連結決算体制の確立

連結資料の入手がキーポイント

連単同時発表の動向

2000年3月期より、1ヶ月以内に決算発表する日本企業ついに出現
2000年3月期決算で、日立製作所(連結子会社が1000社を超える)、東芝、富士通は、決算後1ヶ月以内(4月28日)に、連結及び単独決算の発表を行った。

中間決算の公表も同様に、1ヶ月以内(10月中)としている。米国で行われているプレスリリース(Press release)が、日本の決算発表(決算短信)に該当するが、米国では古くから決算日から1ヶ月以内にプレスリリースを行っている企業が多い。米国連結実務では、連結資料の作成日程表にプレスリリースの日程を付記して子会社の理解を求めている。

なお、米国SECは現在規則の見直しをしているが、年次報告書(Form10-k日本の有価証券報告書に該当)の登録を現在の90日以内から60日ないし70日に大幅短縮する案が出ている。また、四半期報告書(Form10-Q)の登録は、現在の45日以内から30日ないし35日以内に短縮しようというものである。

コンピュータ、通信技術、ソフトの発達で、従来の手書き時代の日程を短縮させ、情報の早期公表により投資家の利便性を高めようとするものである。連結決算の日程を短縮する必要性は今後ますます高まるであろう。

ある日本企業では、海外を含め約300の連結子会社があるが決算日後5日間で連結決算はでき連結財務諸表の分析で数日間を要するため約10日間で連結決算を終了するところが出てきている。表計算ソフトのExcelで作成した「連結資料」をインターネット経由で収集し(Electronic Data Interchange、EDI)データを連結決算システムに連動して作成している。
年度 東京証券取引所
上場会社総数
参考(3月決算会社以外も含む)
連単同時発表した会社数 割合 (注1)東京証券取引所によると、5月末までに00年3月期決算を連単同時に発表した企業は、1,231社となり65%増加したとのこと。
(注2)東京証券取引所によると、5月末までに99年3月期決算を連単同時に発表した企業は、745社と前年より184社増加した。

98年と97年は全国ベース。
00年 1935社 1,231社(注1)
99年 1890社 745社(注2)
98年 1967社 689社 35%
97年 1934社 558社 28.9%

中間連結決算発表が急増(98年9月中間決算)

98年9月中間決算で単独に加え連結決算も発表する上場企業が急増している。2000年3月期から企業会計制度が連結決算中心に移行するのを背景に、企業が前倒しで情報開示に取り組む姿勢を強めているためだ。

98年12月2日までに中間連結決算を公表した3月本決算企業は下記のとおりとなっている。

中間期 発表会社数 増加割合
98年9月中間 148社 190%
97年9月中間 78社

連結中心の義務付けはまだ先の話であるが、先進的な企業は上記のように中間連結決算の結果を公表しつつある。まだ公表はしていないが、中間連結決算の体制つくりのため社内的には作成しているところもある。企業によって状況は異なるが、連結決算体制の確立にはグループ各社の協力体制を確立しておく必要があり、一朝一夕には確立できず時間を要するものである。そのため、連結決算体制の確立は急務なのである。

なぜなら、連結決算短信の公表日は短縮される傾向にある。公表日までに、予算と実算の比較分析、前年度との比較、翌年度の予算設定、及び役員への説明を済ませなくてはなりません。大変な時間と労力を要することになる。年度決算ばかりでなく、半期決算も同様である。欧米同様,連結決算体制を確立してないことには対応できないことになるのです。

特に,今回の新しい連結決算では、新たな会計基準(税効果会計、企業年金の会計、キャッシュ・フロー計算書など)は注記事項を要求しています。かつて無かった欧米型の会計基準です。注記事項の連結集計は、意外と厄介な代物であることを早くに理解すべきです。それが分かると連結決算体制を確立するのに時間がかかること,効率的・効果的な体制作りには大変なノウハウが必要なことが分かります。

連結決算体制の確立は、通常、次のように行われる。

連結方針の確立(連結範囲、持分法適用範囲、会計方針の決定等) ⇒ 連結子会社の会計方針の統一 ⇒ 連結資料の設計(作成指示書、連結作業日程、キャッシュフロー計算書の資料、税効果会計の資料、退職給付(企業年金含む)の会計の資料、金融商品の時価会計の資料を含む)  連結会社及び持分法適用会社への連結資料作成の説明会開催・理解を得る。⇒ 連結資料」の確定版作成 ⇒ 中間・年度直前に連結資料を子会社・関連会社へ配布  子会社・関連会社は中間・年度決算を迅速に行い指示された連結日程に間に合うように連結資料を完成させ、親会社連結チームに連結資料を送付  親会社連結チームは連結資料を基礎に連結財務諸表(連結キャッシュフロー計算書を含む)と注記事項(税効果会計の注記、退職給付の注記、偶発債務の注記等)を作成する。

「連結資料」EXCEL97版(作成指示書、連結作業日程、キャッシュフロー計算書の資料、税効果会計の資料、退職給付(企業年金含む)の会計の資料、金融商品の時価会計の資料を含む)をE-mailにて頒布しています。

2000年3月期より連結中心となる

1997年6月6日、大蔵省企業会計審議会は、親会社中心の単独決算を2000年3月期より連結財務諸表を中心とした財務情報の開示に変更する旨決定しました。年度決算ばかりでなく、中間財務諸表も同様に連結財務諸表が中心となります。

従って、従来親会社単独の財務諸表中心であった時代には、親会社の経営者は、親会社単独の財務諸表にのみ興味を示す傾向が強かったのですが、2000年からは子会社を含めた連結決算が主流になることから、興味は必然的に連結決算へシフトせざるを得なくなってきています。

従来のような単純な連結財務諸表ではありません。税効果会計、キャッシュフロー計算書、退職給付(企業年金を含む)の会計、金融商品の時価会計等の導入があるからです。かつ、連結財務諸表は年度ばかりでなく中間・年度と6ヶ月ごとに作成することになります。連結財務諸表(中間・年度)は、当然ですが、子会社の理解・協力を得て正しい連結財務諸表ができます。子会社の理解・協力を得るには時間がかかります。適用初年度に体制を整えようとしても不可能であります。連結体制は早期に樹立し時間を掛けて精度を高めることになります。準備を早期にはじめることをお勧めします。

上場準備会社及び店頭登録準備会社も連結中心となる:
証券取引法適用会社である上場会社は当然のことですが、連結決算が中間及び年度で作成し公表することが義務つけられます。日本証券業協会の店頭登録企業も同様に連結ベースでの審査登録が中心となることが明らかにされました。1998年11月2日付け「株式店頭市場の改革に向けて」と題する報告書によれば「純資産は、連結、単体ともに直前事業年度末2億円以上とする」と明記し連結した純資産をも株式公開基準としています。上場準備会社および店頭登録準備会社も連結中心となります。
連結を親会社の経理が鉢巻して作成している会社が散見されます。これでは、いつまでたっても精度の高い正しい連結財務諸表は作成できませんし、また、いくら時間があっても足りません。子会社の理解と協力を得る体制が必要なのです。そのキーポイントは「連結資料」が簡潔・明瞭に設計できていて、子会社の理解を求めやすくすることであります。

連・単同時発表のキーポイント

連結決算が早期に作成でき、連結決算の内容を十分に分析し公表できる状況が早くに出来ることが必要となります。日本の多くの会社は、子会社の協力を得る連結決算体制作りに苦労するものと思われます。

連結財務諸表作成のキーポイントは、子会社からタイムリーに連結財務諸表作成の基礎資料として「連結資料」を入手する体制を整えることから始まります。なぜなら、子会社の決算を商法計算書類の作成を待っていたら間に合わないことと、商法計算書類では連結決算をするのに、内容、質、量とも不十分で連結決算は出来ません。詳細は「商法計算書類では連結はできない」をご参照ください。

ちなみに、連単同時発表までの作業日程の例示をしますと次のとおりとなり、連結財務諸表の作成過程と連結決算の発表との関係がお分かりいただけるものと思います。連結決算が、洩れなく正確に、効率良く迅速に、行うためには連結資料の入手がキーポイントになることもお分かりいただけるものと思います。

最近は、インターネットで連結資料(Excel ファイルにしておく)を転送し、EDI(Electronic Data Interchange、電子データ交換)を利用して1週間以内に連結資料を入手し10日以内に連結している企業が出てきています。

作業内容
日     程 株主総会
子会社から連結資料の入手 4月25日
連結資料のチェック、連結修正仕訳作成 4月25日から27日
連結精算表の作成 4月28日から
5月7日
連結精算表監査(会計監査人) 5月7日から11日
一次締め連結財務諸表分析(役員への報告用−最終で修正する) 5月7日から11日
子会社の商法計算書類を入手しチェック
連結資料と重要な差異がある場合修正)
5月7日
監査結果による修正を入力 5月10日
連結精算表完成、キャッシュ・フロー計算書作成、注記の作成開始 5月10日
連結財務数値の公表 5月13日
監査済み計算書類を株主に送付(株主総会の2週間前 6月29日

商法の規定による計算書類などは、子会社が商法の日程にしたがって作成されるもので、親会社の連結財務諸表作成には「質」「量」「内容」とも不足し連結財務諸表作成には使えません。上記の通り、日程的にも連結作業に間に合いません。計算書類は、最終的に「連結資料」の数値と一致していることを確認するために使用されます。一致しない場合は、何らかの理由で追加の取引が決算に取り入れられたことを意味しますので、重要なものについては連結決算で取り込むことになります。

無論、企業の規模、子会社の数、子会社の所在地(国内外)、により作業日数も異なります。半期連結が始まると年度より要約した中間連結財務諸表が要求されますが、連結作業の多くは上記のような日程になろうかと思われます。

2010年6月25日日本電波工業は、株主総会後有価証券報告書を提出した。提出した有価証券報告書には、国際会計基準にはない連結付属明細表として「社債明細表」「借入金等明細表」「資産除去債務」等が追加して開示されている。 注記15に短期借入金及び長期借入金等で開示している内容である。連結財務諸表の注記番号の頭に※印は無意味で目障り。英文のIFRS連結財務諸表とは異なっており、金融庁独特の開示の指示に従ったものと考えられる。これでは、株主総会前に提出は無理であったろう。読み難い有価証券報告書は会社のサイトに開示はしていない。正解である。金融庁の担当官は、審査をしているが財務諸表とは何か判っていない。(EDINET 参照・・)

ここで、一通り、日本の制度会計のディスクロージャーを、日本電波工業を例として垣間見てみよう。

監査報告書の日付 決算発表 株主総会招集通知 株主総会 有価証券報告書の提出
株主総会終了後
アニュアル
リポート公開
会社法上の
連結財務諸表の監査報告書
個別財務諸表の監査報告書の
日付は双方とも
2010年5月13日
2010年5月13日(東証で発表)
二期比較のIFRS連結財務諸表(簡略な注記)
二期比較の個別財務諸表(注記なし)
2010年6月9日(総会2週間以上前)
IFRS連結財務諸表(単年度のみ表示)
個別財務諸表(日本基準・単年度表示)
2010年6月25日、午前10時
IFRS連結財務諸表の監査報告

計算書類報告
2010年6月25日
EDINET 参照
IFRS連結財務諸表
個別財務諸表
8月中旬
@ A @ B C

@〜CのIFRS連結財務諸表は、それぞれ作成している。@のIFRS連結財務諸表は単年度のみ表示されており厳密にはIAS1号が求めている比較財務諸表ではない。会社法が比較財務諸表を求めてないことによる。Aの決算短信は注記が簡易となっており、Bの有価証券報告書のIFRA連結財務諸表は、国際会計基準にはない連結付属明細表として「社債明細表」「借入金等明細表」「資産除去債務」等が追加して開示されていたり、連結財務諸表の注記番号の頭に※印は無意味で目障り。読み難い有価証券報告書は会社のサイトに開示はしていない。結局、完成品は8月中旬に公表される英文のアニュアル・リポート(C)のIFRS連結財務諸表だけとなりそうだ。英文財務諸表を含めて、IFRS連結財務諸表だけで4種類作成していることになる。特殊な”有価証券報告書”用は最低作成するようになりそうだ。なんとも非効率的なことか。負担を軽減するために会社法と金融商品取引法の開示の統合をすれば英文、和文の二つで済む。



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上記の「連結資料」の様式Excel 97 版(A4で45ページ、税効果会計、キャッシュフロー計算書、退職給付(年金)会計、金融商品の時価会計に対応しています)を10000円でE−mailにて頒布しています。長年の実務経験を基礎にしたノウハウを提供してます。経理は理論が判るだけでは実務はできません。実務は理論を具体的な形にしなければなりません。しかも誰にも分かる明快な形に具体化することです。

なお、海外子会社等に関しては年度決算書が会計士の監査済み財務諸表を入手でき、連結に不足する追加資料を入手すればよいのですが、中間決算では現地の会計士は通常関与しません。そこで、中間の「英文連結資料」の入手が必要となります。
中間決算の「英文連結資料」の様式Excel97版は、別途15000円でE-mailにて頒布しています。

キャシュフロー計算書資料の入手、税効果会計の資料の入手、退職給付引当金の注記の資料入手を反映しています。なお、会社によって勘定科目等が区々ですが、自社の実態に即して修正し使用できるものと思います。

ご希望の方は、下記E-mailにてご注文ください。なお、入金確認後のE-mail送付となりますのでE-mailアドレスを併記してください。振込先は、第一勧業銀行 新松戸支店 普通預金 口座番号 1577705 口座名義 横山明

日米双方の連結実務の豊富な経験を基礎にキーポントを上記に記しました。本格的な連結決算制度の体制確立に参考となれば幸いです。なお、企業に合わせ正確かつ効果的・効率的な連結決算体制の確立について支援しています。興味がありましたら、下記宛てご連絡ください。

横山会計事務所
公認会計士 横山 明

Tel 047-346-5214 Fax 047-346-9636
E-mail: yokoyama-a@hi-ho.ne.jp


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