・規範には、下記のように、株主、株主総会等に関する規定がある。日本では、株主および株主総会、株主総会召集の規定が商法に規定されていることから、証券取引法のもとにある証券取引所および金融庁は意識的に株主および株主総会に関する商法に規定している事項は避けて規定している。日本が、ドイツ商法を基礎に法体系ができているとしているが、証券市場でも、ドイツの方が日本より株主重視の体系ができているといえよう。日本では有価証券報告書は株主に送付されない。加えて、日本では証券取引所の上場規定にコーポレート・ガバナンスの規定がない
2. Shareholders and the General Meeting
2.1 Shareholders
2.1.1 Shareholders exercise their rights at the General Meeting and vote there.
2.1.2 In principle, each share carries one vote. There are no shares with multiple voting rights, preferential voting rights (golden shares) or maximum voting rights.

2.株主と株主総会
2.1株主
2.1.1株主は株主総会で株主の権利を行使する。

2.1.2.原則として、1株に一つの議決権を行使する。複数の投票権、優先投票権(ゴールデン・シェア)または最大投票権はない。
2.3 Invitation to the General Meeting, Proxies
2.3.1 At least once a year the shareholders’ General Meeting is to be convened by the Management Board giving details of the agenda. A quorum of shareholders is entitled to demand the convening of a General Meeting and the extension of the agenda. The Management Board shall not only provide the reports and documents, including the Annual Report, required by law for the General Meeting, and send them to shareholders upon request, but shall also publish them on the company’s Internet site together with the agenda.
2.3株主総会への招待、委任状
2.3.1 少なくとも年に一度、株主総会は、議事日程の詳細を作成する取締役会によって召集されなければならない。株主の定足数は株主総会の招集と議題を提案することができる。取締役会は株主総会のため法律が要求する年次報告書を含む報告書および資料を用意するばかりでなく、株主から要求された場合は、それらを株主に送付しなければならない、また、それらを議題とともに会社のインターネット上に公表しなければならない。

ドイツ企業BASFのコーポレートガ・バナンス   BASF本社のコーポレート・ガバナンス
  BASFのドイツ株価等(ドイツ取引所)   BSFの米国株価(ニューヨーク証券取引所) 
  ドイツ商法による最後の連結財務諸表(2004年12月期)・・注記3で米国会計基準との差異調整表を開示している。
  BASFの定時株主総会
ドイツの労働組合の理解(DGBを中心に)」by久本憲夫京都大学教授:(ドイツの労働組合運動を理解する上で共同決定制は重要である。共同決定制には2つの要素がある。1つは監査役会(最高経営会議、Aufsichtrat(ドイツ語):(英訳)Supervision advice)への被用者参加。もう1つは従業員代表会(経営協議会、Betriebsrat(ドイツ語):(英訳)Work council)と労働組合の二元システムである。モンタン共同決定法における監査役会は日本の監査役会とは全く異なり、監査役会が社長以下の取締役を選出する。監査役会は年に4回行われ、重要な投資案件や合併、工場閉鎖、海外進出などを決定する。このため最高経営会議とも訳されている。この監査役会に資本側と労働側の代表が同数参加するのが基本形である。例えば監査役会が11人の場合、株主(資本)代表が5人、労働側代表が5人、中立者1人という形をとる。また、労働側には従業員代表が2人、企業外の被用者代表(労働組合代表)が2人参加する。
第6回厚生年金基金コーポレート・ガバナンス・フォーラム(2003.5.13)講演録」by久保利英明弁護士:(ドイツ法では取締役と監査役と2つあるのですが、アメリカ法では監査役はありません。しかし、ドイツ法を翻訳するときに、本来、ドイツ語で「アウフジヒトラート」というのは、いわば監督、例えば工事の現場監督なども「アウフジヒトラート」と言うわけです。つまり「監督役」とすべきところを「監査役」と訳したのです。また、ドイツでは、オフィサー(Officer)を「フォアシュタットVorstand:(英訳)Executive committee」と言いますが、これを「取締役」と訳したのです。日本は間違えて「監督役」を「監査役」と訳し、〜このように、実はドイツ法を誤訳して、アメリカ法を誤解して、ミックスしてぐちゃぐちゃになっているのが今の日本の取締役・監査役制度なのです。ですから、幾ら聞いても誰もわからないわけです。)

ドイツ法務省「商法近代化会計法の成立」2009年3月26日

2009年3月26日、ドイツ法務省は国際会計基準の適用を自営業者、中小企業に緩和する商法(the Commercial Code (ComC) in Germany)近代化会計法(the Act to Modernise Accounting Law(BilMoG))案が国会を可決成立したと発表した。2010年1月1日以後開始する事業年度から適用し、早期適用も可としている。

この法律は、経済の中で財務的負担を緩和し、国際会計基準との競争で商法会計法を強化するものである。商法で作成する年次財務諸表は、従来どおり、利益を分配するためや、税目的の利益を計算するための根拠を提供する、としている。

いわゆる上場会社は、2005年から国際会計基準(IFRS)を適用することとなっていたが、上場企業以外の企業にとってはIFRSが複雑で負荷が掛かるとして検討していたが、自営業者、中小企業の利益処分及び課税所得の計算のための商法会計法の近代化法が必要とされた

IASBが検討していた中小企業の国際会計基準(IFRS for Small and Medium- Sized Entities)は、まだ複雑で財務諸表作成に時間が掛かり費用負担が重いというIFRSの欠陥についてドイツの実務家から強い批判うけていた。ドイツで事業を営んでいる企業のための会計法は、IFRSの負荷・欠陥を解消し、IFRSに変わるものとして開発したものであるとしている。法律では、企業の規模に応じた開示を求めようとするもので欧米に共通する考え方である。法体系がドイツに類似した日本にも、会社法の計算規定にいずれ影響を与えそうである

・自己創設の無形固定資産(例えば、特許権等)の計上が出来る。
・金融資産で”取引目的で保有”は時価で評価し”特別引当金”を計上して、評価損が出たときに”特別引当金”と相殺する。
・支配している特別目的事業(Special purpose entities)は、連結しなければならない。

閾値(Threshold)規模区分
要件の三つのうち二つ以上を満たすこと。
近代化会計法の要求範囲
上場会社 株式等を株式市場で上場している企業 IFRS適用が出来る
ただし、附属説明書に商法典による
貸借対照表と損益計算書を記載(第264e条)
中会社 従業員250人以下で、資産が19.2百万ユーロ以下(25億円以下)、
年間売上高は38.5百万ユーロ以下(51億円以下)
開示内容の簡略し、貸借対照表項目の結合する
小会社 従業員50人以下、資産が4.8百万ユーロ以下(6億25百万円以下)、
年間売り上げ4.8百万ユーロ以下(6億25百万円以下)
監査不要で、貸借対照表のみ求められる
自営業者 売上高50万ユーロ以下(65百万円以下)で、
利益が5万ユーロ以下(6百5万円万円以下)の
商人、人的商事会社
(sole merchants (proprietorships))
帳簿記録、財産目録を免除する

つまり、上場企業にはIFRSでの開示が求められているので会社法でもIFRSの適用を認め、競争力の劣る中小企業には規模に応じて利益処分目的及び課税所得の計算目的を満たす会社法の会計法に従って財務諸表を作成することを求めている。

会社法会計を残す会計制度の下では、この方法は、当初はIFRSとの相違を生ずるが、時間を掛けてIFRSへのコンバージェンスによりIFRSに近似したものとする方法で現実的である。会社法に会計規定を設けていない国の中小企業の会計の多くは、会計監査がない場合は、税法会計となっており、実質的にドイツと類似したものとなっている。

EU指令に基づく開示の軽減措置

 

小会社

中会社

株主提出

登記所公開(注1)

株主提出

登記所公開(注1)

貸借対照表

要約

要約

軽減措置なし

要約

損益計算書

要約

免除

要約

要約

注記

要約

要約

若干の要約

若干の要約

年次報告書

免除

免除

必要

必要

監査報告書

免除

免除

必要

必要

(注1)登記所公開は、財務諸表を年度ごとに商業登記所に登録し、利用者が与信管理に入手することが可能な仕組み。

Requirements of the Fourth Company Law Directive

 

Small

Medium

Large

Listed*

Balance sheet

○possibility for abridged format

○ certain possibilities for abridged format

Profit and loss account

Annual report

Can be exempted

Audit report

Can be exempted

Consolidated accounts

Can be exempted

Can be exempted

Cash flow analysis

-

-

-

Note:  ○Means mandatory requirement
            *   IAS Regulation 1606/2002

Source:               Fourth Company Law Directive

参考:
・「ドイツにおける貸借対照表法の現代化と企業課税」by 田中清氏(広島修道大学)2008年5月9日
ドイツ会計基準近代化法byE&Y
  近代化会計法(BilMoG)」by Simmons&Simmons2008年7月
・欧州中小企業の区分「国別リポート」 参照 (オーストリア、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニアの中小企業の金額的区分が含まれている)
・「EC中小企業の会計規定の簡素化」・・第4及び第7会社法指令の改正の可能性検討(2006年12月)
・「EC会計指令に関する見直し・・中小企業の会計負荷の軽減に関するワーキング・ドキュメント」・・2009年2月26日ブラッセル

英国の中小企業の会計・・2009年8月11日会計基準審議会(ASB)の提案・・中規模企業は「中小企業のIFRS」を2012年度から(比較財務諸表として2011年度の表示が必要)の適用を提案

日本の会社法第431条 では、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」として、日本独特なものとなっており国際基準を受け入れられない原因ともなっている。英語への意訳は以下の通り。

参考:会社法第431条の英訳>The accounting of kabushiki kaisha shall be in accord with corporate accounting customs which are generally accepted accounting practices.

会社法第431条は、中小会社を含むすべての株式会社(平成20年6月末現在283万社)に会計基準の適用を求めているものである。上場会社等の金商法の会社及び資本金5億円または負債200億円以上の大会社(会社法第2条)の法定監査会社約1.4万社、つまり、99%は中小会社である。会社法は、99%以上の中小会社が会計基準に準拠して会社法違反しないことを期待しているとしたら、非現実的で、日本の会社法立法者は実務界を知らないといわざるを得ない。実務が理解できるようになれば、いずれ、ドイツのように中小企業と上場会社(IFRS適用)を分けるようになろう。

日本の企業 会社の数 法定監査 % 金融商品取引法
適用会社
会社法
適用会社
@ 上場企業 約3,900社 約3,900社 0.15% 約3,900社 約3,900社
A 金融商品取引法開示企業 約1,000社 約1,000社 0.04% 約1,000社 約1,000社
B 会社法大会社
(資本金5億円以上、負債2百億円以上)
約10,000社 約10,000社 0.40% 約10,000社
C 上記以外の株式会社(主に中小企業) 約2,500,000社 約2,500,000社
総合計 約2,514,900社 約14,900社 0.59% 約4,900社 約2,514,900社
出展:金融庁調べの資料より  なお別資料あるが正確な統計資料が定期的に金融庁から公表されていない。

フランスの情報開示

ユーロネクストとは、2000年9月、パリ(フランス)、アムステルダム(オランダ)、ブラッセル(ベルギー)の3証券取引所が合併してできた取引所。後にリスボン(ポルトガル)証券取引所が合併した。国境を超えて統合するため取引所は、オランダ法人として株式会社化し自らの株式を上場している(年次報告書コーポレートガバナンスの項より)。各国の取引所は子会社。2003年5月22日の定時株主総会提出の2002年の年次報告書に掲載の連結財務諸表は国際会計基準(IAS=IFRS)である。(「2003年定時株主総会(AGM)」 参照)

2002年12月16日、ユーロネクストEuronextは、透明性を高めるため@上場会社に2004年より国際会計基準(IFRS)で作成した財務諸表の開示を求める、A自国基準の場合は国際会計基準との差異調整の開示を求めると発表した。四半期報告書の開示も2004年となっている。(ニュース・リリース ネクストエコノミーとネクストプライムの取引区分について 2003年4月14日改訂新ルール・ブック 参照)

ユーロネクスト取引所自身が自らの株式を上場しており上場会社としての情報開示を下記の通り行っている。

会社 IR 決算日 監査報告書の日付 株主総会開催日 財務情報等 ユーロネクスト
取引所
ユーロネクスト Investor
relations
2003年12月31日 2004年3月18日 2004年5月26日 財務情報
株主総会
(AGM)
株価検索
2000年9月にパリ、ブリュセル、アムステルダムの3証券取引所が合併。Euronext NVとなる。
その後リスボン(ポルトガル)と合併。
 2001年7月に株式上場。国際会計基準適用。
2007年4月に米国ニューヨーク証券取引所と統合しNYSEユーロネクストとなり、以後は米国会計基準による連結決算を行っている。
2010年7月には、NYSEユーロネクストは英国ロンドンに市場を開設した。

日産を支援しているルノー社(Renault)はパリ証券取引所(ユーロネクスト・パリ取引所)に上場しているので、参考に、ルノー社についての情報開示を見てみよう。ユーロネクストは株価検索は他取引所と同じであるが、財務情報等の情報開示が遅れている。しかしながら、ルノー社の年次報告書に含まれる連結財務諸表は貸借対照表を含め3期比較の財務諸表を開示しいる。年次報告書(Annual report)には連結財務諸表のみの開示であるが、登録書類(Registration document)には、親会社単独の個別財務諸表の開示が連結財務諸表に続いて開示している。不思議な国の不思議な開示方法である。フランスは特殊な官僚国、無意味と思われる開示が多く日本の参考にはならない。ただし日本のように会社法と金商法の有価証券報告書の財務諸表を重複して作成したりしてはいない。また有価証券報告書より読み物になっており、読みやすい。

会社 決算日 監査報告書の日付 株主総会開催日 財務情報 ユーロネクスト
取引所
NYSEユーロネクスト
ルノー社の事例
RENAULT
2009年12月31日 2010年2月11日 2010年4月30日 2009年
registration document

個別財務諸表を含む314ページもある
財務情報
株価検索 Listing directoryFrance
401〜500RENAULTの株価
証券取引所のWebサイトからは
財務情報が見られない
France Telecom 2009年12月31日 2010年3月25日 2010年6月9日 2009年registration document
(注1)親会社の財務諸表を含むが584ページもある
非現実的なページ数となる。
株価検索
(注1)NTTが米国SECへ提出している
年次報告書(Form 10-F)で235ページ

フランスは個別まで開示して異常に分量が多い
BNP PARIBAS 2009年12月31日 2010年3月8日 2010年5月12日 2009年
resistration document

個別財務諸表を含み380ページと大部
株価検索 EquitiesStock
Listed CompaniesBNPパリバの株価

SEC登録の中国企業の場合

中国の石油会社中国石油天然気集団公司PetroChina)は、2000年4月にニューヨーク証券取引所に新規株式公開(IPO)を行い、SECへ登録した外国会社の年次報告書(Form20−F)は、国際財務報告基準(IFRS⇔IAS)で行っている。米国が国際会計基準を認めていないということはありません。なお、ペトロチャイナについては、石油公団企画調査部 佐藤美佳著「驚くべき変貌を遂げた中国国有石油会社の民営化」参照

会社 決算日 監査報告書の日付 株主総会
財務情報 SEC
登録資料
ニューヨーク
証券取引所
Yahoo!
中国石油 2003年12月31日 2004年3月24日 株主総会 年次報告書 Form 20-F等 株価情報等 株価検索

SEC登録企業が米国会計基準以外の財務情報を開示する場合は、米国会計基準との差異調整表を開示することが求められます(U.S. GAAP Reconciliationという・・「Regulation S-X Article 4-Rules of General Application § 210.4-01.(a)(2)」参照)。中国石油の場合、国際会計基準(IAS/IFRSは米国会計基準以外に該当)で開示していますので、下記のように、監査報告書に「IFRSは米国会計基準(US GAAP)と重要な部分で異なる場合がある旨」と「注記34にIFRSと米国会計基準との相違について開示している旨」の記載がある。財務諸表の「重要な会計方針」にも同様の記載がある。

監査報告書の追加記述:

International Financial Reporting Standards vary in certain significant respects from accounting principles generally accepted in the United States. The application of the latter would have affected the determination of consolidated net income for each of the three years in the period ended December 31, 2003 and the determination of consolidated shareholders’ equity at December 31, 2002 and 2003 to the extent summarized in Note 34 to the consolidated financial statements.


財務諸表の「重要な会計方針」:


2     BASIS OF PREPARATION
   The consolidated financial statements have been prepared in accordance with International Financial Reporting Standards (“IFRS”) issued by the International Accounting Standard Board (“IASB”). This basis of accounting differs from the accounting principles generally accepted in the United States of America (“US GAAP”) (Note 34). The statements are prepared on the historical cost convention as modified by the revaluation of certain property, plant and equipment.

あとがき

米国では、上場会社については証券取引法がプロキシ・ルールを規定しており投資家保護が具体的かつ機能するよう努力しているといえよう。 一方、日本の株主総会召集通知に関する情報開示は、商法が規定しており、画一的・形式的である。

証券取引法が投資家保護といいながら、有価証券報告書は株主に提供するようにはなっていない。有価証券報告書は、証券取引法の趣旨から離れて監督官庁への届け出書類という性格が強く、証券アナリスト、会計士、マスコミなど職とする者のみが閲覧する書類となっている。

2002年の商法の抜本的な改正に関連して、上記のように商法の計算書類と証券取引法の有価証券報告書の一元化が議論されるようになっているが、日本特有の小手先の議論に陥らないことを願うばかりである。

2001年12月5日、参議院では「株主代表訴訟における役員の賠償責任の上限」を決めた商法改正案を成立させ、2002年4月の施行が予定されている。これにより、代表取締役は、6年分の報酬額を上限として賠償責任が解除されることとなった。

米国のプロキシ・ルールにある「経営責任者の報酬(Executive Compensation)」があるが、日本の場合は、役員の賠償責任の上限が商法改正によって決まったことから、米国同様、役員報酬の個人別情報開示を求める声が高まろう。(英国の場合は:Statutory Instrument 2002 No. 1986 The Directors' Remuneration Report Regulations 2002 参照)

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