キャッシュ・フロー計算書の作り方

「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準(平成10年3月13日公表)」に準拠して
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はじめに

大蔵省企業会計審議会は、平成10年(1998年)3月13日「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」を公表した。
適用は、連結財務諸表ばかりでなく、個別財務諸表にも対象とされ、中間財務諸表(連結・個別双方)にも適用されるとしている。
適用時期は、連結キャッシュ・フロー計算書は平成11年4月1日以後開始する事業年度(2000年3月決算)から措置するよう提言している。連結財務諸表を作成しない会社については、平成12年4月1日以後開始する中間会計期間から適用するよう提言している。
なお、新たな「連結財務諸表原則(平成9年6月6日付け)」は、平成10年4月1日以後開始する事業年度から実施し、平成11年4月1日以後開始する事業年度から本格的に実施されるよう措置するとしている。

実務指針は、日本公認会計士協会が関係者と協議の上適切に措置することが適当としている。

連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」の原文は、大蔵省のホームページから入手できます。

なお、ここに示しますキャッシュ・フロー計算書は、多くの企業が適用する「間接法」の作成方法を解説し、直接法は示していません。

なお、「連結キャッシュフロー計算書等の作成基準」は、国際会計基準書第7号「キャッシュ・フロー計算書(1992年改訂版)」とほぼ一致しています。例えば、間接法の場合、税金調整前利益より始め、受取利息・配当金、支払利息、法人所得税を支払額で示したり、「現金及び現金同等物」の内容を貸借対照表の科目との関連を開示させるなどはうりふたつです。

ただし、国際会計基準の貸借対照表は「現金及び現金同等物」の用語を使用しキャッシュフロー計算書と一致させることになりましたが、わが国の大蔵省令では貸借対照表に「現金及び現金同等物」の用語を使用することはできない規則となっています。

国際会計基準で連結財務諸表を作成しているマイクロソフト社のキャッシュ・フロー計算書(間接法)は純粋な米国基準で作成しており、日本の基準および国際会計基準より簡潔です。

なお、日本企業で既に作成され公表されているキャッシュフロー計算書は、下記のようになっています。いずれも簡潔にまとめています。

各社の
キャッシュ・フロー計算書を
見ることができます。
根拠基準 キャッシュ・フロー計算書の
開示法
コメント
富士通 日本基準 間接法 日本基準に準拠し、間接法により
税金調整前純利益より表示しています。
ソニー 米国会計基準 間接法 米国会計基準に準拠し、間接法により
純利益より表示しています。
本田技研 米国会計基準 間接法 米国会計基準に準拠し、間接法により
純利益より表示しています。
三菱UFJファイナンシャルグループ 米国会計基準 間接法 米国会計基準に準拠し、間接法により
純利益より表示しています。

米国では、従来の資金変動計算書(Fund Statement)から資金概念を変更して、財務会計基準書(SFAS)第95号「キャッシュ・フロー計算書(Statement of Cash Flows)」を設定し、1988年7月15日以後終了する事業年度より適用となった。95号が、直接法を奨励(encourages)したにもかかわらず結果は、調査した600社の内15社のみが直接法を適用したに過ぎなかった(AccountingTrends&Techniques)、としている。

米国基準の直接法は、顧客からの収入、仕入れ及び人件費支払い額等を、直接法で開示しても、損益計算書の純利益との調整表(間接法と同じもの)を開示することを求めています。国際会計基準及び日本の基準は、直接法の場合、米国基準が求めている損益計算書の利益との調整表の開示を求めていないため、損益計算書との関連が不明瞭となります。

金融機関のキャッシュ・フロー計算書

金融機関のキャッシュ・フロー計算書
なお、金融機関からの「金融機関のキャッシュ・フロー計算書」はどうなるのか、との問い合わせがありますが,間接法については、上記東京三菱銀行の米国基準によるキャッシュ・フロー計算書が参考となりますし,直接法については、国際会計基準第7号「キャッシュ・フロー計算書」の「付録2」に「金融機関のキャッシュ・フロー計算書(直接法)」の例示が示されており参考となります。日本のキャッシュフロー計算書は、国際会計基準の導入だからであります。日本の会計と国際会計基準の関係は、「国際会計基準と日本の会計の相違点」および「国際会計基準」を別途用意しています。興味のある方はご参照ください。

直接法と間接法の表示内容の違い

キャッシュフロー計算書は、「営業活動」「投資活動」「財務活動」の三つの区分に分けて表示しますが、「営業活動」区分の表示の仕方に「直接法」および「間接法」の二つの選択肢があります。

 米国会計基準では「直接法」を選択すると「間接法」の内容を注記することが求められますが、日本および国際会計基準は選択制をとり、「直接法」を選択した場合、間接法の注記による開示を求めていません。 従って,間接法の開示と直接法の開示の違いをよく知っていないと、求める数値が表示されていないとういう事態が起こります。

企業会計審議会の「キャッシュフロー計算書等の作成基準」に掲載の様式で、「営業活動によるキャッシュフロー」を比較してみましょう。

直接法 間接法
I.営業活動によるキャッシュフロー
営業収入  xxx
原材料又は商品の仕入支出 ―xxx
人件費支出  ―xxx
その他の営業支出 ―xxx
小計  xxx
利息及び配当金の受領額  xxx
利息の支払額 ―xxx
損害賠償金の支払額 ―xxx
………・・  xxx
法人税等の支払額  ―xxx
営業活動によるキャッシュフロー xxx
I.営業活動によるキャッシュフロー
税金等調整前当期純利益 xxx
減価償却費 xxx
連結調整勘定償却額 xxx
貸倒引当金の増加額 xxx
受取利息及び受取配当金 ―xxx
支払利息 xxx
為替差損  xxx
持分法による投資利益 ―xxx
有形固定資産売却益 ―xxx
損害賠償損失 xxx
売上債権の増加額 ―xxx
たな卸資産の減少額  xxx
仕入債務の減少額 ―xxx
……… xxx
小計 xxx
利息及び配当金の受領額 xxx
利息の支払額 ―xxx
損害賠償金の支払額 ―xxx
………・・ xxx
法人税等の支払額 ―xxx
営業活動によるキャッシュフロー xxx

「直接法」では営業収入、原材料又は商品の仕入支出、人件費支出およびその他の営業支出が表示され,「小計」が表示されます。

一方「間接法」では、損益計算書の税金等調整前当期純利益から始まり、発生主義会計の損益計算書から資金の流出および流入に関係無い項目を資金の流出・流入にするための調整が続き「小計」を表示します。

直接法および間接法の「小計」の金額は双方とも一致し、小計以下の表示および金額に相違はありません。

ご覧の通り,「直接法」では損益計算書のどの金額も表示されないところから、損益計算書との関連が不明となります。長所は、営業収入、原材料又は商品の仕入支出、人件費支出、その他の営業支出が開示されるということです。 一方の「間接法」は、損益計算書の利益から始まりますので、損益計算書との関連が明らかになります。また、資金の流出に関係しない減価償却費や貸倒引当金の繰入額が表示されます。 どちらの方法を選択するかは企業の自由です。しかしながら,読者は、双方の開示内容を知っていないと、期待する数値が表示していないことに疑念を持つ可能性があります。

キャッシュ・フロー計算書の歴史

1963年、米国会計基準委員会意見書(APB Opinion)第3号「資金源泉運用表(The statement of source and application of funds・・通称 Funds Statement)」により、資金の源泉および運用を示した表を求めたが強制はしませんでした。また、資金概念も運転資金(流動資産から流動負債を控除した額)より広い概念を採用し、有価証券の発行により固定資産を取得する非金銭取引も含めるべきとしていました。

1971年3月、会計基準委員会は、意見書(APB Opinion)第19号「財政状態変動の報告(Reporting changes in financial position)」を公表し、貸借対照表及び損益計算書と同様に基本財務諸表の一部を構成し、欠くことのできない基本財務諸表であるとしました。名称を,財政状態変動表(Statement of Changes in Financial Position)と改められ基本財務諸表の一つになりました。

1987年、財務会計基準委員会(FASB)は、財務会計基準書(SFAS)第95号「キャッシュ・フロー計算書」を公表し、従来の財政状態変動表の資金概念をより経営実態に則した「現金及び現金同等物」に変更し、1988年7月15日以後終了する事業年度より適用が強制されています。

国際会計基準(IAS)第7号「(旧)財政状態変動表」は、基本的には米国の意見書(APB Opinion)第19号と同様のもので1979年1月1日以後に開始する事業年度から適用とされていたが、米国で財務会計基準書(SFAS)第95号「キャッシュ・フロー計算書」により資金概念を変更したことで、米国会計基準同様に「現金及び現金同等物」を資金概念として一致させ名称もキャッシュ・フロー計算書とした。米国基準と若干異なる。米国基準の間接法が純利益から開示されるが、国際会計基準は税引前利益から開示することを求めている。開示内容には大きな違いはない。米国基準でも法人所得税、支払利息等の支払い額は注記による開示が求められているのと、国際会計基準は計算書上に開示されますので、実質的な違いはありません。

日本の基準は、国際会計基準第7号「キャッシュ・フロー計算書」に類似しています。なお、「国際会計基準」および「国際会計基準と日本の会計の相違点」を用意してます。興味のある方はご参照ください。

未だ「商法(会社法)」の基本財務諸表となっておおらず
会社法(商法)の計算書類
及び連結計算書類
国際基準の財務諸表 主要な相違点
(1)計算書類の体系:
・貸借対照表
・損益計算書
・利益処分案

2005年会社法改正で株主資本等変動
計算書
が加えられ、利益処分又は損失
処理については会社法上規定しないこと
になった。(06年4月以降の法施行以後)


2006年2月7日法務省が公布した、
会社計算規則」第91条個別計算書類
・貸借対照表(会社法435条2項)
・損益計算書(会社法435条2項)
・株主資本等変動計算書
・個別注記表
第93条連結計算書類 参照
(1)財務諸表の体系:
・貸借対照表
・損益計算書
・株主持分変動計算書
・キャッシュフロー計算書
・説明的注記


国際会計基準」参照
商法では、株主持分変動計算書、キャッシュ・フロー計算書
などの基本財務諸表はなく、注記が貧弱。
国際基準に利益処分案という計算書は存在しない。
商法第281条第1項の附属明細書は開示書類では
なく株主の手許には届かない。

2006年5月施行の会社法及び会社計算規則
(平成18年法務省令第13号)への対応から

「附属明細書」の記載内容が大幅に削減された
日本公認会計士協会「附属明細書のひな型」
(草案)
(2006年4月17日)参照

商法が配当利益の計算を重視していると主張している
ことから、キャッシュ・フロー計算書の開示をしないのは
論理的矛盾とする国際会計からの視点がある。

連結とキャッシュフロー計算書作成の関係


連結キャッシュフロー計算書は、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結剰余金計算書が完成した後に作成します。ただし、連結キャッシュフロー計算書の資金の流出及び流入の内容は、連結ベースで作成するため、子会社から資金の流出及び流入の明細を入手しておく必要があります。連結財務諸表及び連結キャッシュフロー計算書作成には「連結資料」が重要な資料になります。これを怠ると、タイムリーで正確な連結キャッシュフロー計算書及び連結財務諸表は作成できません。

連結作業は、通常、次のような手順で行いますが、「連結資料」が正確で十分な情報を提供していて初めて効率的な連結作業となります。

@ 連結資料の入手⇒ A 連結資料のチェック B 連結資料の集計・仕訳作成(試算表集計、投資と資本の消去資料の集計・仕訳作成、少数株主持分の集計・仕訳作成、連結会社間取引の消去の集計・仕訳作成、連結会社間債権債務の消去・仕訳作成、連結会社間取引の未実現利益の集計・仕訳作成、連結会社間債権消去に伴う貸倒引当金の戻入仕訳作成、持分法の集計・仕訳作成、税効果会計の集計・仕訳作成、その他連結修正すべき事項の集計・仕訳作成、キャッシュフロー計算書作成資料の集計、税効果会計・退職給付の会計・債務保証等の偶発事象・セグメント情報等の注記事項の集計等) C 連結精算表の完成 D 連結キャッシュフロー計算書の作成⇒ E 連結財務諸表の注記事項の作成 F 連結財務諸表・キャッシュフロー計算書・注記事項の期間比較等により分析し正確性を確かめる G 役員への報告

連結キャッシュフロー計算書の作成方法は下記の通り二つの方法があると紹介しているようですが、ここに示したキャッシュフロー計算書の作り方は実務的方法を示したものです。

1 理論的方法 親会社、連結子会社それぞれ個別のキャッシュフロー計算書を作成して、貸借対照表・損益計算書・剰余金計算書に関する通常の連結修正仕訳を反映して、かつ、連結会社間のキャッシュフローを相殺して連結キャッシュフロー計算書を作成する方法。
ただし、この方法は机上の理論で、連結修正仕訳を反映するのに複雑となって実務的と言い難く、注意を要するところです。例えば、たな卸資産の未実現利益の消去は、期末たな卸資産、売上原価、期首剰余金(=前期末たな卸資産)を修正しますが、連結キャッシュフロー計算書を作成する上でこれら連結修正の反映が極度に複雑となります。
2 実務的方法 連結貸借対照表、連結損益計算書、連結剰余金計算書を作成後、連結キャッシュフロー計算書を作成する方法。

理論的方法は、連結グループ全体が個別キャッシュフロー計算書を正しく作成できることが前提となります。連結するには、通常の連結修正(投資と資本の消去、連結会社間の債権債務の消去、未実現利益の消去など)を反映させ、且つ、キャッシュフローの連結会社間を相殺消去することが必要となります。連結子会社の数が極めて少ない場合には適用できますが,正確性に疑問が残ること、かつ、作成時間がかかることがネックとなります。理論イコール実務ではないということです。

実務的方法は、作成時間が少なくて済む、正確性が確保される、連結子会社の数が増えても簡単に対応できる、等の利点があります。ちなみに、米国基準でSECへ提出している日本企業は数百社の子会社を連結していますが、実務的法を採用しています。
なお、連結決算とキャッシュフロー計算書の作成の関係は「連結財務諸表作成の基礎」に詳しく記載してますので参照してください。

わが国が基礎とした国際会計基準(IAS)第7号「キャッシュ・フロー計算書」は、米国の財務会計基準(SFAS)第95号「キャッシュ・フロー計算書」に基礎があります。米国では、長い歴史をもっており、会計基準意見書(APB Opinon)第19号「資金変動計算書」が1971年9月30日以後終了する事業年度から適用され、1987年11月、資金概念を「現金及び現金同等物」に変更してSFAS第95号となり、国際会計基準第7号の基礎となっています。米国には長い歴史があることが第一点。第二点に、実務経験豊富な会計人が多くいるとうことです。ちなみに、米国の会計士は、現在33万人、内約半数を超える会計士(最低数十社の監査実務経験あり)が企業に従事しており、会計知識・経験をもった人材が企業内にいて精度の高い財務諸表を作成できる体制があるということです。
こうした、長い歴史と、人的資源を基礎にすれば、子会社を含めて正確なキャッシュ・フロー計算書を作成する可能はあるが、わが国では、知識・経験、人的資源の不足している現状では、子会社にキャッシュフロー計算書を作成してもらうのは、段階的に適用していくことになろう。たとえば、重要性の高い子会社には作成してもらうというようにである。

キャッシュ・フロー計算書の作成頻度


キャッシュ・フロー計算書は、年度連結決算ばかりでなく単独財務諸表の一つに加えられます。また、年度ばかりでなく連結及び単独の中間決算でも作成が要求されます。

キャッシュ・フロー計算書で何をどのように開示するのか(間接法の場合)

キャッシュ・フロー計算書は、資金の流入及び流出を、「営業活動」、「投資活動」及び「財務活動」の三つに区分して表示します。

「営業活動区分」の表示の方法には、直接法と間接法があります。

直接法は、営業収入、原材料又は商品の仕入支出、その他の営業支出を開示する方法(上記参照)ですが、間接法は損益計算書の税引前利益(米国基準は純利益)から開示し資金の流出を伴わない減価償却費、貸倒引当金の繰入額等を加算し、有形固定資産売却益等を減算し、流動資産・負債のうち投資または財務活動に係るものを除いた純増減額を加減算して営業活動から得た又は使用したキャッシュを示すものです。

財務活動区分及び投資活動区分は、直接法及び間接法いずれも同じに表示されます。

(1) 間接法は、損益計算書の税引前当期純利益から始まり損益計算書と一致している。
損益計算書の税引前当期純利益(または損失)からはじめ、キャシュフローへの調整が表示されます。 損益計算書の発生主義は、減価償却費の計上,貸倒引当金の計上、売上を出荷時点で計上、材料・商品仕入れの検収時点での計上、利息の期間計算による計上、法人税等の計算による計上などです。 発生主義会計の利益から表示していますので、これをキャッシュ・フローに表現するために調整が必要となります。
(2) 間接法の調整項目には発生主義会計からキャシュ・フローへの調整が表示される。
発生主義会計をキャッシュ・フローに調整する項目は、減価償却費、貸倒引当金の繰入、固定資産の売却損益,売掛金や買掛金の純増減、その他流動資産負債の純増減、受取利息、受取配当金、支払利息、法人税等などです。

減価償却費、貸倒引当金の繰入額は資金の流出を伴わない費用ですから加算項目として表示されます。

固定資産や投資有価証券の売却益(損)を減算調整(加算調整)しますが、キャッシュ・フローでは、損益計算ではなく売却代金で表示されるためです。売却代金は投資活動に表示されます。 売却損益を分解すると次ぎのようになります。
          売却代金入金−帳簿価額(累計減価償却額を控除した後の金額)=売却損益
損益計算書には、売却損益のみが表示されます。 一方、キャシュ・フロー計算書は、売却損益を戻入することで、営業活動のキャッシュ・フロー合計を正しく修正するための表示をすると同時に、売却代金入金を投資活動の区分に表示されます。

 次ぎに,財務活動及び投資活動に関係無い流動資産及び流動負債の期首残高と期末残高の純増減額を加算減算します。

資産である売掛金を例に取ると、商品・製品を出荷したときに売上計上しています。これを、キャッシュ・フローに修正する必要があります。つまり現金の流入に修正する必要があります。期首の売掛残高は前期末にはキャッシュの流入が無かったことを示し、当期に流入があったものとします。当期末残高は当期にキャッシュの流入が無かったものです。当期末売掛残高が増加したとしますと、結果として、増加部分だけキャッシュの流入がなかったのですから、発生主義会計の損益計算書の利益から減算調整することになります。反対に、前期末残高より当期末残高が減少しているならば,キャッシュの流入があったのですから、加算調整することになります。 また、資産である在庫を例にしますと、期首残高より期末残高が多い場合は減算調整となり、減少している場合は、加算調整となります。

一方,、負債である買掛金は、期首残高より期末残高が多く純増している場合は,支払いをしていない部分の増加があるので加算調整します。減少している場合は当期の支払いがあったので減算調整します。

受取利息や受取配当金及び支払利息は、発生主義で計上した受取利息、受取配当金を戻入(減算調整)をして新たに現金支払額を表示します,支払利息は発生主義で計上した額を戻入(加算調整)し新たに利息支払額を表示します。法人税等は直接支払額を表示します。

間接法による営業活動のキャッシュ・フロー合計は、上記調整項目を加減算して算出されます。

当然のこととして、このキャッシュ・フロー合計額がプラスで多ければキャッシュ・フローの内容は良いことを示してます。
(3) 投資活動のキャッシュ・フロー
投資活動のキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出、売却による収入、投資有価証券の取得による支出、売却による収入など投資活動による資金の流出・流入を開示します。

投資活動のキャッシュ・フローの代表的な項目はなんと言っても、有形固定資産の取得です。つまり設備投資額です。特に製造会社においては、工場の生産能力を増強したり、省力化投資などを測定する重要な数値です。財務活動の資金調達が主に設備投資額に関連しますので、投資額の大きさは注目すべき点です。

時には、固定資産を売却する場合がありますが、土地建物などの売却代金がこの区分に表示することになっています。また、純然たる投資及び有価証券等取得・売却や短期投資の純増減額がこの区分に表示されます。
(4) 財務活動のキャッシュ・フロー
財務活動のキャッシュ・フローは、長期借入金の新規借入額・返済額、社債発行額・償還額、新株式発行額、配当金の支払額など財務活動に係る項目が表示されます。ただし、短期借入金等の短期資金に関しては借入総額及び返済額を両建てで示す場合と、期首と期末の純増減額で示す場合があり、いずれも認められています。

財務活動区分の差引合計が示されますが、この合計がプラスであればよいというものでもなくマイナスが悪いというわけではありません。財務活動はそれ単独では機能しているものではなく、投資活動や営業活動資金のための資金調達などがあり、資金調達の使用目的は投資活動、営業活動等などの項目を見ながら総合して判断することになります。
(5) すべてが表示されるものではない。
上記のように企業活動を、営業活動、投資活動、財務活動区分に表示しますが、限られたスペース(例えばA4の用紙)でキャシュ・フローを表現しますので、簡潔明瞭にするために、僅少なキャッシュ・フローを表示することはありません。

詳細過ぎると読者にとって却って見づらく読みにくくなってしまいます。また、簡潔過ぎて判断できないという欠陥をなくす努力をして判りやすい計算書を作成します。そこで、会計基準では重要性の無いものは、"その他"にまとめて表示してもよいことになっています。これを会計基準では"重要性の原則"といい、世界基準となっています。

例えば,ある企業にとっては、役員賞与や自己株式など表示するほどの重要な金額でないため"その他"に含めて表示しています。ただし、役員賞与は利益剰余金計算書の利益処分に開示されますので情報は入手できます。
(6) 「現金及び現金同等物」の期末残高は貸借対照表と一致する。
現金及び現金同等物は、期末貸借対照表の現金及び現金同等物と一致します。当然ですが,前期末の残高は前期末の残高と一致します。

日本の場合、注意すべき点があります。大蔵省の省令によれば、連結貸借対照表の様式には、「現金及び現金同等物」の用語を使ってはならないことになっています。そこで、キャッシュ・フロー計算書で使用している「現金及び現金同等物」の期末残高の内容を注記し、貸借対照表との関連を明らかにすることを求めています。

ちなみに、国際会計基準及び米国会計基準では、貸借対照表に「現金及び現金同等物」の用語を使用するようになっていますので,キャシュ・フロー計算書との関連が一目瞭然となっています。

キャッシュ・フロー計算書とは,一時点である期首の貸借対照表に示された(実在していた)現金及び現金同等物が、当期(期間)にどのような資金の流入及び流出(キャッシュ・フロー)があって当期末の残高になったかを簡潔明瞭に情報開示するものです。


作成資料

間接法の作成資料は、連結貸借対照表当期末と前期末の2期分と当期の連結損益計算書および利益剰余金計算書を基礎とし、非流動項目の期中増減明細から、キャッシュ・フロー計算書ワークシートに修正仕訳を行い作成します。


連結貸借対照表
2011年
3月31日現在
2012年
3月31日現在
現金及び現金同等物(下記の注記1参照) 300 320
有価証券 200 220
売掛金 350 390
貸倒引当金 -3 -4
たな卸資産 230 250
その他の流動資産 50 30
建物、他 500 610
減価償却累計額 -300 -350
土地 300 300
無形固定資産 50 60
投資有価証券 70 100
保証金・敷金 83 81
停滞債権 200 150
貸倒引当金 -100 -110
連結調整勘定(下記の注記2参照) 60 48
資産合計 1,990 2,095
短期借入金 170 100
一年内返済長期借入 30 20
買掛金 300 280
未払金 252 233
未払法人税等 50 60
長期借入金 300 400
退職給与引当金 250 260
少数株主持分 20 30
資本金 250 300
資本準備金 250 300
連結剰余金 130 120
為替換算調整勘定(下記の注記3参照) -10 -5
自己株式 -2 -3
負債・資本合計 1,990 2,095

注記1:現金及び現金同等物

企業会計審議会の新しい「連結財務諸表原則(平成9年6月6日)」には、「現金及び現金同等物」の用語は明示されておらず、貸借対照表で表示できるか定かではないが、キャッシュフロー計算書の作成の便宜上使用しました。

大蔵省の連結財務諸表規則(1998年2月20日付け)の様式一号(連結貸借対照表)によれば、「現金及び現金同等物」の用語を用いて貸借対照表に表示できるようになってはいません。

ちなみに、1997年8月に公表されました国際会計基準第1号「財務諸表の表示(1997年改訂版)」では、貸借対照表に「現金及び現金同等物」の用語で表示する様式が例示されており、直接キャッシュフロー計算書に参照できるようになってます。海外子会社の監査済財務諸表(米国や英連邦諸国の会計基準、国際会計基準)の貸借対照表は、「Cash and cash equivalents(現金及び現金同等物)」の用語で表示されている。日本の連結貸借対照表作成の為に「現金・預金」「有価証券」に区分修正する必要が生ずることになる。

1998年3月13日企業会計審議会が公表した「連結キャッシュフロー計算書等の作成基準」(注2)現金同等物について、によれば、「現金同等物には、例えば、取得日から満期日又は償還日までの期間が3ヶ月以内の短期投資である定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパー、売戻し条件付現先、公社債投資信託が含まれる。」としています。

現金及び現金同等物」は、国際会計基準及び米国基準では、現金・預金のうち期日が3ヶ月を超える定期預金は短期投資となり除外され、有価証券などに含まれるている期日が3ヶ月以内の現先などを含むものです。国際会計基準及び米国基準と一致しているものと考えられます。

注記2:連結調整勘定⇒無形固定資産の「のれん」に統一された。(2006年4月1以降)

企業会計審議会の新しい「連結財務諸表原則(平成9年6月6日)」には、連結調整勘定の貸借対照表の表示について明示していませんが、大蔵省の連結財務諸表規則(平成10年2月20日)の様式一号によれば、連結調整勘定は無形固定資産に含まれることになりました。

注記3:為替換算調整勘定

企業会計審議会は、「外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書(平成11年10月22日)」を公表し在外子会社等の財務諸表項目の換算から生じた換算調整勘定は貸借対照表の資本の部に記載すると変更しました。この改訂により、国際会計基準と一致しました。この変更は、平成12年4月1日以降開始する事業年度から適用し、早期適用も妨げないとしている。

連結損益計算書および利益剰余金計算書
2012年3月31日終了の一年間 2012年
売上高 1,121
売上原価 654
売上総利益 467
販売費及び一般管理費(下記の注記1参照) 234
営業利益 233
営業外収益:
受取利息 17
受取配当金 11
持分法による投資利益 28
固定資産売却益 39
小計 95
営業外費用:
支払利息 26
為替差損 12
その他 69
小計 107
税金調整前利益 221
法人税、住民税及び事業税 106
少数株主利益前利益 115
少数株主利益前利益(下記の注記2参照) 15
当期純利益 100
連結剰余金期首残高 130
利益処分ー配当金 -100
利益処分ー役員賞与 -10
連結剰余金期末残高 120

注記1:連結調整勘定償却

新しい「連結財務諸表原則」の求めるところにしたがい、連結調整勘定の償却費は販売費および一般管理費に、持分法の投資損益は営業外に計上しています。法人税等は、事業税を含み実効税率48%で示しています。


注記2:少数株主利益

企業会計審議会の新しい「連結財務諸表原則(平成9年6月6日)」には、少数株主利益の表示方法は明示していませんが、大蔵省の連結財務諸表規則(平成10年2月20日)の様式二号(連結損益計算書)によれば、少数株主利益は法人税、住民税及び事業税の次に表示することとなり、少数株主利益前の利益を表示しなくてよいことになっています。


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キャッシュ・フロー計算書ワークシート


2011年
3月31日
現在
2012年
3月31日
現在
増減




借方




貸方 消去残高
現金及び現金同等物 300 320 20 300 320 0
有価証券 200 220 20 31 20 0
売掛金 350 390 40 32 40 0
貸倒引当金 -3 -4 -1 19 1 0
たな卸資産 230 250 20 33 20 0
その他の流動資産 50 30 -20 25 26 26 19 0
23 22 23 17
34 8
建物、他 500 610 110 11 50 10 160 0
減価償却累計額 -300 -350 -50 80 11 30 0
土地 300 300 0 0
無形固定資産 50 60 10 35 10 0
投資有価証券 70 100 30 16 28 0
17 2
保証金・敷金 83 81 -2 36 2 0
停滞債権 200 150 -50 20 50 0
貸倒引当金 -100 -110 -10 19 60 20 50 0
連結調整勘定 (注3 60 48 -12 21 12 0
資産合計 1,990 2,095
短期借入金 170 100 -70 15 70 0
一年内返済長期借入 30 20 -10 14 20 13 30 0
買掛金 300 280 -20 29 0 30 20 0
未払金 252 233 -19 37 19 0
未払法人税等 50 60 10 6 106 7 96 0
長期借入金 300 400 100 12 120 14 20 0
退職給与引当金 250 260 10 27 30 28 20 0
少数株主持分 20 30 10 4 15 5 5 0
資本金 250 300 50 18 50 0
資本準備金 250 300 50 18 50 0
連結剰余金 130 120 -10 1 221 2 100 0
3 10
4 15
6 106
為替換算調整勘定 -10 -5 5 22 5 0
自己株式 -2 -3 -1 8 1 0
負債・資本合計 1,990 2,095
資金の 資金の キャッシュ
キャッシュ・フロー計算書 流出 留保 フロー
T.営業活動によるキャッシュ・フロー:
税金調整前当期純利益 1 221 221
減価償却費 80 80
連結調整勘定償却額 21 12 12
貸倒引当金の繰入れ額 19 61 61
退職給与引当金の繰入れ 27 30 30
退職金の支払 28 20 -20
役員賞与の支払 3 10 -10
受取利息及び受取配当金 23 17 -28
24 11
支払利息 25 26 26
為替差損 (注2 29 0 0
持分法による投資利益 16 28 -28
有形固定資産売却益 11 39 -39
流動資産および負債の増減額: 0
売掛金の増加額 32 40 -40
たな卸資産の増加額 33 20 -20
その他の流動資産の減少額 34 8 8
買掛金の減少額 30 20 -20
未払金の減少額 37 19 -19
小計 214
利息及び配当金の受取額 23 22 33
24 11
利息の支払額 26 19 -19
法人税等の支払額 7 96 -96
営業活動によるキャッシュ・フロー留保額 132
U.投資活動によるキャッシュ・フロー:
有価証券の取得による支出 31 20 -20
投資有価証券の取得による支出 17 2 -2
有形固定資産の取得による支出(注1 10 160 -160
有形固定資産の売却による収入 11 59 59
無形固定資産(借地権)の取得 35 10 -10
保証金・敷金の解約による収入 36 2 2
投資活動によるキャッシュフローの使用額 -131
V. 財務活動によるキャッシュ・フロー:
短期借入金の減少額 15 70 -70
長期借入金の返済 13 30 -30
長期借入金の新規借入 12 120 120
公募増資 18 100 100
自己株式の取得 8 1 -1
親会社による配当金の支払 2 100 -100
少数株主持分への配当金の支払 5 5 -5
財務活動によるキャッシュ・フローの留保額 14
W.現金及び現金同等物に係る換算差額 22 5 5
-----
X.現金及び現金同等物の増加額 20
Y.現金及び現金同等物の期首残高 300 300
-----
Z.現金及び現金同等物の期末残高 320 320
=====
----- -----
仕訳合計 2,285 2,285
===== =====

注1
セイグメント情報に注記される「資本的支出(Capital Expenditure)」は、特別な事情がない限り、有形固定資産の取得額(設備投資額)と一致します。
海外で社債や株式を公募する際に英文目論見書に記載するCapital Expenditure(設備投資額)はこの数値を使用します。キャッシュ・フロー計算書に表示される設備投資額が、目論見書の設備投資額と差異がある場合は証券会社側の弁護士から質問されることがあります。

注2:為替差損
大蔵省企業会計審議会の平成10年3月に公表した「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準(以下"作成基準”)」の注解7「連結キャッシュフロー計算書」の様式について、間接法の様式2に「為替差損」を表示しているが、作成基準ではその内容について規定していません。
日本公認会計士協会の平成10年6月8日に公表した「連結財務諸表におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」16項によれば、「税金等調整前当期純利益に対する加算項目として為替差損が例示されているが、この為替差損(益)は、損益計算書において計上された為替差損(益)のうち、原則として、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の小計欄以下の各項目又は「営業活動によるキャッシュ・フロー」以外の格表示区分に記載される取引に係る為替差損(益)である。」としています。
損益計算書の為替差損益とキャッシュ・フロー計算書の為替差損益が異なって表示され読者を混乱させる恐れがありますが、日本公認会計士協会の実務指針によれば、買掛金(営業活動)から発生した為替差損(益)は除外されることになります。外貨建社債や借入金などの為替差損益が該当することになります。

注3:連結調整勘定⇒無形固定資産の「のれん」に統一された。(2006年4月1以降)


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修正仕訳と仕訳の基礎資料

1.税金調整前当期純利益・・損益計算書より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
連結剰余金 221 税金調整前当期純利益 221


2.親会社の配当金支払・・剰余金計算書より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
親会社による配当金の支払 100 連結剰余金 100


3.役員賞与・・剰余金計算書より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
役員賞与の支払 10 連結剰余金 10

4.と 5.少数株主持分・・損益計算書および期中増減明細より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
少数株主持分 15 連結剰余金 15
少数株主持分への配当金の支払 少数株主持分


少数株主持分の増減明細
資本金 資本準備金 剰余金 合計
期首残高 8 8 4 20
支払配当 -5 -5
当期利益 15 15
期末残高 8 8 14 30


6.と 7.法人税等の支払・・損益計算書及び期中増減明細より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
未払法人税等 106 連結剰余金 106
法人税等の支払額 96 未払法人税等 96
未払法人税等の期中増減明細
金額
期首残高 50
確定申告支払 -50
中間支払 -46
当期繰入額 106
期末残高 60


8.自己株式の取得・・貸借対照表増減(ストック・オプション以外の僅少の場合)

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
自己株式の取得 自己株式

僅少であれば、区分表示せず「その他」に含めて表示しても許されよう。


9.10.と11.有形固定資産の増減・・増減明細書から作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
有形固定資産 80 減価償却費 80
10 有形固定資産の取得による支出 160 有形固定資産 160
11 有形固定資産 50 有形固定資産の売却による収入 59
11 有形固定資産売却益 39 減価償却累計額 30
有形固定資産増減明細
建物他 減価償却 帳簿価額
累計額
期首残高 500 -300
購入 160
売却 -50 30 -20
減価償却 -80
期末残高 610 -350
売却代金 59
帳簿価額 -20
売却益 39 損益計算書と一致


12.13.と 14.長期借入金の増減・・増減明細より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
12 長期借入金 120 長期借入金の新規借入 120
13 長期借入金の返済 30 一年内返済長期借入金 30
14 一年内返済長期借入金 20 長期借入金 20
長期借入金の期中増減明細書
一年内長期
借入金 長期借入金 合計
期首残高 30 300 330
返済 -30 -30
新規借入 120 120
一年内返済
振替え 20 -20 0
期末残高 20 400 420


15.短期借入金・・純増減を示す(短期のものは純額表示)

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
15 短期借入金の減少額 70 短期借入金 70


16.と 17.持分法による投資利益・・損益計算書より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
16 持分法による投資利益 28 投資有価証券 28
17 投資有価証券の取得による支出 投資有価証券


18.公募増資・・増資明細より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
18 資本金 50 公募増資 100
18 資本準備金 50


19.と20.貸倒引当金の繰入れ等・・増減明細より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
19 貸倒引当金−長期 60 貸倒引当金の繰入れ額 61
19 貸倒引当金−短期
20 停滞債権 50 貸倒引当金−長期 50
貸倒引当金の増減明細
流動資産計上 非流動資産計上 合計
期首残高 3 100 103
停滞債権と相殺 -50 -50
当期繰入額 1 60 61
期末残高 4 110 114
−50は停滞債権のうちA社倒産しA社債権を貸倒れ処理したもの。


21.連結調整勘定償却・・連結調整勘定償却明細より作成

修正
仕訳
番号
借方
金額
貸方
金額
21 連結調整勘定 12 連結調整勘定償却 12


22.為替換算調整勘定・・外貨建財務諸表の換算明細より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
22 為替換算調整勘定 現金及び現金同等物に係る換算差額

「現金及び現金同等物に係る換算差額」は、期首の現金および現金同等物の外貨残高と期中のキャッシュフローの増減に係る換算差を計上する。ここでは、省略しています。


23.と 24.受取利息および受取配当金・・明細より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
23 受取利息 17 その他の流動資産(未収利息) 17
23 その他の流動資産(未収利息) 22 利息及び配当金の受取額 22
24 受取配当金 11 利息及び配当金の受取額 11


上記の仕訳は、受取配当金は現金入金しているとする。

未収利息(その他の流動資産に含む)の明細
未収利息 前払利息 その他 合計
期首残高 10 15 25 50
入金 -10 -10 -20
費用化 -15 -15
期末決算で計上 5 8 13
その他 2 2
期末残高 5 8 17 30
利息入金額 22 利息支払額 19
未収収益の戻入 -10 前払利息戻入額 15
未収利息計上 5 前払利息計上額 -8
受取利息損益計算書計上 17 支払利息損益計算書 26


25.と26.支払利息・・明細より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
25 その他の流動資産(前払利息) 26 支払利息 26
26 利息の支払額 19 その他の流動資産(前払利息) 19


27.と28.退職給与引当金の増減・・増減明細より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
27 退職給与引当金 30 退職給与引当金繰入れ額 30
28 退職金支払額 20 退職給与引当金 20
退職給与引当金の期中増減
期首残高 250
支払 -20
当期繰入額 30
期末残高 260

支払額は、実際の支払総額をいれる。


29.為替差損・・損益計算書および明細より作成

修正
仕訳
番号
借方 金額 貸方 金額
29 買掛金 0 為替差損 0

為替差損まで開示する必要性があるか疑問であるが、例示に示しているのであえて示してみたものである。
買掛金からのみ為替差損発生したと仮定している。

外貨建て買掛金の期中増減 その他
外貨 換算レート 為替差損 合計支払額 円の買掛金 合計
期首残高 100 $1 @¥100 200 300
支払 -100 ($1) @¥110 10 110 -200 -300
仕入計上顎 240 $2 @¥120 38 278
為替差損計上 2 2 2
期末残高 242 $2 @¥122 12 38 280

注意事項:為替差損について

大蔵省企業会計審議会の平成10年3月に公表した「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準(以下"作成基準”)」の注解7「連結キャッシュフロー計算書」の様式について、間接法の様式2に「為替差損」を表示しているが、作成基準ではその内容について規定していない。
日本公認会計士協会の平成10年6月8日に公表した「連結財務諸表におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」16項によれば、「税金等調整前当期純利益に対する加算項目として為替差損が例示されているが、この為替差損(益)は、損益計算書において計上された為替差損(益)のうち、原則として、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の小計欄以下の各項目又は「営業活動によるキャッシュ・フロー」以外の格表示区分に記載される取引に係る為替差損(益)である。」としています。

損益計算書の為替差損益とキャッシュ・フロー計算書の為替差損益が異なって表示され読者を混乱させる恐れがありますが、日本公認会計士協会の実務指針によれば、買掛金(営業活動)から発生した為替差損(益)は除外されることになります。外貨建社債や借入金などの為替差損益が該当することになります。


30.から 37.の修正仕訳は単純な純増を仕訳しているものです。


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キャッシュ・フロー計算書


キャッシュ・フロー計算書

2012年3月31日終了の一年間
2012年
T.営業活動によるキャッシュ・フロー:
税金調整前当期純利益 221
減価償却費 80
連結調整勘定償却額 12
貸倒引当金の増加額 61
退職給与引当金の繰入れ額 30
退職金の支払 -20
役員賞与 -10
受取利息及び受取配当金 -28
支払利息 26
持分法による投資利益 -28
有形固定資産売却益 -39
流動資産および負債の増減額:
売掛金の増加額 -40
たな卸資産の増加額 -20
その他の流動資産の減少額 8
買掛金の減少額 -20
未払金の減少額 -19
小計 214
利息及び配当金の受取額 33
利息の支払額 -19
法人税等の支払額 -96
営業活動によるキャッシュ・フロー留保額 132
U.投資活動によるキャッシュ・フロー:
有価証券の取得による支出 -20
投資有価証券の取得による支出 -2
有形固定資産の取得による支出額 -160
有形固定資産の売却による収入 59
無形固定資産(借地権)の取得 -10
保証金・敷金の解約による収入 2
投資活動によるキャッシュフローの使用額 -131
V. 財務活動によるキャッシュ・フロー:
短期借入金の純減少額 -70
長期借入金の返済額 -30
長期借入金の新規借入額 120
公募増資 100
自己株式の取得 -1
親会社による配当金の支払 -100
少数株主持分への配当金の支払 -5
財務活動によるキャッシュ・フローの留保額 14
W.現金及び現金同等物に係る換算差額 5
-----
X.現金及び現金同等物の増加額 20
Y.現金及び現金同等物の期首残高 300
------
Z.現金及び現金同等物の期末残高 320
======


注記事項

連結キャッシュフロー計算書の注記事項として、次の事項を注記することを求めています。

注記内容
1. 資金の範囲に含めた「現金及び現金同等物」の内容並びにその期末残高の連結貸借対照表科目別の内訳
2. 資金の範囲を変更した場合には、その旨、その理由及び影響額
3. 新規連結子会社、または、連結から除外した子会社が重要な場合、その資産・負債
4. 重要な非資金取引
転換社債の転換、ファイナンスリースによる資産の取得、株式発行による資産の取得又は合併、現物出資による株式の取得又は資産の交換
5. 各表示区分の記載内容を変更した場合には、その内容


おわりに

昨年暮の12月22日に、大蔵省企業会計審議会は「草案」を公表し、翌98年1月末までに意見を求めることとした。3月13日の最終版と「草案」を比較するとほとんど変更はない。


国際会計基準第7号「キャッシュフロー計算書」(1992年改訂版)を見ると、日本の「キャッシュ・フロー計算書」は、国際会計基準とほぼ一致している。 その点、国際会計基準と異なる日本の「リース会計基準」とは会計基準設定のスタンスを変えているといっていい。


なお、連結財務諸表(中間・年度)を作成する会社は、適用年度までに体制つくりをしておく必要があります。つまり、子会社からキャッシュフロー作成の基礎資料を入手しなければなりませんので、「連結資料」の設計に工夫が必要となるからです。適用直前に体制を作ろうとしても無理があります。連結子会社の理解を求めるのに時間を要しますので早期の準備をお勧めします。

1998年3月19日「連結財務諸表原則」より当初作成
1998年3月23日に「連結財務諸表規則」を基礎に若干修正。連結財務諸表規則によれば、「現金及び現金同等物」の用語は、貸借対照表に表示できないことになります。

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上記の「キャッシュフロー計算書の作り方」のEXCEL版を5000円でE-mailにて頒布しています。長年の実務経験を基礎にしてノウハウを提供しているものです。経理は理論が判るだけでは実務はできません。実務は理論を具体的な形にしなければなりません。しかも、誰にも判る明解な形に具体化することです。

ご希望の方は、下記E-mailにてご注文ください。なお、入金確認後のE-mail送付となりますのでE-mailアドレスを併記してください。
振込先は、みずほ銀行 新松戸支店 普通預金 口座番号 1577705 名義 横山明
なお、会社によって勘定科目等が区々ですので、勉強用としてご利用ください。ただし、修正して各社のキャッシュフロー計算書を作成することは可能です。なお、「直接法」をご所望の方には、上記と同一の資料を基礎に同価格で用意しています。どうしても必要であればその旨記載してください。

日米双方の連結実務の豊富な経験を基礎にキーポントを上記に記しました。本格的な連結決算制度の体制確立に参考となれば幸いです。なお、企業に合わせ正確かつ効果的・効率的な連結決算体制の確立について支援しています。興味がありましたら、下記宛てご連絡ください。

公認会計士 横山明

E-mail: yokoyama-a@hi-ho.ne.jp
TEL:047-346-5214 FAX 047-346-9636


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