新しい連結決算

従来の連結決算とは異なる
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はじめに

欧米では子会社がある場合、原則、連結財務諸表の開示が求められ個別財務諸表の開示は求められない。

日本では下記の通り連結財務諸表の歴史は比較的新しい。日米構造協議で米国側から連結財務諸表を中心とした開示制度を求められ、1991年になって初めて連結財務諸表を有価証券報告書の本体に組入れるが、その直前の企業会計審議会は、「連結財務諸表の有価証券報告書への本体組入れは時期尚早」と結論していたのは記憶に新しい。
2000年3月期から連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」により「連結財務諸表を中心とした国際的にも遜色のないディスクロージャー制度を構 築しようとする ものであり、21世紀に向けての、活力あり、かつ、秩序ある証券市場の確立に貢 献しうると考えるものである。として会計ビックバンが始まったのである。

改正商法では
、3月決算の場合、2005年3月期から未監査の連結財務諸表(商法では「連結計算書類」と呼称)の作成および株主総会の召集通知書に添付し株主に送付することとなった。監査の結果は、株主総会で報告することになった。(ニューヨーク証券取引所に上場しているソニーの場合、米国会計基準による連結財務諸表および商法による単独財務諸表を作成し2005年5月12日付けの連結及び単独財務諸表の監査報告書を株主総会通知書(株主総会は2005年6月22日)に添付しています。制度上、日本の株主に連結財務諸表が届くのは史上初めてのことです。

年度 日本の連結会計の歴史
(上場会社に限る)
米国基準で連結財務諸表を作成
ニューヨーク証券取引所上場の日本企業

米国会計基準使用は2016年3月期まででIFRSの適用となる
○金融庁三井総務課長発言 (2010年8月3日
2016年3月期までの米国基準使用期限は撤廃案
1961年 ソニー(Sony Corporation)が日本企業として初めて
米国でADR(米国預託証券)を発行
のため
米国会計基準による連結財務諸表をSECに登録
1962年 ホンダ(Honda Motor Co., Ltd.)がADRの発行に伴い
資本金90億9000万円となる。現在のSEC登録書類  
1971年 重要子会社の個別決算の開示義務付け              
1977年 連結財務諸表の開示義務付け
1983年 関連会社などへ持ち分法適用の義務付け
1989年 三菱銀行(現三菱UFJフィナンシャル・グループ)
日本の銀行としてはじめてニューヨーク証券取引所へ上場
1991年 連結財務諸表を有価証券報告書本体へ組み入れ
1994年 売上高や資産などがグループ全体の10%以下なら
連結対象からはずせる「10%基準」撤廃。
連結子会社の範囲が拡大
1999年 トヨタ(Toyota Motor Corporation)がSECに登録しADRを
ニューヨーク証券取引所に上場
2000年
(注1)
新連結決算制度導入(個別から連結中心主義へ変更)
(2000年3月期より適用)

連結対象決定に実質支配力基準の導入
2001年 野村ホールディングスがSECに登録、ADRを
ニューヨーク証券取引所に上場
2003年 米国式連結財務諸表を証券取引法上認める
(2003年3月期より適用)

参考:米国式連結財務諸表作成会社の上場会社
2005年
(注2)
商法の未監査連結計算書類を株主総会召集通知に添付
(2005年3月期より適用) 商法施行規則第142条〜179条
 
商法特例法第19条の2第21条の32(委員会等設置会社)
会社法第444条(連結計算書類作成、株主総会召集通知等)
2006年 「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」
(2006年3月期より適用)
2006年11月8日、日本の企業結合の会計基準適用年度
みずほフィナンシャル・グループがニューヨーク証券取引所に上場
2007年 企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書
(2007年3月期より適用)
貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準
ストック・オプション等に関する会計基準

2006年5月施行の
会社法第444条(連結計算書類作成、株主総会召集通知等)
会社法施行規則では、公開会社の
事業報告書で「直前三事業年度の財産及び損益の状況」
の開示することが求められた。(規則120条1項6号)
サンヨーが個別財務諸表の関係会社株式について証券取引等
委員会から減損処理を指摘され過年度決算の訂正をさせられる。
当局の頭は、まだ、個別財務諸表の意識下にある?

外国会社の英文開示は平成19年度を目途(金融審議会提言2004年6月)
2009年 (2009年3月期より適用)
四半期報告書
・経営者の財務報告に係る内部統制報告書
・監査人の内部統制監査報告書
2009年3月期より適用

国際基準に収斂しようと検討中のもの
リース会計・借手:リース資産・負債の計上

EDINETのXBRL化

2009年4月1日以降に開始する事業年度から適用
工事契約・・原則、工事進行基準へ
2010年 日本電波工業がIFRS任意適用第一号(2010年5月13日 11月1日、三井住友FGニューヨーク証券取引所に上場
SECへはUSGAAPではなくIFRSで登録。SEC登録日本企業初
あずさ監査法人、2010年3月期がIFRS適用初年度としている
Sumitomo Mitsui Financial Group, Inc.
CIK#: 0001022837
2011年〜2013年 日本が2011年6月末までに
国際会計基準に完全収斂を約束
2007年8月8日
収斂の会計基準の適用年度は現在不明
2012年3月30日、日立がニューヨーク証券取引所の上場廃止を公表。
2015年〜2016年? 金融庁、2015年IFRS適用の義務化を目指す2009年6月
自見大臣2015年3月IFRS適用はないと言明(2011年6月)
米国会計基準使用は2016年3月期まででIFRSの適用となる
○金融庁三井総務課長発言 (2010年8月3日
2016年3月期までの米国基準使用期限は撤廃案

(注1):証券取引法(金融商品取引法)
2000年3月期から
連結決算中心主義に変更されます。同時に、連結キャッシュフロー計算書の作成、税効果会計、企業年金の会計、金融商品の時価会計など新たな会計基準を設定し、連結財務諸表が欧米並みに充実します。正確な知識を身につけることによって、効率的で正確な連結財務諸表を作成していただきたいものです。連結手順を誤りますと、非効率で不正確な連結財務諸表となることを早くに知ることです。早めの研究をお勧めします。新たな連結決算の進め方の一助となれば幸いです。

(注2):商法(会社法)
2005年3月期より商法特例法の大会社で有価証券報告書を提出している会社については、連結計算書類の作成が義務つけられ、株主総会召集通知書に添付することとされています。(商法特例法19条の2@、同附則9条A) 日本監査役協会作成の「連結計算書類制度の Q&A」の公表にあたって(2003年6月12日) 参照。

2006年5月施行の会社法第444条で、証券取引法大24条の規定により有価証券報告書を作成する会社は連結計算書類を作成しなければならない。また、会計監査人設置会社は連結計算書類を作成することが出来るとしている。株主総会召集通知書には、取締役会の承認を受けた監査済連結計算書類を添付する必要がある。それ以外の会社は株主総会で監査役および会計監査人の監査の結果を報告しなければならない(会社法第444条第7項)。

2005年7月5日、欧州連合が日本の会計基準が国際基準と同等であるか評価していたCESRが最終結論(141ページ)を5日遅れで提出された。4月27日の中間報告(138ページ)と大きな相違はない。(CESRニュース 欧州上場の域外企業に追加開示義務付け・EU委報告 EU May Seek More Disclosure From U.S., Japanese Firms  金融庁が解説しています。EUにおける我が国会計基準の同等性評価の進展状況 参照)
連結財務諸表については、「在外子会社の会計基準の統一に係る各差異についての補完計算書の作成(CESRの技術的助言のポイント)」が2007年(2006年比較を含む)から日本企業に要求されます。企業会計基準委員会(ASBJ)で検討されることになっています(「国際会計基準審議会IASBとASBJの共同プロジェクトの初会合2005年3月11日」参照)。

なお、米国での連結財務諸表の歴史は19世紀後半の「アメリカ連結会計の生成起源と展開過程」by小栗崇資(駒澤大学)が興味深い。日本の連結決算制度は、米国に遅れること約100年ということが分かる。

2003年12月、小樽商科大学田中良三名誉教授が退官するに当たり著した「我が国におけるデスクロージャー制度の展開とその背景」は戦後日本の会計の概要が良く纏められている。

下記の新たな会計基準は、国際会計基準の一部導入です。国際会計基準との関係は別途「国際会計基準と日本の会計の相違点」および「国際会計基準」を用意しています。興味のある方はご参照ください。
新たな会計基準 実施時期
新連結財務諸表(年度) 平成10年4月以後開始する事業年度から偶発債務の注記,表示科目の統合等について実施し、平成11年4月以後開始する事業年度から本格的に実施(2000年3月期から本格的に実施)
(1997年(平成9年)6月6日、大蔵省・企業会計審議会は、国際的調和等の観点から整備すべき企 業会計の課題について審議を進めてきたが、連結財務諸表制度の見直しに関する意見書 取りまとめ公表した。 )
中間連結財務諸表 平成12年4月1日以後開始する中間会計期間から実施(2001年3月期から実施)
連結対象範囲
(支配基準とし、かつ特定目的会社を
連結除外したもの)
企業会計審議会(旧大蔵省)の公表した「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い(平成10年10月30日)」
平成11年4月1日以後開始する事業年度から適用。(2000年3月期から実施) ただし、早期適用も認める、としています。
原文は、金融庁(旧大蔵省時代の「答申・報告書等」)より入手できます。
研究開発費等の会計 平成11年4月1日以後開始する事業年度から実施(2000年3月期から実施)
キャッシュ・フロー計算書 平成11年4月1日以後開始する事業年度から実施(2000年3月期から実施)
中間キャッシュフロー計算書は、平成12年4月1日以後開始する中間会計期間から実施
(2001年3月期から実施)
退職給付(企業年金)の会計 平成12年4月1日以後開始する事業年度から実施(2001年3月期から実施)
税効果会計 平成11年4月1日以後開始する事業年度から実施(2000年3月期から実施)
ただし、早期適用を認める。
金融商品の時価会計 平成12年4月1日以後開始する事業年度から実施(2001年3月期から実施)
外貨建取引等会計処理基準(1999年10月改正)
(国際会計基準21号に沿った内容に変更)
平成12年4月1日以後開始する事業年度から実施(2001年3月期から実施)
会計ビッグバン以降の会計基準
自己株式(金庫株)の会計処理 平成13年(01年)10月施行の改正商法で「資本の部」に自己株式の部を設けることとなった。
固定資産の減損会計 2002年8月9日、企業会計審議会は、「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」を公表し、2005年4月以降開始する事業年度について全面適用、早期適用可、とするとした。
2003年3月5日、半年以上を費やし、企業会計基準委員会は『固定資産の減損に係る会計基準の適用指針』の検討状況の整理」なる文書を公表した。つまり「適用指針(草案)を公表した。
企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書 2003年8月1日、企業会計審議会は、企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書(公開草案)」を公表した。現行IAS22号に近く、持分プーリング法を認めたり、のれんを20年以内に償却することになっており、平成18年(2006年)4月1日以降開始事業年度から適用を開始する。旧IAS22号の考えに近く、持分プーリング法の廃止に関する最近の国際基準の議論とは物別れとなって一致していない。
2003年10月31日、「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書が公表され2006年4月1日以降開始する事業年度から適用とされた。いつもの通り、草案から変更はない。
会計ビッグバンによる会計基準導入の日程
新たな会計基準 実   施   時   期
1999年4月開始する事業年度
(2000年3月期)から
2000年4月開始する事業年度
(2001年3月期)から
新連結財務諸表(年度) ⇒本格的導入⇒      
中間連結財務諸表 ⇒本格的導入⇒
連結子会社及び持分法適用の関連会社の範囲 ⇒本格的導入⇒
研究開発費等の会計(下記参照) ⇒本格的導入⇒
キャッシュ・フロー計算書 ⇒本格的導入⇒ ⇒中間連結決算本格導入⇒
退職給付(企業年金を含む)の会計 ⇒本格的導入⇒
税効果会計 ⇒本格的導入⇒
金融商品の時価会計 ⇒本格的導入⇒
外貨建取引等会計処理基準(1999年10月改訂) ⇒本格的導入⇒
研究開発費等の会計
従来は、研究開発費は、効果の発現が将来にわたる場合、繰延資産としていたが、原則、発生した期の費用としなければならないとした。また、注記による開示が求められこととなった。

米国では、1974年10月公表の、財務会計基準書(SFAS)第10号「研究開発費の会計」によれば、技術専門家に試験研究費の発生と将来の収益との因果関係を科学的に調査し、その因果関係は数パーセントに過ぎないことが判明し、試験研究費は発生した期の費用としなければならないと結論した。
企業会計審議会の「研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書(2000年3月期から実施)は、米国基準と一致している。

国際会計基準第38号
無形固定資産」は、試験研究費(research)を費用処理するとして、ほぼ米国基準に類似したものとなったが、開発費(development)については将来の販売可能性または使用可能性が確実で金額の測定に信頼性がある場合は無形固定資産とする規定になっているが、資産計上の条件は厳しい。また、資産計上しても、毎期、IAS36号「減損会計」の検討を要する。

新たな会計基準の導入は、従来の連結決算とは質・量とも異なります。税効果会計、キャッシュフロー計算書、退職給付(企業年金)の会計など、従来日本に無かった会計基準であると同時に、それぞれ、知識を会得し実務に適用するまでに時間を要します。また、それぞれの会計基準は欧米型のように注記事項による開示情報が必要となります。これは、従来の日本の会計基準には無かったものです。

エンロン(ENRON)・・簿外債務の原因となった「特別目的会社の連結対象外について」
最大270億ドルとも指摘されている簿外債務膨張の原因は、特別目的会社を連結対象外としたことにある。当初は、米国会計基準では連結対象外でもよいものであったが、監査後にエンロンと特別目的会社が資金取引で密接に関連していたことが判明し一部を連結対象に加えたという。

日本でも企業会計審議会(旧大蔵省)の公表した「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い(平成10年10月30日)」では特別目的会社は連結対象外としている。米国基準と類似した基準としている。原文は、金融庁(旧大蔵省時代の「答申・報告書等」)参照。

国際会計基準では、特別目的会社であっても支配している場合は連結対象とするとしている。米国会計基準と国際会計基準とは特別目的会社の取扱が異なっている。(SIC-12連結・・特定目的事業体(SPE)」参照)

米国財務会計審議会(FASB)は、2002年7月1日、「特別目的会社(SPE)の連結原則・・解釈指針」の公開草案を公表した。従来から支配している会社は連結範囲としていたが、SPEの場合、支配形態が異なることや、リスクの分散など固有の問題があることから連結除外とされるケースがあった。これを明確にするため今回の草案を公開することになった。総資産の3%ルールは10%になった。2003年3月以降開始する事業年度から適用。(ニュース・リリース参照)

人々の記憶から褪めた2005年9月30日、日本公認会計士協会(監査・保証実務委員会)では平成16年9月8日付け諮問「現行会計実務における特別目的事業体(SPE)を取り巻く諸問題を整理し、現行会計基準を前提とした監査上の留意点を取りまとめられたい。」に基づき、検討してまいりましたが、このたび、一応の結論が得られましたので、「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」として公表し、広く意見を求めることといたしました。2002年(平成14年)12月10日「特別目的会社(SPC) に関する調査結果報告」参照

2005年12月29日日本経済新聞は、「日興の損益不明確なSPC、中央青山が連結対象化を要請」と報道(SPCに関するニュース ベル24”連結外し”は適切なのか(1/14東洋経済) 参照)。やっと報道するようになった。
野村HDがミレニアムリテイリングを連結対象としていることについて日興は「野村さんは米国会計基準を採用しているのに対して、当社は日本基準。あくまで土俵が違う」と説明”だそうである。

2007年1月26日企業会計基準委員会は、「特別目的会社との取引等を開示」公表、特別目的会社の連結問題を先送りにして、特別目的会社との取引や特別目的会社の財政状態の開示を求める適用指針(案)を公表した。まるで、金融庁の官僚が書いた文章のようである。

2010年7月6日企業会計基準委員会は6日、不動産開発型の特別目的会社(SPC)を原則連結させる方向で議論を進めることを決めた。年内にも最終決定し、2012年4月から適用する見通しだ。
現在、不動産の証券化を促す資産流動化法に沿って設立したSPCは、連結対象外となっている。不動産会社などはこのルールを使い、自らの土地をSPCに譲渡し開発するだけでなく、最初からSPCを使って外部の土地を取得・開発する、いわゆる開発型SPCの利用を拡大。大手不動産4社の連結外SPCの資産規模は、10年3月期で合計約2兆7300億円に達している。

開発型SPCの増加に伴い、投資家などの間から、財務諸表が企業の経営実態を適切に表していないのではないかとの声が出ていた。会計基準委では今回、企業の資産圧縮を促す資産流動化法の趣旨に基づき、自らの資産をSPCに譲渡した案件のみ従来通り連結対象外とし、それ以外は連結することで議論を進める方針だ。(日本経済新聞

会計ビッグバンの背景

1996年11月の橋本首相によって日本版ビッグバンがスタートしました。

@フリー(市場原理が働く自由な市場に)、Aフェアー(透明で信頼できる市場に)、Bグローバル(国際的で時代を先取りする市場に)を大きな柱として金融面での大幅な規制緩和・自由化を推進し、低迷している東京市場をニューヨークやロンドン市場に匹敵する国際市場に育成することが大きなねらいです。

証券取引法関係では,ディスクロージャー制度の整備・充実を揚げ、連結ベースのディスクロージャーをはじめとして上記にあるような新たな会計基準を国際会計基準を基礎として導入したのです。

時は止まっていない、98年12月に国際会計基準が完成し、99年6月には、欧州の証券取引所が2000年に統一することで合意、同月ナスダック・ジャパンの創設公表、同月、ケルン・サミットで7カ国蔵相がまとめたリポートに「国際会計基準の完成を歓迎する」旨を明記、11月上旬ナスダック・ヨーロッパのロンドンで創設など、国際会計基準に関連する動きが、矢継ぎ早に決定している。上記、橋本内閣が宣言した「日本版ビッグバン」の構想以後、世界は一変している。日本は、更なる会計改革に迫られている。

会計基準の変革とその背景

日本 国際情勢
時期 基本方針 大蔵省企業会計審議会意見書 会計基準に関する国際情勢 その他
1973年6月29日 国際会計基準委員会設立(IASC
1973年7月1日 米国財務会計基準審議会(FASB)が会計原則審議会(APB)から7月1日付けで引き継いだ。
1988年 証券監督者国際機構設立 (IOSCO
1993年10月 ダイムラーベンツ社が、ニューヨーク証券取引所へ上場
1995年 IOSCOはIASCに対し、40項目のコア・スタンダードを完成することで合意
1995年12月 住専(住宅専門金融会社)破綻 公的資金投入で議論噴出
1996年11月 橋本首相による日本版ビッグバン宣言 (「国際会計基準戦争」・・抜粋)
平成8年11月橋本総理より三塚大蔵大臣及び松浦法務大臣に対し、2001年までに我が国金融市場がニューヨーク、ロンドン並みの国際金融市場として復権することを目標として、金融システム改革、いわゆる日本版ビッグバンに取り組むよう指示がありました。
 21世紀の高齢化社会において、我が国経済が活力を保っていくためには、1200兆円にも上る個人金融資産がより有利に運用される場が必要であり、これら資金を次代を担う成長産業へ供給していくことが重要です。また、我が国として世界に相応の貢献を果たしていくためには、我が国から世界に円滑な資金供給をしていくことが必要です。
 金融システム改革とは、このような観点から、フリーすなわち市場原理が働く自由な市場、フェアすなわち透明で信頼できる市場、グローバルすなわち国際的で時代を先取りする市場の3原則にのっとり、抜本的な金融市場の改革を進めていくものです。これを利用者の側からみれば、例えば、幅広いニーズに応える商品が登場し、銀行・証券等の取扱い業務が拡大することによって、貯蓄をより多様により容易に運用でき、使い勝手がよくなるものと考えられます。
 一方、我が国金融市場の活力を甦らせるためには、本改革の推進と並び金融機関の不良債権を速やかに処理していく必要があり、金融システムの安定には細心の注意を払いつつ改革を進めていきます。
 この改革は、財政構造改革、経済構造改革等6つの最重要課題の一つとして、全力を挙げて取り組んでいくものです。
1997年5月 ドイツでは新興企業向け株式市場(ノイア・マルクト「Neuer Markt」)を創設、国際会計基準または米国会計基準での開示を要求、かつ、ドイツ語と英語の開示が要求されている。 
1997年6月 連結中心主義へ方針転換宣言
以後,下記の会計基準のように国際会計基準の一部導入をしはじめる。

●連結財務諸表見直しに関する意見書公表
1997年11月 三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券が破綻
1998年3月 ●連結キャッシュ・フロー計算書の会計基準公表
●試験研究費の会計基準公表
●中間連結財務諸表の会計基準公表
1998年4月 外為法抜本改正施行
1998年5月 ドイツは、独立した民間の会計基準設定機関として「ドイツ会計基準委員会(Deutsches Rechnungslegungs Standads Committee,DRSC 英語名は、German Accounting Standards Committee)を社団法人として設立した。
これにより、国際会計基準委員会の理事会メンバーとして参加できる体制を整えた。
1998年6月 退職給付の会計基準公表   素材抜粋・・磯山友幸著「国際会計基準戦争」参照
1998年7月 金融システム改革法施行
1998年10月 ●税効果会計の会計基準公表
●連結および持分法の範囲の見直し公表
日本長期信用銀行破綻
1998年11月 ダイムラーがクライスラー社を吸収合併
欧州証券取引所が統一することで合意
1998年12月 日本債券信用銀行国有化を政府決定。98年3月期決算で944億円の債務超過と公表。
◎ IAS第39号「金融商品の時価会計」の成立により40項目のコア・スタンダードを国際会計基準に具体化し完成

◎ 12月7日、国際会計基準委員会は、「IASCの将来像」として各国の会計基準設定機関から理事会メンバーを参加させる構想を公表。2000年5月24日に新組織を確定することを合わせて公表。
1999年1月 ●金融商品の時価会計の会計基準公表 ユーロ導入により欧州通貨統合

ロンドン・ドイツ証券取引所が統一で始動
国際会計基準の世界標準化を加速か!
1999年2月 経済戦略会議(樋口広太郎議長)が小渕首相に最終報告
グローバル・スタンダードへの制度設計が必要と提言
1999年6月 サミットで「国際会計基準の完成を歓迎する」旨が、G7蔵相がまとめたリポートに明記された。
1999年8月 自民党「企業会計に関する小委員会」発足
1999年10月 商法10月改正(時価会計可能となる) IOSCOが国際会計基準の承認の検討に入る。       
1999年11月 ビル・ゴードン氏著「1997年以後の日本の会計改革の批判的評価」は、英語で会計ビッグバンを紹介している。
1999年12月 自民党「企業会計に関する小委員会」は、12月21日付けで「企業会計基準設定主体の充実・強化に向けて(案)」(Alexaアーカイブ過去の記録から入手可能)をまとめ提言している。「日本の会計」に一部掲載参照
2000年3月 3月27日、日本公認会計士協会と経団連は、会計基準設定主体となる民間機関を設立することを明らかにした。大蔵省も大筋で了承。企業会計審議会から、独立色の強い機関に権限を移し、基準つくりの透明性を高めるとして、5月中旬をメドに組織の概要を固め、早ければ2000年度中にも発足させる、としている(日経3月28日)。日本だけが取残されていましたが、IASCの新体制という発車寸前の電車に飛び乗ろうとしています。
2000年4月 2000年4月11日、日本公認会計士協会の「わが国の会計基準設定主体のあり方について(骨子)」を受けて、大蔵省は「企業会計基準設定主体のあり方に関する懇談会」を設置し、日本証券業協会副会長、東京証券取引所副理事長、日本公認会計士協会会長、経済団体連合会常務理事、大蔵省金融企画局長、高千穂商科大学教授(企業会計審議会会長)の6名のメンバーで検討している。
検討している内容は、7月以後は内閣府金融庁市場課企業開示参事官室担当の議事録が公表されているのでご覧戴きたい。
議事録によると、6月5日までに懇談会は4回開催されているが、1回の会議が1時間半から2時間の討議で、議事録要旨には発言者名が不明、結論がない。国の権限を如何に留保するか腐心しているような発言がある。
自民党の「企業会計に関する小委員会」がまとめた「企業会計基準設定主体の充実・強化に向けて(案)」(Alexaアーカイブ過去の記録から入手可能)や、日本公認会計士協会がまとめた「わが国の会計基準設定主体のあり方について(骨子)」があるにもかかわらず、議事録を見る限り、遅々として進んでいない。大蔵省(現・金融庁)は、6月29日、「企業会計基準設定主体のあり方について(論点整理)」を公表。
2000年5月 5月17日、IOSCOがIASを承認した。日本の証券監督者である大蔵省(証券取引法)の対応が注目される。大蔵省は、全くの無視であった。
国際会計基準委員会(IASC)は各国の会計基準設定機関をメンバーに加えた新組織が5月24日に確定。「国際会計基準」参照。
2000年6月 欧州委員会が、域内のすべての上場会社に2005年までにIAS適用を要請すると表明
2000年6月 ナスダック・ジャパン稼働開始
2000年 欧州統一証券取引所に向けて、パリ証券取引所、ドイツ証券取引所が主導権を握ろうとロンドン証券取引所との提携・合併に動く。去就が不透明。
2001年4月 IASCがIASB(国際会計基準審議会)として新しい組織となる。「国際会計基準」参照。
2001年6月 欧州財務報告助言グループ(European Financial Reporting Advisory Group, EFRAG)は、欧州委員会の要請により2005年までに欧州のすべての上場会社にIAS適用のため、技術専門家集団(Technical Expert Group)を結成した。
2001年7月 会計基準設定主体が民間の独立機関を設置。当初4月設立予定が7月になった。(下記(注1)参照)
2001年9月 マイカル破綻・・負債総額1兆1500億円
2001年12月 青木建設破綻・・連結負債総額5220億円 米国ではENRON破綻、負債総額160億ドルで米最大級
エンロン問題で、五大会計事務所が監査に関する改善検討を表明
粉飾決算」参照
2002年1月 欧州通貨をユーロに統合
2002年2月 ダイエー救済・・UFJ、三井住友、富士銀行5200億円の金融支援で合意   
 ダイエーの今日の株価 参照
2002年3月 ●金融庁は、米国証券取引委員会(SEC)登録の米国会計基準による連結財務諸表の提出を認めた。
2002年4月 ペイオフの解禁延期 自己株式の会計処理適用  ●連結納税制度の導入
2002年5月 ●大会社に連結計算書類の作成・株主総会で報告する義務を課した改正商法可決 (2005年3月期より)
2002年7月 米国企業会計改革法(サーべンス・オクスリー法)成立
2002年8月 ●企業会計審議会「固定資産の減損に係る会計基準」公表。
2005年4月以降開始する事業年度について全面適用、早期適用可。
2003年3月5日、半年以上を費やし、企業会計基準委員会は『固定資産の減損に係る会計基準の適用指針』の検討状況の整理」なる適用指針草案を公表した。
2002年10月 ナスダック・ジャパン日本撤退
2003年2月 国際的な6大型会計事務所が共同で、主要国を含む59カ国の会計基準を調査した結果を「GAAP Convergence 2002(一般に認められた会計基準 収斂 2002年)」に纏め公表した。
日本は、現在、国際財務報告基準(IFRS)に収斂しようとしない国、アイスランド、日本、サウジアラビアの3カ国」として報告されている。この報告書は、会計普及国際フォーラムIFAD、International Forum on Accountancy Development、メンバー及びオブザーバー)および国際的な事務所で紹介されている(各事務所のニュース 参照)。
2003年5月 りそな銀行破綻・・03年3月期決算に際し会計監査人から巨額の繰延税金資産の計上能力に疑義の意見あり。会計士自殺
2003年11月 足利銀行破綻・・03年3月期の金融庁検査で金融庁は債務超過と判定と公表。監査法人苦境に立たされる。
2004年5月 欧州連合(EU)に新たに10カ国加盟し25カ国になる
2004年7月 UFJグループは14日、臨時取締役会を開き、三菱東京フィナンシャル・グループ(MTFG)と経営統合に向けた交渉に入ることを決めた。(Yahooニュース 参照)
2004年8月 UFJがメインバンクとなっているダイエーの再建策が俄かに騒がしくなってきた。
2004年10月 経営再建中の大手スーパー、ダイエー10月13日、主力取引3銀行が再生機構を活用しない限り金融支援を打ち切ると通告したことを受け、監査法人が04年8月中間決算を承認しない意向を伝えたため、再生機構抜きでは法的整理を回避できないと判断せざるを得ず、民間主導による自主再建を断念し、政府の産業再生機構(05年3月終了)に支援を要請する方針を決めた。ダイエーの今日の株価 参照 13日、13円高の240円の終値であった。
新監査基準書(平成14年1月25日)継続企業(ゴーイング・コンサーン)の前提・・「〜重要な債務の不履行、・・企業が将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を抱かせる事象が存在する場合には、〜」の規定が新設されダイエーに適用されたもの。基準が整備され平成15年3月期から適用されているので当然の帰結です。
12月17日報道によれば、再生機構の資産査定で5,584億円の債務超過であることが分かった、としている。2004年8月の中間決算で約1000億円の資産超過だった。取引銀行に約6000億円の金融支援(債権放棄や優先株の消却)を求めて債務超過を解消し、1000億円程度の新規資金を注入する考えとのこと。(大前健一の「ニュースの視点」
2004年11月 11月16日、東京証券取引所は、西武鉄道<9002.T>株式を12月17日付(今年1200円前後で推移していた株価は12月16日最終株価485円で終えた)で上場廃止にすると発表した。11月17日から12月16日までは整理ポストに割当てる。  上場廃止の理由について東証では、財務諸表などに「虚偽記載」があり、その影響が重大であると判断したなどとしている。具体的には、(1)西武鉄道はコクドからの支配の程度や株式分布状況について誤った開示を少なくとも1957年から継続して行っていた、(2)上場廃止基準に定める少数特定者持株数比率80%以下の要件に抵触することが確認された、(3)虚偽記載について組織的な取り組みがあったと推認される――などが審査の結果判明し、上場廃止を決定した。Yahooニュース 参照 11月16日、西武鉄道のお知らせ「ジャスダックへ再上場する意向」、同日、金融庁規制強化ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応について
2005年 欧州連合(EU)25カ国は、すべての上場会社に国際会計基準(IFRS)適用(「No1606/2002国際会計基準の適用に関する規則」 欧州連合の規則 参照)
2005年3月 ダイエーへの金融支援は5924億円(債権放棄4004億円、優先株の消却1920億円)で確定。ダイエーは、減損処理などで2005年2月期は4100億円の債務超過に陥るが、2006年2月期末で解消。
産業再生機構を活用しての再建が始まったダイエーは、去る3月30日、臨時株主総会を開催した。支援企業(スポンサー)に大手商社の丸紅と、投資ファンドのアドバンテッジ パートナーズ(AP)連合が決まったことを受けて開かれたもので、資本金の99%減資と、1120億円の第三者割当増資を決議した。 再建のお目付け役たる産業再生機構も、そのうち約500億円を引き受けて出資比率は33.4%となり、APは434億円を引き受けて23.4%を出資した。また、丸紅は、すでに取得している0.9%分に加え、186億円(10%)を引き受け、10.9%の出資者となった。
 丸紅は、大株主としてダイエーグループのマルエツとの関係が深い。年間約700億円の取引があるダイエーの再建にかかわることで、商品の開発や供給の面でいっそう密接なつながりを持ちたいというねらいがある。
 そして、APは、投資ファンドである以上、最良のタイミングで持ち株を手放し、投資家から預託された資金を運用益とともに返すことになろう。(AP・丸紅連合620億円のダイエー支援は、再生すればいくら儲かるのか)by President 2005年5月号(ダイエーの今日の株価 参照)←昨年10月13日の終値240円と比較してみてください。東証上場維持
2005年4月 ペイオフの解禁・・決済用預金「無利息・要求払い・決済サービスを提供できること」は全額保護
カネボウ巨額2000億円の粉飾決算(2005年4月13日公表)・・担当した監査法人苦境 株価 参照
2005年9月13日、担当公認会計士4名が逮捕された。
4月27日 EUが日本企業に2007年より追加情報の開示要請案を公表
2005年10月 10月1日、三菱とUFJが経営統合し三菱UFJフィナンシャルグループ誕生 資産規模200兆円は世界一
2009年 >欧州連合、米国会計基準での開示を廃止しIFRSでの開示を求める。
EUが日本企業に2009年より追加情報の開示要請案を公表
日本版 財務会計基準審議会(FASB)が2001年7月設立注1
2001年2月28日経団連、日本公認会計士協会、全国証券取引所協議会、日本証券業協会、全国銀行協会、生命保険協会、日本損害保険協会、日本商工会議所、日本証券アナリスト協会、企業財務制度研究会など10団体が出資して「財務会計基準機構」(仮称)を7月に設立し、下部組織の「会計基準委員会(ASB)」が会計基準の設定について全権をもつとし、米国FASB型の会計基準設定主体を模したものになる。設立準備委員会の設置を公表(ロイター、日本経済新聞、毎日新聞が報道)。政府出資を見送ったことが注目に値する。それだけに責任が重くなろう。

2001年7月26日財団法人 財務会計基準機構(FASF)の設立認可を受け、企業会計基準委員会(ASB)8月7日正式に発足した。  
企業会計基準委員会
(Accounting Standards Board, ASB)
会計基準の開発・設定を行う機関
(National Standard Setter)
と解していましたが
会計基準の設定という文字は見られません。
委員長のメッセージ
をご覧ください。
02年2月、開発された「企業会計基準等」参照。
財団法人 財務会計基準機構
(Financial Accounting Standards Foudation, FASF)
金融庁所管の公益法人
資金調達、人事及び管理運営を行う法人

企画部長金融庁から2004年7月31日就任

FASF、ASBは、米国会計基準及び国際会計基準の設定機構を基礎に仕組みができているとしているが、日本のそれは相当異質である。

JICPAジャーナル2002年6月号によれば、3月19日のASBとIASBとの意見交換会での質疑応答で、『(回答)金融庁の承認については、これから行われるので定かではないが、一つ一つの基準に対して承認なされると考えられる』としている。一方、3月26日付けで、金融庁総務企画局は、『財団法人財務会計基準機構・企業会計基準委員会から平成14年2月21日付で公表された「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」は、証券取引法の規定の適用にあたっては、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準として取扱い』、とした文書が掲載され、官主導を明確にした文書であり、金融庁の承認に関する発言を裏付けている。不思議なことはASBが直前まで承認に関しての根拠法令等明文で知らされていない事実である。また、『(回答)当委員会(ASB)では、基本的には証券取引法の枠組みの中で会計基準を作成していく』と応えている。

2001年10月、第1回FASFセミナー「半期報告書の作成上の留意点」を財務省関東財務局及びFASFが全国を精力的に講演する。FASFが何も活動していない前に、機構を利用しているのを見ると、FASFは既に財務省関東財務局(証券取引法の有価証券報告書の審査担当)の下請け機構と化した感がある。米国では証券監督者であるSECが自らのサイトで行っている内容のものである。独立性の高い海外のそれと日本は相当相違しそうである。杞憂であればよいのだが・・

国際会計基準審議会(IASB)
へ英文で報告したものは、Japanese Accounting Standards Board, ASBJ (日本会計基準審議会)となって「企業」の文字を抜いており英文とは一致していない。
日本は、国際会計基準審議会(IASB)のリエゾン・メンバー国7カ国の1カ国として(「各国の会計基準設定主体の連絡役(Liaison)として審議会(Board)メンバーとなっている7カ国プラス1・ニュージーランド」参照)、日本だけが取残されていたが2001年8月10日ようやくリンクされ形だけは整った。

欧州連合は2005年から国際会計基準を適用、オーストラリア・ニュージーランドも欧州と同時期に国際会計基準の適用を表明、カナダ証券監督局は2002年6月に国際会計基準を適用する規則改正案を公表した。リエゾン・メンバー国では日本だけが国際基準の適用を表明していない唯一の国となる。「GAAP Convergence 2002」参照
リエゾン・メンバー国 会計基準設定主体名 国際会計基準
適用の有無
オーストラリアおよび Australian Accounting Standards Board (AASB) 2005年適用
ニュージーランド Financial Reporting Standards Board (FRSB) 2005年適用可、2007年適用
カナダ Accounting Standards Board (AcSB) 2002年6月IAS適用
するための規則改正案公表
フランス Conseil Nationale de la Comptabilite (CNC) 2005年適用
ドイツ German Accounting Standards Committee (DRSC) 2005年適用
日本 Accounting Standards Board (ASBJ) 適用しない
英国 Accounting Standards Board (ASB) 2005年適用
米国 Financial Accounting Standards Board (FASB) 国際会計基準審議会IASB
と共同作業で調和を志向
その他の国の会計基準設定主体 備考
韓国 Korea Accounting Standards Board (KASB)
2000年10月、神戸国際コンファレンス・
センターでのスピーチ「韓国の会計改革
は、減損会計の適用、個別財務諸表への
持分法適用、誤謬の訂正で遡及修正の適用
、貸倒引当金の引当は将来の回収額を基礎
とするなど改革内容は日本に先行している。
2001年3月から、1号「会計処理の変更及び誤謬の訂正」、
2号「中間財務諸表」、3号「無形固定資産」、4号「収益の認識」、
5号「有形固定資産」、6号「後発事象」、7号「財務費用の資本化」、
2002年1月から、8号「有価証券」、9号「転換証券」に関する
会計基準を精力的に設定。簡潔なHPとなっている。
1997年12月の「金融危機が韓国会計制度に与えた影響」は、
99年6月の韓国会計協会KAI(KASBの母体)創設を必要
とした。構造改革に迫られている日本にとっても参考となろう。
マレーシア Malaysian Accounting Standards Board (MASB) 1997年に財務報告法成立と同時にMASBを創設。
以来、1号「財務諸表の表示」、2号「たな卸資産」などIASに
沿ったテーマで29号まで公表。簡潔なHPとなっている。
シンガポール 2001年9月、「開示及び会計基準委員会報告書」を公表し、@独立の会計基準設定主体を設立し
シンガポールの会計基準を設定すること、A2003年1月1日以後開始する事業年度より国際会計基準
を適用すること、B2003年1月1日以後開始する事業年度より、四半期報告書(非監査)の開示など
22項目にわたって提言している。(シンガポール財務省 参照)
中国 中国の会計改革のコンサルティングをしているデロイト・トゥシュ・トーマツが紹介しているHPによると、
中国は急速に国際会計基準に準拠した会計基準に進行している。@2001年12月、中国証券監督委員会
(CSRC)は国内株のA株にも新たに株式公開した場合は、国際会計基準による開示を求め、A上場会社には
2001年1月1日以後、四半期報告書の開示を求めている。(IAS Plus 参照)
アジア開発銀行が纏めた「中国の会計とガバナンス問題」の「中国の会計基準・監査基準」の項が参考となる。
石川純治駒沢大学教授の書評「婁爾行と中国会計研究の歩み」は中国会計学会の創設者のひとりを
紹介し中国会計史を知る上で貴重な資料を提供している。
香港 香港取引所・・成長企業市場(GEM)では、香港会計基準、IASまたは米国会計基準の内いずれかを
継続して適用した財務情報の開示を要求している。(GEM上場規則18参照)
欧州 2001年6月26日、欧州財務報告助言グループ(European Financial Reporting Advisory Group, EFRAG)
は、欧州委員会の要請により2005年までに欧州のすべての上場会社にIAS適用のため、技術専門家集団
(Technical Expert Group)を結成し、実務対応に向けて動き出した。(詳細は「欧州委員会の動向」参照)
2002年5月28日、欧州委員会は欧州議会に対して会計指令法案を提出した。これは、国際会計基準に
収斂させるもので、欧州の非上場会社5百万社に影響するとしている。(法案本文参照)
欧州会計士連盟(FEE、28カ国38団体45万人がメンバー)は、精力的に支援をしている(年次報告書参照)

01年6月29日、米国財務会計基準審議会(FASB)は、SFAS141「企業結合(Business Combinations)」SFAS142「営業権及びその他の無形固定資産(Goodwill and Other Intangible Assets)」を匿名投票により承認した。これにより、持分プーリング法は禁止され買収法のみの適用となった。営業権の取扱いを変更し「営業権を償却してはならないが、営業権に減損(Impairment)が生じている場合は減損部分は即時償却」としている。2001年7月1日以後の合併等に適用するとしている。

G4+1で「企業結合の会計の統一に関する助言」の通り、カナダでも企業結合は買収法(パーチャス・メソッド)のみ適用、営業権は年度ごとに資産の減損テストを行い減損部分の償却のみで減価償却はしてはならない、とした。AcSBおよびFASBのHP参照。

ドイツでは、ストック・オプションの付与に従業員費用/資本準備金の計上、及びワラント債のワラント部分の資本準備金への計上を提案した会計基準草案が出されている。ワラント債のワラント部分は資本取引として米国会計基準でも資本準備金へ計上することになっているが、日本の基準では発行時に負債の部へ計上する。

日本の企業会計審議会が検討している合併会計や、国際会計基準にも影響しよう。

また、欧州委員会が域内の上場会社すべてに2005年までに国際会計基準(IAS)を適用することを要請し、すでに技術専門家グループを結成して実務対応に向けて動き出した。(「欧州委員会がIAS適用を要請」参照)
国別上場会社の、国際会計基準の適用状況
IAS Plus というサイトに、上場会社の国際会計基準(IAS)適用状況をまとめているので、主要国について下記に示します。なお、詳細は、IAS Plusを参照してください。
国際会計基準の適用状況  2004年3月現在
国際会計基準(IAS)  IASの適用を上場会社の
認めない 認めている 一部に要求 すべてに要求
米国 ×(注5 注6
カナダ × △(注1
英国 ×(注4 2005年
ドイツ × 2005年
フランス × 2005年(注7
イタリア × 2005年
デンマーク × 2005年
オランダ × 2005年(注7
ベルギー × 2005年(注7
ルクセンブルグ × 2005年
オーストリア 2005年
スイス
オーストラリア △(注2 2005年(注2
日本 ×
中国 ×
香港 ×
シンガポール
韓国 ×
ロシア連邦 × 2004年(注3
注1カナダ証券監督局は、2002年6月21日、国際会計基準を認めることを提案した。
注2オーストラリア財務報告会議(FRC)は、02年7月3日、欧州同様2005年までにIASを適用することを決定した。
注3:2002年7月25日、ロシアのミカエル・カシヤノフ首相は、2004年1月1日からロシアのすべての会社及び銀行にIASを適用した財務諸表の作成を要請すると発表した。首相は財務大臣に対し、2003年1月1日までに会計変更のためガイドラインの作成を命じた。(IAS Plus 1998年5月創設の「会計改革のための国際センター、 International Center for Accounting Reform (ICAR)」 参照)
注4英国は、2005年までにIAS適用が決まっていることから、適用がスムースに行えるよう、2004年までの3年間で自国の会計基準を国際会計基準に一致させることを目的に、会計基準(Financial Reporting Standard, FRS)の整備を行っている。第一ステージとして、2002年5月、7つの会計基準の公開草案を公表(英国会計審議会(ASB) Current projects 参照)。
英国通商産業省(DTI)は、2002年9月2日、国際会計基準の非上場会社・個別財務諸表にも適用拡大を支持。(DTIの「国際会計基準適用」参照)

注5米国では、エンロン事件を契機に、米国会計基準の詳細なルールを基礎とした会計基準に疑問が生じた。2002年7月24日に70ページに及ぶ企業改革法(2002年サーべンス・オクスリー法(SARBANES−OXLEY ACT OF 2002)をまとめ両院の議会で可決し、7月30日にはブッシュ大統領が署名して法律が成立した。同法は、会計基準についても言及しており、SECに対し、現行の詳細ルールを基礎とした会計基準(a rules-based  financial reporting system)から、原則を基本とした会計基準(a principles-based financial reporting system)に変更することを検討し、1年以内に調査結果を両院に報告するよう規定している。国際会計基準(IAS⇒IFRS国際財務報告基準に改称されている)は、原則を基本とした会計基準となっている。特に、エンロンで問題となった特定目的会社(SPE)については、国際会計基準では「支配している場合は連結対象」としており、国際会計基準審議会(IASB)議長はIASではエンロン問題(米国会計基準では連結除外)は生じないと2002年2月14日に米上院のエンロン問題を取り扱っていた委員会(オクスリー委員長)で証言している(「IASB議長米上院でのスピーチ」参照)。

注62002年10月29日米国財務会計基準審議会(FASB)は、国際会計基準審議会(IASB)とグローバルな会計基準の統一に関して協働することで合意した。SEC速報、 IASB速報、 FASBとIASBの共同声明 欧州委員会速報 参照)
国際会計基準は、原則を基礎とした方法による(a principles-based approach)基準とされている。

注7:2002年12月16日、ユーロネクストEuronextは、透明性を高めるため@上場会社に2004年より国際会計基準(IFRS)で作成した財務諸表の開示を求める、A自国基準の場合は国際会計基準との差異調整の開示を求めると発表した。四半期報告書の開示も2004年となっている。(ニュース・リリース ネクストエコノミーとネクストプライムの取引区分について 参照)
ユーロネクストとは、2000年9月、パリ(フランス)、アムステルダム(オランダ)、ブラッセル(ベルギー)の3証券取引所が合併してできた取引所。後にリスボン(ポルトガル)証券取引所が参加した。国境を超えて統合するため取引所は株式会社化し上場している。(「取引所の株式会社化」 参照)

欧州連合(EU)は、2005年までに「すべての上場会社にIASを適用する」ことを決めている。上記の2005年とはその意味である。EUは、2004年5月1日には10カ国(キプロス、チェコ共和国、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア共和国、スロベニア)を加え25ヶ国となることが承認され、人口では四億五千万人の巨大市場となる。米国の2倍、日本の約4倍の規模。
2005年にIAS適用開始とは、IAS1号が比較情報(Comparative information)を開示することを要求していることから、前年度である2004年度の財務情報を開示することになる。2004年の財務情報を開示することは、12月決算の場合、前年度末の2003年12月31日現在の資産・負債・利益剰余金等を国際会計基準にしたがって測定・認識し確定しておく必要がある。
 IASBは、2002年8月12日、「表示した比較財務諸表(期首貸借対照表を含む)は、国際財務報告基準(IFRS⇔IAS)に準拠して同一の会計方針でなければならない。(パラグラフ7)」とした「国際財務報告基準(IFRS⇔IAS)の適用初年度の会計基準(ED1公開草案)」を公表し、10月末までにコメントを求めている。2003年には会計基準として承認されることを予定している。欧州のIAS適用初年度の日程に合わせて基準を整備しているものである。監査についても、期首残高である2003年12月31日の貸借対照表項目から対象となる。

米、英、カナダ、オーストラリアはIAS設定の主導的立場にある。商法・証券取引法・税法のトライアングル体制の中で制度的に受け入れられない日本の未承認とは異なる。日本の対応の現況は、金融庁所管の「企業会計審議会 議事録」および「企業会計基準委員会」参照。

日本の商法が基礎としたとされるドイツ商法は、2002年4月、ドイツ政府が、国際会計基準または米国会計基準を適用できるように商法改正案を議会に提出したと伝えている。(IAS Plus「ドイツ」参照)

2002年7月、コンサルタント会社マッキンゼーは、31カ国200の機関投資家にアンケート調査した結果、90%以上がグローバルで統一した会計基準による開示を要望しているとしている。調査報告書 プレス・リリース 参照

2002年3月6日金融庁は、「連結財務諸表規則」等を改正し米国SEC基準(米国会計基準)を公式に認めたが、国際会計基準については次のように回答しており認めていない。詳細は、金融庁の「パブリックコメント」をご覧ください。

一般からのコメント 金融庁のコメントに対する回答
連結財務諸表規則及び中間連結財務諸表規則の 改正により、米国SEC基準を認めることになり ましたが、ドイツが認めているように、いずれ認 めざるを得ない国際会計基準で作成された財務諸表も認めるべきではないか。  国際会計基準により作成された連結財務諸表の提出を証券取引法上認めるかどうかについては、 我が国において長い開示実績をもつ米国基準とは異なる面もあるため、今後の検討課題と考えてい ます。
改正案において、米国市場に上場後は、日本基 準での連結財務諸表の作成をしなくてもよいので しょうか。  SECに対し米国式連結財務諸表を登録してい る会社は、証券取引法上は、原則、米国式連結財務諸表を記載することをもって法の要請が満たさ れたことになるという趣旨です。
参考資料:
G A A P  C O N V E R G E N C E  2 0 0 2
一般に認められた会計基準(GAAP)に収斂 2002年

Appendix
Table 1
COUNTRIES SURVEYED IN GAAP CONVERGENCE 2002
一般に認められた会計基準(GAAP)に収斂 2002年 で調査した国
Argentina
Australia
Austria
Belgium
Brazil
Bulgaria
Canada
Chile
China
Cyprus
Czech Republic
Denmark
Egypt
Estonia
Finland
France
Germany
Greece
Hong Kong
Hungary
Iceland
India
Indonesia
Iran
Ireland
Israel
Italy
Japan
Kenya
Latvia
Lithuania
Luxembourg
Malaysia
Mexico
Netherlands
New Zealand
Norway
Pakistan
Peru
Philippines
Poland
Portugal
Romania
Russia
Saudi Arabia
Singapore
Slovakia
Slovenia
South Africa
South Korea
Spain
Sweden
Switzerland
Taiwan
Thailand
Tunisia
United Kingdom
United States
Venezuela
Source: GAAP Convergence 2002

Table 2
COUNTRIES THAT DO NOT CURRENTLY INTEND TO CONVERGE WITH IFRS
現在、国際財務報告基準(IFRS)に収斂するつもりのない国
Iceland Japan Saudi Arabia
Source: GAAP Convergence 2002

出展はインターネット上の下記のPDFファイルです。(2003年2月13日)
http://www.iasplus.com/resource/gaap2002.pdf(6大会計事務所の共同調査報告書”GAAP Convergence 2002 ”)

この報告書は、会計普及国際フォーラムIFAD、International Forum on Accountancy Development、メンバー及びオブザーバー)および国際的な事務所で紹介されている(各事務所のニュース 参照)。このような状況で日本の国際的な発言力を期待できるものか自明の理であろう。国際的な基準を使用しないためコーポレート・ガバナンスの面からも日本は評価が低い(「コーポレート・ガバナンス・・ヨーロッパの文脈(チャールズ・フェア氏筆)」の主要5カ国の国際比較 参照)。

日本の会計が孤立しているということは、日本企業はグローバルに事業を展開しており、近い将来、海外子会社が国際会計基準で作成した財務諸表で、日本の親会社・子会社は日本基準で作成した財務諸表を連結するという奇妙な連結財務諸表が作成されることになろう。奇妙な連結財務諸表とは、連結決算の「会計方針の統一」という命題を逸脱することになるからである。

資金調達の面からは、日本企業が欧州市場でファイナンスする場合、2005年以降は国際会計基準での開示を要求されるか、または、国際会計基準との差異調整表の開示を求められる(ユーロネクストが2004年から求めている)ことが予想されよう。そうなると、一企業の問題ではなく日本の会計制度の問題で、日本企業は機動的な資金調達ができなくなり国際的に大きなハンデを負う事となろう。

会計ビックバンは国際会計基準の一部導入

現在,国際会計基準は、下記の基準を設定している。そのうち、企業会計審議会(事務局は旧大蔵省・現金融庁)は、1997年6月から新たに,「連結財務諸表」「中間連結財務諸表」「キャッシュフロー計算書」「試験研究費の会計」「税効果会計」「退職給付の会計基準」および「金融商品:認識と測定」の7つの会計基準を導入した。下記の通り、国際会計基準の一部導入に止まっている。  

基準書番号 国際会計基準の表題 発効日 企業会計審議会の基準名 適用日付 注1)IASBとの
共同プロジェクト
IAS 1号 財務諸表の表示 1998年
IAS 2号 たな卸資産 1995年 @
IAS 3号 連結財務諸表−IAS 27号及び28号に改訂 廃止
IAS 4号 減価償却−IAS38号に改訂 廃止
IAS 5号 財務諸表に開示すべき情報−IAS 1号に改訂 廃止
IAS 6号 物価変動会計−IAS 15号に改訂 廃止
IAS 7号 キャッシュフロー計算書 1979年 連結キャッシュフロー計算書
の作成基準
2000年3月期
IAS 8号 期間損益、基本的な誤謬及び会計方針の変更 1979年
IAS 9号 研究開発費−IAS38号に改訂 廃止
IAS10号 貸借対照表日後の後発事象 1980年
IAS11号 工事契約 1980年
IAS12号 法人所得税 1981年 税効果会計に係る会計基準 2000年3月期
IAS13号 流動資産および流動負債−IAS1号に改訂 廃止
IAS14号 セグメント報告 1998年 A
IAS15号 物価変動の影響に関する情報 1983年
IAS16号 有形固定資産 1983年
IAS17号 リース会計 1984年
IAS18号 収入 1984年
IAS19号 従業員給付:事業主の退職給付の会計を含む 1985年 退職給付に係る会計基準 2001年3月期
IAS20号 政府補助金の会計と政府援助金の開示 1984年
IAS21号 外国為替の変動の影響 1985年
IAS22号 企業結合 1999年
IAS23号 借入コスト 1986年
IAS24号 関連当事者の開示 1986年 B
IAS25号 投資の会計−IAS39号及び40号に改訂 廃止
IAS26号 退職給付制度の会計と報告 1988年
IAS27号 連結財務諸表および子会社に対する投資の会計 1990年 連結財務諸表原則 2000年3月期 C
IAS28号 関連会社の会計 1990年 連結財務諸表原則 2000年3月期
IAS29号 超インフレ経済下の財務報告 1990年
IAS30号 銀行および類似金融機関の開示 1991年
IAS31号 ジョイントベンチャーの持分の財務報告 1992年
IAS32号 金融商品:開示内容と表示 1996年
IAS33号 一株あたり利益 1998年
IAS34号 中間財務諸表 1999年 中間連結財務諸表等の
作成基準
2001年3月期
IAS35号 廃止事業
会社分割や重要な事業部門の譲渡の
開示に関する会計基準)
1999年
IAS36号 資産の減損(Impairment of Assets) 1999年
IAS37号 引当金、偶発債務及び偶発資産 1999年
IAS38号 無形固定資産 1999年 研究開発費等に係る会計基準 2000年3月期
IAS39号 金融商品:認識及び測定 2001年 金融商品に係る会計基準 2001年3月期
IAS40号 投資不動産 2001年 D

なお、日本の「リース会計基準」(1993年)及び「外貨建換算基準」(1995年)は、内容的に国際会計基準とは相容れない基準であるが、外貨建換算基準については、1999年10月22日「外貨建取引等会計処理基準改訂」が公表された。改正後は、国際会計基準12号に準拠したものになっている。

また、固定資産の含み損失を会計処理すべきであるとして、企業会計審議会が1999年12月検討に入り2000年春に完成を目指していると報道している。これは、IAS36号「資産の減損」の導入の検討である。

1997年6月の「個別財務諸表中心主義から連結中心主義への変更」決定から、国際会計基準の一部導入したことから国際会計基準と比較が容易になった。それ以前は、日本の会計は秩序整然としたものはなく、商法、税法、企業会計審議会の企業会計原則や意見書、大蔵省の規則、日本公認会計士協会の実務指針を組み合わせたものが日本の会計であることから、国際会計基準とは単純に比較できなかった。

注1)IASB(国際会計基準審議会との共同プロジェクト(上記表の@〜D):
2005年3月9日と10日に、IASB議長デビット・トゥイディ氏一行が訪日し企業会計基準委員会(ASBJ)を訪問、共同プロジェクトの作業を開始した旨、IASPLUSは伝えている。日本側が検討したくない事項が沢山あることに注意すべき。
日本側が提示した最初の検討事項は、@たな卸資産の評価(IAS1号)、Aセグメント情報(IAS14号)、B関連当事者の開示(IAS24号)、C海外子会社の会計方針の統一(IAS27号)、D投資不動産(IAS40号)の5件のみで、すべて日本に会計基準としては存在しないもの。検討日程などは示されていないので結論がいつになるか不明。次の代表者の会議は9月にロンドンで会合を持つとしている。 (IASB3月11日のニュース <2005年1月25日、ASBJはNIKKEI NETに、検討する5項目を選定し既に公表していた> 参照)
セグメント情報(IAS14号)については、2005年1月の会合で、米国のSFAS131(マネジメント・アプローチ)で「経営者の検討と分析(MD&A)」と整合した基準に改正することが決定している。カナダも合意している。(新IAS14号の改正 参照)

なお、詳しくは「国際会計基準と日本の会計の相違点」を別途纏めてあります。

企業会計原則は、時代にそぐわなくなった

昭和24年(1949年)7月、経済安定本部企業会計制度対策調査会(現金融庁・企業会計審議会)中間報告として制定された「企業会計原則」の前文に、「企業会計原則は、企業会計の実務の中に慣習として発達したものの中から、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がその会計を処理するに当たって従わなければならない基準である。」としている。

この企業会計原則は、今もって現役である。その証拠に、最近作成されている「独立行政法人の会計基準」や、その他公益法人特殊法人などの会計基準は、この企業会計原則を基礎に作成されたり作成しようとしている。

日本の企業会計の実務では、有価証券は原価法で評価して事業上、利益が出なくなると含み益のある有価証券や土地を売却して利益を嵩上げしたり、退職給与引当金は、要支給額(支払要する額)の40%を引当ていた。レジェンド(警告文)参照

会計ビッグバンで、「適正表示」を目的とする国際会計基準から「金融商品の時価会計」、「退職給付の会計」、「税効果会計」、「キャッシュフロー計算書」、「連結財務諸表」などの会計基準が導入されたのである。これらの新たな会計基準の導入は、会計実務の中から慣習として発達したものではない。

会計基準は
、国際的には、適正表示のために考え出された研究・開発の成果であり、かつ、一般に認められた(generally accepted)ものである。国際的には、会計基準とは、実務の中で慣習として発達したものではなく、実務の慣習が適切でない場合に、より適正開示を行うための方法を開発(Development)し会計基準で設定して実務に導入しようとするものなのである。欧米の会計基準設定機関は、経済の変化に適切に対応できるように常設機関で調査・研究・検討を行っているのである。

50年以上前に制定された企業会計原則の考え方は、国際的なものとは180度異なっており、今や時代にそぐわないものとなっているのである。

国際的には、会計原則(Accounting Principles)という古い用語は現在使われていない。米国では財務会計基準(Financial Accounting Standards)であり、新たな国際会計基準審議会(IASB)が公表する基準を国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、IFRS)と称することになっている。

米国会計基準の生成と発展の概観

国際会計基準(IAS/IFRS)に多大な影響を及ぼした米国会計基準の変遷の歴史は次のようなものである。
1938年〜1939年 1939年〜1959年 1959年〜1973年 1973年〜現在に至る
会計手続委員会(CAP)
Committee on Accounting Procedures
会計調査公報(ARB)
Accounting Research Bulletins
会計原則審議会(APB)
Accounting Principales Board
財務会計基準審議会(FASB)
Financial Accounting Standards Board
1938年に米国公認会計士協会(AICPA、当時はAIA)の一機構として設立。会計基準の黎明期。 1939年に会計手続委員会の研究結果をARBとして公表し、1959年9月1日からのAPBに移管するまで続いた。

内容はARB43号に纏められ51号まで公表された。
中には、会計の基本的な部分(貸倒引当金など)や連結財務諸表、結合計算書など現在も生きている基準がある。
適用の強制力は弱かった。
1959年9月1日から、APBに改組し1973年設立のFASBに移管するまで会計基準を公表し続けた。

APB意見書は、1号から31号まで公表されている。

会計基準の確立期で、適用の強制力が高まる。

後にFASBで改正されたが、税効果会計、資金運用表、年金会計などが公表されている。
1973年より民間の独立機関として改組され現在に至る。

FASBは1号「外貨取引情報の開示」から154号「会計上の変更と誤謬の訂正」が公表されている。

2003年7月、FASBは1号から現在までに公表した基準書の原書をホームページから無償ダウンロードできるようにした。改正等はStatusに開示している。

2002年10月29日、財務会計基準審議会(FASB)は、国際会計基準審議会(IASB)とグローバルな会計基準の統一に関して協働することで合意した。(SEC速報欧州委員会速報 参照)

2007年11月7日、FASBは米国上場企業に改善された国際会計基準(IFRS)の適用をSECに提言した。(SECへのコメント 参照)

2009年7月1日、FASBは、FASB Accounting Standards Codification(会計基準法典)を創設して非政府の会計基準の唯一のものとなる。既存の会計基準にとって変わるが変更はない、としている。
現在数千ある基準を約90に纏める。2009年9月15日以降終了する事業年度より適用する。(FASB速報 ニュース 
FASB Accounting Standards Updates、ASU 参照)
参考:「"U.S. GAAP " Web Site」  「”US. GAAPにおける会計基準の適用順序(GAAP hierarychy・・FASB)”」 「SEC関連法規集・目次」「SECルール、規則等」「SECルール、規則及び主な証券法
2004年7月12日ライス大学ゼフ教授が「米国会計基準(US GAAP)の発展」(1932年〜2004年)と題して中国・北京で講演。時には、SECと見解の相違があったり、産業界、議会、上院・下院委員会の反対などに遭い、逆風の中でも会計基準を設定してきた経緯が簡潔に述べられている。会計基準設定主体(FASB)が独立性を重視しているのが分かる。(「米国会計基準の発展」参照)

会計基準統一の必要性は、1929年の株価暴落がきっかけとなった:

1929年
10月24日、ニューヨーク証券取引所の株価暴落に始まる世界恐慌時には、会計基準は存在しなかった。企業会計は混沌の中にあったことが、株価暴落の原因の一つとも言われた
1930年ジョージ・オリバー・メイ米国会計の父と言われる)を委員長とする米国公認会計士協会(AIA、現AICPA)の特別委員会は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の株式上場委員会と共同作業に着手し財務情報の開示の改善を目指した。1932年から1934年にかけてAIAとNYSEの両委員会の交換書簡で、AIAの特別委員会は、初めて「一般に認められた会計原則(Generally Accepted Accounting Principles)」の用語が使用され、基本的な五つの原則が明示された。
1933年、株式等の証券発行時の投資家保護を規定する「1933年証券法」が成立、1934年に株式等の証券流通に関する投資家保護に関する「1934年証券取引法」が成立。米国証券取引委員会(SEC)は、1934年証券取引法によって設置されたが、会計基準は民間の会計基準設定主体に任された。

1938年
には、AIAの委嘱を受けたサンダース、ハットフィールド・ムーアの3人の教授が纏めた「SHM会計原則」が公表された。第2次世界大戦後の日本の「企業会計原則」に多大の影響を与えたとされるものである。

一方、米国会計学会(AAA)の委嘱を受けてペイトン教授とリトルトン教授、1940年、共著「企業会計基準序説(An Introduction to Corporate Accounting Standards)」を出版し米国会計界に多大な影響を与えた。


1945年、第2次世界大戦が終結した。わが国の「企業会計原則」が制定された1949年当時は、日本が参考とした米国でも会計原則の確立に模索していた時代である(詳細は「戦後日本の会計の成立ち」参照)。つまり、当時米国の会計調査公報(ARB)は、実務指針に近く強制適用をしていなかった。その意味で、当時は、日本の「企業会計原則」と類似していた。

しかし、APBの時代になって、やっと会計基準として整理され強制適用が義務つけられるようになったのである。

なお、エンロン問題で傷ついた米国会計の信頼を回復すべく、米国公認会計士協会(AICPA)がまとめた「自己規制の歴史概要」が米国会計制度の参考となります。

1998年12月、完成した国際会計基準(IAS)は、米国の会計基準の集大成に近いものとなっている。
つまり、会計基準は「適正開示(Fair Presentation)」をするために新たに開発された基準であって、財務諸表利用者にいかに適正な情報を提供するか腐心しており、経済環境の変化に的確に対応するため民間の常設の会計基準設定主体で設定している。

国際的には、会計基準は、会計実務の中から慣習として発達したものではない。その意味で、わが国の「企業会計原則」は時代の要請(適正開示)に応えられず時代に取残されているといえる。

金融機関の不良債権問題が毎年大きく取扱われ一向に解決しない。その理由は、不況や担保としている土地の下落が挙げられるが、日本の会計にも一因があるのではないか。会計の基本となる企業会計原則は、慣習を重視し適正開示については触れていない(真実性の原則は何が真実かは触れていない)。つまり、慣習を重視する会計は他社との横並び会計処理を助長し、適正開示は二の次となる結果、先送りの会計思考が蔓延ることになる。個々の銀行の問題もあろうが、企業会計原則という制度上の問題もあろう。


従来の連結決算との違い

従来の連結決算は、注記による情報開示はほとんど行われていませんでした。新たな連結決算は、国際会計基準の一部導入により、連結財務諸表の注記による開示も必要となります。連結ベースの注記が必要となります(「国際会計基準の基礎・・IAS1号「財務諸表の表示」の紹介」及び「国際会計基準の事例」参照)。

例えば、税効果会計を例に取ると、次ぎのような事項が注記事項として開示を求められることになります。

項目 注記内容
1 繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳(注8)
2 税引前当期純利益又は税金等調整前当期純利益に対する法人税等(法人税等調整額を含む。)の比率と法定実効税率との間に重要な差異があるときは、当該差異の原因となった主要な項目の内訳
3 税率の変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正されたときは、その旨及び修正額
4 決算日後に税率の変更があった場合には、その内容及びその影響
(注8) 繰延税金資産の発生原因別の主な内訳の注記について
繰延税金資産の発生原因別の内訳を注記するに当たっては、繰延税金資産から控除された額(注5に係るもの)を併せて記載するものとする)
(注5) 繰延税金資産の計上について
繰延税金資産は、将来減算一時差異が解消されるときに課税所得を減少させ、税金負担額を軽減することができると認められる範囲内で計上するものとし、その範囲を超える額については控除しなければならない。

(注5)の表現は分かりにくいが、一時差異が将来の課税所得を減額しない場合は、一時差異とはならず、したがって、繰延税金資産として計上することはできないということです。

注記による開示ばかりでなく、税効果会計においては、税効果の回収可能性等は個別会社にて判定することになります。つまり、国内会社であれば、その会社にとって税効果がありかどうかを判定します。例えば、子会社が欠損金を出している場合、欠損金が将来の税金を減少させる効果があり一時差異と判定されれば、欠損金について税効果資産として計上できますが、将来に十分な利益が予想されない場合は一時差異とならないと判定されます。海外にある子会社の場合も同様に、原則、その国の税制による税効果を判定することになります。

税効果会計のような新たな会計基準を導入したことにより、キャッシュ・フロー計算書退職給与を含む年金会計金融商品の時価会計にも同様に注記事項を連結ベースで開示することが必要となります。

海外子会社はどうするか

日本企業の海外進出は既に多くの会社が行っており、海外実務に慣れ親しんでいます。海外の子会社は、現地の会計士による監査を受けているのが常識となっています。現地の会計士は、会計基準に準拠した注記を含む財務諸表に監査報告書を添付して代表取締役宛て交付します。監査済財務諸表には、会計基準にしたがって注記を含みます。

米国、英国等の国々は、税効果会計(注記を含む)、キャッシュフロー計算書等を適用しておりこれを連結すれば、日本での連結で特に追加資料を求めることはなくても連結決算はできるものと考えられます。

年度決算は、会計士の作成する財務諸表が利用できるのですが、中間決算では、「中間決算財務情報」をどのように入手するか重大な問題が生じます。連結に必要な正しい財務情報が入手できないという事態が起こります。

そこで、英文の「連結資料」が必要となります。英文の連結資料を入手しますが、通常、海外では税効果会計やキャッシュフロー計算書は会社の会計担当者はできないことが多く、会計士が作成しています。したがって、会計士のサービスに「連結資料」が会計基準に準拠して作成できているか見てもらうサービスがあります。一つは、「Review」と言い、会社が作った財務諸表に目を通して会計基準に準拠していないところを訂正してもらえるというサービスで、もう一つは「Compilation」と言い、会社から資料を提供して会計基準に準拠した財務諸表を作成してもらうサービスです。ともに、「監査」ではなりませんので費用はかさみません。なお、欧米では、「監査」は年度のみ意見を形成し、中間決算では確定しないものに監査意見の形成はありません。


いずれにしても、中間決算では「連結資料」の入手が必要となります。


国際会計基準を利用する方法もあります

米国・英国及び英連邦諸国以外の地域に子会社を持っている場合、特にアジアや中東などで会計基準がまちまちで不統一な場合があります。こうした場合、キャッシュフロー計算書、税効果会計等をどうするか悩みとなります。

一つの方法は、各国の会計事務所には国際会計基準に準拠した財務諸表に監査報告書を添付してもらうことができます。本国である日本で連結するには、米英からの監査済財務諸表と同様に、問題無く連結できることになります。

国際会計基準で作成された財務諸表は、国が異なっても、税効果会計等を含み統一した会計基準で作成されますので、中長期的に考えると賢い方法と思われます。

2000年5月17日、国際証券監督者国際機構(IOSCO)が国際会計基準(IAS)を承認したことにより、各国は国際会計基準導入へ加速すると予想されています。国際会計基準のグローバル化は、日本より諸外国の方が勝っているという現象が起きていますので、海外子会社での導入は日本より容易です。参考に「国際会計基準」「国際会計基準の基礎」「国際会計基準の事例」をご覧ください。


中間決算では、当然「連結資料」は必要となります。

最近は、国際会計基準(IFRS)が100カ国以上で認め、または導入していることで、国際会計基準のGAAPは一般(generally)からグローバル(globally)に認められた会計基準となりつつあり、IFRSを主要国子会社で適用できる"one-size-fits-all"な会計基準とする企業出現しています。

全面的に国際会計基準への転換も選択肢の一つ
1999年11月12日付け日本経済新聞に「場当たり的な会計改革」と題して、「日本の決算は信頼が置けない」といわれ、企業の実務家は自信喪失、と報じている。

また、日本の証券取引法で作成された財務諸表を基礎に英文財務諸表を作成すると、世界の会計とは異なる旨のレジェンド(警告文)を付すことになります。
日本の会計制度自体が不信感を抱かれているのである。企業にとっては、格付け評価は重要な事項である。信用を高めることで資金調達コストの低減をはかる。会計制度改革が不透明な以上、企業は格付け評価維持などの自己防衛策として、遅々として進まぬ国の会計制度改革を待たず、国際会計基準への全面転換も選択肢の一つになろう。現に、優良企業に限定されるが、米国会計基準で作成している会社は28社(加えて、日本電産がニューヨク証券取引所への上場を準備中)、国際会計基準で作成している会社8社(1社重複)があり、日本の会計制度の不信感を払拭している先進企業が既に存在する。国際会計基準が完成したことは、日本企業にとって信用を得るために自己防衛または企業イメージ向上のチャンス到来となろう。自己防衛できない企業にとっては、遅々として進まない会計制度改革の犠牲になるしかない、残念なことである。

なお、日本の会計と国際会計基準には相違点があります。興味のある方は、「日本の会計と国際会計基準の相違点」をご参照ください。
会計の大変革を断行しているドイツの状況
日経ビジネス2000年2月14日号には、「ドイツは一皮向けている・・市場主義へ企業の変身急」と題して、「新世紀のドイツで、上から(ドイツ版経団連会長が”革命家”となって大企業から)の大変革が始まったことを伝えている。先導したのは大企業経営者たちである。これにシュレーダー政権が応えて、官と民が歩調を合わせて50年に1度あるかないかの経済構造改革が行われているという。
ドイツは銀行が支配する構造であったが、株主文化(エクイティ・カルチャー)への大変化を図りつつあり、株主等に対する企業情報の開示に国際会計基準または米国会計基準を適用しつつあるというものである。例として、フランクフルト証券取引所のDAX30社(日本の日経平均に相当)のうち、27社(90%)が国際会計基準(IAS)または米国会計基準を適用するとしており、たった3社のみがドイツ会計基準のまま変更しないという状況を示している(「国際会計基準・・大変革のドイツの動向参照)。

ドイツの会計制度を基礎にしているという日本の会計制度(商法、証券取引法、税法の「トライアングル体制」)は、ついに、日本のみとなってしまったのである。

また、ベンチャー企業向け証券市場であるドイツのノイア・マルクト(Neuer Markt)フランスのヌーボー・マルシェ(Le Neuveau Marche)、欧州版NasdaqであるEASDAQなどの株式公開基準には、国際会計基準または米国会計基準で作成した財務諸表を要求している(「会計・税金・財務情報(ディスクロージャー)・・上場以外の株式公開」参照)。ドイツのノイア・マルクトは8兆円市場となって成功しており、上記DAX30銘柄の動向の背景となっているようだ。


新しい連結決算には「連結資料」の充実が不可欠となる


連結財務諸表を作成するには、国内・海外子会社及び関連会社からの注記事項を含む財務情報が必要となります。連結決算に使われる財務情報は商法計算書類では質・量・内容において不充分ですし、時間的制約(連結決算情報の公表時期が早まります)があるため、会社が独自に設計した「連結資料」を子会社等から入手する必要があります。詳細に付いては「連結財務諸表作成の基礎」をご覧ください。また「商法計算書類では連結決算はできない」をご覧ください。

簿記から会計へ

簿記と会計は違うと言えば驚くかもしれません。なにも奇を狙って言っているわけではありません。

簿記(Bookkeeping)とは、取引の仕訳をして補助元帳や総勘定元帳に記録し、試算表、貸借対照表及び損益計算書を作成することです。簿記とは、記録、分類、集計、作表することです。

会計(Accounting)とは、会計基準に準拠して適切に財務情報の開示を行うことです。

例えば、在庫を例にすると、商品を購入しすべてが販売されるなら問題はないが、在庫が残ってしまう場合、良品、不良品、過剰在庫、新製品の発売開始のため旧品となったものなどが混在している場合がある。購入時に取得原価で帳簿記録(簿記=Bookkeeping)しただけでは、在庫の状況は適切に表現したことにはならない。IAS2号「たな卸資産」によれば、たな卸資産は正味実現可能価額以下で貸借対照表に表示することになっているため、取得原価が正味実現可能価額を超過している損失は在庫の評価額から除外する必要がある。したがって、不良品、過剰在庫、旧品となった在庫の評価額を検討し評価損が生じているものは評価減を必要とする。

また、機械などの設備は、その設備で生産している製品が当初予想に反して販売不振となり生産中止に陥るケース、または、生産設備の生産能力が過大で一部機械が休止又は遊休設備となるケースがある。こうした場合、IAS36号「資産の減損」は、資産の回収可能価額まで評価減することを求めている。つまり、会計は企業の実態に即した状況を適切に示(適正表示=説明)すものである。取得時に原価で記録するのは簿記である。日本の原価主義は簿記に限りなく近く、適正表示を求める会計の目的から乖離している。

山一證券の飛ばし問題、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の不良債権問題は、取得原価主義を基礎とし、評価損の適時・的確な処理の遅れである。原価主義は、投資家に適正表示を提供してこなかったことにより損失を与えたのはもとより、経営者自身が自社の実態を知り得なかった可能性がある。なぜならば、明確な会計基準がなく含み損失が幾らあるか求められていないことや、含み損が分かっていても先送りできるできるからである。会計基準の不備は、投資家はもとより、自社の実態が分からず経営者にとっても大きな損失なのである。 経営者が自社の実態を的確に把握できなければ、監督官庁は当然実態が把握できるはずはない。すべてが不完全な会計基準から起きていること。

会計は、財務情報の開示(=説明)にあります。会計基準は、適切な情報開示を目的として設定されます。会計基準に従って財務情報を適切に開示する行為を会計と言います。財務報告(Financial Reporting)を行うのが会計です。account forは「説明する」という意味ですし、ウエブスターの辞書で、accountable(釈明する義務・責任がある)の意味を引くとexplainable(説明のつく)と出てきます。また、アカウンタビリティ(Accountability)を「説明責任」と訳しています。会計は説明(開示=報告)することにあります。

具体的な例を示すと,マイクロソフト社の損益計算書(「キャッシュフロー計算書の読み方」に掲載してあります。)の中で営業費用の中に、1998年に「仕掛技術の購入費(Acquired in-process technology)」と言う用語を用いて2億9千6百万ドル計上した旨を記載しています。これは、勘定科目とは言わず、説明なのです。開発途中の技術を購入し費用計上したことが分かります。キャッシュフロー計算書みは「仕掛技術の償却」として同一金額が表示されています。読者にわかりやすく表現して、情報開示しているのです。

財務諸表の注記事項も同様です。例えば,「税効果会計」では、会計処理の基準もありますが合せて注記による開示事項(説明)があります。税効果会計により税法と会計上の費用や収益の認識時点の相違を会計処理するものですが、税効果会計の結果、会計上法人税等の負担割合(税引前利益に対する税効果会計後の税金負担割合)と法定税率とに重要な相違がある場合に調整項目の開示が求められます。これは、注記による情報開示なのです。この情報開示は簿記ではなく会計ないしは財務報告なのです。 同様にキャッシュフロー計算書も情報開示です。キャッシュフロー計算書を作成するのに新たな帳簿が出現するかのような誤解をしている人がいますが、キャッシュフロー計算書を作成するために新たな帳簿が必要となるのではなく、簿記として記録している総勘定元帳や補助元帳に何らの変更があるのではなく、ワークシート上でキャッシュフロー計算書を作成して財務情報として開示する会計ないし財務報告なのです。

従来の日本の会計は簿記に限りなく近かったのでその区分が明かとなっていませんでした。それは、簿記で記録、分類、集計、作表したものを単純に開示していたに過ぎなかったからです。

1997年6月、大蔵省企業会計審議会が連結決算中心に方向転換しましたが、その趣旨はディスクロージャーの充実を謳っています。ディスクロージャーの充実の為に、キャッシュフロー計算書、中間連結財務諸表、税効果会計、試験研究費の会計、退職給付(企業年金)の会計、金融商品の時価会計を導入したのです。情報開示のためにそれぞれ簿記を超えた注記による開示が含まれることになったのです。これは、日本では非常に希薄であった情報開示の概念です。

帳簿付けをする人を帳簿記録人(ブックキーパー、Bookkeeper)といい、会計基準に準拠して財務報告まで行える人を会計士(アカウンタント、Accountant)といいます。米国会計基準は、適切な財務情報の開示を行うために120を超える個別会計基準があります。財務情報に関する情報開示の重要性がそうした高度な会計(キャッシュフロー計算書、税効果会計、企業年金の会計、金融商品の時価会計、研究開発費の会計など)を生み出しているのです。 また、それを支える公認会計士(Certified Public Accountnt, 通称CPAと称します)は、約33万人を超える人々を輩出しています。ちなみに日本の公認会計士は約1万2千人です。

簿記から会計および財務情報の開示の関係
監査基準
 ↓  
会計監査
信頼性の付与
財務諸表の利用者
簿記
帳簿記録
(Bookkeeping)
会計
財務情報の開示 
(Accounting)
監査済財務情報
(Financial Reporting)
投資家(株主、社債権者)
潜在的投資家、
金融機関、債権者、
仕入先、得意先ほか
税務当局、監督局
説明責任の実現
(Accountability)
↑  
「一般に認められた会計基準(GAAP)」
Generally Accepted Accounting Principles 
プロの分析情報提供
格付機関
会計基準設定機関
(下記参照)


証券アナリスト
コンサルタント
エコノミストほか
 
会計基準設定機関の国際比較及び設定の範囲
基準設定機関名 官民区分 対象とする会計基準
日本 企業会計審議会
(金融庁へ移管)
国家機関 上場会社等の証券取引法適用会社の会計基準を設定
企業会計基準委員会
(Accounting Standards Board, ASB)
民間機関 2001年8月に国際会計基準審議会(IASB)のメンバーになるべく創設された。
企業会計審議会との関係が不透明のままでスタート、名称を変えただけか?。
会計基準の開発・設定を行う機関(National Standard Setter)と解していましたが会計基準の設定という文字は見られません。 委員長のメッセージをご覧ください。
国際 国際会計基準審議会
IASB
民間機関 企業は無論のこと、企業に限定していない。例えば,企業年金基金の会計基準の設定,近い将来、保険会計など業界別の会計基準を設定予定
米国 財務会計基準審議会
FASB
民間機関 企業は無論のこと、企業に限定していない。例えば,企業年金基金の会計基準の設定,業界別の会計基準、非営利団体、地方自治体の会計基準(GASBで設定、FASBと区分しているが同様の機関)等の会計基準を設定している。

日本のみが,上場会社等を規制している証券取引法の枠の中で会計基準を設定しており,機関の名称に「企業」とあるように「企業」のみを対象とする会計基準を設定している。 公共法人(特殊法人を含む)、公益法人(認可法人を含む)、協同組合などは無論のこと、地方自治体の会計などは、企業会計審議会の会計基準の守備範囲を超えている。

日本の会計制度
税法 法人税法
商法 商法計算規定 会計基準の空白地帯
証券取引法 大蔵省(現、金融庁)
企業会計審議会の
企業会計原則等の
会計基準
対象企業等 上場会社等
株式会社
未公開会社
株式会社
有限会社
合名会社
合資会社
非営利法人(NPO法人)
公益法人(収益事業)
協同組合等
国及び地方自治体
公共法人(特殊法人
独立行政法人等)
公益法人等(認可法人等)
協同組合等(公益法人部分)
日本の会計制度は、証券取引法、商法、税法の三者が結びつき会計実務を行っているところから「会計のトライアングル体制」と言われます。しかしながら、上図をご覧の通り、トライアングル体制で行っている範囲は、上場会社を中心とした証券取引法適用会社のみで、上場していない会社は商法と税法のみですし,商法を適用しない協同組合等及び公益法人のうち収益事業は法人税法や設立した根拠法令に規定をおいている。法人税法は課税所得及び税金の計算のみで、財務報告(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等)としての機能は持っていない。地方自治体、公共法人(特殊法人を含む)等は全くの会計基準に関する空白地帯となっている。


日本以外の主要国は、基準設定機関がいかなる法律からも独立しており,独立・中立的な機関であるとともに、財務報告(情報開示)を必要とする会計単位全般の会計基準を取り扱っている(興味のある方は、別途「会計基準」のホームページをご覧ください)。

上記の通り,1997年6月、大蔵省(現、金融庁)企業会計審議会が「連結中心」に方向転換し、同時に、国際会計基準から新たな会計基準を導入したことは、グローバル・スタンダードへの道を歩み始めたものである。他の主要国のように,会計基準設定主体も独立し、中立的な機関に移せざるを得ないであろう。そうした場合は,会計基準の適用範囲は上場会社に止まらないことになる。

税法と会計

税法は租税原則を基礎に法定される。租税原則として有名なのは、アダム・スミスの租税原則で、1776年「国富論」のなかで、次の原則を打ち立てました。
@ 公平の原則(各人民は各自の能力にできるだけ比例して納税すべきである)
A 明確の原則(租税は、その支払時期、金額、方法が明確でなければならない)
B 便宜の原則(納税の方法や時期は、納税者にとって便利でなければならない)
C 最小徴税費の原則(徴税費はなるべく小額でなければならない)
という4つの租税原則です(田中二郎著「租税法」有斐閣)。200年を超えて現在でも有効な原則です。

その後、資本主義の発展に伴い租税を利用した租税政策(投資促進税制など)が加わりました。 課税の公平及び明確の原則により、通常、税法は現代会計の適正表示のための見積り計算を即時には認めず、より客観的な証拠を入手した時点で証拠を基礎に損金算入を認める。会計と税法との費用・損金等(または収益・益金等)の認識時点の相違を調整する会計として「税効果会計」が行われます。

連結納税制度と財務報告としての連結決算

2002年6月、参議院本会議において、「連結納税制度」の導入案が可決成立しました。2002年4月1日以降開始する事業年度から適用する、としている。当初2年間は2%の付加税が課せられることになっている。

税法としての連結納税制度と財務報告としての連結決算は、それぞれの目的が異なることから連結範囲が異なる。
@。法人税法は国内法であることから、海外の子会社は連結納税制度から除かれる。海外の子会社については、国際的な二重課税回避のための外国税額控除の制度が適用となる。
A。連結納税制度では、課税技術的なことから、持ち株比率が高い子会社が連結対象とされる。日本の場合は、100%所有の国内子会社に限定される。

したがって、財務報告としての連結決算とは別途、連結納税制度としての課税所得・連結納税額の計算が必要となります。連結納税制度のメリットは、一般的に、子会社の欠損金と親会社の所得とを相殺して納税することができることにある。

説明責任(Accountability)

企業が資金調達すれば投資家に対して企業財務の内容について開示(説明)を求められるのは当然のことです。投資家は投資リスクをもって投資しているのであるから、投資判断するだけの財務情報の提供を受けるのは当然です。企業側から見れば,企業の経営者は投資家に対して説明責任(Accountability)を負っています。

では、日本では説明責任が不充分であっても機能していたのはなぜか。間接金融を中心とした護送船団方式であり,土地本位制度が骨抜きにしてきたのです。金融機関が企業に貸し付けるのに、土地の担保を最重点にして、土地登記簿を見て貸し付け、企業財務を基礎にした与信は二の次にしてきたこと。金融機関の与信機能をもとに自己責任で貸すべきところ、他行が貸しているからと横並びで貸し付けていたため、企業財務を基礎に与信するという銀行本来の機能が発達しなかったのです。バブルはじけてみれば巨額な不良債権と地上げ途中の土地が残り、貸し渋りを招いた。間接金融中心で経済成長していたときは問題点が見過ごされてきたが,貸し渋りがおき経済が閉塞状況に陥ってやっと腰を上げはじめたのです。

では、直接金融にシフトするにはどうしたらよいか。当然のこととして、投資家が投資するために必要なのは、投資の判断に必要な企業の財務情報の開示にあります。上場企業ばかりでなく中小企業も含めて、企業の活動資金が回るようにするためには、投資家に対する企業財務の情報開示が基礎となります。企業財務の情報開示のルールが会計基準なのです。

そこで、1997年6月を境として、大蔵省企業会計審議会が連結中心主義に方向転換し、且つ、キャッシュフロー計算書を始めとする新たな会計基準の導入を図る必要性があったのです。現在は,証券取引法の枠に会計基準は設定されているが、市場経済の基礎である企業財務の情報開示は、上場会社等のみ適用される証券取引法の枠の中に止まらないのです。市場経済の基礎である会計基準は,証券取引法以外の企業にも必要となるものなので、将来は,いかなる法律にも中立的で独立した機関が設定することになります。なぜならば、資金調達する組織等は、上場会社など証券取引法適用会社だけでなく、それを超えた企業、組織及び団体が資金調達する必要があるからです。


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連結資料Excel版頒布

上記の「連結資料」の様式Excel 版(A4で45ページ、税効果会計、キャッシュフロー計算書、退職給付(年金)会計、金融商品の時価会計に対応しています)を10,000円でE−mailにて頒布しています。長年の実務経験を基礎にしたノウハウを提供してます。経理は理論が判るだけでは実務はできません。実務は理論を具体的な形にしなければならないのです。しかも誰にも分かる明快な形に具体化することです。

2008年4月から連結ベースで四半期報告書の開示が始まります。連結子会社から3ヵ月ごとの「連結資料」を入手して連結財務諸表を作成する必要があります。持分法適用関連会社からも持分法の損益計上をするため「連結資料」の入手が必要となります。四半期用の連結資料の場合は、その旨を明記してください。明記されない場合は、上記の年度の連結資料を送付します。料金は10,000円です。

なお、海外子会社等に関しては年度決算書が会計士の監査済み財務諸表を入手でき、連結に不足する追加資料を入手すればよいのですが、中間決算では現地の会計士は通常関与しません。そこで、中間の「英文連結資料」の入手が必要となります。
中間決算の「英文連結資料」の様式Excel版は、別途15,000円でE-mailにて頒布しています。

キャシュフロー計算書資料の入手、税効果会計の資料の入手、退職給付引当金の注記の資料入手を反映しています。なお、会社によって勘定科目等が区々ですが、自社の実態に即して修正し使用できるものと思います。

ご希望の方は、下記E-mailにてご注文ください。なお、入金確認後のE-mail送付となりますのでE-mailアドレスを併記してください。振込先は、みずほ銀行 新松戸支店 普通預金 口座番号 1577705 口座名義 横山明

日米双方の連結実務の豊富な経験を基礎にキーポントを上記に記しました。本格的な連結決算制度の体制確立に参考となれば幸いです。なお、企業に合わせ正確かつ効果的・効率的な連結決算体制の確立について支援しています。興味がありましたら、下記宛てご連絡ください。

横山会計事務所
公認会計士 横山 明

Tel 047-346-5214 Fax 047-346-9636
E-mail: yokoyama-a@hi-ho.ne.jp

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