国際会計基準のアダプションかコンバージェンスか

アダプションかコンバージェンスか
・米国はIASBのIFRSだけ認める
・日本は何のためのコンバージェンス?
小出しの改正はミスリードさせる
コンバージェンスはパイプ・ドリーム
 IFRS適用日程の状況
  ○EUの場合
  ○カナダの場合
  ○米国の場合
・・ロードマップ
    ・・1年適用延期

    ・・FASBとのコンバージェンス6か月遅延
     ・・Condorsement を提案(2011年5月)
     ・・
再度延期(2012年7月13日)

  ○日本の場合(案)・・2009年6月

   ・・二年前の議論に後戻り・・2011年6月
   ・・自見大臣、IASB議長に・・・2012年2月
   ・・官僚創出の「エンドースメントされたIFRS2013年6月19日
     ・・自民党国際会計基準への対応についての提言」(2013年6月13日
     ・・ASBJが日本版IFRS(エンドースメントされたIFRS)を検討開始(2013年7月10日)
     ・・桑原総務企画局長がJ−IFRSの必要性を説明(2014年5月30日)
     ・・ASBJ公表の奇妙な「修正国際基準(案)」(2014年7月31日


そして日本は取り残された (たかが会計基準、されど会計基準
米国SECがロードマップを公表した2008年8月27日以後の日本の対応
世界がIFRS一つの会計基準になろうとしているときに、日本は金商法と会社法の二つの財務諸表を作成している
さらに、連結・単独財務諸表をそれぞれ重複し、加えて決算短信を作成・公表している
企業の株価は一つ、公表財務諸表も一つが国際標準

はじめに

2007年11月15日、米国証券取引委員会(SEC)は米国に上場する外国会社の財務諸表について、国際会計基準審議会(IASB)が設定した国際会計基準(IFRS)に準拠して作成している場合にのみ、従来開示を求めていた米国基準への差異調整表の開示を免除することを決定した。2007年11月15日以降に終了する事業年度から適用する。日本のコンバージェンス(収斂)版の”日本の会計基準”は免除しない。(SECプレスリリース
Having considered extensive and informative public comment on its June 2007 proposal, the Commission today approved rule amendments under which financial statements from foreign private issuers in the U.S. will be accepted without reconciliation to U.S. Generally Accepted Accounting Principlesonly if they are prepared using International Financial Reporting Standards (IFRS) as issued by the International Accounting Standards Board.

2007年12月28日、SEC最終ルールを公表した。(SEC最終ルール WebCPA 参照)
・外国企業がIASBが公表した国際会計基準(IFRS)で作成した財務諸表を登録した場合は、米国会計基準への調整表の開示は不要とする。
・外国企業がIASBが公表した国際会計基準(IFRS)以外の会計基準で作成した財務諸表は、米国会計基準への調整表の開示を要求する規定は変更しない。
・外国企業が、欧州企業のように、欧州版国際会計基準を使用した場合は、IASBが公表したIFRSへの調整表を注記で開示する提案を受け入れる。

なお、コックス議長は、米国企業にIFRSの適用を認めるかどうかについて意見を聴取するため12月13日および15日の二日にラウンドテーブルを召集すると発表した。(IFRS is coming, says Cox  米国のIFRS適用に関するニュース 参照)

米国各界の意見はSECのコンセプトリリースへのコメントして公表されており、ほぼ方向性が見えてきている。SECの12月のラウンドテーブルは最終確認。米国は、米国上場企業に、改善されたIFRSを適用する”改善・適用方式”になる公算が高くなっている。欧州連合側の対応を考慮すると、適用時期は2011年が中心となろう。特に、日本が2011年6月末までにIFRSに収斂することを国際的に約束していることも視野に入っているといえる。(2007年11月14日のWebCPA 参照)

米国公認会計士協会(AICPA)は、10月24日の上院公聴会で「米国の上場会社にも国際会計基準(IFRS)の適用を認めるべきである」と証言し、11月15日のSECへの提言にも同じ意見を提出している。

我が国の企業会計基準委員会は、2007年8月8日企業会計基準委員会(ASBJ)の西川郁生委員長と国際会計基準審議会(IASB)のDavid Tweedie議長は、2005年3月から開始している日本基準と国際財務報告基準(IFRS)のコンバージェンスを加速化することの合意(東京合意)を、本日、共同で公表した。(ASBJプレスリリース 2007年12月6日公表の「東京合意のプロジェクト合意表」 参照)

この合意において、両者は、日本基準とIFRSの間の重要な差異(同等性評価に関連する2005年7月欧州証券規制当局委員会(CESR)によるもの)について2008年までに解消し、残りの差異については2011年6月30日までに解消を図ります。2011年という目標期日は、現在開発中であって2011年以後に適用となる新たな主要なIFRSについては適用しないものとしていますが、両者は、新たな基準が適用となる際に日本において国際的なアプローチが受け入れられるように、緊密に作業を行うこととしています。

東京合意では、日本が適用(アダプション adoption)を拒否し収斂(コンバージェンス convergence)を約束している。(「2008年1月22日の西川発言」「委員長の日本は米国と同様コンバージェンスとの主張」参照)  つまり、日本の会計基準は、常に、国際会計基準との差異調整がいずれ求められるという状況が続くことを意味している。コンバージェンスはエンドレスに続き、会計基準の変更で財務諸表の期間比較は困難になり、投資判断の情報としての有用性が損なわれる。特に、日本には遡及修正の会計基準が存在せず、投資家に読み易い財務情報が提示されていない。これでは、欧州市場でも、シンガポールなどのアジア市場でも、米国市場でも、そのままでは受け入れられない状況が続くことが明らかにされた(SEC最終ルール)。

米国はアダプション方式をとりつつある。米国公認会計士協会(AICPA)では、2013年までには米国大企業にIFRSの適用を、2〜3年の猶予期間をおいて中規模企業にもIFRSの適用を想定している。また、米国公認会計士協会は、会計基準設定主体としてIASBを認め、会員の国際会計基準で作成された財務諸表監査にも対応し、また、公認会計士の統一試験にIFRSを含むように提案している。SECは米国会計基準からIFRSへの適用日程を2008年中に公表する予定となっている。(AICPA関係ニュース 参照)

2008年8月27日米国SECは、米国上場企業に対し2014年を国際会計基準(IFRS)適用日程(Roadmap)とする案を公表した。具体的には、株式時価総額7億ドルを超える大企業(large accelerated filers約110社)については2年以内の2009年(2009年12月15日以後終了する年度で登録は2010年)のIFRSの早期適用を可能にし2014年から義務化し、株式時価総額7千5百万ドル〜7億ドル未満の企業(accelerated filers)は2015年から、7千5百万ドル未満の中小企業(non-accelerated filers)は2016年からIFRSの適用を義務化する。ただし、2011年にSECは、IFRSの適用が公共の利益および投資家にとって良いのか決定する、として含みをもたせている。(SECのコックス委員長の談話 英文ニュース 日本語ニュース 参照)

米国が国内上場企業にIFRSを適用することになれば、いずれ海外企業もすべてIFRS適用の財務諸表が求められることになる。そうなれば、現在、米国会計基準で開示している日本企業約30社も対象となる

日本のみがコンバージェンス方式を続けられるか疑問。日本企業の海外での資金調達に重いハンディを負うことになるし、二つの会計基準を容認する複雑性と、遅々とした会計基準のコンバージェンスに洗練された企業及び投資家が許さないであろう。日本でも洗練された人々が増えつつある。

2008年2月5日には、欧州を訪問している米国SEC議長クリストファー・コックス氏は、欧州・米国経済界会議で欧州経済界のリーダーの前で、”投資家は、普通の言葉を必要としている”とし、”2008年にも米国企業にIFRSの適用を認めたい”と発言している。(WebCPA 参照) このコックス氏の発言は、米国財務会計基準審議会(FASB)の提言に沿ったものである(抜粋 参照)。 米国は、急速に、SEC、FASB、会計士協会が一丸となって、米国上場企業のIFRS適用に向かって邁進している感がある。

2008年2月6日証券監督者国際機構(IOSCO)は、上場会社の財務諸表を作成した会計基準について正確な情報を投資家に開示することを促す声明を公表した。特に、国際会計基準(IFRS)にコンバージェンスしようとしてる国の会計基準がIFRSと異なっている場合にはその旨を正確かつ明確に開示することを求めているIOSCOのメディア・リリース  参照)。

一方、欧州委員会、2007年11月14日、証券発行時の届出目論見書(prospectus)に関し、第三国企業の証券発行者に第三国の会計基準による財務諸表を認める条件として、EU議会で以下の規則改正を行った。発行市場が決まれば、流通市場の年次報告書も同様な結論となることが予測できよう。

第三国の会計基準に責任ある官庁は、2011年12月31日以前に国際会計基準(IFRS)に収斂する計画を2008年6月30日までに公に約束(public commitment)し、その計画を遅延無く確実に実施すること。収斂の実施状況の評価は、各国ごとにEU委員会が行う。導入日程はカナダの国際会計基準への移行日程と同じになっている。(2007年11月14日EU議会法案付議状況  法律 3月6日のCESRが欧州委員会に提出した助言書 参照)

この決議に先立つ2週間前、2007年10月31日欧州議会の経済・金融問題委員会(ECONは、日本を訪問し、日本に「最終目標は国際会計基準(IFRS)へ完全に移行することであることを明確に伝えた」としている。(EUニュース ECONニュース 翻訳文 参照)
The delegation clearly conveyed the message that the final objective must be to move fully to IFRS.

金融庁の対応

2002年(平成14年)3月26日、米国式会計基準を認めた一方、国際会計基準を認めない理由として、金融庁は以下のように述べている。なお、英語では「bureaucratic mumbo-jumbo(官僚的・難解で意味不明な言葉)」というそうです。官僚用語は洋の東西を問わないようです。
一般の意見 金融庁の回答
連結財務諸表規則及び中間連結財務諸表規則の改正により、米国SEC基準を認めることになりましたが、ドイツが認めているように、いずれ認めざるを得ない国際会計基準で作成された財務諸表も認めるべきではないか。 国際会計基準により作成された連結財務諸表の提出を証券取引法上認めるかどうかについては、我が国において長い開示実績をもつ米国基準とは異なる面もあるため、今後の検討課題と考えています。
改正案において、米国市場に上場後は、日本基準での連結財務諸表の作成をしなくてもよいのでしょうか。 SECに対し米国式連結財務諸表を登録している会社は、証券取引法上は、原則、米国式連結財務諸表を記載することをもって法の要請が満たされたことになるという趣旨です。

上記コメントは米国式会計基準を認めた連結財務諸表規則の改正に対するコメントの回答である。以後、金融庁はIFRSに関し実質沈黙している。

今回の改正に合わせ、米国証券取引委員会に米国式連結財務諸表を登録している日本企業が証券取引法上の連結財務諸表の作成基準として米国基準を用いることを認める(連結財務諸表規則第87条)。この規則は、平成14年4月1日から施行された。

伝え聞くところによると、米国基準は米国SECが監督しているので認めるが、国際会計基準での開示はSECのような証券監督局の監督実績がないという理由で金融庁は認めないと聞いている。おかしな話である。欧州同様に金融庁自らが監督実績を作ればよいこと。いずれにしても、SECが外国企業に国際会計基準での開示を認めたことによって金融庁の動向が注目される。

日本側は、金融庁の担当参事官が3年から4年の短期に交代し(歴代の社会保険庁長官と同じ)、学閥・年功序列の官僚機構の中でジェネラリストとして昇進し会計・監査の知識・実務経験は無い(欧米が専門家を配置しているのと対照的・・一方国内でも、法務省は法律に詳しい法曹関係者、厚生関係では医学に詳しい専門家が関与しているが金融庁の会計・監査については専門家が責任者ではない・・会計・監査の取り扱いは軽んじられかなりひどいものがある・・「企業会計審議会議事録」参照/ 「証券発行に弁護士が関与しない日本」も法曹人がいない理由である)。

会計基準設定主体も今までは学者中心で会計・監査の実務経験は甚だ乏しい。経団連企業の委員は終身雇用のため特定企業の限られた経験しかない者が意見を述べるなど偏ったものとなっている。日本の人事は、欧米のように専門家が知識経験を生かしてライフワークとして使命感を発揮し社会に貢献できる構造になっていないのだ。加えて、知識・経験の豊かな有能な会計士は米国基準による企業監査の本業に忙しく日本の会計設定に関与できなかった。特に、SEC監査のなど日本を代表するSEC登録会社の監査経験をもった会計士は会計基準の設定にほとんど関与することはなかった。(「企業結合の会計基準見直し」は、過去の議事録を再検討し同じことが繰返されないよう設定主体の改革をしない限り同じことが繰返されよう)

監査の現場(実務)に眼を向ければ一目瞭然である。会社法・金融商品取引法監査の国内監査と国際基準(米国GAAPとIFRS)の監査の現場は水と油のごとく異なっている。嘗ては、朝日監査法人とアーサーアンダーセン中央青山監査法人とPwCは水と油で融合していないと外部に洩れ伝わってきていたし、未だに、大手監査法人では、国際部が実質的に国内監査と分かれている。国内監査が日本の法律・規則を忠実に守っているからで(国際部は国際基準を忠実に遵守)、原因は、日本基準が国際水準でないことに尽きる。国際基準と一致させればその溝は言葉(英語)を除いて一挙に解消されよう。金融庁が国際基準と相当であるといってみたところで、現場(現実の実務・事実)はかなり違っていることを、会社も会計士もよく知っていることだ。知らぬは現場を知らない人々である。

国際的な対話をする相手である欧州連合(EU)の市場担当責任者チャーリー・マクリービー氏(Charlie McCreevyは、アイルランド勅許会計士出身の政治家で財務大臣であった人。国際会計基準審議会(IASB)のデビッド・トゥイディ議長David Tweedie )は、スコティッシュの勅許会計士でKPMGのテクニカル・パートナーで実務経験豊富、米国財務会計基準審議会(FASB)の議長および米国証券取引委員会の主任会計士などは会計の知識と実務経験を豊富に持った者が中心となっている。忍耐強く、会計を進化・統一をさせようと情熱をもった人々である。こうした、実務経験豊富な専門家と日本の交渉相手と話が噛み合っていない。偏に、実務経験豊富な欧米専門家の使命感と日本の官僚制度中心の視点・人選の違いが日本を孤立させている。最大の問題は、日本は孤立している状況を認識していない点と、金融庁の権限による規制の強化はあっても、投資家(特に株主)に対するディスクロージャーの視点が決定的に欠けている点にある。

日本のディスクロージャーの課題は、
@会計基準を投資家にとっても企業にとっても判り易い整合した単一の国際基準に整備すること(海外連結子会社と基準一致)、
A有価証券報告書を誰でもが読み易く理解し易いものにすること(理解可能なものにする)、
B海外同様に株主に有価証券報告書が株主総会前に送付するようにして議決権行使に使用できるようにする(株主保護)、
C会社法の計算書類の開示と有価証券報告書の開示について一元化し二重開示を解消する(企業負担の軽減)、
D国際基準にない附属明細書は必要であれば注記に開示事項とする(国際会計基準に附属明細書はない)、
E四半期報告書の株主への送付など(株主保護)、海外と制度を一致させる必要がある。加えて、
F連結財務諸表中心(1997年方針転換)と言いながら、個別財務諸表の開示を求めており、個別財務諸表に課徴金を課している。個別財務諸表の開示をしている現状を見直す必要があろう。個別財務諸表の情報は、必要とは思えないが敢えて必要とあらば連結財務諸表の注記に個別財務諸表の要約数値を開示し、個別財務諸表自体の添付を求めない方法もある。

個人的には危惧している。何故かと言うと、限りなく簿記の世界(会計基準は説明責任を具現する基準)を規定している日本特有の「企業会計原則(昭和24年制定、国際基準が求めている”注記がないか貧弱”)」をコピーしたような「地方自治体の会計基準」や「独立行政法人の会計基準」「公益法人の会計基準」のように、縦割り行政の中で次々と官僚の手によって通達のような奇妙な会計基準が創られつつあるからである。奇妙な会計基準からは奇妙な財務諸表しか作成されない。早急に国際基準を導入して整合した基本となる会計基準が日本に必要と考えるからである。国際公会計基準(IPSAS)国際会計基準(IAS/IFRS)を基礎として設定しておりIFRSにコンバージェンスしつつある

納税者は、国および地方自治体の株主である。株主は情報開示を求めてよい。国または地方自治体は説明責任を果たすため情報開示すべきだ。正しい情報開示が無ければ納税意欲は減退する。国際基準のレベルに達しない情報開示は、国際レベルに達しないサービスしか受けていないことを意味するのだ。

20年ほど前に外資系会計事務所のトロント事務所(カナダ)に赴任していたとき、顧客先の会社従業員で日本人出向者から「カナダ政府から通知を受けたが何の通知か教えて欲しい」と、その通知書を見せてくれた。これは、彼がカナダ駐在10年を超えて公的年金(pension)を掛けてきたので、本人に受給権が生じた旨と本人が受け取ることの出来る年金を通知してきたものだった。その後、私が日本に帰国し日本の制度も本人に知らせるべきだと言ったら「日本は申請主義で本人から申し出がなければ受給できない制度だ」との”居丈高”な返事か返ってきた。それから、20年、日本では、公的年金の申請主義が批判に晒されつつある。(やっと、平成20年度の改正で定期通知されるようになります。) 受給権が生じた時点で本人に通知するカナダの制度は誰が見ても当たり前と思うのだが・・・

官の杜撰さは、社会保険庁だけではない。道路公団の問題薬害補償の遅れ、遅々として進まぬ官僚の天下り問題、など枚挙に事欠かない。官庁の中の官庁と言われた「大蔵省(現・金融庁・財務省)」は、ノーパン喫茶にはじまり、バブル崩壊の処理のまずさから長期化国家の借金の急増不良債権処理の遅れ会計基準の国際化の遅れなど、国際化や複雑な社会に対応できない明治以来の官僚制度そのものの欠陥が露呈している。(民にはこれに由らしむべし。これを知らしむべからず。 論語 孔子より)

国民はもっと行政や政治に関心を持つべきだ。有権者の年末調整は、確定申告書省略させて納税意識を失い、結局は国民の関心を政治や行政に関心を失わせている、旧大蔵省の意図通りである。やはり旧大蔵省はすごい。 が・・・制度くらいは、普通の国の民主国家になって欲しいものだ。そのための建設的批判は必要だと考える。

余談:日本では、実質的に税制を作っている官僚をはじめとして、定年まで所得税の確定申告書を作成したことがない人が殆どです。正確な統計数値がでて国際比較をしてみれば、日本という国は、殆どが給与所得者の国となることは明らか。私は、数日間だけ、税務署の無料相談に協力し相談員もしています。相談に来る人は、定年後の年金受給者や給与所得者でも”医療費控除”をする人が多く、自営業者や起業者が非常に少ないのを実感しています。
欧米は、原則、給与所得者を含めて確定申告を必要とする。カナダでの私の経験では、赴任中は給与所得者でしたが確定申告をしていました。確定申告をすると自分が納税する税額を知ります。税額を知ると言うことは”時の政権の意思表示(政策)”を反映したものだということがわかります。政治と、行政に人々が関わっていることを知る機会、つまり確定申告が必ず年に1度来るということです。私は、それが普通の国と思っています。とくに、消費税論議をするときに、個人でサービス業を日本で起業すると消費税の負担は大変なものになります。議員・官僚などのサラリーマン以外の意見が反映し”バランスの取れた税の議論をする”ためにもすべての人々が確定申告する制度は必要なのです。さもなくば、日本の年金が自営業者を埒外にしている国民年金と同じような税制となっている現状は改善されません。自営業者には、給与所得控除(支出が無くても非課税とする部分)はありません。日本の税制はサラリーマンによるサラリーマンのための税制です。

アダプションかコンバージェンスか

アダプションadoption 適用)かコンバージェンス(convergence 収斂)の問題は、”単一のグローバルな基準(single set of global standards)”が投資家にとって分かり易く、財務諸表作成者である企業にとってコスト負担が少なくて済むという理念からすれば、国際会計基準(IFRS)一つでよいということになる。ほぼ米国の結論はこの方向で固まりつつあるといってよい。つまり、国際会計基準の適用以外考えられないことになる。

その背景には、100カ国以上の国が国際会計基準の適用を認めるか適用している現状から、連結対象となる海外子会社が国際会計基準を適用しているものを米国会計基準に置きなおすというのは非現実的となる。米国が国際会計基準となれば、海外を含めた子会社が国際会計基準を適用でき、コストが安く連結財務諸表が作成でき、読者である投資家は理解し易くなり投資判断がし易くなる。

そこで、米国は第一弾として、SECは、外国企業に対して、国際会計基準でもIASBが設定した国際会計基準で作成した財務諸表は、米国基準への差異調整表に開示は免除すると決定した。これは重要な意味をもっており、現在、欧州が一部適用していない欧州版国際会計基準は認めないことを意味している。(下記SECルール参照) 当然、日本がコンバージェンスしても日本の会計基準を認めることはないことを意味している。

Alternatively, the financial statements may be prepared according to U.S. Generally Accepted Accounting Principles or International Financial Reporting Standards as issued by the International Accounting Standards Board.SECルール Regulation S-X [17 CFR Part 210] § 210.4-01 (a)(2) 参照)

IMB、クレジット・スイス(スイス企業)、インテルなどの国際企業は、海外の子会社の国が国際会計基準を適用・収斂しつつあり、詳細すぎるルール・ベースの米国基準より簡潔・明瞭な原則主義であることことから、国際会計基準をどこの国でも適用できる”one-size-fits-all"な会計基準として親会社でも国際会計基準で連結財務諸表を作成することを検討している企業が出現しつつあることが背景にある。 (「米国企業の僅か9%が、IFRSの適用を切望している」「米国上場会社300社を調査した中で約20%の財務責任者はIFRS適用を考えている」参照)

100カ国以上の国が国際会計基準の適用を認めるか適用している現状から、もはやIFRS国際会計の共通語リンガ・フランカ lingua franca)となりつつあるといえる。

一方、欧州連合では、2007年11月14日にEU議会を通過した改定目論見書(prospectus)指令では、第三国(米国・日本・カナダ)の財務諸表について2011年から国際会計基準の適用を求めている。(法律 参照)

欧州連合の第三国(米国・日本・カナダ)に対する会計基準の同等性に関する国際会計基準適用日程は、カナダの国際会計基準の移行日程(下記参照)と一致している。

また、2007年11月7日米国FAF財務会計財団/FASB財務会計基準審議会は、上記コンセプト・リリースのSECへの回答としてFASBの意見を公開した。(抜粋 参照)(2008年5月28日の企業会計基準委員会(ASBJ)とFASBの会合にはこのことが言及されていない。 FASBとの定期協議」参照)

FASBは、投資家にとっては、すべての米国上場会社が単一のグローバルな会計基準設定主体が設定した会計基準を使用することが好ましい、としている。したがって、すべての上場会社は改善した国際会計基準(improved version of IFRS)を適用することが最もよい。米国基準FASBと国際会計基準IFRSの二つの会計基準の選択適用は、不必要に複雑となり好ましくない。”改善して導入する方式(improve-and-adopt approach)”が、企業のコストを最小限にし、かつ、投資家に判り易く望ましいとしている。高品質の会計基準は世界に一つであることを身をもって表明したことになる。

米国は、自国の独自の会計基準に拘り、維持することで二つの会計基準があることが複雑にしてしまうとのことで、実質、会計基準の設定を放棄する意見をSECに提案している。(「FASBに対する批判を考えるConsidering FASB’s Critics(2002年6月CPAジャーナル)」「米国会計基準は詳細すぎ25,000ページもあり、一方、IFRSは約2,000ページ強である」「ウオール・ストリート・ジャーナルDecember 12, 2007米国会計基準の終焉)・・米国基準(GAAP)は、詳細すぎる、例外が多過ぎる、適用の誤りが多い etc.」「IFRS適用日を決めて欲しいと産業界からの声」「米国のIFRSのニュース」参照)

2008年2月26日、米国財務会計財団(FAF)は、7月1日から財務会計基準審議会(FASB)の委員を7名から5名に縮小すると発表した。主な理由はIFRSへのコンバージェンスとしている。(FAF諮問委員会の決議 Financial Week, NewYork その他ニュース 参照  ちなみに、日本ASBJの委員の数を明記していない曖昧な規定があるのみ。)

欧州連合(EU)では、米国、日本、カナダの会計基準を国際基準と同等と認めるかどうか最終決定され、2009年度が適用初年度であるため「会計の2009年問題」とされている。(会計の2009年問題 英文ニュース 「認められる可能性あり」のニュース) 
2008年6月11日欧州連合(EU)が、EU改正目論見書(prospectus)に関する指令案を公表し、議会で承認されるなら日本の会計基準はIFRS相当と認められ、2009年から日本基準で証券発行できる。ただし、条件として2011年末までにIFRSとの差を無くすこととされている。(下記2008年6月2日改正指令案(8)参照) 実質IFRSのアダプションを求めているといってよい。この議案は秋の欧州議会で可決される予定。

(8) In August 2007 the Accounting Standards Board of Japan and the IASB announced their agreement to accelerate the convergence by eliminating major differences between Japanese GAAP and IFRS by 2008 and the remaining differences before the end of 2011. The Japanese authorities do not require any reconciliation for Community issuers which prepare their financial statements according to IFRS.Therefore, it is appropriate to consider Japanese GAAP equivalent to adopted IFRS from 1 January 2009.

一方、国際会計基準(IASB)では、EUのIFRS適用初年度(2005年)から4年間の定着期間で”新たな基準設定の一時停止(moratorium)”は2008年に終了し、2009年から、新たな会計基準の設定および改正が再開される。(AICPAのIFRS.com 参照) 日本は、IFRSへのコンバージェンス(その実態はキャッチアップ)を謳っているが、IFRSに追いつくことはありえない。

下記の日程でカナダが2011年に国際会計基準に移行したり、欧州および米国の動向から、日本は独自の会計基準を維持することは困難となったことを意味している。国際会計基準の適用は時間の問題となりつつある。100カ国を超える国が国際会計基準を適用していることが米国をも動かしたのだから・・・

大中小の会社の英米系の監査経験豊富な人であれば、カナダが長い間模索していて、結局IFRSへの統合が会社、監査人及び財務諸表利用者・投資家にとって唯一の選択肢であることが理解される。その証拠に、会計基準の生みの親と言っていい米国が、カナダ同様IASBとのコンバージェンスを模索していたが、結局、会計基準設定主体であるFASB自体がIFRSの適用を提言し、会計基準選択の権限をもつ米国証券取引委員会(SEC)がFASBの提言を検討している。カナダ・米国ともに経験豊富な人材が検討して出した結論と考えてよい。

日本は、金融庁が会計基準の選択の権限を”金融庁設置法”よって所管しているが、会計・監査に関する知識・経験を豊富にもった者がいないことに加えて、会計基準設定主体の委員の主体がペーパードライバーのように実務に疎い人々では、投資家や会社・監査人などの実務(現場)の声は伝わっていないと考えてよい。実務に無頓着であるから反応しない。日本はヴィジョンがなく(公務員制度の宿命で、政治家にヴィジョンを求められないのが残念である)結局は、米国の結論の後を追うしかない。

I believe that continued convergence is a pipe dream.日本語辞書  アニミュージックはこちら

米国会計基準FASBと国際会計基準IASBとのコンバージェンスは、双方の委員は双方の基準を読みこなして議論を深めてより完成度の高いものにするメリットがある。

一方、日本の会計基準は英文で纏まった「現在の会計基準」がないのだからIASBの委員には判らない。したがって、IASBと日本の企業会計基準委員会ASBJとが実りある会話が成立しているとは到底思えない。現に、日本側は一方的にIFRSへコンバージェンスする作業をしているのみである。であるなら、日本人に対して、早くに、生のIFRSを理解する時間を与えるべきで、同じ国費を使うならIASBのサイトから自由に日本語で読めるようにすべきであろう。時間は待ってはくれないのだから・・・

2009年8月31日のASBJにおけるIFRS対応会議の「当面の活動計画」によるとIFRS2009年度版の翻訳を開始する旨記載があるが遅々としている。

@FASF理事長の出身企業の小松製作所は米国のOTC市場へ登録しておりSEC登録企業であるため米国会計基準で連結財務諸表を作成し、日本の有価証券報告書(EDINET)も米国会計基準での開示経験があるが、ニューヨーク証券取引所への登録と比較するとOTC登録会社のSEC管理は希薄。かつ、今までの対応を見るに、IFRS又はFASBの知識、かつ深い実務経験があるのか疑問があり、IFRSに的確に対応しうるのか不安がある。ドイツが欧州でイニシアティブをとったのと対照的である。

A米国は英語圏であるが1年も前から準備が進んでいる。一方、日本は日本語のハンデがありながら、会計基準の体系が全く異なる。米国FASBはIFRSとほぼ類似、有価証券報告書の財務諸表の表示とは全く異なる、特に注記は全く相違し、BS、PLに区分することや付属明細表などなく簡潔明瞭で充実している。にも関わらず、IFRSの日本語への翻訳がこれからという状況にある。日本は注記について探し難く読み難い(EDINET参照)が、国際会計基準は米国家計基準同様に簡潔明瞭かつ正確に読者に判り易くするため作成に多くの時間をとられるのが普通だ。

B言語一つとっても、英語圏でない日本は米国とは独立した積極的な対応(ドイツのように)が必要であった。模範は米国にあるのではなく、言語の違いや会社法等の法体系の違いを考えるとドイツの対応を見習うべきであった。日本は米国のポチ(犬)ではないのだから・・・(「ドイツ法務省「商法近代化会計法の成立」2009年3月26日」参照)

国際会計基準へのコンバージェンスで小出しの改正が期間比較を歪めミスリードの恐れ。

国際会計基準へのコンバージェンスは小出しであればあるほど財務諸表の期間比較は歪み財務諸表の読者をミスリード(誤解)させる恐れが生ずる。一挙に国際会計基準を導入することで各国と同等の水準となり比較可能性はより優れたものとなる。

日本の会計基準等の改正 2009年年
3月期
2010年
3月期
2011年
3月期
2012年
3月期
2013年
3月期
2014年
3月期
2015年〜
2016年
経営者による財務報告に係る内部統制の報告書および監査 ⇒適用
四半期報告書の開示 ⇒適用
改正リース会計・・骨抜きリース会計の廃止、 ⇒適用
EDINETのXBRL化・・四半期、半期報告書、年度報告書に適用 ⇒適用
工事契約の工事進行基準の適用が始まる ⇒適用
棚卸資産にLIFO評価は廃止 ⇒適用
金融商品の時価表示、2010年3月期より適用 ⇒適用
賃貸用不動産の時価開示、2010年3月期より適用 ⇒適用
セグメント情報・・マネジメント・アプローチでの開示 ⇒適用
企業結合で持分プーリング法廃止、早期適用可 ⇒適用
資産除去債務、早期適用可 ⇒適用
包括利益の表示に関する会計基準・・連結財務諸表先行 ⇒適用
会計上の変更、誤謬の訂正、見積りの変更、表示の変更 ⇒適用
国際会計基準(IFRS)の適用(案)
・・(金融庁)・・米国に追従する予定
⇒任意適用
日本電波工業
任意適用
三井住友FG
住友商事
HOYA
適用判断
金融庁独自判断できず
米国のIFRS判断待ちで
2013年以降に判断先延ばし
適用
変更 5年から7年に延長する
二年前の議論に後戻り・・2011年6月
米国会計基準使用は2016年3月期まででIFRSの適用となる
○金融庁三井総務課長発言 (2010年8月3日
参考:連結財務諸表の作成基準として米国基準を用いることを認める措置
米国会計基準使用は
2016年3月期
まで

使用期限撤回
米で上場している日本企業

なお、国際会計基準1号「財務諸表の表示」パラグラフ15には、”財務諸表には企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローを適正に表示しなければならない。IFRSを適用し、必要な場合は追加的開示をすれば、適正な表示をもたらす財務諸表が作成されると推定される”としている。つまり、国際会計基準及びその指針に準拠して作成した財務諸表は適正表示しているとしている。

IAS1号パラグラフ16には、”財務諸表が国際財務報告基準(IFRS)に準拠する企業は、注記にIFRSに準拠している旨を明示的かつ十分に記載しなければならない。財務諸表がIFRSの全ての規定に準拠していない限り、企業は当該財務諸表がIFRSに準拠していると記載してはならない”とされている。

16. An entity whose financial statements comply with IFRSs shall make an explicit and unreserved statement of such compliance in the notes. An entity shall not describe financial statements as complying with IFRSs unless they comply with all the requirements of IFRSs.

加えて、パラグラフ18では、”不適切な会計方針は、適用した会計方針の開示又は注記若しくは説明文書のいずれによっても救済されるものではない”として、IFRSに反した処理等は、いかなる方法でも救済されないとしている。

国際的なIFRS適用日程の状況

欧州連合(EU)における国際会計基準(IFRS)の適用日程

2001年2月13日、欧州委員会は、「2005年までに正式に欧州のすべての上場企業にIASを適用した連結財務諸表を要求する規則とする」よう要請した。日本以上に自国会計の古い歴史のある英国、ドイツ、フランスなど欧州連合27カ国は、2005年の初年度適用(2004年との比較財務諸表となる)まで、4年の短期間で一斉にEUが承認した国際会計基準を導入することとなった。

2003年10月7日、欧州証券規制委員会(The Committee of European Securities Regulators (CESR))は、国際会計基準適用の過渡期の情報開示として、@2003年度決算で主要なIFRSの会計方針を記載し、A2004年度決算で国際会計基準との差異影響額の開示、B2005年で2004年度との比較情報および任意適用の四半期情報(IAS34号)に関する開示規則案(Preparing for the implementation of International Financial Reporting Standards (IFRS) )を提示している。米国SECの開示規制と類似している。CESRの草案にはどこに開示するか開示場所を明記していないが、米国SEC規則では新たな会計基準の適用方針や影響額を事前に「経営者の討議および分析(MD&A)」に開示する。

欧州連合の国際会計基準(IFRS)適用過渡期の情報開示
2003年 2004年 2005年
法律の規定
Legal requirements
各国の会計基準適用         ⇒
IFRS適用の2004年と比較表示 国際会計基準(IFRS)適用
欧州証券規制委員会
(CESR)
情報開示規則案
B任意適用の四半期情報(IAS34号)
A2004年度決算で国際会計基準との差異影響額の開示
  
オーストラリアも同様の開示を求めている(オーストラリア会計士協会・・2005年1月)。
@2003年度決算で主要なIFRSの会計方針を記載する (格付評価会社スタンダード
・アンド・プアー社が推奨するIFRS適用影響額の開示方法(IASPLUSより))
 
参照

オーストラリア財務報告会議(FRC)は、2002年7月3日、欧州同様2005年までにIASを適用することを決定した。すべての会社は、2005年1月1日以降開始する事業年度から、「国際会計基準を導入したオーストラリアの会計基準」にしたがって財務諸表を作成しなければならない(オーストラリア証券・投資委員会2003年10月21日速報 参照)。 

カナダにおける国際会計基準(IFRS)の適用日程

カナダは、2011年度から下記の日程で国際会計基準(IFRS)を適用すると公表している。(2007年3月6日のCESRが欧州委員会に提出した助言書8ページ参照)(2008年2月13日「カナダ会計基準審議会(AcSB)のIFRSへの変更時期の確認」 参照)

Deadline期限 Objectives目的
2006年-2008年 国際会計基準(IFRS)の知識の完全な習得
Obtain training and thorough knowledge of IFRS
By early 2008年初旬までに カナダ会計基準審議会による進捗程度のレビュー
Progress review by AcSB
Early 2008年早い時期に 進捗状況に従ってカナダ会計基準審議会が変更の時期を公表
Changeover timing to be announced by the AcSB following progress
review
2008年 企業は国際会計基準(IFRS)に照らして会計方針の策定を行う。
Enterprises assess accounting policies with reference to IFRS and
develop a plan for convergence
December 31, 2008年度決算 IFRSへの変更が会社に及ぼす影響を開示する。
Disclosure of an enterprise's plan for convergence and what effects
the enterprise anticipates will arise with the change to IFRS (see
paragraph 29 of this document)
December 31, 2009年度決算 2008年度と同じように、IFRSへの変更が会社に及ぼす影響額を開示する。
Same disclosure required as in 2008, but with a greater degree of
quantification of the effects of the change to IFRS (see paragraph 29
of this document)
January 1, 2010年 2011年の国際会計基準を適用した初年度財務諸表に含まれる比較財務情報として
表示される初年度となる。
First year for collection of comparative information for inclusion with
2011 financial statements under new IFRS-based requirements.
December 31, 2010年 現行カナダ会計基準による報告は最後の年となる。
Last year of reporting under current Canadian GAAP
January 1, 2011年 変更。国際会計基準(IFRS)で報告の初年度。
Changeover. First year reporting under new IFRS-based standards.
March 31, 2011年 企業は、IFRSでの最初の2011年3月末終了の四半期財務諸表を公表。
Enterprises issuing interim financial statements prepare their first
IFRS-based statements for the three months ended March 31, 2011
December 31, 2011年 国際会計基準(IFRS)に準拠して適用する年次報告書の初年度適用となる。
End of first annual reporting period in accordance with new IFRSbased
requirements

上記カナダの国際会計基準の適用日程は、欧州連合と同じように、「国際会計基準の適用初年度の会計基準」は国際財務報告基準IFRS1号に規定しておりこの基準を反映しているものである。

比較財務諸表(最低2期比較)を求めている国際会計基準IAS1号「財務諸表の表示」に準拠するため、実質、2010年度からIFRS基準での数値を把握しておく必要があり、かつ、国際会計基準IAS8号「期間損益、基本的な誤謬および会計方針の変更」に準拠して、2011年に適用する会計方針に従って過年度遡及修正する必要があり、2010年度の数値はこの遡及修正を反映した数値である。

なお、2008年および2009年に国際会計基準への変更による影響や影響額を開示するのは証券監督局の開示規定によるものである。これは、欧州連合にても同様に開示されたものである。この開示は、米国証券取引委員会(SEC)の規定で新たな会計基準の適用にあたってどの程度の影響があるか事前に開示させているものと同じものである。

2007年3月15日韓国は、2011年から上場会社について国際会計基準を適用すると公表し、IFRSに対応した韓国会計基準を公表し国際的な信任を受ける体制を整えた。

米国では、2013年から2015年のIFRS適用は可能であるとしている。(CFO Com PwC より)

米国における国際会計基準(IFRS)の適用日程

2008年8月27日米国SECは、米国上場企業に対し2014年を国際会計基準(IFRS)適用日程(Roadmap)とする案を公表した。具体的には、株式時価総額7億ドルを超える大企業(large accelerated filers約110社)については2年以内の2009年(2009年12月15日以後終了する年度で登録は2010年)のIFRSの早期適用を可能にし2014年から義務化し、株式時価総額7千5百万ドル〜7億ドル未満の企業(accelerated filers)は2015年から、7千5百万ドル未満の中小企業(non-accelerated filers)は2016年からIFRSの適用を義務化する。ただし、2011年にSECは、IFRSの適用が公共の利益および投資家にとって良いのか決定する、として含みをもたせている。(SECのコックス委員長の談話 英文ニュース 日本語ニュース AICPA IFRS. com 背景説明 参照)

事業年度⇒ 2009年
(注1)
2010年
(注2)
2011年
(注3)
2014年
(注4)

1年適用延期
再度延期
2015年
(注5)
2016年
(注6)
以降
上場会社の企業規模
株式時価総額7億ドルを超える大企業
large accelerated filers約110社)
IFRS
早期適用可
(注3) IFRS
適用義務化
株式時価総額7千5百万ドル〜7億ドル未満の企業
(accelerated filers)
IFRS
適用義務化
7千5百万ドル未満の中小企業
(non-accelerated filers)
IFRS
適用義務化

注1:2009年12月15日以降終了する事業年度・・12月決算であれば2009年度の年次報告書からIFRS適用を認める。
レギュレーションS-Xでは、2009年度の年次報告書は、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書および株主持分変動計算書は3年比較なので2007年度と2008年度の比較数値を表示する必要がある。貸借対照表は2期比較となる。
注2:2009年度の年次報告書は2010年にSECへ登録(ファイリング)される。
注3:SECは、早期適用の巨大企業のIFRS適用状況をみてIFRS適用の義務化を最終決定する。
 
SECは、会計基準(IFRSなど)の改善状況、国際会計基準審議会への技術的・資金的支援、米国内のIFRS教育状況、大企業のIFRS適用状況、規則改正のタイミング、義務化への将来予測などを勘案して義務化の最終決定を行う。
注4:2014年12月15日以降終了する事業年度の巨大企業のIFRS適用の義務化。
注5:2015年12月15日以降終了する事業年度の大企業のIFRS適用の義務化。
注6:2016年12月15日以降終了する事業年度の中小企業のIFRS適用の義務化

米国が外国企業に認めたIFRSは、欧州連合(EU)のカーブアウトしたIFRSではなく、IASBが設定したIFRSとしており、コンバージェンスでは従来どおり「差異調整表」の開示を求められる(下記SECルール参照)。米国企業に認めようとするIFRSもIASBが設定したものでありコンバージェンスの米国会計基準ではないということだ。

 In all filings of foreign private issuers (see §230.405 of this chapter), except as stated otherwise in the applicable form, the financial statements may be prepared according to a comprehensive set of accounting principles, other than those generally accepted in the United States or International Financial Reporting Standards as issued by the International Accounting Standards Board, if a reconciliation to U.S. Generally Accepted Accounting Principles and the provisions of Regulation S?X of the type specified in Item 18 of Form 20?F (§249.220f of this chapter) is also filed as part of the financial statements. Alternatively, the financial statements may be prepared according to U.S. Generally Accepted Accounting Principles or International Financial Reporting Standards as issued by the International Accounting Standards Board.SECルール Regulation S-X [17 CFR Part 210] § 210.4-01 (a)(2) 参照)

米国が欧州のカーブアウト(一部免除)のIFRSではなくIASBのIFRSのみを認めているのは当然で、国際会計基準IAS1号の14項に「IFRSに準拠した財務諸表を作成する企業は、その旨を開示しなければならない。財務諸表を適用すべき各基準書及び適用すべき解釈指針委員会の解釈指針すべての規定に従ったものでない限り、財務諸表がIFRSに準拠していると記述してはならない。(現パラグラフ14」としており、一つの会計基準を志向してIFRSの適用を米国上場企業に求めるのは、アダプション(適用)である。ただし、米国はIFRS適用にあたり、IASB自身の資金面、技術面、ガバナンス面で充実させるための支援を約束している。

なお、ルールの公開草案は、数週間内にSECのホームページに公開される予定。直後の金融危機に公開が遅れているが近々公表(2008年11月7日WebCPA.Com)。

2008年11月14日(金曜日)SECは、正式に「165ページに上るロードマップの公開草案」を公表した。90日以内(2009年2月19日まで⇒後に4月20日に変更)にコメントを求めている。73ページには、貸借対照表の2年間開示の方法、その他、損益計算書等の3年間の表示の仕方を提案しているが、前年度まで米国基準で開示していたことからユニークな方法を提案している。

2009年1月15日、新大統領オバマ政権の新SEC委員長候補メアリー・シャピロ女史(Mary Schapiro)が上院の就任前の確認で、一つの高品質な会計基準の適用は認めているが、前委員長の公表したIFRSへのロードマップに拘束されないと発言。IFRSへの移行にコストが掛かりすぎること、移行の日程が急すぎること、IASBの独立性に疑問であること、IFRSが米国基準のように詳細に規定しておらず信頼性に疑問であることなどを理由としている。IFRSの適用がスローダウンしそうな雲息である。元FRB議長、元IASB評議会委員長ポール・ボルカー(Paul Volker)氏がIFRSを支持しておりオバマ政権の経済回復諮問委員会委員長に就任しており注目される。(ニュース AICPA IFRS Resources 参照)

2009年2月3日SECはロードマップのコメント期日を当初2月19日としていたものを60日遅らせ4月20日とすると発表した。(SEC規則案・コメント期間の延長 ロイター 一般紙ニュース 参照)

2009年3月13日財務会計財団(FAF)及び財務会計基準審議会(FASBは、SECのIFRS導入のロードマップに関して134ページに及ぶ意見書を提出した。
SECのIFRS導入には、十分な検討を重ね、米国上場会社のすべての企業にIFRSの適用を究極的に要求することを決定するまでは、大企業に選択適用を認めるべきではないと提言した。"We continue to believe that the SEC should not permit an option unless and until there is a decision that all U.S. public companies will ultimately be required to adopt IFRS."(ジャーナル・オブ・アカンタンシー 参照) 1月に就任したシャピロSEC委員長のロードマップ見直しに呼応している意見である。

2010年2月24日、沈黙を破って、やっと、米国の証券取引委員会(SEC)は、米国上場企業のIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の適用を2015年以降とする声明文を公表した。SECが2008年11月に公表したIFRS適用に向けてのロードマップでは大規模企業に限って2014年からIFRSを適用する考えを示していたので、適用が1年遅れることになる。ただ、声明文はIFRSを「米国の投資家に利益をもたらす」として前向きにサポートし続けるとのメッセージを伝えている。

 SECは実際に米国上場企業にIFRSを適用するかどうかを2011年に判断する。2008年11月のロードマップでは2009年12月以降に米国上場企業の任意適用を認めるとしていたが、新たな声明では任意適用を撤回する考えを示した。だが、2015年までに任意適用を開始する可能性は示している。

今回のロードマップは実際のIFRS適用を見据えて、より具体的なステップを記した。「ワークプラン」と呼ぶこの作業では、IFRS自体の内容の精査や米国の投資家への利益の評価、企業の教育や受け入れ体制の状態、米国の法律や規制との関係などを調査する。同時にFASB(米国財務会計基準審議会)とIASB(国際会計基準審議会)のコンバージェンス作業の動向にも注目する。ワークプランの結果は2010年10月までに報告される予定。

SECがIFRSの適用を遅らせる理由は前回のロードマップに対して寄せられた200以上のコメントを検討した結果、「もしIFRSの適用を受け入れる決定をするなら、財務報告を行う企業や利用する投資家に対して十分な移行の時間を取る必要がある」(SECのメアリー・シャピロー委員長)からだ。声明文は移行のためには4〜5年掛かるとしていて、2011年に決定しても最短で2015年となる計算だ。(IFRSフォーラム ジャーナル・オブ・アカンタンシー 参照)

同日、米国公認会計士協会(AICPA)は、SECの声明に対して、次にように、SECがIFRSの導入時期を明示することが大事なことだという声明を発表した。
The AICPA believes that it is critical for the SEC to set a date certain for use of IFRS in the U.S. and we urge the commission, as it completes this work plan in 2011, to ensure investor confidence is maintained and key milestones lead successfully to global standards in 2015.

2010年6月1日、[ニューヨーク 1日 ロイター] 米財務会計基準審議会(FASB)のハーツ会長は米会計基準の国際会計基準との統合について、20カ国・地域(G20)が求める2011年6月30日の期限までの完了はないとの見方を示した。ロイターのインタビューで述べた。

 会長によると、FASBと国際会計基準審議会(IASB)は向こう1週間のうちに、会計基準統一作業の計画変更を発表する。作業完了を約6カ月遅らせ、一般からの意見募集に時間をかける、という。(IASB WebCPA)

●2010年6月4日付フィナンシャル・タイムスによれば、「欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は、国際会計基準審議会(IASB)と米財務会計基準審議会(FASB)が国際会計基準の統一期限の先送りを決めたことに「失望」したと述べた」と報じた。(日本経済新聞 ニュース 欧州委員会委員 )
Michel Barnier: EU Is ‘Impatient’ with SEC, FASB Pussyfooting Around on Accounting Standard Convergence
(AccountancyAge11 May 2010)

比較情報(comparative information)の開示


国際会計基準IFRS1号「国際会計基準の適用初年度」の36項(下記参照)には、「国際会計基準1号に準拠するため、比較情報として少なくとも1期は表示しなくてはならない」、としており、2009年を国際会計基準適用初年度という場合は、2008年についても国際会計基準に準拠し注記を含む財務諸表を比較情報として開示しなければならない。比較情報を含むことで、業績、財政状態、キャッシュフロー等の趨勢が分かり、より有用な情報を提供しようとするもの。

IFRS 1 First-time Adoption of International Financial Reporting Standards, paragraph 36:
36. To comply with IAS 1, an entity's first IFRS financial statements shall include at least one year of comparative information under IFRSs.

日本に欠けた国際会計基準の最低知識

国際会計基準IAS1号「財務諸表の表示」のパラグラフ15、16、18によれば、財務諸表の適正表示とは以下の通りである。

15 財務諸表は、企業の財政状態、財務業績及びキャッシュフローを適正に表示するものでなければならない。IFRSを適正に適用し、必要な場合には追加的開示をすれば、ほとんどすべての場合に、適正表示を達成した財務諸表が作成されることになる。
16 IFRSに準拠した財務諸表を作成する企業は、その旨を開示しなければならない。財務諸表を適用すべき各基準書及び適用すべき解釈指針委員会の解釈指針すべての規定に従ったものでない限り、財務諸表がIFRSに準拠していると記述してはならない。
18 不適切な会計処理は、会計方針の開示又は注記もしくは説明文書のいずれによっても救済されるものではない。

我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)(案)の15ページのように、「万が一IASBが作成したIFRSに著しく適切でない部分があるため、我が国において「一般に公正妥当と認められる」会計基準とは認められない場合には、当局として、当該部分の適用を留保せざるを得ない場合があり得る
このため、当局として、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(連結財務諸表規則)等において、我が国における個々のIFRSの適用を認めるための適切な規定を整備する必要がある」としてIFRSの一部適用がないことになれば、会計監査人は、IFRSに準拠していないことから、限定意見か不適正意見を述べなければならなくなる。指定国際会計基準という日本が認めたものだけとすると、日本の認めた国際会計基準ということで国際会計基準そのものではなくなり、IFRSとの差異調整表が求められる恐れがある。実質IFRSと同じになり意味がない。

次に、国際会計基準IAS1号が求めている比較財務諸表の開示である。例えば、2011年に国際会計基準を適用すると表明したら、2010年と比較した財務諸表を表示する必要がある。かつ、金融当局は、投資者に対する情報開示で、適用年度前の年次報告書には、国際会計基準へ変更の影響を開示させる規則を設定することが”投資家保護”のために必要であること。

加えて、例えば、2011年から適用する場合、2011年適用時の会計方針で、過去の財務諸表を遡及修正して同一会計方針で比較財務諸表にしなければならないことである。まして、子会社・関連会社を含む連結財務諸表となると大変な作業量となることを知っておくべきである。

ここで大切なのは、国際会計基準1号で求めている比較財務諸表の表示を適用初年度についてわざわざ明文化したものが、国際財務報告基準1号の「国際会計基準の適用初年度の会計基準」である。韓国(K-IFRS1101)および中国(38号適用初年度の会計基準)の国際会計基準に準拠した会計基準ではすでに設定してある。日本では、適用初年度の会計基準がコンバージェンスの検討課題にもなっていないのだ。

日本には、比較財務諸表の会計基準がない。従って、会社法および金融商品取引法も監査報告書は単年度である。欧米は比較財務諸表に監査報告書がつく。また、会計方針の変更がある場合、過年度に遡及して新たな会計方針で比較財務諸表を表示する会計基準が存在しない。国際会計基準では当たり前となっている会計基準が存在しないことから、日本は、欧州連合や米国財務会計基準審議会(FASB)との議論が噛み合っていない。

過年度遡及修正にいたっては、「金融商品取引法開示制度等の調整が前提となる」として、金融庁との調整が未定であることがASBJのプロジェクト計画表に記載されている状況にある。はなはだ気の遠くなる状況にあるのが現状だ。(ASBJの改定プロジェクト計画表」参照) 

米国が、IFRSへ転換するのは英語圏であることと会計基準の内容がシンプルで近似しているので比較的簡単だ。日本は、言葉ばかりでなく金融庁の強大な権力・複雑な制度・規則が大きく阻んで容易ではない。(日本の制度会計 参照)

多少なりとも国際会計基準を知っている内外の者にとって、外交辞令を除いて、「日本の会計基準と国際会計基準とのコンバージェンスは順調に進んでおり、2009年までに日本基準と国際会計基準とが同等である」と思っていることは決してない。近い将来、そのことが必ず証明されよう。

日本の会計業界(情報開示する企業の会計担当者、会計士、税理士、会計学・監査論の教育者・学徒、会計・監査等に関わる法曹界、証券監督当局、国税当局など)が日本だけでしか通用しない世界から世界共通の会計を共有できる日はいつになることか、偏に金融庁の決断次第なのである。

東京証券取引所の斉藤社長は、「東京市場の国際化などと言いながら、言っていることとやっていることが違う。国を挙げてやらないと取り残される。一番怖いのは世界の中で孤立化することだ」と苦言を呈した。(FujiSankei Business 2007/11/17) 同感である。投資家にとって、完成度の高い単一の会計基準が投資判断には有用である。内外の投資家に複数の会計基準は投資活動の妨げとなる。

参考:
金融庁「第3回 日EU会計基準・監査の動向に関するモニタリング会合について」(2007年(平成19年)12月4日)
金融庁総務企画局審議官(国際担当)丸山純一氏の2007年4月9日発言 参照)

経済産業省「企業会計の国際対応に関する研究会中間報告」2004年(平成16年)6月11日・・国際基準に対する日本の認識を現している歴史的資料。
日本経団連の「会社法の計算書類等のひな型」(2007年2月9日)・・単年度表示の計算書類をひな型としている海外では比較財務諸表を株主へ送付する。
金融庁の「EDINET(エディネット)」・・有価証券報告書に含まれる財務諸表についての監査報告書は単年度財務諸表の監査報告書となっている。世界は比較財務諸表に監査報告書が添付される。

上記、経済産業省の中間報告にある日本の会計基準、国際会計基準、米国会計基準の比較はかなりひどいもの。例えば、財務諸表の表示について、注記や比較財務諸表は重要な要素であるが記載がない一方、附属明細書が米国基準にあって日本基準と同様としているが、米国の会計基準には国際会計基準同様に附属明細書は会計基準に存在しない。日本の会計基準が単年度表示の基準だから監査報告書も単年度表示であるし(欧米は比較財務諸表に監査意見を表明)、米国会計基準に附属明細書を財務諸表とする記載はないので監査報告書にも附属明細書(supplemental schedule)の記載はない。基本的な事項を取り扱っている国際会計基準(IAS1号「財務諸表の表示」)
を読んでいるようには思えないくらいひどいものである。また、米国会計基準でも区分表示が求められる廃止事業(IFRS5、旧IAS35)については全く触れていない。

2007年12月18日、欧州証券規制委員会(CESR)は、日本・米国・中国の会計基準の同等性について意見を披瀝した。日本については日本が約束している国際基準への収斂が行われており「同等である」とするが、2011年までに国際会計基準の適用を求める、としている。CESRニュース 参照)

2007年12月19日
、欧州市場に関するコミッショナーであるチャーリーマクリービー氏は「法定監査パッケッジ」を公表した。これによると、欧州に上場している企業の監査人は欧州の監査監視機構に登録を義務つけられるが、第三国は2011年までは現行通りとする。その間に、欧州は、国際監査基準の導入状況も含まれる第三国の監査監視機構の監視状況の同等性を評価するとしている

そして日本は取り残された(たかが会計基準、されど会計基準)

1998年12月7日,国際会計基準委員会の戦略作業部会(Strategy Working Party)から「IASCの将来像(Shaping IASC for the Future)」と題する検討書(Discussion Paper、以下DPと称す。)が公表された。

同月に、国際会計基準第(IAS)39号「金融商品:認識と測定」の設定で、証券監督者国際機構(IOSCO)との約束であった国際会計基準のコアスタンダードが完成し、次のステップとして国際会計基準の将来像を明らかにしたものであった。

DPによれば,起草委員会を基準開発委員会に置き換え、基準開発委員会は11名のメンバーから構成される。基準開発委員会は,各国の会計基準設定機関の代表をメンバーにすることを提案している。アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア・ニュージーランドといういわゆる「G4」の各国に、フランス、ドイツ及び日本を加えた7カ国は入るとみるのが常識的である。「G4」の諸国はもとより、フランスやドイツも迅速に会計基準設定機関の改革を行い、1998年までにこうした国際動向への対応を行った。その結果,その時点では、7カ国のうち、日本だけが適合できない国となっているのである。当時、日本では会計基準設定は大蔵省(現・金融庁)企業会計審議会で会計基準の設定のときにのみ開催される機関で、常設機関ではなかった。

2000年(平成12年)3月27日、日本公認会計士協会と経団連は、会計基準設定主体となる民間機関を設立することを明らかにした。大蔵省も大筋で了承。日本公認会計士協会が2000年3月22日付けわが国の会計基準設定主体のあり方について(骨子)2004年の過去データより入手可能)を公表2000年6月29日、当時の大蔵省(7月から金融庁)の「企業会計基準設定主体のあり方に関する懇談会」が企業会計基準設定主体のあり方について(論点整理)過去データからも文書入手できます)を公表した。

公認会計士協会は、独立性について「金融行政からの独立を保持する」、大蔵省の「企業会計基準設定主体のあり方」についても独立性について「行政を含む各方面からの独立性が確保される必要がある」としていた。

結局、2001年7月26日金融庁所管の公益法人として、財団法人 財務会計基準機構(FASF)の設立認可を受け、企業会計基準委員会(ASB)8月7日正式に発足した。政府出資を見送った」ようであるが、インターネットに掲載された金融庁の「補助金等支出明細書」「補助金・委託費等の交付先選定理由等」によれば、「国際会計基準の議論への的確な対応のためには、会計実務に関し専門能力の高い人材資源を必要とするが、現状の金融庁の体制においては対応困難な状況にあることから、高い専門能力を有した民間法人に事務委託を行う」として「財団法人 財務会計基準機構」に約1億3千万円の補助金を支出している。「国際会計基準事務委託費」「検索結果」 参照  

また、企業会計基準委員会の現委員長によれば、「会計基準の設定権限は金融庁にあり、私たちの出す基準に対して個別にガイドラインを公表しています。ですから、委員会のメインテーブルには、金融庁の方もオブザーバーとして参加いただいています」(インタビュー より)

「常識的に考えて民間が法律でないとはいえ、社会的な規範性のある基準を出すことはあり得ない。会計基準もその例外ではなく、その設定権限は金融庁にある。そのため私どもが出す個別基準ごとに、金融庁はそれらが一般に公正妥当と認められる会計基準に該当すると認めるとのガイドラインを発信し、私どもが作成した会計基準に規範性が付与されている。」(「わが国における会計基準の開発と国際対応. ―財務会計基準機構・企業会計基準委員会の活動を中心に―」. 2004年7月西川氏発言←「過去のアーカイブから文書入手可能」)

加えて、企業会計基準委員会(ASBJ)設立のいきさつについて「会計基準設定主体の役割を金融庁の企業会計審議会から実質的に引き継いだ」(「わが国の会計基準と国際的コンバージェンス」より)としており、委員も企業会計審議会から実質引継いだ。

一方、金融庁総務企画局企業開示課長三井秀範氏は「会計基準、これは国ではなくて、民間の設定主体がつくっております。日本ですとASBJ、企業会計基準委員会。国際会計基準はIASB。アメリカの会計基準は、FASB、財務会計基準審議会がつっているということであります」と、2008年4月2日(財)日本証券経済研究所講演で発言しており、ASBJの西川委員長とニュアンスを異にしており注目されるところである。(「金融資本市場法制等をめぐる最近の状況ー開示を中心としてー」←SECのコンセプトリリースに対する回答として、昨年11月にFASBがIFRSを適用する提案をSECにしたこと、AICPAがそれを指示していることなどは意図的に無視している。(14ページ) 参照)

会計基準の内容については、現在問題となっている企業結合の会計基準は、日本では対等合併があり持分プーリング法を堅持し、合併・買収の「のれん」については20年以内の規則的な償却を主張し、経団連の意向を強く反映したものとなった。買収法のみで「のれん」は耐用年数がないとして減損会計のみ適用の国際会計基準から大きくずれた会計基準は、平成15年(2003年)10月31日、金融庁の企業会計審議会第一部会は、国際会計基準とは一線を画する日本特有の会計基準である「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」を取りまとめ公表した。2000年7月に金融庁(金融庁設置法」「金融庁組織令」参照)が発足し企業会計審議会企業会計審議会令」参照)は大蔵省から同庁へ移管されていた。

これを受けて、ASBJの反応はEUからの国際基準へのコンバージェンスの圧力にしぶしぶ検討することになっているが未だ改正されていない。

米国財務会計基準審議会(FASB)を倣って企業会計基準委員会(ASBJ)が設立され、日本版FASBと言われたが、実態はかなり異質なものとなっている。会計基準の設定権限は米国もSECが堅持しているし、日本も金融庁が堅持している。これは、日本が米国を真似たために当然といえば当然。

日米の相違は会計基準設定主体の「独立性」にある。FASBがSECからの補助金を拒否して其の独立性を全うしている。その結果、FASBが生き残ることよりも純粋な結論を導き出した。

つまり、2007年11月7日FAF財務会計財団/FASB財務会計基準審議会は、コンセプト・リリースのSECへの回答として米国財務会計審議会の意見を公開し、会計基準は「投資家にとっては、すべての米国上場会社が単一のグローバルな会計基準設定主体が設定した会計基準を使用することが好ましい。したがって、すべての上場会社は改善した国際会計基準(improved version of IFRS)を適用することが最もよい。米国基準FASBと国際会計基準IFRSの二つの会計基準の選択適用は、不必要に複雑となり好ましくない。”改善して導入する方式improve-and-adopt approach)”が、企業のコストを最小限にし、かつ、投資家に判り易く望ましい」としている。これにより、SECにIFRSへの移行について日程を示すべきであるとしている。

米国公認会計士協会(AICPA)は、10月24日の上院公聴会で「米国の上場会社にも国際会計基準(IFRS)の適用を認めるべきである」と証言し、11月15日のSECへの提言にも同じ意見を提出している。

これにより、SECは2008年中にIFRSへの移行日程を公表すべく広く意見を聴取し検討を重ねている。(概要 IFRSへの移行のニュース 参照)

コンバージェンス方式を堅持すると思っていた米国が、国際会計基準の採用方式(アダプション方式)へ方針を変更したのは、投資家および企業の財務諸表作成者の双方にとって単一の会計基準という判り易い方法を選択すると言うしごく当たり前の結論である。

日本は、官・財・学が一丸となってコンバージェンスを唱えた、そして世界に唯一”日本の会計基準”が、米国のIFRSアダプション方式に変更することにより、取り残されることになった。

2008年5月28日、証券監督者国際機構(IOSCO)の会合で、SEC委員長コックス氏は、IFRSは財務の世界では国際共通語(lingua franca )になり、企業間比較が可能となり、コスト低減にも役立つと発言し、国際会計基準が世界の資本市場に組み込まれ成功するには以下の五つの原則を満たすことが必要ある、としている。(SEC委員長コックス氏がIFRSはリンガ・フランカと強調 参照):

第一に、会計基準が投資家の関心を得られて作成されること、投資家との架け橋とならなければならない。
第二に、会計基準の設定プロセスが透明であること。透明性は、投資家の信頼を得るばかりでなく、会計基準の完全性および品質を保証するものでなければならない。
第三に、会計基準設定主体は独立してなければならない。特別な懇請者からの独立、政策からの独立、産業界からの独立、国や地域の偏重から独立している必要がある。
第四に、会計基準設定主体は、常に説明できなければならない。国際会計基準は、に投資家や関係者のニーズを適時に満たすことを保証する必要がある。
第五、最後に、国際会計基準(IFRS)が継続して成功を収めるためには、会計基準を設定するプロセスに、関係者のすべてが参加することが極めて重要である。


一方、日本の金融庁(丸山純一氏)は、比較可能性のために財務報告の適合性を犠牲にしてはならないと警告、また、殆どの投資家はグローバルな比較可能性を必要としていないとして金融庁は反対派の急先鋒として発言している。(丸山氏反対意見ニュース  参照)

金融庁の主張は、時計の針が10年前(「国際会計基準委員会(IASC)の将来像」を公表した当時)に止まったように思える。当時、それまでは日本と歩調を合せ何事も反対していたドイツ・フランスは欧州連合(EU)の一員としてIFRSの適用に同調することになり、その後、日本は取り残されたまま反対し続けている

そもそも、IOSCOの会合で、IOSCOの趣旨に反する発言をする金融庁に世界は驚いているはず。そもそも国際会計基準委員会に核となる会計基準(コア・スタンダード)の完成を要請したのはIOSCO(IFRSデーターベースを規制当局用に開設しているほど)である。

コックスSEC委員長は慎重派である。前のSEC主任会計士ドナルド・ニコライセン氏(IFRSとのコンバージェンスのロードマップを作成した責任者)は、米国企業にIFRSの選択適用を認めてもよいと提言しているほど。(ロイター

2008年8月27日米国SECは、米国上場企業に対し2014年を国際会計基準(IFRS)適用日程(Roadmap)とする案を公表した。具体的には、株式時価総額7億ドルを超える大企業(large accelerated filers約110社)については2年以内の2009年(2009年12月15日以後終了する年度で登録は2010年)のIFRSの早期適用を可能にし2014年から義務化し、株式時価総額7千5百万ドル〜7億ドル未満の企業(accelerated filers)は2015年から、7千5百万ドル未満の中小企業(non-accelerated filers)は2016年からIFRSの適用を義務化する。ただし、2011年にSECは、IFRSの適用が公共の利益および投資家にとって良いのか決定する、として含みをもたせている。(SECのコックス委員長の談話 英文ニュース 日本語ニュース 参照)

2008年9月17日金融庁は沈黙を破り、「我が国企業会計のあり方に関する意見交換会」を開き、国際会計基準」の導入に向け、10月中旬以降に長官の諮問機関である企業会計審議会を開き、対象企業や採用方法などを議論する。2011年度以降の導入を念頭に置いたロードマップ(行程表)を早急にまとめたい考え、と報道された。(日経) 一方、1ヶ月以上もたって金融庁のサイトに7月31日に開催した第一回目の意見交換会における意見が公開されている。意見交換というより、金融庁の考えを公開しているようなもの。

2008年9月19日企業会計基準委員会(ASBJ)の西川委員長は「国際会計基準の先行導入に実験的に取り組むべきだ」との考えを示した、と報じた。(産経ニュース) ASBJのサイトには密かに「プロジェクト計画表の更新」が公表されたが、委員長の先行導入に関して公式見解が記載されておらず不明。

企業会計基準委員会(ASBJ)の西川郁生委員長は、包括利益など従来にない考え方の議論に対し、日本は「行き過ぎに歯止めをかける役割があるのではないか」と指摘(「日本は行き過ぎの歯止め役」より)しているが、国際会計基準審議会(IASB)の理事の見解では「日本の会計風土は素晴らしいものがあるとは思うが,ほとんどの事柄に同意せず,そしてそれは他国が納得する意見ではない。われわれは日本の意見すべてに耳を傾け,理解しているが,同意はできない(例えば,IASBは「包括利益」の導入を目指しているが,日本は当期利益の考え方がなくなり,実態がわかりにくくなるとして,反対意見を表明している」 日本を見る目は厳しいものがある。(IASB理事にインタビュー−2004年3月3日より)

日本の
会計基準設定主体
米国の
会計基準設定主体
企業会計審議会(旧大蔵省・現金融庁
元祖「企業会計原則」・・廃止されていない

財務諸表等規則第1条2項および連結財務諸表規則第1条2項には、「企業会計審議会により公表された企業会計の基準は、一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に該当するものとする」として「企業会計基準委員会の会計基準」はどこにも規定していない。驚かされるのは、財務諸表等規則第1条3項には、金融庁長官が会計基準を設定できる規定があることである。
米国会計基準の生成と発展の概観
金融庁が海外発信した唯一の英文”日本の会計基準
現在 金融庁所管の公益法人として
企業会計基準委員会(ASBJ)

委員会動画配信(Webcast)2008年7月より(注1)
財務会計基準審議会(FASB)
会計基準書の有料・無料 会計基準書等は高価である
2009年1月から企業会計基準委員会(ASBJ)も無料公開とするとしている
会計基準書等は公開されている
ASBJの会計基準と金融庁が作成する規則等の関係
(日本だけの特有な仕組み)


会計監査人の監査報告書は、企業の財務諸表が「我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して適正に表示されているかどうか」について意見を述べるのであって、重複規定の内閣府令(規則等)は日本特有なもので不要なのである。

国際会計基準(IFRS)の導入時に金融庁がどのように対応するのか見もののである。
現在のままでは、IAS1号「財務諸表の表示」に規則等は違反し国際会計基準に準拠することはできません。
日本は会計基準が有価証券報告書を作成するためには内閣府令(規則等)を基準と重複して作成している。
事例:

ASBJ債券の保有区分の変更に関する当面の取り扱い実務対応報告第26号2008年12月5日
  ↓金融庁にとってはASBJの基準書は諮問的文書
金融庁の内閣府令(規則等)債券の保有目的区分の変更に関する当面の取扱い(実務対応報告第29号)」に対応する改正内閣府令2008年12月12日
同改正ガイドライン(案)2008年12月12日

米国は、会計基準を財務会計基準審議会(FASB)に任せており重複した規則等はない。
設立主意 わが国の会計基準設定主体のあり方について(骨子)
2004年の過去データより入手可能)
企業会計基準設定主体のあり方について(論点整理)
主務官庁 金融庁
会計基準の設定権限を保持
米国証券取引委員会(SEC)
会計基準の設定権限を留保しているが
民間に依拠しており会計基準を設定したことはない。
主務官庁からの独立性 金融庁からの独立性は極めて薄いし
経団連からの独立性も薄い
官・財および会計学会も異論が無いのは日本的
何者に対しても独立性が高い
主務官庁からの補助金 国際会計基準事務委託費」として補助金を
金融庁から受領
独立性を守るためSECからの補助金を受けていない。
財務諸表 収支計算書等 年次報告書・・収入35億円程度(国際基準より少し多い)
その他参考 IASBの理事の見解・・2004年3月3日

注1:2008年7月11日より、企業会計基準委員会の議事進行をWebcastで配信するようになったが、議事進行を見ていると、財務諸表作成側の企業側の委員(事務局の副委員長を含めて)ばかりで議論しており、「企業負担〜」という発言が目立ち、中立であるべき議論が企業側に偏っているように思われる。欠席者や発言が少ない委員もおり委員会そのものが形式的なもののようだ。実質事務局が草案を作成する金融庁の企業会計審議会に瓜二つ。まるで金融庁のよう。会計基準設定主体が中立性・独立性を失ったら、存在意義さえ疑われることになろうし、独立性・中立性を守る国際会計基準への収斂で行き詰ることは目に見えている。

結論は、ASBJは行政からの独立性、特定の学者からの独立性、業界からの独立性、日本という地域エゴからの独立性のどれをとっても危ういものがある。IFRSを適用することで会計基準の独立性はおろか、透明性、信頼性、国際性、単一の高品質な会計基準など一挙に解決できる。日本は、いずれ、米国のようにIFRSの適用に向かうであろう。その速度は、権限を握る金融庁次第である。

参考
2008年5月6日米国公認会計士協会(AICPA)は、公共の利益を保護するため、公認会計士統一試験で国際会計基準(IFRS)を出題する案を公表し、7月31日までにコメントを求めている。(ニュース 公開草案 AICPA公表レター より)

  ・デロイトは、IFRS University Consortiumを立ち上げた(5月15日
  ・E&Yは、Academic Centerを立ち上げた(5月19日)

2008年5月18日米国公認会計士協会(AICPA)は、AICPAの倫理規定202条および203条のアペンディックスAを改定して、国際会計基準(IFRS)を会計基準設定主体であることを追加した。SECが外国企業にIFRSの適用を認めたことにより、米国会計士もIFRSによる財務諸表監査が必要となってきていることによる。加えて、会計士に国際会計基準の情報を提供するためにIFRS.comおよびcpa2biz.com. を立ち上げ会員を支援する、としている。(http://www.ifrs.com/ http://www.cpa2biz.com.   AICPAニュース Webcpa 参照)


2008年8月27日米国SECは、米国上場企業に対し2014年を国際会計基準(IFRS)適用日程(Roadmap)とする案を公表した。即、米国公認会計士協会AICPA)は「SECのロードマップを支持する声明書」を公表した。

2008年9月1日、日本公認会計士協会の増田宏一会長は1日都内で記者会見し、国内の上場企業について、国際会計基準(IFRS)を導入すべきだとの考えを表明した。これまで同協会は、自国基準を維持した上で、主要項目について国際基準との差異を解消する統合化を進めてきたが、従来方針を転換した。(時事通信 日本公認会計士協会「欧州視察報告」2008年9月←2008年3月の「経団連の欧州視察報告」に似ている。 参照)
世界に孤立する会計士であってはならない。海外の子会社を含む連結決算監査を行っている公認会計士の当然の帰結である。

2008年9月4日、日本経済新聞は朝刊で、「日本、国際会計基準導入へ」と題して、日本経団連、日本公認会計士協会、金融庁などが国際化に対応するため、2011年度以降に「国際会計基準」を導入する検討に入った、と報じた。経団連、会計士協会などは会計基準を巡る金融庁の協議会で9月中旬に国際基準の導入を提案。実際に会計基準委員会(ASBJ)や学識経験者らと国際基準の導入に向けた協議を始める、最終的には金融庁が導入を決めるとしている。(日経 経団連の欧州視察報告 公認会計士協会の欧州視察報告 参照)
・報道によると、いつものことながら金融庁は密室での協議で決めるようだ。相変わらず閉鎖的。(したがって、記者の希望的観測も含んでいる恐れがあり報道の内容の真偽のほどは不明)
・米国SECのように、ニュース・リリースを公表したり、広く一般に公開討論をして検討するべきであろう。
・米国FASBはSECに対してIFRS適用を提案したが、日本は記事によると金融庁がIFRS適用をASBJに提案し金融庁が導入を決めるそうだ。日本のASBJは独立性なく下請けのようだ。
・従来の審議会や委員会は、委員の学習会のようなものであったが、似て非なるものにしないためには、経験豊富な実務家が入り実態のあるIFRSの導入にして欲しいものである。

・企業会計基準委員会の設置したとき同じにぎりぎりまでアダプション(適用)はない。具体的には、米国の日程より後になる。これは、ビジョンを持たない金融庁が会計基準の権限を握っている限り日本の宿命。

金融庁の考え方 (ロイター(2008年9月8日) 参照)
金融庁としては、国際会計基準をめぐる米欧の駆け引きと自国の影響力の確保を慎重に見極めており「2011年以降の導入論」だけが先行することに警戒心が強い。ある金融庁の関係者は「この段階で、国際会計基準を導入する方向性が固まるのは、国益にとってマイナスだ。導入するならコンバージェンスは必要ないではないか、との論調になるのが最悪のシナリオになる」と警戒している。

上記の記事が正しいければ、金融庁は理解不足ということになる。コンバージェンスでは日本の会計基準であり国際会計基準(IFRS)ではない。米国が外国企業に認めたIFRSは、欧州連合(EU)のカーブアウトしたIFRSではなく、IASBが設定したIFRSとしており、コンバージェンスでは従来どおり「差異調整表」の開示を求められる(下記SECルール参照)。米国企業に認めようとするIFRSもIASBが設定したものでありコンバージェンスの米国会計基準ではないということだ。

 In all filings of foreign private issuers (see §230.405 of this chapter), except as stated otherwise in the applicable form, the financial statements may be prepared according to a comprehensive set of accounting principles, other than those generally accepted in the United States or International Financial Reporting Standards as issued by the International Accounting Standards Board, if a reconciliation to U.S. Generally Accepted Accounting Principles and the provisions of Regulation S?X of the type specified in Item 18 of Form 20?F (§249.220f of this chapter) is also filed as part of the financial statements. Alternatively, the financial statements may be prepared according to U.S. Generally Accepted Accounting Principles or
International Financial Reporting Standards as issued by the International Accounting Standards Board.SECルール Regulation S-X [17 CFR Part 210] § 210.4-01 (a)(2) 参照)


国益? 省益 金融庁の”庁益”の間違いではないか判断の先送りが国益か?
金融庁の国際会計基準に対する対応を見ると、「官僚制の逆機能」を絵で描いたような典型例で遅々とした反応である。

米国が欧州のカーブアウト(一部免除)のIFRSではなくIASBのIFRSのみを認めているのは当然で、国際会計基準IAS1号の14項に「IFRSに準拠した財務諸表を作成する企業は、その旨を開示しなければならない。財務諸表を適用すべき各基準書及び適用すべき解釈指針委員会の解釈指針すべての規定に従ったものでない限り、財務諸表がIFRSに準拠していると記述してはならない。(現パラグラフ14」としており、一つの会計基準を志向してIFRSの適用を米国上場企業に求めるのは、アダプション(適用)である。ただし、米国はIFRS適用にあたり、IASB自身の資金面、技術面、ガバナンス面で充実させるための支援を約束している。

2008年9月17日金融庁は沈黙を破り、「我が国企業会計のあり方に関する意見交換会」を開き、国際会計基準」の導入に向け、10月中旬以降に長官の諮問機関である企業会計審議会を開き、対象企業や採用方法などを議論する。2011年度以降の導入を念頭に置いたロードマップ(行程表)を早急にまとめたい考え、と報道された。(日経
一方、1ヶ月以上もたって金融庁のサイトに7月31日に開催した第一回目の意見交換会における意見が公開されている。意見交換というより、金融庁の考えを公開しているようなもの。

2008年9月19日企業会計基準委員会(ASBJ)の西川委員長は「国際会計基準の先行導入に実験的に取り組むべきだ」との考えを示した、と報じた。(産経ニュース) ASBJのサイトには密かに「プロジェクト計画表の更新」が公表されたが、委員長の先行導入に関して公式見解が記載されておらず不明。

また、委員長は講演会で「米国SEC登録の日本企業の連結財務諸表について早期にIFRSの選択適用を認めてはどうか」としているが、SEC登録外のIFRS適用の日本企業や適用予定の企業のニーズを無視するものである。米国が慎重にIFRSの適用(案)を公表したことで、いずれIFRS適用となる(誰でもそう考えている)ので、ASBJが独特の考え方でIFRSへのコンバージェンス作業をしているが、IFRSより複雑で判り難いコンバージェンス作業が無駄との議論を回避するためではないか。SEC登録会社以外に海外子会社を有している会社やこれからも海外と関係を強化する会社も多い。コンバージェンスでは企業のニーズを叶えられない。

2008年10月14日、日本経団連、「国際会計基準を選択適用すべきとの方針」を初めて明らかにした。(経団連「会計基準の国際的統一化への我が国の対応参照) 
経団連の会計基準の考え方は欧米のそれとは異なっている。米国および国際会計基準は、上場会社と中小企業の場合は関係者(銀行などの融資する側、私募債を引受ける側など会計基準に準拠した監査済み財務諸表)が必要と認めた場合のみ会計基準を使用するものである。逆に言うと、開示を必要としない中小企業は税法会計で作成した未監査の財務諸表を法人税の確定申告書に添付しているのは米国・カナダも日本と同じ実務である。欧米では、会計基準と監査は密接不可分で、一般的には監査費用の負担能力のない中小企業に会計監査は求めないのが常識。会計基準に準拠しているかどうかの意見を述べる監査をしない財務諸表に信頼性が生れないのは自明の理。日本の場合、配当可能利益計算目的で会社法(旧商法)が中小企業の会計までも規定しているため日本独自の会計基準の考えが生じてしまい、中小企業までも適用するものと誤解してしまっている。会社法(旧商法)会計があるため、個別・連結財務諸表の考え方は日本独特で、国際的に話が合わない原因にもなっているのである


2008年10月23日企業会計審議会企画調整部会資料 議事要旨 議事録 参照)は、日本企業への国際会計基準(IFRS)の導入について議論を開始した。2011年6月末以降を視野に、導入計画としてのロードマップ(工程表)をどのように作成していくか検討していく。同日の議論では、国内企業への義務付けの意見も出たが、段階的に任意適用から始めるべきとの意見が多数を占めた。(ロイター 参照)
 議事要旨を見ると纏まりのない学者ばかりのばらばらの意見。欧米の豊富な実務経験のある者複数を参加させないと、事務局が日本流の奇妙な仕組みを構築する恐れがある。

IFRS導入の権限を持つ金融庁は、2008年4月2日、担当官金融庁総務企画局企業開示課長三井秀範氏は”金融資本市場法制等をめぐる最近の状況開示を中心としてと題して講演しているが、国際会計基準の動向については評論家のように国際情勢の現状説明に留まっている。日本で唯一権限のある金融庁は、日本の方針を語るべき立場ではないのか。IFRSの国際情勢は多少会計に興味のあるものであれば知っていることで、金融庁に説明してもらわなくても分かっていることである。

経済産業省経済産業政策局企業行動課では、IFRSの日本導入に関して本格的に動き出し、11月25日「平成20年度総合調査研究「会計基準の国際化対応に関する調査研究」を公募入札仕様書 参照)しており、入札結果がいずれ公表されるであろ。日本での制度設計は経済産業省が行い、金融庁は金融証券取引法の関係、会社法の関係は法務省と言う従来型の縦割り行政の枠で設計されるようだ。心配されるのは、経済産業省が会計制度の内外の実務が分かっていないことにある。

2008年12月16日企業会計審議会企画調整部会論点メモ 議事要旨 議事録 資料 参照)が開催されたことになっているが、SECがロードマップ(草案)を公表11月14日)と欧州委員会(EU)が米国、日本、カナダ、中国等の会計基準を国際基準と相当と認め、2009年以降もこれら第三国の会計基準での財務情報の開示を認める決定(12月12日)を見て、それを土台として論点を記述し、金融庁が日本の方向付けをしている。2011年6月まではコンバージェンスに専念し、導入は、単独と切り離した連結先行論の方針であるようだ。議論は形式のみで金融庁が決めているようだ。

論点メモを見ると内容が矛盾している。「EUによる同等性評価の決定は、現時点で我が国会計基準のみならず、会計基準に基づく会計実務も含め国際的に高品質かつ整合的であることが認知されていることの証左と考えられる(4/25)」としながら、「一方で、国際会計基準を我が国において採用するにしても、乗り越えなければならない様々な課題や留意すべき事項等があり(3/25)」として国際基準とは相当相違していることを認めている。IFRS(国際基準)導入には所管官庁が自らの責任で方針を打ち出せないで時間稼ぎばかりしているは、国際会計基準(IFRS)を理解していない証左である。
欧州においては、国際会計基準の義務付けは連結のみとされ、単体は各国の裁量に委ねられている(ドイツ、フランス等では、単体について自国基準での作成を義務づけ。英国では、単体につき国際会計基準とイギリス基準の選択が可能)」(6/25)としているが、上場会社で個別財務諸表の開示が求められている国は見当たらないドイツ等欧州の証券取引所での上場会社の情報開示 参照)。日本だけが連結財務諸表に重複して個別財務諸表の開示を求めているのか金融庁は理由を明示して応える義務がある。筆者は金融庁が上場会社の情報開示に関する国際基準を理解していない証左だと思っている。

2009年1月15日、新大統領オバマ政権の新SEC委員長候補メアリー・シャピロ女史(Mary Schapiro)が上院の就任前の確認で、一つの高品質な会計基準の適用は認めているが、前委員長の公表したIFRSへのロードマップに拘束されないと発言。IFRSへの移行にコストが掛かりすぎること、移行の日程が急すぎること、IASBの独立性に疑問であること、IFRSが米国基準のように詳細に規定しておらず信頼性に疑問であることなどを理由としている。IFRSの適用がスローダウンしそうな雲息である。元FRB議長、元IASB評議会委員長ポール・ボルカー(Paul Volker)氏がIFRSを支持しておりオバマ政権の経済回復諮問委員会委員長に就任しており注目される。(ニュース AICPA IFRS Resources 参照)

2009年1月28日金融庁の企業会計審議会が開かれた。公表された「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)(案)」によれば、「2010年3月期の年度の財務諸表からIFRSの任意適用を認めることが考えられる(13ページ)」「IFRSの強制適用の判断の時期については、とりあえず2012年を目途とすることが考えられる(15ページ)」としている。2月4日、金融庁から公表され4月6日までにコメントを求めている中間報告(案)は同じもの。(ニュース 参照)

日本は「国際基準と同等と認められた」と喧伝しておきながら、いざIFRS適用となると、内容はかなり曖昧な部分を残しており不透明である。
つまり、2009年4月から適用の場合IASBのIFRS1号では遡及して適用し2008年3月期の比較財務諸表と、2007年4月1日の貸借対照表を開示する必要がある。また、一般的には、2009年4月からの四半期報告書は前年同期のIFRS適用の比較情報の開示が必要となるが、2010年3月期の年度の財務諸表からIFRSの任意適用を認める、という語句は2009年4月からの四半期報告書は含まないようである。金融庁の案はいずれにしても典型的な官僚の作文でビジョンが感じられず不明瞭。IFRSを理解しているとは到底思えない。

数週間後に公開された議事録によれば、三井秀範企業開示課長が「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)(案)」を作成したとしているが、氏は法律家で「事務局としては国家主権があるだろうからやはり留保したいという気持ちはあるかもしれませんが、本当に強制適用という段階になったときに我が国の独自の状況があるためと称してこれをやってしまったら、IFRSのアドプションにならないと思うのです。この問題は、はっきりと考えるべきだと思います」とのコメントに「最高裁の判例によりますと、裁判所に最終的な判断権があるということでございますので、そこは現行の判例を踏襲しているということで、ご容赦頂ければと思います」と答えているのには違和感を覚える。

2009年3月13日財務会計財団(FAF)及び財務会計基準審議会(FASBは、SECのIFRS導入のロードマップに関して134ページに及ぶ意見書を提出した。
SECのIFRS導入には、十分な検討を重ね、米国上場会社のすべての企業にIFRSの適用を究極的に要求することを決定するまでは、大企業に選択適用を認めるべきではないと提言した。"We continue to believe that the SEC should not permit an option unless and until there is a decision that all U.S. public companies will ultimately be required to adopt IFRS."(ジャーナル・オブ・アカンタンシー 参照) 1月に就任したシャピロSEC委員長のロードマップ見直しに呼応している意見である。

200946日(社)日本経済団体連合会金融庁企業会計審議会企画調整部会が24日に公表した「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)()」は、経団連が昨年10月に公表した提言「会計基準の国際的な統一化へのわが国の対応」の内容が反映されており、基本的な方向性について賛同する、とのコメントを公表した。
経団連では本年3月に、改めて全会員企業(1,307社)に対しアンケート調査 <PDF> を行っている。

2009年5月15日米国公認会計士試験に、2011年からIFRSを出題することが承認される(国際監査基準の理解も含む)。 1年前にIFRSをCPA試験に提案していたもの。

2009年5月26日金融庁は、「有価証券報告書の重点審査及び状況調査について(決算期末:平成21年3月31日から平成22年3月30日分)」としてU.状況調査項目1.内部統制報告書について2.国際会計基準(IFRS)への対応についてについて状況調査表の提出を求めています。IFRSについては次のような調査内容になっています。4月6日の経団連のアンケート調査との誤差に興味がある。

(1) 2010年3月期(平成22年)の年度から、一定の要件を満たした会社について、IFRSの任意適用が認められることとなる可能性があることをご存知ですか。
(2) IFRS任意適用の意向又は関心がありますか。
(3) IFRS任意適用の意向又は関心があり、具体的な導入時期が決定していますか。
(導入時期が決定している場合は、具体的な導入時期(記載例:2010年3月期))
(4) IFRS任意適用の意向があるか否かに関らず、導入にあたって課題となると考えられる事実があれば、自由に記載してください。

新たな会計基準の適用は、国際会計基準(IAS)第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」のパラグラフ28に、新たな会計基準を初めて適用し現在、過去または将来の期間に影響を及ぼすかもしれない場合、適用する会計基準又は指針、会計方針変更の内容、可能な場合影響する科目及び影響額を開示する必要がある。将に財務諸表の読者に必要な情報である。日本は、金融庁が行政に必要な情報として”状況調査”としているが、国際会計基準は投資家に必要な情報と捉えている。適用する会計基準で利益が変わり株価に影響する。米国を含む国際基準は、投資家保護に当然に会計基準の新たな適用または変更については重要な情報開示と考えられている。日本にはそうした規定はない。(連結財務諸表規則  財務諸表規則 参照)

2009年6月11日金融庁企業会計審議会企画調整部会会合を開き「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)」(案)に対するコメント公開草案からの修正案概要)、連結財務諸表規則及び財務諸表等規則の改正案(未定稿)最近の国際会計基準を巡る動向を公表。2009年12月11日、最終改正内閣府令等を公表した。2015年〜2016年にIFRS適用の義務化を目指す。最終決定は2012年としている。これは、米国が2011年に最終決定するとする日程に合せており米国の出方を見るためである。証券監督者国際機構(IOSCO)が国際会計基準(IAS)を承認し欧州が2005年からIASを適用する旨公表してから10年の歳月が経った(日本にとっては失われた10年)。

6月11日の修正案概要 2010年3月期
2009年4月開始事業年度
2011年3月期
2010年度
2012年 準備期間 2015年〜2016年 2017年〜2018年
上場会社の連結財務諸表 任意適用⇒(注1)
特定会社指定国際会計基準を適用
日本電波工業が適用1号となった
(注2) 強制適用の目途を
明らかにする
3年後 強制適用
金融庁独自判断できず
米国のIFRS判断待ちで
2013年以降に判断先延ばし
変更 5年から7年に延長する
二年前の議論に後戻り・・2011年6月
強制適用

国際会計基準は2期比較を要求しており、実質的に3期のIFRSによる決算が必要となる。
注1:任意適用2010年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2009年3月期と比較し、IFRS適用の2008年3月期(2008年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。
注2:任意適用2011年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2010年3月期と比較し、IFRS適用の2009年3月期(2009年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。
   
2010年12月1日、突然、住友商事が2011年3月期の有価証券報告書にIFRSを任意適用すると発表した。EDINETに登録の住友商事の有価証券報告書 住友商事の投資家情報 IFRS評議員島崎憲明氏は住友商事出身 住友商事の鶯地(おうち)隆継氏をIASB理事に
    2011年3月期のIFRS初度適用の有価証券報告書(米国基準からの初度適用) 参照

注3:任意適用2012年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2011年3月期と比較し、IFRS適用の2010年3月期(2010年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。
注4:任意適用2013年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2012年3月期と比較し、IFRS適用の2011年3月期(2011年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。
注5:任意適用2014年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2013年3月期と比較し、IFRS適用の2012年3月期(2012年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。

注6:任意適用2015年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2014年3月期と比較し、IFRS適用の2013年3月期(2013年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。
注7:任意適用2016年3月期の初度適用の場合、2年比較の財務諸表は、2015年3月期と比較し、IFRS適用の2014年3月期(2014年4月1日現在)の貸借対照表も表示する。
注意:米国SECに登録している会社は、現行3年間の開示が求められており、上記の国際会計基準より1年前の財務諸表が必要となる。ただしSECは国際基準に一致させるか考慮中。(PwC

目を引くのは、連結財務諸表規則及び財務諸表等規則で、@企業会計基準委員会の会計基準を”一般に公正妥当な会計基準である”と認める規則改正と、A指定国際会計基準の規定を挿入しようとしていることである。 2001年に創設された企業会計基準委員会が設定した会計基準がやっと内閣府令に初めて明示され金融庁から認知されることになるようです。これにより、個別財務諸表が延命されるでしょう。個別財務諸表を省略すると国費を投入している企業会計基準委員会の存在が希薄となる恐れがある。役人用語で”検討”は”検討するだけで何もしない”と言う意味だそうだから、企業は、当分、連結・個別財務諸表の提出が継続して義務付けられるようです。金融庁の文章は役人用語で満たされています。

金融庁の「指定国際会計基準」・・改正ごとに追加される「報道発表資料」参照

「案を作成した金融庁総務企画局 企業開示課長 三井秀範氏の肉声」が金融庁官僚の理解の程度を知る上で最も参考になります。 
金融商品取引法における 国際会計基準のエンフォースメント」by松尾直彦元金融庁担当官、2009年9月著←金融庁(役所)の考えそのもの 参照)
松尾直彦氏は、金融庁OBの多い西村あさひ法律事務所弁護士に元金融庁長官五味廣文氏が顧問となっている。米国の証券弁護士を目指しているようだ。(EUとの交渉時の発言 参照)

なお、主要国はIASBのサイトから下記のように無償で国際会計基準をダウンロードでき自国語で読むことが出来る。金融庁及び企業会計基準委員会は速やかに日本語版をIASBのサイトから入手できるよう手配すべきだ。

IASBのサイトから「IFRS本文の無償ダウンロード」:
英語版・・米国企業や会計士にとって入手し易くIFRS導入に弾みをつけよう。
ドイツ語、フランス語、イタリア語、オランダ語、スペイン語への翻訳版は”こちら”。残念ですが日本語への翻訳版はありません。

2009年6月30日、金融庁は、2010年(平成22年)3月期の年度の連結財務諸表から国際会計基準による作成を容認する方針が示されたことを踏まえ、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「連結財務諸表規則」という。)及び企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」という。)等について所要の改正を行う。(金融庁内閣府令(案)  連結財務諸表規則案 財務諸表規則案 我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)(PDF:359K)  ニュース 参照)

連結財務諸表規則案第1条の2で、IFRS適用の条件の一つに、外国子会社の資本金が20億円以上というのがある。担当課長は判りやすいと言っているが、何を言っているのか分からない。(金融庁企業開示課長が明かす「任意適用の4条件」参照

2009年8月5日法務省は、「所定の株式会社について、国際会計基準に従って連結計算書類を作成することを許容するため、会社法(平成17年法律第86号)の委任に基づく会社計算規則(平成18年法務省令第13号)について、所要の改正を行う」として改正案を公表した。(「会社計算規則の一部を改正する省令案」)

2009年8月7日日本公認会計士協会は、金融庁が6月30日に公開した金融庁内閣府令(案)に対し”「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対する意見について”と題する金融庁に対するコメントを公表した。纏まりのない文章で困惑している様子が窺える。金融庁にも、公認会計士協会にもビジョンがなく、予想していなかった米国のIFRSの突然の採用に右往左往している様子が窺える。

2009年8月19日日本公認会計士協会(JICPA)は、やっとIFRSに関するウエッブを掲載し紹介し始めた。
ケーススタディ」は、欧州において2005年から始まったIFRS適用時にCESR(欧州証券規制当局委員会)内のEECS(European Enforcers Co-ordination Sessions)に寄せられた事項の中から抜粋され、公表された事例であり、日本においても参考になると思われるためにIFRSデスクにて翻訳を行ったものだそうです。(元金融庁松尾直彦氏IFRSのエンフォースメント」参照)

JICPAケース・スタディ・・CESR執行決定データベースEECSの原文最新版CESR-Finに掲載される)
さしずめ米国SECにおけるStaff Accounting Bulletins, SABで、規制当局SECの会計に関する見解を明らかにしている。(TABLE OF CONTENTS 参照)

2008年5月18日米国公認会計士協会(AICPA)は、AICPAの倫理規定202条および203条のアペンディックスAを改定して、国際会計基準(IFRS)を会計基準設定主体であることを追加した。SECが外国企業にIFRSの適用を認めたことにより、米国会計士もIFRSによる財務諸表監査が必要となってきていることによる。加えて、会計士に国際会計基準の情報を提供するためにIFRS.comおよびcpa2biz.com. を立ち上げ会員を支援する、としている。(http://www.ifrs.com/ http://www.cpa2biz.com.   AICPAニュース Webcpa 参照)

2009年8月25日SEC委員長メアリー・シャピロ女史は、ジェームス・クローカー(James Kroeker 40才)を主任会計士に任命すると公表した。氏はデロイトのパートナーで、2007年からSECの主任会計士代行となっており、前政権時代にロードマップ作成に関与していた人物。(SECニュ−ス・リリース ブルーミングバーグ 2009年3月の米議会での時価会計の議論  Kroeker's SEC role raises hopes for US adoption of global rules "the end of the fall" ? which, he quipped, might be "around 9 am on December 21." 参照)
因みに、デロイトは、IFRS普及に情熱を注ぎ100カ国以上の国がIFRS適用することとなった立役者の一人であるポール・パクター氏の勤務先である。

日本では、「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)(案)」を作成した金融庁の三井秀範企業開示課長に該当しよう。しかし、三井秀範課長のほうが業法まで権限を有しており、米国の主任会計士より強力な権限を持っている。日本では、会計監査が専門化していないのである。日本では、会計監査が進化しないのは官僚独裁が原因である(戦前の”軍部独裁”が敗戦により民主化されたことに対比される)。担当官僚に知識経験があればもっと積極的に対応できたはず。日本も、経済大国としての資本市場を維持発展するためには欧米のように知識経験豊富な専門官を必要としている。つぎに問題とされる国際監査基準では、国際会計基準と同じ対応が議論されているのだ。金融庁は、欧米同様に複雑化した時代に対応して人材を専門化すべきであろう。

片山善博氏(キャリア官僚→鳥取県知事→慶応義塾大学教授の経歴の持ち主)によれば、「今の事務次官は省庁の権益の守護者にすぎません。国民の利益に反することばかりしている。他の幹部職員も専門知識など持っていません。得意なのは根回しと場つなぎぐらいではないですか」とのことですが、全く同感である。

7月−8月にKPMGと米国会計学会(AAA)が行った共同調査によると、500人の会計学教授の半数近くがIFRSを導入すべきであるとの回答を得たとしている。

2009年9月25日20カ国・地域(G20)首脳会議は、ピッツバーグサミットで2011年6月までにIFRS収斂の完了を要請するコミュニケを公表した。(FEI Summary AICPA・IFRS IFRS Blog)。鳩山首相の外交デビュー、その実行性が問われることになる。
14. We call on our international accounting bodies to redouble their efforts to achieve a single set of high quality, global accounting standards within the context of their independent standard setting process, and complete their convergence project by June 2011. The International Accounting Standards Board’s (IASB) institutional framework should further enhance the involvement of various stakeholders.
日本のASBJは、IASBとFASBのコンバージェンスが加速していることから、9月2日に、IFRSコンバージェンスを前倒しで行うと公表してた。更なるコンバージョンの完成が求められよう。

2009年(平成21年)10月9日(金)13:01〜13:28 場所:金融庁大臣室亀井静香内閣府特命担当大臣は記者の質問に対して以下の回答をしている。仰天発言である

問)週刊エコノミストの濱條です。時価会計の凍結と言っていらっしゃって、ただ、
6月に企業会計審議会は、この20103月から国際化基準の任意適用を認めると。2012年には、もう201516年をめどに強制適用みたいな形のことを言われていますが、これは見直しですか

答:亀井静香内閣府特命担当大臣そんなことはやりません。
もう、日本は新しい時代に入っています。そうした国際基準が、アメリカもヨーロッパも日本も同じというのは理想です。そうはいきません。これは、国々にはそれぞれの営みがあるのです。会社の経営にしたって、それに合った形でやれば良い話であって、今だってアメリカとヨーロッパはそうでしょう。今度、ヨーロッパの方が来るようだけれども。それが違うのはある面では仕方がないことなのです。日本だってそうです。日本の経営は、やはり日本の実態に合った形で会計基準も運用していくべきで、恐らく将来一緒になっていくでしょう。だけど、なかなか世界的に一遍にはいかないのではないですか。簡単に言うとそういうことです。四角四面なことをやらせるつもりはありません。

問)では、6月の中間報告は、もう白紙という理解で良いですか。6月の中間報告は、白紙撤回ということですか。

答:亀井静香金内閣府特命担当大臣)中間報告なんかしているの。

問)前政権でやっているのですけれども。

副大臣)いや、まだ中間報告の内容については、十分に検討した上で対応するということですから、それについて、今、ご回答は、ちょっと…。

答:亀井静香内閣府特命担当大臣小泉・竹中のやったものを私は踏襲する気はないのです。それを、アメリカやそこらがあてにしていったら大間違い。そうですよ。私は5月にアメリカへ行ってシーモアとかビューターだというけれども、この亀井静香をCIAが暗殺でもしない限りは、アメリカの言うとおりにはならないよと。わかりやすいでしょう。

2009年10月28日日本経済団体連合会など3団体(経団連、企業会計基準委員会公認会計士協会)は、IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)適用に関してオーストラリア(豪州)で9月に行った現地調査報告を公開した。オーストラリアでは2005年にIFRSが強制適用。報告書はオーストラリア企業が経験したIFRS導入の問題点やその解決について「参考となる面があり、今後の導入過程で活用できる」と指摘した。(ニュース 参照)

日本が誤解している部分を正すには良いようである。例えば、「IFRSについての統一されたガイドラインは豪州にはないものの、原則主義の大きな問題とはならなかった」、「IFRSは原則主義と言われているが、実際はIAS39のように詳細な規則が定められている場合があり」IFRSは必要な基準を公表している。日本独自のガイドラインを作成すれば、現在の日本の基準のように日本独自のものになってしまう恐れがあることを認識すべきだ。オーストラリアの対応は当然で日本は見習うべきだ。


「豪州には約1,500千社の企業があるが、その規模に応じて、財務諸表の作成義務による開示負担が異なる。中規模の企業は、財務諸表の作成義務はあるものの、開示負担は軽減されており、小規模な企業においては、財務諸表の作成義務はない」
として日本の会社法第431条が、中小会社を含むすべての株式会社に会計基準の適用を求めているのと異なっていることが指摘されている。

2009年10月29日米国財務会計基準審議会FASBと国際会計基準審議会IASBは、コンバージェンスの目標年度の2011年まで、会計基準開発のスピードアップのため両者はミーティングを毎月行うことをニューヨークで行われたIFRSのコンファレンスで明らかにした。また、証券取引委員会SECの主任会計士ジェームス・クローカーは、この秋にロードマップを明確にすることを、30日ニューヨークで開催の米国会計士協会AICPAとIASBとのコンファレンスで明らかにした。(ジャーナル・オブ・アカンタンシー  IASB  FASB 参照)

因みに、日本の企業会計基準委員会ASBJは、半年に一回の会合である。(「IASBとのコンバージェンスプロジェクト」 「Webcast」 参照)

2009年12月1日金融庁は、6月に草案を公表していたIFRSの適用規定について「改正府令等につきましては、本年12月11日(金)に公布の予定です(公布の日から施行します)が、本日、別紙のとおり、改正府令(案)等を公表します」との公表がありました。不思議な文章です。(「IFRS任意適用の条件、並行開示内容が本決まりへ」参照)
改正内閣府令案の概要・・「特定会社」の定義が官僚の作文で規制されており判りにくいので注意が必要。要するに、金融庁は早期適用をさせたくないようだ。
監査対象外ながら、日本基準による要約連結財務諸表、会計方針の変更に関する説明、さらに収益など主要項目に関する日本基準とIFRSの差異について、概算額による説明が求められる(いずれも当期と前期)。翌年度以降は、差異についての概算額による説明のみが求められる。これは、日本特有の金融庁が求めている二重の平行開示である
IFRSと日本基準の二重開示で投資家(読者)は判断に迷うのではないでしょうか。少なくとも作成者・投資家にとって判り易くはない。
任意適用の条件を満たす単体決算の企業(連結財務諸表を作成していない企業)についても日本基準による財務諸表に加えて、「国際会計基準による財務諸表を作成することができる」と記載している。

12月11日、金融庁は、IFRS適用に関する改正府令等を公表。そのなかで、パブリックコメントの概要、金融庁の考え方も併せて公表した。平行開示については、かなり独断的である。「並行開示は、導入初年度における要約連結財務諸表の開示(前年度及び当年度財務諸表各1年分)に限定し、かつ、監査対象外とします」とする一方、「差異に関する事項については、日本基準を適用している会社の財務諸表との比較可能性等を考慮し、記載を求めることとします」としており金融庁がIFRSを理解しているとは思えない内容だ。

府令の新用語等: 特定会社連結財務諸表規則第1条の二)  指定国際会計基準(金融庁告示(ASBJの会計基準を含む) 解釈指針)
同日、会社法でもIFRS適用に関する会社計算規則等を公表して対応した。
2009年12月18日、金融庁が「IFRS適用初年度の連結財務諸表の例示を公表

2010年2月8日、ブラッセルの欧州委員会(European Commission in Brussels )が招いた会計・監査の国際化に関するコンファレンスで、金融庁国際担当河野正道監督局審議官(53)が「日本のIFRS適用の進捗状況」で「Japan’s Roadmap for IFRSs ApplicationについてVoluntary Application From: Fiscal year ending 31 March 2010Voluntary」と強調して説明している。なお、当日のビデオが公開されている。IASBのアプトン氏、SECのチーフ・アカウンタントのエアハルト女史の発表の後、27分頃金融庁の河野審議官が約8分間金融庁の考えを発表している。

2010年4月12日,企業会計基準委員会(ASBJ)は、ASBJがIFRSコンバージェンスの新計画表、「包括利益」は3カ月延期した。(ニュース
2010年4月14日,米国財務会計基準審議会(FASB)と国際会計基準審議会(IASB)コンバージェンス・進捗状況報告書を四半期報告として公表した。(ニュース

●2010年4月19日経済産業省の企業財務委員会 企業会計検討ワーキンググループ(座長:加賀谷哲之・一橋大学大学院准教授)は、日本のIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)適用について提言する中間報告書を公表した。金融庁を中心に行われてきたIFRSを巡る議論を補う内容といえるが、これまでの議論に疑問を投げかける指摘もある。 中間報告の骨子は3つだ。
1.「連単分離」(議論を切り分け)。そのうえで「単体」について関係者が一体となった検討
2.開示制度全体の再設計
3.非上場企業のための会計

注意日本経団連など経済3団体とソニーやトヨタ自動車など国際的に活動する企業の財務部門トップらでつくる研究会「企業財務委員会

●2010年6月8日、金融庁・企業会計審議会は、経済産業省の企業財務委員会の中間報告を受けて、「単体の会計基準のあり方(コンバージェンス)について」検討に入った。

2010年3月26日の企業会計審議会監査部会において、金融庁の三井企業開示課長は次のように発言している。つまり、個別は別途議論する報告で動いていることを示唆している。
○三井企業開示課長 一昨年から昨年にかけまして、いわゆる連結先行という、連結の財務諸表に係る会計基準と単体の財務諸表に係る会計基準について、従来は全く同一であるということを大前提としていたことについて、いわゆる連結先行ということで、若干時間的なずれを容認するということをここの場でご議論頂きました。この考え方の資料には少しダイナミック・アプローチという言葉をつけてございます。(資料1西川ASBJ委員長「上場会社の個別財務諸表の取扱い(連結先行の考え方)に関する検討会」)

企業会計基準委員会(ASBJ)は6月8日、会計コンバージェンスに基づく会計基準の策定について連結財務諸表だけを対象にし、単体の財務諸表については判断を一時的に留保する考えを示した。ASBJはこれまで基本的に連結と単体の両方を対象に会計基準の策定を行ってきたが、単体基準のコンバージェンスについて疑問の声があり、金融庁の企業会計審議会での結論が出るまで連結基準のみを議論することにした。(IFRSフォーラム)

関西経済連合会は、「国際会計基準の導入に関する提言」を公表した。提言では、今更「国際会計基準は、基本的には欧米の社会制度・商慣行を前提として議論されており、日本独自の社会的な背景のもとで適用された場合の影響については十分な検討がなされていない」という書き出しで始まり目を疑うような提言である。

2010年6月15日日本公認会計士協会は、租税調査会研究報告第20号「会計基準のコンバージェンスと確定決算主義」を公表した。確定決算主義の歴史的背景、国際比較など詳しく述べ労作である。結論では、「確定決算主義の放棄を議論するのは時期尚早と考えるが、上述の逆基準性などの問題から、少なくとも損金経理要件の見直しが必要である」としている。しかし、経済産業省金融庁企業会計審議会で検討が始まってしまい残念である。会計の専門家として後出しジャンケンではなく議論が始まる前に公表し意見を世に問うべきであった。さもなくば誰も聞く耳を持たないだろう。

2010年6月24日2010年6月24日IASB米国FASBは、同時に同じ内容の、収益の認識に関する会計基準改正案を公表した。10月22日までにコメントを求めている。
IASBの草案 IASBの結論の基礎
FASBの草案 FASB概要
25. An entity shall recognize revenue when it satisfies a performance obligation identified in accordance with paragraphs 20-24 by transferring a promised good or service to a customer. A good or service is transferred when the customer obtains control of that good or service.

2011年2月に、東京証券取引所は、2011年3月期より決算短信の簡素化をしている。決算短信様式・作成要領等 「見直しの概要」参照)
  IFRSの決算短信はこうなる、東証が方針を示す(2010年3月26日)⇒東証記事も双方とも判りにくい。民僚の文章だ。
決算短信様式・作成要領等の27ページに記載のとおり「投資者ニーズを踏まえた開示が求められる事項(個別財務諸表及び注記等)」は任意開示となった。
投資者ニーズを踏まえた開示が求められる事項」の(具体例):
・ 連結財務諸表に関する注記事項(セグメント情報、1株当たり情報、重要な後発事象を除く)
個別財務諸表及び注記事項
・ 利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当
・ 事業等のリスク
・ 企業集団の状況
・ 役員の異動
・ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項
・ 経営管理上重要な指標
・ 生産、受注及び販売の状況
・ 設備投資、減価償却費、研究開発費の実績値・予想値
・ 主要な連結子会社の業績の概況 等

2011年2月10日IFRS財団は、IASBのサテライト・オフィスを東京に設置することを公表した。(日本のニュース IASBニュース 参照)

●2011年4月21日、国際会計基準(IFRS)を作る国際会計基準審議会(IASB、本部ロンドン)と米基準を決める米財務会計基準審議会(FASB)は、両者の会計基準の「共通化」作業のうち、一部の項目の期限を6月末から延長すると発表した。一段の擦り合わせや関係者の意見集約が必要としている。

 優先的な会計項目は今年6月末までに完了する予定だったが、金融商品、収益認識、リース会計の3項目については年末まで延期する。米国の保険会計の決定は2012年前半になる。(和文ニュース CFO.Com

2011年5月26日米国証券取引委員会(SEC)の主席会計士事務所は、国際会計基準(IFRS)の米国会計制度への導入の仕方についての作業計画案Work Planである”Condorsement (CovergenceとEndorsementとの造語)"を公表した。IFRSを米国の会計基準に5年から7年の間にコンバージェンスすることで、コンバージェンスが完了した時には、米国会計基準に準拠することがIFRSに準拠することにもなるというもの。それ以後は、IFRSの新規設定や改変については承認(Endorsement)する。そのときのFASBの役割は、FASBは存続しFASBがIFRS設定に参加するものとなっている。SECは、この案について7月末までにコメントを求めている。SECは2011年末までにIFRS導入の意思表示することを表明しており、SECスタッフのこの公表は注目されている。(ジャーナル・オブ・アカンタンシー 参照)

2011年6月21日金融庁、金融担当大臣 自見庄三郎(国民新党)は、“IFRS 適用に関する検討について”と題したメモを公表している。「b)上場会社の連結財務諸表に対してIFRS(国際財務報告基準・国際会計基準)を強制適用することを当面見送る方針を早期に明確にする。また、個別財務諸表に対する会計基準は、注記などによる透明性確保を前提に、日本の産業構造や企業活動の実態に照らして適切な事項のみをコンバージェンス(収れん)し、その結果として連結財務諸表と個別財務諸表の会計基準が異なることも許容する、としている。官僚の作文のようである。準備期間5〜7年と延長したのは、先月米国SECの公表した作業計画案Work Planを真似たようだ。(「日本企業は「国際競争」から脱落する 自見金融相が主導する「国際会計基準IFRS」導入先送りへの懸念 これまでの方針を「政治主導」で一転」by磯山友幸氏(国際会計基準戦争の著者) 金融庁あて「我が国のIFRS対応に対する要望書」2011年5月25日bySEC登録企業等の副社長等・・会社を代表する社長が一人もいない、三菱電機は常任顧問名・・代表権あり?  経団連「6月20日記者会見における米倉会長発言要旨」参照)

2011年6月30日、金融庁金融担当大臣 自見庄三郎(国民新党)は、企業会計審議会の開催あいさつで、@IFRSの適用に関し3年としていた準備期間を、5月26日のSECの作業計画案と同様5〜7年の準備期間を置く、A2011年3月期までとしていた米国会計基準の適用期限を撤廃するとしている。(「2年前に逆戻りしたIFRS議論ー大幅増員した審議会で結論は?」 「企業会計審議会総会」 「企業会計審議会企画調整部会」 「自見大臣のIFRS適用の見解(英語ニュース )」 「IFRS推進派、反対派」 参照)

@6月30日議事録 A8月25議事録フリートーキング(「金融庁参与にIFRS慎重派、大臣が任命」「素人大臣に翻弄される金融庁」・・世も末か!「磯山友幸のブログ」参照 「自見大臣10月3日から8日まで外遊」⇒外遊後の10月11日の記者会見) B10月17 議事録 (ITPro  IFRSフォーラム  日経) C11月10日 議事録 (「連単分離は実現できるかITPro「連単分離」に傾いていた(IFRSフォーラム)」 D12月22日 議事録 藤沼委員(IFRS財団トラスティ副議長)の意見 (「適用敵否決定は2012年に拘らず、金融庁」「IFRSフォーラム」) 2012年2月8日フーガーホーストIASB議長来日  E2月17日 議事録 資料 (海外調査報告IFRSフォーラム 海外調査報告ITPro) F2月29日 議事録 資料経団連のアンケート調査報告 IFRS適用方針討議) G3月29日 議事録 資料 (監査法人のIFRS対応に意見相次ぐ 中小企業は「IFRSの影響を受けない」) H4月17日 議事録 資料 (「証券アナリスト協会提言に異論相次ぐ」 「IFRS導入めぐる着地点いまだ見えず」・・今頃こんな議論あり?事務局が誘導しているようなもの) I6月14日、議事録 資料 (意見の溝埋まらず審議継続へ 、IFRS議論「中間的論点整理」公表 IFRS適用の論点整理案を提示 「金融担当大臣交代でIFRS問題はどこへ」by磯山友幸氏) J7月2日 「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」の公表 (金融庁、IFRS審議のまとめを公表「任意適用の積み上げを」  元国税庁長官大武健一郎氏・現TKC全国会会長および大塚ホールディングス役員企業会計審議会の委員脱税重婚ベトナム簿記?) K10月2日議事録 資料米国動向の見極めを・・進展なし IFRSの強制適用、日本の判断は2013年以降に持ち越しへ・・ロイター) L2013年3月26日5か月ぶりの審議会 議事録 資料 (経団連「適用の時間軸明示を」 反対派意見健在、滅茶苦茶、どうなってるの?・・フェアな議論が行われているとは思われない。) M4月23日議事録 資料 (「IFRS任意適用緩和+カーブアウト」の方向性示す 「当面検討すべき課題」⇒役人に纏めるつもりがないことがよくわかる)  N2013年5月28日議事録 資料 IFRS任意適用要件の緩和について 単体開示の簡素化について (国際会計基準「任意適用」を緩和 金融庁審議会が素案・・そもそも何故規制する必要があったのかが問題だ。渡り鳥の担当官、その事務局が選任した委員が真面な議論をしているとは思えない。何年も初歩的な議論をエンドレスで続けている。J-IFRSなるものを議論し始めたIAS1号に「IASに準拠した財務諸表を作成する企業は、その旨を開示しなければならない。財務諸表を適用すべき各基準書及び適用すべき解釈指針委員会の解釈指針すべての規定に従ったものでない限り、財務諸表がIASに準拠していると記述してはならない。(現パラグラフ16)」の規定によりJ−IFRSなるものは、国際会計基準に準拠していると書いてはならないと明記されている。委員は分かって議論しているか非常に疑問。4月23日の議事録で黒川委員から出た話のようだ。5月28日の議事録の中で斎藤(静)委員が話している。ただし、折衷案は反対があり纏まらなかった。)  O2013年6月12日、 議事録(これほど滅茶苦茶な議論見たことがない) 資料 P2013年6月19日議事録(これが最終結論の議事録か。背筋が寒くなる。むなしいくなる委員がいても不思議はない。栗田開示課長はこれが最後の仕事) 資料 エンドースメントされたIFRS国際会計基準に「日本版」導入決定 導入加速へ金融庁 国際会計基準「日本版」を新設・・企業会計基準委員会の独立性はなく金融庁の下請けと化した。 金融庁の強引 「国際化に背を向ける、亡国の会計鎖国論争」by磯山友幸氏 「IFRSはこうなる」by田中弘氏・・自見氏を称賛している。参照)

2011年6月30日の企業会計審議会は、IFRS反対意見のオンパレードである。真っ先に発言したのが、三菱電機常任顧問佐藤行弘氏経済産業省で2010年4月19日「企業財務委員会」中間報告を公表した人)。元国税庁長官で、現・中小企業の会計・税務ソフト会社TKC全国会会長、大塚ホールディング役員、労働組合の連合、反対学者など、金融庁が管轄している上場会社の投資家保護の視点から逸脱したような意見ばかりが突出しており、かつ、過去の経緯を無視した意見を誘導した会議となっておりフェア―とは言えない。委員を選定した事務局担当者の見識を疑う。なお、会長は、昨年審議を無視して報告書をまとめず「会長発言」を公表した人。(茶番

10月17日の企業会計審議会では、IFRS財団評議会の副議長 藤沼亜起氏は「大局はどうか、世界がどう流れていくかを常の意識して次の手を打たないといけない」と話した。ASBJ(企業会計基準委員会)などの基準設定主体についても「独立性を持って基準を作ってほしい。それが世界の基本。忘れてほしくない」と述べた。(IFRSフォーラム 参照)
 8月25日の議事録でASBJの委員長の発言「第1に、ASBJは、公益財団法人財務会計基準機構の中にありますが、この財団法人の運営費用の大半は上場企業や会計事務所、財務諸表の利用者などからの会費収入によって賄われております。したがいまして、これらの方々への責務を果たす必要があります。大半の市場関係者の方が我々の会員になっていただいておりますので、今後とも会員の方々からの負託にこたえるべく、市場関係者の方々の意見を十分聞いて議論を尽くした上で、個々の基準開発を行っていかなくてはいけないと思っております。会計基準は、もともと資本市場の参加者の行動ルールとして定着してきたもので、市場関係者が十分議論を尽くし、意見を集約していくことが最も大事だと思っております」に対してのように見える。独立性を保持しているとは思えない発言。

11月10日の会議連単分離は実現できるかITPro)では、斎藤静樹教授が「そもそも連結財務諸表と単体財務諸表が原則的に異なる会計基準に基づいているというのはおかしい」と指摘した」としている。筋が通っている。他の委員が奇妙な議論している中氏の主張はかき消されている。「連単分離」に傾いていた(IFRSフォーラム)」
一方、栗田企業開示課長 は、「実態といたしまして、連結と単体に使用される会計基準が異なっているということになっております。このような運用がこれまでも続いてきたわけでございますけれども、この点については、現在のところまで大きな問題は生じていないという認識であります」として結論を誘導していますし、単体開示についても、自見大臣に「特に単体財務諸表にかかわる会計基準は、会社法、税法等との関連も深いため、その点について十分に配慮する必要があります」と発言させ開示の重要性を誘導している。

12月22日の会議では、「合同会議は月1回〜2カ月に1回のペースで開催され、一つの論点について1〜2回で議論している。このペースで進むと、11項目すべてを議論し終わるのは早くて12年いっぱいとなる見込みだ。委員からは、「半年をかけた割にペースが遅すぎる。時間がもったいないと思う。議論をもっと整理して、スムーズに進めるべきではないか」と意見を述べた」そうだ。金融庁は、時間を引き延ばして米国の結論を待つつもりだ。 時はまた失われる。

来日したフーガーホーストIASB議長2012年2月8日金融庁の自見庄三郎担当大臣と会見した。フーガーホースト議長によると自見大臣は、「日本がIFRSから離れていくような解釈はしないでほしい。日本のコミットは変わっていない。IASBとの緊密な関係は続いている」などと述べ、フーガーホースト議長は「日本にとってのフルアドプションは真剣な選択肢であることに変わらない」との印象を受けたという。(IFRSフォーラム

2012年6月14日金融庁は、IFRS議論「中間的論点整理」公表し、同時にオックスフォード・レポート「日本の経済社会に対するIFRSの影響に関する調査研究(The Impact of IFRS on Wider Stakeholders of Socio-Economy in Japan)」を公表した。オックスフォード大学の鈴木トモ教授への委託研究としている本名は鈴木智英氏で、彼の主張は、会計を知る学者だからこそ「基準通りの会計数値は役立たず」と警告する。そこで、「創造的会計が必要です。国際会計の枠組みを乗り超えて、自社の優位性を積極的にアピールする数値・資料作りが必要です」との意見によく表れている。経済産業研究所での講演にもよく表れている。オックスフォード・リポートというよりも本名である鈴木智英調査報告書というべき個人的視点の代物である。

「金融庁が「詐称」を容認した学者」によれば、金融庁ホームページには昨年6月末現在の名簿が掲示されており、八田氏も含まれている。金融庁に7月6日に問い合わせたところ、「その名簿が最新で、その後変更はない」と答えた。ところが裏では、八田氏は2月に解任されたことになっており、後任に佐藤参与がごり押ししてIFRS反対派の辻山栄子教授早稲田大学)が就任したという話なのだ。金融庁の担当部局には箝口令が敷かれ、3月以降の審議会の場でも一切名簿は配られていない」そうだ。

2013年2月4日公益財団法人日本証券経済研究所(JSRI)講演会「企業会計をめぐる諸問題について」by栗田照久(金融庁総務企画局企業開示課長(国際会計基準(IFRS)への「当面の方針」を強引にまとめた金融庁の「八方美人」の人)・・氏の理解では、日本での国際会計の導入はあり得ない。特に、IASBのアジェンダ・コンサルテーションのコメント(15頁以降・・2012年12月18日IASBフィードバック・文書を公表・・翌年1月の関係者座談会)を読むと氏のIFRSの理解の程度がよくわかる。2年の任期では専門的知識は得られようもない。まして経験さえないのだから。IFRSでの開示実務、監査実務を経験したものでなければ理解できないようだ。

2013年5月28日、企業会計審議会は、J−IFRSの創設について議論になり、斎藤静樹委員は「日本の資本市場に対する国際的な信認を高めるうえで最優先の課題は、日本基準をどうやって国際化していくかということであって、結果として日本基準を現状で凍結して置いてきぼりにするような方針はとるべきではない。もちろん、そんなことはさせないのであって、日本基準もどんどん国際化しますよと言うのは簡単ですけれども、私は、金融庁にもASBJにも、それを進めるだけのリーダーシップがあるとは思っていないです。それが私の意見です」と言っており、一方、ASBJの西川委員長は、6月12日にこれに反論して「そもそも、エンドースメントIFRSを支持される理由のところに、ASBJにその策定能力があるということを前提にされているようなところが聞かれますので、私どもは、もちろん、エンドースメントの作業をしたことはないのですけれども、これまでの基準開発であるとか、IASBに対する意見発信をしてきた作業と関連して、過去に2回ほど、エンドースメントの前提となるような日本基準とIFRSの差異を分析して、それに軽重をつけるような作業を過去2回ほど行っております」と言ってやる気十分あるというニュアンスである。ASBJの西川発言は、金融庁の下請けとなった感がある元ASBJ委員長の斎藤静樹氏は、J−IFRSにどんな意味があるのか疑問を呈している

2011年10月24日、米国財務会計基準審議会(FASB)議長レズリー・シードマン女史は、SECスタッフが5月に提案した「コンドースメント(Condorsement)アプローチを支持する」旨表明した。コンドースメントを通じてIFRSを採用(adoption)する方法が、一つは米国がグローバルな会計を支援できること、二つ目に実務的である、としている。(accounting Today) また、米国公認会計士協会(AICPA)の会長バリー・メランコンは、10月6日、米国の上場会社にIFRSの任意適用を認めるべきと主張した。(Journal of Accountancy)また、過半数を超える会計士(CPA)がIFRS任意適用を支援すると調査に応えている。(Journal of Accountancy

2011年11月16日米国証券取引委員会(SEC)の主任会計士事務所(chief accountant's office )と企業財務部門(division of corporate financce)は、IFRSに関する二つの調査報告書を公表した。これは、米国がIFRSへの移行するかどうかのSECコミッショナーが判断するための基礎ととなるようSECスタッフの提案である。一つは「実務におけるIFRSの分析(An Analysis of IFRS in Practice)65ページ」、二つ目は「米国会計基準とIFRSとの比較(A Comparison of U.S. GAAP and IFRS52ページ」であり、(ウオールストリート・ジャーナル Journal of Accountanncy WebCPA  IFRSフォーラム 参照) 

実務におけるIFRSの分析(An Analysis of IFRS in Practice)65ページ」では、SEC登録会社とそれ以外の会社の138社の直近の年次連結財務諸表の分析をして、結論はほぼ透明性および明瞭性については強化されているとしながらも、例として、投資家の理解のうえで会計方針の開示が不明瞭であったり不十分な場合があり、使用している用語がIFRSの用語と一致してなかったり、ある国のガイダンスに従った旨記載があるが理解困難なものにしている場合がある。また、開示が不十分なためIFRSに準拠しているかどうか不明な場合がある、としている。また、IFRSの適用における多様性が、国及び産業間の財務諸表の比較可能性を困難にしている。あるケースでは、IFRSが選択適用を認めていたり、IFRSガイダンスの欠如によって、会計基準自体から多様性が生じているものがある。また、ある場合には、IFRSに準拠しないことから生ずる多様性がある。IFRSの趣旨に合致しない場合、他の処理方法を認めていることから生じている。会計基準自身の多様性は、その国の会計基準設定主体や規制当局が作成したガイダンスや追加のガイダンスや実務指針によって緩和されている。しかし、その国の会計基準設定主体や規制当局が作成したガイダンスではその国の中での比較可能性は緩和されても国際的には比較可能性は減少している、としている。

米国会計基準とIFRSとの比較(A Comparison of U.S. GAAP and IFRS52ページ」では、米国会計基準FASBの29項目にわたって行っているが、コンバージェンス・プロジェクトが進んでおり、SECルールや規則およびスタッフ・ガイダンスとの比較を行っておらず参考程度としている。

米国SECのコミッショナーは、2011年末までに、IFRSを米国の上場会社に適用するかどうかの判断を表明することになっている。これに先立ち、SECのスタッフが、米国会計基準とIFRSを具体的に比較し米国会計基準がなお役割を果たす必要性があること、各国のIFRSの適用実態を分析することでIFRSを即座に適用できないことを分析し具体的に示している。意味するところは、5月26日にSECスタッフが公表した国際会計基準(IFRS)の米国会計制度への導入の仕方についての作業計画案Work Planである”Condorsement (CovergenceとEndorsementとの造語)を補強する内容となっている。(SECサイト
Spotlight on Work Plan for Global Accounting Standards」参照)

2011年12月5日、SEC主任会計士ジェームス・クロカー氏はIFRSの適用に関するSECとしての意思決定に最低2・3カ月必要と発言した。(ジャーナル・オブ・アカンタンシー 日本経済新聞
The SEC’s decision on whether to incorporate IFRS for U.S. issuers is at least a few months away. SEC Chief Accountant James Kroeker said the SEC staff will need at least a few more months to produce a final report that would position the commission to make a determination on IFRS.

2012年2月8日フーガーホーストIASB議長来日し、金融庁の自見庄三郎担当大臣と会見した。フーガーホースト議長によると自見大臣は、「日本がIFRSから離れていくような解釈はしないでほしい。日本のコミットは変わっていない。IASBとの緊密な関係は続いている」などと述べ、フーガーホースト議長は「日本にとってのフルアドプションは真剣な選択肢であることに変わらない」との印象を受けたという。(IFRSフォーラム Itpro 参照)

2012年5月10日ニューヨークタイムスは、The Case for Global Accountingと題する記事を掲載した。IFRSの置かれた現状を簡潔に纏めたものである。

2012年6月20日米国SECの主席会計士ジェームス・クローカー氏(元デロイト監査事務所パートナー)は、この7月で退任し、民間人となると報じた。後任は、公表されていない。SECは、先月末(5月22日)、数週間以内にIFRSに関する最終報告があると報じていた矢先である。異常?

2012年7月6日ウオールストリートジャーナルは、2年半熟考していた米国SECは、IFRS適用の判断を再度来年に延ばすとの(Delay Seen (Again) For New Rules on Accounting)記事を配信した。(米SECは国際会計基準に関する決定を来年に先送りの公算−WSJ紙)  7月9日、SEC Shuts Down IFRS Decision Time Line

2012年7月13日米国証券取引委員会(SEC)の主任会計士事務所は、最終のスタッフ報告書として「米国の証券発行者の財務報告制度における国際会計基準の導入に関する作業計画・最終報告(Work Plan for the Consideration of Incorporating International Financial Reporting Standards into the Financial Reporting System for U.S. Issuers(127ページ))」を公表した。IFRS適用の判断を再度来年に延ばすとしている。(IFRSフォーラム Journal of Accountancy  Wall Street Journal  Compliance week
Accounting Panel Expresses 'Regret' Over U.S. Stance (Wall Street Journal)
2012年7月16日SECは7月13日(金曜)に退任した主任会計士ジェームス・クローカー(42)(元デロイト監査事務所のパートナー)の後任に、ポール・A・ベスウィック(Paul A. Beswick(元アーンスト・ウイニー監査事務所のパートナー)が就任することを公表した。

2012年10月5日IMF及び世界銀行の総会が東京で来週9日開催されるときに、大手町の東京プレスクラブが、元日本公認会計士協会会長藤沼亜紀氏、前会長増田氏を迎え、元日経記者磯山友幸氏の司会で、オリンパス事件、IFRSの議論、IASBの東京のサテライトオフィス創設等について生の面白い話がされています。(大手町の東京プレスクラブ) IASB東京サテライトオフィスは旧経団連のビルで10月15日オープンだそうだ。藤沼IASB財団の副議長は来年任期満了でシンガポール他の国が攻勢をかけており日本以外の国に椅子を明け渡すこともありうるとしている。

●国際会計基準(IFRS)の普及を目指すIFRS財団(ロンドン)は、東京事務所の開所式を行った。同財団の海外事務所は初めて。同財団のミッシェル・プラダ評議員会議長は記者会見で「日本の当局、企業関係者が前に進むことを期待している」と述べ、IFRSの早期導入を日本に求めた。(IFRSフォーラム  ITプロ 参照)

2012年11月15日、国際会計基準(IFRS)の普及を目指すIFRS財団(ロンドン)は、東京事務所の開所式を行った。同財団の海外事務所は初めて。同財団のミッシェル・プラダ評議員会議長は記者会見で「日本の当局、企業関係者が前に進むことを期待している」と述べ、IFRSの早期導入を日本に求めた。(IFRSフォーラム  ITプロ 参照)

2012年11月15、米国ポール・パクター氏IASBを12月31日まで任期、IASB委員の米国枠後任に、SEC主任会計士室にいた、Mary Tokar女史を選任した。任期は2017年6月30日まで。(
November 19, 2012JofA)  IASBもこれで一時代が終わったようだ。

2012年11月27日、バラク・オバマ大統領はSEC議長のメアリ・シャピロが12月に退任し、後任に民主党の、 Commissioner Elisse Walter を仮に選任することを公表した。(ニュース 2008年のウオルター女史のIFRS発言

2013年1月24日、オバマ大統領は、SEC委員長にメアリー・ジョー・ホワイト女史(Mary Jo White)を指名した。SEC委員長に検事出身のホワイト氏を指名。ニューヨークの法律事務所デベボイス・アンド・プリンプトン のパートナーで、金融の政策決定や証券業界に染まった弁護士らに運営される傾向にあったSECに新風を吹き込むことになりそうだ。ただ、この分野でホワイト氏の経験が比較的少ないことと、バンク・オブ・アメリカ(BOA)のケン・ルイス前最高経営責任者(CEO)をはじめとする法人顧客の弁護を担当してきた職歴と合わせて、一部の議員や投資家の支援者から反発を招く可能性がある。 (ブルームバーグ  メアリー・ジョー・ホワイト・小さな巨人)(ニュース 

2013年3月1証券監督者国際機構IOSCOのIFRS財団モニタリング・ボード議長に金融庁の河野正道 国際政策統括官を議長として選出しました。(金融庁 英文ニュース IFRS) 「メンバー国の資本市場におけるIFRSの顕著な利用にどの程度貢献しているかをモニタリング・ボードは評価する予定である」とし、「当該国は、IFRSの適用に向けて進むこと、及び、最終的な目標として単一で高品質の国際的な会計基準が国際的に受け入れられることを推進すること、について明確にコミットしている」ことが求められる。

2013年4月9日会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)は、国際的な会計基準設定コミュニティのメンバーで構成される国際会計基準審議会(IASB)への技術的な助言機関であり、ASAFメンバーは、2013年4月8日及び9日に創立総会のためロンドンに集まりました。 IASB Website ASBJ サイト

2013年5月10日IASBの議長ハンス・フーガーホーストは、「日本がIFRS(国際会計基準)任意適用拡大に向けた方向性を打ち出したのは、ゴールに向けた大きなステップだと評価している」と語った。  (FASB・・Accounting Board Taps Chairman)

2013年5月10日自民党・日本経済再生本部が「中間提言を公表した。(塩崎恭久) 中間提言の40ページには、D) 金融・資本市場の魅力拡大(「5年以内に世界一へ」)として、●英文開示や国際会計基準の利用の拡大・・世界標準の情報を海外発信することによって、海外投資家に日本市場の実力を知ってもらうが必要である。今まで情報不足により投資を控えていた海外投資家からの投資を呼び込むことにもつながる。そうした問題意識から、金融商品取引法における英文開示制度や国際会計基準の利用の拡大について、更なる推進を図る。としている。本気度が試されよう。 (日本経済再生本部の中間提言に異論噴出!? by磯山友幸氏著)

2013年6月6日IFRS財団日本公認会計士協会が紹介)は、IFRSの国際的なアドプションに向けた進展評価に関する重要なイニシアチブの第一段階を完了しました。G20は、高品質な財務報告基準の単一のセットの国際的なアドプションを求めました。当該イニシアチブは、利害関係者が、各国のG20の目標達成に向けた進展を分析できるような重要な情報源を提供することを意図しています。
66か国の調査への回答は以下のとおりです。
・95%が、国際的な適用に適した財務報告基準の単一のセットとして、IFRSの支援を公約しました。
・80%が、株式が公開されている全企業もしくは概ね全ての企業にとっての要求事項としてIFRSを既にアドプションしている一方、残りの国々の多くは、IFRSの使用に向けて大きく進展しました。
・IFRSをアドプションした国は、IFRSへの修正をほとんど行っていない一方、行われた数少ない修正は、IFRSをアドプションするための国の計画の暫定的な段階であると一般的にみなされています。さらに、ほとんど全ての場合に、IASBには、アジェンダに関する活動中のプロジェクトがあるため、各国が修正を行った基準の改訂版ができ上がる結果となります。
・過半数以上の国が、IFRS for SMEsを既にアドプションしているか、近い将来にアドプションする予定です。

2013年6月7日日本経済新聞は、自民党金融調査会・企業会計小委員会は7日午前、国際会計基準(IFRS)に関する提言案を示した。2016年末までに約300社が採用するよう金融庁や経済界に要請することなどが柱。焦点になっていた強制適用の時期については言及を見送り、3年以内に結論を出すよう求めた、伝えた。(日経) 政権が自民党に代ってIFRSに対する姿勢は変わりそうだ。

2013年6月10日経団連は10日、日本での国際会計基準(IFRS)の導入に関する提言を公表した。金融庁が制度設計に入る日本基準とIFRSの「折衷案」を容認したのが柱。折衷案の制度づくりについては、IFRSのルールのうち日本企業が受け入れにくい部分を、除外できるようにすべきだとの見解も示した。(日経

2013年6月13日自民党企業会計小委員会は、「国際会計基準への対応についての提言」を公表しました。そこには、19日の企業会計審議会で、金融庁の主張する日本版IFRSについては、「当期純利益の重視など、わが国が行ってきた主張をさらに明確に発信していく観点から、また、わが国として考えるあるべきIFRSの姿を実現する意味においても、現行の指定国際会計基準制度のほかに、わが国の会計基準設定主体であるASBJにおいて、IFRSの個別基準を具体的に検討し、わが国の会計基準として取り込むシステムについても検討を進めるべきである」と微妙な言い方で記述されている。あるべきIFRSとして決議されている100か国以上が適用しているIFRSを、わが国として考えるあるべきIFRSを今更主張してどうするのだ。IFRSとは異なるという”レジェンド(警句)”が付される国際的に認められない基準を適用する日本企業があるとは思えない。例え、2011年7月に公表した「アジェンダ・コンサルテーション2011」において、今後3年間のアジェンダの優先順位に関する意見を募集しているとしても。

経済産業省経済産業政策局企業会計室が、2013年6月17日付で「会計基準に関する国際的な動向(IFRS、欧州等)」を纏めている。経済産業省の経済産業政策企業会計室と検索すると「企業会計、開示、CSR(企業の社会的責任)政策」が検索され、企業会計に関する「企業財務委員会」をクリックするとIFRS反対派の佐藤行弘三菱電機株式会社常任顧問が委員長をしており、そこで纏められたことが分かる。佐藤行弘氏は自見金融担当大臣が強引に企業会計審議会の委員にIFRS反対派として送り込まれたといわれる。(現代ビジネス 参照) 経済産業省はかなり偏った人材を登用し、かなり偏った政策を強引に進める傾向にある。エルビータメモリーのインサイダー取引で逮捕された官僚がいるくらいだから・・・モラルが疑われる。4月から「企業会計実務者分科会(仮)について(案)」を立ち上げ非公開とし、「企業会計のあり方について、国内における企業の財務報告の実態や課題、国際的な会計基準に関する議論について情報共有し、産業界としての技術的、政策的課題を明らかにすることで、関係団体との連携に資するため、実務者レベルにおいて議論を行う」としている。企業財務委員会の委員の中には、IFRS諮問委員であった島崎憲明住友商事株式会社特別顧問が名が掲載されているが出席をしていない。

2013年7月10日企業会計基準委員会(ASBJ)は、第268回委員会を開き「エンドースメントされたIFRS」に関する作業計画案を提示したそうだ。「IFRSのエンドースメント手続き」ASBJは、非常に閉鎖的で公開性がなく、金融庁からの独立性も危うく、ガバナンスにも疑問点が多く完成度・信頼性に疑問符が付く。それによると、「目的として、 1 .企業会計審議会は、平成25 年6 月19 日の「IFRS に関する当面の方針」では、IFRS のエンドースメント手続の導入が記載されており、ASBJ が検討を行うこととされている。本資料は、ASBJ が実施するIFRSのエンドースメント手続に関する計画の概要の案を記載している。 2.「IFRS に関する当面の方針」では、以下のとおり記載されている。◇「具体的なエンドースメントの手続1については、まず、会計基準の策定能力を有する。ASBJ において検討を行い、さらに、現行の日本基準と同様に、ASBJ が検討した個別基準について、当局が指定する方式を採用することが適当である。◇「ASBJ において速やかにエンドースメントの検討が行われることを期待する」「エンドースメント手続の完了目標を、個別基準に関する検討の開始から概ね1 年とする」としている。
ASBJの第268回の審議「IFRSのエンドースメント手続に関する計画の概要」Webcastを聞いていると完全に金融庁の下請けの委員会である。「エンドースメントされたIFRS」は仮で名称は金融庁が決めるそうだ。驚きだ。真面な議論している委員が少ない。37分ごろから鶯地IASB委員が発言しているが常識的な発言をしている。

西川ASBJ委員長の3つの不思議
@IASB理事鶯地氏の「エンドースメントされたIFRSはIFRSではない」という説明に、1993-1998年 国際会計基準委員会(IASC)理事会日本代表であった西川氏が無視する不思議。90年代の日本はIASCの理事会で反対ばかりしている記事がJICPAジャーナル(2007年1月から「会計・監査ジャーナル」へ変更)に掲載されているのが印象的であった。
AASBJ前委員長の斎藤静樹教授の「私は、金融庁にもASBJにも、それを進めるだけのリーダーシップがあるとは思っていないです」といい、現ASBJは「会計基準の策定能力を有するASBJ において検討を行い」と記載する厚顔の不思議。
BASBJを創設した際に、「行政を含む各方面からの独立性が確保される必要がある」と謳って創設されたにも拘わらず、金融庁の下請けと化した不思議。

 2013年5月28日企業会計審議会の議事録には、斎藤静樹委員私は、金融庁にもASBJにも、それを進めるだけのリーダーシップがあるとは思っていないです」といい、西川郁生委員ASBJにその策定能力があるということを前提にされているようなところが聞かれますので、私どもは、もちろん、エンドースメントの作業をしたことはないのですけれども、これまでの基準開発であるとか、IASBに対する意見発信をしてきた作業と関連して、過去に2回ほど、エンドースメントの前提となるような日本基準とIFRSの差異を分析して、それに軽重をつけるような作業を過去2回ほど行っております」と言ってやる気十分あるというニュアンスである。ASBJの西川委員長と金融庁は密接な関係を有しており、ASBJは既に独立性はなく金融庁の下請け化した。一方、元委員長の斎藤静樹氏は憂い「日本版IFRSが抱えるこれだけの問題」の中で「IFRSの一部基準を適用しない“日本仕様”となる。これにどんな意味があるのか」と異を唱えている。

ASBJ:IFRSのエンドースメントに関する作業部会の設置と委員の選任2013年7月25日)部会長となる小賀坂氏はメンバー構成について、「各セクターからバランス良く人選した。特に実務上のコスト・ベネフィットの見極めが大切である点を考慮して、作成者の方を多めにした。IFRSの任意適用を既に始めており、結果としてどうだったかが分かっている方にも入ってもらった」と説明した。企業の委員は、経済産業省企業財務委員会の委員(IFRS反対派の佐藤行弘三菱電機株式会社常任顧問が委員長)でもある。所謂経団連を中心とした重厚長大なオールド・エコノミーの企業ばかりで、ニュー・エコノミーは入っていない。どう見ても委員のバランスが取れているとは言えない。(「勲章配分機関の経団連はもういらない」by楽天の三木谷社長  「新経済連盟」楽天・三木谷氏の野望 参照)
国際的な顧客が多く社会インフラ事業で活路を見出そうとしている日立東芝米国基準からJ-IFRSを使ったAnnual Reportを外国の顧客に渡しますか?それとも国際企業を返上しますか?J-IFRSを作っている時ではないと思うのだが・・ 三菱重工が日本基準です。 J-IFRSを適用するか去就が注目される。なお、三菱商事(IFRS適用検討中)、三菱電機は米国基準でバラバラ。新日鉄住金はJ-IFRSを使う気でいるのでしょうか?腰が引けてる印象は拭えないのではないでしょうか?厳しい状況が続いているからだろう。 元金融庁総務企画局企業開示課関口智和氏は「EUによる会計基準の同等性評価」で実績を上げたといっている人。金融庁とは相性が良い。ガバナンスなんてない。これでよいのか日本の会計基準。
(「J-IFRSは国際的な詐欺行為ではないか他」「会計基準国際化の転換点」by斎藤静樹(前ASBJ委員長)日本証券アナリスト協会理事 参照)

2013年10月号の”会計・監査ジャーナル”に「我が国におけるIFRS適用の方向性を探る〜国際会計基準(IFRS)への対応の在り方に関する当面の方針」等を読み解くとして〜として、氷見野良三金融庁総務企画局審議官は、発言の中で”修正版国際会計基準(いわゆるエンドースメントされたIFRS)の作成”という表現をしている。そして”ピュアIFRSはもちろん残しておくわけですが、これに加えまして、個別の基準を判断して、必要であれば一部修正するなどして、採択できる仕組みを設けようというご提言をいただいております”という発言をしている。自己紹介の部分では、”私はいわゆるBIS規制の仕事が長かったのですが、BIS規制については、押しつけられて仕方なしにおこなった、というイメージが、日本中に広まってしまったという反省があります”この人は、BIS規制とIFRSの問題と同一視しているようだ。つまり、会計監査にはずぶの素人であるということだし、問題を複雑にしてしまう最悪の人だ

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