Study of Traditional Japanese Fly
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今日では「蚊鉤」または「毛鉤」を使う異なった毛鉤釣りの釣法が知られていますが、 それらの始まりは別々のものでなく、使った人や使った場所、主な対象魚が異なっていただけであり、 公家や武士が楽しんだ オイカワ(関西ではハエ、ハス、関東ではヤマベ)やウグイの毛鉤釣りと各地の山棲みの生活者や漁師が行った ヤマメ(アマゴ)やイワナの毛鉤釣りであり、 日本における毛鉤の歴史を考えるうえで、それぞれ「都の毛鉤釣り」「山里の毛鉤釣り」という名称で区別をしたらどうかと考えています。 最初の毛鉤は「はえ頭」と呼ばれ、年代とともに「蜂がしら」「蚊頭」「蚊鉤」「蚊針」などと呼ばれてきました。 「蚊鉤」(別ページに詳述)と「毛鉤」のはっきりした区別がされるようになるのは1800年代の後期になり釣法などが確立されてからであると考えられます。 しかし、現在では オイカワ、ウグイ用、鮎用、ヤマメ (アマゴ)、イワナ用のどれも「毛鉤」と呼ばれています。

「テンカラ」 は古くから木曽地方で使われていた毛鉤釣り「山里の毛鉤釣り」の名称であり、この地方に在住であった杉本英樹医師に師事した釣師で随筆家の山本素石氏の数々の著作物などによって日本式毛鉤釣りの名称として広く定着しました。 それは欧米の釣りとは異なりゲームとしての歴史は無く、規則や制限の無い、沈めても浮かしても良い自由な釣りです。 かつて毛鉤釣りは主に竹竿が使われ、水切れが良く適度な重みがあるため道糸には馬素が、山マユから取った絹糸(本テグス)をハリスに、そして木綿バリを曲げた鉤が使われました。 現在では、竿はグラスからカーボンが主流となり、道糸もナイロンやフロロカーボンの単糸を撚ったものなどが使われ、鉤は環(アイ)付きの専用鉤も数多く作られるようになり、スポーツもしくはゲームとしての釣りへと発展してきました。 しかし、その毛鉤は非常に簡素です。落差が大きく流れの速い日本の渓流で「動き」という補助手段を使って釣ることや軽いラインでキャストをし易くするためと考えらています。 テンカラ毛鉤のパターンは私が収集している伝承毛鉤、書籍、インターネットなどを調べた結果、特殊なパターンを除き6パターンに分類できます。 また、伝承毛鉤の釣針の形状とサイズは、袖型の8-11号が圧倒的に多く使われています。 次いでマスの6-7号、キツネの7-12号、丸セイゴの7-9号、伊勢尼の6-7号となっています。

「テンカラ」 の語源についてははっきりした定説が無く、毛鉤が上空から流れに振り込まれる様を連想させて、「天から」を意味するという説。 またテンカラは本来「天唐」で、「天」は唐天竺のこと、そして「唐」は中国から伝わったアユの掛け釣り「ガラ引き」で、江戸時代の加賀藩でこの釣りと同時に毛鉤によるアユ釣りが行われていたことで、しだいに毛鉤を表す呼名に変わっていったとする説。 さらに、江戸時代に武士の鍛練の一つとして行なわれていた片足跳びを子供が真似た遊び「ケンケン」が、釣師の竿を振りながら岩から岩へと釣り上がって行く姿がその遊びに似ているところから、飛騨、越中、加賀地方の方言から「テンカラ」と呼ばれたとする説など、他にも数多くあります。

参考資料: 石垣尚男 (1992)『科学する毛バリ釣り』廣済堂出版. 小田淳 (2001)『江戸釣術秘傳』叢文社. 勝部直達編著 (1978)『釣針史料集成』渓水社. 熊谷栄三郎 (1985)『山釣りのロンド』山と渓谷社. 永田一修 (1987)『江戸時代からの釣り』新日本出版社. 山本素石 (1973)『西日本の山釣』釣の友社.


Traditional Tenkara Kebari Pictures
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これらの伝承毛鉤は、インクと透明水彩絵の具によって描いた一点しかない原画です。 伝承毛鉤もしくはこれらの絵に興味をお持ちでしたら、ぜひ STUDIO TROUT & SEASONS をご覧ください。


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© 1997 Yoshikazu Fujioka